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宮   田   将   吾

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  意思決定志向的な組織形成コンセプトの理論的枠組みについての検討(宮田)

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Ⅰ.はじめに

 今日の社会において組織はさまざまな形で存在しているが,われわれ人間が 生活していくうえで欠くことのできない存在となっている組織の1つとして企 業という組織を挙げることができる。経営学は主としてこの企業を研究の対象 としているが,とりわけ企業における組織現象を研究の関心としている分野が 経営組織論である。

 企業が資本主義社会において存続していくためには利潤を獲得することが不

(京都学園大学経営学部論集 第21巻第 1 号 2011年10月 217頁〜237頁)

論  文

意思決定志向的な組織形成コンセプトの 理論的枠組みについての検討

 

宮   田   将   吾

 要約 企業のマネジメントは多くの問題に直面しているが,その中でも組織 構造の形成問題は重要な問題の 1 つとして考えられる。この問題は,手段とし ての組織をいかに合理的に形成するべきかという意思決定問題として捉えるこ とができるが,マネジメントの認知的な能力が限定されており,さらに組織形 成という意思決定問題が悪構造問題の性格を有していることから,この問題に 対して客観的に合理的な解決を見つけだすことは困難である。しかしながら,

マネジメントは合理的な意思決定を下すことによって組織目標を達成し,組織 を存続させなければならないのである。このような問題に直面するマネジメン トに対して意思決定志向的な組織形成コンセプトは,組織に関する意思決定の 基礎となる学問的成果を示すという課題を有しているのであるが,本稿ではこ の意思決定志向的な組織形成コンセプトがどのような方法に基づいて理論の構 築がなされているのかを検討している。

 キーワード:意思決定志向的・組織形成・意図された合理性

(2)

可欠であるが,この意味において利潤の獲得が企業の重要な目標の 1 つである ということは明らかである。しかしながら,近年の企業をとりまく環境は非常 に複雑であり,同時に動態的でもあるため,利潤を獲得し,存続を確保するこ とは企業にとって容易なことではない。このような変化の激しい環境の中で企 業目標を達成し,企業を存続させていくためには,トップ・マネジメントは数 多くの問題を解決していかなければならないのである。

 経営組織論の分野においては,組織現象に対してさまざまな方向からアプ ローチがなされ,多様な理論が展開されているが,経営組織論は,組織の諸問 題を究明し,企業のトップ・マネジメントがその組織目標を達成する際に応用 することができるような学問的成果を提示しなければならない。すなわち「組 織理論の結果は実際の組織的行為を指導し得るものでなければならない」ので ある。

 このような実践志向を強調するドイツの経営学においては,組織を何らかの 目標を達成するために形成される手段とみなすアプローチが存在している。そ のため,このアプローチにおいては,組織の問題は,組織目標を達成するため の手段としての組織構造をいかに合理的に形成するべきかという意思決定問題 として把握されるのである。したがって,「マネジメントによって下される組 織に関する意思決定の基礎としてふさわしい構造モデルを展開しなければなら ない」という立場が強調されることになる。

 本稿では,手段としての組織をいかに合理的に形成するべきかという意思決 定問題を実践・応用志向の立場から論じているフレーゼ(Frese E.)のコンセ プトを検討することによって,意思決定志向的な組織形成コンセプトの理論的

1 ) 1 )

2 ) 2 )

1 ) Grochla, E. : Einführung in die Organisationstheorie, Stuttgart 1978, S.53. 清水敏允・小田章訳

『組織理論入門』文眞堂,1989年,50頁。

2 ) Frese,  E.  :  Grundlagen  der  Organisation,  Entscheidungsorientiertes  Konzept  der  Organisa- tionsgestaltung, 9. Aufl., Wiesbaden 2005, S.579.

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枠組みを明らかにしたい。そのためにまず,経営組織論がどのような特徴をも っているのかを概観し,意思決定志向的な組織論の基本思考を検討したうえで,

意思決定志向的な組織論において組織形成問題に対してどのようなアプローチ がなされているのかを考察したい。

Ⅱ.経営組織論の特徴

 経営学は主として企業を研究の対象としているが,現代の経営学において主 要な研究領域の 1 つとして考えられているものが経営組織論である。この経営 組織論は,組織の諸問題,とりわけ企業組織のマネジメントの問題を研究の関 心とし,その分析単位や研究の対象とする組織現象などによって,マクロ組織 論とミクロ組織論とに分類されている。分析単位を個人,集団および組織自体 に分けた場合,マクロ組織論においては組織自体が分析単位とされ,主として 組織構造や組織過程が研究関心とされる。また,ミクロ組織論においては組織 の中の個人や集団が分析単位とされ,主としてリーダーシップやモチベーショ ンが研究関心とされている。経営組織論では,このような組織現象を研究し,

