• 検索結果がありません。

応力聴診器を用いた鋼鉄道橋のひずみ測定例とたわみの推定

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "応力聴診器を用いた鋼鉄道橋のひずみ測定例とたわみの推定 "

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

応力聴診器を用いた鋼鉄道橋のひずみ測定例とたわみの推定

北海道旅客鉄道(株) 札幌構造物検査センター 正会員 ○岩田 直泰 北海道旅客鉄道(株) 札幌構造物検査センター 福井 亮太

1. はじめに

JR の在来線における鉄道土木構造物の大部分は 昭和初期までに建設されたものが多く、経年による 老朽劣化が進んでいるものも少なくない。経年の進 んだ構造物を適切に維持管理するためにも構造物の 状態を正しく把握する必要があり、本論では鋼鉄道 橋に着目する。

鋼桁の耐荷力性能照査は、机上計算による現有応 力比率 1)により検討されることが多い。しかし、こ の手法では腐食やき裂などの変状が発生した橋りょ うの耐荷力を正確に把握することは難しい。この問 題を解決するためには、橋りょうに発生している応 力を直接計測することが有効であると考えられる。

ただし、変状箇所の応力集中などを把握しようとす る場合には多点での測定が必要であり、列車間合い で検査を行う場合など、従来の接着剤を用いるひず みゲージは作業性に問題があった。この点、摩擦型 ひずみゲージをマグネットで構造物に圧着する応力 聴診器 2)を用いることにより、作業性は大きく改善 される。ここでは、応力聴診器を用いた営業線にお ける鋼鉄道橋の測定事例を紹介するとともに、測定 したひずみからたわみを推定する手法を提案する。

2. 変状の発生した橋りょうにおける測定例

本章では、耐荷力性能を検討する目的で実施した、

応力聴診器を用いた変状橋りょうの測定例を記す。

事例 1) 溶接切れが発生した橋りょう

溶接によるカバープレート補強が行われている橋 りょうで、上フランジの溶接ビートにき裂が発見さ れた。上フランジカバープレートの上に応力聴診器 を設置して測定したところ、圧縮部材であるにも関 わらず強い引張力も作用していることが分かった。

溶接切れにより、上フランジカバープレートは構造 部材としては想定の機能とは異なる挙動をしている

と考えられる。

事例 2) 横構が破断した橋りょう

左右上フランジを接続する横構の破断が発見され た橋りょうにおいて、補修済みではあるが破断が生 じた横構と健全な横構で測定を行った。健全な横構 ではほとんど応力が作用していないが、破断した横 構では、支間中央部の上下フランジと同程度の圧縮 力と引張力が交互に作用していることが分かった。

原因究明のために検査を行ったところ、沓座の傾き が発見され、これにより特定の横構に応力が集中し て破断に至ったと考えられる。

応力聴診器を用いたひずみ測定により、鋼桁の耐 荷力性能を定量的に評価できるものではないが、構 造部材として想定どおりに機能しているか否かを判 定することは可能であり、変状橋りょうの健全度判 定の一助になると考えられる。

3. 実測ひずみよりたわみを推定する手法の検討 3.1 換算たわみの算出

鉄道橋の性能照査を行う際には、安全性の照査、

使用性の照査とも、列車走行時の桁のたわみ量を指 標としている3)。桁のたわみの測定は、不動点を橋り ょう下にとり、ピアノ線を介して桁の変形を測定す る手法(例えば大鉄式変位形)が一般的である。ただし、

河床から桁までが高い橋りょうや河床の状況が悪く 不動点を設定できない橋りょうなどでは、この手法 の採用は難しい。支間中央部にて測定したひずみか らたわみを推定することができれば、状況を選ばず、

簡易にたわみを把握することができる。

以下に、実測のひずみからたわみを算出する手法 を示す。まず、変断面の桁のたわみは次式で推定す ることができる4)

I E

L M

⋅ ⋅

=

2

48 5 .

δ 5

式1

キーワード: 鋼鉄道橋,応力聴診器,ひずみ測定,たわみ推定

連絡先 :〒060-0005 北海道札幌市中央区北 5 条西 5 丁目(本社西ビル) 北海道旅客鉄道(株) 札幌構造物検査センター 土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)

‑919‑

Ⅰ‑460

(2)

ここで、δは主桁中央のたわみ(mm)、Mは列車荷 重による最大曲げモーメント(N・mm)、L は支間

(mm)、E はヤング係数(N/mm2)、I は桁の中央断面

の 中 立 軸 ま わ り の 総 断 面 の 断 面 二 次 モ ー メ ン ト

(mm4)である。y を中立軸距離(mm)とすると、応力

度の計算式は式 2のとおりであり、応力とひずみの 関係はフックの法則より式3のとおりである。

式3を式2に代入し、変形したものを式1に代入 すると式4が得られる。

式4のεに実測ひずみを代入することより、換算 たわみを計算することができる。

3橋りょうにて行った測定ケースを表 1に、測定 したひずみを用いて換算たわみを計算し実測のたわ みと比較したものを図1に示す。

図1によると、換算たわみは実測たわみより小さ くなっている。この原因としては、応力聴診器の設 置不良による実測ひずみの過小評価および換算式の 係数の不適正が考えられるが、計算ひずみに対する 実測ひずみの割合が従来の知見と概ね一致すること から、後者が支配要因であると考えられる。

