高齢者ショートステイにおける生活相談員の悩みと は何か : 全国調査における自由記述の分析を通し て
著者 口村 淳
雑誌名 評論・社会科学
号 97
ページ 81‑91
発行年 2011‑09‑30
権利 同志社大学社会学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012562
要約:本研究の目的は,高齢者ショートステイにおける生活相談員の悩みを明らかにした 上で,それらに対する改善の方向性を示すことである。無作為抽出した全国の短期入所生 活介護500ヵ所に調査票を送付し,生活相談員253人から回答を得た。そのうち自由記述 欄に記載のあった157人を分析対象とした。
分析の結果,「業務に関する悩み」「援助に関する悩み」「窓口役としての悩み」など7個 のカテゴリに分類された。また,記述の数量的把握では,業務量が多いという記述が最も 多くみられた。このことから,施設における他職種との業務分担の必要が示唆された。
キーワード:ショートステイ,生活相談員,業務上の悩み,自由記述の分析
目次
1 研究の背景と目的
2 研究方法
2−1 研究対象および方法
2−2 分析方法
2−3 倫理的配慮
3 研究結果
3−1 分析対象施設の概要
3−2 ショートステイにおける相談員の悩みの構成要素 3−3 相談員の悩みに関する数量的把握
3−4 悩みの構成要素と基本属性の関係
4 考察
5 提言
1 研究の背景と目的
短期入所生活介護(以下,ショートステイ)は,在宅の要介護高齢者が短期間施設に 入所し,介護等を受けるサービスのことである。介護保険制度における在宅サービスの 一つに位置づけられている。ショートステイについては「介護負担の軽減に果たす役割
────────────
†同志社大学大学院社会学研究科博士後期課程
*2011年6月29日受付,2011年6月30日掲載決定
論文
高齢者ショートステイにおける生活相談員の 悩みとは何か
──全国調査における自由記述の分析を通して──
口村 淳
†81
は高く評価されているが,その一方で,利用する高齢者・家族やショートステイ実施施 設から,さまざまな問題が指摘されていることも事実である」(村田
2005)という指摘
がある。たとえば,ショートステイ利用による心身への悪影響(大渕ら2001),利用者
本人の視点の脆弱さ(田中1998),断続的なサービス形態であるがゆえに利用者に関す
る情報収集が困難な点(口村2008)などをあげることができる。こうした諸問題を解
決していくには,施設のソーシャルワーカーといわれる生活相談員(以下,相談員)が 重要な役割を担うと考えられる。しかし,ショートステイの相談業務は法令で明確に位 置づけられているわけではない。また,相談業務に関する代表的なマニュアル(神奈川 県高齢者福祉施設協議会2007;東京都社会福祉協議会 2010)も特別養護老人ホーム
(以下,特養)を中心に記載されている傾向がある。そうした中,ショートステイに携 わる相談員は,日々手探りの状態で業務を遂行しているのではないだろうか。
一方,ショートステイ運営研究会によると,利用者やスタッフからの苦情が多いこと などが理由で,ショートステイの担当者は離職率が高いとされている(ショートステイ 運営研究会
2010 : 54)。こうした事態を改善していくためには,まず相談員の抱える悩
みの実態を把握する必要があるだろう。そこで本研究では,ショートステイにおける相 談員の悩みの構成要素を明らかにした上で,相談員からみたショートステイの問題につ いて検討する。さらに,問題に対する改善の方向性を示したい。2 研究方法
2−1
研究対象および方法研究対象は,「平成
17
年度介護サービス施設・事業所調査名簿」(厚生労働省大臣官 房統計情報部社会統計課2005)に記載されている短期入所生活介護 6,216
施設から,無 作為抽出(系統抽出法)した500
施設に所属する生活相談員(1施設あたり1
人)であ る。方法は無記名,自記式の調査票を作成した上で,各施設の施設長宛てに目的と内容 を記した依頼書と調査票を郵送した。施設長から相談員に記載を請う形で実施した。調 査の内容は,施設・回答者の基本属性,相談員業務の内容のほか,「日頃の業務で悩ん でいること,困っていることがあれば自由に記述してください」という項目で自由記述 を求めた。調査期間は2010
年10
月1
日から31
日(1ヶ月間)であり,回収率を向上 させる工夫として,10月下旬に督促状を1
回送付した。2−2
分析方法分析は,特養の看護職者の悩みを分析した加瀬田ら(2005)を参考に行った。カテゴ リ生成の信頼性を確保する目的で,筆者のほかに研究協力者