組織の諸問題を究明することによって,企業がその組織目標を達成する際に応 用することができるように学問的成果が提示されているのである。

 周知のように,あらゆる組織はその組織に固有の共通目標を持っており,組 織はその組織目標を合理的に達成することが不可欠である。すでに述べたよう に,資本主義社会において企業が存続していくためには利潤を獲得しなければ ならないが,この意味において利潤を獲得することが企業の重要な目標の 1 つ であるということは明らかである。したがって,企業においては企業全体や部 門などを効率的に管理することによって利潤を獲得することが重要な問題とな

3 ) 3 )

3 ) これについては,たとえば坂下昭宣「経営組織論」神戸大学大学院経営学研究室編『経営学大 辞典』240‑242頁を参照。

(4)

るのである。しかしながら企業は,その目標を達成するために,いかなる手段 や方法を用いてもよいというものではない。なぜなら,企業においては多くの 人間が活動しており,そういった人間を単なる手段として扱っていては,組織 目標を達成することは非常に困難であり,たとえ可能であったとしても,人間 性を無視していては,組織が長期的に存続することはできなくなるからである。

この意味において,組織は人間性を追求することも重要なのである。

 また,組織は組織目標が達成され,組織の内部の人間だけが満たされればよ いというものではない。なぜなら,組織はその周りの社会との関係なしには存 続し得ないものであるからである。すなわち「企業・組織は社会のさまざまな ステイクホルダーからの支持を得ることで存続出来る」のであり,組織はこの 社会性を追求することによって組織の存在理由を確保しなければならないので ある。もし組織が社会性を考慮することなく行動するならば,つまり組織が環 境破壊,人権の侵害,汚職あるいは偽装といったような,その社会に適さない 組織行動をとるのであれば,その組織が社会的に存続していくことは非常に困 難になるだろう。近年,企業の社会的責任を問う動きが活発であるのがその証 左であろう。このように,組織は社会性を追求することも重要な問題となるの である。

 したがって経営組織論においては,目標に対する合理性の追求,人間性の追 求および社会性の追求という観点を考慮に含めることが不可欠であり,これら らを踏まえて,理論が展開されているのである。

4 ) 4 )

5 ) 5 )

6 ) 6 )

4 ) 目標に対する合理性および人間性については,たとえば百田義治「経営組織における効率性と 人間性―労働の復権と企業の社会的責任(CSR)―」稲村毅/百田義治編著『経営組織の論理と 変革』ミネルヴァ書房,2005年,76‑98頁を参照。

5 ) 藤田誠「社会性と経営戦略」『早稲田商學』第423号,2010年,169頁。

6 ) これに関連して,百田は組織における効率性と人間性の両立も経営組織に求められる社会的責 任であると指摘している(百田義治,前掲稿,98頁)。

(5)

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Ⅲ.意思決定志向的な組織形成コンセプトの基本思考

 以上から,意思決定志向的な組織形成コンセプトはマクロ組織論の分野に含 まれるものであるということは明らかであろう。また,このコンセプトは手段 としての組織を経済的にいかに最適に形成するべきかという問題を論じるもの であるために,主として目標に対する合理性の追求に関連していることも明ら かである。それでは,組織論や組織コンセプトはどのような場合に「意思決定 思考的」とよばれるのであろうか。

 組織論や組織コンセプトは,それらが組織における意思決定過程の説明と合 理的な意思決定に対する助言を行うことを課題としている場合に,意思決定志 向的であると特徴づけることができる。したがって,意思決定志向的な組織形 成コンセプトは,組織における個人の意思決定行動,すなわち情報の獲得,伝 達および処理を分析し,それに基づいて組織構造に関する意思決定のための方 法的基礎を提示し,そのことによって企業のマネジメントが可能な限り高い程 度で企業目標を実現することができるように,さまざまな形成用具を提供しな ければならないのである。換言すると,意思決定志向的な組織形成コンセプト は,企業のマネジメントに対してさまざまな形成用具を提示し,マネジメント が目的 手段関係の評価に基づいて,合理的な意思決定を下すことができるよ うな言明を提供するという課題を有しているのである。そのため,このコンセ プトにおいては,組織構造を導入する際に実際に意思決定がどのように下され るのかという言明ではなく,組織構造についての意思決定がどのように下され るべきかという言明がなされることになる。

 また,組織構造の形成という意思決定問題を合理的に解決するためには,そ

7 ) 7 )

7 ) Vgl. Frese, E. : a. a. O., S. 3.

