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(1)

[特  集]

[インタビュー]

[事業報告]

[コ ラ ム]

[レポート]

平成14年度事業紹介

フェローシップ招へい研究者インタビュー APCフォーラム、機関訪問、

第5・6回ワークショップ、アジア情報懇話会 タイ特集第4回

雲南紀行

イスマイル・モハメド・ザイン《このドアは次のドアへと続いている No.2》

1989/マレーシア 福岡アジア美術館所蔵

(2)

[特  集]

平成14年度事業紹介

 アジア太平洋センターは、グローバル化の進展という時代的・社会的流れを背景に、

「異なる文化理解」と「地方の発展」を基本テーマに掲げ、アジア太平洋地域の相互理解 の促進と発展に寄与したいと考えています。

 平成14年度は、1992年10月の設立以来実施してきた事業の蓄積や、国際的な共同 研究等を通して築いてきた国内外の研究者・研究機関とのネットワークを生かして、

学術研究推進や市民のアジア太平洋地域への理解を深める事業、幅広い情報の収集・

発信等の各種事業をより一層充実させていきます。

 特に新規事業としては、第8期自主研究プロジェクトを実施するほか、APCの設立 10周年を記念して、記念シンポジウムやスタディ・ツアーを開催します。

●若手研究者研究活動助成

 アジア太平洋地域の異なる文化理解の促進または地方の発展に関 する研究に取り組んでいる若手研究者(40歳未満で助教授クラス以下)

の研究活動(海外現地調査・国際研究会参加者招へい・研究成果出版)

を資金的に支援することにより、その育成を図ることを目的とする ものです。

 福岡県・佐賀県・長崎県・大分県の九州北部4県の研究者を対象に、

4月と9月の年2回募集します。

●フェローシップ

 アジア太平洋地域の若手・中堅研究者に日本における調査の機会 を提供し、福岡市等在住の研究者との交流を促進することにより、

同地域における国際学術研究交流に寄与するとともに、将来の知的 リーダーである当該研究者に、九州、ひいては日本への理解を深め てもらうことを目的としています。

●日韓共同研究

 1993年の日韓海峡知事会議での提案に基づき、日韓の研究機関 によって1994年に設立された「日韓海峡圏研究機関協議会」において、

日韓海峡圏の発展と繁栄を目的とした共同研究を実施します。

「中国における『西部大開発』の戦略と実態

       〜雲南省の事例を中心に〜」

研 究 主 査 波平元辰 氏(中村学園大学家政学部教授)

研究会構成 国内5、中国4 計9名

学術研究推進

7Aプロジェクト(平成13年度より継続)

「アジアの都市における共生社会のビジョン」(仮題)

研 究 主 査 出口 敦 氏(九州大学大学院人間環境学研究院助教授)

研究会構成 国内4、中国1、韓国1 計6名

8Aプロジェクト(新規)

「アジアのコーポレート・ガバナンス

         −そのダイナミズムと多様性の構造−」(仮題)

研 究 主 査 森 淳二朗 氏(九州大学大学院法学研究院教授)

研究会構成 国内4、中国2、韓国1、タイ1 計8名

8Bプロジェクト(新規)

●自主研究

 自主研究は、アジア太平洋センターが国内外の研究者や研究機関 とのネットワークを構築・拡充し、質の高い独自の情報を集積・発 信していく上での基幹事業として実施するものです。

●国際研究交流会議

 自主研究テーマをより広い観点から討議するため、自主研究のメ ンバーのほか国内外からの研究者等を招いて、シンポジウムを開催 します。平成14年度は自主研究7Aプロジェクトの研究者を中心に 実施する予定です。

(3)

●市民カレッジ

 市民のアジア太平洋地 域に関する学習機会の提 供と理解の促進を図るこ とを目的とした連続講座 です。それぞれの国・地域 の政治、経済、社会、歴史、

文化、風俗、習慣などにつ いて体系的な理解を図り

ます。また連続講座の他に、現在アジアで話題性の高いテーマにつ いて「市民セミナー」を単独講座として開催いたします。

●アジア情報懇話会

 ビジネスの国際化に関 心を持つ企業の実務担当 者等に対し、アジア太平 洋センターのネットワー クを活用して、アジアに 関する話題を提供するこ とにより、参加者間のネ ットワークの拡大や相互

啓発できる機会を提供することを目的とした意見交換会です。

●福岡発・アジア太平洋研究報告

 平成13年度に若手研究 者研究活動助成を受けた 研究者が、助成を受けた テ−マに関し、市民、研 究者、企業関係者に対し て、研究報告を行います。

 福岡市のアジアマンス 事業の一環として10月に

報告会を開催するほか、報告書を作成し、国内外の研究機関、大学 図書館等に配布します。

●10周年記念シンポジウム(新規)

 アジア太平洋地域の相互理解の促進、同地域研究の活性化及び人 材育成に寄与することを目的として平成4年10月に設立されたアジア 太平洋センターは、平成14年度に設立10周年を迎えます。この10年 間の活動を振り返るとともに、アジア太平洋地域における新たな学 術交流のあり方等を考えるため、記念のシンポジウムを開催します。

●スタディ・ツアー(新規)

 設立10周年を契機に、市民が主体的に参加することを念頭に、

専門家と共にアジア太平洋地域を訪問し、現地の研究者等によるレ クチャーや訪問先での交流を通して、地域の状況や課題を学び、同 じ時代に生きるアジア太平洋の一員として理解や認識を深める機会 を提供するものとして開催します。

●資料・情報の収集・発信

 アジア太平洋地域を理解する上で基礎的な情報である各国・地域 の新聞(11か国・地域、39種)・雑誌(15か国・地域、236種)を はじめ、同地域の相互理解を深める年鑑、統計書、白書等国内外の 基本文献を幅広く収集します。海外の研究機関との資料交換、現地 での直接購入などの方法により収集した、1万冊を超える日・韓・

中・英4言語の資料・情報を広く市民の皆さんに公開しています。

2002年1月から貸出も始めました。

 当センターは1998年5月にアジア開発銀行(ADB)の寄託図書館 の指定を受け、寄託資料として受け入れたADBの事業紹介やアジ ア太平洋地域にかかわる調査報告書等を一般に公開しています。(資 料受け入れ数:約1,100点)

