海 上 重 複 保 瞼 に 於 け る 先 順 位 責 任 主 義 の 問 題
久木久一
鰯︑
海上保瞼に於ける重複保瞼は他の保瞼に於けるよりも容易に起り得るものと言ふことが出來る︒即ち例へば
海を介して遠隔地間の貨物の運逡にありては︑費主と買主により叉は問屋と委託者により︑互に之を知らすし
て︑又は後者は翠に前者の保瞼契約あるを知るのみにて其の契約内審を知らす或ひは前者の契約が不充分なる
の理由に依つて︑同一の積荷が二重に保瞼せらる曳ことは稀ではないのである︒
斯くして同一の被保瞼利釜に封して同一の危瞼を指保せる且つ保瞼期間を共通にせる異れる多激の保瞼契約
が存在すること︑なるのであるが︑此の場合各保瞼金額の合計が其の保瞼便格を超過せざるに於ては殆んど問
題とならないのであるが︑之を超通したる場合即ち眞の意味に於ける重複保瞼のときに︑各保瞼者の填補責任
は如何にして決せらる︑かと言ふに︑各國法の定むるところによれば大艦家の三つに匠別する事が出來る︒
海上重複保険に於ける先順位賢任主義の問題六五
六六
其の一は先順位責任主義(︒︒貰ざ6畠=ひ鳥︒㌔旨ユ傍蹴9碁暑)にして時間的に先順位にある契約より損害填
補の責めに任じ︑第一順位の保瞼者により損害全部の填補あるときは第二順位以下の保瞼者は墳補責任を菟る
めムものである︒此の主義は保瞼の歴史と同様古くより存在せるもの玉如く︑一五六〇年のO巳昌彗︒&︒頃ま薗〇
一五六三年和蘭のO同含彗8牙℃窪ぽ需昌を始め︑一五五六年より一五八四年のい︒O島傷8黛ド竃窪及
び一六八一年のO乙旨彗8曾冨寓母貯︒に規定せられ︑今日我國佛蘭西を始め白耳義・和蘭・伊太利・スペイ
リるさン・ポルトガル其の他多数國家の法律上探用するところのものにして︑曾ては英國及び猫乙の探りし主義であ
る︒我商法三八八條には﹁相次テ激箇ノ保瞼契約ヲ爲シクルトキハ前ノ保瞼者先ツ損害ヲ員憺シ若シ其員捲額
力損害ノ全部ヲ填補スル昌足ラサルトキハ後ノ保瞼者之ヲ員澹ス﹂と規定してゐる︒
其の二は比例責任主義(︒︒蕩節B︒爵一9︒8旨珪窪θ♂P男3宕鼠︒昌亀︒出珠けきσq︒・嘗昌臥")にして時間的順位によ
らすその多藪の保瞼契約全部を等しく有効となし︑保瞼者は被保瞼者に封して自己の引受けたる金額の割合に
慮じて填補責任を員捲するものである︒此主義による國としては端西をあげることが出來る︒一九〇八年の同
國保瞼契約法第七一條第一項には次の如き規定がある︒即ち︑
6︑昌矯9ら2匡o器︒・旨彗8噂o冨自o器ω舞︒舞同曾o巳侮ロ"o目目轟o傷碧¢一9冒εo誹一〇口ρ鼠o×幽o窟9昏o冨8Bヨo
霧誓凱︒冨二三9冨B8け彗け8冨一山$8目ヨ窃器窪﹃伽8㌔.(重複保瞼フ場合昌ハ各保瞼者ハ自己ノ保瞼セル金
額ト総保瞼金額トノ割合昌ヨリ損害昌封シ責任ヲ員捲スルモノトス)
1) 2) 3)
Danjon,Trait6dedroitmaritime,2e6d。, ArnoUld,OnMarineInsurance,iothEd., II.G.B.a.E釜788.
Ig29.Tom.IVp.272.
19刎,Vo1.Ip.459.
