別解研究
2009
年5
月31
日1
目 次
0
別解を考える大切さ4
1
関数と不等式5
1.1 98
阪大. . . . 5
1.2 04
明治大. . . . 7
1.3 99
京大後期理系. . . . 10
2
方程式と恒等式13 2.1 91
お茶の水. . . . 13
2.2 01
慶応理工. . . . 15
2.3 01
京府医大. . . . 17
2.4 66
静岡大. . . . 19
3
帰納法と直接証明21 3.1 02
福井大改題. . . . 21
3.2 02
東大文科. . . . 23
3.3 02
京大後期理系改題. . . . 23
3.4 08
東工大理特. . . . 24
3.5
フェルマの小定理. . . . 28
4
個数処理の方法30 4.1 08
京大文系. . . . 30
4.2 99
京大文系. . . . 31
5
確率33 5.1 08
京大理系甲乙. . . . 34
5.2 05
京大後期理系. . . . 35
5.3 04
年九大文理系. . . . 37
5.4 98
年京大理系後期. . . . 39
5.5 91
年京大文理系. . . . 40
6
図形の論証41 6.1 66
京大. . . . 41
6.2 07
阪大文理. . . . 43
6.3 91
東大後期. . . . 47
6.4 06
京大理系. . . . 48
6.5 01
京大改題. . . . 54
7
正像法と逆像法55 7.1
典型問題. . . . 56
8
整式の数論57
8.1 06
京大,00お茶大. . . . 57
9
不定方程式61
9.1
典型問題. . . . 61
0 別解を考える大切さ
問題を解いていると,解き方が一つではないことがある.問題集などにも「解
1」,
「解2」など
といくつかあがっていることがある.そこで,「一番良い解き方」というのがあるのだろうか,そも そも別解を考えるのは大切なのか時間の無駄なのか,などいろんな疑問をもつことがある.数学的には「一番良い解き方」というものはない.いろんな解き方はたがいに関係している.一 つの現象のいろいろな側面ということもあれば,現象のとらえ方が違うということもある.その結 果生じたさまざまの解法の相互関係こそ重要な考えるべきことである.
試験問題を解くという意味では,もっとも簡潔な解答というのはありうる.問題によって,ベク トルか座標か幾何の論証か,などである.では,それを見ぬく力はどのように養われるか.それ は,日頃いろんな解法を試みることで養われる.このような置き方では計算が大変になるというこ となどは,経験して身につけなければならない.
日頃からいろいろと別解を研究していると,問題を多面的に見ることができ,どれかの切り口か ら解法の糸口がつかめるのだ.異なる問題を
2
つ解くより,同じ問題を2
通りに解く方が力がつ く.いろんな視点から解法を探し,糸口を見つける.日頃からつねにいろんな切り口で考えるよう にしたい.しかし,漫然といろんな解き方を考えるというのでは本当の力はつかない.問題に対して,考え られる解法の方向性はそんなに多くない.一つの問題に対して次のようなことを追求しよう.
(1)
与えられた条件をよく考え,まず,からかならずこうやればできるはずだという方法を追求 する.まずは少々下手でもかならずできる普遍的な方法だ.それを考える.(2)
そして一般的に解くことを試みる.まず問題を一般化してみる.変数の個数をn
にする等 だ.あるいは条件の一部をはずしてみる.一般化しても成立しそうだと見当をつけたら可能 なかぎり一般的な場合にも通用する方法を考える.(3)
そのうえで別解を試みる.よりよい道具はないか.発想を変えた別の方法はないか.問題の とらえ方を転換できないかなどを考える.それ自体が問題をより深くとらえることである.別解を考えることは数学を考えることそのものだ.いろんな解法とその相互関係がつかめて,は じめてその問題が判ったといえるのだ.複数の解法を比較し研究する.これが数学力をつける最良 の方法である.別解を考えるおもしろさに気づき,日頃から一つの解法に満足せず,他の解法を考 えるようにすれば,数学の力が飛躍する.
なお構成は次のようにした.1)問題を提示し,2)方針でいくつかの解法の方向を示し,3)それ に対応した解を順次述べ,4)必要に応じて,吟味でそれらを比較検討する.
1 関数と不等式
1.1 98
阪大問題
n
を1
以上の整数とする.n
次の整式f (x) = a 0 x n + a 1 x n − 1 + · · · + a k x n − k + · · · + a n − 1 x + a n
とその導関数
f 0 (x)
の間にnf (x) = (x + p)f 0 (x)
という関係があるとする.ただし,p
は定数で ある.このとき,f (x) = a 0 (x + p) n
であることを示せ.方針
1. n
次整式をn
回微分すると定数になる.微分によって関数等式がどのように変わるか,両辺 微分して整理する.2.