 また、収集資料、データベースなどを活用したレファレンスサー ビスも行っていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

●アジア太平洋データブック(新規)

 アジア太平洋地域の社会や経済の現状について市民の関心が高い テーマを設定し紹介するデータブックを、収集した資料・情報を活 用して、大学の研究者との協働で発行します。

●自主研究成果の出版(平成14年度)

  5Aプロジェクト(英語版)

  「アジア太平洋諸国の分権〜中央−地方の政府間関係の分析〜」

  6Aプロジェクト(日本語版)

  「多民族にみるエスニシティ  −アジア太平洋地域における民族共生への模索

−」

  6Bプロジェクト(日本語版)

研修交流推進

情報集積・発信

●定期刊行物

●研究誌「APCアジア太平洋研究」(日・英版)

●ニューズレター「アゴラ」(日・英版)

●APCニュース・レポート「中国動向」

●APCニュース・レポート「韓国動向」

「福岡発・アジア太平洋研究報告」

「年報」(日・英版)

「図書目録」

●ワークショップ

 市民や研究者、企業関 係者を対象に、国内外の 研究者や有識者を講師・コ メンテーターに招いて随 時開催する講演会で、「知 的交流、情報交流、相互 啓発」の場を提供するとと もに、「情報」を軸とした

人的ネットワークの拡充や相互啓発を促進するものです。平成14 年度は6回程度開催します。

(4)

[インタビュー]

 アジア太平洋センターのフェローシップ事業の招へ い研究者として、中国から蘇発祥氏が来福され、"福岡 とラサの環境問題に関する比較研究"というテーマで 調査・研究を行いました。フェローシップ事業終了後、

蘇先生にお話をうかがいました。

フェローシップ 招へい研究者

インタビュー

●プロフィール

蘇 発 祥

(ツアワンナンカ)

氏 中国・中央民族大学助教授

1964年生まれ。

中国・中央民族学院歴史学系卒業。中央 民族大学大学院博士課程修了後、北京民 族文化宮職員、中央民族大学講師を経て 1999年より現職。

先生が勤務されている北京・中央民族大学につ いてご紹介ください。

◆中央民族大学は、1951年6月中央民族学院として、少数民族に 関する仕事に従事する漢民族及び少数民族の幹部を養成するために 設立されました。1990年代を境にして、総合文理科大学へと転身し、

1993年に中央民族大学と名前が変わりました。1999年には、国 家教育委員会の211プロジェクト(※1)に当選した、国家重点大学 の一つです。中国には少数民族関係の大学は13校ありますが、こ のプロジェクトに選ばれたのは、中央民族大学だけです。

 構成としては、10学部と独立した学系が7あります。専攻が41 あり、そのうち24にはマスターコース、9つはドクターコースまで あります。

 学内には学生、教職員を含め全部で8,000名が所属し、そのうち 教職員は1,400名程度おります。特色としては、民族関係の言語、

歴史の研究を中心とし、全国的にもトップレベルの大学です。

 私は、1996年から2000年まではチベット学専攻で、チベット の歴史と考古学、そして英語を少し教えていました。その後は、民 族学専攻で、宗教社会学、中国社会思想史、西洋社会思想史そして チベット考古学を教えています。

 学生については、チベット学専攻ではチベットの学生がほとんど でしたが、現在は満州族、回族、チワン族が比較的多いです。漢民 族は大学の定員の13%で、あまり多くありませんから、学内では 漢民族は少数民族になりますね。

(※1)211プロジェクト:21世紀に国家が重点的に予算配分する100大学

現在チベットでは都市化がすすみ、問題となって いるということですが、人々の生活はどうなって いるのでしょうか。現在の様子を教えてください。

また、日本についてはどのくらい知っていて、ど ういうイメージを持っているのでしょうか。

◆現在チベットでは、過去に比べると都市化が急速に進められてい ます。特にすすんでいるのは、ラサを頂点とした7つの行政区の行 政府所在地です。

 ラサを例にあげると、50年前には都市部面積は3万km2、人口は 3万人未満でしたが、現在は郊外を含め、51万km2に、40万以上の 人々が住んでいます。

 ラサでは、中心部居住者は主に国などの行政機関に携わっており、

周辺部では農業などの第1次産業に従事しています。この身分と居 住地の関係はあまりたやすく変わることはありません。中小都市の 人達のなかには、大学へ行って身分を変えたいという意識がありま す。ラサ郊外でフィールド調査を行った際、子ども達にどこの学校 へ行きたいかを尋ねたところ、1番は内陸都市部でチベットクラス がある学校、次にラサの学校でした。

 チベットでは、外国についてはほとんど知りません。私の日本に 関する知識は、大学時代に勉強したことと、映画で見た戦時中のこ とだけでしたので、今回来日して、実際はまったく違うということ がわかりました。初めて日本人に直接会ったのは、1991年にNHK の記者が取材に来たときでした。

 チベットでは、四川料理、麻雀、ビリヤード、ビールなどが流行 しているようです。都会のラサでは麻雀をするのが流行で、農村で は屋外にビリヤード台が並んでいて、多くの人々が楽しんでいます。

また、ラサにはビール工場があることもあって、ビールをよく飲み ますね。ラサは歴史的にイギリスの影響もあり、ラサ方言には、グ ラスやデスクなど英単語がそのまま使われることもあります。子ど も達が「グッドモーニング」と挨拶したりしますよ。

チベット学をご専門にされていますが、特にど ういった分野の研究をされていますか。

◆現在取り組んでいる研究は、3つあります。まず、メインとして いる「チベットの近代化問題」では、チベットの都市化と定住化の 問題について研究しています。

 それから、国家教育部(日本における文部科学省)から補助金を 受けて「歴代王朝のチベット政策」の調査を進めています。これは 私が1999年に出した博士論文で、100優秀ドクター論文に選ばれ

たものです。3つめは、かつての指導教官と共同で、金沙江流域の 原住民の生態環境、文化、貧困問題に関する調査プロジェクトを行 っています。

 それぞれテーマは異なりますが、基本的にはチベットにおける近 代化の問題について、従来の政策の経験、教訓を生かすために歴史 研究をし、社会学、人類学の手法を使って研究を進めています。

友人と

(5)

