マ
ル ク ス 慣 値 法 則 と 慣 格 形 成 の 問 題
南
亮三
K 良
要目
}︑開題・マル〃ス慣値法則の意義及び特性
二︑商品債値の二要素・費用債格と絵剰儂値
三︑生塵債格の形戊と亭均利潤牽の形成
四︑謂ゆう亭均利潤蛮・の謎と債値法則の破綻
五︑市揚債値と市場債格の形成及びその背反
六︑便絡形成の根本動因としての赴會的需要の概念
慣 値 と 債 格 と の 關 係 を マ ル ク ス が 如 何 に 解 繹 し ︑ 懐 力 現 實 の 債 格 形 成 と 彼 れ の 償 値 注 則 と が 如 何
に 一 致 す る か に 就 い て は ︑ ﹃ 資 本 論 ﹄ 第 三 巻 に そ の 読 明 が 與 へ ら れ て あ る ︒
マル〃ス儂値法則と儂格形成の問遮三三
商學討究第三巻(上)三四
乙\に改めて云ふまでもなく︑﹃資本論﹄第一憲に於てはマルクスは資本家的生産行程を取扱ひ︑
第二恕に於ては流通行程を︑而して第三巻に於てはその綜合として︑資本の登動行程を全膿として
論じてゐる︒即ち彼れは第三恕に於て市場流通の基本現象をば︑彼れが前に掲げπ憤値學説並に鯨
剰慣値學説と關連せしめて説いてゐるのである︒最初の二懇に於ては﹃商品の領値﹄といふ乙とが
中心問題であも︑從つて﹃商品の償格﹄といふことには時折解れてゐるに過ぎない︒然るに第三巻
に於ては債値と慣格との關係が中心問題となう︑如何にして債値が償格へ溶解するか団詳細に説
明されてゐるのである︒然し吾々の見る所を以てすれば︑マルクスの所説はなほ甚だ不充分であつ
て︑疑ひを挾むべき除地が多々あるやうである︒本稿の目的は即ち此の︑マルクス縄濟學に於ける
最大難關の一たる償値と償格との關係それはマルクス研究の二大権威たるゾムバルトとべー
ム・バヴエルクとに依つて根本的に異なる解繹が與へられて以來︑學者の間に論箏が絶えないー
を究明し︑併せてマルクスの著作の正しき理解に貢献せんと欲するに在る︒
先づ最初注意して置かねばならないことは︑他の如何なる慣値論者に於けると同標にマルクスに
於て竜亦︑﹃慣値﹄と﹃償格﹄とは同親されてゐないといふとこである︒一般に商品の慣格といふ
ときは具禮的な商品の分量を意味する︒即ち債格は吾々に︑或る財を提供する乙とに依つて確定さ
れる他の財の分量叉は貨幣額を示す︒之に反し︑慣値は一つの抽象である︒即ち吾々が商品の領値
といふ揚合には常に領格形成の根基となるところの統制原則を考へる︒﹃慣値法則﹄は一切の慣格
形成に劃して決定的且つ根本的なる要因を示すべき竜のであつて︑慣格形成の根本法則たる領値法
則が實際生活上諸々の事情に由つて︑即ち例へば︑競璽や濁占や聯合や租税やに由つて︑如何に修
正されるかといふことを示すのは﹃債格論﹄の任務である︒凡ゆる慣値學説の試金石は︑果してそ
れが無限に多様且つ複⁝雑なる個々の慣格現象に封して決定的な原則を提供し得るか否かに在る︒而
してそれ以外の目的を債値論は一般に有つてゐないのである︒
此の目的を達せんがπめに今日迄の慣値論は大膿二つの方向を取つて進んだ︒その一は所謂﹃客
観主義的方向﹄であつて︑何等か一つの客観的な大さ︑即ち例へば商品の生産に充當された勢働の
一定分量︑叉は生産費等を求め︑之を以て慣値の大さに劃する決定標準であると読明する︒その二
は所謂﹃主観主義的方向﹄であつて︑個値の大さをば消費者の主観的な願望叉は評慣の所産として
説明する00︒
0り債値論上の客観主義と主観主義に就いては︑拙著﹃流通経濟の原理﹄改稿版第五†五節︑及帆﹃纏濟學の基礎的諸間題﹄
第三篇第三節︑謬照
マル〃ス債値法則と債絡形成の問題三五
商學討究第ニニ巻(上)三六
マルクスは云ふ懐でもなく此の第一の方向に厩する︒彼れは商品交換の事實から登足し︑多くの
