−− j −
価格形成と企業活動の評価問題
石 津 英 堆
1 ま え が き
現段階におけるソ同盟の主要な経済課題ほ,新綱領の示すように,共産主義 の物質的=技術的基礎′を創設することである。来るべき20年のあいだにこの野 心的なプログラムを実現するには,「国を電化し,これを土台として,国民経 済のあらゆる部門で技術,製造方法,社会的生産の組織を改善すること,生産 工程を総合機械化し,ますます完全に.か−トメーンヨン化すること,国民経済 にイヒ学を広範に応用すること,経済的効率の高い,新しい生産部門と,新しい 種類のエネルギ・−や材料をあらゆる手段で開発すること,天然資源,資材,労 働を全面的かつ合理的に.利用すること,科学と技術を有機的紅結合し,科学・
技術を急速に進歩させること,勤労者の高い文化=技術水準を達成すること,
(1)
もっとも発展した資本主義諸国を労働生産性の点で大きく追いこサこと」が必 要とされる。この長期の経済建設課題と並んで,当面のソ同盟は国防費負担の 増大,国民の消費財に.たいする欲求の増大,社会主義諸国との経済協力の問 題,低開発国への援助問題など,解決すべき多くの課題をかかえている。
現行7ケ年討画が1959年に.出発していらい,ソグーエト経済の発展は必ずしも 当初の予想通りに進んでいるとはいえない。現にソグヱト経済の成長率に.は鈍 化の傾向がみられる。その最大の原因が農業生産の著しい不振にあったとほい え.,鉱工業生産の成長率も順調に伸びたとはいえない。ソグヱト経済ほ壷大な 転換期にあることは確かである。もちろんこのような変化を生ぜしめたもの は,■経済発展の蚕点のおき方の変化と,計画化の性格の変化にあったこ.とは周
(1)日本共産党中央委員会出版部,『ソ連邦共産党帯22回大会の文献』,下巻,237〜238ペ
ージ。
第37巻 第6号
−・−ク ー
750
知のとおりである。従来の生産力増強主義から,国民生活の上昇に.蚤点を移行 し,生産と労働禿けでほなく,消費と余暇が志向される匪二.つれて,社会主義も また新しい問題に直面せざるをえない。その意味からすれば,ソヴェトにおけ る成長率の鈍化傾向は,成熟把ともなう停滞としでではなく,新しい跳躍のた
めの調整の産物とみること.ができよう。
当面の要求にこ.たえながら,しかも着実に「恩かな社会」を建設してゆくに は,従来に.もまして積極的に.新しい技術を導入し,製品の品質を改善し,製品 の多様化をはかるとともに.,天然資源,設備,資金,資材,労働力などの最も 合理的で効果的な利用,ムダと損失をはぶくことがいっそう必要とされる。い いかえれば,生産活動の患的側面から質的側面に,つま、り「高いテンポ」より
は,「最小の支出で最大の成果をあげるこ.と」紅いっそう多くの関心を払わざ るをえない。現にソ同盟ではこれらの問題をめぐって:,経済政策の面でも(た と.えは管理機構,計画化方式,報賞制度の改革なと),あるいは経済理論の両 でも(たとえば価格形成,投資効率,減価償却率,賃銀,利潤,労働生産性な
どに関する論争)大きな変化を生じている。
社会的欲求をより効率的に.みたサ紅ほ,経済指導と計画立案の不断の改熟 科学的基礎づけをもつ経済決定が必要となる。フルレタヨフがかつて指摘した
ように,「実生活そのもぁが,計画立案と経営指導に,新い、,はるか粧高度 の科学的基礎づけと,経済的計算とを要求しているのである。計画の作成と阻 済的方策の承認に先立って,経済と技術を発展させる問題を深く科学的に検村
(2) しなければならない。」計画立案の科学的水準をひきあげることは,精密科学
としての経済学に課せられた重要な課題である。しかし従来のソグヱト経済
ほ.,経済建設の現実的な諸要求匹たいしてむしろ大きな立ちおくれをと・つて た。最新の科学と技術と紅よって可能とされる社会的欲求を最も合理的な方 で充足するに.ほ,何といっても綿密な経済計算がなぐてはならない0最小め 出でもって社会に.とって最大の成果を達成すること,こ.れは経済建設の,社
(2)前掲苔,下巻,90ぺ−ジ。
価格形成と企業活動の評価問題
