一 673 一
東医大誌 56(6):673,1998
わが国の保健医療システム
社団法人全国社会保険協会連合会理事長
幸 出 正 孝
半年ほど前,所属ロータリークラブで,わが国の保健医療制度について次のような話をした.
〔病院や診療所へのアクセスが自由であり容易な日本の社会〕
欧米の多くの国では,まず家庭医や一般医にかかりその紹介で専門医にかかったり入院したりす るシステムがとられているが,わが国では,誰でも何時でも容易に,どの病院でもどこのクリニッ クでも保険証一枚で受診し,また入院できる.非常に勝れた,世界に誇ってよいシステムといえよ
う.
〔民間医療機関と国公立病院が混在競合している医療システム〕
欧では非営利団体経営の病院が多いが,日本の民間病院はクリニックから出発している等かなり 違う.日本ではそれら民間病院と併存競合する形で国公立病院等があり,病院ごとの機能分化がな
い.
〔医療費の支払はfee for service(出来高払)が基本〕
健康保険の医療費は,個々の診察,手術,検査等の項目や回数に応じた支払(出来高払)が原則 となっている.高齢化に乱しい医療費支払方式の導入が急務となっている.
〔良質で効率的な医療をどう確保していくかが課題〕
国民が選択できる巾を広げることが,問題解決の鍵の一つと考えている.
以上の私の説明に対するメンバーの皆さん(ききて)の反応は,いずれも,「このような話しは初 めて聞いた,もっと広く知られて然るべきだ」であった.
メンバーの多くは企業や老舗のオーナーや上;場会社の社長・役員で,人生経験も豊富な方々ばか りである.医療や医学とは無縁とはいえ,いわば日本のエスタブリッシュメント乃至は知識層を形 づくる人たちが一様にこのような感想を寄せられたことに,私は意外感を禁じえなかった.
わが国の保健医療システムの勝れた面や抱えている課題等は,普段に,もっと広く,体系的に,
関係者はもとより国民各層に語られるべきではないか.そうした努力がわが国の保健医療をより質 高く,より効率よくし,しかも国民に満足をもたらし納得させる一つの方途ではあるまいか.
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