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父親の育児ストレスに関する文献検討

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問題・目的

 多くの養育者は子育てに対し,様々な不安やストレ スを抱きながら過ごしている。従来の研究では母親が 子育てをしていくものという昔ながらの日本の風習が あり,母親と子育てについての研究が多くなされてき た。しかし,今現在では総務省(2018)が成長戦略の 一つとして女性の活躍を重視し,社会進出が進んでい ることから女性一人で育児や家事を行うことは困難と なっており,父親にも育児や家事が求められるように なってきている。また男性の育児に対する従来の伝統 的な性別役割分業という考え方から役割平等意識への 移行,核家族化の進行もあり,男性が育児に参加して いる場面が増えている。そのため,父親と育児に関す

る研究も増加してきたが母親と比べると未だ少ないよ うに感じられる。また,母親から父親への評価や評価 に伴うストレスなどについては多いが,父親からの視 点という研究は少ないように感じられる。

 以上のことから本研究では子育てをする父親の育児 ストレスに関する研究動向を整理し,今後の研究の発 展に繋げていくことを目的とする。

方  法

 文献対象選択は,検索キーワードを「父親」,「子育 て」,「ストレス」で CiNii Articles を用いた。検索す る際,項目は「論文検索」,「本文あり」を選択し,検 索した。結果65件がヒットした。このうち研究対象が 特集論文 

父親の育児ストレスに関する文献検討

羽倉 真理(白百合女子大学大学院文学研究科)

近年女性の社会進出が高まっているため,子育てを一人ですることが困難となってきて おり,父親も育児参加が求められるようになってきている。これにより育児ストレスは 母親だけが感じるものではなくなってきている。本研究は,子育てをする父親の育児ス トレスに関する研究動向を整理し,今後の研究の発展に繋げていくことを目的とした。

CiNii Articlesを用い,キーワードを「父親」,「子育て」,「ストレス」とした。年代に 関しては指定する条件が特になかったため今回は条件を設けず, CiNii Articlesの検索項 目「論文検索」,「本文あり」を選択し,検索した。ヒットした文献は65件あった。この うち対象が父親と夫婦であり,育児ストレスに関して調査された26文献を分析対象とし た。対象が夫婦の場合,結果は父親のみを用いた。父親の育児ストレスを分類した結果,

「子どもとの関わりにおけるストレス」「夫婦関係によるストレス」「父親役割における ストレス」「育児行動によるストレス」「社会・経済的ストレス」の5つとなった。また 育児ストレスの要因は父親の年齢,健康度,母親とのコミュニケーション不足,母親の 父親への理解度,被養育態度,父親役割イメージと自己の一致度,子どもの行動特徴が 挙げられた。父親の育児ストレスを軽減する方法としては育児のためのプログラムに参 加する,母親とのコミュニケーションの場を設ける,父親同士の体験や気持ちを共有で きる機会を設けることが重要である。

【キー・ワード】父親,子育て,ストレス

(2)

父親でないもの,日本人ではないもの,国外を対象と しているもの,国外と比較しているものを選択より除 外し内容の確認を行なった。対象が日本人ではない・

国外としているものを除外した理由としては,文献の 数が少なく,日本人と比較することや国際の父親の育 児ストレスの傾向を見ていくには難しいと判断したた めである。今回母親ではなく父親について検討してい くため,母親との比較や夫婦で書かれている論文に関 しては父親の結果のみを用いていく。さらに発達障害 や持病,後天的な病気をもつ子どもの父親と定型発達 である子どもの父親の育児ストレスや支援は質が違う と推測されるため,今回は発達障害児や持病,後天的 な病気である児童の父親は対象から除外した。また,

年代に関しては指定する条件が特になかったため,今 回は年代に関する条件は設けなかった。最終的な分析 対象は26件であった。

 対象とした26件の文献について,年代別,研究目 的,対象者,結果・考察に分類し,父親の子育て研究 に関する研究動向と今後の課題について検討した。

結  果 研究の概要(Table 1)

 年代別にみると1995年から2000年では2文献,2001 年から2005年では2文献,2006年から2010年では11文 献,2011年から2015年では5文献,2016年から2020年 では6文献が公表されていた。

 研究デザインでは質的研究が1文献,量的研究が23 文献,文献研究が2文献であった。父親だけではなく,

母親の研究も共に行われていたのは13文献であった。

研究の概要(Table 2)

 対象者別にみると,乳児期の子どもの父親を対象と したものは5文献,幼児期の子どもの父親を対象とし たものは7文献,6歳以下といった乳幼児期の子ども の父親を対象としたものは13文献,年齢を限定してい ないものは2文献であった。

1.父親の育児ストレスに関する研究内容(Table 2)

 結果別に内容を分析した結果,父親の育児ストレス の種類は「子どもとの関わりにおけるストレス」「夫 婦関係によるストレス」「父親役割におけるストレス」

発表年 文献番号 著者名 文献名 研究のデザイン

質的 量的 文献 2019 1 白石知聖,高橋靖子 夫婦の被養育体験と育児ストレスが親役割達成感に及ぼす影響 2019 2 山下倫実,石田有理,加藤陽子 父親アイデンティティを規定する要因に関する探索的検討 2019 3 溝口巴奈,川田紀美子 初めて親になる男性における、父親としての発達とパートナーの里帰りとの関連 2019 4 窪田葉月,中野茂 父親の育児ストレスの要因を探る:―育児における夫婦の相互作用に焦点化

