論文内容要旨
論文題名 Effects of preoperative cinacalcet hydrochloride treatment on the operative course of parathyroidectomy and pathological changes in resected parathyroid glands
(シナカルセト塩酸塩による前治療が副甲状腺摘除術に与える影響に関 する検討)
掲載雑誌名 Renal Replacement Therapy 3:49.
doi:10.1186/s41100-017-0131-x, 2017.
専攻名 内科系内科学(腎臓内科学分野)(横浜市北部病院)
氏名 竹島 亜希子
内容要旨
【緒言】末期腎不全では高率に二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)を併発し、
骨病変だけでなく血管石灰化や心血管障害の発症・進展にも関与すること が示されている。従来、SHPTの内科的治療としては血清リン(P)・カルシ ウム(Ca)の管理やビタミンD受容体作動薬(VDRA)の投与が行われ、治療抵 抗性のSHPTに対しては副甲状腺摘除術(PTx)が根治的治療として実施され てきた。2008年にCa受容体作動薬であるシナカルセト塩酸塩(CH)が臨床応 用されてからは内科的管理が比較的容易となり、PTxの頻度は大幅に減少 しているが、CHの副作用により継続が困難な症例やCHを含む内科的治療に 抵抗性を示す症例ではPTxが施行される。
【目的】CHによる前治療がPTxの術中経過や副甲状腺の病理組織所見に与 える影響を検討する。
【方法】当院で2002年4月~2014年12月にSHPTに対してPTxが施行された維 持透析患者194名を対象とし、CH投与歴のあるCH治療群(45名)と非CH治療 群(149名)に分けて後方視的に比較検討を行った。
【結果】対象の平均年齢は55.3歳、女性は44.3%(86名)、平均透析歴は13.0 年であった。両群で術前のP値と副甲状腺ホルモン濃度に有意差はなかっ たが(6.0 vs 6.3mg/dL, p=0.168, 662.4 vs 764.6pg/dL, p=0.21)、Ca値 はCH治療群で有意に低かった(9.7 vs 10.2mg/dL, p<0.001)。術前のP吸着 薬内服量とVDRA投与量に両群で差はみられず、CHの平均投与量は56.6㎎/
日であった。手術時間は両群で差はみられなかったが(103 vs 112分, p=0.062)、CH治療群で有意に摘出腺と周囲組織との癒着が多く(22.2 vs
4.7%, p<0.001)、摘出腺の総体積や最大腺体積が小さかった(1930.2 vs
2526.9mm
3, p=0.028, 1021.2 vs 1557.7mm
3, p=0.010)。摘出された計743 腺の副甲状腺について組織学的検討を行ったところ、両群で結節性過形成 とびまん性過形成の比率に差はみられなかったが(p=0.168)、CH治療群で 有意に嚢胞性変化や出血性壊死が多かった(30.2 vs 22.8%, p=0.046, 23.8
vs 13.1%, p<0.001)。【考察】これまでにも CH 治療によって腫大した副甲状腺過形成が退縮し、
嚢胞性変化や出血性壊死といった組織学的変化が引き起こされるという 報告がされているが、本研究でも CH 治療群で摘除副甲状腺の総体積およ び最大腺体積は有意に小さく、出血性壊死や嚢胞性変化は有意に多かった。
結節性過形成や組織学的変化がみられた副甲状腺の体積は CH 治療群で有 意に小さく、それらがみられなかった副甲状腺の体積は両群で差がなかっ たことから、CH 治療により副甲状腺の退縮が生じることが示唆された。
また CH 治療群で有意に副甲状腺と周囲組織との癒着が多くみられ、これ も CH 治療による副甲状腺の組織学的変化が関与している可能性がある。
【結語】CH 治療により副甲状腺に組織学的変化が生じ、体積縮小や周囲 組織との癒着を引き起こすことが示唆された。