商品がそれに﹃共通なる竜の﹄に基づいて交換されるといふ事情から推論する︒商品が交換關係に
於て互に等しいときる\ところの此の﹃共通的なもの﹄をマルクスは﹃慣値﹄と名づけπ︒而して
此の︑商品に共通的に含まれた肚會的必要勢働時間1その所謂﹃慣値の實膿﹄≦︑︒噌厨昏︒︒什書Ni
は︑マルクスに擦れば︑債格の眞實なる究極の調節者であるω︒慣格に術ほ他の要因が作用すとい
ふ乙と︑從つて慣値と憤格とが事實上に於て背離すといふことは︑償格が詮ずる所︑債値の大さに
依つて決定されるといふことを妨げる竜のではないのである︒
ω拙著﹃流通繹潴の原理﹄改稿版第五十六節︑及び﹃経潜學の其礎的諸問題﹄第・六篇第二節蓼照
此の黙に就いてヅムバルトは異なる見解を持し︑マルクスに於ける領値法則は全然現實的な妻當
性を有せず︑そはた団纒濟學的思惟の補助手段πるに過ぎないと論じてゐるω︒が︑吾々は此の見
解に同意することを得ない︒蓋し斯く考ふることはマルクスの著作の全禮の精神と合致しないから
である︒之に反し︑彼れの便値怯則は自然法則的な力をすら有するのであつて︑此のことからして
彼れがその領値概念の現實的な意義を考へてゐπといふことが解かる︒試みにマルクス自身の言葉
を示すと︑
﹃市場はそれ故に︑その關係並にそれを規定する條件が︑盆々︑生産者から濁立しπ一つの自然
法則の形を取るやうに︑絶間なく援張されねばならない﹄㈲︒
同様に他の揚所に於てマルクスは
﹃肚會的必要勢働時聞は規定的な自然法則として強暴的に作用する﹄③
と説いてゐる︒之に由つて見れば︑償値と慣格との關係はゾムバルトの解繹よう竜よら嚴密なる竜
のがある︒マルクスに猿れば︑債格は個々の場合に於て髄かに債値と一致しない︒即ち個々の商品
の償格は常にその慣値以上に叉は以下に在る︒然し孕均的な市場慣格に取つては勢働の慣値はその
重力の中心として作用するといふに在る︒
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此のことは術ほ次の諸所に於て明かに示きれてゐる︒
﹃商品の慣値の大さはその交換關係を規定するoり︒
﹃種々なる商品の慣格が常に如何なる仕方に於て先づ第一に相互に確定せられ叉は規定せられよ
・マル〃ス債値法則と慣格形成の問題三七
.商學討究第三巻(上)三八
うとも︑慣値法則ばその運動を支配する︒そのもの\生産に必要なる勢働時間が減ずる所では慣格
は低落し︑それが塘加する所では慣格は昇騰する﹄②︒
﹃種々なる生産部門の商品がその慣値で責れるといふことは固よう唯だ︑その債値がその憤格を
同轄し︑そしてその不断の高低に一致せしむる重黙であるといふことを意味するに過ぎない⑧︒
﹃質的に債値と異なつてゐる領格は不合理な矛盾であるω︒
﹃憤格は通常(コo§9年巽)︑貨幣で表現され穴債値に外ならない﹄㈲︒
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尤もゾムバルトと同標なる解繹を儒すものはマルキシメトの中にもある︒然しそれは極く少歎の
竜ので︑大多藪のものは之れを非難するのである︒例へばコンラアド・シユ・・︑ットは債値法則を以
つて﹃現實の説明に豊する一の假定﹄であるとし︑﹃吾々の思惟に映くべからざる一概念﹄である
と解繹してゐるω︒然し之れに蜀しては多くのマルキシストは極力反封する︒例へばフオン︒ラン
厚 デは曰く︑﹃質的に種々異なる商品を測定し得べき大さとして吾々に表はすために必要なる︑吾々
の思惟に關する一法則ではいな︒慣値法則は寧ろ甚だ現實的な性質を有つものであつて︑そは人間
行爲に關する一自然法則である﹄と︒ラファルグも亦た同標に云つてゐる︑i﹃マルクスは決し