而して此の規定は運逡保瞼(海上保瞼を含む)以外に封しては強行規定となつてゐる(同九七條)そして此
の比例責任主義は一九二五年の佛蘭西保瞼契約法草案(三〇條)にて探用されたものであり︑火災保瞼約款に
のは各國共此旨規定せるもの玉様である︒海上保瞼に於ては先順位責任主義を探れる各國に於ては︑同時に締結
された契約にはその主義を適用し得ざるを以て︑此の場合は先順位責任主義の例外として比例責任主義を探つ
ろ てゐるのである︒亦佛蘭西の如く法律上は先順位責任主義であり乍ら實際に於ては異時契約に封しても同時契
わ約の原則を撞張して此主義に擦れる場合がある︒
其の三は蓮帯責任主義(︒︒矯ゆ幕日︒警置切島審﹁凶昼O⑦墨目89巳告占&﹀̀茜嵐魯§σq︒・寓冒臥巳である︒この主義
に於ては契約の同時異時締結を問はす等しく有効なりとする瓢並に各保瞼者が保瞼者内部に於て責任を分捲す
る鮎に於ては︑比例責任主義と異れるところなけれども︑各保瞼者は被保瞼者に樹して連帯債務者O︒︒・9昆㍗
魯巳含魯としての地位に立つ瓢に於て異る︒又此の主義は英國に於て一七六三年Z睾ξ<.男6峯事件に於て
のラ竃9窃密=卿により確立されてより一九〇六年の海上保瞼法に規定せられ︑同法三二條二には次の通の規定(
す︒
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(ε島︒器ψ霞巴"昌巳8︒島︒℃o鵠昌o昏窪ミ一︒・6領o︿凶晋︒・隔B鎚ユ鍼ヨ9団ヨ〇三坤oヨ酋ず︒幽諺霞自吻写g︒口島oa窪器
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海上重襖保瞼⁝に於ける先順位貴任主義の問題宍七
4) 6) 5) 7) 8)
例 へ ば 我 東 京 火 災 保 瞼 橡 式 會 鵡 約 款 曇20.
例 へ ば 我 商 法 壱387・
(k)dedeCommercesArt.359・
WeenseL/assurancedechoses,Ig27・P・394・
ArnoUleqOP・ci㍉P・459・
六入
ラ島騨}03..更に第八〇條二には次の規定があるo(..≦才誘豪毬り霞9ゆ︒・︒器二昌切託巴ξら︒ロ窪︒肖田ロ§昌︒︒︑89写2円窪扉げ2a︑器ぴ︒暑︒窪窪ヨo︒鼠9乱昏︒
o昏自ぎ肋ξ巽り噂88昌鼠9けo量99︒ぴζ8昏㊦一〇器冒冒o箸噌鑑o昌8昏09︒30き鈴ho鴨ミ寓9ぽ冨甥薗げ一〇§告鐙訂0
60昌竃9Ω㌦
の猫乙に於ても一九〇八年商法を改正してこの主義を採用してゐる︒米國は普通法上英國に微ふものなれど︑
恥保瞼誼券上に特別約款を以て先順位責任主義によつてゐるのが通常である︒
以上の如く重複保瞼に關しては大膿三種の主義を認むるが︑各々其の特質があり不便も俘ふものであるが︑
今日では最後の主義即ち蓮帯責任主義を以て最も適當したものと見てゐる︒然し乍ら他の主義殊に先順位責任
主義は今荷多敏國家の探る所であり︑我國と密接な關係を有する米國に於て此の主義が實際に行はれてゐる以
上︑假令我國の實際上英國のとる主義即ち蓮稽責任主義による場合多しと雌も︑我商法の規定を無用覗し之を
顧みざるは當を得たものと言ひ得るであらうか︒
一一︑
扱て然らば︑重複保瞼に於て先順位貴任主義の行はる襲に至つた理由は如何︑それは重複保瞼の成立を禁止
せんとしたことにある︒佛蘭西商法第三三四條第二項以下に次の次き規定がある︒即ち︑
9)H。G.B.馨787.
