• 検索結果がありません。

都市景観シミュレーションと景観評価に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "都市景観シミュレーションと景観評価に関する研究"

Copied!
67
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

都市景観シミュレーションと景観評価に関する研究

有馬, 隆文

https://doi.org/10.11501/3120511

出版情報:Kyushu University, 1996, 博士(工学), 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)
(3)

句.‘

都市景観シミュレーションと景観評価に関する研究

平成8年

有馬 隆文

(4)

目 次

第1章 序論一一一一一一一一一一一一一一一一一一

1 -1 . はじめに一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 2 1 -2. 研究の目的一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 3

( 1) r景観を定量的に把握する物理指標を開発するJ一一一一一一一一一

( 2) r景観の構図と景観構造をさぐる」一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一ー 4

( 3) r都市景観をシミュレートする」一一一一一一一一一一一一一一一-一一一一一一 4 1ー3. 既往の関連研究一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一-- 5 ( 1 )景観特性を定量的に分析した研究一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 6 (2)景観シミュレーションに関する研究一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 7 (3)景観の認識・評価一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 8 1-4. 本研究の特色一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 9

1 -5. 各章の構成と各章の概要一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 9

第2章 コンビュータ画像処理による都市景観画像の物理的指標一一一一一一一一一一一一一 15 2-1. はじめに一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一- 16 2-2. 研究の方法一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 16 ( 1 )原画像入力とスムージング処理一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 17 (2 )輪郭線データ抽出一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 17 (3)面データ抽出一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 18 (4)フラクタル次数の指標一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一- 18 (5)いびつ度指標一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一- 19 2-3. 画像処理によって得られた各指標の特徴一一一一一一一一…一一一一一一一一一一 19 ( 1 )輪郭線指標による分析-一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 19 (2)面指標による分析一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・ 20 (3)フラクタル分析一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一- 21 (4)いびつ度分析一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一- 21 2-4. 心理評価と物理指標との関連一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一22 ( 1 )物理指標と評価の単相関関係一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 22 (2)物理指標に影響を与えている評価要因一一一一一一一一一一一一一一一一一一一23 2-5. 考察一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一ー 2.+

( 1 )景観の躍動性一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一ー一一一2.+

(2 )景観の柔和性一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一-25 ( 3)落ち着き, 潤い感一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 25

2-6. 第2章のまとめ一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一25

(5)

第3章 視覚的密度感指標(天空遮蔽率)による街路景観分析一一一一一一一一一一一一一--- .+1 3 -1 . はじめに一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一-- 42 3-2. 天空遮蔽率の算定手法について一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 43 3 -3. rモデル街区Jでの算定事例一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一- 43 3-4. 大分市街地への適用事例一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一- 4.+

( 1 )代表的街路における景観特性分析一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一--45 (2 )現状の街路における比較考察一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一---.+5 (3)街路の時系列比較分析一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一---.+6 (4)用途地域別容積率制限別比較分析一一一一一一一一-一一一一一一一一一一一一一一一.+7 (5)用途地域別容積率制限別時系列比較分析一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一ー 47 ( 6 )まとめ一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一--- 48 3-5. 第3章のまとめ一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一---.+8

第4章 景観モンタージュ画像を用いた注視実験による景観評価一一一一一一一一一一一一一一62 4 -1. はじめに一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一63 4-2. 実験の方法一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一6.+

( 1 )モンタージュ画像の作成一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一6.+

( 2)アイマークレコーダー(EMR)による注視実験について一一一一一一一一一一一-64 (3)形容詞対7段階評価による景観評価実験について一一一一一一一一一一一一一一一一一一一65 4-3. 実験手法の改善一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一65 4-4. 分析結果一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一66 ( 1 )構図と注視との関係一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一66 (2)視対象の変化と注視との関係一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一66 (3)視対象の変化と心理評価一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一66 (4)まとめ一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一67 4-5. 第4章のまとめ一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一67

第5章 国土数値情報を用いたマクロスケールの都市の景観構造分析一一一一一一一一一一一 82 5 -1 . はじめに一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一83 5-2. データについて一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一8.+

5-3. 分析の方法一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一8.+

5-4. 分析一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一86 ( 1 )可視領域分析一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一86 (2 )地理的開放性分析一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一86 (3)スカイライン分析一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一-87

(4)まとめ一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 88 5-5. 第5章のまとめ一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一-88

(6)

第6章 3次元CGによる都市景観シミュレーションシステムの開発一一一一一一一一-100

6 -1 . はじめに一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一101

6 -2. 都市中心市街地シミュレーションの作成手法一一一一一一一一一一一一一一一一一一101

6 -3. 簡便なデータベースの作成一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一・102

( 1 )建物ファサードのデータベース化一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一102

(2)建物色彩のデータベース化一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一-103 (3)点景のデータベース化一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一104 (4)街区 ・建物形態のデータベース化一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一104

6 -4. 都市中心市街地のシミュレーション画像作成一一一一一一一一一一一一一一一一105 ( 1 )静止画の作成一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一105 (2)アニメーションの作成一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一105

6 -5. 都市遠景シミユレ一シヨンの簡便な表現手;法去一一.一一.一一.一一.一一.一一一一一一一一一一一一-10仰7 (υ1 ) メツシユデ一タの作成一一一一….一一.一一一一一一一一.一一--一一.一一.一一--一….一--一…"一.一一.一一.一一一一一一一一一一一一 107 (2幻)遠景景観要素の表現方j法去一一.

6一→6. 各表現の統合一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一109

( 1 )都市中心市街地表現、 地形表現、 遠景景観要素表現の統合一一一一一一一一一一- 109

6 -7. シミュレーション画像と実写画像の比較一一一一一一一一一一一一一一一一一一一110

6 -8. 第6章のまとめ一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一110

第7章 研究の総括----一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一-124

謝辞ー--一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 129 既発表論文一-一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 130

(7)

第1章 序論

(8)

第1章 序論

1 - 1 . はじめに

昭和30年代後期以降の高度経済成長とモータリゼーションの発達は、 日本の都市に 飛躍的な成長をもたらした。 都市には人口、 資本が集中し、 各都市は日本経済を支え る受皿としての役割を十分に果たしてきたといえる。 しかし高度経済成長期に形成さ れてしまったストックは経済的側面で捉えるならば評価は高いものの、 都市計画、 特 に景観の側面で捉えるならば、 必ずしも良い評価を得ることはできない。 その理由と して 、 大量生産 ・ 規格化を背景に「量Jとしてのストックは形成されたものの、 ス トックそのものの「質」は、 決して満足できるものではなかったこと、 また、 都市が もっていた歴史的な性格つまり都市のアーバンパターン、 その表層ともいえる景観を 大きく変容させ、 歴史的継続性を断絶した形で現代都市が形成されたことが挙げられ る。

しかし、 近年の価値観の多様化は、 このような経済一辺倒がもたらした弊害を是正 し、 都市を生産 ・ 消費の場から総合的な快適性をもっ生活の場への転換を促すものと なっている。 したがって現在、 都市に求められているものは、 気候、 風土、 歴史性な どを考慮し、 個性ある都市の創造を目的とした居住空間の整備、 また魅力ある都市デ ザインの展開である。