して―

2019 5 岩永祐人,大迫健,徳永瑛子,

田中悟郎,菊池泰樹,岩永竜一郎 幼児をもつ父親の育児ストレスと関連要因

2016 6 美甘祥子 生後4か月までの児を待つ父親の育児・家事行動と育児ストレスに関する文献レ

ビュー

2014 7 安成智子,神崎初美 育児支援プログラムに参加した父親の育児ストレス低下の特徴について

2013 8 佐藤淑子 育児期家族の生活と心理

2013 9 立林春彦,軽部厚 保育園児を持つ親の育児ストレスに関する要因の分析と比較―0歳児から6歳

児の親についての調査から―

2012 10 立林春彦,西村正子,吉岡伸一 保育園児をもつ父親と母親の育児ストレスと不安の比較 2011 11 渡邉佳子,島田友子 双子をもつ父親の気持ちと育児の現状、求める支援 2010 12 田中恵子 父親の育児家事行動・夫婦関係満足度の変化と母親の育児ストレスとの関連性 2008 13 桑名佳代子,桑名行雄,細川徹 1歳6か月児をもつ親の育児ストレス(2)両親間における育児ストレスの関連 2008 14 宮本知子,藤崎春代 日本における乳幼児期の子どもをもつ父親の研究動向 2008 15 清水尚子,住岡里永子,

岸田真由紀,眞鍋えみ子 育児期における父親の育児ストレッサー、ストレス対処、ストレス反応の関連 2008 16 四宮美佐恵,赤松恵美,青野梓 育児ストレスに関する調査(第2報)―父親と母親の比較― 2008 17 赤松恵美,四宮美佐恵 育児ストレスに関する調査第(1報)―父親と母親の比較―

2007 18 柳原眞知子 父親の育児参加の実態

2006 19 桑名佳代子,桑名行雄 1歳6か月児をもつ父親の育児ストレス:親役割認知および性役割態度との関連

2006 20 清水嘉子 父親の育児ストレスの実態に関する研究

2006 21 北村眞弓,土屋直美,細井志乃ぶ 子どもの年齢別にみた母親の育児ストレス状況とストレス関連要因の検討―

父親との比較に焦点をあてて―

2006 22 宮本政子,猪下光 乳幼児を養育する父親と母親の育児ストレスと関連要因 2004 23 中山美由紀,福丸由佳,小泉智恵,

無藤隆 ライフスタイルと家族の健康の横断調査:妊娠中の状況

2001 24 桑名佳代子,桑名行雄,坂上明子,

坂原純子,大沼珠美 乳児期における父親の育児役割とストレス

1998 25 岩田裕子,森恵美,前原澄子 父親役割への適応における父親のストレスとその関連要因 1996 26 初塚真喜子,石田雅人 子育てにおける母親と父親のストレス比較――母親の就労形態による差異

Table 1 年代別 文献一覧

(3)

Table 2 父親の子育てに関する文献の目的・結果別一覧

文献番号 目的 調査項目 調査対象者 父親に関する結果・結論

1 夫婦自身の被養育体験が育児 ストレスや親役割達成感に与 える影響。また夫婦間におけ る相互作用につい検討

①基本属性

②育児関与度の尺度(父のみ)

③育児ストレス尺度

④ 父親・母親自身の被養育体 験尺度

⑤親への愛着尺度

0歳から6歳の子 ど も を 持 つ 夫 婦 194名( 夫94名、

妻100名)

0歳代と比べ、2歳の子ども以上の年齢段階で親子関係ス トレスが増加し、子どもとの関係性の変化が示唆された。

父親は男児よりも女児の方が「育児関与度」が高い。また

「子どもからの愛情」に関して、高年齢になるにつれて愛 情の認知が高まるという結果が得られた。親役割達成感

「子どもからの愛情」においては育児ストレスと妻からの 親子関係、父親への愛着回避、父親への愛着不安が負の影 響を与えており、「子どものいる喜び」は父の応答性が正 の影響を与え、父への愛着不安が負の影響を与えるなど、

夫婦自身の被養育態度が大きく関連していた。さらに子ど もについて話す機会が多い妻との会話が多いと夫の自己評 価に正の影響を与えていた。

2 夫婦から家族へと関係性が移 行する時期と考えられる第1子 誕 生後の父 親を対 象として、

父親のアイデンティティの獲得 に育児ストレス及び育児行動 の自己評価がどのような影響 を与えるのか探索的に検討

①家庭環境に関する項目

②夫婦関係満足度

③父親の育児ストレス

④育児行動の自己評価

3歳未満の子ども が1名のみの家庭 の男性100名

父親アイデンティティは3因子構造であることが確認され、

親としての自信のなさ、親としての効力感に加え、親としての 自信と共に、自らの生きがいを優先する項目の負荷量が高 い自己優先的な親役割という因子が得られた。また、育児ス トレスや育児行動の自己評価が父親の親としてのアイデン ティティに及ぼす影響については育児ストレスの中でも「母 親の理解のなさ」及び「心身の疲労」は父親の親としての自 身を低下させたり、親役割を果たしていると評価しながらど こか自己優先的なアイデンティティを取得させる可能性があ ることが示唆された。また一方で育児行動については、育児 において「対子ども育児や」「対母親支援」を頻繁に行なっ ているということが父親アイデンティティの獲得に影響する が、その影響は育児ストレスや育児に対する心構えによって 左右される可能性が示された。

3 初めて親になった男性におけ る、父親としての発達とパート ナーの里帰りの有無および里 帰りに関する各要因との関連 についての検討

① 父親になることによる発達 尺度

②主観的幸福感尺度

③基本的属性

④里帰り形態

⑤ 里帰り期間中の父親の生活 実態

第1子出生後約1 か月経過した男性 345名

パートナーの里帰りの有無によって、産後1か月での父親と しての発達尺度得点に有意な差はみられなかった。「父親に なることによる発達尺度」と統計上有意さが見られたのは パートナーと連絡をとるなど、コミュニケーションが行われる ことであった。パートナーが里帰り期間中の男性に対し、母 子への積極的なコミュニケーションを促す支援が必要である ことが示唆された。また、育児に関する知識の提供や育児 家事行動について考える機会を与えることが重要

4 父親の育児ストレスについて、

育児負担感、育児幸福感、夫 婦の関係性について父親と母 親それぞれへの育児不安の要 因の違いを検討

先行研究で使用された育児ス トレス尺度、育児 不安尺度、

夫婦関係尺度、自己開示尺度、

育児幸福感尺度を参考に作成 した項目(詳細な記載はなし)

道内の保育園に通 う0歳から2歳児 どもをもつ夫婦(男 性32名、 女 性38 名計70名)

