韓国自治センターの転用事例にみる公共ストック空間の活用方法
―資源循環型社会に向けた公的施設環境形成に関する研究―
日大生産工(院) ○加藤 尚裕 CHANGJO EC CO., LTD 金 潤煥 日大生産工(院) 井草 敬太 日大生産工 広田 直行 日大生産工 川岸 梅和 日大生産工 北野 幸樹
The Method of Using The Seen Public Stock Space in The Diversion Case at The South Korea Autonomy Center
Takahiro KATOH, Yun-hwan KIM, Keita IGUSA, Naoyuki HIROTA Umekazu KAWAGISI and Kouki KITANO
1. はじめに
1.1 研究の背景と目的
環境負荷低減が世界的な課題となるなか,韓 国の住民自治センター(以下自治センター)で は 1999 年以降, 短期間で多数の施設が転用され,
住民の需要の変化に素早く対応し機能を変更し ている
1)。ストック空間の循環利用は,建設時 の工期を短縮させ廃棄物の発生を抑制すること ができるため, 様々な地域・分野で取り組みが みられる。韓国の自治センターの転用事例にお いても公共施設の資源循環型社会に向けた取り 組みの一つとして実態を把握することは意義の あることと考えられる。
韓国自治センターに関する既往研究としては,
ソウル特別市における自治センターの設置機能 について新築事例を対象に調査報告
文 1したも のがある。本研究では,特に変化の著しいソウ ル特別市の自治センターの転用事例を対象に自 治センターの転用方法の現状を把握し,公共ス トック空間の転用方法に有用な知見を得ること を目的とする。
1.2 研究の方法
韓国住民自治センター運営現状集のデータシ ートに基づきソウル特別市における自治センタ ーの転用事例を調査対象とする。ソウル特別市 は世界的に都市部の開発が著しく,施設の更新
(建て替え)の多い地域である。まず調査対象 となる自治センターの中から実態調査の対象事 例を抽出する。抽出方法はソウル特別市の 504 事例を建設年では5年毎に,延床面積では 200
㎡毎に分類し,その中から無作為抽出する。実 態調査では,洞事務所
2)の所員に対するヒアリ ングと, 施設の改修箇所の実態確認調査を行う。
調査対象事例を表 1 に示す。
表1 施設概要
1 中区 1960 377
2 鍾路区 1965 2006 231
3 鍾路区 1966 244
4 中区 1971 386
5 道峰区 1977 2002 未確認
6 銅雀区 1980 99
7 江西区 1980 2008 4105
8 龍山区 1984 2006 未確認
9 銅雀区 1987 145
10 中区 1988 640
11 松坡区 1989 351
12 城東区 1989 287
13 中浪区 1989 413
14 江南区 1992 1574
15 東大門区 1992 297
16 陽川区 1992 861
17 松坡区 1993 598
18 西大門区 1993 231
19 江西区 1994 2269
20 鍾路区 1995 158
21 永登浦区 1996 838
22 江南区 1997 3168
23 中浪区 1997 538
24 冠岳区 1997 667
25 江西区 1997 1073
26 江南区 1998 1960
27 西大門区 1998 300
事例
番号 区名 建設年 新築 自治セン ター延床面
積(㎡)
1.3 自治センターの設置数の変遷と実態 ソウル特別市における自治センターの設置数 の変遷を表 2 に示す。 文献データで 2007 年時に おけるソウル特別市の自治センター数は 522 事 例となっている。 しかし今回の実態調査の結果,
統廃合により自治センターの数が減少している ことを確認している。
2. 自治センターの整備方法
2.1 転用時における整備方法の分類
図 1・表 3 は,今回の調査でみられた自治 センターにおける転用時の整備方法を図式化し 分類したものとその集計データである。
自治センターは予備軍と洞事務所として使わ れていた施設に自治センターの機能を複合させ ることで整備されている。 (1)は,データシー トと実態調査の内容に大きな変化が見られなか った事例である。また(1)には,1999 年以降 自治センターへ転用してから現在に至るまでに リモデリングによる再整備が行われている事例 があるが,自治センターが統合しない場合は政 府からの資金は出ない。
(2) (3)は,自治センターの統廃合の際に既 存の施設を利用して統合するものと,既存の施 設を使わずに新設するものとの違いをみること ができる。 (2)は機能的耐用年数を補うために リモデリングによる対応をとるのに対し, (3)
は物理的耐用年数により施設を建て替え洞事務 所や予備軍と共に自治センターを移動している。
自治センターの統廃合によって発生する余剰 施設については,基本的に福祉施設として転用 される方向が決定されていることがヒアリング 調査より確認されている。