このような傾向は、 各地で行われている都市整備の実態にも伺える。 旧来は、 イン フラ ・ 都市施設などの整備事業が中心であったのが、 近年においては、 「都市アメニ テイJの向上を目的とした都市の景観形成、 美観の推進、 緑化など、 都市の質的側面 の充実を目標とした整備事業が推進されている。 また法的コントロールとしての景観 条例あるいは景観ガイドラインを制定する自治体も多く、 景観に対する関心は急速な 高まりを見せつつある1)2)3)。

一方、 景観に関する研究は、 現在、 さ まざまな試みがなされている。 景観デザイン の方法論研究、 歴史的まちなみ研究、 その実現手段としての制度の研究、 さらに景観 シミュレーションの研究等が展開され、 蓄積もなされてきた。

景観は、 現実には地表面に立体として構成された建物、 道路、 緑等を人の視線を通 して認識されるものである。 視覚的に把握されない 「景観」の分析は、 現実に適用し ていくための実践的な景観デザインの研究にとって無意味である。 景観研究におい「

今ノ向

(9)

は、 いわば2次元あるいは3次元として表現される視対象が研究の素材となるのであ る。

当然ながら人々は、 都市を立体として認識するのである。 従って都市の景観研究を 行うとすれば、 ある研究対象区域の景観構成要素である各種の建物や緑等の立体的状 況を把握する必要があり、 それは、 個別の建物や道路の幅員、 形状、 街路樹など2次 元、 3次元のそれを調査することになる。 しかしこの調査は、 小地区を対象にしない かぎり一般には不可能である。 ここに現実の都市を対象にした景観研究のきわめて困 難な側面がある。 しかしそこにこそ景観研究にコンビュータの技術を援用する理由が ある。

コンビュータの技術進歩はめざましく、 多様な分野で応用されている。 建築 ・ 都市 計画の実務の分野においては、 CAD、 G 1 S、 コンビュータグラフィックスといっ たツールが、 設計支援、 情報管理に活用されている。 部分的には、 地区景観を連続画 像として表現したり、 景観影響評価などにも活用されてきており、 今後、 コンビュー タの技術を適用した景観研究はさらなる進歩を遂げると考えられる。

今後の景観研究においては、 これらの高度化する技術、 具体的にはコンビュータ画 像処理、 コンビュータグラフィックス、 画像モンタージュ等の各種の技術を援用し て、 景観の特性を定量的に表現し、 容易に都市景観シミュレーシ ョンが出来るシステ ムの開発をおこなうことが、 重要な課題になってきている。

1 -.2. 研究の目的

本論文は、 以下の3つのテーマを研究の主要な目的としている。 いずれの主題もコ ンビュータの技術を活用したものであり、 景観の定量的分析あるいは都市シミュレー ションシステムの開発をテーマとしている。

( 1) r景観を定量的に把握する物理指標を開発するJ

2次元、 あるいは3次元の景観画像を通して視対象が有する物理的な特性を定量的 に捉える。

人間は視覚的な情報として景観を知覚し、 認識 ・ 評価をおこなうわけであるから 景観がもっ形態の特性を正確に記述することは、 非常に重要なテーマであるa しかし

- 3-

(10)

ながら、 景観の有する情報は膨大であり、 それらの情報をもとに特性を抽出すること は難しく、 また景観特性の定量的記述方法は確立されていない。

そこで本研究では、 まずコンビュータ画像処理、 コンピュータグラフィックスの技 術を用いて、 景観の特性を定量的に把握する指標の開発を行う。

( 2) r景観の構図と景観構造をさぐるJ

つぎに、 景観の構図と認知行為との関連を、 新たに開発した実験手法により明らか にするとともに、 地方都市が潜在的に有する景観の構造を把握する。

具体的には、 アイマークレコーダーを用いた注視実験により、 景観の構図と知覚行 為の関連を分析し、 構図の果たす役割について検討する。 さらに地形による起伏の分 析から都市のマクロな景観構造を把握し、 地方都市がもっている潜在的な景観ポテン シャルを明らかにする。

( 3) r都市景観をシミュレートするJ

最後に、 景観特性、 景観評価の分析結果を踏まえ、 広域の都市景観をシミュレート する技術の開発をおこなう。

近年、 都市の景観は、 建築物、 構造物群の急速な更新によって大きく変貌している ことから、 景観の変化を予測することも重要な課題となってきている。

特に地方都市においては、 周囲の山、 川、 海といった自然的環境が調和のとれた都 市空間を形成していたが、 住宅地開発あるいは大規模高層建築物などの影響により景 観は著しく変化してきた。 このような都市の景観の変化を計画段階で予測できるなら ば、 建設される建築物のボリューム、 形態、 高さ等の検討も容易になる。 また景観条 例などによる建物の形態規制を行う自治体も増加しているが、 それらの指針を設定す る上で、 有用な情報を提供することができると考えられる。

本論文では、 3次元コンビュータグラフィックスの手法を応用することで、 広域的 な都市景観をシミュレートすることができるシステムを開発する。 今日までのCGシ ミュレーションは、 建築、 あるいは一定規模の街区を対象とした小地区のシミュレー ションであり、 現状では都市全域の環境を表現した事例はあまり例を見ない。 本研究 では、 都市市街地と周辺部の地形を含めて、 広域的な景観を少ないデータと短い作画

(11)

時間によって表現する新たな手法を提案し、 リアリティ高い疑似景観画像を作成す る。

1 - 3. 既往の関連研究

現在、 景観に関する研究は多様な広が りを見せつつある。 その背景としては、 景観 が単に人間の視覚的情報である以外に、 人間の環境、 心理、 文化、 歴史などの多元的 要素と密接な関係をもち、 研究領域も、 建築学、 土木工学、 地理学、 文化人 類学から

デザイン、 環境論に至るまで多岐に亙ることが指摘できる。

これらの景観研究のなかで、 建築学 ・ 土木工学に関する近年の動向は以下のようで ある。

旧来よ り多々論じられたのが、 景観認識、 景観評価であり、 人聞は景観をいかに認 識し評価するのかという景観の原論的研究である。 人間の評価を客観的に捉える方法 として、 アンケートや評価実験をおこなう手法が一般的に適用されており、 これらに

属する研究は一定の成果をあげている。

また、 景観の特性を解明し景観を分類 ・ 類型化あるいは景観の価値等について記述 した研究も多い。 これらの研究は景観を定性的に捉えたものが多く、 古くはカミロ ・

ジッテ4)やケビン ・ リンチ5)、 近年では日本における樋口ó)7)などの先駆的研究など、 非 常に評価が高い文献もある。 しかし、 いかに客観的な側面で景観を論じるのか、 つま り景観そのものを定量的に把握することも現在は重要な課題であると考える。

近年では、 古絵図、 風景画あるいは文学作品などの情景の描写、 記述より、 景観の 特性を分析する研究が盛んである。 これらは絵画や浮世絵、 和歌や小説を題材とした ものであり、 これらの題材には、 景観の骨格の特徴、 広くは地域の文化 ・ 風土 といっ た要素が折り込まれてお り、 景観の構造を把握する上で重要な役割を果たすと考えら れる8)。 鳴海らは、 「浪花百景Jに描かれた大阪の版画から、 風土的な地域特性を分析 している9)。 また近年では、 萩島らが、 浮世絵の構図から景観を類型化し、 その特性を 見出している10)。