今回のフェローシッププログラムで取り組まれ た調査内容等を教えて下さい。

福岡大学  浅野直人教授からレクチャー

クリーンパーク視察

福岡女学院大学  丸山孝一教授からレクチャー

クリーンパークでのレクチャー 市長表敬訪問

◆今回福岡では3つのことを行いました。まず、福岡大学法学部の 浅野直人教授、福岡女学院大学人間関係学部の丸山孝一教授にお会 いして、お話を伺いました。そして、福岡市役所環境局や都市整備局、

関係団体でのヒアリング、そして現場を視察して現状を調査しました。

 環境に関連するプロジェクトとして、廃棄物処理場である、福岡 市臨海工場(クリーンパーク・臨海)とアイランドシティを視察し、

日本人の創造力には大変驚きました。クリーンパークは、ゴミ処理 場ではなく、博物館か美術館のように感じました。アイランドシテ ィは、すばらしい仕事をしていると思いました。土地が限られてい る上に人口が多いという点からして、行政がこの計画をすすめるこ とにしたということは理解できますし、関係各局が環境に配慮した 詳細な計画を持っているので、クリーンな環境になるだろうと確信 しています。

 また、東京、大阪への出張で、長年取り組んで来たチベット学の 貴重な資料を得ることができました。これは今後大きな成果につな がると思います。APCで綿密に計画していただき、受入れ側も真 剣に取り組んでいただき、大変充実した訪問ができました。

今回、福岡で調査・研究を行うことは、専門分 野の研究にどういった意味があり、またどうい った影響がありますか。

どうもありがとうございました。

◆結果は目に見える形で現れるでしょう。今回、福岡の環境政策や 環境問題への取組の実態がわかりました。私が取り組んでいる「ラ サと福岡の比較」というテーマを完成する上で、基礎的な部分を作 り上げることができました。1ヶ月という短期間ではありましたが、

多くの方々とお会いし、日本人のものの考え方、人との接し方を知 ることができ、自分の将来の生き方、教育・研究活動において何ら かの、そして大きな影響を及ぼすだろうと思います。日本人の几帳 面な部分は、研究者のみならず、中国人は見習うべきだろうと思い ました。

 私は17年をかけて山から都会へ出て行きました。そして20年か けて海外へ出ました、これをきっかけに世界で活躍できるかもしれ ません。福岡へ来たことが、自分の人生、研究の中で大きな転換点 になるかもしれないと思っています。こうした機会を与えてくださ ったアジア太平洋センターに感謝申し上げます。

福岡に滞在されて、どういった印象を持たれま したか?

◆福岡でもっとも印象に残ったのは、福岡市総合図書館です。その 蔵書数、設備には大変感激しました。中国の研究者もこうした施設 に恵まれれば、良い研究ができるだろうと思います。また、市役所 について、市民に開放されているという点が非常に驚きました。中 国では、こうした行政府関係の建物は敷居が高くて、大衆は気軽に は入れないからです。例えは良くないですが、スーパーマーケット のように誰でも入れて、休憩したり、用件があればカウンターで尋 ねたり出来るということは、来福前には想像してもいませんでした。

 場所に対する印象として、 Nice 、 Neat 、 Quiet 、つまり、

東京や大阪のように大きすぎず、生活や働く場所として理想的であり、

どこへ行っても清潔で、整理されていると感じました。逆に、街中 には人が溢れているのに、大変静かだなとも思いました。人々につ いては、 Polite 、 Kind 、 Busy 、という印象を持ちました。

それは、私がお会いした方々は皆さん丁寧であったということ、日 本語が話せないので、いろいろと困ったことに遭遇したとき、誰も が親切に対応してくれました。中国では日本人について、非常に勤 勉だと言われています。百聞は一見に如かずで、こちらへ来て、日 本人は本当によく働くし、忙しい人々だと思いました。日本経済が 世界のトップクラスである理由がわかりました。

 日本に再度来る機会があれば、福岡、京都、神戸を選ぶでしょう。

中国に比べると日本は、全体的にいろいろな意味でレベルは高いと 思います。

5

(6)

[事業報告]

アジア太平洋センター10周年記念事業APCフォーラム

−若手研究者研究活動助成フォローアップ事業−

日  時:

場  所:

2002年3月2日 (土) 分科会13:00〜15:00 記念講演会15:00〜17:00   天神ビル10号会議室

 若手研究者研究活動助成事業のフォローアップ事業の一環 として、APCフォーラム(1部分科会、2部記念講演会)を平 成14年3月2日午後1時から5時まで天神ビルで実施しました。

 記念講演会では最初に西南学院大学教授であり当センターの企画 委員会の委員長である小川雄平氏より若手研究者研究活動助成事業 についての説明があり、引き続き「グローバル時代を〈生きる〉」を テーマに早稲田大学政治経済学部教授の平野健一郎氏と西日本新聞 社常務取締役編集局長の玉川孝道氏による講演が行われました。

記念講演会

(15:00〜17:00)

「グローバル化時代のアジアの文化をどう考えるか」 

早稲田大学政治経済学部教授

 平野健一郎 氏

〈講演要旨〉 

 ここ10年、グローバリゼーションとい う言葉が耳に入らない日はない。アジア の人々がグローバリゼーションの中でど ういう風に生きているのかという実態が 不明のままに、グローバリゼーション論 が進んでいる気がする。このグローバリ ゼーションに対し我々が主体的に反応し ていく、そのための力の源を若手研究者のアジア研究が作り出していく のではないかと思う。

 1999年にタイのチェンライ近くにある村を尋ねた。それらの村では 日本へ出稼ぎ労働者を送り出している。日本に出稼ぎに行ったおかげで、

家を改築できたり新車などが買え、再度出稼ぎに行きたいと言っている。

一方では、日本に出稼ぎに行った親達に置いていかれた子ども達がいる。

そして、その子ども達の世話をボランティアがしている。グローバリゼ ーションは人の国際移動と捉えることができる。

 グローバリゼーションとは何か。藤原帰一氏の説によれば、「西欧化・

近代化」という側面、「米国の一極集中の覇権秩序」という側面、そして「市 場統合と相互依存」という側面を持っている。そのグローバリゼーショ ンに対しどういう態度をとれるだろうか。原田太津男氏の説によれば、人々