1
人(1)とともに分析作業を高齢者ショートステイにおける生活相談員の悩みとは何か 82
行った。具体的な分析手続は以下のとおりである。
手順①:自由記述欄から「悩みや困っていること」が記載されている記述文を選択 し,該当する部分にアンダーラインを引く。手順②:アンダーラインを引いた部分を短 文化する。手順③:短文を意味内容が類似するもので分類し,内容をまとめすぎない程 度に端的に文章表現する(小カテゴリ)。手順④:小カテゴリの意味内容が類似してい るもので分類し,内容を端的に表すネーミングをする(中カテゴリ)。手順⑤:同様の 方法で,中カテゴリをまとめ,大カテゴリを抽出する。なお,分析の具体例を表
1
に示 す。2−3
倫理的配慮調査依頼書に研究目的と倫理的配慮(プライバシーの保護,無記名であること,研究 目的に限定した調査結果の使用,施設や個人が特定されない形での分析と公表)を明記 した。また,研究に対する問い合わせにはいつでも応じる準備があることを明記し,連 絡があった際には誠意をもって対応した。
3 研究結果
研究対象の施設へ調査票を郵送したところ,施設の休止が理由で,発送元へ
2
通が返 送された。これらを除いた498
施設のうち,回収数は253
施設(50.6%)であった。こ のうち自由記述欄に記載があったのは163
人であり,さらに,悩みが具体的に記載して あったのは157
人であった。今回はこの157
人を分析対象とした。表1 記述文の分析過程の具体例
原文 短文 小カテゴリ 中カテゴリ 大カテゴリ
特養との併設であるため,業務量が 非常に多いという現状です。新規の 受入れ調整の際,看護師との協働が スムーズでない場合があり,調整に 苦慮することが多いです。行き過ぎ た権利意識の高い利用者や家族が増 えてきており,対応が難しくなって きていると感じています。稼働率が 上がるにつれ,職員の負担が増すた め,ストレスマネジメントをどうす るか。対応困難な利用者(行動障害 がある場合など)の受け皿となるべ く動いているが,実際それにともな う体制を整えることが難しく,課題 となっている。
業務量が非常に多
い 業務量の多さ 業務量の問題 業務に関する悩 み
看護師との連携が スムーズにいかな い
看護師との連携困難 スタッフとの 連携困難
スタッフとの関 係による悩み 過度に権利意識の
高い利用者・家族 への対応
利用者・家族からの 無理難題要求
利用者への対 応
援助に関する悩 み
稼働率が上がると 職員の負担が増す
稼働率が上がると現 場に負担がかかる
現場と経営者 との板挟み
スタッフとの関 係による悩み 行動障害のある利
用者の受入れが課 題
認知症の周辺症状の 顕著な人の受入れ
困難ケースへ の対応
援助に関する悩 み
高齢者ショートステイにおける生活相談員の悩みとは何か 83
3−1
分析対象施設の概要施設の属性と回答者の属性を表
2
に示す。事業形態では,併設型が84.7% と多かっ
た。居室形態では,個室と多床室の混合が42.7% と多かった。事業開始年は,平成 11
年以降が約6
割を占めた。定員は,16〜20人が34.4% で多かった。回答者属性では,
男性が
54.1%,女性が 45.9% であった。年齢は,30
代が全体の半数を占めていた。取得資格を複数回答で尋ねたところ,社会福祉主事が
63.1% で最も多く,次いで介護福
祉士の
56.7% であった。施設ケアマネを兼務している人は約 2
割であった。3−2
ショートステイにおける相談員の悩みの構成要素分析の結果,短文
364,小カテゴリ 121,中カテゴリ 43,大カテゴリ 7
が抽出された(表
3)。以下,大カテゴリを【 】,中カテゴリを『 』,小カテゴリを〈 〉,原文を
「イタリック」を用いて標記する。
【援助に関する悩み】は,『医療依存度の高い利用者の受入れ』『困難ケースへの対応』
など,主に援助上の困難から生じる内容で構成されている。【業務に関する悩み】は,
『業務量の問題』『相談員の役割が不明確』などから構成されている。【制度による制約 への悩み】は,〈法律による縛りが多い〉といった『法制度への不満』などから構成さ れている。【スタッフとの関係による悩み】は,『ショートステイに対するスタッフの姿
表2 施設・回答者の基本属性
n=157
施設の基本属性 回答者の属性
事業形態
単独型 併設型 その他
21 13.4%
133 84.7%
3 1.9%
性別 男性 女性
85 54.1%
72 45.9%
年齢
20代 30代 40代 50代以上 不明
30 19.1%
81 51.6%
21 13.4%
24 15.3%
1 0.6%
居室形態