(6)

のコンセプトにおいて,組織の概念や組織構造がどのように把握されるのか,

その組織構造に対してどのような方法で分析がなされるのかといったことも明 らかにする必要があるだろう。周知のように,経営組織論においては組織の諸 問題についてさまざまなアプローチがなされているが,「組織」という概念に ついては統一的な見解が存在していないのが現状である。しかしながら,組織 の本質的な特徴を示すことなくしては,経営組織論がなぜ「組織論」と呼ばれ るのかを説明することができない。そこで,次のような 2 つの本質的特徴を有 するシステムを考察する場合に,それは組織論あるいは組織コンセプトと称さ れるのである。

 ①多くの個人とその個々人の諸行為(諸活動)が考察されている。

 ② 個々人とその個々人の諸行為には共通の目標へ方向づけることが義務づけ られている。そのことを通して,システム内部では,ある個人の行為は他 の個々人の行為への潜在的な影響を有している。

 これら 2 つの本質的特徴を有するシステムを考察する場合に,それは組織論 あるいは組織コンセプトと称されるのであるが,組織論あるいは組織コンセプ トはこの組織というシステムのどういった現象や観点を考察するかによって研 究の内容が異なってくる。その際,ドイツの経営学において組織構造を考察し ているコンセプトの中で,とりわけ重要な方向として 3 つのグループが区別さ れている。第 1 のグループは組織エコロジー(organizational ecology)において 展開されているものであり,そこでは組織構造の発生を説明することに方向づ けられた理論が展開されている。また第 2 のグループは,組織構造を個々人の 行動や集団の行動が組織目標に向かうように影響を及ぼすための規則として考

8 ) 8 )

9 ) 9 )

8 ) Vgl. Frese, E. : a. a. O., S. 20.

9 ) Vgl. Frese, E. : a. a. O., S. 20.

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察したり,個々人や集団の行動へ及ぼす組織構造の効果について考察したりす る組織論である。そして第 3 のグループは,人間関係論において考察される人 間的な要求のように,個人の自己発展や自己実現の観点から組織構造を分析す る組織論である。

 このように,組織構造を考察するコンセプトは主として 3 つのグループに分 類されるが,必ずしもすべてのグループが組織構造の形成という関心事を追求 しているとは限らないのである。本稿では意思決定志向的な組織形成コンセプ トを検討しているが,それは上記の組織論の分類においては第 2 のグループ,

すなわち組織構造を個々人の行動や集団の行動が組織目標に向かうように影響 を及ぼすための規則として理解する立場に属している。

 また,組織構造の形成という問題を考える場合にも,組織構造をどのように 捉えるかによってアプローチが異なってくる。そのアプローチの 1 つとして,

組織構造は人間の相互作用の結果であるとする立場が存在している。これは解 釈的アプローチ(interpretative Ansätze)と呼ばれるもので,そこでは,「われわ れの世界(社会的世界)を,人々が織りなす社会的な相互作用の所産であり,か つ 意味 によって構成された主観的な世界とみる。そこにおいて,ひとびと は環境や条件あるいは他者の行為に単に反応するのではなく,それらの意味を 解釈し,みずからの行為に付与する意味に基づいて行動する」。つまり「解釈主 義は社会的世界が実在する構造ではなく,関係する諸個人の相互作用によって 社会的に構成された間主観的な意味世界(=社会的構成物)であると仮定」し ているのである。したがって,「組織は目的を達成するための機能的存在ではな

10)

10)

11)

11)

12)

12)

10) Vgl. Frese, E. : a. a. O., S. 22.

11) 國部克彦「管理会計研究の新しい視点」会計フロンティア研究会編『管理会計のフロンティ ア』中央経済社,1994年,237頁。

12) 坂下昭宣「組織シンボリズム論の認識論的パラダイム」『組織シンボリズム論―論点と方法―』

白桃書房,2002年,62頁。

(8)

く,むしろ共有されたシンボルと意味のシステムとして理解される。シンボル は意味のある関係のなかで連結されており,それはある状況下で人々の活動が どんな関係にあり,意味をもつかを示しているのである。ここにおいては,個 人が自分の行動をいかに理解し,解釈するか,そしてある行為がいかに組織の 中で関連するか,が組織分析の対象となる。したがって,そこでの組織研究は,

( 1 )組織は何を成し遂げ,また( 2 )組織はいかにして能率的にそれを成し 遂げるかという視点よりは,( 1 )組織はいかにして成し遂げ,( 2 )組織化 される意味は何か,という解釈的視点に重点をおくことが求められる」ので ある。

 このように,解釈的アプローチにおいては,組織構造の存在それ自体が社会 的な相互作用の結果であり,共有されたシンボルや意味のシステムとして把握 されるのであって,組織構造を形成することによって,個々人の行動にどのよ うな影響が及ぼされるのかということは分析されない。つまりこのアプローチ は,組織構造をどのように形成するべきかという視点からの分析ではなく,組 織構造はどのように生成するのかという視点に基づいた分析がなされていると いえよう。組織構造を理解する上で,解釈的アプローチが有する意義は非常に 大きいが,組織目標の実現に向けて組織構造を計画適合的に形成するという意 図から組織形成コンセプトを展開する場合には,この解釈的アプローチに頼る ことは困難であろう。それでは計画適合的な組織形成という視点にとって有用 なアプローチとはどのようなものが考えられるのであろうか。

