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極限の超短パルス光発生に関する基礎研究

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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

極限の超短パルス光発生に関する基礎研究

河野, 弘幸

九州大学工学応化機能機能物質化学

https://doi.org/10.11501/3135031

出版情報:Kyushu University, 1997, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第3�

ピコ・フェムト秒チタンサファイアレーザーを用いた高次 回転ラマン光の発生

3.1

緒言

赤外域に発振波長ノくンドを有し、 かっ、 高い尖頭出力を持つ励起光は、 局 次回転ラマン光の選択的発生という目的に対して極めて有効であることを、

前章において、 励起光源としてピコ秒チタンサファイアレーザーを用いるこ とによって示した。 そして、 そこで得られる広い発振周波数帯域を持つ多色 レーザ一光の各発振線の位相が同期することで、Fourier合成により、 これま で得ることの出来なかった狭いパルス|隔のレーザ一光を形成し得る可能性が あることを計算により示した。 式(2.12 )及び(2.52 )より、 高次回転ラマ ン光の高効率発生に対して、 励起光尖頭出力を増加することは、 極めて有効 であることが推測できる。 よって本章では、 励起光源としてフェムト秒チタ ンサファイアレーザーを使用し、 高次回転ラマン光の選択的発生に関して検 討を行った。

分光学的見地によれば、 フェムト秒ケミストリーが最近の話題となる中で、

波長可変フェムト秒レーザーの需要が急速に高まっている。 しかしながら、

フェムト秒領域における波長可変レーザーの開発は、 現在ではまだ発展途上 であると言わざるを得ない。 エキシマーレーザー励起フェムト秒色素レーザ ーの号場により、 若干、 分光学的応用への道は開けたが、 未だその発振周波 数幅、 実用に耐えうる光強度の問題が残っている。 最近、 急速に開発が進ん でいる波長可変フェムト秒チタンサファイアレーザーは、 近赤外域において

700""'900 nmの発振波長ゲイン幅を有しており、 現在も盛んに研究開発が行

われているが、 依然として単独レーザーによるレーザ一発振では、 それ以上

(3)

の発振領域の確保は困難である。 そこで本実験では、 レーザーの波長変換と して広く用いられている、 気体水素中での誘導ラマン散乱及び四波ラマン混 合をフェムト秒領域で利用することにより、 フェムト秒多色レーザーを発生 させことを検討した。

本実験で行うフェムト秒領域での高次回転ラマン光の発生は、 1章でも述 べたとおり、その位相同期を利用したFourier合成によって極限の超短ノミルス 光を発生できる可能性を有している。 フェムト秒領域での誘導ラマン散乱は 過渡的過程となるため、 散乱効率が低下すると言われている。 短時間内にレ ーザーエネルギーが集中することによって、 励起光尖頭出力が極度に増大し、

誘導ラマン散乱及び四波ラマン混合とは別の、 それらに対して妨害因子とな る様々な非線形光学効果が発現することも指摘されている。 本研究では、 局 出力フェムト秒レーザーを用いて、 種々の条件下での高次回転ラマン光発生 過程を検討した。

3.2

フェムト秒領域で顕著に現れる非線形光学現象

3.2.1

過渡的誘導ラマン散乱[22]

励起光のパルス幅がラマン遷移の緩和時間九より短いとき、 ラマン光の発 生に伴う励起光強度の減少、 および強度分布の変化がないと仮定すると、 そ の過渡効果は以下の二つの式で記述できる。

(; +r)Q*

=

i司η仏州Eι引SEL * 一 三 ES =iη 2 刊L {Z , t)

(3.1 )

ここで、Qは分子振動の振幅、 fはラマンライン幅、 EL、 Esはそれぞれ励起 光及びストークス光の電場の振幅である。 またここで、 ηl、 れは、

(4)

N δα

九=

一一一 Zωph 勾

・一-

1πNω:δα

'72 =

‘一一

cf長s 弐2

で表される。 伶h、 偽は分子振動及びストークス光の周波数で、んはストーク ス光の波数である。 式(3.1 )を解くと、 過渡的誘導ラマン散乱におけるストー

(3.2)

クス光の増幅ゲインが求められ、 それは次のように書ける。

『EEEEEEEEJd WEEa訓什 /'aE、、 s E di z n勺q A斗一一 似て

G T4 一一 n q z d T ru一 、ー だ い 、』ノ (3.3)

ストークス光は最初、zに比例して増大し、 その後、 指数関数的に増大する。

その増幅率は定常状態、でのゲイン

E 国F・s・4

G (3.4)

とは異なる。 定常状態でのゲインはラマンライン幅fに依存するが、 過渡的 誘導ラマン散乱ではfに依存しない。 また、 式(3.3)より、 ストークス光強度 は、 励起光強度ではなく、 それを時間積分した、 即ち励起エネルギーに指数 関数的に依存することがわかる。

3.2.2 非線形屈折効果

光尖頭出力励起光を用いた場合に発生する非線形光学現象のーっとして、

光の自己作用と呼ばれるものがある。 これは、 非線形媒質中を光が伝搬する とき、 光が誘起した非線形分極により、 光の状態あるいは伝搬特性が線形光 学で予想される状態から著しくずれる現象である。 他の非線形光学効果を考 える場合においては、 入射光と異なる周波数の光に注目するのに対して、 自 己作用の効果では入射光自身の変化に着目する。 光の電界の性質として挙げ られる空間的強度分布、 時間的パルス波形、 偏光状態、 周波数スペクトルな

(5)

どが、 非線形媒質を透過する前後で異なり、 その変化の程度が入射光の強度 に強く依存することになる。

自己作用の効果は入射光と同じ周波数の非線形分極によって励起されるも ので、 その全分極P は、

E LEノ /訓劃如、

E N wr + q /'E1、、 E

P

(3.5)

となる。 ここで ε。、ε、 εNLはそれぞれ真空の誘電率、 線形誘電率、 非線形誘 電率であり、 CNLは入射光の強度 ELに依存する。 屈折率の形で表すと、 電界 がないときの屈折率 nにめ(IELI2)だけの屈折率の変化が起きたことになる。

めとεNLとの関係は、

め=

三盟Lー

2nε。

(3.6)

である。め(IELI2)をIELI2で展開したときの1次の項をL1nとし、

UEEa円川4'ι

〆'EZ、、 r'

n E

1111III- 一一 ー一2

III-\\ E

刀 一一 小

(3.7)

の形で非線形屈折率的を定義するon 2と3次の非線形感受率X(3)の関係はn2

=

X(3) / 2ncoであり、 ここで電界Eは、

E

= ReE(υ�xPt i(ωIt-kz)]

である。 以上の定義によると、 非線形分極率PNLは、

P此= &onn2IE(r,

t

)

2

E(r,

t

)

(3.8)

(3.9)

となる。 本来、εNLはテンソルであるから、 その値は入射光の偏光状態、によっ て異なり、 等法的な媒質ではPNLを

PNL=時* 吋

P

布E)

(3.10)

の形で表すことが出来る。A、Bは定数であり、刀2の物理的機構によって異な

(6)

--.