育児負担感は母親が有意に高い。父親は配偶者に対する我 慢と育児に対する我慢と育児に対する自信のなさの間に夫の 相関がみられた。また、父親の親密性と育児負担感、夫婦 の親密性と子どもの育てにくさでも負の相関が見られた。

5 父親の育児ストレスとその関連 要因を分析し、子どもの行動 の特徴や対処行動、ソーシャ ルサポート、抑うつ度が父親 の育児ストレスに対し、どのよ うに影響しているのかを見出す ことを目的とする

①基本的属性

②育児ストレスの程度

③ 育児ストレスに影響を与える 可能性のある要因

幼稚園、保育園に 通園している3歳 から6歳の子を持 つ父親86名

父親の育児ストレスには「子どもの行動特性」「ソーシャル サポート」「抑うつ度」が関連しているといえる。分析の結 果より、子ども「多動・不注意」傾向が強い、「抑うつ」状 態であること、「家族のサポート」が少ないという3つの状 態が相互に関連しあって父親の育児ストレスが高くなると示 唆された。そのため、3つの特徴をもつ父親に対しては特に 配所し、積極的に介入する必要がある。

6 生後4か月までの児を待つ父 親への育児参加の促進を促す ために医療者が行う支援を明 らかにすることを目的とする

記載なし 生後4か月までの

児をもつ父親

父親の育児ストレスの要因として「育児の大変さと疲労」「育 児不安」「戸惑い・困惑」「父親責任」「夫婦関係」「経済 的・社会的状況」であった。「育児の大変さと疲労」では「育 児のきつさ」「自分の時間ない」「なんとなくイライラする」が あげられた。「育児不安」では「子ども成長への気がかり」

「子どものことでくよくよ考える」があげられた。「戸惑い・困 惑」では「子どもの自己本位な特性」「子どもの哺乳量がわ からない」といった育児技術への戸惑いがあげられた。「父 親責任」では「父親としての責任をはたしていない」「自分に 対しての自信のなさ」があげられた。「夫婦関係」では「妻 の疲労」「妻との関係」「自分の行動への干渉」があげられ た。「経済的・社会的状況」では「困惑な仕事との両立」「混 沌とする社会事情」があげられた。また支援に関しては「育 児支援体制充実に向けた情報提供の工夫」「対象が望む伝 承への工夫」「入院中の家族への丁寧な対応」などが求めら れ、「休暇支援」「経済的支援」「育児環境設備」「教育的 支援」「社会的支援」も支援を求めているとあげられた。

(4)

文献番号 目的 調査項目 調査対象者 父親に関する結果・結論 7 育児支援プログラムに参加し

た父親の参加前後の育児スト レスの特徴を明らかにし、今 後の父親の支援の方向性につ いて考察。また育児支援プロ グラムの構成及び内容につい て評価する

育児支援プログラムの前後で 日本版育児ストレスインデック スにて育児ストレスを測定

子どもが未就学児 である父親5名(複 数の子どもをもつ 場合、末子が未就 学児である父親と した)

5名のうち4名の父親が育児支援プログラムを受けたことに より全体的な育児ストレスの低下が示された。育児支援プロ グラムにより、親の感じ方の変化が生じると育児ストレスの 低下へとつながると推測された。

9 育児ストレスの要因を明らかに すること、父親と母親の育児 ストレスの比較や要因を分析 し、多面的・体系的に把握・

評価することを目的とする

①基本的属性

②育児ストレス尺度(PSI)

0歳から6歳児を 持つ親合計446名

( 父 親221名、 母 親310名)

父親は子どもの特徴の項目「この子は私が嫌いで、そばにい たがらないと時々感じる」「私の子どもは、思っていたより ずっと笑わない」「私の子どもは、思ったよりずっと歩き回る」

お3つに対してストレスを感じていた。父親と比べ母親は育 児ストレス全般において有意に高かった。また、育児ストレ ス要因として父親、母親ともに子どもの言動・表情からスト レスを感じていた。さらに父親は親としての困惑感に対しス トレスを感じていた。

10 保育園児をもつ父親と母親の 育児ストレスや不安状態を調 査し、受けたストレスや不安が どのような要因と関連している のかについて検討

①育児ストレス

②不安状態

公立の保育園に通 う児(3歳から5 歳 ) をもつ 母 親

(719名 ) と 父 親

(304名)

育児ストレス尺度得点と不安尺度得点において母親と父親を 比較したところ、いずれも母親の方が高い。父親の尺度総 得点と下位尺度得点の比較では子どもの年齢で不安尺度と 総得点にて有意差がみられた。

11 多胎児の中の双子に焦点を当 て、父親の気持ちや育児の実 際について把握し、父親の視 点から求める支援を明らかに する

生後4・5か月の 双子を養育する父

父親は育児の楽しさを感じていたが、反面育児の大変さや 戸惑いなど、ネガティブな気持ちを表出していた。父親への 必要な支援として、特に双子の父親の気持ちや現状を理解 し、丁寧な対応で、伝承・伝達・提供を考慮した看護の重 要性が示唆された。

12 父親の育児家事行動・夫婦関 係満足度に着目し、出産早期 と6か月の比較により、その実 態を把握し、さらに6か月の 母親の育児ストレスと6か月時 点の夫婦の要因との関連につ いて検討する

①基本的属性

②父親の育児家事行動

③夫婦関係満足度

④ 父親の育児家事行動に対す る満足度

⑤性役割分担意識

⑥育児ストレス尺度

初めての子どもを もつ両親で、0か 月と6か月の調査 に 同 意し た 夫 婦

(73組146名)

「父親の育児家事行動の自己評価と他評価の比較」では父 親の家事行動得点の自己評価は0か月と比べ6か月は有意に 低かった。家事行動得点では料理や買い物が挙げられた。

また母親からみた評価では0か月より6か月の方が有意に低 く、料理や洗濯が挙げられた。精神援助行動得点でも同様 に自己評価、母親による評価ともに6か月が有意に低かった。

