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(1)

[特  集]

[インタビュー]

[事業報告]

[刊行物紹介]

平成13年度事業紹介 

フェローシップ招へい研究者インタビュー アジア情報懇話会、第5回ワークショップ 

自主研究3Bプロジェクト・4Bプロジェクト成果本、

研究誌「アジア太平洋研究」第8号

プラトゥアム・エームチャルーン《はすの葉の中の生の反映》

タイ/1980 福岡アジア美術館所蔵

(2)

[特  集]

平成13年度事業紹介

 アジア太平洋センターは、地球規模での国際化の進展という時代的・社会的流れを 背景に、「異なる文化理解」と「地方発展」を基本テーマに掲げ、「若手研究者育成」を推 進しながら、アジア太平洋地域の相互理解の促進と発展に寄与したいと考えています。

 平成13年度は、1992年10月の設立以来実施してきた事業の蓄積や、国際的な共同 研究等を通して築いてきた国内外の研究者・研究機関とのネットワークを生かして、

学術研究推進や市民のアジア太平洋地域への理解を深める事業、幅広い情報の収集・

発信等の各種事業をより一層充実させていきます。

 特に新規事業としては、第7期自主研究でプロジェクトを実施し、また、これまで にアジア太平洋センター若手研究者研究活動助成を受けた研究者及び自主研究参加者 を一堂に会し、「若手研究者フォーラム」として分科会及び講演会等を開催します。

●自主研究

 自主研究は、アジア太平洋センターが国内外の研究者や研究機関 とのネットワークを構築・拡充し、質の高い独自の情報を集積・発 信していく上での基幹事業として実施するものです。

●若手研究者研究活動助成

 アジア太平洋地域の異なる文化 理解の促進または地方発展に関 する研究に取り組んでいる若手 研究者(40歳未満で助教授クラ ス以下)の研究活動(海外現地調査

・国際研究会参加者招へい・研究 成果出版)を資金的に支援する

ことにより、その育成を図ることを目的とするものです。

 福岡県・佐賀県・長崎県・大分県の九州北部4県の研究者を対象に、

4月と9月の年2回募集します。

●フェローシップ

 アジア太平洋地域の若手・中堅研究者に日本における調査・研究 の機会を提供し、地元研究者との共同研究や交流を促進します。また、

招へい研究者との人的ネットワークの確立を図ることにより、アジ ア太平洋地域に関する学術研究交流を推進します。

●国際研究交流会議

 自主研究テーマをより広い観 点から討議するため、自主研究 のメンバーのほか国内外からの 研究者等を招いて、シンポジウ ムを開催します。平成13年度は 自主研究6Aプロジェクト及び6 Bプロジェクトの研究者を中心 に実施する予定です。

●日韓共同研究

 1993年の日韓海峡知事会議 での提案に基づき、日韓の10の 研究機関によって1994年に設 立された「日韓海峡圏研究機関 協議会」において、日韓海峡圏 の発展と繁栄を目的とした共同 研究を実施します。

「多民族国家にみるエスニシティ

       〜アジア太平洋地域における民族共生への模索〜」

研 究 主 査 片山隆裕  氏(西南学院大学文学部教授)

研究会構成 日本9、台湾1 計10名

学術研究推進

6Aプロジェクト(平成12年度から実施)

「アジアにおける技術革新と地域発展」

研 究 主 査 永野周志  氏(永野国際法律特許事務所弁護士)

          (九州大学大学院法学研究院客員教授)

研究会構成 日本3、韓国1、台湾2 計6名

6Bプロジェクト(平成12年度から実施)

「中国における『西部大開発』の戦略と実態〜雲南省の事例を中心に〜」(仮題)

研 究 主 査 波平元辰  氏(中村学園大学家政学部教授)

研究会構成 日本4、中国4 計8名

7Aプロジェクト(新規)

若手研究者フォーラム(新規)