 組織構造を理解する他の方法として,組織を機械のように捉えるアプローチ が存在している。このアプローチは機械的アプローチと称されるもので,それ は「組織を無生命の,しかし注意深く設計された精密機械のメタファーとして

13)

13)

13) 高橋正泰「組織の合理性と組織シンボリズム」『組織シンボリズム―メタファーの組織論―

(増補版)』同文舘出版,2006年,133頁。

(9)

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理解する立場」であり,精密機械のような組織構造を形成しようとする立場で ある。このアプローチにおいて,組織構造は本質的には次のような 2 つの構成 要素をもったシステムとして考察される。すなわち,①情報処理能力を有する 諸単位,および②諸単位間で情報の伝達がなされるチャネルがそれである。こ の場合,情報を送信する側の単位はコミュニケーション・チャネルを通して情 報を送り,受信する側の単位に影響を及ぼすことになる。この情報を受信した 単位は,場合によっては,その情報を他の単位に転送し,転送された単位はま た他の単位に転送したりすることによって,諸単位間に密接な結び付きが生じ るのである。

 目標に対する手段としての組織構造を形成する立場,すなわち個々人の行為 を目標達成に向けて影響を与えるための組織的な諸規則を計画適合的に形成す るという意図から組織形成コンセプトを展開する場合には,この機械的アプ ローチは非常に適していると考えることができるのである。しかしながら,組 織構造を機械そのものとして扱うことはできない。なぜなら,それは人間の活 動に関係しているからである。したがってフレーゼは,この機械的アプローチ の中に認知的アプローチを取り入れることによって,組織形成コンセプトを補 完している。

 認知とは「人間が外界の事象,あるいは自己の状態を認識する心的な活動を 指している。外界からの情報を受け取り,それが一定の判断や行動に結びつく までの内面的なプロセスが認知(あるいは認識)プロセスとよばれる」。した がって,認知的アプローチとは,人間の認知過程あるいは認識過程に焦点を合 わせることによって,組織における人間行動を分析しようとするアプローチで

14)

14)

15)

15)

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16)

14) 坂下昭宣「企業の組織構造―組織構造論の展開―」『経営学への招待』白桃書房,2007年,84 頁。

15) Vgl. Frese, E. : a. a. O., S. 26 f.

16) 加護野忠男「認知過程」神戸大学大学院経営学研究室編『経営学大辞典』746頁。

(10)

あると定義されるのである。このアプローチにおいては人間は次のように把握 される。すなわち「人々は情報ではなく,それがもつ意味をもとに行動する。

意味は,取り入れられた情報と人々の知識とを融合することによって生み出さ れている。人々は外界の情報の意味を理解するための枠組みをもっている。組 織のような社会集団の中では,この枠組みの共有が起こることがある」。

 したがって,組織構造というシステムを理解するためには,個人が情報とい う客観的な刺激に対する反応として行動するという仮定に立つ機械的アプロー チのみでは不完全であり,そのアプローチで説明できない部分を認知的アプ ローチを導入することによって補完することが必要なのである。この認知的ア プローチでは,個人は情報の受容とその処理について認知的なプロセスを経て 理解した意味に基づいて行動するものとして把握されるのである。

 以上から明らかなように,フレーゼの意思決定志向的な組織形成コンセプト においては,個人の行為を目標に適したように影響を与えるための組織的な諸 規則を計画適合的に形成するために,組織構造というシステムを機械的アプ ローチと認知的アプローチから分析することによって,マネジメントが組織形 成という意思決定問題を解決する際の基礎を提供しようと試みているのである。

Ⅳ.意思決定問題としての組織形成

 以上では,意思決定志向的な組織形成コンセプトが経営組織論のなかでどの ように位置づけられ,組織構造に対してどのような立場からアプローチされて いるのかということを明らかにしたが,次に,組織形成という意思決定問題が どのような特徴を有するのかを明らかにしたい。

17)

17)

18)

18)

17) これについては,加護野忠男「認知的組織論」神戸大学大学院経営学研究室編『経営学大辞 典』747頁を参照。

18) 加護野忠男,上掲稿,747頁。これに関連して,フレーゼは認知的アプローチの意義として,

とりわけ組織文化に関する貢献を強調している(Vgl. Frese, E. : a. a. O., S. 146-152.)。

(11)

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 組織構造の形成という意思決定問題は,次の 4 つの構成要素によって記述さ れる。すなわちそれは①出発状態,②組織的な形成用具,③行動への効果(Ver- haltenswirkungen)と行為結果(Handlungsergebnisse)および④形成目標である。