る。n2の原因として、 光カー効果、 電歪効果、 分子の再分布、 非線形電子分 極、 熱的効果などが挙げられ、 そのうちどの機構が重要であるかは、 入射光 のパルス幅、 物質の種類によって異なる。 各々の機構はそれぞれ固有の緩和 時間τをもつため、 L1nは入射光の電界に瞬時に応答せず、 緩和方程式

õ'Lin Lin

7+7=7|E|

(3.11 )

に従う。したがって、 パルス幅がτより短いときにはL1nの値は定常的な値よ り小さくなり、 過渡的状態が重要となってくる。 以下に、 非常に短い時間領

域で顕著に見られる機構を簡単に説明する。

光カー効果は、 異方性分極率をもっ分子(たとえばCS2) が光電界の向き に配向することにより、 屈折率の変化と異方性が生ずる効果である。 緩和時 間はDebyeの緩和時間程度の値をもち、 粘性係数に依存する。 光カー効果は n2の値が大きいこととτの値が小さいことから、 ナノ秒パルスレーザーの自

作用 の効果 で最も 重 要 で あ る 。 電子 分 極は 分極率の高次の項で 、

hyperpo larizabilityと呼ばれるものであり、 電界による電子雲のひずみから起

こる。 その応答時間は電子の軌道運動の周期(1 fs)程度であり、 他の機構が 凍結されるピコ秒あるいはサブピコ秒の時間領域で重要になる。 分子の空間 での再分布の効果は、CC14などの球形分子でのn2を説明するために導入され た考えで、 球形分子に誘起された双極子モーメント間の相互作用により分子 の分布に変化が起きることから的が生じる。緩和時間としては相互作用の及 ぶ平均的距離と熱運動速度の比で決まり、 100 fs程度である。

3.2.3

自己集束

非線形屈折率を持った媒質中を光が伝搬するとき、 その空間的強度分布に 著しい変化が起きる。 非線形屈折率L1nは光の強度の関数L1n(IE(r,t)12)で、ある

(7)

ため、 光の位相の進み方は位置rの関数になる。 等位相面に垂直な方向が光 線の進路であるから、 L1n> 0の場合、 図3.1(b)のように光は集束することに なる。 この過程を自己集束という。 またL1n< 0の場合、 図3.6(c)のように光 は発散し、 これを自己発散という。 図3.6(a)に示されるように、 光の伝搬に は必ず回折の効果が働く。 この回折による光束の広がりと自己集束による集 束の効果とが互いに相殺するとき、 光は広がることなく一定のビーム径を保 って伝搬することになる。 これを自己束縛という。 これはちょうど、 周囲よ り屈折率の高い光導波路を光自身が形成したかっこうになる。 自己集束の効 果は、 入射光のパルス幅と非線形屈折率の応答時間との大小関係によりその 動特性を変える。 自己作用の効果は一般的に、 マクスウェルの電磁方程式と L1nの緩和方程式(3. 11)を連立して解くことにより説明できる。 その基本方程 式は次のように表せる。

ここで、

叶三+ザドド)+刊t)

=守去三E(r,t)-よい+ij)2凡

1 &

Vg

V

�2ググ �一一一+一一­

j

どま2

. 0ノ2

(3.12)

(3.13 )

である。 自己集束効果の本質は空間的な強度分布の変化であるから、 群速

(8)

入射光の強度分布

n2 > 0

\hEノhu /'・・1、

n2 < 0

(c)

線形媒質(a)及び非線形媒質(b)(c)での光の伝搬特性

図3.1

(9)

度分散とPNLの時間微分の項を省略して、

必 P

2m一代

一一 、、‘,,/ r' /'EE、、 E

T

V + \EE,/

vr /'E1、 E 、、EEEEEE,s,I d一d l一九 + グ 一 d frtittEtE、、 'K 今-ム (3.14 )

さらに、 t'

=

t -Z / Vgとおいて、

以02時t') + V

T

2 E (r, t') = ー (3.15)

を基本式とすることが多い。

光の強度に比例して屈折率が増えると仮定し、 その他の非線形光学効果や 球面収差を無視すると、入射光の強度ILがある強度んを越えたところで自己 集束が起こり、 Ith は近似的に、

C A V/ 2 巧dル 一 n

qL 一 今ム

ヴム 一 今3 ・・E且 一 ノ' EE 、、 一 π 一 一一 ri (3.16)

で与えられる。 また、 集束した焦点は、 セルの入り口からZfの距離にあり、

ILに対する関係が1> 1.2んのとき、

Zf = FI -.JT: K (3.17)

となる。 このとき、

I。 = や 858 y lth' K = 0.369koα2 JI:

で、 αはガウシアンビームの半径である。 また、 ビーム中心部の強度は、

(3.1 7)

端ru色 44

Fra -南川N YFt h川ノ α 一 2 ぁ

一\||/で

z一ムJ

一 一

々ノ /hい-\

= J戸ノ

サ丙 Jフ /t‘、 一 /tk ♂ 、 ri - -i ノ

'し 存 依 v'ι 十A日

α れ

為り

・え与

(3.19)

大きくないときには、 ほぼ1である。 焦点に到達するまでの自己集束の経過 に関しては、 理論値と実験値の一致が非常によいが、 焦点近傍では、 理論上、

(10)

式(3.19)に示されるように、ビーム中心の強度が無限大になるという非物理的 状態になってしまう。 これはビーム径が無限に小さくなってしまうことを意 味する。しかしCS2では最小ビーム径として4μmという値が観測されている。

発散を防ぐには自己集束効果を抑えるエネルギー損失あるいは非線形屈折率 の飽和の過程を伝搬方程式に取り入れる必要がある。 このような働きをする 他の非線形光学効果として、 誘導ラマン散乱、 誘電破壊(ブレイクダウン〉

によるプラズマ発生、 多光子吸収などが挙げられる。 焦点近傍では極めて強 い電界の発生により、 種々の非線形光学効果が誘起され、 その結果としてエ ネルギー損失が起こり、 ビームは回折により広がっていく。 したがって、 自 己束縛の状態は極めて実現する可能性が低い。

一般に、 進行方向に垂直な面内の強度分布がガウシアンである高い尖頭出 力を有するビームが媒質中を伝搬するとき、 それにより誘起される非線形屈 折率は、 簡単に次のような位置rの関数で表される[24]。

n

(

r

)