 当センターの若手研究者研究活動助成を受けた研究者同士及び自主研究者とのネットワークをより一層強化するため、過去の若手研 究者研究活動助成者及び自主研究の研究者を一堂に会し、あわせて国内外の研究者を講師に招き、分科会並びに講演会等を開催します。

(3)

●市民カレッジ

 市民のアジア太平洋地 域に関する学習機会の提 供と理解の促進を図るこ とを目的とした連続講座 です。当センターの事業 活動の成果を生かしなが ら体系的な理解を図りま す。また連続講座の他に、

現在アジアで話題性の高

いテーマについて「市民セミナー」を単独講座として開催いたします。

●アジア情報懇話会

 アジアにかかわる企業・

団体・行政機関が、情報の 交流を通じて、多角的な 視点からアジアに関する 理解と認識を深めるとと もに、これからのアジア との交流について考える ことを目的とした意見交 換会です。

●福岡発・アジア太平洋研究報告

 平成12年度に若手研究 者研究活動助成を受けた 研究者が、助成を受けた テ−マに関し、市民、研 究者、企業関係者に対して、

研究報告を行います。

 福岡市のアジアマンス 事業の一環として10月に 報告会を開催するほか、

報告書を作成し、国内外の研究機関、大学図書館等に配布します。

●資料・情報の収集・発信

 アジア太平洋地域を理解する上で基礎的な情報である各国・地域 の新聞(10か国・地域、39種)・雑誌(14か国・地域、236種)をは じめ、同地域の相互理解を深める年鑑、統計書、白書等国内外の基 本文献を幅広く収集します。海外の研究機関との資料交換、現地で の直接購入などの方法により収集した、日・韓・中・英4言語の資料・

情報を広く市民の皆さんに公開しています。

 当センターは1998年5月にアジア開発銀行(ADB)の寄託図書館 の指定を受け、寄託資料として受け入れたADBの事業紹介やアジ ア太平洋地域にかかわる調査報告書等を一般に公開しています。(資 料受け入れ数:約1,100点)

    また、収集資料、データベースなどを活用したレファレンスサー ビスも行っていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

●定期刊行物

●自主研究成果の出版(平成13年度)

 4Aプロジェクト(中国語版)

  「中国東北の経済発展と北部九州の役割」

 4Bプロジェクト(英語版)

  「アジアの観光政策に関する比較研究」

 5Aプロジェクト(日本語版)

  「アジア太平洋諸国の分権」

研修交流推進

情報集積・発信

●研究誌「APCアジア太平洋研究」(日・英版)

●ニューズレター「アゴラ」(日・英版)

●APCニュース・レポート「中国動向」

●APCニュース・レポート「韓国動向」

●「福岡発・アジア太平洋研究報告」

●「年報」(日・英版)

●「図書目録」

●ワークショップ

 市民や研究者、企業関 係者を対象に、国内外の 研究者や有識者を講師に 招いて随時開催する講演 会で、「知的交流、情報交 流、相互啓発」の場を提供 するとともに、「情報」を 軸とした人的ネットワー クの拡充や相互啓発を促

進するものです。平成13年度は6回程度開催します。

(4)

[インタビュー]

 アジア太平洋センターのフェローシップ事業の招へ い研究者として、タイのベンジャーンジャイサイ氏が 来福され、"Public  Space  in  Fukuoka (福岡におけ る公共空間) "というテーマで調査・研究を行いました。

フェローシップ事業終了後ベンジャーン先生にお話を うかがいました。

フェローシップ 招へい研究者 インタビュー

4

●プロフィール

Benjang JAISAI

(ベンジャーン  ジャイサイ)氏

タイ・チェンマイ大学人文学部 日本語学科講師

1963年生まれ。

タイ・チェンマイ大学卒業。

成蹊大学大学院文学研究科修士課程修了。

1993年より現職。

先生の勤務されているチェンマイ大学について 簡単にご紹介いただけますか。

◆チェンマイはタイの北部に位置する北タイ最大の古都で、人口約 30万人の都市です。古い歴史や自然豊かな街並み、山岳民族村へ のトレッキングの起点ともなっていることから、観光地としてご存 じの方も多いのではないかと思います。