の生活が豊かになり、いいことではないかと肯定的に捉える「グローバ リスト」の立場、問題にすることはないと捉える「反グローバリスト(ノン・

グローバリスト)」の立場、望ましくないと捉える「非グローバリスト(ア ンチ・グローバリスト)」の立場がある。実際、グローバリゼーションを 冷静に考えると良い側面もあれば悪い側面もあり、多面的に観察する必 要がある。

 アジア(特に東アジアや東南アジア)における最近のグローバリゼー ションの特徴としては、西アジア(中東)に比べると原理主義の傾向が 比較的少ない。それはこれらの地域が他の地域と比べ、経済第一主義で、

世界の情報が既に入り込んでいるため極端に原理主義的にならないとい うことがあるかも知れない。アジアの歴史を振り返ると、19世紀中頃 から近代化という形でグローバリゼーションを経験している。アジアに おけるグローバリゼーションは、ヨーロッパやアメリカの全てが良いと する「近代化」ではない。つまり、外から来た異文化の言うがままにな るのではなく、異文化と接触した上でそれを変え、自分たちの生き方に 相応しい文化に変えていく「再帰的近代化」と言える。

 アジアの人々はグローバリゼーションの犠牲になるのではなく、工夫 しながら自分たちに合わせて異文化を受け入れ「したたか」に生きていく、

つまりポジティブに楽しく生きていくことが可能なのではないだろうか。

「ジャーナリストが見た国際情報」  

西日本新聞社常務取締役編集局長

 玉川孝道 氏

〈講演要旨〉 

 情報社会の中でのグローバリゼーショ ンは日々の仕事と直結している。

 たとえば、ニューヨークのワールドト レードセンターで起きた事件は、遠い世 界のことではなく、福岡に住んでいる人々 にも直接連結する、つまり自分に重ねて 考えている。これまでは外信記事として、

外からのいろいろな情報を新聞を通して、ただ読者に届けていたが、今 や自分に直結し自分のことととして考えている。そして、この一場面の 背景の奥には、「個人的な友人が亡くなった」、「これは文明の衝突の象 徴である」、「何でこんな事が起きたのか」といった世界観、思想観など のあらゆる情報がある。つまり、グローバリゼーションとは世界が凝縮 し連結することである。情報が連結し多重性を持っている。またあの事 件以降、日米安保をどう考えるのか、憲法改正などの論議が連鎖して起 こり、我々は選択の場に立たされている。情報は連鎖性を持っている。

 湾岸戦争以来のアメリカが行ったコンピューターグラフィックを駆使 した戦争の画像情報。そこには無惨な死も血も流れていない。今回のア

フガンについても大量の情報を目にしながら肝心の人間の部分が抜け落 ちている。この非対称性を認識すべきである。

 これまで我々は情報をクロスチェックしてきた。ある情報に対し、反 対の情報を探し、同時にもしくは続けて新聞に掲載することにより、情 報を相対化してきた。つまり、読者が両方の情報を受け自分で考えられ るように、情報のバランスを取ってきた。今回のアフガン戦争では、ク ロスする情報がない。アメリカから大量の情報が、一方アフガンからは 全く情報がないといった、相対化されない情報が入ってくる。「我々は この情報はこういう風に考える」というアメリカの一方的な潮流の中で 翻弄されている。

 情報のグローバリゼーションの中で情報支配が行われているという認 識が我々にとって一番重要なことである。情報は作られるのである。

 我々が生きていくこれからの時代は、世界的な大きな仕掛けの時代で あることを認識すべきである。ある情報の背後にあるトータルとしての 仕掛けをおさえていかなければ、情報は読めない。情報を消化する力を つけ、何度も情報を反芻し、なおかつ「本当のものは何か」、「本当の情 報は何か」をつかみ直し、グローバリゼーションの社会を生きていかな ければいけない。

(7)

●コーディネーターからの一言

中国の経済発展と環境や企業経営について三つの 報告がなされた。ただ時間が足りなく、もう少し 報告時間・討論時間ともに長ければ良かった。こ れを通して若手研究者を中心とした相互の繋がり ができたのは重要である。

7

分科会

(13:00〜15:00)

 記念講演会に先立ち開催された分科会では、若手研究者研究活動助成者を中心に、テーマ毎に4つの分科会に別れ、若手研究者研究活動助 成者による報告及び活発な討論が行われました。

●第1分科会 WTO加盟後の中国のゆくえ

〈コーディネーター:西南学院大学教授 小川雄平 氏〉

●第2分科会 アジア民族の共生−教育の視点から

〈コーディネーター:(財)アジア太平洋センター理事長 権藤與志夫〉

●報告内容及び報告者

 ●WTO加盟後の中国家電メーカー  −海爾グループのケース・スタディを中心に/呉暁東(西南学院大学大学院)

 ●中国国有企業の経営者の年収について−深 市を中心とする/于文生(中国・深 大学管理学院講師)

 ●中国のゆくえ−極端的な楽観論と悲観論の間/ 紅(大分県立芸術文化短期大学助教授)

●報告内容及び報告者

 ●都市化に伴う移住と適応−北京朝鮮族を中心に/李頚松(九州大学大学院)

 ●漢語グローバリズムの中で−中国雲南省大理白族自治州における白語文の調査から考える/甲斐勝二(福岡大学教授)

 ●新疆における「民族教育」の多様性/リズワン・アブリミティ(立命館アジア太平洋大学講師)

 ●アジアにおける民族の共生−グローバル化の中の教育改革の視点から/中野和光(福岡教育大学教授)

●コーディネーターからの一言

4人の研究者一人ひとりによる報告は、15分の制 限時間があまりにも短いと感じさせるほどの充実 した内容をもつものであった。今後の研究成果の 発展が非常に楽しみである。

●コーディネーターからの一言

中国の少数民族に関する報告は今後当センターと しても継続して留意すべき視点である。また、ア メリカから見たアジアの教育についての報告は、

他分野からの視点を入れた研究という意味で今後 創造的な発展に貢献すると思われる。この刺激を 機にそれぞれが研究を深めてほしい。

●報告内容及び報告者

 ●ウイグル族のもう一つのイメージ−民間詩人の語りから/西原明史(安田女子大学講師)

 ●19世紀末以降のカム経営とチベット族のアイデンティティの再編成/蘇鳳鳴(九州大学大学院)