= no +

I

EL

(3.20)

ここでnoは媒質の線形屈折率、 EL(r)は励起光電場の振幅である。 このような 媒質中を、 進行方向に対して垂直な面内でビームの中心部分が周辺部分の強 度を上回っているような光が通過すると、 媒質はあたかも凸レンズであるか のような性質を示し、 図3.1(b)のように伝搬する光は集光される。 即ち、 そ の光が集光点に達するまで、 媒質中での単位面積当たりの光強度は、 単調増 加してし、く。 これが自己集束であるが、 その効果は次に示すノミラメータで評 価される。

B=

1 n

zIL(rMr (3.21 )

λは励起光波長、 パま媒質長である。 ここでBは中心部と周辺部において伝搬 する光の位相差を示す。 Bの値がπになったとき、 自己集束の効果は最も強

(11)

くなる。 このように光強度が媒質中で増加していくと、 先に述べた誘導ラマ ン散乱及び四波ラマン混合、 そして、 後述する自己位相変調、 高調波発生な ど、 様々な非線形光学効果を誘発する要因となる。 また、 集束効果は励

起光ライン幅に依存せず、 よって誘導ラマン散乱のように自己位相変調など によるライン幅の増加による発生効率の低下などの影響を受けることはない。

また、 TEMo。モードでないビームが自己集束効果を受けるとき、 ビーム全体 の集束効果とは別に、 ビーム内部の微小構造として別個に自己集束する。 そ の結果、 lつあるいは複数のフィラメントと呼ばれる光密度の極度に高い部 分が、 ビーム光軸上に発生することになる。 このフィラメントの形成により、

自己位相変調などの非線形光学効果の発生効率はさらに向上し、 その結果、

誘導ラマン散乱や四波ラマン混合に消費されるべき励起光エネルギーが、 他 の現象の発生のために使われることになる。 このため、 高次回転ラマン光発 生において、 自己集束は抑制されるべき因子となる。

3.2.4 自己位相変調[25]

媒質中を伝搬する光の基本式は次のように表せる。

E γ''

1一2 α E + 1一2 A M一ゲ

a一必 (3.22)

ここでαは媒質中での光強度の損失、βはモード伝搬定数、yは非線形定数で あり、 それぞれ、

、EEノ司、J 今,,h 今、〕/,,‘.、

、、EBEE--,Ff p側一凡 JrsEEEE--、、 n

1i一It

-- α AιT 今,,,担 今、d n 一戸ν d一d f一一応 n一2 y d一d ω一c 、1El--f n一2 y d一品 ω + め一ω 今/』 IFIts-EE、、

Rμ' 1一C

(12)

n2úJ

y=一十一

CA ιA宅F

(3.25)

である。 またAザは、

A_

= ( I l lE(x yy

ffIE(x,y)4dxdy (3.26)

で表され、 媒質中の有効ビーム径を意味する。 ここで、 規格化した時間τを 次のように表すと、

t' t-z/νh

τ=一一一= ロ

L1t L1t

(3.27)

規格化した包絡関数U(z, r)が式(3.28)のように定義できる。

A(z,

r

) U(z,τ)=

品川

-αz/

2) (3.28)

ここでPLは励起光の強度である。 このPLとyを用いて、 非線形長LNLが

ー一死

N L (3.28)

のように書ける。 また、

-EEEJ \EEEノ

Z α

〆'aE1、ny x ρしW

「hUL

1一α

一一 F

Z e・

(3.29)

を定義すると、 自己位相変調による励起光ライン幅の増加量は、

4uや,

t'

)

2 Zeff

δωQF)=- dF ZJ (3.30)

となる。 このとき励起光がフーリエ限界ノミルスでなくチャープしているとす ると、 そのライン幅Aωは、

(13)

dω= 。 +

C2)12

L1t

(3.31 )

で表され、 Cはチャープパラメータである。 このCを用いて、 チャープして いる非ガウシアンノミルスのUは、

3 ・

調パド変

口同↓介1

わノ

よーーーj れ

、、EEEBB-ss'/ f一

一 山 王 /Ill1\ d p ふ fl刊ll 24

m 以 パソ = 場

ム 口

の 量

'仏

ス 加

川 、

レ 迫

田 F J , J ノ fTLF

パ の ン 幅 ア ン シ イ ウ ラ ガ 光

。起 る 励 な る

LA ル」

、、,,/今コ今、〕 今3/'E\

『EBilli--J 、、EEl-EE,r'

ヴ釘 /,tEEEEt--、m

一・3t

一p 、、1EEEEE,r' e x p FEEEEEEE'EEEEEEEEE』 JrttEEti--、 一 f d 一p

AA ω 〆'az‘、 、EE,/4'ι 一一 A 一 2 n f 一 t p r』- ωL7

で表される。

エ\:(3.33)からもわかるように、励起光尖頭出力の増大により、自己位相変調 の影響も顕著になる。 これにより励起光ライン幅が増加し、 誘導ラマン散乱 の発生ゲインの減少につながる。 また、 自己位相変調の発生に励起光エネル ギーが消費されること自体が、 直接高次同転ラマン光発生にマイナスの影響 を及ぼす。

3.2.5 高調波発生

媒質中に周波数ωのレーザ一光が照射されると、 原子や分子中の電子はω に追従して平衡位置から変位し、 媒質中に巨視的な高調波分極Pが生じる。

Nを媒質密度、 X(l)を分極率とすると、 レーザーの光電場Eが小さい場合、 こ の分極PはPL=NX(l)EのようにEに比例するが、 レーザーの強度が大きくな ると、

P

=

PL

+� (3.34)

のように非線形分極成分PNLを持つようになる。 原子や分子中に電子が束縛

(14)

されている電場と比較してEが十分小さい場合には、Pは双極子分極と考え てよく、

P = NX(l)E + NX(2)E2 + NX(3)E3・………+NX(q)Eq+・…… (3.35) のように展開できる。 ここでx(

下がPN汎Lに相当するO

一方、式(3.34)と媒質中での波動方程式より、非線形光学過程を記述する基 本方程式は、

V2E -

+4nNx(J)

竺杢

=

.