関数等式から係数の関係式を導く.一方,結論からさかのぼるとa k
がどのようになってほ しいかわかるので,数学的帰納法で示す.3.
関数等式は微分方程式そのものである.これを解くにはいちど積分すればよい.解
1
関数等式nf (x) = (x + p)f 0 (x) · · · ° 1
の両辺をx
で微分する.nf 0 (x) = f 0 (x) + (x + p)f 00 (x)
よって,(n − 1)f 0 (x) = (x + p)f 00 (x) · · · ° 2
同様に,(n − 2)f 00 (x) = (x + p)f 000 (x) · · · ° 3 .. .
f (n − 1) (x) = (x + p)f (n) (x) · · · ° n
よって,° 1
から° n
をすべてかけあわせるとn!f (x) = (x + p) n f (n) (x)
ここで,f (n) (x) = n!a 0
なのでf (x) = a 0 (x + p) n
解2
f 0 (x) = na 0 x n − 1 + · · · + a n − 1
であるから,(x + p)f 0 (x) = na 0 x n + { na 0 p + (n − 1)a 1 } x n − 1 + · · · + pa n − 1
1 < = k < = n − 1
のとき,x n − k
の係数は,(n − k)a k + (n − k + 1)a k − 1 · p nf (x)
と比較して,n · a k = (n − k)a k + (n − k + 1)a k − 1 · p
k = 0, 1, · · · , n
についてa k = a 0n C k p k
となることをk
についての数学的帰納法で示す.n= 0
のときはそのまま成立する.a k − 1 = a 0 p k − 1 n C k − 1
と仮定すると,上式より,ka k = (n − k + 1)a 0 p k · n C k − 1
∴
a k = a 0 p k · n C k
また,
na n = pa n − 1 = p · a 0 p n − 1 · n C n − 1 = na 0 p n
∴
a n = a 0 p n
よってすべてのk
でa k = a 0n C k p k
となる.∴
f (x) = a 0 x n + a 0n C 1 x n − 1 · p + · · · + a 0 p n = a 0 (x + p) n
解3
f 0 (x) f (x) = n
x + p
より
∫
f 0 (x) f (x) dx =
∫ n x + p dx
∴
log | f (x) | = n log | x + p | + C
これからlog | f (x) |
| x + p | n
が定数となる.f(x)
は整式なのでf (x) = a(x + p) n
となる定数a
がある.xn
の係数を比較してa = a 0
.∴
f (x) = a 0 (x + p) n
吟味1.
条件をどのように使ったかをおさえておこう.関数等式を微分し整理するところでは,n回 微分可能であることのみ整式であることを使う.fn (x) = n!a 0
は最高次の係数がa 0
の整式 であることを使う.2.
これはf(x)
が整式であることを最初から使っている.3. f (x) = a(x + p) n
と表されるところまでは,整式であることは使っていない.初期条件は,整式であることを前提としている.f(0) =
a 0 p n
のように与えられれば,整式であることは 使わない.1.2 04
明治大問題
x 1 , x 2 , · · · , x n
を実数,nを自然数とする.このときn
∑ n k=1
x k 2 − ( n
∑
k=1
x k
) 2
> = 0
が成立することを示せ.方針
1.
数学的帰納法.2.
直接の変形.3.
コーシー・シュワルツの不等式.4. y = x 2
という下に凸な関数を用いる.解
1
任意の実数
x 1 , x 2 , · · · , x n
と,自然数n
に対し,不等式n
∑ n k=1
x k 2 − ( n
∑
k=1
x k
) 2
> = 0 · · · ° 1
が成立することを数学的帰納法で示す.n = 1
のとき.° 1
はx 2 1 − (x 1 ) 2 = 0
となり,成立.n = m
のとき命題が成立するとする.n = m + 1
のとき.(m + 1)
m+1 ∑
k=1
x k 2 − ( m+1
∑
k=1
x k
) 2
= (m + 1)
∑ m k=1
x k 2 + (m + 1)x m+1 2 − ( m
∑
k=1
x k + x m+1 ) 2
= m
∑ m k=1
x k 2 − ( m
∑
k=1
x k
) 2
+
∑ m k=1
x k 2 + (m + 1)x m+1 2 − 2x m+1
∑ m k=1
x k − x m+1 2
= m
∑ m k=1
x k 2 − ( m
∑
k=1
x k
) 2
+
∑ m k=1
x k 2 −
∑ m k=1
2x k x m+1 − mx m+1 2
= m
∑ m k=1
x k 2 − ( m
∑
k=1
x k ) 2
+
∑ m k=1
(x k − x m+1 ) 2
数学的帰納法の仮定からm
∑ m k=1
x k 2 − ( m
∑
k=1
x k
) 2
> = 0
なので,n
= m + 1
のときも° 1
は成立する.かつ
° 1
での等号成立がx 1 = x 2 = · · · = x n
のときであることも示された. □
解
2
直接示す.