− β −主義経済指導の,そして計画立案の不変の法則であると.いわれる。この法則の 実現鱒,もとより社会的生産がきびしい計算に・もとづいて指導され,生産の組織
と技術の種々のバ.リアソトのもとで冬られる支出と結果との絶えざる比較に・も とづいて指導されるばあいに.のみ可能である。「社会主義とは計算である」−
というレ−エソの名言は,いまやいっそう重要性をましているのである。科学 的な基礎づけをもつ経済決定一企画,計画,実施の決定−・の質を高めるという 課題は,結局のところ,生産的支出と結果紅関する測定と比較の方法を改善す るこ.と紅ある。これについてのシグェト経済学の立ちおくれは,社会主義のも とでの生産的支出の科学的に基礎づけられた数巌的決定方法の欠除としてあら われている。要するに.,社会主義的企業によっでつくられる生産物価値の大き さについて十般的に承認をえた計算方法がまだ存在しないのである。価格形成 論争や投資効率論争は,こうした要求にこたえ.るソヴヱト経済学の最初の動き を示すものであったし,またり−ベルマン教授の提案に.始まる「利潤率論争」
はその最新の動きを示すものである。
($)
リーベルマン教授が1962年9月9日の『プラウダ』に「計画,利潤,報賞」
という論文を発表し,そのなかで企業の活動の効率をあらわす総合的指標とし て利潤率を採用し,−その利潤率の直さに応じて,企業の全労働者のうけとる報 賞金を決定すべきだという提案をしたことが,「利潤率論争」のきっかけとな
った。『プラウダ』の呼びかけに.こたえて,アカデミ−・会員のネムチノフ氏や トラぺズエコフ氏がこの提案を支持するとともに.,さらに㌧新しい提案をだし,
広くこれがソヴ‡ト経済学界でも論争の対象とされるに.至った。しかし利潤導 入論ほ必ずしもリ−ベルマン教授の提案に.始まるものではなく,その歴史はか なり古い。1953年といえほスターリンの死去した年であるが,ほやくもその年 の9月にフルシチョフほ「物質的関心の原則」の導入を提唱しており,そのと きいらい.スター.リソ時代に.は禁句にも等しかった「利潤」概念が問題にされる に至った。・その後1958年7月に経済学者アトラスが,雑誌「経済の諸問題」に
(3)この論文の邦訳に.ついて■は次のものがある。時事通信社,『世界週報∬,1962年11月13
日弓,35′・叫■38ぺ−・ジ。
算37巻 第6号
− イ−= 752
おいて.利潤率を企業活動の効率指標とすべきことを提案し,続いてエリーベルマ ンが「コムニスト」の1959年第1号に.,「ソ連工業計画遂行の諸横粁についで」
と題する論文を寄稿して,企業は5ケ年ないし7ケ年にわたって、それぞれ 企準自体の「長期展望計画」を白壬的に・立案しなければならないこと,企業の 能率を評価する客観的な基準ほ,第1に周定フォンドおよび流動フォンドに.た いする生産鼠第2に・労働生産恥 第3に採算制(またほ採算率)でなければ ならないと主張した。ジーーベルマンのこの提案はその後も基本的に.は変化して いない。かれの提案が62年に.プラクダ紙上に.発表され,広く論争の対象として 取りあ喋られるに・至った事情の変化こ・そ注目にイ撞1、する。
野々村教授が指摘されるように.,「■1980年代に成立したソヴェト計画経済シ ステムのひとつの特徴ほ,ヰ央から下部へ・おろす計画指標が「総生産高.」指標 であったこ.とであり,下・布にある企寛がこの指標を遂行または.超過遂行した程 度に応じてニ,企業なり,企業のなかの生産集団なりモ個人への報盈額がきめら れたことである。これに.よって社会全体の利益と個人の利益が合致し,個人ほ
(イ)
報賞をうると同時に,社会の総生産が上昇するとされてきたのである。」
上述の指摘にあるようぬ.,従来のソヴェトの工業企業や国営農場では,企業 活動の効率の決定的な基準は総生産高とされ,企業め採算性ほ経済計画の基本 的な推進力とほみなされなかった。そのためこのシステムほ.,ソヴ.ヱト工業生 産力の急速な発展性大きな貢献をなしたが,その反面では企業の非能率を隼む 原因となった。生産力増強主義に即応せるこのシステムほ,経済発展の重点の おき方の変化紅ともなって,2つの大きな欠陥を漸時明るみへ・出してきたので ある。