 チェンマイ大学は、1964年に設立され、教育、研究、文化・芸 術の保護育成、地域サービスの4つの活動を行ってきました。大学 には、医歯薬系、理工系、社会科学系なども含めて約17の学部が あり、人文学部には日本語学科の他に、ドイツ語学科、中国語学科、

サンスクリット語学科、歴史学科、哲学科等があります。私の所属 している日本語学科では各学年20名程度の生徒数で少人数制教育 を行っており、その内容は日本文化や歴史ですが、最近では特に現 代の日本事情の講義に力を入れています。日本語学科は人気がある 学科の1つで学生の数も増加しており、日本に対する関心の高さを 感じています。

今回のフェローシッププログラムで取り組まれ た調査内容等を教えて下さい。

◆一口に公共空間といっても教育や歴史、レジャーなど様々な面に 分類されますが、今回は主として、自治体主導で行っている公共空 間について調査・研究を行いました。具体的には、福岡市のマスタ ープランや都市計画について総務企画局や都市整備局などでブリー フィングを行い、博物館や図書館、防災センター、健康づくりセン ターなどの施設を訪問し、関連資料もいただきました。

 今回のヒアリングで特に私の印象に残ったことは、このような公 共空間の整備に携わっている組織のメンバーが、単に行政の都市計 画担当の人だけではなく、市民、民間企業の他、社会学、経済、建築、

環境学など様々な分野の研究者等で構成されており、市民がより利 用しやすい公共空間づくりを目指して共同で作業をしているという ことです。チェンマイではまだ中央政府の影響が大きいので、公共 施設などを作る際に市民の声があまり反映されていないという実情 があります。

今回のテーマは「パブリックスペース (公共空間) 」 ということですが、アジア太平洋地域に多数あ る都市の中でも特に福岡市の 「公共空間」 を研究 対象にされた理由は何ですか。

◆私の専門は日本研究で、日本の歴史や社会、特に現在の様々な社 会問題について研究し、学生に講義していますが、今回は、その社 会形成のうえで密接な関係にあると考えている公共空間について調査・

研究を行いたいと思いました。福岡市が、香港の雑誌「アジアウイ ーク」で行った調査で過去にアジアで最も住みやすい都市の第1位 になったことから、以前から福岡市の魅力ある街づくりには興味を 持っておりましたので、今回は、福岡市の公共空間における政策・

方針、担当する組織の構成や、公共空間の目指すモデルについてぜ ひ調査したいと思いました。

 また、チェンマイは長い歴史や文化、伝統を持つ地方都市である 一方、福岡市はアジアの玄関口として大陸との長い交流の歴史を持 つとともに、商人のまちとしての博多の歴史を有している九州最大 の都市ということから、様々な側面からチェンマイとの比較分析が 可能であったことです。それから、日本の京都について調査・研究 しているチェンマイの学者は多数いますが、福岡についてはまだ少 ないことから、福岡の情報をもっとチェンマイの人に知ってほしい と思いました。

チェンマイフラワーフェスティバル

ヒアリング風景

(5)

日本で調査を行われた結果、チェンマイ (タイ)

の公共空間と比較して、日本の状況については どのような印象を受けられましたか。

どうもありがとうございました。

マレーシア特集 最終回

 このコラム「マレーシア特集」は、4回にわたってシリー ズで掲載し、マレーシアの様々な社会、文化、教育事情など について、九州大学大学院人間環境学研究院講師の竹熊  尚夫 さんに書いていただいているものです。