3.2 換算たわみ算出の補正係数の提案

一定断面の単純梁に等分布荷重が作用したときの たわみの推定式は式1 の係数部分が であり、

変断面のたわみを推定する式 1の係数 は、

一定断面の係数を割り増したものと考えられる。

図 1に示したとおり、実測たわみよりも換算たわ みが小さくなっているが、ここでは、その割り増し が過小であると考え、式4を1.72倍した補正式とし て式 5を提案する。なお、この係数は実測たわみを 目的変数とし換算たわみを説明変数としたときの、

最小二乗法による切片0の一次式の係数である。

補正式を用いて算出した補正換算たわみと実測た わみの関係を図 2 に示す。この図によると、ばらつ きは大きいものの、実測ひずみからある程度の精度 でたわみを推定することができ、たわみ測定が困難 な橋りょうに本手法が活用できると考えられる。

図2 実測たわみと補正換算たわみの関係

4. おわりに

本論では鋼桁の耐荷性をより正確に把握する取り 組みとして、応力聴診器による変状橋りょうの測定 例を紹介した。また、支間中央部で測定したひずみ からたわみを推定する手法を検討し、換算式を提案 した。本論で紹介したたわみ推定の手法は、少ない データに基づいたものであり、今後も様々な橋りょ うで測定を行い、検討を重ねたいと考えている。

参考文献

1) 鉄道構造物等維持管理標準・同解説(構造物編) 鋼・

合成構造物,鉄道総合技術研究所編,2007.1 2) (株)東京測器研究所HP,http://www.tml.jp 3) 鉄道構造物等設計標準・同解説 変位制限,鉄道総合

技術研究所編,2006.2

4) 鉄道構造物等設計標準・同解説 鋼・合成構造物,鉄 道総合技術研究所編,2000.7

I y M

= σ

E ε

= σ

y L

.

2

48 5 5 ε ⋅

= δ

式2 式3

式4

式5 72

48 1 5

5 2

y . L . ⋅ε⋅ ×

= δ

48 0 5.

表1 測定ケース一覧

図1 実測たわみと換算たわみの関係

48 5 . 5

0 2 4 6 8

0 2 4 6 8

A橋りょう B橋りょう(上り線) B橋りょう(下り線) C橋りょう

換算たわみ (mm)

実測たわみ (mm)

0 2 4 6 8

0 2 4 6 8

A橋りょう B橋りょう(上り線) B橋りょう(下り線) C橋りょう

補正換算たわみ (mm)

実測たわみ (mm)

測定

ケース 測定橋りょう 橋りょう形式 経年 支間

(m)

CLの断面二次 モーメント (m4) 1 A橋りょう デックガーダー(Gd) 118年 19.2 2.896E-02 2 B橋りょう(上り線) デックガーダー(Gd) 66年 12.8 1.321E-02 3 B橋りょう(下り線) デックガーダー(Gd) 110年 12.8 1.790E-02 4 C橋りょう デックガーダー(Gd) 74年 9.8 5.713E-03

土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)

‑920‑

Ⅰ‑460

参照

関連したドキュメント

をも添付︵記入︶してはならない﹂と定めていただけだったが︑そのような規制形態でさえ︑オブライエン・テスト

の協力を得て、ようやく墜落場所が西スラベシ沖と特定された。1 月 25 日の報道で、海底 1000

貯蔵し、検索し、決定する作業が含まれるマルチタスク 状況であり、自動車の運転場面の中でも、必要情報処理

として表記している。 IR スペクトルデータは JASCO FT/IR-8300 によって測 定したものを記載している。融点 (mp) は Yamato capillary melting point

の通過時刻、車頭時間、感知時間)を収集した。そし て、これらのデータから試験車通過時刻を含む 10 分間 の交通量 Q、 平均車頭時間 H、 車頭時間の標準偏差

一般的に鋼構造物をひずみゲージで計測を行う場合には,ケレン 等の事前の作業,計測後の塗膜の復旧などが必要で,作業時間が増

従来のコンタクトゲージ法(JIS A 1129-2)では,基長を 20cm とし,連続した標点数を増やすことによって 標点間の距離を長尺化できる

4.音源パワ−レベル 本モデルでの音源パワーレベルは、音響学会式 1)に基づいて、車速と車種から算出した。つまり、同一の車種と