歴史的見地に立つならば、 歴史的町並み ・ 市街地の調査研究も旧来より盛んであ る。 かつては、 集落 ・ 都市の空間構造、 伝統的建築の間取り、 建築的様式論などが議 論の中心であったのに対し、 近年では各地の景観整備の需要に対応しつつ、 町並み保 存、 デザインサーベイといった景観の視点に立った研究も多く見られる11)12)。 このよう

-5-

(12)

な景観整備の展開とともに景観条例を制定する自治体も急増しており、 住民参加型の 景観形成プロセスに関心が高いが、 景観形成基準 、 合意形成など、 その制定方法は明 確に確立されておらず、 いかに住民とのコンセンサスを図りながら条例を制定するの

か、 その基準をテーマとした論文 も多い13)1ぺ

一方、 土木工学を中心として自然景観の保全のテーマが、 旧来より取り上げられて きた。 緑地の保全、 土木構造物と自然環境との調和という観点から論じられた論文に は多くの蓄積がある15)。 またシークエンス景観、 道路景観というテーマも土木工学特

有のテーマである16)17)。

さらに、 近年、 とりわけ関心が非常に高い分野がコンビュータ等の高度の技術を用 いた景観研究である。 高度なコンビュータ及びソフトウエアの普及により、 CAD、

CGの利用を中心とした設計支援 ・ 景観評価に関する研究が増加している。 CADは 景観設計手法論、 CGは、 景観シミニLレーションによる景観変化のビジュアル化 ・ 景 観評価に活用されて実績を挙げている。 しかし多くの研究は、 既存のソフトウェアを 用いた研究であるため、 これらのツールは絵を描く手段として位置づけられたものが 多い18)1九

近年の景観研究の動向をみると以上のとおりであるが、 本研究に関連する景観研究 にづいて記述すると以下の3つに集約される。

・ 景観特性を定量的に記述した研究

・ 景観シミュレーションに関する研究 . 景観の認識 ・ 評価に関する研究

これらの研究類型は互いに重複する側面もあるが、 本研究との関連から考察すると 上記の3つに集約することが的確であると考える。

( 1 )景観特性を定量的に分析した研究

景観 あるいは都市空間の特性を定性 的に表現する研究は多数の蓄積があるが、 景観 自体の特性を定量的に解析する研究は、 景観がもっ情報量が膨大なため、 さまざまな 情報を正確に 記述することが難しく、 「し1かに景観の特性を記述するか」ということ が、 この分野での重要なテーマとなっている。

これらの記述の方法としてさまざまな手法がみられるが、 その代表例として3種の 方法が挙げられる。 第一の方法としては、 現状の都市空間において、 景観を構成する

(13)

要素の状態を実測により記述する 方法である。 都市空間を実測することは、 かなり の 労力と時間を要するので、 研究の対象となる地域を限定し正確に記述する 方法が一般 的である。 西村らは「ウィーン市都心部における連続する建物立面の時間的及び場所 的変化の分析」において、 建物の形態の特性を指標化し景観の多様性と統一性を定量 的に分析している 20)。

第2の方法は、 写真、 ビデオ等を用いた景観特性の計量化である。 人間は景観を視 覚的に捉えることから、 写真を用いることは有効な手段であるといえる。 写真、 ビデ オを用いて景観を 計量化する研究は、 近年のコンビュータ技術の発達により増加して おり、 伊藤らは「街路景観における水平 ・ 垂直性に関する研究」において、 景観画像 から空間の水平 ・ 垂直線を抽出し、 その特性について分析をおこなっている21)。 また 月尾、 奥らは、 画像から景観のスカイラインを抽出し、 そのゆらぎの特性、 複雑さの 特性について定量的に分析をおこなっている22)23)。 都市環境を計測する研究にも、 写真 は良く用いられる手段であり、 武井は、 魚眼レンズを用いて都市の開放性を指標化し ている24)。

第3の方法は、 仮想的な空間において都市空間を再現し、 計量化をおこなう方法で ある。 これには模型あるいはコンビュータグラフィックスといったツールを用いるこ とが一般的である。 特に、 CGを用いたものは、 景観の特性を解析的に算出すること に優れており、 近年では、 飯塚が「市街地から見た可視領域の計量化とその分布図の 作成Jにおいて、 山々への眺望における市街地建築群の阻害の影響について解析して いる25) 。 また萩島らは、 標高と景観要素をメッシュデータ化し、 「絵になる風景」の 視点場を解析的に探索している26) 。

( 2 )景観シミュレーションに関する研究

近年、 景観の変化を予測する手段として、 CG、 画像モンタージュといった 技術が 用いられ大きな成果を挙げている。 その理由は 、 建築の更新、 大規模構造物の建設な

どによる景観の変化をコンビュータの仮想空間上において視覚的にシミュレートでき るということ(ピジュアライゼーシ ョン)と、 仮想3次元空間における景観の物理的

な変化の特性を解析的に把握できること(景観特性の数値解析)である。 前者のビ ンユアライゼーションは、 設計の実務を中心として、 新規建築物の計画段階における 建物デザイン評価、 周辺環境への影響予測等;こ活用されている27)。 学術研究の分野明

(14)

は、 CGのリアリティの問題より、 CGをそのまま景観評価の研究に使用することは あまりなされていない。 したがってシミュレート された都市景観を評価する方法とし ては、 画像モンタージュを用いたものが一般的である。 モンタージュの作成に関する 研究としては、 川上らによる「パソコンを用いた写真合成による景観シミュレーショ ンの開発と計画支援J 28)があり、 正確にモンタージュをおこなう技術の開発をおこ なっている。 また彼らは、 モンタージュ画像 を利用した評価実験により景観の変化と 評価の関連を見出している29)。 後者の景観特性の数値解析による研究を挙げると、 両 角らによる「建築可能範囲形状とランドマークへの影響に着目した大規模建築物の調 整 ・ 誘導に関する研究J 30)や石塚らによる「都市デザインにおけるCGの活用に関す る研究J 31) がある。 両角らは市街地からランドマークへの眺望を、 さまざまの建物形 態をシミュレートし、 眺望保全の指針を検討している。 また石塚らは横浜の山下公園 から港までの眺望保全を目的としたビジュアノレコリドーという建築高さ規制ラインを 提案し、 その有効性について建物高さのシミュレーションにより検討している。

( 3 )景観の認識 ・ 評価

工学的景観論における最大のテーマは、 「どのような環境が美しく魅力あるものな

のか、 人にとって美しく見えるのかjということであろう。 ここでは景観を評価する 人関心理の探究が重要なテーマ となる。 したがって景観の認識 ・ 評価に関する研究 は、 旧来より多数の研究が実践されてきた。 人間の心理を計るには、 心理という暖味 な事象を何らかの媒体により表現することと、 表現された心理を計る尺度が必要とな る。 もちろん心理は完全に計量化できるものではないが、 計量化を行わなければ客観 的視点で景観の評価を論じることはできない。 したがって近年の景観の認識 ・ 評価に