竺主ι

c2 a2 c2 a2 (3.36)

となり、式(3.36)とq次の非線形分極PNL= NX(q)Eqから、q次高調波qωの強度 比を求めることが出来る。 なお、 媒質による光の吸収がなければ、 ωにおけ る屈折率をnとして1+4.zrN X(l) =がである。 中心対称性をもっ原子・分子気体

中では、 3次、 5次、 7次などの奇数次の非線形過程のみが許容される。

いまここで、 z方向に伝搬する基本波を、

、、EEEEEE,F'

Dr2

一Fhd

Kl-

,,,EEEEBEE­ 一FO

+

ny x 凸lv 一Fhd

E+

一噌ai 一一 、‘,,ノ z

r' /'EZ\

E ru

(3.37)

のように表す。 このとき、 bは共焦点パラメータで、 集光点Z= Zoでのビーム スポットサイズを向、 んに対する媒質の屈折率をnlとすると、

b=2fzw

f

nl

λ1

5=2

-

zo)

b

である。 この励起高出力をILとすると、Z=イ'�çの媒質中で発生するq次両 (3.38)

、Iノny 丹、J 今、〕〆'l\

1,ノ,,,t

FO μm FD /'t\

L hhL ri

N X 、l11111

、t11』F/ 、、

μ

。。 fill\ 、hj

704

3\|1/

3

ot 一ト

・ 3 η 5 π 一 λ L

q

3

C -- 肝一 1 q

3・

ヴん一 jL

‘t川

一n

E

/Ill11\

、 =

fq y-A Ga

力出の波

調

(15)

となる[26]。 こ こでnqはq次高調波の波長んに対する媒質の屈折率である。

また、

であり、

必=引q -n])

以 αp(

-

ibiJk�"

/ 2

)

1:,,1 2

死。LJk,b/ l)=ぱ --' 2 d�"

十 (1

+

i�")

(3.40)

(3.41 )

は位相整合因子と呼ばれ、 誘起される非線形分極率と発生する高調波との位 相関係を支配する関数である。

3.3

実験装置

本実験で用いた実験装置を図3.2 に示す。 モードロックチタンサファイア

レーザー ( Spectra-Physics社、 Tsunam i、 繰り返し速度82MHz、パルスI幅100 台、出力500mW、中心波長805nm)をAr+レーザー( Spectra-Physics社、Beam lok

2060・7S、6W)で励起して発振させ、それをNd:YAGレーザー(Spectra-Physics 社、GCR-6、10Hz、 6 ns� 600 mJ、 532 nm) の第2高調波 (KDP結晶による〉

を励起光源とする再生増幅器( Spectra-Physics 社〉で増幅し、 励起光として 用いた。 本レーザーシステムではCPA (Chirped Pulse Ampl ification)方式を採 用している。 即ち、再生 増幅器内の光学素子のダメージを防止するため、 増 幅を行う前に、 モードロックチタンサファイアレーザーからの シード光を、

、 パルスストレッチャーを 用いてパルス幅を約200psまで延伸し、再生 増幅器で50 mJ まで増幅する。 それをパルスコンプレッサーによってパルス 圧縮を行 い、 最終的に最短で100 fsの短 パルス光を得るこ とが出来る。 こう

して得られた励起光のライン幅 は12 nmであり、 ほぼフーリエ限界パルスで あるといえる。 励起光の パルスエネルギー は最大で15 mJが得られ、 本研究

(16)

Ar+ Laser

Modelocked Ti:sapphire Laser

Nd:YAG Laser

e -wr 6・‘

白L 叫an--a 、SUE-星・・且 e E R qh

Raman Cell Lens λJ4 Plate Frosted Glass

Multichannel Spectrometer

Compute.'

図3.2 フェムト秒チタンサファイアレーザーを励起光源とする実験装置

(17)

では、 後述する種々の条件を考慮して 5'"'"12 mJで実験を行った。励起光は、

局次の回転ラマン光を発生させるために、λ/4板(シグマ光機、WPQ-7800- 4M) を用いて楕円偏光にし、 偏光面と結晶軸との角度は、 高次回転ラマン光の発 生効率が最も良くなるように調節した。 励起光のビーム断面は楕円形をして おり、 その大きさは1 0 mmX 5 mmであった。励起光を集光レンズ(焦点距離

1 m)で、高圧水素ガスが封入されたラマンセル(全長1m)の中央に集光した。

このときの水素圧は通常10 atmであるが、 高次回転ラマン光発生効率の水素 圧依存性を測定する実験においては、 最大で20 atmまで増加させた。水素圧 調整は、 水素ガスボンベ付属の調整器 により行った。 ラマンセルより出射し た散乱光のスペクトルをマルチチャンネル分光計(Ocean Optics 社、 S-1000、

口|折格子プレーズ 300 lines / mm、 測定可能波長範囲400-1000 nm)を用いて 測定 した。 散乱光はラマンセルを透過してきた残余励起光が含まれているた め、 非常に高い強度を有している。よって、 マルチチャンネル分光計への光 導入口である光ファイバーの前にNDフィルター及び磨りガラス製の拡散板 を設置し、 測定 器へ入射する光強度を減衰させた。また、 拡散板 は、 散乱光 のビーム断面内でのスペクトルの不均一性を補償する機能をも果たしている。

また、 マルチチャンネル分光計 では測定できない、 スペクトルの微細構造、

深紫外光成分などを測定する際には、 光電子増倍管(浜松ホトニクス、 R636、

185・930 nm)及び分光器 (日本分光、 CT-25CP)を用いた。 光電子増倍管よ り発生した電気信号は、BOXCAR 積分器(Stanford Research Systems社、SR250) により積算し、 パーソナルコンビュータ(NEC、 PC9801-DS)により解析し た。 高次回転ラマン光発生効率の励起光ノミルス幅依存性を測定する際には、

パルスコンプレッサー内 の分散部の光路長を変化させるミラー対を調節する ことで、 励起光パルス幅を250 ぬから200 psまで変化させた。この操作によ って 励 起 光エネ ルギ一、 波長、 ラインI隔、 偏 光 に変化 が起 き るこ と

(18)

Ar+1腿er

Nd: Y AG Laser

Camera

Modelocked

Regeneratlve Ampllßer

Lens Raman Cell Lens A/4 Plate

図3.3 高次回転ラマン光を写真撮影した際の実験装置

(19)

は なかった。 パルスエネルギーの測定には、パイロエレクトリック・ ジュー ルメー ター CMolectron社、J3・05DW)及びエネルギー メーターCMelles Griot 社、13PEM001 )を用いた。本実験でスペクトル検出器として用いたマルチチ

ャンネル分光計及び光電子増倍管・分光器の測定感度変化は、4 50nmから900 nmの領域で10倍以内であった。 本実験では、分光器等の検出器でのスペク

トル測定に加えて、図3.3に示すような光学配置により、高次回転ラマン光 のスペクトル写真を撮影した。 ラマンセル より出射した多色レーザ一光を石

英プリズムにより分散し、それを蛍光性物質の塗布された白紙上に照射して、

写真撮影を行った。 高感度フィルムCFUJICHROME 4 00)を使用し、露光時 間は30秒とした。

3.4

結果及び考察

3.4.1

高次回転ラマン光の発生

緒言でも述べたように、Fourier合成による超短ノミルス光発生のため には、

等間隔に周波数の離れた多数の発振線をスペクトルとしてもつ多色レーザ一 光が必要である。 本研究では、その光源として高次回転ラマン光を用いるこ とを提案しているが、図3.4に示すように、励起光パルス幅 が800fsのとき、