2つの大きな欠陥とは,多くの人びとが指摘す・るように次の点に.あらわれ1て いる。欝1紅総生産高とそれにもとづく報賞制度は,各企巣の生産能力を過少
紅申告させる傾向を助長することである。企業長がその能力を額面どおり申管 し,それに.もとづいて上から計画目標が与えられると,何らかの理由でそ那が
(4)野々村一風「利潤導入論の歴史的意義」,週即東洋経剤,19年4年12月12日啓
ぺ−ジ。
価格形成と企業活動の評価蘭題 】一 β −・
遂行されないような事情が生ずれば,報賞金を失う恐れが生れる。前もって:そ のような恐れを生ぜしめないため紅ほ,生産能力を実際の能力以下に申告し て二,生産計画目標を低くしておくことが望ましい。第2に.総生産高指標が計画 目標としてご与えられるばあい,たとえば金属のように目標が重恩で与えられる ばあいにほ,企業長はできるだけ軽量の製品の生産を抑え,重量のかさむ品種 を集中的紅生産することに.なり,また繊維品のように計画目礫が長さで与えら れるばあいにほ,小幅のものを優先的紅生産して,広幅ものほ.過少に・しか生産 せず,また目標が金額で与えられるばあいには,価格の割高な製品に・力を注 ぎ,高価な資材を痩用すること紅なる。このばあいに.は,社会的需要に見合っ た製品の生産と供給が行われず,商業機関では「死せる在庫」を徒らに.増加さ せるという重大な結果を招く。総生産高指標とそれにもとづく報賞制度のもと でほ,諸企業が高度の計画目標と新技術の導入と製品の品質改善,つまり生産 効率を最大限に.高める保証はない。「利潤導入論」が発生し,その論争が活発
となった基本的原因はここにある。
ノダー方卜計画経済レステムがもつもうひとつの特徴ほ,各企業にたいして固 定設備が無償で与えられることである。従来の見解でほ「フォンドの撫償制」
こそ社会主義経済の優位性を具体的に示すものであるとされた。ところが,こ のような「フォンド無偵制」′を前提としたばあい,各企業は総生産高を増加す るために,できるだけ多くの設備や資材を国家から受けとる方が有利であるか ら,当面の生産に不必要な固定設備や資材をかかえこみ,結果的にそれらを遊 休させたり退蔵させたりする。いまや高い発展段階に到達したソヴ.ヱト経済 は,総生産高指標と鮒員フヵソド制との組み合せによって生じたこれらの槻本 的な欠陥の克服を迫られている。豊かな社会の建設という長期展望計画を着実 に推進Lてゆくにほ,ひとつに.は管理機横や計画化方式の改革が不可避的であ
り,それらは現に遂行されている。そしてもう、ひとつには価格制皮の改正およ びその基礎になる価格形成の理論的解明が検討されなくてはならない。リーベ ルマンの提案する利潤率指標とそれにもとづく報貨制度を実施に移すとなれ
\ほ,まずもって利潤率の正確な規定が前提匿なるし,それに.ほいかなる価格体
第37巻 第6弓 754
ー 6・→系をとるべきかを決定しなくてはならない。もちろん,リ−ベルマンの提案が 全面的に支持を受けているわけではない。社会主義のもとでの利潤の導入に否 定的またほ少くと、も懐疑的な態度をとる人びとが存在して:いる。「社会主義経 済と利潤」において岡稔民は,社会主義経済と利潤との関係についてのマルク ス主義の伝統的な観念をノ険討し,そのさい利潤概念には三つの側面があること を指摘され,「階級所得としての利潤」は社会主義にとって無縁の存在である が,「価格と原価との残差余剰としての利潤」と「剰余価値の−・般的,普遍的 表現として−の利潤」友〉るいは「社会の純所得としてこの利温」は社会主義におい
(5)
ても否認できないとしておられる。従来のソヴ.ェト経済は「価格と原価との残 差余剰としての利潤」を凝視してきたが,同氏の表現に従えほ,それは「■社会 主義経済の一・般的・普遍的特質(ソグェト経済が利潤のための生産ではなく社 会的欲求充足のための生産であること)の現われではなくて,社会の純所得と
しての利潤(社会主義経済が否認するわけにはゆかない「利潤」)を実現する特
し6、 定の様式,特殊な財政制度と価格政策の帰結」であった。ソヴ.ェト経済が利潤