●最終回は妻(竹熊真波:福岡国際 大学助教授)との共同執筆というこ とで、マレーシアでの生活について ご紹介したいと思います。

●マレーシアでの子連れ生活で良か った点もたくさんありました。マレ ーシアの店員さんはたいていの場合 無愛想で、愛想笑いになれている日 本人からすると「怒っている」様にも 見えます。ですが、ほぼ例外なく子 ども好きなので、子供と一緒にお店 に行くと、驚くほどにこやかに迎え てくれ、「かわいい、かわいい」と子 どもの頬をさわったり、「いくつで すか」と子どもの話に花が咲き、サ ービスがよくなったり、などといっ たことがよくありました。嫌な雰囲 気のタクシーに乗り合わせた場合で

も、お金を払う段階で、娘が「テリ マカセ(ありがとう)」とマレー語で お礼を言った途端に「オウ、サマサ マ〜!(どういたしまして)」と車内 が急に明るくなり、何事も起こらず に済んだ、等といったことは1度や2 度ではありません。また、レストラ ンなどで子どもが騒いでも、誰ひと り嫌な顔をする人はいませんでした。

●クアラルンプールでは日系のデパ ートも多く、伊勢丹やジャスコ、そ ごうなどで、日本の食材も豆腐や納 豆を始め、子どもの好きなポケモン のお菓子に至るまで手に入りました。

紀伊国屋書店もあり、大人は勿論子 供向けの絵本や雑誌も揃えてありま した。ただし、日本の1.5倍の値段 なので、現地の生活になれてくると、

あまりの高さに敬遠するようになり ました。例えば、日本食レストラン で食べる親子どんぶり一杯の値段で、

ローカルのフード・コートでは大人 3人がおなかいっぱいお昼を食べる ことができます。何しろ、大卒者の 初任給が4万円程度ですから、大体 日本円で3000円くらいが現地では1 万円の感覚です。しかし、地元のス ーパーでも、青野菜や肉類は勿論、

マンゴー、パパイヤといったトロピ

カルフルーツ、高原で採れるイチゴ などが豊富で安く手に入り、また美 味でした。海外のものは日本からの もの以外は殆どが安価でした。例え ば、今でも何故か分かりませんが、

日本以外の輸入コーヒー豆はブルー マウンテンとオリジナルコーヒーが 同じ値段でした。

●マレーシア、クアラルンプールに 住む日本人は日本志向の強い人々と 現地志向の強い人たちとに分けるこ とができます。前者は日本人社会に 閉じこもって、家の中で日本のBS 放送を見たり、日本食材店やレスト ランを渡り歩いたり、近所も日本人 ばかりであったり、会社でも日本人 とだけ接したり、というもので、ク アラルンプールのような大都市では 十分に可能です。2・3年しか滞在し ないということが前提であれば、日 本の情勢に遅れずに付いていくこと が帰国後の生活に適応するために必 要なのです。一方で、国際結婚やこ ちらで職を見つけて生活している人々 の多くは定住志向が強く、マレーシ ア的な生活様式を大事にしています。

家族との時間を大切にし、日本の常 識にそれほど縛られることもなく、

一匹狼的にマレーシア社会に入り込 んでいく気概を持っています。こう した違いは、保育園、幼稚園、小・

中・高等学校そして、どの大学に進 んでいくかという教育のコース(ひ いては人生のコース)の選択におい ても、違いを見せます。まず、日本 人学校か現地校か、インターナショ ナルスクールかそして、高校以上で

は日本に帰国進学するか、シンガポ ールなどに行くか、より海外に踏み 出すか、マレーシアの大学に進むか などです。選ぶのは大変ですが、将 来の選択肢がいろいろあるというの は良いことだと思います。

●私たちがマレーシアでいろいろな 人の生活に触れるなかで、エキゾチ ックな「異国の地」や「異文化」をエン ジョイすると共に、しばしば交流に ついて考えさせられることがありま した。百年も前からこの地に訪れ、