関する研究をみると、 心理、 イメージの表現と定量化がテーマとなっている。 心理、

イメージの表現は、 言葉や図式という媒体を通して表現する方法が試みられている。

言葉による場合はインタビューやアンケートなどによって、 また記号や図式による場 合はイメージマップ等を使用し、 視覚体験を通して得られたイメージの特徴を明瞭に 表現している。 近年の論文では藤原による「歴史的市街地を持つ地方都市のイメージ

構造J 32)がみられる。 心理の定量化の試みで一般的な手法が、 SD法による評価実験 である。 形容詞対の尺度により景観の評価を定量化し因子分析によって評価構造を解 明する。 また多くのサンプロルを収集することで、 客観的知見を見出す方法である。 し

(15)

かしSD法では評価項目となる形容詞対の提示を前提としていることから、 複雑唆昧 な心理評価 の解明は難しい。 しかしながら客観的視点で論じることが可能であること から、 現在のところ一般的に用いられる手法である。

1 -4. 本研究の特色

上記の既往の論文を踏まえ、 本研究の特色を明確にすると以下の 4 点を指摘でき る。

( 1 )本研究では、 コンビュータ画像処理 ・ CGの技術を援用し独自にプログラムの 開発をおこない、 景観が有する2次元あるいは3次元の膨大な形態の情報から 景観の 物理的な特性を表現しうる指標の開発を行っている。

( 2 )本研究では、 アイマークレコーダーを用いて、 人間の注視行為 ( 視対象の把 握、 注視回数)を分析し評価との関連を探ることで、 景観評価の構造を解明してい る。

( 3 )国土地理院発 行の国土数値情報を用いて九州全域の標高データを抽出し、 マク ロレベルの景観的特徴を九州76都市を対象として比較分析している。

( 4 )都市景観の変化を予測する手段として、 CGを用いたシミュレーションが旧来 より活用されているが、 データ量の問題により、 ある一定規模の街区をシミュレート したものが殆どである。 本研究では、 独自にシミュレーションシステムを開発するこ とによって、 少量のデータで広域の都市空間を擬似的にシミュレートする方法を提案 している。

1 - 5. 各章の構成と各章の概要

本論文は、 本章を含む全7章より構成される。

第2章では、 コンビュータ画像処理の手法を用いて2次元の景観画像の形態特性を 表示しうる物理指標の開発を行った。 景観の画像処理により得られる形態特性の指標 は、 輪郭線出現数、 その長さ、 方向、 面を構成する辺の長さ、 その標準偏差、 頂点 数、 面積、 そしてフラクタル次数、 いびつ度である。 これを大分市の景観画像に適用 し、 各指標を算定している。 ついで、 この物理指標の定性的性格を、 形容詞対の7段階

評価により明 らかにした。

(16)

次に第3章では街路空間の3次元の視覚的特性を把握するため、 「天空遮蔽率Jの 指標を提案した。

まず単純な形状をした建物と街区から構成されたモ デノレ街区において、 天空遮蔽率 の値を算定し、 その基本的性質を把握する。 さらに大分市の都市中心市街地のシミュ

レーション街区上において本指標の計測をおこ ない、 都市街路における空間の遮蔽性 を、 建物と道路幅員の関連、 用途地域別の特徴、 天空遮蔽率の時系列変化 の3つの視 点より、 定量的に分析を行った。

第4章では2次元モンタージュ画像に対する人間の視線の動きと景観評価の関連を 明らかにした。

2次元景観モンタージュ画像は、 樹木、 看板の視覚的な量、 路面のテクスチャーを 変化させた疑似画像であり、 こ れらの画像を被験者に提示する。 被験者はアイマーク レコ ーダーを装着しており、 本装置 から被験者の注視行為(注視位置、 注視回数な ど)を把握することが可能である。 本章では、 画像モンタージュによる景観の変化、

景観の構図、 注視行為、 被験者の評価の関連より、 人間の知覚行為と評価を明らかに する。

第5章では国土地理院発行の国土数値情報の標高データを用いて都市の地理的な環 境を3次元コンビュータグラフィックスによりシミュレートし、 海や山の地理的環境 が織り なす広域の景観の特性を定量的に把握した。 分析は可視領域分析、 地理的開放 性分析、 スカイライン分析 からなる。 可視領域分析、 地理的開放性分析は、 都市中心 部より可視の領域を抽出し、 その空間的特性について分析をおこなったものである。

スカイライン分析は、 地形メッシュにより構成される山並みのスカイラインの形状を 抽出し、 形状の特性により九州7 6都市を8つのパターンに類型化した。

第6章では、 建築群の集積から構成される市街地と都市を取り囲む広域の地理的環 境を、 3次元CGの技術を用いて視覚的にシミ ュレートする手法の開発をおこなっ た。

現状の都市を形成する膨大な建築群を個別に正確なデータとして入力することは不 可能であり、 仮に データ入力できたとしても、 そのデータや描画時間は多大なものベ、

(17)

l----

ある。 そこで少ないデータ量で、 ある程度のリアリティを有する画像を作成する手法 を提案し、 本手法を用いて大分市の都市シミュレーシ ョンをおこない、 実写の景観画 像と比較し有効性を検証した。

第7章では2章""""_6章の結論をもとに総括をおこなう。 総括は、 コンビュータの援 用性、 各分析による知見を中心として記述した。

なお、 本研究の3つのテーマとコンビュータ技術の関連を表1 - 1にまとめた。

(18)

参考文献

1 )建設省都市局公園緑地課監修, みどりのまちづくり研究会編, í都市緑化による都市景観形成 事例集J, (株)ぎょうせい, 1976

2)建設省住宅局建築指導課・市街地建築課監修, 景観・まちなみ景観研究会著, í建築・まちな み景観の創造J , 技報堂出版, 1994

3)小出和郎, 市岡明子, í景観に関する現行法制度の概観J , 都市計画, No.196, pp.36-42, 1995 4)カミロ ・ジッテ著, 大石敏雄訳, í広場の造形J , 美術出版社, 1968

5)ケビン・リンチ著, 富田玲子・丹下健三訳, í都市のイメージJ , 岩波書店, 1974 6)樋口忠彦, í景観の構造J , 技報堂出版, 1975

7)樋口忠彦, í日本の景観J , 春秋社, 1981

8) S teven C. Bourassa, " Toward a Theory of Landscape Aesthetics", Landscape and U rban Planni ng, N 0.15,

pp.241・252, 1988

9)鳴海邦碩, 久隆浩, 橋爪紳也, 大西二州, í r波花百景』に描かれた近世大阪の都市景観構造 に関する考察J , 第23回日本都市計画学会学術研究論文集, pp.223・228, 1988

10)坂井猛, 萩島哲, 山口敦, 朴鐘激, 菅原辰幸, í浮世絵風景画の視点場と遠景に描かれた山

の仰角に関する研究J , 第28回日本都市計画学会学術研究論文集, pp.505・510, 1993

11)橋本清勇, 三村浩史, リム・ボン, 安孝鎮, 伊沢はる, í京町家の建て替え ・改造デザインと 町並み形成に関する研究J , 第27回日本都市計画学会学術研究論文集, pp.481-486, 1992

