生産 システムの緩衝 と柔軟性 について
松 浦 春 樹
要 旨
製造企業の競争力の重要な要因を担 う柔軟性 と、環境か らの衝撃 を和 らげるために置か れ る在庫 な どの緩衝 の関係 について考察 した。緩衝 と柔軟性 の機能 を範囲 ・応答平面上で 表現す ることによって、両者 が異なる役割 を果たす ことを明確 に した。併せ 、緩衝 は、柔 軟性 を補 う役割 があることを明瞭に示 した。 また、緩衝 には現場 レベルの柔軟性 を工場 レ ベルの柔軟性 に配分す る際の柔軟度 を増す働 きがあることを指摘 した。以上に基づいて、
緩衝 と柔軟性 を生産 システムに組み込んでゆ くための設計 フレームワー クを提示 している。
キー ワー ド :緩衝 、柔軟性 、不確 か さ‑の対応 、柔軟性 の次元、緩衝 の役割
1.
はじめに生産 システムは、外部環境 あるいは内部環境 か らの変動に常に さらされている。 これ らの変 動は 日常的であ り、多種多様 である。外部環境 か らの変動要因の例 を挙げれ ば、原材料 ・部品 の品質、価格、納期、製 品の需要量お よび納期、
価格 な どである。設計変更、作業者の欠勤、機 械故障、計画外のオペ レー シ ョンの追加 、加 工 時間の見積 も り誤差な どが、内部環境か らの変 動の例である。生産 システムの この よ うな変動
‑の対処能力は、競争力の大 きな要因の一つ と なっている。
生産 システムに変動‑の高い対処能力 を持た せ るために必要 とされ るものが緩衝 と柔軟性 で ある。生産 システムに組み込む緩衝 については、
生産管理 の古典 的教科 書的著作 の多 くが触 れ (た とえば[26])、個別事象 についての研究論文 が多数 ある。一方の柔軟性 については、古典的 教科書的著作での取 り上げがほ とん どなかった のに対 して、近年大き く取 り上げ られ るよ うに な り (た とえば[22])、 大量の研 究論文 が書 か
れ始 めてい る。
緩衝 については、教科書では記述が断片的に 散 らばっていた り、研究論文では個別の緩衝の 機能 を定量的に分析す るものが多かった り、緩 衝 を体系的に把握 しよ うとす る文献は意外 に少 ない。 また、柔軟性 についての活発 な研究活動 にもかかわ らず、現時点で、その複雑 さが整合 性 のあるもの として整理 された とは到底言 えな い現状 にある。 とりわけ、類似 の役割 を果たす 緩衝 と柔軟性 の関係 を論 じた研 究は、筆者 の知
る限 り極 めて少ない。
本論文の 目的は、柔軟性 と緩衝 の関係 を考察 し、 どの よ うに生産 システムに組み込んで行 く べ きかを明 らかに し、生産 システムの設計 ・運 用 に資す ることにある。具体的には、不明瞭 さ が残 された柔軟性 と緩衝の違い を整理す ること によって、生産 システムに柔軟性 と緩衝 を組み 込むための設計 フ レームワー クを提供す る。焦 点は、あ くまで柔軟性 と緩衝の関係 を論ず るこ
と、 とくに緩衝 と柔軟性 を切 り分 けることにあ る。 したがって、非常に広 く複雑な概念である 柔軟性 については緩衝 とのかかわ りの側面か ら 生産システムの緩衝と柔軟性について 1
だけ取 り扱 うことになる。
論文の構成であるが、概念定義 を 目的 として、
緩衝 と柔軟性概念 について語義か ら検討 を加 え ることか ら始 め、緩衝お よび柔軟性 あるいは緩 衝 と柔軟性 の関係 についての従来の研 究 を簡 単 に紹介 してい る。 これ を受 けて、生産 システ ム に加 わ る変動 の次元 ごとに、その性格 か ら緩衝 あるいは柔軟性 が対処法 として適 当か を整理す る。加 えて、緩衝 お よび柔軟性 の関係 と競争力 の関係 を考察す る。次に、緩衝 と柔軟性 を範 囲 と応答 の観点か ら切 り分 け、範 囲の広 さと応答 の速 さか ら範 囲 ・応答平面上で緩衝 と柔軟性 の 役割 を検討す る。 以上の成果 に基づいて、柔軟 性 ・頑健性 の設計 フ レーム ワー クを提示 してい
る。
2.
