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日本のもう一つの"拉致問題"とカナダ司法の対応

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(1)

日本のもう一つの"拉致問題"とカナダ司法の対応

著者 Jones Colin P.A, ジョーンズ コリン P.A

雑誌名 同志社法學

巻 60

号 7

ページ 927‑964

発行年 2009‑02‑28

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011660

(2)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九二七同志社法学 六〇巻七号

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応

Colin P. A. Jones

  (三九四五)

『不可能』な国に類するのは日本ぐらいのものだが認められたことがない、 てもらうことにかけては実績がある。決して子供の返還が『不可能』となる国々ではない。今までに一度も子供の返還 ない。バングラデシュ、イラン、レバノンは、連れて帰るのが『難しい』国ではあるが、連れていかれた子供を返還し   「に永しまえば、その事件は久っに解決され本日が供てなつ的れていかれ、一旦“国際なと連れ去り・留置事子”件

。」 1)

問題の所在

  国内ではさほど認識されていないが、日本は、海外で﹁親による子供の誘拐の安全な避難所﹂(

“h av en f or p ar en ta l ch ild a bd uc tio n”

)、いわば一種の﹁拉致大国﹂としての評価が定着しつつある。外国の法律に違反している場合でも、

(3)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九二八同志社法学 六〇巻七号

外国の裁判所の親権判決等に従わなかった場合においても、日本の親によってその子供が一度日本に連れ﹁戻されて﹂

しまえば、日本の裁判所が﹁子供の利益﹂等を理由に、そのような行為を承認してしまう場合がすくなくない。そのため、一見すると、日本の裁判所が、諸外国では犯罪となる行為に手を貸しているようにも評価できる。なかには、北朝

鮮と同質の﹁国家ぐるみの拉致﹂に例えて批判する外国人の声すらある

2)

  著者はこのような極端な主張はしない。確かに、親による子供の奪い合いの問題は深刻であり、日本においても特徴 的な問題だと言えるが、国際的な問題である以前に、国内の問題として未解決の要素が多いと考える

あ日たにも関わらず、突然無断で本てにつれて﹁帰られた﹂場合(いしのの人と日本人とら間子が、それまでは外国で暮 たその。め、外国 3)

るいは、日本にいる親戚を訪問する名目で﹁一時的に﹂日本に連れて来られ、子供がそのまま日本に留置された場合)の外国人の親が日本で経験する﹁被害﹂は、日本人同士の国内の事件とあまりかわらないかもしれない。しかしながら、

外国人の親が日本までやってきて、日本の裁判手続きを経て我が子の返還を求めた際に受ける失望や驚きは、日本人以上に大きいのではないだろうか。つまり、外国の裁判手続きで親権者になっている場合でも、子供は返してもらえない。

また、日本の裁判所が外国の裁判所の親権判決を承認した場合でも、子供の返還を強制する手段がほとんどない。さらには、親がもう一人の親の承諾なしに子供を海外に連れて行くことが、犯罪行為に該当し、その行為を差し止める外国

裁判所の命令が無視されている場合でも、日本の裁判所は現状を承認するに過ぎないことが多い。そのため、外国人の親を始め、外国人の弁護士、在日公使館を唖然とさせる結果となる

4

  外国人が特に日本の制度に唖然・失望する大きな原因は、司法制度に対する期待の違いにあると思われる。例えば、カナダ(後述)やアメリカ等では、家事事件でも警察(もしくは裁判所直属のマーシャル(武装した執行官))が裁判

所の命令の執行に直接携わるのに対し、日本の警察は﹁民事不介入﹂を楯にして、一般的に家庭内の事件にかかわろう

  (三九四六)

(4)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九二九同志社法学 六〇巻七号 としない

係ば分自、後婚離・居別、れ子すらか等ダナカやカリの供アと関子親、﹁は本日い多がことるなくなえ会くたっまメる

y jo od st cu t in

。及普が)(て権親・護監同共、たましおいのてれさ識認てしと利権然り当の供子が渉交接面、 5)

を尊ばない国﹂と思われても不思議ではない

尊等の係関子親るよに権護渉交接面、題問る保がでてを係関子親は本日し困そ、題問るあで難あ能不がとこす戻り取可 。、問のれずいのはで解見(者著題本つこを供子たれらてまれつに日、り 6)

ばない国として諸外国からの評価を受けている問題)の根底には、家事事件における日本の裁判所の強制力の無さがある。そして、この事実は海外においても認識されつつある

日ホ、﹁はていおにジーペムーの省務国カリメア、ばえ例。 7

本の家庭裁判所の命令に従うことは本質的に任意であり、両方の当事者が協力しないと強制力がない﹂と、日本に子供が連れていかれてしまった(あるいは連れていかれそうな)人に注意を呼びかけている

8

  諸外国の国民の中で、その子供が無断で(場合によっては違法に)日本に連れてこられた(もしくは留置された)事例は少なくない。とりわけカナダはこの問題について真剣に対応しており、多方面からカナダ人の親子被害者の救済策 が講じられており、日本政府に対して改善を求めるように取り組んでいる

。と以。るれわ思る、あに件事の氏下こは介いたきいてし紹のていつに案事W因つがいくかある、その大きな原 がよのこ。ダナカにう理真剣に取り組む由は 9)

  W氏はカナダ人男性であり、一九九三年に日本人女性(以下、﹁A氏﹂という)と結婚して、二人の子供と共にカナ

ダのバンクーバー市で生活をしていた。しかしながら、その後、結婚生活が破綻し、二〇〇一年から別居をするようになった。W氏は単独監護権請求をすすめる弁護士のアドバイスを押し切り、共同監護権を含む離婚を進めた。ところが、

共同監護権はうまくいかず、A氏が裁判所の命令や離婚協定の条件を繰り返し無視し、子供を連れ出し、身を隠したことがあった。そこで、二〇〇四年にW氏は自分を二人の子供の単独監護権者として認める判決をブリティッシュ・コロ

ンビア州の裁判所に求め、認容された。しかし、W氏は、子供と母親およびその親族との関係が維持されることが望ま

  (三九四七)