12)八木雅夫, í伝統的な港町の景観保全計画に関する考察J , 第27回日本都市計画学会学術研究 論文集, pp.679・684, 1992

13)岡崎篤行, 原科幸彦, í歴史的町並みを活かしたまちづくりにおける合意形成過程に関する事 例研究一一橿原市今井町地区の伝建地区指定を対象として一一J , 第30回日本都市計画学会学術研 究論文集, pp.337・342, 1995

14)内村雄二, íデザインの合意形成手法に関する一考察一一港湾景観整備計画を事例として一一 J , 第30回日本都市計画学会学術研究論文集, pp.349・354, 1995

15)川崎雅史, í橋と景観のシルエットに関する構図論的考察J , 土木計画学研究・論文集, No.2 3, pp.153・160, 1993

16)井上義之, 山田憲夫, í高速道路の景観的計画(道路外景観・ 内景観の策定手法について)

J , 土木計画学研究・論文集, No.22, pp.981-988, 1992

17)東京大学工学部土木工学科八十島研究室, í周辺地形を含んだ連続道路透視図の作成J , 1972

18)佐藤むつみ, 黒川哲郎, 小島常成, í設計デザイン教育における知的支援システムの開発一ー

その1一一J , 日本建築学会第15回情報システム利用技術シンポジウム論文集, pp.167・172, 1992

19)森川直洋, 長舟利雄, 本田智子, í高速通信による高性能CGシステムの利用にむけてJ , 日

本建築学会第17回情報システム利用技術シンポジウム論文集, pp.235-2-W, 1994

20)三島伸雄, 西村幸夫, íウィーン市都心部における連続する建築立面の時間的及び場所的変化 の分析一一グラーベン街の場合一一J , 第30回日本都市計画学会学術研究論文集, pp.277・282, 1995 21)伊藤恭行, 近藤裕幸, 飯塚拓生, í街路景観の水平・垂直性に関する研究J , 日本建築学会計画 系論文報告集, No.441, pp.l03・112, 1992

(19)

22)月尾嘉男, 亀井栄治, rスカイラインのゆらぎと快適感に関する研究J , 日本建築学会計画系 論文報告集, No.432, pp.105・111,1992

23)奥俊信, 高橋雅俊, r形態分解法による都市ファサードの特徴分析J , 第27回日本都市計画学 会学術研究論文報告集, pp.733・738, 1992

24)武井正昭, r天空率による市街地 天空密集状態の判定J , 日本建築学会学術講 演梗概集,

pp.615・616, 1986

25)飯塚英雄, r市街地から見た山の可視部分の計量化とその分布図の作成J , 日本建築学会第16 回情報システム利用技術シンポジウム論文集, pp.439-443, 1993

26)坂井猛, 萩島哲, 出口敦, 鵠心治, rメッシュデータによる視点場探索手法の開発J , 第30 回日本都市計画学会学術研究論文集, pp.253・258, 1995

27) Stephen R.J. Sheppard,"Visua1 Simulation, A Use Guide for Arch.itects, Engineers, and Planners", Van Nostrand Reinhold, New York, pp.171・201,1989

28)後藤孝臣, 川|上光彦, 竹田恵子, rパソコンを用いた写真合成による景観シミュレーションシ ステムの開発と計画支援J , 日本建築学会第14回情報システム利用技術シンポジウム論文集,

pp.211・216, 1991

29)志賀祥雄, 川上光彦? 竹田恵子, r景観シミュレーションシステムを用いた眺望景観の評価 法J , 日本建築学会大会学術講演梗概集F, pp.31・32, 1993

30)両角光男, 位寄和久, 磯田節子, rランド、マークの可視・不可視領域の着目した大規模建築物の 影響評価モデルの検討一一景観形成計画のためのシステム解析手法に関する研究一一一J , 日本建築 学会計画系論文報告集, N 0.456, pp.163・170,1994

31)石塚雅明, 柳田良造, 秋葉澄伸, r都市デザインにおけるCGの活用に関する研究一一CGを 活用した景観保全基準の策定一一J , 日本建築学会第14回情報システム利用技術シンポジウム論文 集, pp.253・258, 1991

32)藤原篤, r歴史的市街地を持つ地方都市のイメージ構造J , 日本建築学会計画系論文報告集,

No.441, pp.93・102, 1992

(20)

表1 - 1 3つのテーマとコンピュータの援用

コ ン ピ ュ ー タ の 援 用 3のテーマ

景観を定量的に 把握する物理指

標を開発する (第2章) (第3章)

景観の構図と景 観構造を探る

(第4章) (第5章)

都市景観をシミ ュレートする

(第6章)

コンヒ。ュータ画像処理 ・モンターシーュ等

。コンヒ。ュータ画像処理 く〉景観画像から景観の形態

特性を抽出

・輪郭線の特性 .面の特性

く〉景観画像から景観の複雑 さを抽出

・フラクタル次数, いび つ度

。画像モンタージュ

く〉景観画像における景観要 素の付加と削除

・街路樹の付加と削除 .看板の付加と削除

・舗装状況を操作

。アイマークレコーダーによ る注視実験

く〉景観画像に対する注視行 為の特性把握

3次元コンt'ユータグラ7ィックス等

。コンピュータグラフィックス による数値解析

。市街地3次元データから視 覚環境を計測する

・ 天空透蔽率

-市街地空間の物理特性の 定量化

。コンピュータグラフィックス による数値解析

。国土数値情報(標高データ) の活用

く〉地理的スケーノレによる都市 の開放性

・可視領域

.空間的開放性

く〉スカイラインによる都市の 類型化

・ ビジュアルスクリーン

。CGによる景観シミュレーシ ョン

く〉市街地空間の擬似的表現手 法

・ファサードデザインのパ ターン化

-色彩のパターン化 く〉遠景の疑似的表現手法

-土地利用, 人口メッシュ

データの活用

(21)

第2章 コンビュータ画像処理による都市景観画像の物理的指標

(22)

第2章 コンビュータ画像処理による都市景観画像の物理的指標

2 - 1 . はじめに

人間は景観を視覚的な情報として把握することから、 視対象が有する色彩や形態は 人間の景観評価に直接的に影響を及ぼしていると言える。 したがって、 人間の景観に 対する評価構造は、 景観の視対象が有する物理的特性を正確に表現し、 また、 それ を 見る側の人間の心理評価を把握し、 その後に物理的特性と心理評価との関連を分析す ることによって明らかになると考えられる。

しかしながら、 景観認識 ・ 評価に関する既往の研究は、 人聞がし1かに景観を評価す るのか、 という評価者の心理分析に重点が置かれており、 景観の物理的特性を定量化

し、 それと評価の関連を分析した事例は少ない。 その理由は、 景観がもっ情報量が膨 大であり、 景観の特性の計量化が難しいこと が挙げられる。 そこで近年では、 コン

