特別支援学校における運動部活動の指導・運営に関 する教員の認識 : 東京都立特別支援学校への質問 紙調査に基づく検討
著者 阿部 里彩子, 村山 拓
雑誌名 東京学芸大学紀要. 総合教育科学系
巻 71
ページ 251‑260
発行年 2020‑02‑28
その他の言語のタイ トル
Teachers' Recognition for the Instruction and Management for the Sports Club Activities in the Special Educational Schools : A Research based on the Statistical Survey for the
Special Educational Schools in Tokyo Metropolitan Area
URL http://hdl.handle.net/2309/152426
* 1 札幌市立青葉小学校
* 2 東京学芸大学 特別支援科学講座 特別ニーズ教育分野(184-8501 小金井市貫井北町 4-1-1)
特別支援学校における運動部活動の指導・運営に関する教員の認識
―― 東京都立特別支援学校への質問紙調査に基づく検討 ――
阿 部 里彩子
* 1・村 山 拓
* 2特別ニーズ教育分野
(2019 年 9 月 17 日受理)
1.問題の所在と研究方法
1.1 問題の所在
本稿では,特別支援学校における部活動の実施・活 動状況の分析を目的とする。とりわけ,障害者スポー ツの契機としての部活動の機能に注目することから,
運動部活動に関する分析を中心として行う。障害児の 体育授業に注目し,教員に対する質問紙調査を実施し たものに安井(2007)の研究,通常の中学校の部活動 の実施状況,顧問の意識を教員に対する質問紙調査で 明 ら か に し た 西 島 ら(2007) の 研 究 が あ る。 安 井
(2007)の研究では,北海道の小中学校における障害 児の体育の実施状況,教員が障害児者のスポーツ活動 にどのような考えを持っているかが明らかにされてお り,小中学校の教員は障害者スポーツに対する十分な 情報がないまま,日々様々な工夫を行っている現状が あるとしている。西島ら(2007)の研究では, 3 都県 の中学校における部活動において,部活動実施の実態 や教師の部活動に対する意識が明らかにされており,
部活動顧問を担当することで抱く多忙感や部活動の課 題の認識を指摘している。
特別支援学校の運動部活動はどのように実施されて いるのか,教員は運動部活動で障害児のスポーツ活動 に対してどのような意識を持っているのかはまだ十分 に明らかになっていない。試みに,2019 年 8 月に国 立情報学研究所学術情報ナビゲータCiNiiにて「特別 支援学校 部活動」のキーワードでの検索を試みたと ころ 3 件がヒットしたが,高校生,大学生の運動継続 に関するもの(山﨑・鈴木 2015),知的障害特別支援
学校のバレーボール部の活動の事例に関するもの(綿 引ほか 2010),後述する阿部・村山(2018)の 3 件で あった(なお,2017 年 9 月にも同様の検索を試みて いるが,そのときにヒットした一件が,今回は検索結 果として抽出されなかった)。
このように,活動実態についての計量的な調査研究 がほとんど見当たらないのが特徴である。しかし,体 育の授業同様,運動部活動の機能は注目すべきもので あり,その状況を計量的に明らかにすることには重要 な意味があると考えられ,そこで阿部・村山(2018)
では,特別支援学校の運動部活動の実施状況を明らか にし,特別支援学校に通う生徒たちがスポーツに触れ る機会としての運動部活動の特徴を探った。本稿はそ の関連として,顧問教師の指導・運営上の認識につい て検討したものである。
1.2 調査対象・調査方法
東京都公立特別支援学校のうち,中学部または高等 部が設置されている 58 校(都立 56 校,区立 2 校)の 中学部・高等部双方に対して質問紙調査を行った。中 学部と高等部の別,例えば知肢併置校のような学校の 場合,部門別の運動部活動顧問を担う教員または保健 体育科教員に回答してもらうよう協力を依頼した。
まず予備調査として,東京都の各公立特別支援学校 の公式ウェブサイトから部活動に関する情報を集計,
分析し,調査項目や選択肢項目の作成の参考とした。
本調査は郵送郵便調査法により,質問紙調査を行っ た。回収期間は 2015 年 9 月 7 日から 9 月 25 日の 3 週 間であった。
東京学芸大学紀要 総合教育科学系 71: 251 ‑ 260,2020.