さらに育児助言や体調の気遣いも自己評価、母親からの評 価ともに6か月の方が低かった。このことから父親の育児家 事行動が0か月よりも6か月には父親の自己評価ならびに母 親からみた評価ともに低下していることが示唆された。さら に母親が父親の育児家事行動を好意的に受け止め満足感を もつことと深く関連しているという知見を今後の育児指導に 反映させていくことが示唆された。

13 1歳6か月児をもつ母親と父親 の育児ストレスについて、両親 観の関連と影響要因を明らか にする

①育児ストレス(母親には日本 版Parenting Stress Index、

父親にはストレス測定尺度(岩 田)を使用)

136組の両親を対象 父親の育児ストレスにて、ストレスが高得点であることには、

父親役割イメージと自己とが一致しないことが最も強く関連 し、次に母親の役割イメージと妻とが一致しないことであり、

さらに父親の年齢が低いことであった。また、育児ストレス 項目において、児の性別と出生順位が関連し、女児より男児 の父親、また第2子以降に比して第1子の父親が有意に高 値を示した。さらに母親の育児ストレス得点と父親の育児ス トレス合計得点には有意な正の相関が示された

14 日本における乳幼児期の子ど もをもつ父親の子育てに関す る研究の動向を概観・整理し、

これからの進められるべき研 究の方向性を提示する

記載なし 記載なし 母親のサポート源としての父親では家庭内での育児の役割 分担の役割の負担は今なお母親に集中しているという実態 があり、夫婦関係が良いことが母親の子育てによい影響を与 える。また夫の子育てへの参加が乳幼児期の世話の担い手 という子育てサポート以上の妻の心理面への長期的な影響 があると言える。子どもと父親との関係では男児にとって父 親は「男性意識」として、女児にとって父親は「父親役割肯 定観」が重要であるとされている。親としての発達について は母親と父親との役割獲得時期のずれが存在することを勘 案し、父親の意識の変化を丁寧にとらえる視点を持ちながら 父親の成長家庭を描いていく必要がある。父親のストレスで は母親と同じようにコミュニケーションの不足などについて悩 んでいる可能性があり、父親のストレスについても検討して いく必要がある。父親になることのサポートでは育児支援の 一つとして育児に対する父親の役割意識を高めるための支援 方略を考えるのではあれば、父親となる前の時期から子ども を理解し、関わる機会を増やしその上で父親同士が気持ち や体験を共有する場を作ることが必要

Table 2 父親の子育てに関する文献の目的・結果別一覧―つづき

(5)

Table 2 父親の子育てに関する文献の目的・結果別一覧―つづき

文献番号 目的 調査項目 調査対象者 父親に関する結果・結論

15 乳児をもつ父親の育児ストレッ サー、育児ストレス対処行動 と心理的ストレス反応との関連 を明らかにする

①育児経験

②父親の育児ストレッサー

③育児ストレス対処行動

④心理的ストレス反応

12か月までの子供 をもつ父親56名

子どもに肯定感情を抱いている者ほど育児ストレッサーは低 い。育児ストレッサーが高いと消極的な対処行動をとる。育 児ストレッサーと心理的ストレス反応は正の相関関係があっ た。消極的なストレス対処行動は心理的ストレス反応におい て無気力を呈する傾向があった。このことから父親が育児ス トレッサーを軽減し、積極的な育児ストレス対処行動をとる には、子どもに対する関心を高め、夫婦で育児に対する認 識を話し合ったり、育児技術を習得する支援が重要 16 育児をしている両親の、育児

観と育児に対してどのようなス トレスを感じているのかを明ら かにする

①属性

②育児状況

③育児観に関する項目

④育児ストレス

保育園に子どもを 預 ける父 親47名、

母親81名

育児ストレスが高かった項目は「不可解な事件や犯罪に子ど もが巻き込まれないか心配である」「就労している母親に対 する社会や行政の配慮が足りない」「教育環境が不便なので 子どもの行く末に不安を持つ」であった。また「子育てから 解放されて息抜きができる時間が少ない」「子どもの世話で 他のやりたいことができない」「子どもの世話で自分の自由 がきかないのがとても辛い」「育児で身体の疲れが溜まって いる」「子育ての毎日同じ事の繰り返しに嫌気がさしている」

「夫(妻)が子どもより自分の生活を中心に考えている」「夫

(妻)が子育てに協力的でない」「周囲の人に子どもの母親

(父親)としてしかみてもらえないのが辛い」「夫(妻)が私 の育児生活の苦労をわかってくれない」「いつか子育てに余 裕ができる頃に就職できるかが不安だ」「子育てに専念して いるため社会から取り残された気持ちになる」「育児のため に睡眠不足の日々が続いている」の項目にて父親と母親で有 意差が認められた。いずれも母親の得点が高かった。この ことから父親は積極的な育児参加と母親の上お的支援を 担っていくことが重要である。また、育児ストレスを軽減す るためには「夫は仕事、母親は家事・育児」という伝統的 な性役割観を取り除くことも重要としている。

17 父親、母親はどのような育児 ストレス抱えながら子育てをし ているのか、また父親・母親 の育児ストレスの内容に相違 はあるのか知るために調査を 行った。

①属性

②育児状況

③育児ストレス

④育児観に関する項目

保育園に子どもを 預 ける父 親47名、

母親81名

育児ストレスの項目で当てはまると回答されたものは7項目 で、「不可解な事件や犯罪に巻き込まれないか心配である」

「就労している母親に対する社会や行政の配慮が足りない」

「子どもの性格に気がかりがある」「教育環境が不憫なので 子どもの行く末に不安を持つ」「育児のことを考えると漠然と した不安を覚える」「子どもがあまりに思い通りにならない」

「だだをこねられて困ってしまうことが多い」の順で当てはま ると回答した人数が多かった。当てはまらないと回答された ものは9項目で、「夜間育児のために何度も起きなければな らなくて困っている」「周囲の人に子どもの父親としてしかみ てもらえないのが辛い」「子育てに専念しているために社会 から取り残された気持ちになる」「完全な子育てをすべきだ という周囲からのプレッシャーを感じる」「育児のために睡眠 不足の日々がつ空いている」「妻が子育てに協力的ではない」