ビュータの技術を援用することで、 景観の特性を定量的に記述する研究が試みられて いる。 このようなコンビュータ技術を用いた 景観特性の記述に関する既往の研究をみ ると、 伊藤らによる「街路景観の水平 ・ 垂直性に関する研究J 1)、 奥らによる「形態 分解法による 都市ファサードの特徴分析J 2)が挙げられる。 伊藤らは、 景観の水平 ・

垂直性の特性、 奥らは、 景観の複雑さの特性を定量的に表現している。 しかしながら 未だ景観特性を記述しうる 手法は十分には確立されておらず、 今後の課題とされてい るのが現状である。

本章では、 景観画像から得られる 景観の形態特性を把握する指標として、 コンビ ュータ画像処理の手法を応用し、 数量的に表示しうる物理的指標を提案する。 景観の 特性を抽出する上でコンビュータ画像処理を用いる利点は、 得られる情報 が客観的に 抽出されること、 また数値データとして示されることから 景観画像相互の比較が可能 であること、 さらに手作業にくらべ景観特性の抽出が容易であることである。

本章の構成は、 2節で研究の方法を述べ、 3節で物理的指標の提案 を行い、 4節ぺ、

心理的評価により物理的指標の意味を明らかにし、 5節で本章をまとめている。

2 - 2 . 研究の方法

最初に景観画像を収集する。 本研究の対象地域は大分市とその周辺部であり、 この 地域を都市中心地区、 都市近郊市街地、 農山村部の3地区に分類し、 各地区の代表的

な景観をスライドにより撮影した。

(23)

つぎにこれらのスライドをコンビュータに入力し、 画像処理を施し形態特性のデー タを抽出する。 ここでいう形態特性とは、 景観画像に写しこまれた景観要素(建築 物、 道路等)の画像上における2次元的な線や面の特性である。 景観画像に出現する 線や面の特性は景観要素の視覚的特徴を表し、 線の長さや方向あるいは面の辺長、 頂 点数は、 景観要素の形態の基本的な特性を表す。 また画像に出現する輪郭線の出現 数、 面数は、 景観要素の視覚的に得られる量を表し、 面の面積は、 景観要素のボリ ュームを示す。 さらにフラクタル次数ゃいびつ度の指標を用いて、 景観画像の複雑さ を定量的に記述する。 次に、 これらの物理的指標の定性的意味を心理評価によって確

認している。

以下にコンビュータ画像処理を用いて景観特性を抽出する方法3)4) 5) 6)について図2 -1のフローチャートに従い説明する。

( 1 )原画像入力とスムージング処理

まず景観を写しこんだ6 x 7判のスライドをスキャナーにかけ、 スライドの濃淡の アナログデータを256階調のデジタルデータに変換する。 このデータが原画像であ り、 画像全体の大きさは横520画素×縦420画素とした。 この原画像には微小な ノイズや輪郭がぼやけた点があり、 面や線を抽出するうえで支障があるので、 その前 処理としてエッジ保存のスムージング処理を行う。 これはノイズを取り除き、 エッジ を鮮鋭化する利点があり、 処理を施した画像がスムージング画像である。 このデータ を用いて輪郭デー夕、 面データ抽出をおこなう。

( 2 )輪郭線データ抽出

輪郭線のデータはロパートのアルゴリズムを用いて抽出をおこなった。 この処理は 画像内において極端に濃度の変化が起こる点、 つまり画素聞の微分値が大きく、 ある 関値以上の点を境界とみなして抽出するものである。 しかしこのデータは画像上の画 素の繋がりとして表されたデータで、 コンビュータ画像上の線は本来の線データ(線 の始点と終点の座標を抽出したベクトルデータ)ではない。 したがって、 線データを 抽出するにはこのデータをベクトノレデータに変換しなければならなし\ このデータは 輪郭線の線幅が大きいので線幅1 画素の線を抽出する細線化処理の前処理をおこな い、 得られた細線化データを用いてベクトル化する。 この結果、 輪郭線は線の始点と 終点の座標データに変換され、 輪郭線の特性の分析が可能となる(図2 - 2参照)。

(24)

( 3 )面データ抽出

景観要素の面デー タを抽出するため、 スムージング画像を用いて、 領域分割処理を おこなう。 この処理はある画素の濃度と隣接する画素の濃度の差がある関値以内の画 素を一つの集合として統合し、 この操作を画像全体について繰り返しおこない、 画像 を分割したものである。 分割された領域内の画素にラベルを付けデータ化した。 この 領域の輪郭線を抽出しベクトル化をおこない多角形の面データに変換した(図2 - 3

参照)。

画像上における面 は、 多角形の座標データによって表現される。 そこで、 各面の形 態特性を把握するために、 多角形の辺長、 頂点数、 面積の値を計算した。

( 4 )フラクタル次数の指標

都市の景観の複雑さを分析する指標としてフラクタルの理論を応用した。 この概念 はマンデブロによって提唱されたもので、 フラクタルとは「不規則な形状をした図形 において自己相似性以外に何の特徴も持たないランダムな図形Jを意味し、 自然科学 はもとより社会現象の分野でも注目されている理論である7)8) 9) 10) 。

都市景観においても建物群で構成されるスカイラインの形状がフラクタルであると の指摘がなされており11)12)、 本論文では、 景観画像において出現する景観要素の輪郭 線もフラクタルな現象であると仮定し、 その複雑さを表すフラクタノレ次数をカバー法 の手法を用いて算出した。 カバー法とは対象となる図柄を1辺aのあるd次元超立方体 で覆ってしまう(カバーする)とき、 カバーに必要な超立方体の最小数N (a)がa -df に比例し、 このときのd fがフラクタル次数となる。 すなわち次式である。

N (a) =αa -df

本式におけるαは定数、 a はカバーする正方形の1辺の長さである。

図2 - 4がその処理過程であり、 正方形の大きさを変えてカバーをおこなった。 そ のデータを用いて回帰直線を求めフラクタル次数を算出した。 フラクタル次数は、 相 似な図形の複雑さを数量的に表す指標であり、 数値が高いほど図形が複雑であるとい う特性を示す。

(25)

( 5 )いびつ度指標

複雑さを表 現する指標として「 いびつ度Jという指標を提案した。 この指標は、 画 像に出現した面の形態が、 単純な形態なのか、 あるいは、 凹角を有するような歪な形 態なのかを指標化 したもので、 正n角形では0、 歪な形態ほど値が高くなる。 各景観 画像ごとに本指標の平均値を算出し、 類型地区ごとに考察をおこなう。

その計算方法は、 図2- 5に 示すように面の内部方向に折れる角を+、 外部方向に 折れる角をーとし、 ある角とその隣あう角との 角度の差分の絶対値の総和を算出し、

面の頂点数で徐して平均化するという手法である。 この値は正n角形ではO、 複雑な 形態とりわけ凹角を有する形態ほど数値が高い特性がある。

2 - 3. 画像処理によって得られた各指標の特徴

景観画像に画像処理を施し、 景観要素の輪郭線あるいは 面を座標データとして抽出 した。 これらのデータから景観の特性を分析する。 サンプルは、 都市中心地区、 都市 近郊市街地、 農山村部の各地区から、 それぞれ6枚づつである。