n
∑ n k=1
x k 2 − ( n
∑
k=1
x k
) 2
= n
∑ n k=1
x k 2 −
∑ n k=1
x k 2 + 2 ∑
i<j
x i x j
= (n − 1)
∑ n k=1
x k 2 − 2 ∑
i<j
x i x j
和
∑
i<j
x i x j
では,どの文字もちょうどn − 1
回ずつ現れる.したがって(n − 1)
∑ n k=1
x k 2 − 2 ∑
i<j
x i x j = ∑
i<j
( x i 2 − 2x i x j + x j 2 )
である.つまり
n
∑ n k=1
x k 2 − ( n
∑
k=1
x k ) 2
= ∑
i<j
(x i − x j ) 2 > = 0
等号成立はx 1 = x 2 = · · · = x n
のとき. □
解
3
t
を実数の変数にとり,2次式f (t)
をf (t) = (t − x 1 ) 2 + (t − x 2 ) 2 + · · · + (t − x n ) 2
とおく.f (t) = nt 2 − 2(x 1 + x 2 + · · · + x n )t + (x 1 2 + x 2 2 + · · · + x n 2 )
である.任意の実数値
t
に対してf (t) > = 0
であるから,その判別式D
はD < = 0
である.D/4 = (x 1 + x 2 + · · · + x n ) 2 − n(x 1 2 + x 2 2 + · · · + x n 2 ) < = 0
よりn
∑ n k=1
x k 2 − ( n
∑
k=1
x k ) 2
> = 0
が示された.等号成立は
D = 0,つまり f (t) = 0
となる実数t
が存在するときである.よって(t − x 1 ) 2 = (t − x 2 ) 2 = · · · = (t − x n ) 2 = 0
となる実数
t
が存在するときである.これはt − x 1 = t − x 2 = · · · = t − x n = 0
となる実数t
が存在するときである.つまり等号成立はx 1 = x 2 = · · · = x n
のとき. □
解
4
s + t = 1
である正の数と,実数p, q
に関してsp 2 + tq 2 > = ( sp + tq) 2
実際,sp 2 + tq 2 − (sp + tq) 2
= s(1 − s)p 2 − 2stpq + t(1 − t)q 2
= st(p 2 − 2pq + q 2 ) = st(p − q) 2 · · · ° 1
である.ここで等号成立はp = q
のときである.またn
∑ n k=1
x k 2 − ( n
∑
k=1
x k
) 2
> = 0
⇐⇒ x 1 2 + x 2 2 + · · · + x n 2
n > =
( x 1 + x 2 + · · · + x n
n
) 2
そこで,この不等式の成立と等号成立が
x 1 = x 2 = · · · = x n
のときであることを,nについての 数学的帰納法で示す.n = 1
のときはx 1 2 = (x 1 ) 2
で成立する.n = k
で成立するとする.n= k + 1
のときx 1 2 + x 2 2 + · · · + x k 2 + x k+1 2
k + 1
= k
k + 1 · x 1 2 + x 2 2 + · · · + x k 2
k + 1
k + 1 · x k+1 2
> = k k + 1 ·
( x 1 + x 2 + · · · + x k
k
) 2
+ 1
k + 1 · x k+1 2
° 1
をs = k
k + 1 , t = 1
k + 1
で用いる.> = ( k
k + 1 · x 1 + x 2 + · · · + x k
k + 1
k + 1 · x k+1
) 2
=
( x 1 + x 2 + · · · + x k+1
k + 1
) 2
等号成立は
x 1 = x 2 = · · · = x k
かつx 1 + x 2 + · · · + x k
k = x k+1
,つまりx 1 = x 2 = · · · = x k+1
の ときである.よってn = k + 1
のときも成立し,すべてのn
で成立した. □吟味
この問題の不等式は,コーシー・シュワルツの不等式と,凸関数の不等式の両方の性質をもつ不等 式である.それぞれの方向に一般化することができる.
1.3 99
京大後期理系問題
α, β, γ
はα > 0, β > 0, γ > 0, α + β + γ = π
を満たすものとする.このとき,sinα sin β sin γ
の最大値を求めよ.方針
1. α + β + γ = π
という関係式があるからsin α sin β sin γ = sin α sin β sin(α + β )
となる.2
変数の関数の最大最小を求めるのは1
文字を固定して考える.まずf (α) = sin α sin β sin(α+
β)
とおいて,αの関数として最大をβ
の入った形で求め,それからβ
を動かせばよい.2. α > 0, β > 0, γ > 0, α + β + γ = π
となれば,この三つの角は三角形の内角だ.三角形で 考えることはできないか.sinが出てくるので正弦定理を考える.三角形の3
辺をa, b, c
, 外接円の半径をR
とするとa = 2R sin α, b = 2R sin β, c = 2R sin γ
すると,sin α sin β sin γ = a 2R · b
2R · sin γ = 1 2R 2 · 1
2 · ab sin γ
問題は角度のみに関することなのでR = 1
としても一般性を失わない.3.