 ●母系社会におけるアイデンティティの形成−中国雲南省・摩梭(モソ)族を例にして/金縄初美(西南学院大学大学院)

 ●文化を摩擦する−多文化主義社会における先住民アイデンティティ文化の行方/飯嶋秀治(九州大学大学院)

●コーディネーターからの一言

いずれもフィールドワークに基づいて東南アジア での開発など現に進行している社会変化と人々の くらしの多様性が報告されたが、その根底にある 圧倒的な経済格差と、広い意味での教育の重要性 が指摘された。

●報告内容及び報告者

 ●在外フィリピン人労働者の労働・生活満足度およびその関連要因−日本・韓国・台湾の比較調査から/平野(小原)裕子(九州大学医療技術短期大学部助教授)

 ●シンガポールにおける日本の映像コンテンツ流通に関する省察/永松利文(立命館アジア太平洋大学助教授)

 ●東南アジアの食について/堀 康二(福岡教育大学教授)

 ●インドネシア・スマラン市での都市環境改善への取り組み−環境教育を中心として/三宅博之(北九州市立大学教授)

●第3分科会 文化摩擦とアイデンティティの葛藤

〈コーディネーター:福岡女学院大学教授 丸山孝一 氏〉

●第4分科会 東南アジアの開発と人々のくらし

〈コーディネーター:福岡大学教授 片多 順 氏〉

(8)

[事業報告]

【中央民族大学】

 1950年創立。中国の重点総合大学の1つで、学生の9割以上が少 数民族。全国各地にある少数民族向けの教育機関及び民族学院の最 高峰。中国の56全ての民族がここで学び、各国からの留学生も多い。

学内には少数民族の衣装等を展示した博物館も設置。

【上海浦東新区発展計画局】

 上海市浦東新区(上海市街地の東側、黄浦江と揚子江に挟まれた 約530km2の区域)の開発プロジェクトを担当。職員は12名で、専 門員で構成する諮問委員会を持つ。インフラ整備、浦東国際空港、

市街地からの地下鉄建設などを進め、10年間で急速な発展をもたら した。現在460m級の2棟の超高層ビルを建設中。また、浦東国際 空港には4本の滑走路(現在1本)を造る予定であり、市街地と浦東 空港を結ぶリニアモーターカーを建設中。建設はドイツの技術協力 を得て進められており、上海で成功した後は北京−上海間も繋ぐ予定。

《中国》 2002年2月22日〜25日

機関訪問

 当センターでは、国内外に開かれた「アジアの情報 センター」としての機能を充実していくため、 「情報源」

となる国内外の「人」や「機関」とフェイスtoフェイス の交流関係を維持・開拓する、機関訪問を行っています。

《フィリピン・タイ》 2002年2月17日〜23日

中央民族大学  任中夏副学長とAPC 権藤理事長

北京大学校内

フィリピン開発問題研究所 所長・スタッフと

タマサート大学 東アジア研究所内の日本庭園

【北京大学文化産業研究所】

 99年3月設立。構成員8名。「文化産業」の定義は、ゲームを含む 娯楽、出版、メディア、マルチメディア、映画、芸能活動。今後、

これが産業として成立するか否か、文化開放時に外国企業はどこま で参入できるか。国の支配をどこまでなくすか。競争力ある産業と して育てるのに何が必要かの研究を行う。また人材育成も重要な柱。

研修プログラムには、米国の財団が10年間資金助成を行う。講師 は文化産業に携わる企業のトップや中間管理職・行政部門の現場担 当者・学者で産官学が連携。その他、企業や行政の文化産業に対す

るコンサルタント請負や、特に中国への企業進出が多いドイツや米 国の調査・研究も行う。

*「文化」はイデオロギーの問題であり、政治問題に発展する可能性 があるため、これまで中国政府は「文化」と「産業」を一体化するこ とを認めていなかった。

 フィリピンの代表的な大学には、フィリピン国立大学、デラサル 大学、アテネオ大学などがあります。フィリピン国立大学アジアセ ンターは、500ヘクタールの広大な本学キャンパスの一角にあります。

アジアセンターには5万冊収蔵の図書室がありますが、図書予算が 少なく古い本も多く、日本の本も寄贈本に頼っている現状でした。

デラサル大学は鹿児島のラ・サールなどと同じくフランスの宣教師ラ・

サール兄弟の名を冠する学校の一つです。学費年間15万円とフィ リピンでは最高であり、都心に近く、教室は防音、空調を完備して います。また、卒業生で実業家であり現国連大使のユチェンコ氏か らの6億円の寄附でローマ時代の石造りを思わせる巨大な新校舎が 建設中です。8月竣工時には訪問先のユチェンコ東アジアセンター も新校舎に移転する予定とのことでした。

 タイの代表的な大学には、チュラロンコン大学、タマサート大学、

チェンマイ大学、カセサート大学などがあります。チュラロンコン 大学でも日本と同じ行政改革が進み、最近雇用した新しい研究者は

終身雇用ではなく1年契約とか不安定な雇用になってきているとの ことでした。タマサート大学東アジア研究所はバンコクから高速道 路で約40分かかるランシットキャンパスに建てられた立派な建物で、

大中小の会議室、資料室、レストラン、宿泊棟、茶室付きの日本庭 園などを持ちます。ランシットキャンパスがバンコク市内のタマサ ート大学移転をにらんだものかどうかは微妙な問題だそうです。現在、

文科系は1、2年の教養課程がランシットキャンパス、3、4年の専 門課程がバンコクキャンパスであり、工学部は1年から4年まで全 部ランシットキャンパスになっています。教師たちは都心のキャン パスがいいと言っており、学生は郊外のキャンパスの方が勉強に専 念できていいと言っているそうです。

 今回の機関訪問では大学の研究所以外に政府系の研究所も回りま した。今後のアジア太平洋センターの事業のためのネットワーク拡 大につながればと考えています。

(9)

[事業報告]