 出発状態とは,組織形成という意思決定問題を解決しようとする際の所与の 状態のことである。この所与の出発状態は,ヒト,モノ,カネ,情報といった 経営資源の保有状況,企業を取り巻く支配的な環境諸条件,そして(組織改革 の際には)現存する組織構造によって規定されている。

 組織的な形成用具は,意思決定志向的な組織形成コンセプトにおける意思決 定変数である。この形成用具の選択によって,さまざまな組織構造が実現する ことになる。

 また,組織構造は個人の行為を目標に向けて影響を及ぼすために形成される ものであるため,組織構造すなわち組織的な規則の評価は,組織的な規則が個 人の行動にどのような影響を及ぼし,そしてその影響された個人の行動が,企 業の目標達成に影響を及ぼす行為結果に対してどのような効果を有するのかと いうことを把握し,測定することが不可欠となってくる。したがって,ある一 定の組織的な規則を導入することによって個人の行動が変化するのかどうか,

たとえば個人が以前よりも一生懸命働くようになるのかどうか,そしてその結 果として,たとえば売り上げの増加といったような行為結果に導くのかどうか ということが考察されなければならないのである。

 第 4 の構成要素である形成目標についてであるが,言うまでもなく,代替的 な組織構造はそれぞれ異なった行為結果に導き得るものである。その際,企業 目標の実現に対して最も高い貢献を果たす形成代替案を選択することが合理的 な意思決定ということができるが,そのためには,代替的な組織構造を導入す

19)

19)

19) Vgl. hierzu und zum Folgenden Frese, E. : a. a. O., S. 69‑71.

(12)

ることによって導かれる異なった行為結果を上位の企業目標の基準値に従って 評価しなければならない。しかしながら,この評価活動こそが代替的な組織構 造間の選択を困難にしているのである。なぜなら,その評価を行う場合には,

そのときそのときに考察されている組織構造が企業目標の実現にどのような影 響をもっているのかということを企業のマネジメントが知っていなければなら ないからであるが,この代替的な組織構造が企業目標の実現に及ぼす影響をす べて把握することは非常に難しい問題なのである。

 以上では,組織構造の形成という意思決定問題の 4 つの構成要素を見たが,

これらの構成要素から成る組織形成モデルを図示したものが図 1 である。

 これら 4 つの要素から成る組織構造の形成という意思決定問題は次に示す前 提が完全に満たされる場合に,最適な代替案の選択という規範的な意思決定と

図 1:組織形成モデルの基本構造

【出所】 Frese. E. : Grundlagen der Organisation, 9. Aufl., Wiesbaden  2005, S.71に基づき作成

目 標

評 価 行為結果

行 動 組織構造

組織形成 出発状態

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しての性格を有することになる。

 ①目標観の明確さ

 この前提によって情報問題が定式化される。すなわち,形成を担当する 企業のマネジメントは,形成目標によって定義される選好構造を認識ある いは理解していなければならない。つまり,形成代替案の優先順位を決定 する際の基準を認識あるいは理解していなければならないのである。さら にそのマネジメントは,形成目標が複数あり,いくつかの目標間にコンフ リクトが生じる場合には,そのコンフリクトを克服する能力をもっていな ければならない。

 ②出発状態の知識と利用可能な組織的用具についての知識

 この前提は,最終的には,形成を担当するマネジメントが出発状態の構 造を認識していなければならないということを意味している。なぜなら,

そのマネジメントが出発状態の構造を理解していてはじめて,所与の経営 資源と支配的な環境条件から実現可能な組織構造を導き出すことが可能と なるからである。

 ③目標の実現に対して代替的な組織構造が及ぼす効果についての知識  形成を担当するマネジメントは,そのときそのときに考察されている組 織構造が企業目標の実現にどのような影響をもっているのかを知っていな ければならない。その知識はまず,代替的な組織構造が組織構成員の行動 に及ぼす影響の予測という経験的な問題に関連している。さらにその知識 は,企業目標の実現のために重要な行為結果へ,個人の行動がどのような 影響を及ぼすのかという予測にまで及ぶものである。

20)

20)

20) Vgl. Frese, E. : a. a. O., S. 71 f.

(14)

 ④形成プロセスを制御するための知識

 この前提は,組織形成に関係する出発状態を,手に入れようと努められ る組織構造へと変換するプロセスを成果豊かに成し遂げるための情報上の 基礎を創り出すものである。

 これらの前提が満たされている場合には,組織構造の形成という意思決定問 題を極めて合理的に下すことが可能となるが,しかしながら現実問題として,

これらの前提が完全に満たされているとは考えにくいものである。とりわけ,

「組織論は個人の行動および集団の行動の説明と予測に関しては,まだ脆弱な 土台の上に立っている。経験的に基礎づけられた行動関連的な組織形成論は存 在していない。つまり,大部分の理論的な文献においては,形成の問題はテー マにすらなっていないのである。問題状況における多義性と組織形成について の不十分な知識のために自由裁量の余地を作り出してしまう。極端な場合には,

組織構造に対する意思決定は恣意的な性格をもつ」のである。

 しかしながら,このような不完全な情報にもかかわらず,企業のマネジメン トは,組織構造についての意思決定を下し,組織目標を達成しなければならな い。その際,マネジメントはどのように意思決定を下せば,恣意的な性格を排 除し,合理的な意思決定を下したといえるのであろうか。この問いに対してフ レーゼはサイモン(Simon, H. A.)の合理性の概念を導入することによって,不 完全な情報の下で組織構造に関する意思決定を下す際の 1 つの方法的基礎を提 言している。

21)

21)

21) Frese, E. : a. a. O., S. 72.