Io)WintertMarineInsurance,IglgP・163‑・4・
Huebner,MarineInsuτan㏄,=920P・71‑2・
噺
︑.臼♂葺o器g・嘆彗88ヨ島"け等06舞置言噌象︒"oo︑自謬︑鴇92巳ら9議臨旨巳o讐鼠り︒ξ鎚8︒・o旨鳥傷昏o
曾8昌oく鑑o謹牙一ひ誓"?"2x臨o尉翁霞かoo︑自矯9窪α6=民oロ風島搾5︒︒翁錫旨鶉o︒・彪88︒噂幽く3一"幕傷信臼一〇昌¢舞
一9覧島誉窪け9.︑
り然らば何故に重複保瞼を禁止せんとしたのであるか︑国Baσq︒昌はかの有名な﹁保瞼及び冒瞼貸借論﹂第ゴ
章第七箇に﹁同一物を再び保瞼するを許されるか﹂(図︒・貯出需§置曾蜜器櫛8霞魯曾環幽︒♂冨日伽ヨ︒6ぎω︒噌)
わと言ふ題の下に﹁同一物を同一危瞼に封しては再び保瞼するを得す﹂となし︑更に﹁實際上危瞼に曝されたる
もの玉みしか保瞼することを許されざるを以て︑從つて第一の保瞼者に依り既に保瞼せられたるものを第二の
助保瞼者により保瞼せらる玉を禁ぜらる玉こと玉なるのである︒﹂と言つてゐる︒弱︒巳鎚も9蔓は同節の8覧騨
同碧8に於て﹁保瞼者が自己の保瞼せるものを第二の保瞼者により再保瞼することを得るとしても︑被保瞼者
は同一物を再び保瞼し得ることエはならない︒既に保瞼せるものを再び保瞼することは被保瞼者に許されな
のい︒蓋し彼は最早何等の危瞼をも冒すものでないから︒されば第二の保瞼は不法であり無効である﹂となし
のてゐる︒一九〇八年の改正前の猫乙商法は先順位責任主義を採れるを以て︑<︒凶鵯は第七九二條の註繹に於て
この規定は既に遠き以前より猫乙海港都市に行はれたものであると言ひ︑更に後の日附の保瞼を無効とせる一
の七三一年のハンブルグの保瞼及海損條例を引用して後言ふには︑﹁此規定の根擦は既に危瞼に曝されたる物の全
債格を保瞼せる被保瞼者は︑更に保瞼する動機となれる利釜を訣くと言ふ黙にある﹂(090旨巳象︒器吋国窪㍗
梅上重複保瞼に於ける先順位貴任主義の問遮六九
1)2)3)Emerigon,Trait6desassuranceetdescontratsalagrosse.Nouvelle6d.
parBoulay・Paty,r827,Tom.1,p.2L 4)Emerigon,・P.cit.,P.22.
5)Voigt,DasdeutscheSeeversicherungsrecht,z887,S.87ff.
6)Tite16,Art・3,
七〇
旨ヨ巷σQ豪讐皇ユp魯︒︒・︒噛︒告窪く︒鼠︒ぽ§ρ昌87島窪曾旨9げ︒げ︒鼠房住窪く色︒昌≦︑︒昌与g轟σq畠8αQ︒剛欝巳g窪
わO茜︒諺冨己窃歪9禽く寓q︒尊魯旨﹃qσq︒げ壁警齢冨び"口臥昌窪ぎ§霧︒臨魯εと︒更に亦ピ︒三ωも斯る場合第二
の保瞼を附するに必要なる利釜(︼)器臨9︑﹃島︒国写σq︒ゲ暮αq岱臼昌窪︒昌く︒鼠臼︒2轟冨σqH黙︒・日似¢︒・貫︒比9曾島些︒
めH三〇器︒︒沼)を訣くるものと言つてゐる︒
斯くの如く︑重複保瞼禁止の理由として學者の読くところは︑被保瞼利釜(H茸窪霧⑦)の訣如と言ふ鮎にある︒
然し乍らこのH暮︒器ω器なる語を表︻§は読明して︑此の語は甚だ危瞼な使ひ方がなされてゐるので︑此の場
合蝕では被保瞼利釜く︒邑︒冨旨昌σQ︒・圃暮窪・︒・器の意味ではなく︑機縁︑根撮︑動機(︾邑器︒・りO醤巳L≦︒穿)の意に
の解すべきものとし︑﹁保瞼契約者は既に保瞼を附したるときは︑更に保瞼すべき何等のぎ§︒︒︒︒︒︒即ち理由はな
いであらう︒法律は斯る(殆んど信擦すべからざる)根擦を促へ來たつて第二の保瞼を無効としてゐるものと
勒思はれるしとしてゐるが︑同氏の如く斯く迄に同昌9誘器︒の意味を解繹するの要はないであらう︒此語は依然
被保瞼利釜の意に解して差支へはないではなからうか︒
然らば第一の保瞼により被保瞼利釜の全債格を保瞼せるときは︑更に第二の保瞼により捲保せらるべき其れ
以上の被保瞼利釜は存在し得るや否や︑もとより之に封しては否定的の答あるのみである︒それは超過保瞼に
粉於けると同檬の理由を以て読明することが出來る︒然し乍ら此の場合﹁保瞼契約者は依然被保瞼利釜を有する
や叉は第一の保瞼により之を失ひたるものなりやの問題は此れと匝別せらるべきものにして︑彼は依然被保瞼