(5)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九三〇同志社法学 六〇巻七号

しいと考え、子供が毎年、日本にいる祖父母を訪問するための面接交渉を認めた。二〇〇四年一一月、W氏との合意お

よび裁判所の承認に基づき、同年の一二月九日までにカナダに連れて帰ることを条件として、A氏が二人の子供を日本に連れて行くことが許可された。

  ところが、A氏は子供らを連れてカナダに帰らなかった。そのため、カナダで﹁児童誘拐罪﹂の逮捕状が発付され、インターポールのウェブサイトにも載っている

求監を還返の供子きづ基に決判権護のは。ナカ、し日来ダ氏W、後のそ 10

めて人身保護請求を申し立てたが、棄却された。

  同時期に、A氏はさいたま家庭裁判所(以下、﹁さいたま家裁﹂という)に対し、監護権者の変更を申し立てた。か かる申立は認められ、A氏を二人の子供の監護権者とする判断がさいたま家裁によってなされた。そして、この判断は後に東京高等裁判所(以下、﹁東京高裁﹂という)によっても認容された

11

  この一連の判断をするにあたり、さいたま家裁をはじめとする日本の裁判所は、W氏を監護権者とするカナダの判決の存在やA氏の行為の不当性を認めながらも、子供らがすでに日本で暮らし始めたことだけを理由に、さいたま家裁は 監護権者変更の申立人A氏の﹁違法性を考慮したとしても⋮︷子供らの︸監護権者をいずれも相手方︷W氏︸から申立人に変更するのがその福祉(最大の利益)に合致する﹂と、現状追認的な審判を下した

。また、W氏の人身保護請求の 12

申し立てを受けたさいたま地裁も、﹁︷A氏︸の行動は非難を免れないもの﹂として、A氏による子供らの監護は一部違法であると示唆しながらも、申し立てを却下した。その理由として、以下の二点を挙げた。第一に、監護権者変更の審

判が効力を生ずるまでの間、W氏の︷子供ら︸に対する監護権者の職務執行停止とA氏を監護権者の職務代行者に専任する審判前の保全処分をさいたま家裁がすでに命じたこと。第二に、仮にこの保全処分がなかったとしても、子供らが

﹁日本での生活に良く馴染み、多くの友人を持つなど、安定した生活を送っている﹂という﹁子供の福祉﹂からの観点

  (三九四八)

(6)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九三一同志社法学 六〇巻七号 である

が、めたの長成な全健のそり引おてし応適分十﹁に境にき活養とこるす保確を境環育な続的定安で下の︸氏A︷き環生 ナを、も裁高京東たけ受告の抗の判審の更変者権護カダ。でで本日がら供子たっ育ダでナカでまれそ、れま生監 13

必要﹂であるとし、︷A氏︸がカナダの裁判所命令の﹁違反がある点等を考慮にいれても、日本の家庭裁判所において親権者を︷W氏︸から︷A氏︸に変更することが相当であるというべきである﹂とW氏の抗告を棄却した

。W氏の人身 14

保護請求も最高裁判所まで上告されたが、事務的な﹁三行判決﹂によって棄却された。

  カナダの裁判所の命令にAが違反して、子供らが日本に留置されたことにより本件がカナダで一種の拉致事件として

成立してから、僅か六个月の間にその違法行為が日本の裁判所によって承認された。平成一七年四月八日にA氏が親権者変更等の申立をし、これを受けて、所属の調査官が五月二日に子供らを面接して、五月一六日に保全処分によりA氏

を実質上人権者にと決定したさいたま家裁の対応は極めて拙速なものと評価できよう

立れ二月一五日にW氏に申し立てらた七七し申に後間週役に、ずらわ関も年一物のり成であるはず﹂人保護請求が平身 速に対して、迅がな対応﹁売。それ 15

てがあった家裁の保全処分が先に決定され、僅か二日後に人身保護請求の棄却事由として挙げられるのも賛成し難い

16

  また、家裁も地裁も、子供らに関するカナダの裁判所の取り決めの日本における効力など、国際司法・国際私法的な

要素を十分検討したように見受けられるもののいずれの裁判所の結論も、いわば﹁子供の福祉至上主義﹂という内容で

ある。それ以外の法解釈の技術的な部分は一種の雑音に過ぎないという見方ができるだろう。肝心の子供らの福祉について、いずれもカナダで生まれ、当時一〇歳だった長男と七歳だった長女のそれまでの生活環境、会えなくなった友達

や親族との関係、今までの英語を中心とする教育などを完全に無視して、二人とも僅か数个月で﹁日本の生活によく馴染んでいる﹂と判断したことは疑問である。また、この判断は、それまで監護養育していた父親と会えなくなった子供

らの気持ちを考慮した﹁子供の福祉﹂とは言い難いものである

17

  (三九四九)

(7)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九三二同志社法学 六〇巻七号

  子供が帰らなくなってからわずか二个月以内に日本で訴訟を提起したW氏の事件が、

国際的な子供の連れ去り事件における日本の司法判断の代表例であるとすれば、外国人の親がいくら早く日本で裁判手続きを開始したとしても救済は得られない、という結論

となる。﹁日本は一種の拉致大国である﹂というイメージが普及したとしても無理はない。

  日本における裁判手続きとは別に、カナダ政府は外交筋で日本政府に対して子供の返還を求め、また裁判の結果の妥当性について抗議もした。しかし、子供らの返還はおろ

か、W氏は子供に会うことすらほとんどできていない状況が、今なお継続している。W氏のケースは、在加日本大使のラジオインタビューを含め、カナダで大きく報道された。

本件が契機となり、W氏のケースだけではなく、離婚等における、片親による引き離し問題と日本司法の無力さが広く認識されたようである。

  W氏は特殊な事件ではない。カナダの総領事部が把握している限り、日本の関係する子供をめぐる事件は二〇〇七年九月現在で七〇件もある

。一九九六年に発生しているも 18

のもあるが、序文で記した言葉のとおり、解決された事案は一件もない。この七〇件のうち、三一件が

A ct iv e

(継続中)であり、総領事館のできること(すなわち、子供と会 ったり、日本の外務省と折衝したりなど)は機会が提供されているが、残りの事件は

“fi le d”

として記録され、﹁これ以上総領事部としてできることはない﹂とされている。

項   目 Active Filed Total

Child abduction out of Canada ⑴ 11 3 14

Child Access out of Canada ⑵ 0 1 1

Child Custody ⑶ 18 25 43

Child Welfare ⑷ 2 10 12

Total 31 39 70

⑴ カナダから子が連れ去られ、起訴等によりカナダにおいて刑事事件として扱われている場合。

⑵ 非監護権者の親が、カナダにおいて決定された面接交渉権の実現を日本で求めている場合。

⑶ カナダで刑事事件になっていないため、カナダ側の親は子供の監護権等については日本 の家庭裁判所を通じてしか救済を求める道が残されていない場合。

⑷ 子供が日本に遺棄されるなど、危険な状況にある場合。

  (三九五〇)