柔軟性 とは柔軟性flexibilityとは、flex、「曲げる ・曲が る」
の形容詞であるnexible、 「曲げやす い、柔軟 な」
の名詞形 である。 したがって、曲げやす さ、柔 軟 さを意味す る。 生産 システムでは、外部環境 お よび内部環境 の変化 に対応 して、 目的 を達成 す るために生産 システムがある状態か らある状 態‑移行す るための対応能力の こ とを言 う。
柔軟性 は、緩衝 と比較 して新 しい概念 ・用語 であるために、古典的な生産管理 の教科書 (た
とえば[8],[13],[14],[26]) に言及 はない。
一方 、Leschke[7]は、従来の経 営科学的 な定 量分析 に軸足 を置 くので はな くJITな どの成果 を取 り込んだマネ ジメン トの視点か ら書かれ た 新 しい型 の生産管理教科書 を 4点([4],[6],[16], [17])紹介 してい る。 これ らを古典的な ものに対 す る現代的な生産管理 の教科書 として、 これ ら の中での柔軟性 の取 り上げ方 を紹介す る。多少 ま とま った記 述 が あ るの は 、Schmenner[16]で あ り
、J I
Tとの関連限定で述べ られている。Finch and Luebbe[4]で は、柔軟性 が、 変化 ‑適 応 する経営手段 との定義がな され 、能力 と競争力 の 構成要因 としての認知 を受 けて、本格的 に取 り 上 げ られ てい る。 Hopp and Spearman[6]お よび 2 国際経営論集 No.35 2008
Schonbergerand Knod[17]で は記述 が見 当た ら ない。
マネ ジメン トの視点か らの教科書 として定評 の ある藤本[23]にお いて も緩衝 についてま とめ た取 り扱 いはな く、む しろ柔軟性 に 一つの章 を 割い てい る。
米 国 の 生 産 管 理 の 実務 家 団 体 で あ るAPICS (米国生産在庫管理協会)の1995年発行 の辞典第 8版[3]によれ ば
内部や外部の変化 に対 して、範囲 と時間の点 か ら、すばや く対応する製造 システムの能力。
フ レキ シ ビ リテ ィには
6
つのカテ ゴ リが考 え ら れる。製品混成 フ レキシビ リテ ィ、大規模設計 変更 フ レキ シビリテ ィ、小規模設計変更 フ レキ シビリテ ィ、数量 フ レキ シ ビリテ ィ、加工経路 /順序 フレキシビリティ、材料フレキシビリティ である。詳細 は各 フ レキシビリテ ィ項 目を見よ。さらに、 フ レキ シビリテ ィは、新製品導入への 対応力も含 む。 フ レキシビ リテ ィは、各種 の不 確実性 (混成、数量な ど)への対応 に有効であ
る。
(注)黒須 ・金谷 ・松浦らの非公式訳による。
と説 明 され てい る。
柔軟性 についての研 究論 文 は近年 、爆発的に 増 えてい る。 坪根[23]は これ らを分析 的研 究、
実証的研究、設計の方法論提供 に分 けてい る。
分析的研究 についてであるが、 この範境の論文 の少なか らぬ部分が、柔軟性概念 の分類 ・整理 を試み るものである。 これ らは、柔軟性 を分類 ・ 整理す ることに よって、柔軟性 の高い生産 シス テムの実現方策‑の指針 を得 よ うとす るもので ある。分析 的研究の も う一つのアプ ローチは柔 軟性 の程度 と評価 尺度 の関係 を分析 しよ うとす る研 究である。 実証的研究 は、柔軟性 に関す る 仮説 を、調査や ア ンケー トで実証 しよ うとす る 研究である。設計 の方法論 に関す る研究 とは、
柔軟性 を生産 システムに組 み込む手続 きを何 ら かの枠組みの下で提供 しよ うとす る研究である。
これ らの原著論文は、た とえば、坪根 ・松浦[24]、
̲ ̲̲一一一一一一‑‑‑一一一一 壷 垂 ふ よ 表 If 二 一一一一一tI‑‑‑,:丁̲ ̲‑ 品種混成の
柔軟性 機械の 柔軟性
図1
製品改良の 柔軟性 作業者の
柔軟性
豊的な 柔軟性 加工手順の
柔軟性
能力拡張の 柔軟性 順序付けの
柔軟性
ー扇 面‑0,‑‑
マテハンの 柔軟性
■ェ 場 レベ ル 、 表 層 の 柔 軟 性 ノ
現 場 レベ ルJLJ■■リ, .I 、‑ し深 層 の 柔 軟 性 ノ 柔軟性 の分類 ・整理 の枠組 みの例 (【23】を参考 に著者作成)
あるいは坪根[23]に よってサーベ イ され てい る。
本論 文の展 開 に必要 とな るため、柔軟性 の分 類 ・整理 の枠組 み の例 を坪根 論 文[23]か ら以 下 に引用 ・紹介す る。 図 1に示す よ うに、製造 の 柔軟性 を構成す る もの と して、工場 レベル で、
品種混成 の柔軟性 、製 品改 良の柔軟性 、量的な 柔軟性 、能力拡 張 の柔軟性 、納期 の柔軟性 があ る。 品種混成 の柔軟性 とは需要 の変動 に呼応 し て、品種 の構成 比 を柔軟 に変更で きる能力 であ る。製 品改 良の柔軟性 とは、必要 に応 じて迅速 に設計 を変更 して ゆ く能 力で ある。 量的 な柔軟 性 とは、 コス トの発 生 を抑 えなが ら増減 産 を行 う能力 を言 う。能 力拡 張の柔軟性 とは、必要 に 応 じて既 存 の能力 に逐 次的 に能力 を追加 して ゆ く容易 さの ことであ る。納期 の柔軟性 とは、納 期 の変更 に対す る調整能 力の こ とで ある。 これ らの柔軟性 を具体化す る現場 レベ ルの柔軟性 と して、機械 の柔軟性 、作業者 の柔軟性 、加 工手 順 の柔軟性 、順序付 けの柔軟性 、マテ リアル ・ ハ ン ドリングの柔軟性 があ る。
3.
