数種の知能検査の把える知能の質と 教科学力との関係について
学芸学部心理学教室
緒 方 刢
研 究 趣 旨
個々の生徒の知能を規準としてその教科的学力の相対的発達の評定を成就値(学力偏差値一
知能偏差値)や蝋指数簾離×…)によって現わ叩合たと瞠力腱値や教育指数
が明確であっても知能規準として如何なる知能検査の知能偏差値を用いるかによって,成就値 や成就指数が可成り変動することは予想されることである。先に当紀要で小学上学年児童の国 語科の成就値について田中B式偏差値を用v・た場含とWisc言語性偏差値及びWisc動作性 偏差値を用いた場合に見られる相違をとりあげて「知能検査の型式に起因する成就値の変動の 傾向」を叉一面では知能の質と教科学力の関係の検討の試みを載せた。本報告はその第二報告 として中学生徒の知的普通教科と云われる国語,社会,数学,理科の成就段階の評定において 学力面は一科一種類の標準学力検査に固定し片方,知能規準としては田申B式,田中A式,
Wisc言語性, Wisc動作性検査など各々特異性をもつ四種の知能検査の偏差値を用いた場合 を比較し之等の知能検査の把える知能の質と教科の学力との関係を概観しようとするものであ る。約言すると一般に知的普:通教科の学力は一般知能との相関が高いが更にどのような教科の 学力偏差値がどの種の知能検査の知能偏差値とより高い親近性を示すかと云うことを,相関係 数によらないで成就段階群の比較によって検討しようとするものである。
調 査 1
(調査対象)長大附属中学三年生徒のうち田中B式知能偏差値55〜74(上知段階)のもの 90名
(調査方法)個々の生徒について田中B式偏差値と教科の学力偏差値から各個人のその教科 における成就値を算出し上記対象90名のうち各教科毎に成就値の高い方から33パーセントの 生徒(30名)をその教科の高成就群(Over Learner)成就値の低い方から33パーセント(30 名)の生徒を低成就群(Under Leamer)とした。この様にして構成された各教科の両群が示 すWisc言語性, Wisc動作性,田中A式の知能偏差値の平均の差を検討する。
(註)対象生徒を上知段階に限ったのは各知能段階に分けて学力成就値の平均を見た場合段 階順に少しつつ異っていると云う一般的事実があるので比較の厳密を期するためでもあり又,
一103一
附属中学においては生徒(∋知能分布が正規分布を示さず調査対象としては上知段階者が多数容 易に得られたためである。
(結果と考察)田中B式知能偏差値に比し学力が可成り高い高成就群と可成り低い低成就群 の生徒はいつれも田中B式知能偏差値で65−74にに属し両群平均は等しくされている。各教 科毎に構成されている両吟を諸種の知能検査の偏差値について比較すると(表1参照)
表1 高成就群(OL)と低成就群(UL)の知能検査成績
国 OLi群
n (30)
田中B式知能
偏差値
m
語
社 会
数
学
理
科
68.6
9㌃3酬6a6
OL群
n (30)
UL群n(30)
OLi群n(30)
UL群…
n (30)
OL群
n (30)
UL・群
n (30)
68。4
68.4
68.6
68.6
69.1
69.:L
群 差
0.
0.
0.
0.
田中A式知能
偏差値
8工.3
S7.3
73.3 S6.4
79.3 S6.0
74.6 S8.9
77.6 S7.5
75.8 S8.2
79.3 S8.8
76.3 S8.5
群 差
7.0
4.7
1.8
3.0
Wisc言語性
偏差値
73.2
S6.168.4
S5.2
74.O
S5.166.9
S4.974.4
S4.768.7
S5.372.8
S5.970.2
S5.5群 差
4.8
7.1
5.4
2.6
Wisc動作性
偏差偏
59.8
S5.458.6
S5.260.4
S4.8
59.5
S5.459.6
S5.159.6
S4.560.l
S5.159.9
S5.4群 差
1.1
0.9
0.