第三の解だ.『数学対話』「凸多角形と凸関数」にある.関数の凸性を用いるものである.こ こにそれを再録しよう.解
1
γ
を消去し,βを固定して考える.α + β + γ = π
でγ > 0
よりα + β < π,つまり 0 < α < π − β,この範囲の α
に対してf (α) = sin α sin β sin γ = sin α sin β sin(α + β )
とおく.sin
α sin(α + β) = 1
2 { cos β − cos(2α + β) }
なのでf (α) = sin β { cos β − cos(2α + β) }
ここで
α < 2α + β < π + α
かつsin β > 0
だからf (α)
が最大になるのはcos(2α + β ) = − 1
のと き.つまり2α + β = π
のとき.このとき最大値は1
2 sin β (cos β + 1)
である.sin β(cos β + 1) =
√
sin 2 β(cos β + 1) 2 = √
(1 − cos 2 β)(cos β + 1) 2
= √
(1 − cos β)(cos β + 1) 3
β
の変域は0 < β < π
である.t = cos β
とし,g(t) = (1 − t)(t + 1) 3 ( − 1 < t < 1)
とおく.g 0 (t) = 2(1 − 2t)(t + 1) 2
よりt = 1
2
で最大になる.t= cos β = 1
2
より,β = π
3
.このときα = γ = π
3
である.∴ 求める最大値
= (
sin π 3
) 3
= ( √
3 2
) 3
= 3 √ 3 8
□ 解
2
α > 0, β > 0, γ > 0, α+β +γ = π
より,この3
角を内角とする三角形が存在する.sin α sin β sin γ
の最大値を求めるためには,三角形の外接円の半径を1
としてよい.三つの角の対辺の長さをa, b, c
とすると正弦定理よりa = 2 sin α, b = 2 sin β, c = 2 sin γ
すると,sin α sin β sin γ = a 2 · b
2 · sin γ = 1 2 · 1
2 · ab sin γ
t O
H P
P
したがって求める最大値は,半径
1
の円に内接する三角形 の面積の最大値の1
2
になる.最大値を求めるために,外心 から一つの辺への垂線OH
の足の長さをt
とおく.動くも のはもう一つこの垂線を下ろした辺に対する頂点P
である.t
を固定する.この頂点がP, O, H
の3
点が1
直線上に来 るとき三角形の面積は最大になる.底辺の長さが
2 √
1 − x 2
で高さがt + 1
なので面積はS(t) = √
(1 − t 2 )(1 + t) 2 = √
(1 − t)(1 + t) 3
となる.結局,解1
と同じ式になり,t= 1
2
のとき最大で,最大値は3 √ 3 8
.このとき三角形は正三角形である. □
解
3
O y
x G
y = log(sin x) π
A B
C
0 < x < π
に対しf (x) = log(sin x)
とおく.f 0 (x) = cos x
sin x , f 00 (x) = − 1 sin 2 x < 0
よって,曲線y = f (x)
は上に凸である.したがって,3点
A(α, f (α))
,B(β, f (β))
,C(γ, f (γ))
でつくる4 ABC
は領域y < = f (x)
に ある.G
( α + β + γ
3 , f (α) + f (β) + f (γ) 3
)
とおくと
G
は4 ABC
の重心であり,4ABC
の内部にある.したがって
G
も領域y < = f (x)
にある.つまりf(α) + f (β) + f (γ)
3 < = f
( α + β + γ 3
)
= f ( π
3 )
が成り立つ.
∴
1
3 log(sin α sin β sin γ) < = log (
sin π 3
)
sin α sin β sin γ < = ( √
3 2
) 3
= 3 √ 3 8
ここで
G
がy = f (x)
上に来るのは3
点が一致するときのみ.つまり等号成立はα = β = γ
のと きのみ.つまりsin α sin β sin γ
はα = β = γ = π
3
のとき最大値は3 √ 3
8
をとる.吟味
さてこの三つの解法を比較検討してみよう.2変数の関数の最大値は.まず
1
変数を固定し順次最 大値を定めていけ,という考え方は一般的だ.こういう場面でそれが思い起こせるようにしたい.第
1
の解法でα
の関数として考えるということがはっきりしていれば,数学III
範囲になるがf (α) = sin α sin β sin(α + β)
を直接微分してもできる.
f 0 (α) = cos α sin β sin(α + β ) + sin α sin β cos(α + β)
= sin β sin(2α + β )
したがって
2α + β = π
となるα
で極大かつ最大になることが判る.β を動かすときもそのまま微 分してもよい.ぜひ確認してほしいが,これは別解というほどのこともない.それに対して第
2
の解法は三角形の面積に還元するうまい方法だ.しかしこれをn
個の変数の場 合に一般化することは難しい.第3
の方法は,n個の変数の場合に一般化できる.『数学対話』「凸 多角形と凸関数」にある.n
個のα 1 , α 2 , · · · , α n
はすべて正でα 1 + α 2 + · · · + α n = π
のときsin α 1 sin α 2 · · · sin α n < =
( sin π
n ) n
がいえるか.と考えて,これを解決したものだ.