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Ⅴ.不完全な情報と意図された合理性

 フレーゼは,組織構造についての意思決定を構造化されていない意思決定と して特徴づけているが,これはサイモンの分類に拠っているものである。サイ モンは,意思決定問題を「良構造問題(well-structured problem)」と「悪構造問 題(ill-structured problem)」の 2 つに区分している。すなわち,「目標のテスト があきらかで容易に適用でき,見込みのある解決策を合成するための良定義の ジェネレータの集合が存在するときに,問題は良構造であるといえる。こうし た特徴が欠けていくほど,問題は悪構造化する」のである。したがって,良構 造問題においては,目標も問題の構造も明確であり,方法的に基礎づけられた 解決を提示することが容易であるのに対し,悪構造問題においては,目標も問 題の構造も不明確で,解決手段が明確化されておらず,方法的に基礎づけられ た解決を提示することが非常に困難となるのである。

 組織形成という意思決定問題が悪構造問題であり,方法的に基礎づけられた 解決を発見するのが非常に困難であるという事実にもかかわらず,企業のマネ ジメントは実際に組織構造についての意思決定を下し,組織目標を達成しなけ ればならない。その際,マネジメントはどのように意思決定を下せば,恣意性 を排除し,合理的な意思決定を下したといえるのであろうか。

 サイモンによれば,「大ざっぱにいえば,合理性とは,それによって行動の諸 結果を評価できるなんらかの価値システムの観点から,望ましい行動の代替的 選択肢を選択することに関係している」。合理性の概念をこのように考えると,

22)

22)

23)

23)

22) Simon, H. A. : Administrative Behavior : A Study of Decision-Making Processes in Adminis- trative Organizations, 4th ed. New York 1997, p. 128. 二村敏子 / 桑田耕太郎 / 高尾義明/西脇暢 子/高柳美香訳『新版 経営行動―経営組織における意思決定過程の研究―』ダイヤモンド社,

2009年,199頁。

23) Simon, H. A. : ibid., p. 84. 上掲訳書129頁。

(16)

意思決定の合理性を判定する際には,たとえば目標が異なっていたり,合理性 を判断する主体が異なっていたりする場合には,合理性の内容も異なってくる という複雑な問題が生じることになる。こういった複雑性を回避し,明瞭にす る唯一の方法として,適切な副詞と連結して「合理的」という言葉を用いること が提示されている。そして「もし,実際に,所与の状況のもとにおいて所与の 価値を極大にするための正しい行動であるならば,その決定は『客観的に』合 理的であるといえるだろう。もし,本人が実際にもっている知識に応じて成果 を極大化するものであるならば,その決定は『主観的に』合理的である」ので ある。

 組織形成という悪構造問題を解決する際には,客観的な合理性を有する意思 決定を下すことは不可能である。なぜなら,客観的に合理的な意思決定を下す ためには,行動している主体がすべての行動代替案を完全に列挙することがで き,それらの行動代替案の諸結果を完全に予測でき,そしてそれらの行動代替 案のなかから 1 つを選抜する基準として価値体系をもっていることが必要とな るが,人間の認知能力の限界のために,これらの前提は不完全にしか満たされ ないからである。このように人間の能力の限界によって意思決定は主観的・相 対的な合理性しかもち得ないのであり,この合理性のことを「限定された合理 性(bounded rationality)」と呼ぶのである。

 しかしながら,「組織における人間行動は,完全に合理的ではないとしても,

少なくとも大部分は合理的であることが意図されている」のは明らかであり,

したがって「組織と経営管理の真の理論がなりたつ場所は,人間の行動が,合 理的であろうと意図されているが,その合理性が制約されているような現実世

24)

24)

25)

25)

26)

26)

27)

27)

24) cf. Simon, H. A. : ibid., p. 85. 上掲訳書130頁。

25) Simon, H. A. : ibid., p. 85. 上掲訳書130頁。

26) cf. Simon, H. A. : ibid., p. 93. 上掲訳書144頁。

27) Simon, H. A. : ibid., p. 88. 上掲訳書136頁。

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界に,まさに存在する」のである。つまり「経営理論とは,意図されているが 同時に限定されている合理性に固有の理論であり,いいかえれば,最大化でき るような理性をもたないために,満足化をはかる人間の行動についての理論」