1.3 調査内容
部活動における顧問教員の関わりに関する実態を明 らかにするために,以下の項目で行った。質問紙の項 目 は 前 掲 予 備 調 査 で 得 ら れ た 項 目 の 他, 西 島 ら
(2007),林ら(2015)などを参考に作成した。質問項 目の概要は以下の通りである。
・ 部活動に対する教員の認識(用具,設備,予算等に ついて)
・課題の認識の背景
・ 部活動の方向性について(競技性の高さ,大会での 上位進出を目指すこと,リハビリテーションの要素 を取り入れること等について)
1.4 サンプル構成
本調査では,質問紙発送数 105 通のうち,回収数は 全体で 59 ケース,回収率は 56.2%であった。なお,
区立特別支援学校からの回答は得られなかった為,都 立特別支援学校における回収率は 57.3%となった。学 部別にみると,回収率はいずれも 5 割を超えたもの の,障害部門別ではそもそもの母数の少なさもあっ
て,視覚障害は 8 割であるのに対し,聴覚障害は約 3 割と回収率には大きなばらつきがみられた。
2.顧問教員にとっての部活動の意義
2.1 質問設定の趣旨
教育課程外の活動である部活動は放課後に自発的に 行っている活動とされ,運動部顧問などの身体的・精 神的・経済的負担は非常に大きいものとなっている
(水口:2014)。特別支援学校でも部活動が実施されて いる以上,顧問教員に負担がかかっていたり部活動を 指導・運営するうえで課題があったりするのではない かと考えられる。西島ら(2007)が実施した調査で は,中学校の顧問教師が抱える部活動の課題が明らか になっている。そこで西島ら(2007)の調査を参考に 質問項目を設定した。
2.2 部活動の課題の認識状況
まず,顧問教員が部活動の課題をどのように認識し ているのかを見てみることとする。回収された 59 ケー
全く困っていない あまり困っていない まあ困っている とても困っている 施設や設備,備品や
道具が整っていない こと
11.6 32.6 39.5 16.3
44.2 55.8
部活動の時間や量が 負担になっているこ と
11.6 48.8 37.2 2.3
60.5 39.5
十分な生徒の人数が 集まらないこと
9.3 37.2 41.9 11.6
46.5 53.5
部活動の運営費用が 足りないこと
20.9 39.5 32.6 7.0
60.5 39.5
顧問を担当するのは 職務か曖昧なこと
23.3 39.5 30.2 7.0
62.8 37.2
適切な外部指導員を 得られないこと
48.8 37.2 11.6 2.3
86.0 14.0
家族の理解を得られ ないこと
51.2 37.2 9.3 2.3
88.4 11.6
同僚や管理職の協力 を得られないこと
32.6 48.8 11.6 7.0
81.4 18.6
表 1 部活動の課題の認識(N=43,単位%,小数点以下第二位を四捨五入した。以下同様。)
スのうち,部活動を実施しているとの回答の得られた 43 ケースについて,部活動の課題として選択式の表 1 の 8 項目を用意した。この表は, 8 項目のそれぞれ について「全く困っていない」から「とても困ってい る」までの 4 段階の尺度で,顧問教員がそれらの課題 をどのように認識しているか尋ねた結果をまとめたも のである。分析に際して,「全く困っていない」と
「あまり困っていない」という回答を合わせたものを
「否定群」,「まあ困っている」と「とても困っている」
という回答を合わせたものを「肯定群」とする。
肯定群の割合が最も高かった項目は「施設や設備,
備品や道具が整っていないこと」(55.8%)であった。
以下,「十分な生徒の人数が集まらないこと」(53.5%),
「 部 活 動 の 時 間 や 量 が 負 担 に な っ て い る こ と 」
(39.5%),「 部 活 動 の 運 営 費 用 が 足 り な い こ と 」
(39.5%),「顧問を担当するのは職務か曖昧なこと」