これを解
2
の方法でやるのは難しい.解1
の方法なら,順次最大になる位置を決めていけば不可 能ではないが,複雜になる.2 方程式と恒等式
2.1 91
お茶の水問題
a
が1
でない任意の定数のとき,2次方程式3(a − 1)x 2 + 6x − a − 2 = 0
は,0
と1
の間に少なくとも1
つの解をもつことを示せ.方針
1.
区間の端点での関数値の符号と,2
次関数の軸での場合分けを基本にして,解の配置を調べる.2.
区間の端点および区間の中点での関数値の符号を調べる.3.
区間の端点での関数値の符号と,関数のグラフがつねに通る定点を調べる.4.
関数を区間で定積分する.解
1
f (x) = 3(a − 1)x 2 + 6x − a − 2
とおく.f (0) = − a − 2, f (1) = 2a + 1
である.(i) f (0)f (1) < 0,つまり (a + 2)(2a + 1) > 0
のとき,中間値の定理から方程式f (x) = 0
は0 < x < 1
に解をもつ.(ii) (a + 2)(2a + 1) < = 0
のとき.つまり− 2 < = a < = − 1
2
のとき.放物線
y = f (x)
は上に凸であり,f (0) = − a − 2 < = 0 , f (1) = 2a + 1 < = 0
である.f(x)
の判別式をD
とするとD/4 = 9 + 3(a − 1)(a + 2) = 3(a 2 + a + 1) = 3 {(
a + 1 2
) 2
+ 3 4
}
> 0
さらにこの範囲の
a
に対しf (x)
の軸x = 1 1 − a
は1
3 < = 1 1 − a < =
2 3
にある.したがって
f (x) = 0
は区間0 < = x < = 1
に2
実数解をもち,f(0) < 0, f(1) < 0
の少 なくとも一方が成立するので,0< x < 1
に少なくとも1
つの実数解をもつ.(i), (ii)
より方程式f (x) = 0
は0 < x < 1
に少なくとも1
つの実数解をもつ.解
2
(i) f (0)f (1) < 0
のときまでは解1.
と同じ.(ii) (a + 2)(2a + 1) < = 0
のとき.つまり− 2 < = a < = − 1
2
のとき.f ( 1
2 )
= 3
4 (a − 1) + 3 − a − 2 = − a + 1 4 > 0
放物線y = f (x)
は上に凸であり,f (0) = − a − 2 < = 0 , f (1) = 2a + 1 < = 0
である.よって
f (x) = 0
は区間0 < = x < = 1
に2
実数解をもち,f(0) < 0, f(1) < 0
の少なく とも一方が成立するので,0< x < 1
に少なくとも1
つの実数解をもつ.解
3
f (0) < 0
は− 2 < a
と,f(1) < 0
はa < − 1
2
とそれぞれ同値である.aの2
つの範囲をあわせる と実数全体になるので,任意の実数a
に対してf (0) < 0
またはf (1) < 0
の少なくとも一方が成立 する.f (x) = a(3x 2 − 1) − 3x 2 + 6x − 2
からf ( 1
√ 3 )
= − 3 ( 1
√ 3 ) 2
+ 6 ( 1
√ 3 )
− 2 = 2 √
3 − 3 > 0
したがって0 < x < 1
√ 3
または1
√ 3 < x < 1
の少なくとも一方の区間にf (x) = 0
は解をもつ.解
4
I =
∫ 1 0
{ 3(a − 1)x 2 + 6x − a − 2 } dx = [
(a − 1)x 3 + 3x 2 − (a + 2)x ] 1 0 = 0
区間
0 < x < 1
でf (x) > 0
またはf (x) < 0
ならI > 0
またはI < 0
となり,I= 0
に矛盾する.よって方程式
f (x) = 0
は0 < x < 1
に少なくとも1
つの実数解をもつ.吟味
1.
これはいちばん標準的な解法である.その場合でも先に区間の端点の符号を調べておく方が 簡明である.2. 2
次関数の場合,多くは区間の中点の符号で判断できる.これは知っておきたい.3.