「いつか子育てに余裕ができる頃に就職できるか不安だ」「子 育てに関する昔ながらの地域や家の週間を押し付けてくる」

「子育ての毎日同じ事の繰り返しに嫌気がさしてくる」の順に 当てはまらないと回答する人数が多かった。また、父親と母 親が当てはまると回答した項目の差を比較した際、「だだを こねられて困ってしまうことが多い」「コソもの期限が悪くな ると困ってしまう」「育児で身体の疲れたたまっている」「育 児のために睡眠不足がつ空いている」「夜間育児のために何 度も起きなければならなくて困っている」にて有意差が認め られた。いずれも母親の方があてはまると回答している。こ れらのことから父親より母親の方が育児ストレスがあること がわかり、どちらが一方に負担がかからないようにしていく べきである。

(6)

文献番号 目的 調査項目 調査対象者 父親に関する結果・結論 18 父親の育児参加の実態、育児

参加を妨げる要因、育児スト レスについて調査し、父親の 育児参加を促すサポートの方 向性を模索する

①基本的属性

②育児参加状況・内容

③ 育児相談相手・内容・相談 しやすい場所

④育児知識を得る方法

⑤得られた知識は十分か

⑥詳しく知りたい育児知識

⑦ 育児をする上でのモデルは だれか

⑧育児参加阻害要因

⑨育児ストレス

⑩ 必要と感じる父親への育児 支援について自由記述

0歳から3歳の乳 幼 児 をもつ 父 親

(134名)

育児状況について7割の父親が参加していた。これは「仕事 より家族を大事にしたい」という考えが定着したためと考え られる。参加状況では家事参加は十分とは言えなかった。

妻への精神的支援では妻の側は単に父親の役割ということ よりも父親としての役割を期待さていると指摘している。今 回は約6割の父親がその役割を果たしていることがわかる。

しかし、そうではない父親もおり、母親とのコミュニケーショ ンの重要性が見られた。父親の育児相談では相談相手は妻 と半数以上が回答。しかし、妻のみに話すと閉鎖的となって しまうため友人など今後は閉鎖的にならないようにしていくこ とが必要であると言える。相談しやすいところでは病院と回 答しているものが多かった。父親の育児知識では妻からだ が、7割の父親がまだ知識が十分ではないと感じていた。

また知りたい育児知識は「子どもの成長・発達」「緊急時の 対応」などがおおかった。育児モデルでは半数以上はモデ ルはないと述べた。育児参加を妨げる要因としては半数以 上が仕事と述べた。父親が育児をしていく上で必要と思うサ ポートに関して、「受けたい育児支援」では休暇支援や経済 的支援などが挙げられた。

19 1歳6か月児をもつ父親の親 役割認知及び性役割に関する 態度と育児ストレスとの関連を 明らかにする

①基本的属性

②育児ストレス

③ イメージする母親役割及び 妻との一致度

④ イメージする父親役割及び 自己との一致度

⑤性役割に関する態度

18か月児検診の父 親198名

育児ストレスは20歳代と第1子の父親にストレスが高いこと が認められた。父親役割認知については「愛情」「経済力が ある」「健康」「家庭を守る」「父としての自覚」が順に挙げ られた。父親役割認知と父親としての自己一致する者は父親 のストレスが低い。また父親の多くは男性の家族役割分担 に理解を示しているものの、「3歳までは母親は育児に専念 するべき」と肯定するものが8割であった。性役割分業に肯 定的な態度の父親は、否定するものよりストレスが高い。ま た育児に影響を及ぼす要因は母親役割認知と妻との一致度、

父親役割認知と自己との一致度であることが認められた。

20 父親の育児ストレスについて明 らかにし、さらに父親の育児 信念との関係について検討

①基本的属性

② 育 児 経 験 にて生じたネガ ティブな情動がいかなる時 に生じたのか自由記述

③ 育児経験で生じたネガティ ブな感情の評価

乳幼児期の子育て をしている父親93

父親に感じる育児に伴う情動反応は「不安、恐怖、心配」と

「怒り、イライラ」の二分となっていた。また育児ストレスは 9要因に分類され、「子どもの自己本位な特性」がもっとも 多く、ついで「育児への自信のなさ」となった。育児信念と の関係では、育児信念6項目全て肯定する信念傾向をもつ 父親は、育児信念に対し「こうあるべきだ」と考えるほど不 安を感じていることが示された。

21 健診の時期別父母の調査から 母親の育児ストレスの現状を 父親との比較から明らかにし、

ストレスの関連要因を探ること を目てとした。

①基本的属性

② 妊娠中・出産時の心身の状

③現在の育児状況・困り事

④ 普段の育児に対する気持ち・

感情

⑤ 相談相手・育児協力者の有

⑥家庭内の困り事

⑦その他育児への自由記載

4ヶ月児健診・1 歳6か月児健 診・

3歳児童健診受診 児 の 父 親275名、

母親300名

3歳児の母親のほとんどが教育上何らかのことで困っていた が、3歳児父親は困っている割合が低かった。育児ストレス の高い父母は「妊娠中・出産時の思い」「愛情を受けて育っ た実感」においてネガティヴな感情が高い。健診時に、保 健師は母親のストレス状況を把握し、ストレスが高い場合子 どもの成長に伴う困り事と家庭内要因を母親とともに考え支 援する必要がある。

22 乳幼児を養育する両親の養育 行動や親役割によるストレス 認知についてどのような要因が 関連しているのか、父親と母 親にどのような特徴があるの かをあきらかにし、親役割の 獲得の促進に必要とされる支 援への示唆を得ることを目的 とする

①基本的属性

②内的要因

③外的要因

⑤ 父親及び母親の育児関連ス トレス

1歳6か月健康診 査を受診した児の 両親(父親135名、

母親164名)