緩衝 とは緩 衝 を意 味す るbufferはbuffとい う、 「衝 撃 を 和 らげ る」 との意味 を持つ動詞 に由来す る。 し た が って、 buffer、緩 衝 は 「衝 撃 を和 らげ る人 あるいは物」 を意味す る。 計画遂行 の妨 げ とな る外部お よび 内部 の環境 か らの変動 を吸収 し、
変動 がなか ったかの よ うに計画遂行 を容易 に さ せ る 目的で準備 され る機 能 が、生産 システ ムに お ける緩衝 であ る。
村 松[26]は緩衝機 能 の実現 手段 を、物 に よる
緩衝 、時間に よる緩衝 、能力 に よる緩衝 に分類 し、それぞれ につ いて例 を挙 げてい る。物 に よ る緩衝 は、原材 料 、仕掛 品、製 品な どの形 を と る在庫 であ る。 この 中には流れ 生産 の工程 間在 庫 、フロー トとい った形 を とる在庫 も含 まれ る。
工程 の間に置かれ 、前後の工程 か らの変動 を波 及 させ ない働 きがあ る。 時 間に よる緩衝 は、仕 事 がな され るべ き期 間幅 を標 準 よ りも大 き くと ることに よって、計画外 ので き ご との影響 を吸 収 しよ うとす るものである。納期 に与 える余裕 、
リー ドタイ ムL円こ見込 んだ安全 分 、単位 計画期 間の長 さを大 きめにす るこ とな どが例 であ る。
この よ うな計画 に組 み込む時間的 ゆ と りが大 き けれ ば、仕掛在庫量が増 えるので、時間に よる 緩衝 と物 による緩衝 は裏表 の性格 を持 っている。
村松 に よれ ば、能 力 に よる緩衝 の例 として、余 分の能力 (外 注 を含 む)や 、余分 のスペー ス、
機械 の代替性 を挙 げてい る。
緩衝 につ いて個 々の状況 での適切 な設 置量 を 明 らかに しよ うとす る研 究 は多 いので あるが、
先に も述べた よ うに体系的 に記述 した文献は意 外 に少 ない。 古典的 な生産管理 の教科書 におい て も、せ いぜ い緩衝 と しての安 全在庫 の記述 に とどまってい ることが多い([8],[13],[14]な ど)。
先 に紹介 した新 しい型 の生産管理 の教科書 4 点 での緩衝 についての記述 を以 下 に参照す る。
Hopp and Spearman[6]で はCapacity Bufferとの 節 が設 け られ 、MRPシステ ム[15]のWIP(仕 掛 品) バ ッフ ァ との対 比 の視 点 か ら、JITにお け る労働 力使用 の柔軟性 (生産量 に応 じた配置換 えや残業 ・シフ トの増減) を能 力 に よる緩衝 と して紹介 してい る。 日本企業 は在庫 に よる緩衝
生産システムの緩衝 と柔軟性について 3
を削減す る反面、能力 による緩衝 を用意 してい る と指摘 してい る。Schmennern6]で は、 柔 軟 性 についてま とま った記述があるのに対 して、
緩衝 については在庫について触れ るだけである。
Finch and Luebbe[4]で は 、 ゴー ル ドラ ッ トの TOC[5]との関連 で物 と時 間 に よる緩衝 の記 述 が あ る。 能 力 に よ る緩 衝 に は言 及 が な い。
schonbergerand Knod[17]には、在庫 に よる緩 衝以上のま とまった記述 は見 られない。
以上のよ うに、緩衝については、体系的に扱 っ た文献が少 ない こ とに加 え、柔軟性 との違いの 明確化 を含 めた再整理 の必要性 がある。 また、
どの よ うな環境 に どの よ うな種類 の緩衝が適切 であるかの研 究 も極 めて少 ない。例外 は、著者 の知 る限 り安全在庫 と安全 リー ドタイムの状況 に応 じた使 い分 けを論 じたWhybarkら[19]た だ 一つである。時間に よる緩衝 は リー ドタイム と 深 い関係 を持 ってい る。 リー ドタイムに関す る 研 究 も極 めて少 ない。Matsuuraら[9],[10]、松 浦[25]は例外 の一つである。
1995年発行 のAPICS用語辞書第8版[3]では、
緩衝bufferを、
1) 先 に行 わ れ る処 理 を待 ち受 けて いる資 材の数量。原材料 ・半製品の在庫点、 ワークセ ンタの後方 に意図 を持 って保持 されている仕掛 在庫などが対象 となる。同義語 :バ ンク(bank)0
2)
緩衝 には、物 もあ り得 る し、時間もあ り 得 る。かつ、緩衝 は生産性 を向上 させ、納期遵 守率 を高める こともで きる。(注)黒須 ・金谷 ・松浦らの非公式訳による。
としてい る。 これ は、能力 による緩衝 について 述べ られ ていない点 を除き、 これ まで述べた内 容 に合致す る定義 であ る。APICSの主催す る資 格試 験 の指定教科書 で あ るVollmannら[15]にお いても言及があるのは物による緩衝 (安全在庫)
と時間に よる緩衝 (安全 リー ドタイム) に とど まってい る。 一方、 2005年発行 のAPICS辞典第 11版[1]では、前述 の第8版記述 は削除 され 、新 た にTOCの タイ ムバ ッフ ァの こ と とされ て い 4 国際経営論集 No.35 2008
る。 どのよ うな事情であるかの推測については、
後述す るが、 この削除は、筆者 には後退 と思わ れ る。
4.