(8)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九三三同志社法学 六〇巻七号   なお、逆のケース(子供が日本からカナダへと﹁誘拐﹂されるなど)は、カナダの外交部が把握している限りでは一件もない。

  そこで、以下、カナダにおける監護権関連の法律と、親による子の誘拐の司法制度の対応の仕方について概観する。

カナダ法における親子関係の保護

  カナダはアメリカと同様、連邦制国家であり、一〇の州(

pr ov in ce

)と三の準州(

te rr ito ry

)によって構成されている。よって、﹁カナダ法﹂と言っても、各州と各準州のそれぞれの法律に加えて、全国に適用される連邦法もある。大部分

の州の法制度はコモン・ローを基礎としているが、フランスの影響が圧倒的に強いケベック州は大陸法体系を基礎としている。

  裁判制度もそれぞれの州・準州の﹁州裁判制度﹂(

pr ov in cia l/t er rit or ia l C ou rts

)と﹁連邦裁判所﹂(

fe de ra l co ur ts

)に分けられているが

裁しあるアメリカに対、所カナダはそれぞれのが判れ裁邦と各州にそれぞ完、全に独立した三審連 19

判所の任命権や管轄等が異なる。カナダでは、裁判官が州の政府によって任命されている下級裁判所と、連邦政府によ

って裁判官が任命される上級裁判所に分かれている。前者と後者は上下関係にある場合もあるが、連邦制度によって州と連邦に割当てられている立法権との関係で、それぞれが異なった管轄権を有する場合もある。また、後述するように

家族法の領域では州と連邦の裁判管轄権と立法権が重なったり、抵触したりすることがある

20

  家族法がほぼ完全に州法の領域となるアメリカとは異なり

奇権、ていおに権轄管判裁と法立の連関子親はでダナカ、 21

妙な線引きがされている。カナダの憲法では、離婚と離婚に関する立法権は連邦議会の管轄と規定されているが

、財産・ 22

  (三九五一)

(9)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九三四同志社法学 六〇巻七号

市民的権利(

civ il rig ht s

)に関する立法は各州・準州の管轄に委ねられている

す前関に婚離てしと建の度制、てっ従。 23

る法律は連邦法に基づき、連邦政府が任命した裁判官(すなわち、州の上級裁判所の一審部門)が決定することになり、財産権と関係する養育費や市民的権利の一種である監護権・面接交渉権 は州法の規則と州が任命した裁判官の管轄に入

up l s sp ou rt po sa

・面接交処護渉権、子供の権し監、て育際れた裁判官が離養配費、の帯附、等)(費養婚扶の者偶に元

or ce D he T A ct , iv

さ婚る、﹁下以(法婚離あ命で法邦連、がろこ離法。裁任に府政邦連は判婚﹂離、はで)ういとと 24

分を命じることができる、と規定している

州州と拠根を定規の法はる費育養、権渉交接すこ・裁、ちわなす(官判たとし命任が州、りなに面権監の合場たっか護 のきいなわ伴を離続手婚居、てっ別両やもないてし婚結そ、もそが親。子従 25

の下級裁判所)の管轄に入る。財産分与は離婚法の範囲外であるため、同じく州法の規定によって処理される

26

  州によって異なるが、子供の親が婚姻している場合、順序と申し立ての内容によって、いずれの裁判所の管轄に入る かが異なり、法廷漁り(

fo ru m s ho pp in g

)もある程度可能である

しっけだ婚離、後たら後もてし理整をどをに等裁申に廷法の官判た連し命任が府政邦な権度与制で財産分、子供の監護 にし居別て先、ばえ、て州州法に基づい。の裁判所例 27

立てることが可能である。また逆に、最初に離婚訴訟を起こして、離婚の附帯処分として子供の監護権等を決定してもらう方法も可能である

、らや使わなければなな法い手続きをめぐって廷るなうた、婚姻関係にい。男女が救済を求めま 28

このように重なり合う管轄権や異なる手続きに起因する弊害を排除するための改善策を試みている州もある。例えば、家事事件において連邦および州の両裁判制度の手続き規定の統一を図っている州もある

。また、すべての家事事件を受 29

けつける﹁統括家庭裁判所﹂(

un ifie d fa m ily c ou rt

)制度を設けている州もある

30

  各州の裁判所の管轄が並行・混合していることと同様に、子供をめぐる事件に適用される実体法も混合している。例 えば、離婚法は子供の処分に関する規定の中に、

cu st od y

(監護権)と

ac ce ss

(面接交渉権)の用語を用いているが、

  (三九五二)

(10)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九三五同志社法学 六〇巻七号 定義されているのは前者のみである

離を規を義定、りたし定規をし用いながら義婚法と違定な定内るあがとこるな異が容のかそてっよに州、りたっう

y/a s cu st od y es cc cu od st

てれに対して、州法によっっ、使、。りたと違う用語をそ 31

。し 32

たがって、離婚法による場合と州法による場合でも、親子関係の事件は州法の解釈による場合があり、用語として

cu st od y/a cc es s

が用いられていてもその内容と実務が異なる

邦じ連。るあがさ雑複なうよ同もていつに費育養、たま。 33

政府が策定したガイドラインがあり、離婚法によると、離婚に際してこのガイドラインによって算定される金額を基本に養育費が命じられることになる。但し、離婚法による場合でも州のガイドラインに基づいて算定されることもありう

る。また、離婚法によらない場合(そもそも別れる親が婚姻していなかった場合など)は、各州策定のガイドラインによる。したがって、養育費の対象となる子の親の婚姻関係の有無やそれぞれの親が居住する州・準州によって、どのガ

イドラインが適用されるかを決めるにあたって類型が異なっている

34

  W氏の場合、離婚を伴ったため、子供に関する命令(W氏の単独親権とA氏の面接交渉権の詳細を決定した命令、A 氏が日本に子供らを引きとめたことに対する返還命令など)はすべて離婚の分附帯処分として、ブリティッシュコロンビア州の

Su pr em e C ou rt of B rit ish C olu m bia

によって発せられた

t ur co l ia tr

命求が連邦政府に任離され、判婚法に基づ官ど裁裁るあで)(所判のは権轄管審一、請なく

e rt Su pr em bia ou C of B rit ish C olu m

。、りおとの述上 35

Su pr em e

36

C ou rt

と家事事件などについてもうひとつの一審管轄を有する裁判所としては

P ro vin cia l C ou rt of B rit ish C olu m bia

があるが、そこでは、離婚を命じる権限や夫婦の財産分与をする権限をもたない

37

  (三九五三)