若くしてなくなった「からゆきさん」

や移民開拓団をはじめ、大戦にかか わる双方の方々、そして今ローカル スタッフと入り交じって働いている 日本の方々の存在や、また日本語を 学んだり、留学したり、現在も日本 に関心を持っていらっしゃるマレー シア人の方々との交流や歴史は「遠 いけれどけっこう近い関係」を意識 させます。どこかで誰かと不思議に 繋がっているという感じで、これが グローバルマインドへのファースト ステップなのでしょうか。

〈プロフィール〉

竹熊 尚夫(たけくまひさお)

1963年生まれ。九州大学大学院 教育学研究科終了、教育学博士。

専門は比較教育学。昨年2月まで 約10ヶ月間調査・研究のためマ レーシアに滞在後帰国し現職。

豊富な食材がならぶマーケット 視察風景

チェンマイ  ナイトバザール

◆タイと日本ではそれぞれの国の状況も異なりますが、タイの公共 空間への考え方がまだ建物等についてのハード面重視で、国や自治 体の予算面でも市民への教育や福祉などのソフト的な分野に行き届 いてないのに対して、日本ではソフト面での要素も取り入れて、ハ ード面とソフト面をうまく組み合わせることによって多目的に公共 空間を利用しています。このことは、都市を活性化するという点に おいてかなり魅力的だと言えます。こういった福岡の公共空間のモ

デルは、今回の調査結果として、今後タイの自治体の公共空間の方 針を考える際の参考としたいと思います。

 最後に、日本では今後高齢者の人口がますます増えていく中で、

高齢者の方も身近に利用できるような公共空間づくりを進めている ことと思います。物質的な面の整備ももちろん重要ですが、高齢者 も若者も皆が生き生きとした社会を作っていけるように、お互いを 気遣いながら生活するような精神的な面も大切にしてほしいと思い ます。

(6)

[事業報告]

〈懇話会での主な内容〉

●中国政府が観光目的による海外渡航先として認めている国は日本 を含む8カ国である。

日本への渡航は北京市、上海市、

広東省の住民(約1億人)に限定 されている。他にも、ツアー参 加の際の指定旅行会社、保証金、

人数、ビザの発給等で制限され ている。

●日本を訪れる中国人観光客の99%は、既に東南アジアへの旅行 経験がある人たちと言われており、単に旅行費用(7日間で約25万円)

を下げても、ホテルや食事等で一定の旅行内容を維持できなければ 満足しない。たとえば、宿泊ホテルはビジネスホテルでは満足しない。

また、観光では神社・仏閣より近代的工場や最新電気製品のショッ ピングに関心が高く、大型テーマパークや新幹線への憧れも強い。

●一般の中国人にとって日本は魅力的な国の一つであるが、大都市 である東京・大阪へ目が向き、九州は観光地としてはまだ注目され ていない。また、九州からの誘客活動も県単位のプロモーションを 行っているため、九州の魅力が必ずしも充分に伝わっていないのが 現状である。今後、中国人観光客の誘致を図っていくためには、九 州が一体となった取り組みを進めていくことが重要である。

第21回例会(2001年2月21日)

今回の例会は、「知られざる中国人の海外観光旅行事情」というテ ーマで、下記のとおり開催しました。

話題提供者:相原  勝義氏

(前九州観光誘致促進協議会事務局長)

         話題「中国における海外旅行市場の現状と今後の動向」

        (財団法人九州・山口経済連合会「中国における海外          旅行の動向に関する調査」より)

コメンテーター:橋本  修治氏

(福岡商工会議所企業研修センター長)

第5回   ワークショップ

テ  ー  マ:

講   師:

コメンテーター:

日   時:

会   場:

インド社会と宗教

〜仏教の変遷とその役割を中心として〜

カルパカム・サンカラナラヤン 氏

(国際日本文化研究センター客員教授)

中川  正法 氏

(筑紫女学園大学文学部アジア文化学科助教授) 