ユニット型個室 従来型個室 多床室
個室と多床室の混合 その他
不明
21 13.4%
14 8.9%
53 33.8%
67 42.7%
1 0.6%
1 0.6% 現施設
における 経験年数
1年未満〜5年 6〜10年 11年以上
110 70.1%
37 23.6%
10 6.3%
事業開始年
平成以前 平成元年〜5年 平成6年〜10年 平成11年〜15年 平成16年〜
17 10.8%
19 12.1%
28 17.8%
65 41.4%
28 17.8% 取得資格
(複数選択)
社会福祉士 介護福祉士 精神保健福祉士 管理栄養士 介護支援専門員 社会福祉主事 訪問介護員 その他
41 26.1%
89 56.7%
5 3.2%
1 0.6%
76 48.4%
99 63.1%
39 24.8%
9 5.7%
定員
1〜5人 6〜10人 11〜15人 16〜20人 21人以上 不明
19 12.1%
50 31.8%
16 10.2%
54 34.4%
16 10.2%
2 1.3%
施設ケアマネ との兼務
している していない
30 19.1%
127 80.9%
高齢者ショートステイにおける生活相談員の悩みとは何か 84
表3 カテゴリ一覧
小カテゴリ(短文数) 中カテゴリ 大カテゴリ 小カテゴリ(短文数) 中カテゴリ 大カテゴリ 医療依存度の高い利用者の受入れ(7)
医療依存度の 高い利用者の受入れ
援 助 に 関 す る 悩 み
スタッフがショートステイに消極的(2)
ショートステイに 対するスタッフの姿勢
ス タ ッ フ と の 関 係 に よ る 悩 み 胃ろうの利用者の受入れ(1) スタッフのショートステイに対する理解不足(1)
インスリン注射の利用者の受入れ(1) スタッフが在宅を理解していない(5)
在宅酸素療法患者の受入れ(1) 現場スタッフからクレームをいわれる(1)
看とり段階の利用者の受けれ(1) 稼働率が上がると現場に負担がかかる(2)
現場と経営者との板挟み 家族の要望に応える(3)
家族への対応
現場と経営者の板挟みになる(3)
家族への対応が難しい(7) 施設方針と現場の意見の食い違い(1)
家族への希望に添えきれない(1) 介護職への教育に手が回らない(1)
スタッフ教育
家族からの要望が多い(1) スーパービジョンが未実施(1)
利用者と家族の調整が難しい(1) 職員間のトラブルへの対応(2)
体調急変時の対応(6)
急変時の対応 年輩者へのスーパービジョンが困難(1)
夜間の急変時の対応(2) スタッフの教育が不十分(1)
職員主体のケアになっている(1)
援助の質の問題
看護師と家族の関係調整(1) スタッフと家族の関係調整 ケアの統一がはかりにくい(2) 現場スタッフとの意見の食い違い(3)
スタッフとの意見の相違 ソーシャルワークができていない(2) 施設長との意見の相違(1)
新規利用者の受入れが難しい(1) 介護職との連携困難(1)
スタッフとの連携困難
現場の問題解決が負担(1) 看護師との連携困難(3)
困難ケースの受入れ(2)
困難ケースへの対応
現場スタッフとの連携困難(8)
認知症の周辺症状の顕著な人の受入れ(4) 上司との連携が困難(3)
マンツーマン対応の必要な利用者の受入れ(3) スタッフとの情報共有が困難(3)
トラブル発生時の対応(1) 利用者とスタッフの板挟み(1) 利用者とスタッフの板挟み
相談内容の複雑化(1) 受入れ可否の判断が難しい(2) 受入れ可否の判断
窓 口 役 と し て の 悩 み 家族と利用者の意見の食い違い(4) 家族と利用者の意見の相違 稼働率が下がると上司に責められる(1)
稼働率向上 利用者の要望への対応が困難(7)
利用者への対応
稼働率の向上が課題(3)
人間関係の調整が困難(1) 緊急的な利用への対応が難しい(4) 緊急受入れ
利用者・家族からの無理難題要求(3) ケアマネとの連携(1)
ケアマネとの関係 環境への適応が難しい(1) ケアマネのショートステイに対する理解不足(1)
利用者と直接関わる時間が少ない(8) リスクに対する理解不足(1)
業務の範囲が多岐にわたる(7)
業務範囲が広範
業 務 に 関 す る 悩 み
利用目的が不明確(1)
レセプト業務が負担(1) 新規利用者の情報収集が困難(1)
業務量が多い(52) 情報収集
業務量の問題
利用者の把握が不十分(3)
残業を余儀なくされる(3) 主治医との連携が困難(1)
他機関との連携
事務が後回しになる(5) 他事業所との連携が困難(1)
事務量が多い(5) 他事業所と交流が少ない(2)
情報量が多い(1) 担当者会議への出席が負担(2)
ケアプラン作成が追いつかない(1) ベッドコントロールに苦慮する(10) ベッドコントロール