取も効率よく発生した。 その条件で得られた多色レーザ一光は、深紫外から 近赤外域にまで及ぶ波長範囲において、多くの回転ラマン線を含んでいる。

フェムト秒領域では、レーザ一光であるにも関わらず、各発振線は非常に広 いラ イン幅を有しており、そのため、図3.4 からは、振動ラマン光及び回転 ラマン光のどちらであるかを判別することは困難である。 これは、これらの 各発 振 線 が 、純回 転 ラ マ ン 光成分 を十分含ん で い ると換

(20)

hw窃ロω吉岡ω乙ヨ-ω出

300 400 500 600 700 800 Wavelength (nm)

図3.4 励起光ノ〈ノレス幅800 fsの時に得られた高次回転ラマン光スベクトル

(21)

きすることもできる。 これより、波長領域 239nm"-' 845 nmの領域において

40本以上の誘導回転ラマン光が得られることを実証できた。 この発振波長範 囲は分光器、 光電子増倍管等の、 測定器の測定範囲に制限されており、 実際 には、 これより多数の回転ラマン光が得られている可能性が高い。 なお、 後 述するように、 マルチチャンネル分光計を測定機器として使用することによ り、 さらに第2次(889nm)から第4次(993nm)までの回転ストークス光 も測定することが可能で、あった。 このように、 フェムト秒領域で誘導ラマン 散乱及び四波ラマン混合の発生効率を増強させる場合には、 それと同時に

己位相変調による白色光の発生を抑制する必要がある。 従って、 励起光尖頭 出力を注意深く最適化する必要がある。 図3.4に示す多色レーザーでは、 第 2 (λ= 736 nm) "-'第15 (λ= 471 nm)アンチストークス光の発生強度分 布がかなりフラットになった。 これは、 奇数次の高次高調波が発生する際に しばしば観測されるplateau現象と類似している。この多色レーザーをプリズ ムで分散して写真撮影した結果を図3.5に示す。 この時-の励起光パルス幅は 1.2 psであった。 ラマンセルより発生した高次回転ラマン光をプリズム分散 することにより、 各発振線がスポットとして観測できる。 ここで、 紫外域に 見られるスポットは、 直接視認はできないが、 映写板上の蛍光物質からの光 により可視化されている。 また、 赤外領域に発生する基本波(805nm)及び 第1ストークス光(845nm)については、 それらの強度があまりにも強いた めに映写板上で発生したブレイクダウンを観測していると考えられる。 この

|ヌI 3.5からも、 本実験で得られた多色レーザ一光の発振波長領域が、 可視域 全域をカバーできるだけでなく、 近赤外、 深紫外にまで及んでいることがわ かる。 この多色レーザーに含まれる高次回転ラマン線の位相が同期すること により得られる超短パルス光の時間波形を、式(3.42)を用いて計算した結果を

|文13.6に示す。

(22)

図3.5高次l�転ラマン光の写真スベクトル

(23)

57 fs

一一一一一一・.

._ . ._-

.6

.

8

!

f

s-

Ll

40 60 80 100 120 140 160 180 2側 Time (fs)

図3.6図3.4で得られた多色レーザーのFourier合成により発生する超短パルストレイン

(24)

べ叶ZEj叫いL +川) (3.42)

ここで、 ωLは励起光周波数、 L1.Qはラマンシフト周波数である。 これから得 られるパルス幅は0.6おとなり、 本実験で得られた高次回転ラマン光は、 そ れに含まれる発振線のFourier合成により、サブフェムト秒パルスを発生でき る可能性をもつことがわかった。

3.4.2 励起光偏光依存性

励起光が円偏光のレーザーである場合、 誘導回転ラマン散乱の発生は、 原 理的に第1ストークス光のみに制限される。 それはストークス光とアンチス トークス光のカップリング効果によるものであるが、 その場合、 誘導ラマン 散乱を初期駆動力とする四波ラマン混合における回転ラマン光発生実験にお いても同様の制限が存在する[27] 0 また、 直線偏光の励起光の場合、 励起光 の電磁場は回転モーメントをラマン媒質である水素分子に与えることが出来 ないため、 誘導回転ラマン光の発生は観測されない。 このようなことから、

励起光の偏光状態が誘導回転ラマン光を発生させる実験において、 その発生 効率に重要な寄与を与える因子であることがわかる。 上記の理由により、 円 偏光励起光では、 角運動量保存の法則による制限により、 第1回転ストーク ス光のみしか発生できず、 よって、 高次回転ラマン光を発生させるためには、

楕円偏光励起光を使用することが必要となる(ただし、 これは単一の励起レ ーザーを用いた場合にのみ正しく、 二波長励起法を用いた場合は、 直線偏光 レーザーを使用しても、 四波ラマン混合により、 高次回転ラマン光が発生す る〉。 そこで本実験では、 励起光の偏光状態を最適化し、 高次回転ラマン光 の発生本数を増加させることを試みた。励起光の偏光は、励起光偏光面とλ/4 板の結晶軸のなす角θを調整することによって変化させた。図3.7は、θを変

(25)

化させたときの第1回転ストークス光とラマンセルを透過してきた残余励起 光との強度比をプロットした結果である。θを-90 から180度まで変化させる と、 90 度間隔に3つの極大値が観測された。 そのときの最適値は、 -45度、

45度、 135度であった。 θ がそれらの値を取るとき、 励起光がほぼ円偏光に なっていると考えられる。 これは上記の角運動量保存則を考慮することによ っても推測できる。 すでに、 励起光が円偏光の場合、 アンチストークス光及 び2次以上のストークス光は発生しないと述べたが、 本実験で励起光として 用いたフェムト秒チタンサファイアレーザーのスペクトル幅は1 2 nmであり、

使用したλ/4板は対応波長範囲が+1 nmしかなく、 よって励起光成分の全て を円偏光に変換することは不可能である。 つまり、 θ をどのように最適化し でも、 励起光内にかならず楕円偏光成分が含まれることになる。 それ故、 本 実験では、 第1ストークス光が最も効率よく発生するとき、 高次回転ラマン 光の発生効率が最大になると考えられる。

局次回転ラマン光はストークス及びアンチストークス光の逐次発生過程 により得られ[28]、 それらの同時発生により、 多色短ノミルス光が得られる。

そのためには、 式(2.52)からもわかるように、 高強度の第1ストークス光が、

シード光として必要となる。 そのような観点から、 本実験で得られる円偏光 に極めて近い楕円偏光の励起光は、 高次回転ラマン光を発生させるのに適し ているといえる。 そこで、 本研究では、 第1回転ストークス光の強度を最大 に保つため、 θを135度に調整して実験を行った。

