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研究倫理と倫理指針の改定について

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Academic year: 2021

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本稿は,2015年 6 月 8 日開催の FD 研修会にて倫理 委員会より解説のあった「研究倫理と倫理指針の改 定」をまとめたものである.

研究倫理とは

研究の倫理とは,「研究者」の倫理と「研究」その ものの倫理とに大別することができる.前者は,研究 を行う個人が具えるべき内面的『徳』の問題であり,

研究不正や利益相反といったものが形として現れる.

一方,後者は研究自体が具えるべき倫理的性質を意味 し,医療者の責務と研究者の責務の不一致(研究者と して研究計画に忠実であろうとする試験的治療法が,

患者としての被験者にとっては医療者が施すべき最善 の治療法でない可能性がある等)や被験者の保護が挙 げられる1 )

ここで論じるのは,新潟リハビリテーション大学

(以下,本学)倫理委員会が扱う「研究」の倫理であり,

「研究者の倫理」については本学の不正防止委員会の 管轄となる.不正防止委員会は不正等の防止に関して 適切な運営・管理を推進する委員会で,研究活動上の 捏造・改ざん・盗用を含む諸々の不正行為や研究費の 不正を対象とする.本学には『研究活動に係わる不正

行為等の防止に関する規程』2 )が定められており,

不正防止委員会にその相談窓口が設けられている.倫 理委員会は,本学においては,研究者が行う人を直接 対象としたリハビリテーション医学領域の研究につい て,ヘルシンキ宣言および関連する法律・省令・告示 および倫理指針等の趣旨に沿って検討し,研究の実施 又は継続の適否その他研究に関し必要な事項につい て,被験者の個人の尊厳,人権の尊重その他の倫理的 観点及び科学的観点から審査する委員会である3 )

「人を対象とした研究」の倫理について

研究を行う場合,特にその研究が人を対象とする臨 床研究である場合は,その倫理性が大きく問われる.

前述もしたように,研究には将来の患者の利益のため に目の前の患者(被験者)にとって最善最良の行為を 行わない/行えないことがあり,本質的な「利益相反」

が存在すると考えられる.それを踏まえたうえで倫理 的に適切な研究であるかの判断は,社会的有用性,科 学性,被験者の保護(安全性確保)と権利の尊重など,

社会から求められる倫理性(社会的要請)に応えるこ とで適切とされる1 )

「社会的要請に応答するとは」1 ),科学的意義と社

Corresponding author:

新潟リハビリテーション大学

〒958-0053 新潟県村上市上の山 2 -16 Tel:0254-56-8292

Fax:0254-56-8291 E-mail:[email protected]

研究倫理と倫理指針の改定について

Research Ethics and the Revision of the Ethical Guidelines for Medical and Health Research Involving Human Subjects

倉 智 雅 子

新潟リハビリテーション大学 大学院リハビリテーション研究科・医療学部リハビリテーション学科

(2)

会的意義,科学的かつ倫理的に適切な検証仮説と方法 論,倫理委員会のような第三者による社会的「目」,

インフォームドコンセント(被験者の ‘ 納得 ’ の確保),

情報管理・プライバシー保護,研究参加後の配慮が必 要で,具体的な対策としてそのための指針がもうけら れている.代表的な国際的指針には,世界医師会の

「ヘルシンキ宣言」4 )(2013年10月改定)や国際医学 団 体 協 議 会 の Council of International Organization for Medical Science(CIOMS)1 )がある.国内では,

研究倫理の指針はもともと「疫学研究に関する倫理指 針」(文部科学省・厚生労働省 平成14年制定,19年 改定)と「臨床研究に関する倫理指針」(厚生労働省  平成15年制定,19年改定)に分かれていたが,統合と 改正によって「人を対象とする医学系研究に関する倫 理指針」5 )(平成26年文部科学省・厚生労働省告示第 3 号)として平成27年 4 月 1 日施行となった.指針の 適用対象となる研究の多様化により,その目的・方法 について共通するものが多くなってきたことが統合の 理由とされている.指針には全ての関係者が遵守すべ き事項が定められており,すべての関係者は高い倫理 観を保持することが求められている.

「倫理指針」の改定に伴う留意事項

今回の改正によって変わった点を以下に列挙す 5 ), 6 ), 7 )

1 )人を対象とする医学系研究に求められる事項が 整理され,指針の規定内容の具体的な例示や解 釈・解説が「ガイダンス」として提示されるよう になった.

2 )研究機関の長及び研究責任者等の責務に関する 規定が整備され,研究機関の長へ研究に対する総 括的な監督義務(必要な体制・規程の整備,補償 の確保等)が課されるようになったと同時に,研 究責任者の責務(研究者の指導,管理等)が明確 化された.また,研究者等への教育・研修の規程 も充実した.

3 )いわゆるバンク・アーカイブに関する規定が新 設された.

4 )倫理審査委員会の機能強化と審査の透明性が確 保され,委員構成,審議・議決の成立要件,教 育・研修,情報公開に関する規定が充実した.

5 )インフォームド・コンセント等に関する規定が 整備され,研究対象者(被験者)に生じる負担・

者等を 研究対象者(被験者)とする場合,親権 者等のインフォームド・コンセントに加えて,研 究対象者本人にも理解力に応じた分かりやすい説 明を行い,研究についての賛意(インフォーム ド・アセント)を得るよう努める必要性も明記さ れた.

6 )個人情報等の保護に関する規定が整備され,研 究対象者の個人情報に限らず,研究の実施に伴っ て取得される個人情報等が広く対象とされるよう になった.

7 )利益相反の管理に関する規定が整備され,研究 責任者や研究者が取るべき措置(研究計画への記 載等)が明確化された.