日々の記録ができていない(1) 利用期間の調整が困難(4)
予約管理
利用者数が多い(1) 申込を断ることによる負担(3)
行事の準備に時間がかかる(1) 新規の依頼が受けにくい状況(1)
事前面接に時間がとられる(1) 長期間の利用が困難(2)
突発的な業務への対応が難しい(1) 特定の日に予約が集中する(2)
他業務との兼務が負担(11)
兼務による負担
オープンな職場環境ではない(1) 施設運営上の問題
労 働 環 境 に 関 す る 悩 み 施設ケアマネとの兼務が困難(1) 介護現場へ応援を要請される(8)
スタッフ不足
特養の業務との兼務(4) 現場スタッフの余裕がない(1)
受診の付添いが負担(3) 受診の付添い スタッフが不足している(4)
送迎業務の負担が大きい(13)
送迎業務 相談員の人数が少ない(1)
留守宅への送迎が困難(1) 従来型の古い設備しかない(1) 設備の老朽化
入退所が特定の曜日に集中する(1)
入退所業務の煩雑さ 休暇がとりにくい(2)
休暇に関する問題
入退所に関する業務が煩雑(2) 職場から呼び出しがかかる(1)
相談員の役割が不明確(14)
相談員の役割が不明確
精神的に負担が大きい(2)
仕事に対するストレス
何でも屋扱いされる(5) 責任が重大でストレスを感じる(2)
相談員の仕事が理解されにくい(4) 研修に参加できていない(1) 専門性の向上
専門性を発揮する場が少ない(1) 相談員が一人であり不安(1)
相談相手が不在 長期入所者との人間関係(2)
併設施設との関係 制 度 に よ る 制 約 へ の 悩 み
相談できる相手がいない(6)
ショートステイよりも特養が優先される(1) 感染症への対応(2) 感染症への対応
諸 リ ス ク に 関 す る 悩 み 法的に相談員が軽視されている(1)
法制度への不満
利用者・家族からの苦情対応(8)
相談員の配置基準の見直し必要(2) 苦情処理ができないと責められる(1) 苦情対応
法律による縛りが多い(1) 事故対応が困難(4) 事故対応
特養より下位の扱い(1) 転倒リスクの高い人への対応が困難(2) 転倒リスクへの対応 施設の許容範囲を超えている(1) プライバシーの確保が困難(1) プライバシーの確保 老健との制度間の矛盾(1)
高齢者ショートステイにおける生活相談員の悩みとは何か 85
勢』『スタッフ教育』など,相談員と他のスタッフとの見解の相違や,スタッフ教育の 難しさに関する内容が特徴である。【窓口役としての悩み】は,『受入れ可否の判断』
『稼働率向上』など,利用申込に対する応対や,経営努力に関連する内容などで構成さ れている。【労働環境に関する悩み】は,『スタッフ不足』『相談相手が不在』など,マ ンパワー不足から生じる問題や,同僚や先輩職員といった相談相手がいないことなどか ら成る。【諸リスクに関する悩み】は,『感染症への対応』『事故対応』などから構成さ れている。
3−3
相談員の悩みに関する数量的把握本項では,どのような悩みが多いのか数量的に把握したい。そこで,中カテゴリ(表
3)における短文数に着目し,多い順に整理をした。
回答者
157
人において1
割以上の回答があったものが,①『業務量の問題』(45.9%),②『相談員の役割が不明確』(15.3%),③『利用者への対応』(12.7%),④『スタ ッフとの連携困難』(11.5%),⑤『兼務による負担』(10.2%)の
5
点であった。次に,5% 以上の回答があったものが,①『送迎業務』(8.9%),②『スタッフ不足』
(8.9%),③『家族への対応』(8.3%),④『予約管理』(7.6%),⑤『医療依存度の高い 利用者の受入れ』(7.0%),⑥『困難ケースへの対応』(7.0%),⑦『ベッドコントロー ル』(6.4%),⑧『苦情対応』(5.7%),⑨『ショートステイに対するスタッフの姿勢』
(5.7%),⑩『急変時の対応』(5.1%),⑪『業務範囲が広範』(5.1%)の
11
点であっ た。3−4
悩みの構成要素と基本属性の関係本項では,大カテゴリにおける短文数と基本属性(事業形態,居室形態,定員,回答 者の性別,年齢,現施設での経験年数)をクロス集計することで,その関係性を把握し たい。全体の割合(表
2)を基数として,±10
ポイント以上の差がみられた項目につい て言及する(表4)。
事業形態別にみると,【制度による制約への悩み】は全員が併設型であった。居室形 態別では,混合型が【労働環境に関する悩み】と【諸リスクに関する悩み】のカテゴリ で,基数を
10