(11)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九三六同志社法学 六〇巻七号

カナダにおける監護権と面接交渉権とその履行の確保

  以上みてきたように、離婚等(以下、﹁ペアレンタルセパレーション﹂という)の場合の監護権・面接交渉権につい

て一般的に説明することは難困難である。したがって、本稿では詳細に触れず、次の原則的な部分についてのみ検討を加えることとする。

Best interests of the child standard

子供の最善の利益の基準   裁判所が監護権や面接交渉権に関する決定をした場合には、子供の利益のみを考えて判断することが原則となる

。れいなし在存は素要いならなばけなれさ慮配てしと利権の親 。 38

  この判断をするにあたって、一審の裁判官に広範囲の裁量が認められている

めでの行政判断として行われるものは一の定を準基断判益な利の供子、く種るはによ、日本のうよ完全に裁判官に にかし、カナダ断おけるこの判。し 39

た制定法に基づいて行われる。例えば、カナダ離婚法の第一六条一〇項においては、子供が離婚後も両親とできる限り多くの接触を持つことが望ましいという原則を謳い、裁判官が監護権者を決定するにあたっての判断材料と規

定し、面接交渉権について協力的である方の親を監護権者にするという、いわゆるグッドペアレントルール(

go od pa re nt r ule

)を設けている

Reform Children’ Law s Act

判の益利子善最の断をす供のるはの州オリタンオ、たま。 40

にあたって、血縁関係、当事者が提示した育児プランの有無、面接交渉権に対する心がまえなど、配慮されなければならない項目をいくつか規定している

41

  さらに、カナダ離婚法は、裁判官の監護権決定にあたって、親の親としての能力にかかわるもの以外、離婚以前

  (三九五四)

(12)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九三七同志社法学 六〇巻七号 の行為を配慮してはいけないと規定しており、﹁有責配偶者﹂であるから監護権・面接交渉権を認めないといった判断を禁止している。したがって、原則として親の不貞等が育児能力に関わる性質のものでなければ、監護権決定 に影響しない

42

  また、各州の判例法においても、具体的な判断基準が提示されている場合が多い

43

面接交渉、共同監護権、ジョイントペアレンティング(

joint parenting

)などにより、両親と最多の接触を確保   各州等において、子供の利益の判断基準が明確であるか否かに関わらず、両親の別居といった婚姻状態とは関係なしに、両親と可能な限り多くの接触を持つことは、カナダ離婚法をはじめ、全国的な大前提である。面接交渉は、 親の権利なのか子の権利なのかが必ずしも明確ではないが

、以で務義の親に前るるあで利権の親があ、こるが触接の多最。あとで力有が説るすとつすを触接のと供子、ばれ持 確前を保利の触接の多と提益した子供の、の観点から最 44

いわば子供の利益を検討する出発点であるためか、共同監護権、共同居住(

jo in t re sid en cy ―

子供が一部の時間を母親と生活し、一部の時間を父親と生活する方法)を認めることが、州によってバラつきがあるものの、主流と なっている。カナダ離婚法は明確に共同監護権の可能性を規定しており

dia ns ar gu hip

れさ入導て定推定法の)いるが

t in jo

(護監同共てっよに州、 45

体全るいてえ超を割四のが 権供子るなと分処の護伴監たがって、離婚にっ。てなんらかの共同し 46

47

  片方の親が単独監護権者として指定されていない場合でも、非監護権者の親と子供の面接交渉権(

ac ce ss

)を可能な限り認めることが一般的である。もっとも、特殊な事情があれば、裁判所によって面接交渉権を制限・停止す

ることがあるが、少なくとも日本と比べ、その基準ははるかに厳しい。例えば、カナダの場合はどちらかの親の再

  (三九五五)

(13)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九三八同志社法学 六〇巻七号

婚等が面接交渉を制限する理由として認められないのが通常で、また、刑務所で服役中の父親でも年二回の面接交

渉が認められる判例があるほど、子供の親を知る権利と接触を持つ権利が保護されている

の合の間にできた子供を殺した場、夫対象の子供が父親と実の娘ととのさしが停止前る例とれて、父親が母親のは しれに対渉、面接交。こ 48

間の近親相姦によってできた場合、子供が自動車の前部座席に座っているときに、父親が後部座席で女性と性行為をした場合など、親の行為が著しく常識を逸している、極めて特殊なケースが挙げられる

。また、親による子供の 49

利益に反する行為の績事実がある場合や、子供と親の接触がなかった時間が長い場合でも、カナダの裁判所は

su pe rv ise d vis ita tio n

(第三者の立会いの下で行われる面接交渉)を出発点として、接触を確保し強化するように努

める

必はいならなもしずに 全親との接触が完れに断ち切られることるさ待とって、親によって子供が虐さ。れた場合でも、虐待をした従 50

51

子供に関する情報の提供を受ける権利

  面接交渉権等は、親の権利ではないにせよ、カナダ離婚法は、別段の決定がない限り、面接交渉権が認められた親は子供の健康、教育、福祉等について情報の提供を受ける権利がある

供護子、もで親の者権監非、てっがたし。 52

の学校の先生やかかりつけの医師などと話して、子供について情報を求めることができるのは判例法理となっている

かはのためなど、親もしく子確の住所等、居場所がわ保の渉いた、監護権・面接交の。実行、養育費の支払ま 53

るような情報について政府保有のデータベース等から公開請求ができる制度は、幾つかの州および連邦レベルに設けられている

て示等に関する情報の開命場令を裁判所に申し立所居がのた、これらの適用な。い場合でも、子供ま 54

ることができる

55

  (三九五六)

(14)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九三九同志社法学 六〇巻七号 子供の代理選任制度   カナダでは、最高裁判所の判例を含め、子供は親の所有権の対象となる人的財産(

ch at te l

)ではなく、親と別個の権利を有する人格として認めるべきであることについて、争いはほとんどないといえる

。従って、監護権等を 56

めぐる裁判において子供の権利と利益を守り、主張するため、子供のための代理人が選定されることは珍しくない。州によってその代理人の資格、名称、選任の方法や基準などが異なり、子供の代理人の役割の義務内容についても

活発な議論が行われているが、なんらかの形で子供の利益を独立した立場から考えて追及する大人が子をめぐる事件に関与することは可能となっている

57

監護権・面接交渉権の履行

  W氏のように、海外から日本に来て子供の返還を求める親がおそらく最も驚くことは、警察の﹁民事不介入﹂と裁判所の強制力の弱さである。カナダでは、子供の奪い合いなど、監護権・面接交渉権の行使を妨害する行為に対