緩衝 と柔軟性の関係緩衝 と柔軟性 の関係 につ いて言及 した文献は 極 めて少 な く、 著者 の知 る限 り、坪 根 ・松 浦 [24]、坪根[23]、Caputo[2]、Newmanらに よる 2 編[9],[10]の合計5編 であ る。
坪根 ・松浦 では、緩衝 を柔軟性 に含 まれ るも の とした文献はない との指摘 な され てい る。坪 根 では、Caputo[2]とNewmanら[9]の論文 の紹介 と、柔軟性 の種類 と緩衝 との均衡方程式 を探求 す ることが未着手の研究テーマである と述べ ら れ てい る。種類 の異 なる柔軟性 の相互関係 を分 析す る研究は散 見 され るが、緩衝 と柔軟性 の関 係 を定量的に分析 した研究はい まだ見 られない。
さらに、物 、時間、能力 に よる緩衝 の相互関係 をあ らわな形で体系的 に論 じた研 究 も見 当た ら ない。
Caputoは 、緩 衝 を柔 軟性 の補 完 的手段 と し て とらえ、手持 ちの柔軟性 だけでは変動 に対す る対応 が不足す る場合 に緩衝 を組 み込む考 え方 を示 してい る。 Newmanら[9]は、不確 か さに対 処す るための手段 である柔軟性 と緩衝 を、シー ソーモデルで とらえ、不確 か さに対 して相対的 に柔軟性が小 さければ大 きな緩衝が必要であ り、
逆 に大 きけれ ば小 さな緩衝 で済む と定性 的に説 明 してい る。 またNewmanら[10]は、 [9]の シー ソーモデル を3つ のケー スに当てはめ分析 を加 えてい る。CaputoもNewmanらも能 力 の ゆ と り を緩衝 に含 めてい る。
これ らの論文 に共通 な点 は、緩衝 と柔軟性 の 違 いを明示 していない ことであ る。 とりわけ能 力 による緩衝 と柔軟性 に明確 な区分がな され て いない。能力 による緩衝 と、先 に述べた量的な 柔軟性 はあいまいなままである。現実問題 とし て緩衝 と柔軟性 を生産 システムに組み込んでゆ く設計 フ レー ム ワー クを構築す るためには、緩 衝 と柔軟性 、 とくに能力の緩衝 と柔軟性 をはっ
き り切 り分ける枠組みが必要 とされ る。そのた めには、緩衝 あるいは柔軟性 の次元 を再確認す ることが求め られ る。
5.
緩衝あるいは柔軟性の次元5.1 範囲 と応答
第一 に、範 囲 (Range)と応答 (Response) の次元 が あ る とされ る[18],[24]。 しか しなが ら、 この範囲 と応答の定義 にもあいまいな部分 が残 されてい る。本論文では、緩衝 と柔軟性 を 切 り分 ける観点か ら、範囲 と応答 を以下のよ う に定義す る。 また、緩衝 との関連 を論ず ること か ら、計画 よ りも発動 (表
1
、図 5)
の視点から柔軟性 を捉 えている。
範囲には、 さらに品種的側面 と数量的側 面が ある。 品種の側面は、製 品混成比率の変動‑の 対応範囲能力や新規 に投入できる新製 品の範囲 な どである。数量的側 面は、需要数量の変動 に 対す る対応能力である。
応答は、対応の速 さである。応答の速 さには、
二つの側 面がある。生産 システムの状態 を変更 す るのに要す る リー ドタイムの側面 と、同一状 態での仕事処理の標準 リー ドタイムの側面であ る。柔軟性 といった場合、前者 の意味で とらえ るのが普通であろ うが、後者が短 けれ ば、市場
‑の対応 が早いわけで柔軟性が高 く、前者だけ の意味で とらえることには不十分 さが残 る。本 論文の範囲 と応答の定義 に従 えば、後者 が短 け れば、 よ り大 きな生産能力 を持つ ことになるた めに、応答ではな く範 囲の次元の数量的側面で あると考 えるのが妥 当であるか もしれない。
範囲 と応答は、互いに関連 を持 っている。範 囲が大 きけれ ば応答は遅 くな り、逆 に小 さけれ ば応答 は速 くなるであろ う。従来の研究では、
範囲 と応答 を独立であるかの よ うに考 えてい る ことが多い。範囲の大 きい変動に対 しては、緩 衝 は不向きで柔軟性 に頼 ることになるだろ う。
また、範囲の変化が定常なのか非定常なのか によって対応 は変わるであろ う。従来の研究で
はこの点‑の言及が見 られない。 品質管理の教 えるところに従 えば、定常的な変化 と判断 され れば当座のアクシ ョンは無用である。非定常な 変化 あるいは定常的な変化 を原 因か ら減 らす場 合 に対 して初 めて
P DCA
サイ クル を回す必要が 出て くる。定常的な変化 には緩衝 で対応 し、非 定常な変化 と判断すれ ば、柔軟性 を発揮 させ て 対応す るとの切 り分 けが妥 当であるだろ う。5. 2
階層性(1)計画の階層