8 )研究に関する試料・情報等の保管に関する規定 が整備され,侵襲(軽微な侵襲を除く)かつ介入 を伴う研究に関わる情報等は,研究終了後 5 年又 は結果の最終公表後 3 年のいずれか遅い日までの 期間,保管が新たに義務付けられた.(尚,本学 大学院の修士研修については,10年間の保存が原 則とされている.

9 )モニタリング・監査に関する規定が新設され,

侵襲(軽微な侵襲を除く)かつ介入を伴う研究に ついて,研究責任者に対し,モニタリングや第三 者的な立場の者による監査の実施を新たに義務付 けられた.

以上の改定のうち,特に重要な部分が『研究者等の 基本的責務』である.指針では「研究者等は,研究の 実施に先立ち,研究に関する倫理ならびに当該研究の 実施に必要な知識及び技術に関する教育・研修をうけ なければならない.また,研究期間中も適宜継続し て,教育・研修をうけなければならない.」と第 2 章 第 4 項に明記されている.教育・研修の形態は,各研 究機関内で開催される研修会や,学会等を含む他の機 関で開催される研修会の受講,E-learning などが認め られている.そして,教育・研修の「適宜継続」につ いては,少なくとも年に 1 回程度は教育・研修を受け ていくことが望ましいとされている.

本学の倫理審査申請のための留意事項

本学で倫理審査申請をする際には,①研究の科学性 や社会的有用性はもちろん,②研究対象者の人権の尊 重(インフォームドコンセント),③個人情報保護,

④慎重なデータ管理と適切な処理に対して最大限の努

(3)

のチェックリスト」が提供されている(付録)

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中には審査事項・審査基準があるので,提出前に チェックすることで,研究の倫理性を高めることがで きる.

自己学修教材

研究の実施に先立ち,研究者等に研究に関する倫理 ならびに当該研究の実施に必要な知識及び技術に関す る教育・研修をうけることが義務付けられたこともあ り,近年は自己学修教材も充実しつつある.代表的な ものを以下に紹介する.

1 )CITI JAPAN プロジェクト e-learning8 )

「CITI Japan プロジェクト」は,倫理教育につ いて信州大学をはじめとする日本の 6 大学が提携 し,e-learning を活用したカリキュラムを通して,

大学院生に倫理教育の重要さを広げていくプロ ジェクトである.大学院生以外も受講可能であ る.2000年 4 月,米国の10大学病院等からの篤志 家により結成された「Collaborative Institutional Training Initiative(CITI)」と共同開発されてい る.

2 )日本学術振興会の教材9 ),10)

日本学術振興会が編集した『科学の健全な発展 のために-誠実な科学者の心得』は,ダウンロー ド可能な122頁のテキスト版(https://www.jsps.

go.jp/j-kousei/rinri.html)と書籍として購入でき る日英両語の完全版がある.

3 )ICR 臨床研究入門11)

臨床研究に携わるすべての人を対象とした e-learning サイトで,「人を対象とする医学系研 究に関する倫理指針」に対応した教育を受けられ る.

http://www.icrweb.jp/mod/resource/view.

php?id=1032 4 )その他の学修支援

研究倫理の専門家が,研究のあらゆる場面で関 係者(研究者や,倫理委員会,研究支援者,被験 者など)から倫理的疑問について相談依頼を受け 付け,助言を行う活動を RECS(Research ethics consultation service)という.日本でもいくつか の研究機関やプロジェクトにおいて RECS が始 まっており,研究倫理コンサルテーションサービ スを受けるのも,よい学修の機会となる1 )

今後は研究の倫理性に向けられる眼はさらに厳しく なっていくこと推察される.本学関係者全員が高い倫 理観を保持することで,本学が社会に貢献できるより 良き研究の場となってしていくことを期待したい.

引用文献

1 )ORE:研究倫理研修セミナー資料.2014-11-30/12-1, 京都.

2 )新潟リハビリテーション大学:研究活動に係わる不正行為 等の防止に関する規程.

http://nur.ac.jp/fuseikoi.pdf(参照 2015-4-9)

3 )新潟リハビリテーション大学:倫理委員会規程(2015改定). 4 )日本医師会訳:ヘルシンキ宣言(和文),2013.

http://dl.med.or.jp/dl-med/wma/helsinki2013j.pdf(参照 2015- 4-25)

5 )文部科学省・厚生労働省:人を対象とする医学系研究に関す る倫理指針(平成26年).文部科学省ライフサイエンスの広場,

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10600000-Daijink anboukouseikagakuka/0000069410.pdf(参照 2015-5-9)

6 )文部科学省・厚生労働省:人を対象とする医学系研究に関 する倫理指針ガイダンス(平成27年).文部科学省ライフサ イエンスの広場,

http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1500_02.pdf

(参照 2015-5-9)

7 )文部科学省・厚生労働省:人を対象とする医学系研究に関 する倫理指針ガイダンス 新旧対照表(平成27年).文部科 学省ライフサイエンスの広場,

http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1500_03.pdf

(参照 2015-5-9)

8 )CITI JAPAN:CITI Japan プログラム.

http://edu.citiprogram.jp/defaultjapan.asp?language=japanese

(参照 2015-4-25)

9 )日本学術振興会「科学の健全な発展のために」編集委員会  編:For the Sound Development of Science.丸善出版, 2015.

10)日本学術振興会「科学の健全な発展のために」編集委員会  編:『科学の健全な発展のために-誠実な科学者の心得』.丸 善出版, 2015.

11)ICR 臨床研究入門:http://www.icrweb.jp/(参照 2015- 4-25)

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