3.4.3

励起光パルス幅依存性

本実験では、 励起光パルス幅を200 psから100 fsまで変化させることで、

得られる高次回転ラマン光スペクトルがどのような影響を受けるかを検討し

(26)

0.2

0.1

0.05 0.15

uhd \d

。 100 150

誘導ラマン散乱発生効率の励起光偏光依存s性

50

(degree)

Aogle

圃50

図3.7

(27)

た。 その際に、 水素圧力は10 atm、 励起光エネルギーは5 mJとして一定に保 った。 その結果を図3.8に示す。 図3.8(a)で、は、 パルス幅が1550 fsと比較的

長く、 即ち励起光尖頭出力が不足しているため、 高次回転ラマン光の強度は、

基本波(λ= 820 nm)と第1ストークス光(λ= 782 nm)と比較しでかなり低かっ た。 それ故、 強度を同スケールで表示することが困難であった。 第7回転ア ンチストークス光(λ= 613 nm) と第1振動アンチストークス光(λ= 612 nm) は、それらのライン幅が共に5 nm以上あるため、区別することが困難である。

よって、 各発振線が振動線から派生した回転ラマン光であるか、 あるいは基 本波からの純回転線なのかを判別することは出来ない。 図から、 第1振動ア ンチストークス光周辺の回転ラマン光強度は、 さらにその周辺の回転アンチ ストークス光の強度よりも高くなっている。 これは純回転遷移が振動遷移か らのカップリング効果による増強を強く受けていることを示唆している。

ヌI 3. 8(b)に示されるように、励起光パルス幅を短縮して1080 fsにした場合、

つまり励起光尖頭出力を約400/0増加した場合には、多数の回転アンチストー クス光が観測された。 式(2.52)に表されるように、四波ラマン混合過程により 発生する回転ラマン光の強度ιWRMは、 励起光強度の2乗lL2と第lストーク ス光強度lsに比例するo 1Lは明らかに励起光パルス幅に反比例する。 よって、

式(2.12)より、lsは励起光パルス幅の逆数に指数関数的に依存することになる。

その結果、んWRMは励起光ノミルス幅が減少すると同時に劇的に増加することに なる。 さらに深い議論を展開するには、 励起光及び散乱光の飽和を考慮、した 場合の過渡的ラマン散乱のモデルを考える必要があるが、 現在のところそれ に関する詳細な理論の借築はなされていないため、 これに関する議論は、 こ の段階にとどめる。

非線形媒質中を伝搬する電磁波の振幅が超高速で振動を繰り返す場合、 自

(28)

と丘ロ32Z32ω出 (a) 1550

fs

300 400 500 600 700 800 Wavelength (nm)

仕切叩ロ ω富岡ω乙混同 ω出

(b) 1080

fs

300 400 500 600 700 800 Wavelength (nm)

図3.8(a), (b)高次回転ラマン光スベクトルの励起光ノ勺レス幅依存性

(29)

己位相変調による白色光が発生する。 そして、 ある場合には、 四波ラマン混

合に対するシード光として、 重要な役割を果たす場合がある[29]0 励起光尖 頭出力が増加するに従い、 白色光成分の増加が顕著になり、 回転ラマン光の スペクトルのベースラインが隆起する。 第1回転ストークス光の発生する周 波数領域にあたる、 すなわち、 基本波から587 cm-1離れたところでは、 そこ に発生する白色成分が、 四波ラマン混合過程を経て起こる高次回転ラマン光 発生に対して、 強いシード効果を示している。 一方、 基本波から4155 cm-1 だけ離れたところ(第1振動ストークス光が発生する領域〉では、 白色成分 の強度も比較的低下するため、そのシード効果も弱まる。 これより、図3.8(b) では、 振動ラマン光が抑制され回転ラマン光が増強されたと見なすこともで きる。

パルス幅が1 psから560 fsに短縮されると、 図3.8(c)に示されるように、

より高い強度の白色光が発生する。 これはスペクトルのベースラインの隆起 度が高いことから推測される。 励起エネルギーが一定の場合、 尖頭出力が増

加すると、 誘導ラマン散乱及び四波ラマン混合に対してよりも、 むしろ、

己位相変調の発生に対して有効であると考えられる。 つまり、 励起光が白色 光発生に消費されることで、 ラマン線の強度の低下が引き起こされる。 よっ て、励起光強度の増加は、基本波のラインl隔を増大させ、 式(3.33)に示される ように、 誘導ラマン散乱及び四波ラマン混合のゲインを低下させる。

さらにパルス幅が減少すると、 励起光強度はますます増加し、 白色光の発 生領域は、 図 3.8(d)からわかるように、 紫外域にまで達する。 このような両 い強度を持つ白色光の発生に励起光エネルギーが消費され、 1、 2本の回転 アンチストークス光しか見いだすことができない。 即ち、 フェムト秒領域に おいては、 励起 光の自己位 相 変調による白色光が強く発 生 す る た め

(30)

同と闇

(c) 560 fs

・。u開-eh

2ω 6

b行プ:

300 400 500 600 Wavelength (nm)

Mb

・JqE 4

(d)250fs

・-M 0 eqqh 開.d

d

e

竹T7 11 1 1

300 400 500 600 Wavelength (nm)

700 800

700 800

図3.8(c), (d)高次回転ラマン光スペクトルの励起光ノ\ノレス幅依存性

(31)

単に高い強度の励起光を用いるだけでは、 誘導ラマン散乱光の強度を増加す ることはできない。 それ故、100 fs秒の時間領域では、 白色光の発生量を低 減するため、 励起光強度の最適化を行う必要がある。 さらに短い時間領域で は励起光のスペクトル幅が、 強い自己位相変調により、 あるいはそれ自体が 極めて短ノミルスであるために必然的に広いラインI隔をもつことにより、 ラマ ン周波数シフト幅を超えてしまう場合がある。 そのようなときには通常の誘 導ラマン散乱よりもむしろインパルシブ誘導ラマン散乱が発生することにな る。 しかし、 本実験条件ではその現象を観測することはできなかった。

ロI次回転ラマン光のスペクトルが、 励起光パルス幅の影響を受けてどのよ うに変化するかについて、 その散乱光をプリズム分散させて写真撮影を行い、

比較検討を行った。 その結果を図3.9に示す。 それぞれの場合の励起光ノミル ス幅は、(a)100ps、(b)1.5 ps、(c)800fs、(d)500fs である。 ノミルス幅が100ps