アジア情報懇話会開催

 この懇話会は、業務としてアジアにかかわっている企業・団体・

行政機関が、情報の交流を通して多角的な視点からアジアに関する 理解と認識を深め、業務展開上の参考としていただくことを目的と した意見交換会です。

懇話会での主な内容

●韓国語と日本語は、類似点が非常に多い。両国で普段使用されて いる何気ない言葉や、福岡、九州の地名には、よく似た響きの言葉

が数多くある。これは、両国の 言葉が以前は同一のものであり、

長い歴史のなかで、それぞれの 国の言葉として定着したと考え られる。また、昔からの風習の 中にも類似した点が数多くあり 両国の交流の歴史は計り知れない。

●2002年3月、福岡県と釜山の間を結ぶ光海底ケーブルの運用が 開始される。この日本−韓国ケーブル・ネットワークが「日韓IT光 コリドー・プロジェクト」として呼ばれている。このケーブルは無 中継で福岡−釜山を結ぶという特徴を持ち、大容量、低料金での利 用が可能となる。5月開催のFIFAワールドカップもこのケーブルに より両国に配信される。しかし、現状ではW杯後の利用方法がまだ 検討中であり、両国間で今後の利用が大きな課題となっている。

●21世紀はアジアの時代になるといわれる。いま、日本と韓国は そのアジアの中でリーダーシップを取ることを期待されている。日 韓両国は競争ではなく協調の関係を築かなければならない。今年の ワールドカップはそのよい契機となる。これから、日本と韓国はア ジアのリーダーとして共に協力して行かなければならない。

9 第5回   ワークショップ

テ  ー  マ:

講   師:

コメンテーター:

日   時:

会   場:

エネルギー問題からみる

東アジアの安全保障

李 弘 杓 氏

(名古屋大学大学院法学研究科助教授)

菅 英輝 氏

(九州大学比較社会文化研究院教授)

平成14年1月31日 (木) 13:30〜15:30 アクロス福岡大会議室

〈講演要旨〉

 北東アジアは最後の冷戦地帯と言わ れている。代表的な例が朝鮮半島だ。

しかし、最近は政治的・軍事的緊張は かなり緩和され、経済協力への雰囲気 が高まっている。特に、経済的ダイナ ミズムとの関係でエネルギーについて の安保的関心は高まっている。北東アジアの経済成長は速く、エネ

ルギーの安定した供給が大事だが、現状は不安定だ。今後の注目す べきポイントは、中国の石油需給だろう。改革開放後、経済成長に 伴い中国は、石油輸出国から輸入国へと変わった。国内の油田は老 朽化がすすみ増産は難しいため、海外からの輸入が不可欠となった。

 中国はまた南シナ海において、資源と海路確保のため安保政策を 再調整し、海軍力を増強しており、隣接国家の警戒が高まっている。 

 一方、エネルギー問題は紛争の火種になるだけでなく、地域間協 力を促す役割も果たせるだろう。日本や台湾、韓国など経済が発展 した国・地域が資本・技術を提供し、天然資源と労働力の豊富な中 国やロシアと資源開発において協力しあえば、資源消費国は安定し た資源を確保でき、資源保有国も経済成長を維持できる。

 北東アジアの多国間協力体制の構築が必要であるが、多国間協力 の経験の乏しさ、リーダーシップの不在、領土紛争などの緊張要因 により、活発な論議は行われているものの、実質的な進展は鈍い。

エネルギー問題の政治的側面だけでなく、その経済的側面も重要視 しなければならない。各国のエネルギー問題の緊急性から、ロシア の天然ガス共同開発が一番の早道であり、非政治的な分野で歩みよ ることにより、多国間協力体制への突破口を作り出す可能性が生ま れるだろう。

第6回   ワークショップ

テ  ー  マ:

講   師:

コメンテーター:

日   時:

会   場:

チベットの苦悩と希望

      〜 近 代 化 の 足 跡 を た ど っ て 〜 蘇   発   祥   氏

(中国・中央民族大学民族学系助教授)

唐 寅 氏

(アジア太平洋センタープログラムオフィサー)

平成14年3月13日 (水) 13:30〜15:30 市役所講堂

〈講演要旨〉

 「チベット」(Tibet)という言葉には 二つの意味がある。海外では一般にそ れをチベット族が居住する全地区と考 えられているが、今日の中国において これは狭くなって専ら「チベット自治区」

(=西藏)を指す用語となっており、自 治区を含めたチベット族の全自治地域は「藏区」と言う。中国政府 のチベット政策は基本的にこの「チベット自治区」を対象にしている。

 1950年代から80年代初期にかけて、「西藏」では社会主義政治体 制への移行が押し進められ、経済的に発展する機会はほとんどなか った。80年代以降、中国政府の「西藏」政策に変化が生じ、大規模 で長期的な西藏支援(援藏)政策が登場した。主な内容は、経済的 財政的援助、専門家派遣による援助、そして教育的援助である。代 表的な援助事業は「105項工程」である。1984〜86年に実施した

「43項工程」は、投資総額4億8000万元、資源開発、交通インフラ 整備、文化スポーツ施設、医療衛生、教育、商業施設、都市整備、

加工業などが主要項目であった。1994〜97年の「62項工程」は、

投資総額37億元、水利工事、農牧業、エネルギー、交通通信、文 化教育、医療衛生など各分野に及んだ。だが、このような外部から 与えられた援助は、必ずしも現地に根付いているとは言えず、社会 的効果はよく喧伝されるが、経済効率の面では多くの問題がある。

 昨年、西部大開発の一環として、青藏鉄道(チベット鉄道)の延 長工事が着工され、また「第4次西藏工作に関する座談会」では新た に大がかりな「西藏」援助プロジェクトも決定された。「西藏」は、

当分の間外部からの「輸血」援助に依存しなけれならないが、経済 を持続的発展させるために、最終的にチベット族は自助努力で自ら の伝統や実情にあう発展の道筋を見つけなければならない。これは チベットの苦悩であり、希望を見いだす方向でもある。

第24回例会(2002年2月27日)

 今回の例会は、「21世紀の新たな日韓交流」というテーマで下記 のとおり開催いたしました。

話題提供者 

 駐福岡大韓民国総領事館領事 李南教氏   話題:「言葉を通して見た日韓交流」

 財団法人九州経済調査協会調査研究部長

       高木直人氏(兼コーディネーター)

  話題:「日韓IT光コリドーについて」

(10)

[資料紹介]

ADB寄託図書館受け入れ資料紹介

タイ特集

●平成14年1月〜3月までの寄託図書

Human Capital of the Poor in Vietnam Fighting Poverty

Moving the Poverty Reduction Agenda Forward in Asia and the Pacific Social Capital, Local Capacity Building, and Poverty Reduction Finance for the Poor: Microfinance Development Strategy Policy on Gender and Development