(37.2%)と続いている。部活動を運営していくうえ で必要な施設や道具,運営費用が足りないことに加 え,生徒の人数が集まらないことも課題と認識されて いるようである。部活動の時間や職務としての制度的 な裏付けがないことも課題として認識されている。
一方,「適切な外部指導員を得られないこと」,「家 族の理解を得られないこと」,「同僚や管理職の協力を 得られないこと」は 15%前後と,指導面や人間関係 上の問題は,大きな課題として認識していないことが うかがわれる。
また,同じく部活動を実施している 43 ケースにつ いて,課題認識が障害種別や部活動への参加を義務づ けているかによって異なるかを検討したところ,表 2 の結果が得られた。個々の障害種別に分類するとサン プル数が少ないものの,調整済み残差を算出したとこ
ろ,有意な差が認められた。
2.3 特別支援学校と中学校での課題の認識の違い 本項では,西島ら(2007)の調査結果と比較するこ とで,今回の調査結果全体について総合的に検討す る。なお西島ら(2007)の調査は 2007 年に実施され ており、東京都,静岡県,新潟県の中学校の特定の部 活動 1853 部を対象に行ったものである。本調査はこ の西島ら(2007)の調査をもとに調査項目を設定し,
2015 年に実施した。
「施設や設備,備品や道具が揃っていないこと」は 西島らの調査では 50.9%,本調査では 55.8%と 4.9%ほ ど高くなっている。考えられる要因としては,障害者 スポーツならではのスポーツは独自の道具を使ってい たり,競技者個人に補助具を用意したりする必要があ ることである。たとえば,視覚障害者の取り組むサウ ンドテーブルテニスは通常の卓球台とは違ってフレー ムが付いているものを使用する。さらに専用の金属粒 が入ったピンポン玉も用意する必要がある。肢体不自 由特別支援学校を中心に行われているボッチャは,専 用のボールを用意することに加え,ランプと呼ばれる 補助具は競技者個人に合わせたものが必要となる。設 備や道具を揃えることに課題を感じる要因だと考えら れる。
「十分な生徒の人数が集まらないこと」は西島ら
(2007)の調査では 39.1%,本調査では 53.5%と 14.4%
高くなっている。
西島らは中学校において十分な生徒の人数が集まら ない理由として少子化をあげているが,東京都教育委 員会の平成 27 年度公立学校統計調査報告書によると,
平成 18 年以後,特別支援学校に通う児童・生徒数は
表 2 課題の認識の背景(N=43,単位 %)
障害部門 部活動の義務制
視覚 聴覚 知的 肢体 義務○ 義務×
施設や設備,備品や道
具が整っていないこと 25.0 0.0 70.0 61.5 71.4 52.8 部活動の時間や量が負
担になっていること 0.0 50.0 40.0 53.8 42.9 38.9 十分な生徒の人数が集
まらないこと 75.0 100.0 50.0 61.5 28.6 58.3 部活動の運営費用が足
りないこと 25.0 50.0 50.0 38.5 71.4 33.3 顧問を担当するのは職
務か曖昧なこと 0.0 50.0 45.0 38.5 57.1 33.3
(注記、無回答、無効回答を含めて割合を算出した。)
阿部・村山: 特別支援学校における運動部活動の指導・運営に関する教員の認識
全体的に増加しているため,特別支援学校については 少子化が要因と一概には言えない。しかし,東京都教 育委員会が発行した「平成 27 年度公立学校統計調査 報告書学校調査編」によると,生徒数が実際に増加し ているのは,知的障害部門,肢体不自由部門,病弱・
身体虚弱部門である。それを踏まえると,視覚障害部 門と聴覚障害部門での割合が高くなっていることは生 徒数減少が理由であると考えられる。だが,肢体不自 由部門でも割合が高い。これは肢体不自由特別支援学 校に通う生徒の重度重複化が進んでいることが要因と 推測される。
「部活動の運営費用が足りないこと」は西島らの調 査では 40.7%,本調査では 39.6%とほぼ変わらなかっ た。大会や競技会の遠征等が多くなりがちな中学校の ほうが,運営費用が足りないと感じるのではないかと 考えられる。