( 1 )輪郭線指標による分析

抽出した輪郭線を用いてその特性を分析した。 表2 - 1は、 各画像における輪郭線 の出現数と地区別の輪郭線の出現数の平均値である。

輪郭線の地点別頻度をみると、 最も高い数値を示すのが「商店街交差点」の5136 本、 ついで「駅前」の4455本である。 都市中心部の各地点は全般的に数値が高く、 そ の地区平均も4321本と他の地区平均に比べてか なり高い口 このことから建築物や交通 の集積が 輪郭線の多い景観を構成していると言える。 都市近郊 市街地では、 やや大規 模な道路が交差し低層の商店が見られる「交通要衝交差点1 Jが2589本と最も低い数 値を示し、 都市近郊市街地全体の平均値を下げる要因となっている。 農山村部では出 現数が4000 を越す地点が1地点であり、 地区の平均は3502本と他の2つの地区に比較

して低い値を示 している。

次に各画像において出現 した輪郭線の長さを計測し、 長さ別にそれらの出現数を 算 出した。 その値の地区平均をグラフ化したものが図2-6"-'図2 - 8である。 輪郭線 の長さは画像上での長さとして相対化するために、 画像全体の横の長さに対する輪郭 線の長さの割合で表し、 グラフは片対数で示しである。 横軸が長さの割合で、 縦軸が その出現数の平均である。 各地区とも長さの割合o '""'-' 5 0/0で出現数のピークがあり

(26)

ピークの出現数をみると、 都市中心地区で1326、 都市近郊市街地で1184、 農山村部で 1222とかなり短い微小な線で構成されていることがわかる。 特徴的なことは、 ピーク の値を地区別に比較すると、 都市近郊市街地が最も小さく、 前分析の全体の出現数の 地区順位とは異なる傾向を示すことである。

次にこれらの輪郭線の景観画像における方向を分析するため、 画像の水平方向を0 度とした場合の線分の角度を算出し、 角度別にその出現数を計算したものが図2 - 9

~図2 -11である。 角度は180度を12分割し、 その角度内における出現数を半径上に プ ロ ットした。 なおコンビュータを用いて分析する際、 2 ピクセル長の線は 水平、 垂 直、 45度方向に限定されてしまうため、 この微小な長さのデータを除外した出現数を グラフ化した。 図をみると各図とも水平、 垂直方向の出現数が突出しているが農山村 部は、 他の地区と相対的にみて垂直方向の出現数が低く、 自然的な景観の特性と考え

られる。 また水平方向は各地区とも大きく人工、 自然景観を問わず共通性がある。 ま た都市中心部と都市近郊市街地では、 出現数が数値的には異なるもののグラフ形状は 相似的であり、 都市的土地利用が展開されている地域では、 景観の線特性は類似した 傾向にあると考えられる。

( 2 )面指標による分析

次に画像に出現した面を抽出しその特性を分析した。 面は画像上における頂点座標 データの形式で表され、 このデータを用いて、 領域の面積、 平均辺長、 辺長の標準偏 差の平均値、 頂点数を算出した。 これらの値を画像上のすべての領域について算出し 画像の特性を分析した。 本章では都市中心部(駅前)の例をとりあげる。

図2 -12は画像に出現した面の平均辺長と、 その標準偏差の平均値をプロ ットした ものである。 長さは、 輪郭線特性分析と同様に、 画像全体の横の長さに対する出現し た辺の長さの割合で表している。 図をみると平均辺長が増加すると標準偏差の平均値 も増加して、 相関が見られる。 すなわち出現する領域の形状が変化しでも、 辺の長さ とその標準偏差には一定の規則性があることを示している。

次に面積の割合と平均辺長を示した図が図2 -13である。 面積の割合とは画像全体 の面積に対する出現した領域の面積の割合のことである。 図をみると面積の微小な値 がかなり多く、 面積の割合の平均値が0.0490/0と小さい。 プロ ットの点の分布をみる と、 面積の割合の平均と平均辺長の相関は見られない。

(27)

図2 - 14は頂点数と平均辺長の関係をプロ ットしたもので頂点数の小さい値にほと んどが集中しているが、 平均辺長の平均の0.5---0.7%の範囲で、 か なり頂点数の多い 面が見られる。 しかしながら頂点数と平均辺長も関係がうすい。

つぎに面積の平均の割合と頂点数の図が図2 - 15である。 互いに微小な数値に集中 し、 面積の平均の割合と頂点数は、 値が小さな範囲で相関が見られる。

以上の結果により、 都市中心部(駅前)の景観画像の面特性として以下のことが挙 げられる。

出現した領域は、 面積が小さく頂点数が多い領域が多数であり、 面積が増加すれば 頂点数も増大する。 しかしながら頂点数 、 面積は平均辺長と相関がなく、 辺の長さの が大きいからといって、 必ずしも面積、 頂点数が大きいわけではない。 したがって都 市中心部(駅前)の景観 画像に表れる景観要素は、 多くの頂点をもっ複雑 な形態よっ て構成されているといえる。

そこで、 このような複雑さを、 さらにフラクタル次数といびつ度によって定量的に 解析した。

( 3 )フラクタル分析

表2 - 2に 示すのが各画像のフラクタル次数およびN (a)とa -dfの相関係数であ る。 各画像とも相関係数の値がo. 99以上と大きく、 景観要素の重なり合いがフラクタ ルな景観を構成していると考えられる。

フラクタル次数についてみると「商店街交差点」が1.76 4次元と最も高く、 ついで

「商店街大通り」が1. 704次元であり、 都市中心部は複雑な景観であることが伺える。

最も次数が低いのが都市近郊市街地の「交通要衝交差点1 Jである。 この景観は大き な規模の道路どうしが交差し、 周辺に大規模の建築物がなく単調であり、 フラクタル 次数が1. 539次元と低い数値を示した。 各地区ごとのフラクタル次数の平均値は都市中 心部が1. 686次元、 都市近郊市街地が1. 635次元、 農山村部が1. 627次元と人工的で高密 な市街地から構成される景観ほど複雑さが大きいという結論を得た。

( 4 )いびつ度分析

この指標を各面ごとに算出し画像全体における平均値と、 フラクタノレ次元の数値を グラフ化したものが図2-16であり、 縦軸がフラクタル次数、 横軸がいびつ度の平均 値である。 またプロ ットのAは都市中心部、 Bは都市近郊市街地、 Cが農山村部であ

(28)

る。 特徴的な点は農山村部においてグループがし1びつ度の値により2分化されてお り 、 その要因として考えられるのは近景の樹木の影響である。 いびつ度が高い3地点 では近景に樹木があり、 樹木の複雑な形態が面として抽出され 、 この値が大きくなっ たと考えられる。 またいびつ度の小さい2地点は、 田園の農村景観であり、 他の画像 よりも凹凸の少ない形状をした面で構成されており、 出現した面も面積が微小なも の が多く、 複雑な形態を形成するに至らなかったと考えられる。

プロットAの都市中心部の景観の全体的傾向としては 、 他の地区と比較してフラク タル次数、 いびつ度とも大きく、 A2の「商店街交差点Jではフラクタル次数が1. 76 4、 いびつ度が55.27と相対的に大きく、 景観要素のさまざまな構成が複雑な景観を形 成しているといえる。