なのである。フレーゼはこのような人間の意図に注目するサイモンの立場に依 拠しつつ,意図された合理性(intendierte Rationalität)の原理に基づいて,意思 決定志向的な組織形成コンセプトを展開している。

 意図された合理性の原理においては,組織構造についての意思決定を下す際 に,限定された合理性の志向のもとで,最低限の体系的に根拠づけられた目的 手段関係の評価を行うことが求められている。したがって,意思決定志向的な 組織形成コンセプトにおいては,限定された認知的能力を有するマネジメント に対して,代替的な組織構造が目標に対してどのような効果を有しているのか という予測を可能にすることによって,最低限の目的 手段関係を評価するこ とができるような学問的成果が提示されなければならないのである。

 その際,人間の認知的な能力は質的および量的に限定されているために,意 思決定問題を解決する際に限界が生じることになるが,このことは悪構造問題 のみならず,良構造問題に対しても妥当する。なぜなら,たとえ良構造問題で あったとしても,それを解決するために処理されるべき情報量があまりにも多 い場合や,非常に高い水準の論理的思考が求められる場合などには,限定され た能力を有する人間に対して過度な要求がなされ,解決が困難となるからであ る。このため,人間の認知的な能力が限定されていても,意図された合理性の もとで組織形成という意思決定問題を解決することができるように情報活動を 削減しなければならないことになるが,そのための方法として 3 つの方法が示

28)

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30)

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28) Simon, H. A. : ibid., p. 88. 上掲訳書137頁。

29) Simon, H. A. : ibid., p. 118. 上掲訳書184頁。

30) Vgl. Frese, E. : a. a. O., S. 3 und 73.

(18)

されている。

 まず第 1 の方法としては代用目標(Ersatzziel)を導入することによって,情 報活動を削減することが考えられる。たとえば企業において,利潤を可能な限 り多く獲得することができるような組織構造を形成するという目標は,非常に 複雑で,さまざまな要因がかかわっているために把握することが非常に困難で ある。したがって,この目標のもとでの組織形成問題は,客観的な合理性を有 する意思決定問題に近い性格を有することになり,万が一解決することができ るとしても,そのための情報活動は非常に多くなり,限定された能力を有する 人間に対して過度な要求をなすものである。しかしながら,利潤目標の代わり に,たとえば現存するポテンシャルを可能な限り完全に利用することができる ように組織構造を形成するという目標に基づく場合には,比較的単純な意思決 定問題となり,したがって情報活動も少なくなると考えることができる。同様 に,たとえば調整の観点と動機づけの観点のどちらに対しても最適な組織構造 を形成するという目標を設定する場合も非常に複雑な問題となり,限定された 能力を有するマネジメントにとって解決することは非常に困難となる。しかし ながら,組織形成の際にはまず調整の観点を優先して,その後,形成された組 織構造の枠組みにおいて動機づけの観点を考慮するというように,代用目標を 導入することによって,組織形成という意思決定問題を解決することがより容 易になるのである。このように,代用目標とは,それを導入することによって 本源的な問題を新しく定義するものであり,代用目標なくしては,出発問題を 部分問題へ分解することも可能ではない。悪構造問題を解決するための一般的 な方法は,悪構造問題を部分問題に分解し,個々の部分問題を反復的に調和さ せることによって,悪構造問題全体の解決に導くことである。このように,非 常に難しい目標を設定するのではなく,比較的単純な代用目標を導入すること によって,複雑な意思決定問題を解決するための要求を削減することが重要な

(19)

  意思決定志向的な組織形成コンセプトの理論的枠組みについての検討(宮田)

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のである。

 情報活動を削減するための第 2 の方法は,情報構造を大雑把にすることであ る。意思決定にとって重要な情報構造をより詳細にすれば,処理されるべき情 報量が多くなり,意思決定者に対する要求が高くなるが,重要な情報構造を大 雑把にすることによって,処理されるべき情報量はよりわずかになり,全体を 把握することがより可能となる。たとえば,製造部門のマネジメントに対して 各工場の日々の詳細な状況を報告する場合には,そのマネジメントによって処 理されるべき情報量は非常に多くなり,また意思決定状況が日々変化するため,

マネジメントに対して高い程度の要求がなされることになるが,詳細な状況が 報告されるのではなく,たとえば重要性・緊急性の高い情報のみが製造部門の マネジメントに報告される場合には,処理されるべき情報量も少なくなり,意 思決定領域も安定することになる。このように,マネジメントに伝達されるべ き情報を詳細にするのか,あるいは大雑把にするのかという情報の凝集の程度 を操作することによって,意思決定領域を人為的に安定させることが可能とな り,情報活動の削減が可能となるのである。

 情報活動を削減するための第 3 の方法は,組織形成に関係する情報を選択的 に把握するという方法である。この方法には,たとえばある一定の組織用具の 投入を考慮に入れないという方法も含められるが,現実において見られるのは,

ある問題が生じた際には,その問題に焦点を合わせた解決策が探求されるとい う傾向である。つまり,マネジメントは全体から問題を探し出そうとするので はなく,むしろ発生した問題に反応するという傾向をもっている。したがって,

探求活動は問題を認知することによってはじまり,問題解決を発見することに 志向している。そしてその問題は,目標を満足させる代替案を発見するか,目

31)

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31) Vgl. Frese, E. : a. a. O., S. 75 f.