「部活動の時間や量が負担になっていること」につ いては西島らの調査では 51.5%,本調査では 39.5%と 12.0%の差が出た。
「顧問を担当するのは職務かどうか曖昧なこと」に
つ い て は, 西 島 ら の 調 査 で は 38.8%, 本 調 査 で は 37.2%とあまり差はなかった。本調査において興味深 かったことは,生徒に部活動加入を義務付けているに もかかわらず顧問教員は部活動を担当することの位置 付けを課題だと感じていることから,教員が顧問を担 当することは義務付けられていないと推測されること である。生徒の人数や障害の程度によっては顧問教員 が多数必要になるが,顧問を担当することが義務では ないのであれば,課題と認識する教員も増えるのでは ないだろうか。生徒が部活動に参加する環境を整える と同時に,教員が顧問を務めやすい環境も整備される ことが必要であると考えられる。
3.部活動を指導・運営するにあたり重視することの 検討
3.1 質問項目設定の趣旨
障害のある人がスポーツを行うとき,そこには競技 としての側面だけが重視されるわけではない。それは 障害児を対象としてスポーツを行う場である特別支援
全く思わない あまり思わない まあそう思う とてもそう思う
大会等に出場するこ とに意義がある。
0.0 11.9 52.5 35.6
11.9 88.1
異学年での交流の 場となるべきであ る。
0.0 5.1 45.8 49.2
5.1 94.9
大会等ではできるだ け上位を目指すべき である。
5.1 35.6 45.8 11.9
40.7 57.6
競技性の高い活動 を目指すべきであ る。
10.2 52.5 28.8 6.8
62.7 35.6
リハビリテーション の視点を重視すべき である。
11.9 54.2 27.1 1.7
66.1 28.8
部活動は余暇支援 の一環となる。
1.7 6.8 45.8 45.8
8.5 91.5
校外の人と交流する きっかけになる。
0.0 6.8 44.1 49.2
6.8 93.2
部活動は生涯スポー ツのきっかけにな る。
0.0 3.4 35.6 61.0
3.4 96.6
表 3 部活動の指導・運営にあたり重視することの認識(N=59,単位 %)
学校の運動部活動にも当てはまるのではないかと考え た。そこで本節では,本調査回答者である特別支援学 校で運動部活動の顧問を務めている教員,またスポー ツに関連の強いと思われる保健体育科教員が特別支援 学校で部活動を指導・運営するにあたって大切にして いること,もしくは重視すべきと考えていることを検 討することとした。
3.2 指導・運営にあたり重視することの認識 まず,調査回答者全体において特別支援学校での部 活動の指導・運営にあたり重視することをどのように 認識しているのかを見てみることとする。部活動の指 導・運営にあたり重視することとして選択式の表 3 の 8 項目を用意した。この表は,選択式 8 項目のそれぞ れについて「全く思わない」から「とてもそう思う」
までの 4 段階の尺度で,調査回答者がそれらのことが らをどのように認識しているか尋ねた結果をまとめた ものである。分析に際して,「とてもそう思う」と
「まあそう思う」という回答を合わせたものを「肯定 群」,「全く思わない」と「あまり思わない」という回 答を合わせたものを「否定群」とする。
肯定群の割合が最も高かった項目は,「部活動は生 涯スポーツのきっかけになる。」(96.6%)であった。
以 下,「 異 学 年 で の 交 流 の 場 と な る べ き で あ る。」
(94.9%),「 校 外 の 人 と 交 流 す る き っ か け に な る。」
(93.2%),「部活動は余暇支援の一環となる。」(91.5%),
「大会等に出場することに意義がある。」(88.1%)と 続いている。生涯スポーツの導入や余暇支援といった 学校外の生活や卒業後の生活を見通した活動を重視し ていることに加え,学校内外での人との交流を得られ る場としての役割も重視されていることが分かる。