して様々な履行確保手段がある。州によって異なり、本稿においてそれをすべてリストアップすることはできないが、代表的なものとして次のものがある。

⑴   監護権変更

  非監護権者の親による面接交渉権の行使および共同監護権者による監護権行使を妨害した親は、裁判所によって、監護権を剥奪されることがある。しかし、監護権者を変えることは、子供の生活環境が大きく変わり、子供に

  (三九五七)

(15)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九四〇同志社法学 六〇巻七号

とって不利益であると判断されることが多い。そのため、監護権の変更は難しい場合が多い。従って、裁判官が監

護権変更を脅しとして用いることはあるが、実際の処分として命じるケースは稀であるという

58

⑵   裁判所侮辱( contempt of court )

  英・米・カナダ法制度において、裁判所の命令を無視する行為をした者は、裁判所に対する侮辱として制裁を受

けることがある。特に、監護権者による、非監護権者の面接交渉の妨害につき、面接交渉権等に関して裁判所が命じた処分に反する行為をした親に対しても裁判所に対する侮辱が認められることがある。但し、法定侮辱は準刑罰

qu as i-c rim in al

)的な性質があり、面接交渉の妨害行為等が“意図的かつ執念深い(

w illf ul an d pe rs ist en t

)”ものでない限り、カナダの裁判所は、裁判所侮辱の認定には消極的である

59

  このように、裁判所が裁判所侮辱を適用することについて慎重である理由は、立証責任が通常の民事事件に比して重く、また監護養育している親が短期間であるにせよ、刑務所に入ることが子供の利益を保護する観点から妥当 ではないことが多い、という点に求められる

禁期るあがとこるじ命を固短の間 母もでてし対に親は判合し、どうしても裁所。を無視するような場但 60

61

⑶   法曹の倫理規定

  直接の執行手段ではないが、カナダの法曹倫理規定上、子供に対して差し迫った危険が及ぶような場合を除き、弁護士は依頼人である親等に、裁判所が命じた処分に違反するような行為(面接交渉の妨害や子供の隠匿等)を薦 めることができないと解されている

うて依頼人に対し裁的判所の命令に従に極に。は士護弁てっよ積合場、もかし 62

  (三九五八)

(16)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九四一同志社法学 六〇巻七号 ように進める義務の有無についてカナダの弁護士会が議論している

。日を進めることは、本戦より難しいといえる略 た子しって、弁護士が供。との接触を武器に従 63

⑷   警察等の介入

  カナダにおいては、日本のような警察の民事不介入という原則はない。従って、子供のつれ去り事件において裁判所に対して申し立てなどをすることにより、保安官等(

pe ac e of fic er

)に対象の子供の身柄の確保等を求めるこ とができる

的え子供の身柄を抑るることができる場合に発ある。相当な根拠があ場自合には、警察官がも 64

れ﹂中に﹁警察による執行可を文明記する場合もあるが、この決、供的な親に対しては判子に関する処分を命じる 。力協非 65

がなくても警察は必要に応じて対応できる。

⑸   刑法による処罰

  カナダの刑法(

C rim in al C od e

)には親による子供の誘拐に適用される規定が二つあり、それは第二八二条と第 二八三条である

st cu od y or de r

)に反し隠一四歳未満の子供をて(ダ定二八二条は、カナの。裁判所の監護権決第 66

匿したり連れ去ったりした者に対して、懲役一〇年以下の刑を課している

が、場定決合についても同い様の刑を規定しているな 条権た、第二八三は。、裁判所の監護ま 67

に差無有の定決の所判裁、は異の条三八二第と条二八二第。 68

加えて、第二八三条に基づく起訴は法務長官(

A tto rn ey G en er al

)の承認が必要となることである

は、を構成要件としているため一決般的には面接交渉権の履行に定権異第州によって護る。な二規八は定監の条二 。、は等準基の認承 69

適用されない。しかし、監護権者となった親が非監護権者による面接交渉を妨害する目的で子供を別の州に連れて

  (三九五九)

(17)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九四二同志社法学 六〇巻七号

行った場合でも、﹁監護権決定に反した﹂行為と認められて、監護権者に対して第二八二条が適用される例もある

70

W氏の場合、A氏は裁判の命令に反して子供らを日本に留置させたため、二八二条に基づいて、逮捕令状が発せられた

71

⑹   接近禁止命令

  子供の監護権・監護権(場合によっては面接交渉権)の妨害等をするような行為をした親等に対し、接近禁止命令等(

re st ra in in g or de r

)を所管の裁判所に申し立てることができる制度が各州・準州にある

。但し、接近禁止命 72

令は警察の介入を前提とした刑罰的な性質が強い措置であるため、例外的な場合にのみ命じることが適切であると考えられている

73

  なお、連邦や州の制定法は、子供の監護権等をめぐる争いを解決するための総括的な制度を設けていため、面接交渉権の妨害等についてコモンローによる不法行為法上の付帯的な救済はないとされている

74

モビリティー権と監護権・面接交渉権

  カナダ憲法の権利章典にあたる

ch ar te r o f r ig ht s a nd fr ee do m s

はカナダの市民のいわゆる﹁モビリティー権﹂(

m ob ilit y rig ht s,

国内外を移動する権利)を保障している

を権置き仕事をするかを決定する利居などによって構成されている 住自にビリティー権は、カナダを由。に出入りする権利や、どの州モ 75

由る自てしと則原は人本親あで者権護監、てっ従。 76

にカナダ国内外で移住することはできる。但し、子供を連れて行く場合には、親のモビリティー権は制限を受けると解

  (三九六〇)

(18)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九四三同志社法学 六〇巻七号 される。すなわち、裁判所には監護権者の親の住居まで決定して指定する権限はないが、非監護権者の親と接触を確保するためなど、住居の地を条件とした監護権決定ができ、その条件が監護権者の移住計画等で満たされなくなった際に、 監護権決定を再検討することができる

面接変えようとした場合には、住交居渉権のある非監護権者の親等を 供の子際が婚法に基づく監護権決定をする、。裁判所は、監護権者となった親離 77

じの命にうよるすを知通前事の間日〇三てし対に 78

ることができる

供がり通の記上。るきでと流こすなてし対に所判裁、動等で子るよに者権護監、はダ社ナカるいでん進が化会をて立し 居の供子、は等親の者護権監非たけ受を知通の住変。よ申の更変者権護監びお更求請め止差るす対にこ 79

の住居地の変更と非監護権者の面接交渉権の確保をめぐる紛争が極めて多くなっている。

  監護権者の親のモビリティー権と、非監護権者と子供との交流権が衝突した事案として、カナダ最高裁の

G or do n v.