ポイント以上上回った。定員別では,「11〜20人」が【諸リスクに関す る悩み】に,「1〜10人」が【制度による制約による悩み】に多かった。性別では,【諸 リスクに関する悩み】において,基数と比べ男女比が逆転していた。また【制度による 制約への悩み】は,男性が9
割と多かった。年齢別では,【制度による制約への悩み】において「30代」が
8
割と多かった。現施設での経験年数では,「6〜10年」が【援助 に関する悩み】と【制度による制約への悩み】で基数を10
ポイント以上上回った。一高齢者ショートステイにおける生活相談員の悩みとは何か 86
方で「1年未満〜5年」が【諸リスクに関する悩み】に多くみられた。
4 考 察
ショートステイにおける相談員の悩みを分析した結果,構成要素として【業務に関す る悩み】【援助に関する悩み】【窓口役としての悩み】【スタッフとの関係による悩み】
【労働環境に関する悩み】【諸リスクに関する悩み】【制度による制約への悩み】が抽出 された。また,カテゴリの数量的把握から,特に『業務量の問題』が多いことが判明し た。さらに,カテゴリと基本属性との関係では,「現施設での経験年数」において基数 と異なる傾向が目立った。これらを受け本節では,以下の
3
点に絞り,考察を行いた い。第一に,【援助に関する悩み】のなかで,家族に関係する内容が多くみられた。ショ ートステイには,利用者の生活環境が移動することにともない,在宅の介護者である家 族と施設のスタッフが,交互に利用者を介護(援助)する「リレー」のような構造があ
る(口村
2008)。そのため,ショートステイでは利用者のみならず,家族との関係が重
表4 悩みの構成要素と基本属性の関係
全体(基数) 業務 援助 窓口 スタッフ 労働環境 諸リスク 制度
n=157 n=140 n=74 n=46 n=45 n=31 n=18 n=10
事業形態
単独型 21 13.4% 19 13.6% 9 12.2% 10 21.7% 6 13.3% 4 12.9% 3 16.7% 0 0.0%
133 84.7%119 85.0% 64 86.5% 35 76.1% 39 86.7% 27 87.1% 15 83.3% 10 100.0%
併設型
3 1.9% 2 1.4% 1 1.3% 1 2.2% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0%
その他
居室形態
個室 35 22.3% 34 24.3% 23 31.1% 15 32.6% 12 26.7% 4 12.9% 2 11.1% 1 10.0%
多床室 53 33.8% 45 32.1% 16 21.6% 13 28.3% 13 28.9% 8 25.8% 6 33.3% 4 40.0%
混合 67 42.7% 61 43.6% 35 47.3% 18 39.1% 20 44.4% 19 61.3% 10 55.5% 5 50.0%
その他 1 0.6% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0%
不明 1 0.6% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0%
定 員
1〜10人 69 43.9% 68 48.6% 27 36.5% 17 36.9% 17 37.8% 15 48.4% 7 38.9% 8 80.0%
11〜20人 70 44.6% 57 40.7% 37 50.0% 22 47.8% 21 46.7% 14 45.2% 10 55.6% 0 0.0%
21人〜 16 10.2% 15 10.7% 10 13.5% 7 15.3% 7 15.5% 2 6.4% 1 5.6% 2 20.0%
不明 2 1.3% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0%
性 別 男 85 54.1% 81 57.9% 38 51.3% 28 60.9% 23 51.1% 18 58.1% 6 33.3% 9 90.0%
女 72 45.9% 59 42.1% 36 48.6% 18 39.1% 22 48.9% 13 41.9% 12 66.7% 1 10.0%
年 齢
20代 30 19.1% 30 21.4% 15 20.3% 7 15.2% 9 20.0% 9 29.0% 5 27.8% 1 10.0%
30代 81 51.6% 71 50.7% 41 55.4% 25 54.3% 27 60.0% 17 54.8% 9 50.0% 7 80.0%
40代 21 12.7% 20 14.3% 11 14.8% 5 10.9% 3 6.7% 3 9.6% 1 5.6% 1 10.0%