「大会等に出場することに意義がある。」に対する肯 定群の割合は 88.1%だったのに対し,「大会等ではで きるだけ上位を目指すべきである。」に対する肯定群 の割合は 57.6%と約 30 ポイントの差が出た。大会に 出場すること,またそこで順位にこだわらずやり遂げ ることが重視されていると考えられる。「競技性の高 い活動を目指すべきである」ことに対する肯定群も 35.6%と落ち込み,大会等での結果に強くこだわった 活動はしていない,もしくはそのような活動を目指し てはいないようである。また,障害者スポーツの起源 はリハビリテーションであるとされているが,「リハ ビリテーションの視点を重視すべきである」ことに対 する肯定群は 28.8%であった。医療としてのスポーツ と,教育としてのスポーツの捉え方が異なることがよ く表れているといえる。中でも,身体障害のある生徒
にはリハビリテーションの側面が必要なようにも感じ られるが,部活動で取り組むスポーツにおいてはそう いった側面は求めていないと考えられる。また,障害 者スポーツがリハビリテーションスポーツではなく競 技スポーツやレクリエーションスポーツとして認識さ れ始めていると解釈することも可能である。
3.3 重視されている事項の背景
肯定群の割合がそれほど高くなかった 3 項目につい て,どのような属性の違いによって認識に差が出てい るのかを検討する。表 4 から表 6 のように障害部門 別,回答者の担当教科別に認識を見ていくことにす る。本項で取り上げている各質問項目については,正 規性検定を行ったところ全ての項目で 0.1%水準の有 意差が認められた。これにより,サンプル数は少ない ものの正規分布に従うことが仮定され,t検定を用い た検討が可能と判断した。サンプルサイズの小さな データの検定については,市原(1990),水本(2010)
も参考にした。なお,クロス集計を行うにあたり,
「肯定群」と「否定群」に分けたものを用いて集計,
分析を行った。障害部門別のクロス集計は有意差,標 準化済み残差共に有効な数値は認められなかったもの の,担当教科別のクロス集計は「大会等ではできるだ け上位を目指すべきである」と「リハビリテーション の視点を重視すべきである」の項目についてはともに
5%水準で認められた。
障害部門 視覚 100.0
聴覚 50.0
知的 62.9
肢体 46.7
病弱 0.0
(有意差) n.s.
担当教科 保健体育科 52.8
保健体育科以外 100.0
(有意差) *
*p<0.05
表 4 「大会等ではできるだけ上位を目指すべきである」
ことについての認識(N=59,単位 %)
「大会等ではできるだけ上位を目指すべきである」
ということについては,表 4 の結果が得られた。まず 肢体不自由部門で重視されている割合が低い。聴覚部 門,病弱・身体虚弱部門でも割合が低いが,有効回答 数がいずれも 2 なのでこの 2 つに関しては入念に検討 阿部・村山: 特別支援学校における運動部活動の指導・運営に関する教員の認識
する必要がある。担当教科別にみると,保健体育科の 教員は肯定群の割合が低くなっている。なぜ保健体育 科の教員は上位を目指すことを重視していないのか等 については,引き続きの検討を要する。
「競技性の高い活動を目指すべきである」ことにつ いては,表 5 の結果が得られた。知的障害部門におい て割合が低くなっている。担当教科別には,どの教科 の顧問も大きな差は生まれていない。なお,顧問を務 める保健体育科以外の教員は有効回答数が 6 であるた め慎重に解釈すべきである。
表 5 「競技性の高い活動を目指すべきである」ことにつ いての認識(N=59,単位 %)
障害部門 視覚 50.0
聴覚 100.0
知的 31.4
肢体 40.0
病弱 0.0
(有意差) n.s.
担当教科 保健体育科 34.0
保健体育科以外 50.0
(有意差) n.s.