アン ソニー[20]は意思決 定の階層 を、戦略 ・ 戦術 ・運用の各 レベルか らな3階層 に整理 して い る。 生産計画は この枠組み に相 当す る3層 に 階層化 され る。様 々な表現があ るが、Vollmann
ら[15]の表現 に従 えば、基本生産計画、詳細資 材計画、製造活動管理の3層である。
緩衝 と柔軟性 の切 り分 けを計画の階層で整理 す ることによって多 くを説明できる。そ もそ も 階層化の必要性 が、長期か短期 か、情報の不確 か さの程度が大きいか小 さいか、決定か ら実現 までの先行期 間が長いか短いかな どが決定所要 事項によって異なることか らであった。階層の 次元を持 ち込む ことによって、 これ らの次元 を 一元的に表現できる。
柔軟性は能力のゆとりであるがゆえに、戦術 ・ 戦略 レベルの決定に基づ くのに対 して、緩衝 は 具体的な物 あるいは時間であるがゆえに、運用 レベルで使 われ ると考 えるのが 自然である。た だ し、能力 による緩衝 は異質であって、再整理 を必要 とす る。
能力にゆ とりがなければ、緩衝 を持つ こと自 体が不能である点 を指摘 したい。物 による緩衝 を設置す るにはスペースが必要であ り、何 らか の空間的ゆ とりが前提 となる。 これ は能力のゆ とりであって、柔軟性 を前提 としているとい う ことである。時間による緩衝 も、時間が長 くな れ ば仕掛在庫が多 くなるが、 この場合 も仕掛在 庫用のスペースがあることが前提 になる。能力 による緩衝 については、論 をまたない。
生産システムの緩衝 と柔軟性 について 5
( 2)
表層 の競争 力 と深層の競争力の階層 藤本[22]は製造企業 の競 争力 を表層 と深層 に 切 り分けて整理 している。表層の競争力 とはマー ケテ イング論 で言 うところの 4Pで あって、容 易に外部者 が把握 で きる としてい る。 これ に対 して、深層 の競争力 とは、外部者 か ら容易に見 えないQCD+Fに関す る能力 としてい る。 この 切 り分 けを参考 に、前述 の柔軟性 の分類例 を表 層 と深層 に層別 した ものが図 1である。5.3 能力 による緩衝 の特異性
これ まで、折 に触れ て述 べた、 「能 力 に よる 緩衝が物 と時間による緩衝 とどのよ うに異質か ?」
を以下に要約 してい る。
1)物 と時間に よる緩衝 は運用 レベ ルで用意で きるのに対 して、能力 による緩衝 は運用 レベル で用意できず 、 もっ と上位 レベル の決定で用意
され る。
2)物 と時間に よる緩衝 は相 互対応付 けが可能 であ り、比較 で きる (た とえば[19]) のに対 し て、能力による緩衝 と、物 と時間に よる緩衝 間 の対応付 けは容易でない。
3)能力 と時間による緩衝 を持 てるこ との背後 に、実は能力の ゆ とりが控 えてい る (前述)0 4)能力による緩衝 の行使 には、大な り小 な り 都度の 「決定」 を伴 うことが多いのに対 して、
物 と時間による緩衝 は組み込 まれれ ば実時間で 自動的に消費 され る。
5)能力 による緩衝 は繰 り返 し利用可能 である のに対 して、物 による緩衝 は補充が必要である。
時間による緩衝 も物 による緩衝 と同 じ意味で補 充が必要 (物 と時間は換算可能なので)である。
5.4 緩衝 と頑健性
これ まで緩衝 と柔軟性 との語句 を慣用 に した がって同列 において考察 してきた。 ところが語 句の性格 は異 な る。緩衝 とは具体的な ものを さ すのに対 して、柔軟性 は性質 を表す ものである 6 国際経営論集 No.35 2008
か らである。緩衝 は どの よ うな性質 を具現す る ものだ ろ うか ?この よ うな議論 は全 く行 われて いない。
筆者 は、頑健性 とい う語句 に着 目したい。
頑健性robustnessとは、「強健 な ・丈夫 な」 を 意 味す る形容詞robustの名詞 形 で あ る。 した がって、外部環境 の変化 に対 して、そのままの 状態で変わ らず機能 し続 ける強健 さ、丈夫 さを 意 味す る。定量分析 で頑健性 の意味す る ところ は、最適解 の評価尺度 に対す る感度であって、
この意味の延長上にある。
緩衝 の機能 は、変動 を吸収 し、そのままの状 態 で変わ らず機 能 し続 ける ことをサポー トす る ことにあるので、緩衝が 目的 とす る性質は、頑 健性 である と考 えて よいで あろ う。
したが って、 「緩衝 と柔軟性」 とい う表現 よ りも 「頑健性 と柔軟性」 との表現が適切 である と考 えるが、本論 文では、慣例 に従 うとの見地 か ら 「緩衝 と柔軟性 」の表現 を使 ってい る。
6.