50代以上 24 15.2% 17 12.1% 7 9.5% 9 19.6% 6 13.3% 2 6.5% 3 16.6% 1 10.0%
不明 1 0.6% 2 1.4% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0% 0 0.0%
現施設 での 経験年数
1年未満〜5年110 70.1%105 75.0% 43 58.1% 33 71.7% 33 73.3% 24 77.4% 15 83.3% 3 30.0%
6〜10年 37 23.6% 28 20.0% 29 39.2% 10 21.7% 10 22.2% 6 19.4% 1 5.6% 7 70.0%
11年以上 10 6.3% 7 5.0% 2 2.7% 3 6.6% 2 4.5% 1 3.2% 2 11.1% 0 0.0%
注1)個室は,ユニット型個室と従来型個室を合併した数値である。
注2)基数と比較して,±10ポイント以上の差がみられた項目を網かけで示した。
高齢者ショートステイにおける生活相談員の悩みとは何か 87
要視される。特養でも家族との関係が重要であることに変わりない。しかし,ショート ステイにおける家族は今まさに介護をしている立場にあり,介護に対する思い入れ等が 強い傾向がうかがえる。原文には「家族の本人(利用者)に対する思いがそれぞれ違 い,家庭環境も違うので,その方にあった対応が難しい 」(50代女性),「家族への対 応が細かくなるなかで,対応に困るケースも多い 」(30代男性),「利用中の転倒によ る怪我,体調不良が起こった時の家族対応において,心が折れることがあります 」(20 代女性)という記述がみられた。つまり,こうした家族の思いや過度な要望が,スタッ フには負担と感じる要因となっている可能性が示された。
第二に,中カテゴリの数量的な分析結果から,『業務量の問題』が,回答者の約半数 を占めていることが明らかになった。本調査の自由記述欄には,回答者に記述してもら いやすいよう,次のような例示をした。(例:業務量が多い,利用者本人の対応が難し い,家族の対応が難しい,相談相手がいない等)このことが,『業務量の問題』に関す る記述が多数みられたことに影響しているとも考えられる。しかし,それを差し引いた としても,他のカテゴリに比べ,『業務量の問題』が多数を占めていることに変わりな いだろう。東京都社会福祉協議会(2010 : 31)が実施した特養の相談員を対象とした 調査では,一日の平均残業時間が
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時間3
分と報告されており,ショートステイの相談 員にも同様の傾向があることがうかがえる。原文をみると,「ケアプラン作成業務のほ か,施設の運営管理業務等,業務が多岐にわたり,量も多い。現場における業務は,介 護主任に任せたいが,変則勤務であり,毎日施設にいないため,相談員が問題解決にあ たる場合が多い 」(40代男性)や「相談員としての職務だけを考えれば,業務量が多 いと感じることはないが,ユニットリーダーをはじめ,現場との組織内での位置づけで 大きく左右する仕事だと思う 」(20代男性)という記述がみられた。このことから,相談員単独の業務だけで考えるのではなく,施設内の他部署(他職種)との関連で捉え る必要があることが示唆された。
第三に,悩みの構成要素と基本属性をクロス集計したところ,「現施設での経験年数」
において全体の割合(基数)との差が目立った。なかでも「1年未満〜5年」の相談員 がリスクに対して腐心している傾向がみられた。「家族との信頼関係が築けていると思 っても,一度のミスで全てが台無しになる 」(30代男性)という記述からもわかるよ うに,時間をかけて築いてきた援助関係でも,事故等が原因で一瞬にして崩れてしまう 構図が,諸リスクに腐心する傾向に拍車をかけていると考えられる。特に経験年数の浅 い相談員にとって,事故処理や苦情対応などは,負担の重い業務であることがうかがえ る。
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5 提 言
これまでに得られた知見を踏まえ,問題の改善に向けた提言を行いたい。第一に,シ ョートステイにおける相談員の悩みの背景には,家族との関係が一定の影響を及ぼして いることが示唆された。そのためにも,トラブルが発生した時だけではなく,日頃から 家族との関係を良好に保っておく必要がある。とはいえ,必要以上に家族と接点をもつ ことで,家族に負担を強いるようなことは避けなければならない。具体的には,初回訪 問,送迎,入退所時,カンファレンスといった必然的に家族と顔を合わせる機会を活用 し,コミュニケーションをはかることで関係を深めていくことも有効であろう。