以上の 2 項目についてまとめると,肢体不自由特別 支援学校や病弱・身体虚弱特別支援学校の教員は大会 で上位を目指したり,普段から競技性の高い活動をし たりすることを部活動においてはあまり重視していな いといえる。全体的に保健体育科の教員も同様に捉え ていることが考えられる。知的障害特別支援学校の教 員においては競技性の高い活動は重視しないとしなが らも,大会等では上位を目指すべきだと考えている。
大会や試合で勝ち星をあげることや上位に入賞するこ とといった目標を設けることが知的障害特別支援学校 に通う生徒に必要なことだと考えられているのではな いだろうか。そういった観点で肢体不自由特別支援学 校の教員の認識を考えると,重度重複化が進む肢体不 自由特別支援学校では,スポーツに親しむといったよ うな競技スポーツの側面よりもレクリエーションス ポーツとしての側面を部活動において重視していると 考えることも可能である。
「リハビリテーションの視点を重視すべきである」
ということについては,表 6 の結果が得られた。
まず,概括として,いずれの障害部門でも割合に大 きな差はないと考えられる。一方,担当教科別にみる と,保健体育科の教員はリハビリテーションの視点を さほど重視していない(24.5%)のに比べ,保健体育 科以外の教員は 40 ポイント以上多い 66.7%がリハビ リテーションの視点を重視すべきと考えている。これ は,保健体育科教員は特別支援学校の部活動で取り組 むスポーツ,つまり障害者スポーツに対してリハビリ テーションスポーツの側面を強く認識していないと解 釈が成り立つ。藤田ら(2014)の研究では,保健体育 科教員免許を取得できる大学において障害者スポーツ 関連科目の実施や,そういった授業を履修する学生が 多いとは言えないことから,保健体育科の教員が障害 者スポーツに対しての情報や知識が少ない中で学校体 育に携わっている可能性が示唆されている。障害者ス ポーツはリハビリテーションスポーツから競技スポー ツに転換してきているとはいえ,リハビリテーション スポーツの側面は引き続き意識する必要があることが 示唆される。いずれにしても,今後保健体育科教員の 意識や認識を調査,研究していくことが必要だと思わ れる。
以上の分析から,特別支援学校の教員は特別支援学 校における部活動に対して学校外でのスポーツの導入 としての役割や学校内外の人との交流の機会としての 役割を重視している一方で,競技性やリハビリテー ションの役割は生徒の障害種,教員個人の考え方で差 が表れることがわかった。西島(2009)は「部活動は 何かができるようになったという『スモールステッ プ』が見えやすいのが特徴」だと述べており,「生徒 自身が好きな事に取り組み,成長していく」場である ことは,特別支援学校に通う障害のある生徒が学校生 活を送る上でも大切な機会だと考えられる。それぞれ の特別支援学校の特徴や在籍する生徒の実態を踏ま え,特別支援学校の部活動が生徒の豊かな経験となる よう組織されることが重要である。
障害部門 視覚 25.0
聴覚 50.0
知的 25.7
肢体 33.3
病弱 50.0
(有意差) n.s.
担当教科 保健体育科 24.5
保健体育科以外 66.7
(有意差) *
*p<0.05
表 6 「リハビリテーションの視点を重視すべきである」
ことについての認識(N=59,単位 %)
4.まとめと課題
本稿では,特別支援学校で実施されている運動部活 動の顧問を務める教員が,どのような認識のもとで部 活動を指導・運営しているか,その部活動に対する意 識について探るべく,東京都の公立特別支援学校の教 員を対象に実施した質問紙調査のデータに基づき,分 析と考察を行った。顧問教師から見る特別支援学校の 部活動が抱える課題,特別支援学校で部活動を実施す るにあたって重視すべきことを見ることで,特別支援 学校で部活動を実施,推進していくための課題を整理 した。
最後に,今後の課題を三点ほど確認する。
第一に,今回の調査は,東京都公立特別支援学校に 学部別,部門別に 1 通ずつの質問紙を送付して行った ものである。学部や障害部門によって様々な違いが見 られたように,部活動は非常に多様なものである。今 後は東京都をより深く調査することだけではなく様々 な地域で,特別支援学校に限らず特別支援学級等も含 めつつ,より広範囲で部活動実施の状況や顧問教員の 意識を調査研究していくことが必要である。
第二に,質問紙調査では部活動に関する動向を量的 に把握できる長所がある一方で,特別支援学校に通う 生徒がどのような環境の中で部活動に取り組んでいる のか,顧問教員がニーズのある生徒に対してどのよう な支援をしながら部活動を運営しているのかを明らか にしていくことはできない。そこで,質問紙調査によ る量的な把握の他に,様々な学校における部活動の観 察や教員へのインタビュー調査も合わせて行っていく 必要があろう。
第三に,昨今,運動部活動に関する顧問教師の負担 感や安全管理に関する課題等が多く指摘されるように なってきている。本稿では,もともと特別支援学校に 在籍する生徒の運動経験,スポーツ文化に触れる経験 の機会の獲得とその質の充実についての関心,またオ リンピック,パラリンピック等をひかえた時期におけ る障害者スポーツの機会の拡充としての運動部活動の 機能についての関心に基づいて調査を設計したため,
顧問教員の負担等についての質問項目を用意したとは いえ,顧問教員の役割等についての全体像を明らかに はしていない。今後,それらの課題もふまえた検討が 必要になるものと考えられる。
付記・謝辞
本調査にご協力,ご回答いただいた各学校の先生方