任意のa
で成立するのだから,aに関係ないx
の値を調べようとした.4.
これは3(a − 1)x 2
という形から試したのだ.問題作成の舞台裏である.2.2 01
慶応理工問題
実数
a, b, c
に対しg(x) = ax 2 + bx + c
を考え,u(x)をu(x) = g(x)g ( 1
x )
で定義する.
(1) u(x)
はy = x + 1
x
の整式v(y)
として表せることを示せ.(2)
上で求めたv(y)
は− 2 < = y < = 2
の範囲のすべてのy
に対してv(y) > = 0
であることを示せ.方針
1.
実際に2
次式で計算しよう.後半は,軸での場合分けということになる.2. y
を条件の範囲に固定したとき,xはどのように定まるのか.xは2
解の積が1
の重解か虚 数解である.f(x)
の係数は実数である.これを考えることで別の方法が見える.解
1
(1)
g(x)g ( 1
x )
= (ax 2 + bx + c) ( a
x 2 + b x + c
)
= ac (
x 2 + 1 x 2
)
+ b(a + c) (
x + 1 x
)
+ a 2 + b 2 + c 2
= ac (
x + 1 x
) 2
+ b(a + c) (
x + 1 x
)
+ (a − c) 2 + b 2
確かにv(y) = acy 2 + b(a + c)y + (a − c) 2 + b 2
と表される.(2)
v( − 2) = 4ac − 2b(a + c) + (a − c) 2 + b 2 = (a + c − b) 2 > = 0 v(2) = 4ac + 2b(a + c) + (a − c) 2 + b 2 = (a + c + b) 2 > = 0
なので,y 2
の係数の符号と軸の位置を考えて場合分けする.ac < = 0
,またはac > 0
で¯¯
¯¯ b(a + c) 2ac
¯¯ ¯¯ > 2
なら,−2 < = y < = 2
でv(y) > = 0
.ac > 0
でかつ¯¯
¯¯ − b(a + c) 2ac
¯¯ ¯¯ < = 2
のときは,この条件の下で,v(
− b(a + c) 2ac
)
> = 0
を示せば よい.軸の条件は
b 2 (a + c) 2 < = 16 a 2 c 2
となるのでv
(
− b(a + c) 2ac
)
= − b 2 (a + c) 2 − 4ac { (a − c) 2 + b 2 } 4ac
= (a − c) 2 (4ac − b 2 )
4ac > = (a − c) 2 4ac
{
4ac − 16a 2 c 2 (a + c) 2
}
= 4ac(a − c) 4 (a + c) 2 > = 0
ゆえに題意が示された. □
解
2
(1) g(x)g(z)
は明らかにx
とz
の対称式である.したがってこれは基本対称式
x + z
とxz
の整式である.x + z
とxz
で表したもののz
に1
x
を代入する.g(x)g ( 1
x )
は
x + 1
x
とx · 1
x = 1
の整式となる.つまりy = x + 1
x
の整式として表せる.(2) − 2 < y < 2
の範囲y
を固定しy 0
とする.y 0 = x + 1 x
となるx
を求める.x 2 − y 0 x + 1 = 0
で,判別式
D = y 2 0 − 4 < 0
であるから,虚数解α
とα ¯
をもつ.さらに解と係数の関係から
α · α ¯ = 1
である.v(y 0 ) = g(α)g ( 1
α )
= g(α)g ( ¯ α) g(x)
は実数係数の整式であるからg(α)g ( ¯ α) = g(α)g(α) = | g(α) | 2 > = 0 y 0 = ± 2
のときy 0 = x + 1 x
はそれぞれ重解1
と− 1
をもつ.よって,v( ± 2) = g( ± 1)g ( 1
± 1 )
= g( ± 1)g( ± 1) = g( ± 1) 2 > = 0
となる.したがって
− 2 < = y < = 2
の範囲のすべてのy
に対してv(y) > = 0
であることが示された. □吟味
第
1
の解法の(2)
は次のようにもできる.v(y)
をb
で整理するとv(y) = b 2 + (a + c)b + acy 2 + (a − c) 2
となる.b
の2
次式と見た判別式はD = (a + c) 2 y 2 − 4 { acy 2 + (a − c) 2 } = (a − c) 2 (y 2 − 4)
となる.ゆえに
| y | < = 2
ならD > = 0
となり任意の実数b
に対してv(y) > = 0
なのだ.これは「より個別性を用いたうまい方法」には違いないし,見つければおもしろいが,なかなか 気づくとはかぎらない.