32) Vgl. Frese, E. : a. a. O., S. 76.

(20)

標自体を修正することによって解決される。その際,問題の解決策は原則的に,

問題が発生した近辺で集中的に探求され,そして今までの解決策の近辺におい て集中的に探求されるという傾向があり,それに基づいても解決されない場合 にはじめて,より複合的な探究活動がなされることになるのである。

 以上で明らかとなったように,組織形成という意思決定問題は悪構造問題の 性格を有しており,さらにその意思決定問題を解決する企業のマネジメントに は質的および量的能力に限界が存在している。そのような困難な状況の中で,

企業のマネジメントは組織形成という悪構造問題を解決し,組織目標を達成す ることによって,企業の存続を確保しなければならないのであるが,不完全な 情報のもとで,限定された認知的能力を有するマネジメントが代替的な組織構 造の形成という意思決定問題を解決するためには,マネジメントが恣意的に意 思決定を下すのではなく,意図された合理性,すなわち最低限の目的 手段関 係の評価のもとで意思決定を下すことが必要なのである。

Ⅵ.おわりに

 本稿では,実践・応用志向の立場から,組織構造を目的に対する手段として 捉え,組織形成を意思決定問題として把握する意思決定志向的な組織形成コン セプトについて検討を加えた。その際,意思決定志向的な組織形成コンセプト がどのような理論的枠組みを有するものであるのかということを明らかにする ために,まず経営組織論の特徴を概観し,意思決定志向的な組織論の基本思考 を検討したうえで,組織形成問題に対してどのようなアプローチがなされてい るのかを検討したのである。

 すでに明らかとなったように,組織形成という意思決定問題は悪構造問題の

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33) Vgl. Frese, E. : a. a. O., S. 76 f.

(21)

  意思決定志向的な組織形成コンセプトの理論的枠組みについての検討(宮田)

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性格を有しているため,企業のマネジメントがその意思決定を下すのは容易で はないが,企業のマネジメントはその悪構造の意思決定問題を解決し,組織目 標を達成することによって,企業の存続を確保しなければならないのである。

その際,不完全な情報のもとで,限定された認知的能力を有するマネジメント が,代替的な組織構造の形成という意思決定問題を解決するためには,マネジ メントが恣意的に意思決定を下すのではなく,意図された合理性,すなわち最 低限の目的 手段関係の評価のもとで意思決定を下すことが必要なのである。

 また,実践志向のもとで,意思決定志向的な組織形成コンセプトを展開する 際には,現実のマネジメントにおいて実際に組織構造の意思決定がどのように 下されているのかを説明することが求められるのではなく,代替的な組織構造 が目標に対してどのような効果を有しているのかという予測を可能にすること が求められる。すなわち,マネジメントが意図的に合理的な意思決定を下すこ とができるような学問的成果を提示することが必要なのである。しかしながら 本稿では,意思決定志向的な組織形成コンセプトの理論的枠組みを明らかにし たに過ぎない。つまり,実践に対して有用な組織構造の形成コンセプトの内容 そのもの,すなわち組織構造の形成用具についてはまだ検討することができて いないのである。実践に対して真に有用な組織形成コンセプトを提示するため には,組織構造の形成用具の内容を明らかにしなければならないのであるが,

これについては稿を改めて検討してみたい。

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34) 意思決定の合理性についてはフォン・ヴェルダー(v. Werder, A.)の議論合理性(Argumenta- tionsrationalität)の概念も得るところが多い。議論合理性の測定コンセプトにおいては,集団に よって意思決定が下される際に行われる議論に焦点を当て,どの程度深く議論が行われたのか,

どの程度幅広く議論が行われたのかなどといったことに基づき,その意思決定の合理性の程度を 測定しようという試みがなされている(v. Werder, A. : Unternehmungsführung und Argumen- tationsrationalität,  Grundlagen  einer  Theorie  der  abgestuften  Entscheidungsvorbereitung,  Stuttgart 1994.)。これについては,宮田将吾「経営における意思決定と議論合理性―合理性測 定のコンセプト―」経営学史学会編『企業モデルの多様化と経営理論―二十一世紀を展望して

―』文眞堂,2006年,139‑151頁も参照されたい。

参照

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