Education and National Development in Asia Summary of the Handbook on Resettlement

Natural Resources Management and the Environment

Second Progress Report on East Timor            など

第4回

〈プロフィール〉

片山 隆裕

(かたやま たかひろ)

1957年生まれ 西南学院 大学文学部教授。九州大学 大学院教育学研究科終了。

専門は文化人類学。今年8 月まで12ヶ月間調査・研 究のためにタイに滞在後、

帰国し現職。

 この「コラム」は、33号から4回にわたってシリーズで掲載 しているものです。今年度は「タイ特集」とし、タイの様々な 社会、文化、生活事情などについて、西南学院大学文学部教授 の片山隆裕氏に書いていただきました。

Thailand

チェンマイ大学近くの街角携帯サービス

●お勧めの一冊

Asian Environment Outlook 2001

〈概要〉

 アジア太平洋地域は、森林、河川、湖、湿地、珊瑚礁など、もともと豊かな自然 に恵まれ、種の多様性に富んだ生態系を有する。

 しかし近年の経済・社会的発展は、アジア太平洋地域に住む人々の生活水準を向

上させる一方で、土壌、水質、大気汚染、森林の乱伐など、環境に大きな負荷をかけている。その要因 として、生態系の受容力を超えた人口の急激な増加、無秩序な都市化と産業化による温室効果ガスや環 境汚染物質の排出、エネルギーと資源の浪費などがあげられる。

Grow now and clean up later というのが、この地域におけるかつての政策であり、環境破壊は その結果である。しかし現在は世界的に持続可能な開発が提唱され、経済発展と環境保全を両立させる ために、環境教育の普及、クリーンテクノロジーの開発、環境税、市場ベースでの環境政策(例:排出 権取引)など、様々な試みが行われている。本書ではそれらの試みが詳述されている。 

●街角携帯サービスとネット屋   ―タイの通信事情あれこれ―

 タイでも携帯電話の普及はすさま じい。昨年12月から、市内と市外へ の携帯通話料が全国一律1分あたり4 バーツ(1バーツ=約3円)に引き下 げられ、今後さらなる普及に拍車が かかるだろう。ただ、端末の価格が 高い。最も高い端末だと3万バーツ もするので、庶民はなかなか手が出 せない。急速に普及しているプリペ イ ド 式 の 低 価 格 端 末 で も 3 0 0 0 〜 5000バーツ程度である。食堂のウ ェイトレスやガソリンスタンド従業 員の月給(3000バーツ程度)や大学 新卒公務員の月給(7000バーツ程度)

を考えると、これとて高い。

 ところで、携帯端末を購入すると 一定額の無料通話サービスがついて くる。例えば、筆者のプリペイド式 携帯だと、7900バーツの端末価格 に対して2200バーツの無料通話が

セットされている。携帯の通話料が 1分あたり8バーツだった昨年上半期、

チェンマイ市内のいたるところに「街 角携帯サービス」が出現した。携帯 端末を購入した人たちが、道路沿い に椅子とテーブルを出し、段ボール 紙やベニヤ板に「1分3バーツ!」と大 きく書いて、無料通話料分で携帯通 話サービスの商売をしているのである。

公衆電話が少ないため、利用者は結 構多い。チェンマイには、タイ北部 各県を中心に全国から仕事や学業の ためにやってきた人々が住んでおり、

彼らが故郷の家族や友人に電話する 際、しばしば公衆電話代わりに「街 角携帯サービス」を利用するわけで ある。携帯通話料が1分4バーツにな った現在、その数は少なくなったが、

それでも安くて便利だ。

 一方、一般の加入電話は、基本的 に市内1通話あたり3バーツである。

1通話あたりがこの料金なので、友 人との長話やインターネット接続の 折には大変お得だ。筆者の友人のチ ェンマイ大生A君(19歳)は、とき にガールフレンドと3時間も話すと いう。筆者もタイ滞在中には、毎日 1〜2時間インターネットをしている が、電話代を気にしなくていいので 精神衛生上よい(プロバイダ加入料 等は別途必要です)。また、観光都

市チェンマイには「ネット屋」(イン ターネットショップ)も多く、ここ に行けば1分あたり15〜20バーツで 国際電話がかけられる。インターネ ットも、1時間あたり15〜20バーツ でできるので、外国人観光客に混じ ってタイの若者たちもインターネッ トを楽しんでいる。「楽しんでいる」

と書いたのは、若者の多くがネット でゲームを楽しんでいるからだ。タ イ人の気質をあらわす「サヌック」(楽 しい!)の世界は、インターネット 時代の今も健在である。

(11)

[レポート]

唐  寅

(財)アジア太平洋センター プログラムオフィサー

雲南紀行

タイ族村 雲南 石林

麗江の民宿で働く摩梭(モソ)娘 大理 古城

雲南南部 愛尼(アイニ)娘 中華人民共和国

バングラデシュ

ミャンマー ベトナム タイラオス タジキスタン

パキスタン

雲南省

日本

台湾 大韓民国

朝鮮民主主義 人民共和国 モンゴル

ロシア連邦 キルギスタン

インド ネパール

ブータン

 1月下旬から2月上旬にかけて、中国の雲南省を訪問しました。

その目的は、福岡市博物館のスタッフに同行し、毎年夏休みに開催 する「体験学習展示会」のための資料収集でした。昆明、麗江、大理 を廻り、民族衣装をはじめ、楽器、そして生活用具など、現地の人々 の暮らしぶりを体感できる品々を買い集め、彼らの人生行事や日常 生活の様子もフィルムに収め ました。今年の展示会は盛り だくさんの内容で色鮮やかに 催されるのを今から楽しみに しております。

 雲南にはこれまで10回以上 は通ってきました。横断山脈(別 名雲嶺)の南に位置し、平均標 高が2000メートルもあるこの 地方は、日照に恵まれて、心 地よい気候、絵に描いている ような景色、そして多彩な民 族文化をもって訪れる人々に 感動を与えてくれます。雲貴 高原の大地に足を踏み入れる たびに、いつも感激で胸がい っぱいになります。