2.2 施設の利用圏域と配置方法
自治センターの利用圏域は一施設あたり半 径約 600m,対象人数はソウル市内の人口に対 する自治センター総数の割合より一施設あたり 約 20,600 人として整備され, 住所により定めら れた小学校の学区域と同じである。この圏域に 満たない自治センターは,周辺の自治センター の規模や地域の人口によって調整され統廃合さ れる。ヒアリング調査から,政府のインターネ ットの処理能力向上による事務作業の軽減が洞 事務所を縮小させ自治センターを統廃合させる 原因となることが確認できている。統廃合され た自治センターは結果的に利用圏域が広くなる ため,利用者の要望も増え施設に求められる処 表 2 ソウル特別市における自治センターの設置状況
調査対象発刊年 参考文献
504※ 2002 韓国住民自治センター運営現状集 2005 韓国社会教育・生涯学習
2007 韓国行政自治部・行政自治統計年報 本研究の参考文献
※ 残り 6事例は建設年,延床面積の記載がないため調査の対象外とした 自治センター総数
510 518 522
(事例)
図 1 実態調査に基づく転用方法の分類 表 3 建設年と類別転用方法の関係
1 2 3 1 2 3
1 1960 ○ 15 1992 ○
2 1965 ○ 16 1992 ○
3 1966 ○ 17 1993 ○
4 1971 ○ 18 1993 ○
5 1978 ○ 19 1994 ○
6 1980 ○ 20 1995 ○
7 1980 ○ 21 1996 ○
8 1987 ○ 22 1997 ○
9 1987 ○ 23 1997 ○
10 1988 ○ 24 1997 ○
11 1989 ○ 25 1997 ○
12 1989 ○ 26 1998 ○
13 1989 ○ 27 1998 ○
14 1992 ○ 事例 15 8 4
% 56 30 15 事
例 番 号
建設年
分類
事例 番 号
建設年
分類
計
理能力も高まり,リモデリングもしくは新設に よる対応が必要となる。
3. 予備軍と洞事務所の設置状況
自治センターは予備軍と複合されている。本 章では実態調査でみられた自治センターにおけ る予備軍と洞事務所の設置状況を考察する。
調査の結果,洞事務所は基準階に設置され,
予備軍は地下階もしくは最上階に設置されてい る。 予備軍が最上層階に設置されているときは,
地下階が体力鍛錬室となっている傾向がみられ る。 いずれの場合も直通階段が備えられている。
自治センターはこれらの室を住民の要求にあわ せて内部空間を転用している。
4. 施設の整備方法
4.1 施設別改修工事の実態
本章では調査の結果有益な回答が得られた 23 事例の改修内容と,新築事例の 4 事例につい
てまとめる。また,この中で改修工事期間中に 調査することができた事例 10 と, 増築改修を行 っている事例 16, 18 に関する調査結果を報告す る。事例別改修内容を表 4 に示す。
表 4 から,新築事例は 1984 年以前に建設され た古い事例から新築されていることがわかる。
改修内容をみると,内装はリモデリングされ 易く,増築されにくいことが伺える。自治セン ターが合併されない場合,政府からの補助金が 出ないというヒアリング調査の結果より,低コ ストで工事可能な内装から整備されていくとい うことがいえる。
事例 10(写真 1,2)では,床・天井・壁・ガ ラス・外壁の改修工事を直接確認することがで きている。内装工事では洞事務所の機能を活か したまま自治センター部分を段階的に改修して いくことにより,最大限使用しながらの改修と なっており,2 フロア毎に洞事務所を移動させ て工事を行う。外装工事は従来の外壁の上に新
写真 1 内部から見たサッシュと上張する外 壁の様子
写真 2 床の張り替えの様子 増築 外装 内装
1 1960 不明
2006年リモデリング時2 1965
別の敷地に新設3 1966 4 1971
5 1978
2003年新設6 1980
7 1980
2008年新設8 1984
9 1987 不明
10 1988
2008年改装11 1989
12 1989 不明
13 1989
間仕切りなくして大部屋へ14 1992
間仕切り15 1992
16 1992 不明
内装,屋上にペントハウスを増設17 1993 不明
床の張り替え18 1993
階段増設、柱そのまま19 1994 不明
20 1995 不明
21 1996 不明
22 1997 不明
2階マルチメディア室に絨毯23 1997 不明
内装、9月にさらにリモデリング24 1997 不明
25 1997 不明
26 1998 不明
床を上げて階段室の講堂27 1998 不明 不明
事 例 番 号
建設年 改修内容 備考
新築
※ 不明はヒアリングの確認ができていないもの
表 4 事例別改修内容
しくカーテンウォールによって覆う工法が一般 的であることが確認されている。
事例 16(写真 3)では,屋上にペントハウス
4)