程度の場合、 励起光尖頭出力が不十分であるため、 振動ラマン光が優勢に発 生する。 これに対して回転ラマン光は、 振動線に1,...,2本付随して発生する に過ぎない。 励起光パルス幅を徐々に短縮すると、 尖頭出力の増加に伴い、

振動ラマン光の聞を回転ラマン光が占めるようになる。 パルス幅が800 fs に なると、 スペクトルはほぼ純回転線のみで埋め尽くされるようになる。 ここ でも、 振動線から派生した回転線と基本波からの純回転線を選別することは 困難である。 そして、 さらに励起光強度を増加した場合、 回転線のスポット は消滅し、 それらが連続的につながった白色光スペクトルしか観測されなく なる。 自己位相変調による白色光発生が顕著に観測された一例と言える。 な お、 撮影フィルムの感光度が光の波長に依存するため、 写真上での光の強度 と、 実際の光の強度は必ずしも一致していない。

励起光パルス幅が200fsにまで短縮されると、 図3.10に示されるようなス

(32)

(a)

、. . F hu

,a・1

(c)

(d)

i耕 桂 一 舟小

凶3.9 高次回転ラマン光・写真スペクトルの励起光パルス幅依存性 パルス幅は(a)100 ps、(b)1.5 ps、(c)800 fs、(d)500 fs"

(33)

h-232ωヘ,判定方出

264 268 270 272 274 276 278

Wavelength (nm)

図3.10 励起光ノξルス幅800 fsで発生した第3高調波スベクトル

(34)

ベクトルを持つ第3高調波の発生が確認された。 通常誘導ラマン散乱よりも

発生闘値の高いとされる第3高調波は、 本実験ではパルス幅が200 fs以下の 時には、 常に観測された。 第3高調波の発生ゲインは、 誘導ラマン散乱や四 波ラマン混合のそれよりも低いにも関わらず、 第3高調波発振線はスペクト ル中に明瞭に現れる。 これは誘導ラマン散乱ゲインが自己位相変調の発生に よって、 第3高調波発生ゲインの減少度よりもさらに顕著に低下したためと 考えられる。 発振波長は272 nm、 ライン幅は2.8 nm であった。 その発生の有 無は、 蛍光性の紙片に照射したときに生じる蛍光により、 容易に目で確認で きた。 しかし、 そのパルスエネルギーを実測したところ、 検出器として用い たエネルギーメーターの感度限界(> 1μJ)以下であることがわかった。 この奇 数次高調波の発生の場合も、 自己位相変調による白色光の発生と同様、 高次 回転ラマン光の発生を抑制する原因となる。 したがって、 特に励起光として

両い強度のレーザーを用いる場合には、 注意が必要である。

3.4.4水素圧力依存性

誘導ラマン散乱の変換効率が、 ラマン媒質の密度Nに強く依存することは よく知られている。 それは、 散乱光 の飽和及び励起光の消費を無視した場合、

その発生ゲイン&は、 式(2.13 )で表されるように、Nに比例するからである。

また、 ラマンライン幅も水素圧力に依存するが、 この効果は、 本研究におい ては、 使用する励起光のライン幅がラマンライン幅と比較して十分広いため、

ここでは考慮する必要がない。 本研究では、 得られる多色レーザースペクト ルが水素圧の変化によってどのような影響を受けるかについて検討した。 そ の結果を図3.11に示す。 このときのパルス幅は960 fsであり、 強度の低い局 次の回転線を表示するため、 感度を拡大して表示している。 図3.11(a)で、は、

第2ストークス光(λ= 895 nm)と第lアンチストークス光(λ=77 3 nm)しか発

(35)

a zs

E

p (a)4atm

z 出e

G

-b , 防a

11111 1111111

400 500 600 700 800

n 1

s

I (b)8atm

ω s eω b e

し4

400 500 600 700 800

11 I

bE

I

(c)

12 atm

.主-ω 砂主e

1" " 1 " ,,1

400 500 600 700 800

� I

bE

i(d)16atm

z 出b eω ω s

1""1",,1,, ,!,,' I

400 500 600 700 800

b

S

I (e) 20 atm

p0 ω b ω

...・・4..・. .. . •••

400 500 600 700 800

900 1000 1100 1200

1 1 �

900 1000 1100 1200

1 1/\

900 1000 1100 1200

円引

1" 11 ," I " "" ,," ,., ,,, ,,<< ,,-,日l江戸 900 1000 1100 1200

" I

IJjl.I1JI....11・1IIIIIJlIIJJJJlllllltll 900 1000 1100 1200

Wavelength (nm)

図3.11 高次回転ラマン光スベクトルの水素圧力依存性

(36)

生していない。 これは明らかに水素圧が低過ぎ、 誘導ラマン散乱ゲインが小

さいためと考えられる。 しかし、 このような低い圧力にあっても、 自己位相 変調による白色光は明瞭に観測されている。 図3.11(b)では、 水素圧が増加し、

回転線の本数もそれに伴って増加している。 実際、 検出器感度を増加させる ことにより、 第3ストークス光(λ=945 nm)から第9アンチストークス光(λ=

567 nm)まで観測された。 式(2.12)、(2.13)からわかるように、 媒質密度を2倍 に増加させると第1ストークス光強度は指数関数的に増大し、 7.4倍(=ぷ)の 強度になる。 図3.11(c)のように、 さらに水素圧を増加すると、 高次回転ラマ ン光の発振線本数、 強度も同様に増加する。 さらに検出感度を上げることに より、 第4ストークス光(λ= 1000 nm)から第13アンチストークス光(λ= 501 nm)まで発生していることが確認できた。 同様の結果が、 図3.11(d)において

も観測されている。 水素圧が 20気圧のとき、 図3.11(ηに示されるように、 旧 転遷移が振動遷移に大きな影響を受けている。 即ち、 振動線が発生する周辺 の波長領域で、 回転線の強度が著しく増強している。 残念ながら、 検出器の 感度限界により、 この現象に対応しているであろうと考えられる第1振動ス トークス光(λ= 1221 nm)周辺での回転ラマン光の発生状況については、 測定 することが困難であった。 図3.11の結果から、回転ラマン光は振動ラマン光 よりも低い水素圧において発生することがわかった。 しかし、 このことから、

口|転誘導ラマン散乱のゲインが振動のそれよりも大きいと断定できるわけで はない。 即ち上記の理由としては、 第1回転ストークス光が、 自己位相変調

により発生する白色光のシード効果により増強され、 一方、 第1振動ストー

クス光はその恩恵をほとんど受けないためであると考えた方がむしろ適切で る。 改めて述べるまでもなく、 第1ストークス光は四波ラマン混合による高 次回転ラマン光発生に不可欠であるため、 その発生効率は、 多色光強度に大 きく影響する。 したがって、 このように、 回転遷移においてはシード効果を