 のどかなタイ農村の雰囲気 をそのまま再現する西双版納(シ ーサンパンナ)、荘厳なチベッ ト仏教に包まれる迪慶(ディチ ン)、ミャンマーに隣接する怒江流域、そして「女児国」の聖なる永 寧瀘沽湖。山が一つ越えただけで景色も一変する土地柄なので、雲 南は旅人を引きつける不思議な魅力があります。

 また、カルスト台地の石林に住む撒尼(サニ)族、焼き畑農業を続

けている哈尼(ハニ)族、象形文字東巴(トンパ)や情死で知られる 納西(ナシ)族、そして母系制社会の名残で有名な摩梭(モソ)族、

ここに暮らす25以上の少数民族は、巨大民族に挟まれながら、複 雑な地形や多様な気候に適応した独自の文化を育んできました。各々 顔かたちや生活習慣も異なりますが、彼らと飲食を共にしていると、

なぜか気持ちが和み、安らぎを感じてしまいます。雲南の出会いは 旅人の心を豊かにさせてくれます。

 しかし、「植物の王国」、「動物の王国」、そして「漢方薬材の里」

と言われ、豊富な自然資源に恵まれながら、険しい山岳地帯と交通 が極端に不便だったため、これまでの雲南経済は大きく立ち遅れ、

基幹産業としてのたばこ産業だけが突出しています。また、極貧状 況に喘ぐ人口もまだ数百万もおり、そのほとんどは山間部に棲む少 数民族です。彼らの生活を知れば知るほど、胸に痛みを感じます。「西

部大開発」は、このような貧し い民衆の生活改善にも早く成果 を上げてほしいと願っています。

 「世界園芸博覧会 99」の開催 を契機に、美しい自然景観と豊 かな民族文化をメインにした雲 南観光は人気を博しています。

中国国内各地から訪れる観光客 はすでに年間5000万人に達し、

海外からも100万人以上を受け 入れています。日本人観光客は そのうち最も大きな部分を占め ているようです。納豆やこんに ゃく、そして着物の帯によく似 た納西族の肩飾り(披星戴月)、

いわゆる日本人の生活感覚に共 通するものがこの地で多く見受 けられることから、訪れる観光 客は口々に親しみを感じると話 します。

(12)

福岡市総合●

図書館  RKB● TNC●

西新駅 福岡市営地下鉄

藤崎駅

●マリゾン

福岡ドーム ホテルシーホーク

福岡都市高速

●福岡市 博物館

●早良消防署 福岡タワー 南口バス停

西鉄バス アジア太平洋センター

(福岡タワー内)

編 集 後 記

●[アゴラ]は再生紙を使用しています。●[Agora]とは古代ギリシャの集会所、広場を意味する言葉です。

E-mail [email protected] 財団法人アジア太平洋センター

発  行  日/2002年3月31日

編集・発行/財団法人アジア太平洋センター       〒814-0001 

      福岡市早良区百道浜2丁目3番26号       福岡タワーセンタービル2階

      TEL092-852-1155  FAX092-845-3330 編 集 協 力/(株)アルコス

印     刷/白木メディア(株)

ニューズレター

Vol.10 No.36

資料・情報室から

★アジア太平洋センター(APC)賛助会員募集中★

 今春は平年より暖かい日が続き、早めに桜が満開になりあわてて花見に行かれた方も 多いのではないでしょうか。今号の事業紹介でもありましたように、平成14年度には アジア太平洋センターが設立10周年を迎えるにあたり、記念事業をはじめ、新たな事 業も行って参ります。当誌も特集等の内容を充実させていきますので、皆様からのご意 見をお待ちしております。〈O〉

■表紙

 イスマイル・モハメド・ザイン   《このドアは次のドアへと続いている No.2》

 1989/マレーシア 福岡アジア美術館所蔵

「作家はマレーシア在住のマレー系アーティスト。祭 壇のような窓枠のような不思議な空間に、蝶が飛び、

魚が跳ねている。作家は、敷物や壁紙など室内装飾の イメージを組み合わせて画面を構成している。人物を 用いないその装飾的な表現は、偶像崇拝を禁じるイス ラムの教えを遵守するマレーシアのムスリムらしい表 現である。

◆年会費(毎年度継続して納入いただきます)

 個人:1口 3,000円  法人:1口 30,000円

●賛助会員の特典

○センターが発行しているニューズレター「アゴラ」やニュ  ースレポート「中国動向」・「韓国動向」、研究誌「APCアジ  ア太平洋研究」等の刊行物をお送りいたします。

○センター主催の講演会、ワークショップ等にご案内いた  します。有料のものは受講料が割引になります。

○企業内セミナーなどの講師についてご相談に応じます。

 当センターの事業・趣旨に賛同し、アジア太平 洋地域の知的交流や国際理解を深めるためのAPC の活動を応援していただける賛助会員の方を募集 しています。会員には様々な特典を用意しています。

今回新たにご入会いただいた会員の皆様をご紹介いたします。

ご入会誠にありがとうございます。

●個人会員  熊本 昌

●法人会員

 九鉄工業株式会社福岡支店  高砂熱学工業株式会社  ダイダン株式会社九州支社

●お申し込み・お問い合せはこちらへご連絡下さい!

〒814-0001  福岡市早良区百道浜二丁目3-26

福岡タワーセンタービル内 財団法人アジア太平洋センター 事業企画係  Tel: 092-852-1155   Fax: 092-845-3330 

【9:30〜17:30 土曜、日曜、祝日は休みです】

●貸出できる資料

 アジア太平洋地域への理解を助ける基本図書(年鑑、統計書、企業名鑑)や研究書など。

●利用時間:10:00〜17:30

●休 館 日:毎週土、日曜日、祝日(日曜日が祝日の場合はその翌日)

      年末・年始(12月28日〜1月4日)

●初めて借りるときには登録が必要です。登録内容が確認できるもの(学生証、免許証、

 保険証など)を提示してください。

アジア太平洋センター ホームページ   http://www.apc.or.jp

(五十音順・敬称略)

(3社)

(1名)

 当センターでは、平成14年1月7日より資料の貸出サービスを開始いたしました。

貸出冊数は一人3冊まで、貸出期間は2週間(返却日が閉館日の場合は翌開館日)です。

皆様のご利用をお待ちしております。 

■貸出サービスの開始

登録カード

参照

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