第二に,〈業務量が多い〉という記述が多くみられた。その背景には,相談員単独で はなく他部署(他職種)業務との関連で理解する必要があることが示唆された。なかに は,「介護職が不足しており,介護に入ることが多いのが大変 」(30代女性)のように 他職種の業務を手伝っているという事例も散見される。他職種を応援することは,同じ 組織で働く上で大切な姿勢ではある。しかし,相談員の業務だけで飽和している上に,
他職種業務に携わることは,施設の相談機能に支障をきたすことにもなりかねない。そ の意味でも,特に業務量が多い場合は,他職種に現状を伝えた上で,相談業務に専念す る姿勢を示すことも必要であろう。
第三に,経験年数の浅い相談員がリスクに対して腐心している傾向がみられたことか ら,リスクに関する業務を相談員のみに背負込ませ な い 体 制 が 望 ま れ る。岡 田 ら
(2008 : 46)は,事故・苦情の原因が施設側にあるにもかかわらず,現場職員の個人的 な責任にされる事例が少なくないと指摘している。相談員は施設の窓口的役割であるた め,リスクに関する業務から避けて通ることは難しい。しかし,相談員の負担を軽減す る意味でも,諸リスクに対して,組織レベルで責任共有できる体制を整備することが重 要と考えられる。
*本研究は「平成22年度同志社大学大学院高度化研究費」の助成を受けて行った。
註
⑴ 研究協力者は,筆者の所属する特養に勤務する相談員(社会福祉士,介護支援専門員)である。相談 職としてのキャリアは7年10カ月である。
参考文献
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岡田耕一郎・岡田浩子(2008)『だから職員が辞めていく−施設介護マネジメントの失敗に学ぶ』環境新聞 社.
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This study aims to clarify the concerns of residential social worker at short-stay daily-life service for the elderly, and to show the direction of improvement for them.
Questionnaires were sent to 500 short-stay facilities that sampled randomly, and 253 resi- dential social workers responded. 157 residential social workers that described in the free re- marks were analyzed.
As a result of analysis, it was classified in seven categories, such as “concerns about daily work”, “concerns about the helping”, and “concerns about reception service”. In a quantitative analysis of the free remarks, descriptions that there are a lot of workloads were the most fre- quent. From this knowledge, the need for sharing work with other profession in the facilities was suggested.
Key words: short-stay daily-life service for the elderly,residential social worker, concern about daily work,analysis of free remarks
Concerns of Residential Social Worker at Short-stay Daily-life Service for the Elderly :
An Analysis of Free Remarks about Social Worker’s Role on Nation-wide Survey Atsushi Kuchimura
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