さて,より一般的な方法はないか.考えるヒントは
y = x + 1
x
と置いたとき,|y | < = 2
になるよ うなx
はどんなものかということだ.xは2
解の積が1
の重解か虚数解である.虚数解の場合2
解 はα
とα
とおけ,積が1
のなで1
α = α
だ.それが判れば,v(y) = g(x)g ( 1
x )
だから,
v(y)
の 問題をg(x)
の問題に還元できる.この方法では,2次式であることは用いていない.実数係数の 任意のと公式で成立する.2.3 01
京府医大問題
次の実数係数の三次式を
f(x)
とする.f (x) = x 3 + px 2 + qx + r
いま,二つの実数係数の整式g(x), h(x)
が次を満たすものとする.f (g(x)) = f (h(x))
: 恒等的に等しい このとき次のいずれかが成り立つことを示せ.(1) g(x), h(x)
: 恒等的に等しい.(2)
二つの整式g(x), h(x)
はともに定数である.方針
1.
まずf (x)
が三次式であることをそのまま使おう.簡単のため必要に応じてg(x)
等をg
と 書いてよい.2.
入試問題集の解答などには恒等式の原理を使わず,複雜にしているものもあるがこれは恒等 式の原理を適切に使ったうまい方法だ.さて問題はf (x)
がこのような形の三次式であるこ とは必要か,ということだ.f (x)
は実数係数のn
次多項式であるとしてもできないか.つまり式の具体的な形を用いな いでできないか.解
1
f (g) − f (h) = (g − h) { g 2 + gh + h 2 + p(g + h) + q }
これがすべての
x
で成立するので,g − h = 0
かg 2 + gh + h 2 + p(g + h) + q = 0
かのいずれかは 無数のx
で成立する.g− h = 0
が無数のx
で成立するとすれば,g(x), h(x)
がx
の整式なのでg(x), h(x)
は恒等的に等しい.同様にg 2 + gh + h 2 + p(g + h) + q = 0
が無数のx
で成立し,し たがって恒等的に成立するとする.g(x), h(x)
の次数が異なる場合,大きい方の次数をm > 0
とするとg 2 + gh + h 2 + p(g + h) + q
は2m
次の整式である.恒等的に0
ではあり得ない.g(x), h(x)
の次数が等しい場合,それをm
次としてg(x) = ax m + · · ·
,h(x) = bx m + · · ·
と 置く.このときg 2 + gh + h 2 + p(g + h) + q = (a 2 + ab + b 2 )x 2m + · · · )
となる.実数
a, b
に対してa 2 + ab + b 2 > 0
であるからもしm > = 1
ならこれが恒等的に0
にな ることはない.ゆえに
m = 0
で,g(x), h(x)はともに定数である. □ 解2
g(x)
が定数でないとする.g(x)
は実数係数の整式なので,x lim →∞ | g(x) | = ∞
一方,
f (x)
は整式で,関数f (x)
の極値は有限個なので| x |
を十分大きくとればt = g(x)
におい てf (t)
が単調であるようにできる.したがってこのようなx
に対してf (g(x)) = f (h(x))
ならg(x) = h(x)
である.これが
| x |
が十分大きいすべてのx
で成立する.g(x)
は整式なので,恒等的に成立する.次に
g(x) = c (定数)
とする.f (g(x)) = f (c) = f (h(x))
したがってh(x)
はすべてのx
に対してn
次方程式f (c) = f (x)
の解にいずれかに一致しなければならない.実数解は有限個なので少なくとの一つの解で,h(x) が一致するような
x
が無数にあるものがある.h(x)
は整式なので,恒等的にこの解に等しい,つまりh(x)
も定数である. □ 吟味解
2
のように考えると,f(x)は任意の実数係数の整式で成立することがわかる.大切なことなの で,恒等式の定義を書いておこう.整式の一致と恒等式の定義
f (x), g(x)
がx
についての整式であるとき,次の3
つの命題は同値である.またこのとき,等式f (x) = g(x)
は 恒等式であるという.2式の次数の小さくない方をn
とする.(i) f (x)
とg(x)
は同一の式である.つまり,次数が等しくかつ同じ次数の項の係数が等しい.(ii)
任意のx
の値に対してf(x), g(x)
は同一の値をとる.(iii)
等式f (x) = g(x)
が異なるn + 1
個のx
の値に対して成り立つ.証明
(1) (i) ⇒ (ii) :
明白である.(2) (ii) ⇒ (iii) :
明白である.(3) (iii) ⇒ (i) : h(x) = f (x) − g(x)
はn
次以下の整式である.a i (1 < = i < = n + 1)
のあい異なるa i
に対して,h(ai ) = 0
であるから,因数定理より,h(x) = (x − a 1 )(x − a 2 ) · · · (x − a n+1 )Q(x)
と因数分解される.もし
Q(x) 6 = 0
なら,左辺の次数はn
以下であり,右辺の次数はn + 1
以上となる.よって矛盾が起こる.従ってQ(x) = 0
となりh(x)
は式として0
である.f(x)
とg(x)
は同一の式である.3
つの条件は互いに他の2
つの必要十分条件になっていることが示されているので,題意が示された. □
2.4 66
静岡大問題
a, b
を実数として{
cos 3θ + 2a cos 2θ + b cos θ = 0 sin 3θ + 2a sin 2θ + b sin θ = 0
をともに満足させる実数
θ
が存在するとき,a, bの満たすべき条件を求めよ.方針
1.