現行の生産管理システムとの関連6.1 トヨタ生産方式
本論文 の脈絡 で言 えば、範 囲次元の柔軟性 と 応答次元の柔軟性 を強化 し、緩衝 を減 らす とい うのが トヨタ生産 方式[21],[27]あ るい はJITで ある。作業者 の多能工化 、機械設備 の汎用性重 視、U字型機械 レイア ウ ト、段取 り時間の削減 、 小 ロッ ト化 、いずれ も柔軟性 を重視 した方策で ある。在庫 に代表 され る物 による緩衝 、時間的 ゆ とりである時間による緩衝 は、問題点 を隠す 観点か らも最小限に抑 え られ る。 ただ し、能力 に よる緩衝 につ いては、JITにお いて機械設備 の汎用性 を重視す るよ うに、必ず しも忌避 して いない よ うに も考 え られ る。 また、先 に も述べ た よ うにHopp and Speam an[6]で は
、J I
Tにお いてWIPに替 わ るバ ッファが残 業 である と述べ てい る。6.2 MRPシステム との関連
HoppandSpearmanが指摘す るよ うに、MRP システムにおいては、端 的 に表現すれ ば、オー ダーの取 り消 しや機械故障 といった内外乱によっ て計画が達成 で きな けれ ば、計画 を修正す る こ とが対応 の全 てで あ る。 MRPシステ ムは、 この よ うな仕組 み上 、大量 のWIPバ ッフ ァを抱 えて い る。 したが って、実行 可能 な修 正計画 の生成 が比較的容易である。緩衝 が大量 にあるためか、
柔軟性 が問題 に され る こ とはほ とん どない。
APICS辞典第11版[1]で、緩衝項 目が消滅 した のは この よ うなMRPシステ ムの 「常識 」 に対す る、MRPシステ ムの導入 を唱導 して きた業 界専 門 団体 と しての過 剰 反 応 か も しれ ない。JITが 脚光 を浴び るに従 って、MRPシステ ムの この よ うな点 が実務家 か ら批判 され続 けて来 たか らで あ る。 また 、 バ ッフ ァ と言 えばTOCとの記 述 か ら うかがい知 る ことがで きるのは、わが国 と 対象 的 なTOCの考 え方 の普 及 で あ る。 先 に紹 介 した新 しい観 点か らの生産管理 教科書 にお い て も記述 の重点が、緩 衝 か ら柔軟性 ‑ と移 って い る。 これ も米 国内の雰囲気 を反映 した もので あるだ ろ う。
7.
能力による緩衝 と柔軟性の切 り分 けこれ まで述べ て きた よ うに、物 と時間 に よる 緩衝 は柔軟性 とは明瞭 に異 な った もので あ る。
しか しなが ら、能力 に よる緩衝 は柔軟性 と重複 す る部分 があ る。 これ が、文献 に よって、能力
ないかの差 を生む理 由 と考 え られ る。本論文 で は、 これ までの検討 に基づ き、能力 に よる緩衝 と柔軟性 を以下の よ うに区別 して、生産 システ ムの柔軟性 ・頑健性 の設計 フ レー ム ワー クを提 示 したい。
物お よび時間 に よる緩衝 と、柔軟性 との応答 次元での相違 は、物 お よび時間 に よる緩衝 が何 らかのPDCAサ イ クル のア クシ ョンな しに、 あ る意味で 自動的 にその場 で発現 で きるこ とにあ るO この意味で、緩衝 は本来 、定常変動 に対処
す るた めの もので ある とはす で に指摘 した。 こ れ に対 して、柔軟性 が発動 され るの はPDCAの チ ェ ックに続 くア クシ ョンの結果 としてである。
非 定常変動 あるいは定常変動 を原 因か ら減 らす こ とに対応す るための ものであ る ともす で に指 摘 した とお りであ るo トヨタ生産方式 で緩衝 が 忌避 され るの も、PDCAサ イ クル を抜 きに、 問 題 を隠す こ とに な るか ら と解 釈 で き る。 逆 に pDCAサイ クル を容 易 に回 させ る ものが柔軟性
と言 え よ う。
pDCAサイ クル の意 味 でのア クシ ョンな しに その場 で使 うこ とが許 され た能 力 ゆ と りを能 力 に よる緩衝 と考 える。 ア クシ ョン後 に発動 され る能 力ゆ と りは柔軟性 で ある。
しか しなが ら、行使 時点 は必要時即座 で ある ことが共通であって も、物 と時間による緩衝 と、
能力 による緩衝 の準備時点は異な る性格 を持つ。
自動車 は排 気量 の大 きい ものの方が加 速能力 に ゆ と りがあ るので、高速道路 で安全 であ る と言 う。余分 の排気量 は正 に能力 による緩衝 である。
ア クセル を踏む との行使 は必要時即座 であるが、
この緩衝が準備 され るのは車の購 入時点である。
この よ うに能 力 に よる緩衝 の可能 とな る大 き さ は、能力の調達計画時 に決 ま って しま う。能力 に よる緩衝 の準備 には柔軟性 と同 じ先行期 間が 必要 なのに対 して、物お よび時間 による緩衝 は、
計画ルール な どの ソフ トウェア に よるものであ るので、準備 のた めの先行期 間が必要ではあ る が、 よ り短 い と考 え られ る。 た だ し、先 に述べ た よ うにスペー スな ど緩衝 を設 置す るた めのゆ
と りの存在 (柔軟性 ) が前提 で ある。
柔軟性 と物 、時間、能力 に よる緩衝 の、性格 の相違点 のい くつか を表1に示す。
8.