2001年2月28日 (水) 13:30〜15:30 天神ビル11階10号会議室

アジア情報懇話会開催

〈講演要旨〉

 カースト制度の起源は、

インドの宗教、哲学の根本 である『ヴェーダ』の四文 献のひとつにある。これに よると、原人の口からはバ ラモン階級が、両肩からは 身体的な力を示す王侯・軍 人階級が、両腿からは農商などの庶民が、そして最後に両足から隷 民が生まれたとされており、当時階級の上下は考えられていなかった。

しかし、儀式が重要になると司祭階級のバラモンが迅速にそれらを 学び上位にたち、階級社会が生まれた。当初カーストの階級の差は、

生まれによるものではなく、個人の資質によるものであったが、次 第に世襲が行われるようになり、生まれによるカースト制度へと移 行していった。こうして、社会の中で階級が確立され、物質的な幸 せや豊かさが求められるようになると、個人の道徳的性格や有徳の 生活には価値が置かれないようになった。そのような時期に、シャ カ族の王子シッダールタとマハーヴィーラ(ジャイナ教の開祖)が世 間の注目を浴びるようになった。

 シッダールタは、バラモンの有名な師の元で修行を積んだが、「人 生の最終目的は何か」と常に自問し、ある日菩提樹の下で瞑想をは じめ、真理を悟った。彼は、すべての苦しみのもとは欲望であり、

執着心を断ち切る努力をしなけ ればならない、人間は自分以外 の何者にも服従せず、自分の運 命を決めるのは自分であると説 いた。

 仏陀の死後100年後に仏教は、

二つの教派に分かれ、小乗仏教

はビルマ、スリランカ、タイなどに、大乗仏教は、中国、韓国、日 本に伝わった。一方、インドにおける仏教は、バラモン教との同化 が進んだ。

 インドで仏教が衰退した一つの大きな理由として、13世紀のイ スラーム教徒のインド侵入がある。多くの寺院やナーランダのよう な有名な仏教大学が破壊され、仏教の原典の多くが中国や他のアジ ア諸国に流出した。

その後インドは英国統治を受け、英国人支配者たちは、自らの利益 のためにカースト制度を利用し、バラモンに要職を与え、領主を優 遇することにより、差別を進めた。よって、仏陀の時代には事実上 姿を消していた階級差別が、英国統治時代に息を吹き返し、また宗 教における差別も芽生えた。

 英国のインド統治終焉後、インドの憲法草案に携わったアンベー ドカル博士は、踏みつけられた民(ダリト)を救うために、仏陀の教 えを掲げた。彼は、ダリトを守るための信念を「仏陀の教え」と呼び、

彼らの社会における地位向上のために、仏教徒に改宗させた。又、『マ ヌの法典』こそがカースト制度を重んじているとし、公然とその法 典を焼いた。

彼の教えは、仏陀の基本的な教義にはあまり触れていないため、「新 仏教(ネオ・ブッディズム)」と呼ばれている。

 現在インドでは、憲法によってあらゆる職業の人々が守られている。

しかし、増え続ける人口と経済状況とのバランスが保てず、真の意 味での社会における平等をもたらす障害となっている。ゆえに、イ ンド国外にいる人たちは、ヴェーダ時代にみられたカースト制度が 今でもインド社会に根付いていると思っているかもしれないが、職 業はどの階級に生まれたかではなく、個人の能力・資質で決まるの である。もちろん、世界中に見られるように、そうでない場合もあ るが。

 この懇話会は、業務としてアジアにかかわっている

企業・団体・行政機関が、情報の交流を通して多角的

な視点からアジアに関する理解と認識を深め、業務展

開上の参考としていただくことを目的とした意見交換

会です。

(7)

[刊行物紹介]