て假定を立てπのではない︑又彼れは作b話を工夫したのでもなかつπ︒﹄更に注意すべきは最
も專門的なるマルクスの解繹者エンゲルスの︑ゾムバルトやシユミツ㍗に封する論評である︒ゾム
バルトの解繹はエンゲルスに取つては廣きに失するものと見える︒マルクスの便値法則は竜つと狭
く︑もつと嚴密に解せらるを適當とする︒即ちエソゲルスはゾムバルトの解繹に劃して曰く︑﹃余
の見る所に篠ればか\る解羅は︑此の法則から支配された肚會の経濟的登展段階に封して有する債
値法則の全禮の意義を決して墨してゐない︒﹄まπシユミツトに封しては曰く︑﹃債値法則は資本家
的生産に取つては︑一の輩純なる假定としてようも遙かに重大なる且つ特定の意義を有つてゐる﹄
と②︒
ωo§・巴︒︒音三9u一・u・器冨9三翻實︒節貫器・&審︒・罫糞.蓉︒を・話・︒・︒ド寄器浮断計酋'闘ぼσ・も田﹄
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さ れ ば 吾 々 は ︑ マ ル ク ス の 慣 値 法 則 は 實 際 上 ︑ 償 格 運 動 を 説 明 せ ん と す る 現 實 的 な 意 義 を 有 つ て
マル〃ス債値法則と債格形戊の問題三九
●
商學討究第三巻(上)四〇
ゐるものと断定することが出來る︒個々の商品の償格が商品の債値よ6背離してゐる揚合に於て
も︑常にマルクスに從へば︑償格運動は慣値法則に適合すべき竜のである︒而して此の限りに於て
は︑マルクスの見解はリカ!ドのそれと略ぼ同じである︒尤思リヵー13は絶劃的な債値尺度を見出
すことから離れて︑商品の相劃的な交換償値のみを問題とし︑その憂動に劃しては勢働量が決定的
な竜のであると主張しカのである︒即ちリカードは自から之れを言明して曰く︑
﹃余が讃者の注意を乞はんと欲するところの研究は︑商品の相封的慣値に於ける攣動の敷果に關
するのであつて︑それらの絶封的債値に係はるのではない0り︒
﹃余はπ里︑それら︹商品︺の相封的慣値が︑それらの生産に費やされた勢働の相劃量に依つて
支配されるであらうことを主張するに過ぎ澱﹄②︒
交換慣値に就いてはマルクスも亦π同様に︑之れを相劉的に解繹してゐる︒そのことは次の一句
に櫨って明かである︒
﹃一商品の慣値が各を他の商品の償値に封して有する關係は︑前者の生産に必要なる勢働時間が
後者の生産に必要なる勢働時間に劉して有する關係に等しい﹄㈹︒
た団此の相封的な交換慣値の他に︑絶劉的な慣値の實禮を考へたる黙に於て︑マルクス説はリカ
ー ド 説 と 異 な つ て ゐ る の で あ る ω ︒
ω 匹 8 乙 P 即 ぎ 9 覧 窃 o 職 ︾ 巳 三 〇 巴 国 8 き ヨ ざ O o 目 臼 .肋 9 . も ・ 同 9
ラ ¢ 閑 げ 聾 己 P ゆげ 崔 弓 ℃ ・ も心 ゆ '
③ 9 鷺 き U 謎 内 昌 凶母 ㌍ 団 創 . 蝋 層 ㎝ ・ ◎
ω 拙 著 ︑ 縄 濟 學 の 其 礎 的 諸 問 題 ︑ 第 七 篇 第 四 ︒ 五 節 蓼 照
今一つマルクスの償値法則に就いて注意すべきことは︑その妻當範園が著しく限定されてゐると
いふことである︒
即ち
一︑その敷果が勢働によつて仲介されない商品︑例へば土地ω
二︑全然螢働から成立するが︑然し任意に再生産し得ない勢働によつて造らる㌧商品︑例へば古
代の遺物︑名匠の美術製品②
斯くの如き物品は一定の償格を有つが︑領値を有たないものである︒マルクスは斯く︑その償値
法則を雨面から限定してその要當範園を著しく狭めカ︒然しマルクスに取つて重要なることは︑個
々の慣格原則を説明せんとすることではなくて︑雫均的市場慣格に就いて慣値法則の妻當性を謹明
せんとすることであつπのである︒
マル〃ス債値法則と債格形成の問題.四一