G oe rtz

判決がある

求面令命の権渉交接の変でダナカはくしをめ更のたじ生らかい争間る親父の者権護監非も 権者護ア連ラトスーオてれを監供子の年成未は決リに。監、と親母の者権護た移いてしとうよし住判 80

。結果として、すでに実行さ 81

れていた母親と子供の移住は認められたが、子供と父親の接触を保護するため、面接交渉権の行使の地がオーストラリアからカナダに変わった。

 

G or do n v. G oe rtz

判決中には、繰り返して発生する、離婚等に伴う子供の処分とモビリティー権の問題を解決するた

めの一種のガイドラインが含まれている。このガイドラインは担当裁判官が配慮しなければならない項目(子供と面接交渉権を有する親との関係、両方の親と最大限の接触の確保、住居の地を変えようとしている親のその理由、住居変更

による子供の生活環境の変化の程度等)をあげているが、判断するに当たって、子供の利益のみが検証される内容であり、親の権利(監護権者の親のモビリティー権、非監護権者の面接交渉権等)は判断材料ではないことが明確にされて

いる

de n rtz oe G G or v.

を後ドたが訟訴るぐ絶がず、判決を設けたガイめ内住で。しかし、判決がき移た後も親の国外の 82

  (三九六一)

(19)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九四四同志社法学 六〇巻七号

ラインはむしろこのような争いをより予測しにくいものにしたという評価もある

の子住居に緒一と供が親、もでれそ。 83

地を変えようとした場合、子供と他の親等の最大限の接触が子供の利益に資するという大前提の下に、裁判所は子供の利益の観点から判断をすることには争いがないと言えよう。

  また、当事者間の別居協定(

se pa ra tio n ag re em en t

)や裁判所の監護権命令(

cu st od y or de r

)の中に

no n- re m ov al cla us e

もしくは

or de r

(連れ出し禁止命令:要するに、協定の場合は相手の親の承諾なしに子供を州等から連れ出さな い旨の条項、裁判所の命令の場合は同趣旨の命令)を含めることが実務上の慣習となっている。そのため、子供を連れての移住について裁判所の介入が常に可能である。仮に協定や裁判所の命令に

no n- re m ov al

規定がなくても、非監護権

者の親は事後にでも子供の移住を争うことができ、州・準州外に子供を連れた監護権者の親は連れ戻すように命じられるリスクを負うことになる

no or n- re m ov al de r

っ国に連れて行のた場び合は上記外供及反。また、等にし等て子を他州 84

刑法の規定も適用されうる。

  なお、

G or do n v. G oe rtz

のように子供が外国に奪取される事案においては、当該外国の裁判所が子供に関するカナダ

の判決を認めるなど、外国の裁判所が子供の利益についてカナダと同様の見解に基づいて判断する、という前提に多くの場合立っていることは特記すべきであろう。カナダの裁判所の子供に関する監護権決定等が、日本において事実上﹁無

視﹂され、子供が永久に片方の親と会えなくなることも日本の裁判所によって承認されてしまう、という認識がカナダ司法部に浸透すれば、カナダで暮らす日本人母子家庭等は、子供を短期でも日本に連れて帰ることが許可されなくなっ

てしまう可能性がでてくるであろう。

  (三九六二)

(20)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九四五同志社法学 六〇巻七号 ハーグ条約   国際的な子供の連れ去りは一種の子供の居住地の一方的な変更であり、国際司法上の課題の一つである。その課題の対応策として﹁国際的な子の奪取の民事面に関する条約﹂(以下﹁ハーグ条約﹂という)があり、カナダは早期に同条

約の締結国となった

、め会を初める締結を求る委声が多くなっている員 約す関に利権の供子の条い利本は未だに条約を締結していなが。、日本が当事国である子供の権日 85

と〇るいてし指目を結締の年〇一二が省務法、に月五年八〇〇二。 86

いう極めて低調な国内報道がされたが、日本が締結したとしても、履行面における日本の制度全体の問題が変わらず、実態は急変しないのは著者の見解である

裁が条約の不遵守あもり、その原因を、て条。つに国結締の約いグーハの在現 87

判所の機能不十分と指摘される国がある

88

  ハーグ条約の詳細については他の文献を参照にされたいが

国ハ居常に当不、は約条グー。るあでりおとの次は点要、 89

co un tr y of h ab itu al re sid en ce

)から連れ去られた、もしくは常居国に留置された子供の迅速な返還の確保と、締結国が互いにそれぞれの法律に基づく監護権(監護権)及び面接交渉権の効力の尊重を目的としている

。別な観点からすれ 90

ば、ハーグ条約は、片方の親が実力行使と既成事実によって、常居国以外の裁判地で自分に有利な監護権判決を得るた

めの法廷漁りを阻止するためにあるとも言える

91

  ハーグ条約はいくつかの﹁不法な連れ去り・留置﹂の類型を想定している。典型例としては、常居国の裁判所の監護 権決定に反し、非監護権者の親が子供を別の国に連れ去ることが挙げられる

婚れず、常居国での離等との裁判手続きが開せ件さ場るれさ用適もに合た要れら去れ連に前以る始 約をかし、ハーグ条は。正式な裁判決定し 92

。また、W氏のよう 93

なケース、つまり非監護権者の親が面接交渉権の行使に伴って子供を一定期間に常居国から別の国に連れていき、当該

  (三九六三)

(21)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九四六同志社法学 六〇巻七号

期間が終了してもその国に留置させた場合にも適用される

94

  ハーグ条約の締結国間で子の不法な連れ去り・留置があった場合、子が速やかに常居国に返還されるため、子が所在する締結国の行政府が様々な努力をしなければならない

、れていつに件事置留・件事り去連、上約条グーハ、めたのそ。 95

通常の国際私法手続き上必要となってくる外国法の立証や外国の判決の承認の手続きを省略することができる

し監護権決定ができず、自国の護い権決定があることを理由に監し置新子供が連れ去れ・留されている国は原則として 。、たま 96

て子の返還を拒否することができない

ず地に由理をれそが裁ま身たいさ、しをき続手人保変結はいなえりあは果な護うよるす却棄を求請更権監に速迅てめ護 、条間国事当約、グーハおてっがたにWいい極が裁家またさてで件事の氏。はし 97