(37)

受け、 一方、 振動遷移は受けないことから、 両者の発生関値に大きな相違が 発生したと考えられる。

3.4.5励起光集光距離依存性

般に、 高次ストークス光及びアンチストークス光を発生する四波ラマン 混合の変換効率は、 励起光の集光距離を最適化することによって大幅に向上 する。 一方、 励起光を集光することにより、 焦点における単位面積当たりの 光出力が増大し、 本研究で取り扱うようなフェムト秒パルス光を用いた場合 には、 四波ラマン混合を妨害する自己位相変調などの他の非線形光学効果を 引き起こす可能性も懸念される。 このことから、 焦点距離の最適化は、 フェ ムト秒領域での高次回転ラマン光発生実験において、 必要不可欠と言える。

本実験では、 集光レンズの焦点距離を600 mmから2000 mmまで変化させ、

そのときの高次回転ラマン光のスペクトルを測定した。 この時、 励起光ノミル ス|隔は200 fs、 励起エネルギーは11 mJ、 水素圧は10 atmとした。 その結果を 図3.12 に示す。スペクトルはビームの横方向断面の中心部分(a)と周辺部分(b) についてそれぞれ測定した。 本実験で用いた励起光は、 横方向に関しては多 モードであるため、 中心部と周辺部のように独立して取り扱っても差し支え ない。 図からわかるように、 周辺部分においては基本波に対して回転ラマン 光の強度比が高いことがわかった。 本研究では第1ストークス光強度が最も 局いときに、 高次回転ラマン光全体の強度が最大となるため、 ここで、 第1 ストークス光と残余励起光の比ん/λresを測定することで、 中心部分と周辺部 分での全体の変換効率の集光距離依存性を評価した。 その結果を図3.13にρ す。 中心部分においては、ふ/lL.res は集光距離の変化に対してほとんど影響を 受けない。 一方、 周辺部においては、lんR/ιlλL.r

で、 大きく増加する。

(38)

(a) 主首

吻ω国d 同国

・、d副h .暗4

gt ω

k

600 650 700 750 800 850 900 950 1000

(b)

事hd

-的園田司

吻ω国..1 同国

・。qehd d

zω d

600 650 700 750 800 850 900 950 1000

Wavelength (nm)

図3.12 ラマンセルより出射してきた光の断面の(a)中心部及び、(b)周辺部 での高次回転ラマン光スヘクトル

(39)

1

と hd \ 旬 、

。 2000

第1ストークス光発生効率の励起光集光距離依存性 .:中心部、 0:周辺部。

1500

Focal Length (mm) 1000

500

図3.13

(40)

般に、 集光条件を最適化して四波ラマン混合における位相不整合を調節

する(L1k = 0)ことにより、 その発生ゲインを増加させることが出来る。 本 研究における実験条件では、 誘導ラマン散乱及び四波ラマン混合を妨害する 非線形光学効果の発生が顕著に見られるため、 励起光尖頭出力が特に高くな るようなピコ ・ フェムト秒領域では、 集光条件の最適化がさらに重要な意味 を持つことになる。 集光距離を短くすることは、 定常状態、においては有効で あるが、 フェムト秒領域では、 尖頭出力が高くなり過ぎるため、 必ずしも望 ましくない。 一方、 集光距離を長くすることで単位面積当たりの強度を抑え、

共焦点距離(=コンフォーカル・ パラメータ〉を増加させることが出来るの で、 定常状態での実験結果とは異なり、 場合によっては有効となる。 ここで 重要なことは、 相互作用空間における励起光尖頭出力は、 誘導ラマン散乱及 び四波ラマン混合の発生関値よりも高く、 かっ自己集束や自己位相変調の発 生関値よりも低いことが要求される。 その点、 長い集光距離を採用すること は、 励起光強度を低下させながらもそれを共焦点距離を増加させることによ ってゲインの現象を補うことが出来るため、 有効と考えられる。

本実験では、 特にビーム周辺部において、 高効率で回転ラマン光が発生し た。 これは、 集光距離を長くとることによって、 出力が高すぎる中心部と比 較して、 適量の白色光をシード光として利用することができ、 それによって 誘導ラマン散乱及び四波ラマン混合が増強された結果と考えられる。 周辺部 においても、 集光距離を短くした場合、 励起高出力が高くなり過ぎて自己位 相変調及び自己集束が強く発生し、 その結果、 回転ラマン光強度が低下して いる。

本実験により、 フェムト秒領域においては、 過度の尖頭出力の増大は、 逆 に高次回転ラマン光の発生を抑制することになることがわかった。 即ち、 尖 頭出力および共焦点距離を調整することにより、 適当量の白色光をシード光

(41)

として発生させることにより、 高効率で回転ラマン光が得られることがわか った。

3.5 まとめ

局次回転ラマン光のFourier合成により、超短ノミルス光を発生させることが 出来る。 そのためには、 フェムト秒領域での高次回転ラマン光の高効率発生 が前提となる。 本章では、 その発生ノミラメータである励起光偏光、 励起光ノミ ルス幅、 水素圧、 励起光の集光距離が、 四波ラマン混合発生にどのように影 響するかについて検討した。

本実験で用いた円偏光に近い楕円偏光は、 高い強度の第1ストークス光、

さらにアンチストークス光及び高次ストークス光発生も同時に発生すること が出来た。

フェムト秒領域においては、 過度に尖頭出力の高い励起光は、 妨害因子と なる白己集束、 自己位相変調、 高調波発生などの非線形光学効果を引き起こ す。 従って、 単に励起光パルスI隔を短縮するだけでは、 高次回転ラマン光を 同効率で-発生することは出来ない。 その場合、 集光条件など他の実験条件を 適切に選択する必要がある。 本実験では、 励起光パルス幅800 fsのとき、 近 赤外から深紫外にまで及ぶ広い周波数領域において、40本以上の高次回転ラ マン光を同時発生させることが出来た。 これらの発振線の位相同期により、

0.6おの超短パルス光が発生で、きる可能性を示した。

水素圧の最適化を行ったところ、 12 atmで高次回転ラマン光の発生強度が 最大となった。 定常状態での場合と同様に短い集光距離を用いた場合、 焦点 付近での励起光尖頭出力が過度に高くなり、 妨害因子となる他の非線形光学 効果の発生闇値を越えるため、 高次回転ラマン光の発生効率はかえって低

した。 その場合に集光距離を増加すると、 共焦点距離内での単位面積当たり

(42)

の出力が低下し、 共焦点距離、 即ち実効相互作用長を増加させることが可能 となるため、 高次回転ラマン光を選択的に発生出来ることがわかった。

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