緩衝 と柔軟性の役割8.1 応答 ・範囲の次元 か らの検討 (1)応答 ・範囲平面 による表現
緩衝 と柔軟性 の持 つ二つの次元 であ る、応答 お よび範囲をそれぞれ横軸、縦軸 に とった応答 ・
生産システムの緩衝 と柔軟性について 7
①
②
(観点)臨煤小さい大
きい八倒轟)囲媒小さい柔軟性による 対応可能境界線
遅 い 応答 (速さ) 速い
遅 い 応答 (速さ) 遭 い
大きい(叫撃寵轄小さい
大
きい㊨
議題)寓淫小さい緩衝による 対応不能領域
緩衝 による対応可能境界線
緩衝による 対応可能領域
乱 、 応答 (速さ) 速い
緩衝 :多い
‑ ‑■■■■■‑■■‑ ■‑ ‑■■
‑ ‑ ■‑ ‑ ‑ ー ‑ 緩衝 :少ない
軌 、 応答 (速さ) 速い
図
2
緩衝 と柔軟性の応答 ・範囲平面による表現柔軟性による
応答 (速さ) 図
3
緩衝 と柔軟性の役割分担速い
8 国際経営論集 No.35 2008
表
1
物、時間、能力による緩衝 と柔軟性 の性格の相違点柔軟性 物 による緩衝 時間による緩衝 能 力による緩衝
準備 先行期間短 い × ○
発動 に決定が必要 ○ × × ×
効果の リアル タイ ム性 △ ○ ○ ○
発動後の補 充必要 × ○ ○ i X
製 造 の 柔 軟性 品種混成の
柔 軟性 製品改良の
柔 軟性 量的な
柔 軟性
能力拡張の 柔軟性
物・時間 ・能力による緩衝
[箪 ] 蘭 畢
納期の 柔軟性
工場レベル
表層の柔軟性柔軟性の再配分
‑計画の柔軟性
マ テ ハン の
柔軟性
図4 柔軟性配分 の潤滑剤 と しての緩衝 の役割 範囲平面に よって、緩衝 と柔軟性 の機能の表現
を試み る。
柔軟性 の発動時 に とくに、変化 の範 囲が広 け れ ば、応答 は遅 くな り、逆 に変化 の範囲が狭 け れ ば応答 は速 くで きるであろ う。 したがって、
応答 ・範 囲平面上で、 一定の柔軟性 の状態 下、
対応 可能 と不可能 な領 域 の境 界線 は、個 々の状 況 によって異 なるであろ うが、典型的には、図
① のよ うに双 曲線状になる。 この境界の下側が、
柔軟性 に よる対応 可能領域 であって、上側 が同 じく対応不能領域 である (図2①)
柔軟性 が高 けれ ば、 よ り大 きな範 囲の変化 に 対 して、 よ り速 い対応 が可能 である。対応可能 の境界線 が横軸 ・縦軸 ・原点 に遠 いほ ど柔軟性 は高い。 したが って改革 は、原点の反対方向‑
境界線 を押 し広 げてゆ くこととして表現できる (図 2② 、図 3)
緩衝 については、緩衝 の大 き さに応 じてその 場で変動 を吸収で きる範 囲が決 まる (図 2④)。
/現場レベル \ \ \
、 深層の柔軟墜ノ
緩衝 は即座 に働 くので、応答軸 についての制約 はない。応答軸 に平行 な、緩衝量の高 さの境界 線 よ り上側 が、緩衝 による対応不能領域である。
逆 に下側 が 、緩 衝 に よる対応 可能領 域 とな る (図2③)。
(2)次元か ら見た緩衝 の役割
図3に示す よ うに、柔軟性 に よる対応不能領 域 を補完的に埋 め うるのが緩衝 である。緩衝 が 大 きけれ ば埋 め うる領域 は広が り、緩衝 と柔軟 性 を併せ た対応不能領域 は減 る。 どの よ うに高 度 な柔軟性 を具現 したシステムであって も対応 不能領域 が必ず残 るので、柔軟性 と独立 した役 割 としての緩衝 は必要であると考 える。緩衝は、
定常変動 を吸収す るために適 当量必要である。
さらに、非定常変動 に対 して、ア クシ ョンの結 果 として柔軟性 が機能 し始 めるまでの時間稼 ぎ に緩衝 が必要である との表現 もできるだろ う。
トヨタ生産方式 は柔軟性 を高 めることに よっ 生産システムの緩衝 と柔軟性について 9
足
( 詳細資材計画 層
図
5