である。

  原則として条約上の手続きが事件発生から一年以内に開始されていれば、子の所在の地の行政・司法当局は返還を命 じられなければならない

返、いならなばれけなじ命を還り で限いなれさ明証がとこるいん合染年以上が経過している場で。も、子供が新しい生活に馴一 98

がの履行実現のため協権力に関する規定の渉約交た、ハーグ条は。締約国間の面接ま 99

ある

なほくなが定規たし実充どき純続手の還返の供子くづ、粋に返きでがとこるめ求を還のな供子くづ基に権渉交接面基権 り求にき続手じ同と際るめを護還返の供子、てしと則よ面。こ監、がるあで能可はとる接す頼依を現実の権渉交原 100

いとされている(但し、後述するように、面接交渉権の内容によってはこの限りではない

面合う条約当事国に連れて行った場、を非監護権者の親は条約を通じて違供護のが非監子者の親権面交渉妨害目的で接 監のため、親護権者の)。こ 101

接交渉権の履行に関する協力を求めることができるが、子供の返還を求めることができない

102

  上記のように、違法な連れ去り・留置があった場合は子供の迅速な返還が原則であるが、例外がいくつか設けられて

いる。まず、⒤条約そのものは一六歳以上の子に対して適用されないため、すべての未成年(子供)を対象にしている

  (三九六四)

(22)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九四七同志社法学 六〇巻七号 ものではない

権場良てくなし還返は合る場れさ証立がとこるいでい合染・護監に際たっあが置留りが去れ連ⅲ、たま。るあん馴に境 か約発件事がき続手の上、条にうよの記上ⅱ、に生ら。つ環活生いし新が供子か一、れさ始開に降以年次 103

を有する人・機関はかかる監護権を行使していなかった場合もしくは連れ去り・留置に承諾した場合も同様である

危いらし、その他子を耐え難状に態に置くこととなる重大なさ難が危らに、ⅳ﹁子供の返還子の肉体的に又は精神的な 。さ 104

険があること﹂という例外もある

子をより意の返還拒思むこともできるに 返のそは合場む拒を還、こて子供の意見を聞き入れると。が相当である年齢に達し⒱ 105

﹂び国の﹁人権及基れ本的自由の保護るら返。求を還返、が還めの子ⅵてしそ 106

に関する基本原則によって許されない場合も返還を拒むことができる。

  上記の例外についてカナダの裁判所は様々の判断をしてきた。例えばⅲについては子の事情の個別判断になるが、極 端な事案として七年間が経過した場合でも子供の返還が命じられたケースがある(子供の連れ去りを抑制することが判旨の一部であった

め張にさらすという主が危認められた場合は極害の子上記ⅳについては、供)。の返還が子を心身上 107

て少ない

思命尊重して返還をじるなかった裁判例を意あ未。他方、一〇歳満のの子につき、子供が 108

を自らじ命が還返に由理ケ護保の由的る本基び及権ースは皆無に等しいれ 人のⅵはでダナカ。 109

110

  ハーグ条約は子の常居国にいる人・機関の監護権(

rig ht s of c us to dy

)に反した子供の連れ去り・留置を対象にして いる。したがって、単独監護権者となった親による﹁連れ去り﹂は原則として﹁違法﹂ではなく、条約の対象外になる

とす、特に、子の居所を決定る権権利を含むものとする﹂利るいすし、条約は監護権につて﹁子の身の上の世話に関但 。 111

するのみで漠然としたものであり、当事国各国の法律上の監護権・監護権の定義とは往々にして合致しないものである。したがって、カナダの裁判実務においては、監護権の解釈、とりわけ﹁子の居所を決定﹂する部分を重視する解釈によ

り、一見条約の範囲外とも思える事案についても子の返還命令を出すことがある。例えば、子供の常居国の裁判所で暫

  (三九六五)

(23)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九四八同志社法学 六〇巻七号

定的な単独監護権判決を獲得して、同判決に含まれた﹁連れ去り禁止命令﹂(

no n- re m ov al or de r

)に反して子供をカナ

ダに連れてきた事案において、常居国の連れ去り禁止命令によって、最終的な監護権判決をする権限は同国の裁判所に留保されていたため、同裁判所はまだ子供に対して一種の監護権を有しているとして、子供の返還命令を認めたカナダ

最高裁の判決がある(もちろん、実際に返還を求めていたのは常居国での面接交渉権の確保を求めていた父親であった

)。 112

  当該判決は、あくまでも暫定的な監護権決定に連れ去り禁止命令が含まれている場合を対象にしているに過ぎない。

したがって、連れ去り禁止規定が含まれている最終的な監護権決定に反して、単独監護権者となった親が子供を奪取した事案について、カナダの最高裁によって、明確な条約解釈が行われたわけではない。下級審においては、常居国法に

よる非監護権者の親の面接交渉権と監護権者の親の連れ去り禁止の組み合わせを﹁監護権﹂に類似するものとして、非監護権者の親の申し立てにより返還を命じた事案がある

、っに中の項事定決権護監、もてあで親の者権護監非、りまつ。 113

子供の住居に関する決定権、住居の変更に対する承諾権などが非監護権者の親に与えられている場合には、ハーグ条約上の返還を求めることができると解される可能性がある

る様よに親の者権護監独単、に同とダナカ、は国約締のく多。 114

場合であっても、連れ出し禁止命令に反した子供の奪取につき、ハーグ条約による返還手続きを適用することが相当であると解している

115

  ハーグ条約第一一条の規定によると、連れ去られ・留置された子が所在する締約国の﹁司法当局もしくは行政当局が事件の係属後六週間以内に決定しない場合﹂に、返還を求める当事国が遅延の理由を告知するように求めることができ

ると規定され、速やかな対応が期待されているかがうかがえる。しかし、カナダ司法の関係者のヒアリングによると、実務では六週間以内の対応は通常の裁判実務では困難であり、一年以内に対応するように努めている。また、一部のカ

ナダの制度関係者は、事件が発生してから一年以内に手続が開始されることが一種の要件となっていることについて批

  (三九六六)

(24)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九四九同志社法学 六〇巻七号 判的である。その理由としては、連れ去り・留置事件は片方の親が子供を隠している場合が少なくなく、どこの国にいるのかを知るまでに時間がかかるため、子供の所在がわかってから一年間以内に手続を開始することを要件とするほう

が妥当であると考えられるからである。

  ハーグ条約の締約国は、対象事件に対応する﹁中央当局﹂(

ce nt ra l a ut ho rit y

)を指定することが義務付けられている

116

連邦制のカナダは州等ごとに中央当局があるとともに、総括的な連邦中央当局もある。締約国の中央当局は﹁子供の迅速な返還を確保するため及び条約の他の目的を実現するため、互いに協力し、かつそれぞれの国の権限当局の協力を促