に深く御礼申し上げます。また本調査の設計段階にお いて首都大学東京の西島央先生にご助言をいただきま した。あわせて深く御礼申し上げます。
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*1 Aoba Elementary School, Sapporo
*2 Tokyo Gakugei University (4‑1‑1 Nukuikita-machi, Koganei-shi, Tokyo, 184‑8501, Japan)
特別支援学校における運動部活動の指導・運営に関する教員の認識
―― 東京都立特別支援学校への質問紙調査に基づく検討 ――
Teachers’ Recognition for the Instruction and Management for the Sports Club Activities in the Special Educational Schools:
A Research based on the Statistical Survey for the Special Educational Schools in Tokyo Metropolitan Area
阿 部 里彩子
* 1・村 山 拓
* 2 ABE Risako and MURAYAMA Taku特別ニーズ教育分野
Abstract
This paper conducts the quantitative analyses about the practical recognition of the teachers instructing the sports club activities in the special educational schools in Tokyo metropolitan area. The mailing survey has conducted to the all public special schools having the junior and senior high level sections in Tokyo metropolitan area, and the questionee are the teachers having charge of the sports club activities or the course of the physical education classes. The collection rate is 56.2%.
The main findings of this survey are as follows. Teachers’ recognition for the issues of the sports club activities are focused on “the condition of the instituion, equipment, and tools”(55.8%), “small population and the inefficient number of the students (for the collective activities)”(55.3%), “the lower operational cost”(39.6%), and so on. Teachers also emphasize the role of the sports club activities as the introduction to the sports activities and the opportunities for interaction among the people in and out of the schools. The divergence of teachers’ recognition are found on the topic of the feature of the derby and the role of rehabilitation with respect to the main types of the disabilities in the schools and the teachers’ individual thoughts.
Keywords: Special Educational Schools, Sports Club Activities, Teachers
Department of Special Needs Education , Tokyo Gakugei University, 4-1-1 Nukuikita-machi, Koganei-shi, Tokyo 184-8501, Japan
要旨 : 本稿は,特別支援学校における運動部活動に関わる顧問教師の認識を計量的に分析したものである。
東京都内の中学部,高等部を設置する公立特別支援学校に郵送郵便調査法で質問紙を発送し,部活動顧問を担 当している教員あるいは保健体育科の指導にあたっている教員に回答の協力を依頼したところ,59 通(回収
部活動実施に当たっての課題等についてたずねたところ,「施設や設備,備品や道具が整っていないこと」
(55.8%)「十分な生徒の人数が集まらないこと」(53.5%),「部活動の運営費用が足りないこと」(39.5%)など が挙がった。また,顧問教員は特別支援学校における部活動に対して学校外でのスポーツの導入としての役割 や学校内外の人との交流の機会としての役割を重視している一方で,競技性やリハビリテーションの役割は生 徒の障害種,教員個人の考え方で差が表れることが確認された。
キーワード 特別支援学校,運動部活動,教師