緩衝 と柔軟性の設計 フ レーム ワークて、範囲 ・応答平面上での対応不能領域 を減 ら した上で、緩衝 を極力減 らす方策 を とる生産 シ ステムである。 これ に対 して、MRPシステムは、
システム内部 に相 当規模 の緩衝 を持つ結果 とな り、柔軟性 を高める必要性 を感 じさせ ない生産 計画管理 システムである。
8.2 競争力の観点か らの検討
工場 レベルの柔軟性 は、現場 レベルの柔軟性 の集大成 として実現す る。現場 レベルの柔軟性 を、工場 レベルの柔軟性 に どの よ うに配分 し、
工場全体の柔軟性 を高めるかが重要な点になる。
この観点か ら、適切 に配置 された緩衝 は、図 4に示 した よ うに、現場 レベルの柔軟性 を工場 レベルの柔軟性 に配分す る際の選択の幅 を広 げ るであろ う。緩衝 は、工場 レベルの柔軟性 を計 10 国際経営論集 No.35 2008
画す る際の柔軟性 を高める役割 を持つ と考 え ら れ る。 この点か らも柔軟性 と独立 した役割 とし ての緩衝 は必要である。
9.
生産 システムの緩衝 と柔軟性の設計フ レームワーク以上の考察に基づいた、生産 システムの緩衝 と柔軟性 の設計手順 を図5に示す。
先 に述べ た とお りVollmannら[15]は、生産 の 計画 と管理 システムを基本生産計画、詳細資材 計画、製造活動管理の3層 に分 けて、第1層で は、受注生産、受注組立生産、見込生産の、第 2層では、タイムフェイズ ド、 レー トベイス ド の、第3層 では、MRP的、JIT的のそれぞれ選 択肢があると述べている。 図5はこの枠組みを 基本構造 としている。詳細計画層のタイムフェ
イズ ドは、MRPの よ うに計画期 間を区切 って資 材 を計画するアプローチであるのに対 して、レー トべイス ドは、供給速度お よび消費速度 に よっ て資材 を計画す るアプ ローチ (見込生産 向き) である。製造活動管理層 のMRP的管理 とは ワー クセ ンタごとにデ ィスパ ッチ ングによって進行 を管理す る伝 統 的 アプ ロー チで あ って、 JIT的 とは、プル システ ムを使 った トヨタ生産方式的 アプ ローチである。
製造企業は 自社 の事業対象 とす る市場 の性格 を見定めて、顧客 を満 足 させ うる展開 を行 う。
基本生産計画層 での重要な決定が、受注生産、
受注組 立生産、見込生産の選択 である。 この決 定 に基づいて、必要な柔軟性水準 を策定 し、具 体化す る。 詳細資材計画層 での、 タイ ムフェイ ズ ド、 レー トベイス ドの選択 に基づいて、必要 な緩衝 の水準の決定 と設置が行 われ る。製造活 動 管理層 のMRP的管理 あ るい はJIT的管理 の選 択 に応 じて、緩衝 の利用や柔軟性 の発動 に関す る態度、また緩衝 の量や柔軟性 の強化 に関す る フ ィー ドバ ックが変わ って くる。
10. おわ りに
製造企業の競争 力の重要な要因である柔軟性 と緩衝 の関係 について考察 し、範 囲 ・応答平面 上で機能 を表現す るこ とに よって、柔軟性 と緩 衝 が異な る役割 を果たす ことを明確 に した。緩 衝 によって、柔軟性 を補完で きることを、役割 の区分 によって明瞭 に示 した。 また、緩衝 には 現場 レベル の柔軟性 を工場 レベル の柔軟性 に配 分す る際の柔軟度 を増す働 きがあることを指摘 した。 以上 に基づいて、緩衝 と柔軟性 を生産 シ ステムに組み込んでゆ くための フ レーム ワー ク を提示 した。
本論文のアプ ローチは定性的であって、本来 的には定量的なアプ ローチが必要である。 その ためには、物 による緩衝 、時間に よる緩衝 、能 力による緩衝の相互関係 の体系的、定量的把握、
緩衝量 と柔軟性 の間の関係 の定量的把握 な どを、
今後、進 めてゆ く必要がある。
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