0.2
憩有意差Pく0.0工 ×有意差Pく0.05(t検定)
a.国語科においては田中A式検査で高成皇国81.3低成就群73・4その差6を示し高成就群の 平均が極めて高い。(Pく0.Ol)。次にWisc言語性検査においても両説の平均差4.74で高成 就群が高い。(Pく0・01)。wisc動作性検査では両面間に差が認められない。
b。社会科においては高成就群は特にwisc言語性及び田中A式検査で低成就群より明確な 優位にあり(Pく0・01)叉wisc動作性では両年間に差を認められない。
c.数学科においては高成就群はwisc言語性検査で平均の高いこと(Pく0・01)が明かであ るが,田中A式及Wisc動作性検査では生塗間に差を認められない。
d.理科においては,高成就群が田中A式,Wisc言語性検査共に平均値は梢高いが有意差 は認められずWisc動作性偏差値では両群全く一致している。
一104一
以上を綜合するとこの調査の如く田中B式偏差値を知能規準とした学力成就値によって編成 された国語や社会科の高,低成就群かWisc言語性検査や田中A式検査の得点において示す大 きな平均差は,之等の知能検査の形式や特色から予想され得る傾向でもある。然し国語科では Wisc言語性偏差値よりも田中A式偏差値に関して,叉社会科では逆に田中A式偏差値よりも Wisc言語性偏差値に関して両酒間の最も大きい平均差が現われたこと及び数学科においても 田中A式よりWisc言語性偏差値に関して強い有意差を示していることなどは,之等数種の 知能検査の形式や内容と諸教科の性質とを関聯せしめて考えると略了解される事実のようであ
る。
調 査 ∬
Wisc知能検査の言語性知能と動作性知能のずれをもつ生徒についてその生徒たちが他の知 能テストや教科の標準学力検査に示す傾向の調査である。
(調査対象)長大附属中学三年生徒のうちWisc綜合偏差値64−70(上知段階)のもの約 100名
(調査方法)個々の生徒のWisc知能検査の言語性偏差値と動作性偏差値のずれを算出し言 語性偏差値一動作性偏差値の差の大きい方から33%のものをX群(言語性群)動作性偏差値一 言語性偏差値の差の大きい方から33%のものをY群(動作擬木)として各群35名を構成した。
このX,Y両群は示す田中A式, B式の知能偏差値及び国語,社会,数学,理科等の学力偏差 値を表(2)に挙げる。
(結果と考察)X群とY群のWisc綜合偏差値における群平均は等しいが言語性知能偏差値 ではX群が平均6・3高く動作性知能偏差値では反対にY・群が6.8高い群である。両群の他の諸検 査における偏差値を比較すると表(2)参照
表2 Wisc言語性,動作性知能のずれ両i群の比較
欝ト検雷…無.
X 群
n(35)
Y i群
n(35)
X _ Y
有意差(t)
m66.5
66.5
0
72.9
66.5
6.4 54.9
61.9
一7.0
田中A式 知能検査
75.1
71.3
3.8
田申B式 知能検査
64.4
65.6
一1.2
国語標準 学力検査
65.0
60.9
4.1
社会準標 学力検査
70.3
67.2
3.1
×
数学標準 学力検査
69.6
63.5
6.1
理科標準 学力検査
65.1
62.3
2.8
×
(註) 馨Pく0・Ol ×Pく0.05 (t検査)
a・X群は田中A式検査ではY群より顕著な平均の高さを示す(Pく0.01)。田中B式検査 においてはY群がX群より僅かに慣れるが平均の有意差は殆んど認められない。
b・教科の標準学力検査においてはX群が国語や社会科に関してPく0.01で数学科に関し てはPく0・05で平均値が高い。この四つの知的普通教科に関してはいつれもX群がY群より
一105一
高い平均値を示しているが,此の調査資料によって推測すれば両群の学力差は祉会科において 最大に現われ次で国語と数学に見られ,理科において現われる差は四教科申最も少いようであ る。田中A式知能偏差値が国語学力との相関度若くは親近性を可成り高く示すようにWisc言 語性検査の知能偏差値は社会科学力との親近性を他の知能テストよりも強く持っているように 考えられる。
参 考 文 献 1.日本文化科学社Wisc知能診断研究法
2.田中教育研究所研究紀要第二号知能を基準とする学力 田申寛一 3.J. Abnormal&Soc. Psycho1.1943,38.
The non intellectual factors in general intelligence. P. Wechsler,
4.Educational Measurement and Evaluation,
Renlmers alld Gage.1943, Harper.
一106一