進しなければならない﹂という内容の義務を負っており

護っ還返の供場合によて確は弁、子士費用の補助を保どといならなばれけならをす置措な々様にめたるな れ、のために不法に連れ去ら、、留置された子の所在の発見そ 117

。カナダ各州・ 118

準州の中央当局はほとんどの場合、それぞれの﹁法務省﹂(

D ep ar tm en t of J us tic e

もしくは

M in ist ry o f th e A tto rn ey G en er al

)内の組織として作られているのに対して、連邦政府の中央当局は外務省内にある(

Ju st ic e L eg al Se rv ic es , F or eig n A ffa irs C an ad a

)。 119

  カナダのハーグ条約関連の制度関係者からのヒアリングによると、条約の実行の難点の一つは裁判官の教育であると

いう。つまり、通常、純粋な国内における子をめぐった事件を扱っている裁判官は、子供の利益を最優先に考えて判断

することが本能になっている場合が多い。しかし、条約に当てはまるようなケースでは、その本能を自制し、子の連れ去り・留置が不当であったかどうかという判断のみをすることが求められる。早期段階から条約を批准したこともあり、

カナダの裁判官のハーグ条約に対する理解度は高いという印象を受けたが、制度関係者によると一部の締約国では周知・教育が不十分で、条約に基づいて返還を求めても、条約が規定する迅速な対応と簡便化された手続きが行われず、

条約締約国であるにもかかわらず、子供の返還の実現に数年かかる場合もあるという。

  (三九六七)

(25)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九五〇同志社法学 六〇巻七号

  理論上、ハーグ条約締約国間で発生する子供の連れ去り・留置事件と、非締約国との間に発生する事件に対する法的

対応が異なるはずである。締約国間の事件の場合、返還を求める親は自国の中央当局を通じて、子の所在国の中央当局の協力を得て、所在国の迅速な行政・司法手続きを経て子供が返還される手順になる。他方、子供が非締約国に連れ去

り・留置された場合は、いずれの国の中央当局も管轄を有せず、返還を求める親は自ら当該国に赴いたり、現地で弁護人を雇ったりして、子の所在国における通常の訴訟等を起こさなければならない(もちろん、自国の監護権判決がある

場合は、所在国の国際司法規則にしたがってその効力を承認させる手続きも含まれる)。W氏の日本におけるケースは、こういう性質のものだった。カナダの場合は、連れ去り・留置先の国がハーグ条約の非締約国である場合、返還を求め

る親はカナダの外務省を通じて外交筋の協力を得ることができる。しかしながら、それは子の所在国における司法手続きへの正式な介入などを意味するものではなく、あくまで子供の無事確認やロビー活動にとどまり、子供の早期返還の

実現を保障するものではない。カナダの外務省は専門部署を置くなど、国際的な連れ去り・留置の問題を真剣にかつ積極的に受け止めて、取り組んでいるが、前述したように不法に日本に連れ去り・留置された子の返還の事跡は未だにな

い。

  ところが、逆のケースは異なる。まず、カナダには、出国審査はないが、子供と一緒に入国すると、連れ去りの防止

を確認する旨の入国審査が行われる。親が一人で子供と入国する際は、さらに、﹁もう一人の親は、子供の居場所・旅行計画について知っているか?﹂と審査官に聞かれたり、場合によっては不在の親の同意書や、国際的な移動を許可し

ている監護権判決書の提示を求められたりする場合がある

、り置措見発期早の去、れ連の供子な法違が入ずさたま。るいてれ夫国工らか点時の理管、ら約約わ国か非締国かにかか カのへダナが、にうよの国入ハ者の出発地。ーグ条約の締こ 120

各種の司法関係者との話しによると、上述したように、ハーグ条約の趣旨や手続きについての理解と教育が徹底されて

  (三九六八)

(26)

日本のもう一つの“拉致問題”とカナダ司法の対応九五一同志社法学 六〇巻七号 いるカナダの裁判官は、同様の趣旨と手続きを、非締約国から連れ去り・留置された子の事件に類似適用する場合が少なくないという。したがって、日本はハーグ条約を批准しなくても、日本から条約対応の体制が比較的に徹底している カナダのような条約国につれていかれた子供は条約の恩恵を受けられる場合が少なく、日本が条約上の義務を負わずに便乗をしている面があることは否定できない

121

  カナダは出国審査手続きがないため、国外への連れ去りの防止は不可能ではないとは言え、カナダの司法と行政はその防止と早期解決のために様々な工夫を試みている。まず、あらゆる国際的な子の連れ去り・留置について周知し、カ

ナダ内外の親の認識の向上と防止を呼びかけている。カナダの外務省刊行の冊子

“ In te rn at io na l C hil d A bd uc tio ns – A

M an ua l f or P ar en ts / E nlè ve m en ts In te rn at io na ux D ’e nf an ts – G uid e à l’in te nt io n de s pa re nt s”

(﹁国際的な子供の連れ去

り等について:親のための手引き﹂)があり、国内外の政府機関に配布され、インターネット上でも閲覧可能である。内容としては、連れ去りの予防方法、ハーグ条約の紹介と利用方法、防止・返還のために用いられる民事・刑事制度の

手段、関連行政機関の連絡窓口情報等が記載されている

し行限権るす請申を発与のトーポスパで独をえにのと件要をか示提文て決判・書定協るい単親方片はくしも、か意同の ー未者年成たはダナカ、たのトめのパスポ。の交付は両親のま 122

ている。また、自分の子供が一方の親に連れ去られる場合は片方の親はカナダのパスポートオフィス(海外在住の場合

はカナダ大使館)に自分の子をカナダ政府保有の

“P as sp or t C on tr ol L ist ”

(パスポート管理リスト)に載せることにより、同リストに載っている子供についてパスポートの申請があった場合は載せた親に通知される仕組みになっている。さら に、

“O ur M iss in g C hil dr en ”

と題するプログラムがカナダ連邦政府の四つの行政機関

― R C M P

(連邦警察)

, F or eig n A ffa irs C an ad a

(外務省)、

D ep ar tm en t of J us tic e

(法務省)と

C an ad a B or de r Se rv ic es A ge nc y

(国境服務庁)

によ って立ち上げられ運用されている

締港関する情報が空等供内の国境管理取に子通るプログラムをじ。て、連れ去られ同 123

  (三九六九)

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