内的要因では父親の健康認識と年齢、母親の健康認識との 間に関連が認められた。特に健康状態が「よくない」と回答 した者の平均ストレス得点は「普通」や「良好」と比べ最も 高かった。また父親の年齢と育児効力感が負の相関関係に あった。外的要因では夫婦間サポート得点と子どもの数、帰 宅時間の規則性との関連が認められた。帰宅が規則的であ る父親は育児効力感(正)得点が高く、夫婦間サポート得点 とストレス得点は負の相関関係にあった。また、第一子の父 親はストレス得点が低い傾向にあった。夫婦間お比較では 育児関連ストレス得点は父親より母親の方が平均値より高 かった。また夫婦間のサポート得点は父親が母親より高かっ た。らに父親は仕事を最もストレスに感じていた。またポジ ティブな思考がストレス認知に影響することが示唆された。

Table 2 父親の子育てに関する文献の目的・結果別一覧―つづき

(7)

「育児行動によるストレス」「社会・経済的ストレス」

に分類された。

1)子どもとの関わりにおけるストレス

 子どもとの関わりにおけるストレスについて記載さ れていた文献は Table 2 の文献番号9,16,17,20 の4文献であった。4文献は全て量的研究で調査が行 われた文献であった。

 子どもとの関わりにおけるストレスは子どもから嫌 われているかもしれないという考え(立林・軽部,

2013)や子どもが笑顔を見せてくれないという子ども の表情(立林・軽部, 2013),ずっと子どもが歩き回っ ている(立林・軽部, 2013)という点からもストレス を感じている。さらに子どもの身に何か起こらないか

(赤松・四宮,2008;四宮・赤松・青野,2008),子ど

もの将来に不安を感じる(赤松・四宮,2008;四宮・

赤松・青野,2008),子どもの性格が気になる(赤松・

四宮,2008),子どもがあまりに思い通りにならない

(赤松・四宮,2008),だだをこねられ困る(赤松・四 宮,2008),子どもの自己本位な特性について(清水,

2006)が報告されている。

2)夫婦関係によるストレス

 子どもとの関わりにおけるストレスについて記載さ れていた文献は Table 2 の文献番号2,4,6,14の 4文献であった。4文献は全て量的研究で調査が行わ れた文献であった。

 夫婦関係ストレスでは母親の理解のなさ(山下・石 田・加藤,2019),配偶者に対する我慢(窪田・中野,

2019),自分の行動への干渉(美甘,2016),妻との関 Table 2 父親の子育てに関する文献の目的・結果別一覧―つづき

文献番号 目的 調査項目 調査対象者 父親に関する結果・結論

23 家族生活と職業生活の両立プ ロセスおよび夫婦を中心とす る家族関係における要因と、

親自身の心理的健康との関連 を検討し、さらに子どもの心 理的健康への影響を解明する ことで、現実の育児支援や子 育ての両立に対して具体的な 施策の提言を行う

①育児ストレス

②心理的健康

③夫婦関係

④性役割観

⑤家事分担比率

⑥妊娠による夫の変化

⑦ 生まれてくる子どもに対する 意識

⑧理想親像

⑨SESなど

約800組の夫婦か らデータを得る予 定。(縦断的研究 を行っているため、

調 査 途 中。 今 現 在約790名の夫婦 からデータが得ら れている)

妊娠中の夫婦の心理的健康度は夫の方が妻より良好で、夫 の妊娠における変化いおいて、妻は家事などの物理的なサ ポートに夫の変化がみられると感じていると同時に、一方で 夫はより一生懸命働くようになったと感じている。このように 妊娠期における夫の変化に対しても、すでに夫と妻の意識 には差があることが示唆された。また、男性は親となること の肯定的側面のみを意識し、女性は親となることの肯定的 側面と否定的側面の両面を意識していた。これから、妊娠 中から夫婦間で意識のずれがあることをお互い認識し、そ のずれに対しサポートしていくことが重要

24 乳児期における父親の役割認 知および性役割に関する態度 と育児ストレスとの関連を明ら かにする

①基本的属性

② 夫がイメージする母親役割 及び妻との一致度

③ 夫自身がイメージする父親 役割及び自己との一致度

④父親の性役割に関する態度

⑤父親の育児ストレス

⑤ 育児における困ったこと・辛 かったことについて自由記述

3から5か月児の 父親198名

父親役割については、愛情を持って家族を経済的に支え、

父としての自覚と責任感および決断力をもつことが多く認知 されていたが、父親役割認知と父親としての自己が一致する 父親は半数に満たなかった。父親役割認知が自己と一致し ている父親は家庭で役割を分担することに肯定的であり、

育児ストレスが低かった。妻が期待通りに母親役割を担って いると認識している父親のストレスは低かった。また父親の 多くは家庭で役割分担を理解を示しているものの、3歳児ま での育児は母親の役割と考えていた。父親役割として包容 力を選択した父親は育児や家事を女性の役割として限定し ない態度を示した。第1子、また高学歴の父親の育児ストレ スは低い傾向があることが認められた。

25 父親役割への適応における父 親のストレスとその関連要因を 明らかにする

①父親のストレス

② 父親になったという事実に ついての知覚

③社会的支持

④対処

⑤夫婦関係

⑥基礎的情報

2から5ヶ月児を もつ父親183名

2から5ヶ月児の父親役割に関連して経験するストレスは高 くはなく、父親としての喜びを感じている。また父親になっ たという事実について肯定的に捉えている者・社会的指示に 対する満足度が高い者・対処について前向きに努力していた り、肯定的に考えていたりする者はストレスが低い。しかし、

父親役割遂行に対して消極的な態度をとっている者はストレ スが高い。さらに、子どもが1人の父親は夫婦関係がよく、

出産体験についてストレスが低い。子どもが2人以上の父親 は夫婦関係がよく、育児の手伝いがいない者の方がよりスト レスが低い。これらのことから父親役割への適応を促すた めには子どもが誕生した際、どのように父親役割をとらえる のか、必要な社会的支持はあるか、生活や役割の変化に対 してどのように対処しているのかについてアセスメントしてい くことが重要