都市近郊市街地の景観は、 B 1の「交通要衝交差点Jにおいてフラクタル次数が低 いものの、 全体的にまとまりのある分布傾向を示している。

2-4. 心理評価と物理指標との関連

次に、 以上の各物理指標の定性的な意味を明らかにする。 これは人間の心理評価に よって求めている。 物理指標を抽出した景観画像を被験者に提示し、 形容詞対を用い て各景観画像を評価してもらった。 この心理評価と景観の物理的指標を、 重回帰分析 によって要因関係を明らかにし、 どの要因が影響を与えているのかを調べた13)14)。

実験方法は、 各スライドをスクリーンに投影し、 被実験者(大分大学建設工学科学 生3 9名)に12の形容詞対の7段階評価によ り回答を求めた(表2- 3 )。 分析に 用いたサンプルは、 都市中心地区の画像2 4枚である。

図2 -17が評価実験の地区別のプロフィールである。 各評価項目についてみると

「緑が多い、 やわらかい、 落ちつく、 潤いのある、 暖かい、 好まししリにおいて新興 住宅地の評価が高く、 「明るい、 動的なJにおいて商店街の評価が高い。 それとは対 照的に工場 ・ 倉庫、 歓楽街では全般的に評価は低く、 工場 ・ 倉庫ではすべてがマイナ ス的意味合いの強い評価であり、 歓楽街でも「動的なjの評価以外は工場 ・ 倉庫と同 様にマイナス的イメージの評価である。

( 1 )物理指標と評価の単相関関係

まず、 景観画像の物理特性と形容詞対の景観評価の単相関係数を示す。

(29)

表2 - 4は、 それら相関係数をまとめた表 である。 最も相関が高い指標は、 垂直線 の割合と「緑が多い-緑が少ないJであり、 ーO. 850と非常に相関が高い。 なお垂直線 の割合は他の多くの心理評価の指標と相関が高く、 心理評価との関連が高いことが伺

える。 また平均辺長といびつ度は、 「やわらかいーかたしリ 、 「暖かい-冷たいJな どの指標と相関が高く、 画像に出現する景観要素の形態や辺の長さの特徴が、 直接的 に心理に大きな影響を与えていることが伺える。 なお高い相関関係を示した指標をグ

ラフにしたものが図2 - 18と図2 - 19である。

( 2 )物理指標に影響を与えている評価要因

次に提案した物理特性がどのような心理評価の指標によって説明できるのかを知る ために、 物理指標を被説明的変数、 心理評価指標を説明変数とした重回帰分析をおこ なった。 表2 - 5がその分析結果である。 説明変数の選択は、 重相関係数、 F値、 t 値の値を考慮、しながら決定した。

各物理指標の説明変数の標準偏回帰係数に着目すると、 「面数Jでは、 「動的-静

的JがO.775で最も大きく影響を与えており、 一方「やわらかいーかたしリ がー0.416と 負に効いている。 つまり「面数Jが多いということは、 心理的に動的でかたい印象を 与える指標であることがわかる。 í面の平均面積」では、 「動的一静的」が-0.76 8で 負の方向に効いており、 面数とは逆の性格を有していることがわかる。 í頂点数の合 計Jでは、 やはり「動的-静的Jが0.815であり、 大きな影響を与えている。 Iフラク タル次数Jでは、 「動的一静的JがO.759で正の方向に、 「やわらかいーかたいJが 一0.741で負の方向に大きく影響を与えている。

以上のように、 「面数」、 「頂点数の合計J、 「フラクタル次数Jは、 標準偏回帰

係数の符号も等しいことから、 同様な性格を示していると言える。 つまりこれらの各 物理指標は、 総合的に判断すると、 『景観の躍動性』を示す指標と解釈できる。 これ に対して「面の平均面積」の指標は、 この値が大きい場合、 静的な印象を与える指標 となっている。

「頂点数の平均」では、 「落ち着く-落ち着かなし"\J、 「動的-静的Jという心理 評価指標が選択されている。 しかしながら、 重回帰係数が 0.254と低いことから、 本 指標の説明力はやや弱く、 景観の特性を表す有効な指標とは言えない。

(30)

「平均辺長」では、 「やわらかいーかたい」が-0.427で最も大きく、 ついで「暖か い-冷たいJが-0.382である。 í平均辺長Jの値が大きい ことは、 「かたし汀 かっ

「冷たしリ という印象を与えることを示す。 重相関係数の値も大きい。

「いびつ度」においては、 「やわらかいーかたい」で0.477で最も大きく、 ついで

「暖かい-冷たい」がO.191である。 つまりこの指標は、 「やわらかく」て「暖かいJ

印象を与える指標であることがわかる。 以上の分析から「平均辺長Jと 川、びつ度J は逆の性格を有する指標であることがわかった。 íし1びつ 度Jの値が大きく、 「平均 辺長Jの値が小さい景観は、 「暖かく やわらかい景観でありJ 、 したがって『景観の 柔和性』を示す指標と解釈できる。

「水平線の割合Jは、 良好な結果を得ることができなかった。 また単相関分析の結 果からもわかるように、 「水平線の割合」は全ての心理評価と相関も低く、 この指標

と心理評価指標との関連はないと言える。

「垂直線の割合」では、 説明変数として「落ち着く-落ち着かなしリ が-0.578で、

「潤いのある-潤いのなしリ が-0.262となっている。 標準偏回帰係数の符号がいずれ も負であることから、 この物理指標は『落ち着きのない潤い感のなし寸景観を表わす 重要な指標といえる。

2 - 5. 考察

重回帰分析により、 本研究において提案した物理指標の意味を把握した。 そこで、

これらの意味をもとに各景観画像の特性を明らかにする。 表2 - 6は、 各景観画像に おける物理特性の値をまとめたものである。 表中の網かけ数値は、 物理指標の上位5 位を示している。

( 1 )景観の躍動性

景観の躍動性を表す物理指標は「面数J、 「頂点数の合計」、 「フラクタル次数J

である。 景観の躍動性が大きい景観画像は、 都市中心部のオフィス街、 商店街、 歓楽 街の画像である。 とりわけ、 オフィス街4、 商店街1 ・ 2、 歓楽街1は、 いずれの物 理指標の値も高い。 景観の躍動性が大きい景観画像には、 地区ごとの偏りが見られる

ことから、 景観の地区的性格と密接な関連にあることがわかる。

参照

関連したドキュメント

断面が変化する個所には伸縮継目を設けるとともに、斜面部においては、継目部受け台とすべり止め

手動のレバーを押して津波がどのようにして起きるかを観察 することができます。シミュレーターの前には、 「地図で見る日本

荒天の際に係留する場合は、1つのビットに 2 本(可能であれば 3

ある架空のまちに見たてた地図があります。この地図には 10 ㎝角で区画があります。20

その問いとは逆に、価格が 30%値下がりした場合、消費量を増やすと回答した人(図

[r]

表-1 研究視点 1.景観素材・資源の管理利用 2.自然景観への影響把握 3.景観保護の意味を明示 4.歴史的景観の保存

ハイデガーは,ここにある「天空を仰ぎ見る」から,天空と大地の間を測るということ