平成23年度 高専-長岡技科大(機械系)教員交流研究集会 研究情報交換会 予稿集
N−17
三次元異材接合体に対する境界要素法を用いた特異応力場解析
星 和久(機械創造工学専攻)、古口 日出男(機械情報・制御工学大講座)
1. 緒言
現在,接着による接合は,小型化が求められる携帯電 子機器,気密軽量化が求められる構造部材,美観性が求 められる車体外装など様々な場面で用いられている.し かし,接合界面が外力や熱変形によって剥離し,接合部 材が破損することがある.この原因として接合界面端に 発生する特異応力場が考えられる.異材接合体における 接合界面端部には,材料定数の違いから,弾性論的には 応力が無限大に発散する特異応力場が発生する.ここで は応力が発散するため応力値のみでの単純な強度評価が できない.一般的に,特異応力場内の応力σijは,応力特 異点からの距離
r
に対して近似的に式(1)
で表されること が知られている.!ij=Kijr!"
(1)
ここでK
ijは特異場の強さ,λは特異性のオーダである.本研究では,この二つのパラメータを用いて異材接合 体の特異応力場の解析を行う.特異性オーダは有限要素 法を用いた固有値解析により求め,さらに境界要素法を 用いた応力解析による応力分布を式(1)で当てはめること で,特異場の強さを求め,引張せん断荷重下の重ね合わ せ継手における,接着層の材料定数が特異応力場に及ぼ す影響について検討する.
2. 解析モデル
本研究では,
JIS-K6850
にある引張せん断接着強さ試験 で用いられる試験片を解析モデルとした.その形状を図 1に示す.同寸法の2
平板の被着体が,重ね合わさる形 で接着剤により接合される.この両端をつかみ,引張荷 重を加えることで,接合部には引張せん断荷重が加わる.応力解析における境界条件は,継手つかみ部を平板の 厚さ方向に変位拘束し
,
継手の片端は長手方向に変位拘 束,
もう片端に1kN
の長手方向の荷重を付加した.また,
対称性を考慮し1/2
モデルを用いて解析を行った.境界要素分割モデルは,応力特異点となる接合界面端 角部で約
10
-6mm
の最小要素とし,総要素数は6903,総
節点数は
20717
である.被着体のヤング率はE
1=100GPa
,ポアソン比はν1
=0.30
で固定し,接着層はE
2=0.01~50GPa
の範囲で変化させて解析を行った.Fig.1 Analysis model of adhesive joint
3. 境界要素法による応力解析3-1 三次元境界要素法 一般に応力解析には有限要素法 を用いることが多い.しかし,特異応力場など応力値の 変化が顕著になる箇所ではより微小な要素を用いる必要 があるため,本研究では,境界のみの要素分割でよく,
さらに高精度に解析できる境界要素法を用いる.
三次元弾性体内における任意の点の変位は,式(2)の
Somigliana
の境界積分方程式で求めることができる.u
j( ) p
=&
S"#Uij( )
p,Qt
j( ) Q
!Tij( )
p,Qu
j( ) Q
$%ds Q ( ) (2)
ここで,pは領域の内点,Qは境界上のソース点,Uijお よび
T
ijは変位と作用力の基本解,t
iとu
iは作用力ベクト ルと変位ベクトルである.また内点のひずみは式(3)
で求 められる.uj,k
( )
p =&
S"#Uij,k( )
p,Qt
j( ) Q
!Tij,k( )
p,Qu
j( ) Q
$%ds Q ( ) (3)
ここで,
U
ij,kおよびT
ij,kは着力点における変位および表面 力の基本解の微分である.内点の応力は式(4)をHooke
則 に代入した式(4)によって求められる.!ij
( ) p
=!uk,k( ) p
!ij+2µ{
ui,j( )
p +uj,i( )
p} (4)
基本解は
Rongved
の二相体の解を用いることで,材料界面の要素分割が不要となり,より高精度に解析ができる.
3-2解析結果 解析結果については,応力特異点が原点,
界面がθ=90o
, 0
o≦φ≦90oとなる極座標系を設定し.剥離 に強く影響すると考えられる界面上の垂直応力σθθのみ を示す.図2
はθ=90o,φ =45oにおけるr
に対するσθθの分 布である.σθθは特異応力場では両対数グラフ上で直線的 に分布する.またE
2/E
1の増加とともに高い値となってい ることがわかる.Fig.2 Stress distribution of σ
θθagainst r and E
2/E
14.
特異応力場の強さ三次元異材接合体における特異応力場は,これまでの 研究から式
(5)
のように表せることがわかっている.!""
r
t
! "# $
%&
=K
1""r
t
! "# $
%&
'#
+
K
2""(5)
ここで,
K
1θθは特異応力場の強さであり,特異点からの距 離r
は接着層の厚さt
で無次元化してある.図
2
に示した応力分布を式(5)
によって最小二乗近似し,各
E
2/E
1において求めたK
1θθを図3
に示す.特異性オーダ はλ =0.40である.K
1θθはE
2/E
1の増加とともに高い値を示 している.これらは, E2/E
1=0.01
を境に,E2/E
1<0.01
で はK
1θθ!15.3(E
2/E
1)
0.29となり,E
2/E
1>0.01
ではK
1θθ!6.32(E
2/E
1)
0.11となった.Fig.3 Intensity of stress singularity K
1θθand E
2/E
110 100 1000
Stress , MPa
0.0001 0.001 0.01
r / t
E2 / E1 0.5 0.2 0.1 0.05 0.02 0.01 0.005 0.002 0.001 0.0005 0.0002 0.0001 Curve fit
2 3 4 5 6 78
10
2
K, MPa
10-4 10-3 10-2 10-1 100 E2 / E1
K1 15.3(E2/E1)0.29 6.32(E2/E1)0.11