研究叢書8

  「高齢者福祉の比較文化−マレーシア・中国・

       オーストラリア・日本−」

 片多 順  編著

研究叢書10

  「21世紀の観光とアジア・九州」

 駄田井 正 編著

自主研究成果本紹介

【3Bプロジェクト】

自主研究成果本紹介

【4Bプロジェクト】

研究誌「APCアジア太平洋研究」

第8号を刊行

  本書は、福岡大学人文学部の片多順教授を研究主査とし、日本、

中国、マレーシア、オーストラリアの4か国・地域の研究者が参加 した3Bプロジェクト「アジア諸国の勤労者福祉現状に関する比較 研究−日本・中国・マレーシア・オーストラリアを中心として−」

(1997年度〜1998年度実施)の研究成果です。

 高齢者の福祉や介護、年金の問題が新聞やテレビ等で報じられ、人々 の福祉に対する知識と認識は広く深くなり、社会の高齢化が現実の 問題として大きくなってきています。その高齢化により発生する様々 な問題(体力の低下、病気、痴呆)については、個々の高齢者の問題

であるばかりか、それ以上に周りの家族や地域、そして社会全体の「福 祉」の問題として私たちの上に重くのしかかっています。

 本書では、このような問題を踏 まえ、「人間らしい生活を維持」

するためにどのような福祉的行 為が行われるかについて、中国(儒 教文化圏)、マレーシア(イスラ ム教文化圏)、オーストラリア(キ リスト教文化圏)に日本を加え た4カ国の現状を比較し、政 策や制度のみならず、文化的 側面も含めて様々な角度か ら分析・考察を加えること によって、それぞれの国に おける高齢者福祉の構造と 特徴の究明を目指すもの です。

 本書は、久留米大学経済学部の駄田井正教授を研究主査とし、日本、

韓国、中国、台湾、タイの5か国・地域の研究者が参加した4Bプロ ジェクト「アジアの観光政策の比較研究−日本・韓国・中国・台湾・

タイを中心として−」(1998年度〜1999年度実施)の研究成果です。

    本研究は、観光政策を単に観光関連産業の振興のためだけと考え るものではなく、ポスト工業社会の到来という視点、環境問題との

関連、世界平和への貢献などをも考慮した広い視野から見て、アジ ア諸地域の観光政策面における現状や特色を明らかにし、アジアの 観光全体を展望し、また、その視

点から北部九州の観光政策のあ り方に接近するものです。

 研究の過程では、研究会での 討論を重ねたほか、韓国、中国、

台湾、タイ及び日本で現地調 査を行い、また1999年6月に は中国・雲南省昆明市におい て、雲南省政府経済技術研 究センターのご協力を得、

国際研究交流会議を初めて 海外で開催しました。

 この度、当センターの研究誌「APCアジア太平洋研究」の第8号 を刊行しました。この研究誌では、当センターの基本テーマである「異 なる文化理解」と「地方発展」に沿った、アジア太平洋地域に関わる 実践的な研究や取り組みを取り上げ、アジア太平洋地域における学 術研究交流の推進と同地域が共に抱えている課題の解決のための一 助となればと考えております。

 第8号では、国・地域に視点をあて、南北首脳会談、IMF危機後 の経済の構造調整、そして儒教問題など、様々な面でドラスティッ クに歩み続ける現代韓国の政治・経済・文化などに着目し、国内及

び韓国の先生方に「現代韓国 を検証する」というテーマで 論じていただいております。

また、特集のほかにも国内外 の研究者や研究機関から多数 のご寄稿をいただいておりま す。入手ご希望の方は、アジ ア太平洋センターまでお問い 合わせください。

7

(8)

福岡市総合●

図書館  RKB● TNC●

西新駅 福岡市営地下鉄

藤崎駅

●マリゾン

福岡ドーム ホテル シーホーク

福岡都市高速

●福岡市 博物館

●早良消防署 福岡タワー 南口バス停

西鉄バス アジア太平洋センター

(福岡タワー内)