26 日常の育児の中で母親・父親 の感じるストレスが、母親の就 労形態にどのように依存してい るのかを検討

①基本的属性

②家族のまとまりのなさ

③配偶者援助の不足

④養育疲

⑤発達不安

⑥自己実現の阻害

⑦子供の問題行動

1歳から4歳の子 どもをもつ60組の 父母120名

母親と父親の間のストレス差異は発達不安、自己実現の阻害 のみ認められた。母親の就労形態別でみると、フルタイム群 は父母のストレスが低い、パートタイム群は母親のみストレス の高さが目立った。母親のストレスが父親より高い傾向が認 められた。さらに父親の育児意識は、母親の就労形態と深 い関わりを持っていることも示唆された。

(8)

係(美甘,2016),コミュニケーションの不足などに ついて悩んでいる(宮本・藤崎,2008)ことが報告さ れていた。

3)父親役割におけるストレス

 子どもとの関わりにおけるストレスについて記載さ れていた文献は Table 2 の文献番号6,9,25の3文 献であった。3文献は全て量的研究で調査が行われた 文献であった。

 父親役割ストレスでは父親としての責任をはたして いない(美甘,2016),自分に対して自信がない(美 甘,2016),親としての困惑感(立林・軽部,2013),

父親役割に対し消極的な態度をとっている人はストレ スが高い(岩田・森・前原,1998)という報告がされ ていた。

4)育児行動によるストレス

 育児行動によるストレスについて記載されていた文 献は Table 2 の文献番号4,6,11,17,20の5文献 であった。5文献は全て量的研究で調査が行われた文 献であった。

 育児行動ストレスでは育児に対する我慢(窪田・中 野,2019)育児に対する自信のなさ(窪田・中野,

2019;清水,200(美甘,2016),育児のきつさ(美甘,

2016;渡邉・島田,2011)や自分の時間がない(美甘,

2016),なんとなくイライラする(美甘,2016),子ど もの成長への気かがり(美甘,2016),子どものことを くよくよ考える(美甘,2016),育児技術への戸惑い

(美甘,2016;渡邉・島田,2011),育児に対する漠然 とした不安(赤松・四宮,2008),こうあるべき言う育 児信念による不安(清水,2006)が報告された。

5)社会・社会・経済的ストレス

 社会・経済的ストレスについて記載されていた文献 は Table 2 の文献番号6,16,17,22の4文献であっ た。4文献は全て量的研究で調査が行われた文献で あった。

 社会・経済的ストレスでは困惑な仕事との両立や混 沌とする社会事情(美甘,2016),就労している母親 に対する社会や行政の配慮が足りない(赤松・四宮,

2008;四宮ほか,2008),仕事に対するストレス(宮 本・猪下,2006)が報告されていた。

2. 父親の育児ストレスの要因に関する研究内容

(Table 2)

 結果別に分類した結果,育児ストレスが高くなる要 因について記載された文献は Table 2 の1,2,13,

19,21,22,24,25,26の9文献であった。9文献中 1文献が文献研究であり,8文献は量的研究で調査が 行われた文献であった。

 育児ストレスが高くなる要因としては,0歳代と比 べ2歳代の子ども以上の年齢段階で親子関係ストレス が増加(白石・高橋,2019)することや,夫婦自身の 被養育態度(白石・高橋,2019),また子どもの多動・

不注意傾向が強い,父親の抑うつ状態であること,家 族のサポートが少ないという3つの状態が相互に関連 するとストレスが増加(岩永・大迫・徳永・田中・菊 池・岩永,2019)するという報告があげられていた。

さらに児の性別と出生順位が関連し,女児より男児の 父親,また第2子以降に比して第1子の父親が有意に 高値を示され(桑名・桑名・細川,2008),他の研究 では20歳代と第1子の父親にストレスが高いことが認 められた(桑名・桑名,2006)と報告されている。し かし,別の研究では第一子の父親はストレス得点が低 い傾向にある(宮本・猪下,2006)という報告もあげ られている。父親になったという事実について肯定的 に捉えている者・社会的指示に対する満足度が高い 者・対処について前向きに努力していたり,肯定的に 考えていたりする者はストレスが低い(岩田・森・前 原,1998)と報告されている。また父親役割イメージ と自己とが一致しないことが強く関連し(桑名・桑 名,2006;桑名ほか,2008;桑名・桑名・坂上・坂 原・大沼,2001),母親の役割イメージと妻とが一致 しないことも強く関連している(桑名・桑名・細川,

2008;桑名ほか,2001)ことや性役割分業に肯定的な 態度の父親は,否定するものよりストレスが高い(桑 名・桑名,2006)と報告されている。ポジティブな思 考がストレス認知に影響することが示唆され(宮本・

猪下,2006),帰宅が規則的ではないと育児効力感の 得点は低くなり(宮本・猪下,2006),さらに父親の 育児意識は母親の就労形態と深い関わりを持っている

(初塚・石田,1996)と報告されていた。育児ストレ スの高い父親は「妊娠中・出産時の思い」「愛情を受 けて育った実感」においてネガティヴな感情が高い

(北村・土屋・細井,2006)と報告されている。さら に父親の年齢が低いことが関係し(桑名ほか,2008),

父親の健康認識と年齢の間に相関が認められ,健康状 態がよくないと回答したものはストレスが高く(宮 本・猪下,2006)なると報告された。

3. 父親の育児ストレス対処や支援に関する研究内容

(Table 2)

 結果別に分類した結果,育児ストレスに対する必要 な対処や支援について記載された文献はTable2の3,

6,7,11,12,14,15,16,17,18,23,25の12文 献であった。12文献は全て量的研究で調査が行われた 文献であった。

 妻が里帰りしている間,父親になるという意識を保 つためには妻と連絡をとることやコミュニケーション をとることが重要であると示唆された(溝口・川田,

(9)

2019)。このことから積極的に母子へコミュニケー ションを促す支援が必要である(溝口・川田,2019;