三角関数の連立方程式の問題として解ける.2.
この連立方程式の2
式はsin, cos
に関して同じ形をしている.ドモアブルの定理という,昨 今は習わないが,複素数の三角関数表示を用いることで,複素数の実部と虚部と見なす方が 自然だ.解
1
第
2
式から− 4 sin 3 θ + 3 sin θ + 4a sin θ cos θ + b sin θ = 0
これからsin θ = 0,
または− 4 sin 2 θ + 3 + 4a cos θ + b = 0
(1) sin θ = 0
の場合.整数n
でθ = nπ
とかける.これが第
1
式をみたせばよい.cos 3nπ + 2a cos 2nπ + b cos nπ
= ( − 1) 3n + 2a( − 1) 2n + b( − 1) n = 0
∴
1 ± 2a + b = 0 (2) θ 6 = nπ
で− 4 sin 2 θ + 3 + 4a cos θ + b = 0
の場合.この式は
4 cos 2 θ + 4a cos θ + b − 1 = 0 · · · ( ∗ )
となる.また,連立方程式の第1
式は4 cos 3 θ + 4a cos 2 θ + (b − 3) cos θ − 2a = 0
と変形できるので,この2
式から2 cos θ + 2a = 0
が得られる.つまり解があるとしたらそれは
cos θ = − a
.これを( ∗ )
に代入してb − 1 = 0
を得る.θ6 = nπ
のθ
が存在するために− 1 < − a < 1
.つまりb = 1 ( − 1 < a < 1)
. 以上あわせて,求めるa
とb
の条件は,1 ± 2a + b = 0,
またはb = 1 ( − 1 < a < 1)
□ 解
2
{ cos 3θ + 2a cos 2θ + b cos θ = 0 sin 3θ + 2a sin 2θ + b sin θ = 0
⇐⇒ cos 3θ + 2a cos 2θ + b cos θ + i(sin 3θ + 2a sin 2θ + b sin θ) = 0
⇐⇒ (cos θ + i sin θ) 3 + 2a(cos θ + i sin θ) 2 + b(cos θ + i sin θ) = 0
⇐⇒ (cos θ + i sin θ) 2 + 2a(cos θ + i sin θ) + b = 0 (∵ cos θ + i sin θ 6 = 0)
したがって二次方程式z 2 + 2az + b = 0
が絶対値1
の解をもてば,それに対してθ
が定まる.z = ± 1
が解になるときは1 ± 2a + b = 0
.虚数解
α
をもつときは,判別式の条件からa 2 − b < 0
.α· α = 1
からb = 1
.したがってまたa 2 < 1
あわせて
1 ± 2a + b = 0,
またはb = 1 ( − 1 < a < 1)
□ 吟味
このように,三角関数の計算なしにできてしまう.
本問は,実は私が高
3
のときに学校で使っていた問題集に載っていた問題だ.演習の時間にこの 問題があたった人は解1
の方法で解いて黒板に書いていた.私は解2
のようにやった.黒板の解を 見て,それよりもっと簡単にできるのに,と思ったことを覚えている.その解を書いた級友の名前 や教室の情景を今もそこだけ切り取ったようにくっきりと覚えているので,この解2
は自分自身に も印象深かったのだと思う.複素数では
a = 0
かつb = 0 ⇐⇒ a + bi = 0
なので,連立方程式を複素数一つの式にできる.その結果
cos θ + i sin θ 6 = 0
が使え,2次方程式 の問題になってしまう.連立三角方程式ではこの方法が有効なときがある.しかしさらに考えれば,これはそれほど別な解というわけではない.加法定理
{
cos(α + β ) = cos α cos β − sin α sin β sin(α + β) = sin α cos β + cos α sin β
と,複素数の等式(cos α + i sin α)(cos β + i sin β) = cos(α + β) + i sin(α + β)
は同等だ.この同等性が根拠になって,加法定理の計算がド・モアブルの定理の中に吸收され,三 角関数の計算がないように見えているだけのことだ.別解といっても同じ根っこから出てきた別解 である.私は高校生のときはまったく違う解法だと思っていた.
3 帰納法と直接証明
自然数を含む命題を証明するとき,数学的帰納法を用いるのが基本である.しかし,いわばそれ は「困ったときの帰納法」であって,直接示すこともまた試みてみなければならない.
3.1 02
福井大改題問題
次のように定義される 数列