編 集 後 記

テ ー マ:中国の社会問題と法:揺れ動く人治国家のゆくえ 日  時:2001年4月10日(火)13:30〜15:30

場  所:福岡市役所15階講堂(福岡市中央区天神1丁目8−1)

講  師:李 潔 氏 

     (中国・吉林大学法学院副院長・教授、西南学院大学法学部交換研究員)

コメンテーター:小川 雄平 氏 

     (西南学院大学大学院経営学研究科長・教授)

募集定員:150名 共  催:福岡市

●[アゴラ]は再生紙を使用しています。●[Agora]とは古代ギリシャの集会所、広場を意味する言葉です。

URL http://www.apc.or.jp   E-mail [email protected] 財団法人アジア太平洋センター

発  行  日/2001年3月31日

編集・発行/財団法人アジア太平洋センター       〒814-0001 

      福岡市早良区百道浜2丁目3番26号       福岡タワーセンタービル2階

      TEL092-852-1155  FAX092-845-3330 編 集 協 力/(株)アルコス

印     刷/白木メディア(株)

ニューズレター

Vol.9 No.32

古紙配合率100%再生紙を使用

第1回ワークショップ受講者募集

 3月1日から福岡市早良区のシーサイドももち海浜公園及び福岡タワー内で「中世博多展」が開催されて います。第1会場はNHKの大河ドラマ「北条時宗」のロケ地にもなった所で、中国人貿易商人「謝国明」

の館や「唐風寺院」などの中世博多の街並みが再現されています。700年も前に、中国との対外貿易港と して栄えていた博多の当時の歴史や文化を体感することができ、アジアとの交流拠点都市として発展して きた福岡の長い歴史の一面を知るよい機会となることと思います。

 4月からまた新年度事業がスタートしますが、このような福岡の歴史的背景を大切にしながら、「国際的 な比較研究交流センター」及び「アジア情報センター」を目指して、より充実した事業を推進していきた いと思います。〈K〉

■表紙

 プラトゥアム・エームチャルーン      《はすの葉の中の生の反映》

タイ/1980 福岡アジア美術館所蔵 1枚の蓮の葉の中に、光に満ちた天上界や人間の生が 混沌とうごめく地上界、といった仏教的世界観を描 いた作品。タイの画家プラトゥアムは、伝統的な図 像や様式に頼ることなく、自然のモチーフの中に、

独特の精神世界を表現する作家である。

◆年会費(毎年度継続して納入いただきます)

 個人:1口   3,000円   法人:1口 30,000円

●賛助会員の特典

 ○センターが発行しているニューズレター「アゴラ」や   ニュースレポート「中国動向」・「韓国動向」、研究誌「A   PCアジア太平洋研究」等の刊行物をお送りいたします。

 ○センター主催の講演会、ワークショップ等にご案内い   たします。有料のものは受講料が割引になります。 

 ○企業内セミナーなどの講師についてご相談に応じます。

ほかにもいろいろな特典がありますので、この機会にぜひご入会ください。

当センターの事業・趣旨に賛同し、アジア太平洋地域の知的交流や国際理解を深めるためのAPCの活動を応援して いただける賛助会員の方を募集しています。会員には個人、法人の2種類があります。

今回新たにご入会いただいた会員の皆様をご紹介いたします。

ご入会誠にありがとうございます。

●個人会員

 高柳 賢治  鳥取 房芳  早野   勝  森下 孝男

●法人会員

 株式会社リングァ・ギルド 

   ●お申し込み・お問い合せはこちらへご連絡下さい!

   〒814-0001  福岡市早良区百道浜二丁目3-26 

   福岡タワーセンタービル内 財団法人アジア太平洋センター     事業企画係  Tel: 092-852-1155   Fax: 092-845-3330   【9:30〜17:30 土曜、日曜、祝日は休みです】

アジア太平洋センター(APC)賛助会員募集中

(五十音順・敬省略)

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