柳原,2007)。さらに子どもに対する関心を高める

(清水・住岡・岸田・眞鍋,2008)ことや,夫婦それ ぞれの育児に対する認識の確認(中山・福丸・小泉・

無藤,2004;清水・住岡・岸田・眞鍋,2008)をする 必要性が報告されている。父親となる前の時期から子 どもについて理解し,関わる機会を増やし(宮本・藤 崎,2008),父親同士が気持ちや体験を共有する場所 を設け(宮本・藤崎,2008),相談環境が閉鎖的にな らないようにし(柳原,2007),育児支援プログラム を受けることにより育児ストレスの低下が示され,親 の感じ方の変化が生じると育児ストレスの低下へとつ ながる(安成・神崎,2014)と推測された。また育児 に関する知識・指導(溝口・川田,2019; 清水ほか,

2008;田中,2010;柳原,2007)や,育児家事行動に ついて考える機会を設ける必要がある(溝口・川田,

2019)と報告されていた。育児支援体制充実に向けた 情報提供の工夫(美甘,2016),入院中の家族への丁 寧な対応(美甘,2016),休暇支援(美甘,2016),経 済 的 支 援( 美 甘,2016), 育 児 環 境 設 備( 美 甘,

2016),教育的支援(美甘,2016),社会的支援(美甘,

2016),父親の気持ちや現状を理解し,丁寧な対応で,

伝承・伝達・提供を考慮した看護が重要とされた(美 甘,2016;渡邉・島田,2011)。さらに夫は仕事,母 親は家事・育児という伝統的な性役割観を取り除き

(四宮ほか,2008),どちらか一方に負担がかからない ようにする(赤松・四宮,2008)また父親役割への適 応を促すためには子どもが誕生した際,どのように父 親役割をとらえるのか,必要な社会的支持はあるか,

生活や役割の変化に対してどのように対処しているの かについてアセスメントしていくことが重要(岩田・

森・前原,1998)という報告が挙げられている。

考  察

 研究の動向を概観した結果を踏まえ,これまでの父 親の育児ストレスに関する研究内容と今後の研究課題 を考察する。

1.父親の育児ストレスに関する研究動向

 父親の育児ストレスに関する研究は2006年より急増 していた。また,2011年以降にはさらに研究が進んで いた。一つの理由として挙げられることは2015年に女 性活躍推進を最重要政策の一つとする働きがあり,女 性活躍推進法が成立したためであると考えられる。ま た,他の要因としては2009年にパパママ育休プラス制 度の導入がされたことも大きく関わっていると考えら れる。仕事は父親が行い,子育ては母親が行うものと いう時代から現在は性役割に囚われず,仕事も育児も

行うことが求められている。そのため,近年では父親 も育児に関わるようになり,父親の育児ストレスに関 する研究が急増したと考えられる。

2.父親の育児ストレスに関する研究内容

 「子どもとの関わりにおけるストレス」「夫婦関係に よるストレス」「父親役割におけるストレス」「育児行 動によるストレス」「社会・経済的ストレス」と分類 したものをカテゴリーごとに考察していく。

1)子どもとの関わりにおけるストレス

 子どもとの関わりにおけるストレスでは嫌われてい るかもしれないと考える(立林・軽部, 2013)や,子 どもの表情を気にかけストレスに感じる(立林・軽 部, 2013)ことが挙げられている。これらは父親の役 割を果たすことにより,ときに子どもの行動を制限す るため自身の役割を遂行しなくてはいけないという役 割に対する使命感と役割によって嫌われてしまうかも しれないという不安との葛藤によってストレスが生じ ていると考えられる。また,ずっと子どもが歩き回っ ている(立林・軽部, 2013)や,子どもがあまりに思 い通りにならない(赤松・四宮,2008),だだをこね られ困る(赤松・四宮,2008),子どもの自己本位な 特性(清水,2006),子どもの性格が気になる(赤松・

四宮,2008)もストレスに感じると述べている。これ らは父親が理想の子ども像を持っており,その像を目 指し教育を行うが自分が理想としている姿にならない というもどかしさや,苛立ちさ,また自身の育児に対 する力量への自信喪失なども関係しているのではない かと考えられる。

2)夫婦関係によるストレス

 夫婦関係によるストレスでは母親の理解のなさ(山 下・石田・加藤,2019),配偶者に対する我慢(窪田・

中野,2019),自分の行動への干渉(美甘,2016)と 述べられている。父親は仕事場での人間関係や自身の 立場を考慮しつつ動かないといけないことがあると考 えられる。しかしその仕事場について母親は詳しく知 らないことが推測され,また仕事場について母親は詳 しく知らないという父親の認識があるのではないかと 考えられる。その母親から育児や家事に関する希望が 述べられるために生じるストレスなのではないかと考 えられる。父親は仕事と育児の両立を求められるほど このストレスは強く生じるのではないかと推測され る。またコミュニケーションの不足については仕事が 終わった後のわずかな時間でしかコミュニケーション を取れないが,母親は育児や家事に追われている可能 性があり,また共働きだった場合,仕事が終わった後 に育児と家事をこなさないといけないため夫婦の時間 が取れないのではないかと考えられる。

Table 2 父親の子育てに関する文献の目的・結果別一覧 文献 番号 目的 調査項目 調査対象者 父親に関する結果・結論 1 夫婦自身の被養育体験が育児 ストレスや親役割達成感に与 える影響。また夫婦間におけ る相互作用につい検討 ①基本属性 ②育児関与度の尺度(父のみ)③育児ストレス尺度④ 父親・母親自身の被養育体 験尺度 ⑤親への愛着尺度 0歳から6歳の子ど も を 持 つ 夫 婦 194名( 夫94名、妻100名) 0歳代と比べ、2歳の子ども以上の年齢段階で親子関係ス トレスが増加し、子どもとの関係
Table 2 父親の子育てに関する文献の目的・結果別一覧―つづき 文献 番号 目的 調査項目 調査対象者 父親に関する結果・結論 15 乳児をもつ父親の育児ストレッ サー、育児ストレス対処行動 と心理的ストレス反応との関連 を明らかにする ①育児経験 ②父親の育児ストレッサー③育児ストレス対処行動④心理的ストレス反応 12か月までの子供をもつ父親56名 子どもに肯定感情を抱いている者ほど育児ストレッサーは低い。育児ストレッサーが高いと消極的な対処行動をとる。育児ストレッサーと心理的ストレス反応は正の相関関

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