にとらわれず紅発展してきたかにみえたのは,「一国民経済的収益性が必ずしも 企業の収益性として表現されないような財政制度と価格体系が存在してこいたと
(7) いう事実の帰酷」なのである。社会的欲求の充足をより効率的に行うには,
「社会の純所得としての利潤」と「企業の純所得としての利潤」の融合をはか ることが不可欠であり,その完成にほ価格形成の原則が最終的に解決されなく てはならない。ノダェt・の利潤論争の中心問題は,今でほもはや利潤または利 潤率という指標の地位を高めることでほない。企業活動の評価基準として利潤
または利潤率を唯一・の指標とみることに反対する経済学者や経済管理者はいて も,こ.の指標を軽視してよいとする人ははとんといないよ・うである。筆者はこ
(る)
こでほ生産価格論の有力な支持者である調.A.バ一グの提案を主に検討し,か れが主張している価格形成原則を中心軋ソヴヱトの現状を展望することにした
(5)岡稔,「社会主義繹済と利潤」,『経帝研究』,第15巻第1号(1964年1月),16ぺ−汐0
(6)岡氏,前掲論文,17ぺ−汐。
(7)岡氏,前掲論文,17ぺ−・ジ。
(8)J7h A・Baar,CoBePZLTeZICT80BaTL・3血OHOMmeCZ(Me MerO月Z,IyTTPaBJ2em描 二郎■
po都1bIM XO3兄貴cTBOM・1964,MbcKBaこ
価格形成と企業活動の評価尚題
− 7 −い。
\2 投資効率決定の方法
最小の支出で最大の成果をうる咤.は,な紅を,どのように,どこ紅建てるか についての最も正確な計算なし紅ほ,絶対にすまされない9ところが,つい最 近まで大部分の経済学者は,ある生産一技術措置の効率について,あるいほ生 産企業の活動の経済性の程度軋ついてほ,生産物原価の水準によっで十分正確 に・判断をくだしうるとの見解を支持してきた。1929年にソグェトの企業が独立 採算制の基礎の上にすえられていちい,ソグヱトでほ「採算制」という概念は むしろ消極的に扱われてきた。いわば所与の製品の生産に.おいて単位あたりの 巷虐コストが,基準生産コストを下回って生産されることを「採算的な生敵」
とみなしてきた。しかし実際には原価にもとづいて・企業活動の経野性に・ついて 正しい結論を与えることができようか。バ−・グもまた断じてそ・うでほないとい
う。企業は承認された期間内に償還されないような追加投資によって∴原価の引 きさげに努力するであろう。このような原価の引きさげはら 国縫済民全体の立 場からみれば,生産活動の全般的な経済効率の上昇をもたらすどころか,むし ろその低下を導く。種々の生産物の生産に.要する総労働支出の数鼠的決定とい う問題の本質ほ,結局はこの生産物の原価をよりどころとし,その価値の大き さを決定しうるような方法を発見することに.ある。
周知のよう紅,ソ同盟でほ価格形成の問題について現在もなお経済学老のあ いだ紅重大な見解の相連がある。
第1のグル′−プに属する人びとは,現行の価格形成原則を支持するものであ って,月.皿・コンドラン.ェフやA.B.パテ・一ユ.−.リンがこれ軋属する。この 原則ほ,近代理論のフルコスト原理に照応するものであって,これに.よると,
価格ほ.部門平均原価プラ欠原価に比例せる利潤とからなる。そして通常この収 益率は3′、ノ5%とされて:いる。こうして決定される価値をコンドランェフとバ
(9)
−チエ・−リンほ「平均価値」(ycpeRHeHHOH CTOHMOCrb)と名づけている。
(9J<月0ⅢpOCbI9KO江OMHKH>No.2H No,5,1957
−−β ▼−・ 第37巻 第6号 756
第2のグル−プ把∴属する人びと,たとえばC…r.ストルミリン,T.C.ハ チャトゥ・一口フ,只.A・クロンロ・−ド,n.A.ムスタスラフスキ・−などは,
生産手段の価格がその価値によって調整さるべきであり,諸支出は各生産物の 個別的価値に.よって計算さるべきであるとみなす。
また第3のグル・−プの人びと,牽とえば3.アトラス.几A.バーグ,C.
H.ゲハ・−ロブ,肌.B.コルガーノフ,Ht・C マルイV,::7,B.A.ソーポ リ,B.几 ベルキンなどは.,価格形成と支出の計算は生産価格に・もとづいて
行われるべきだという。このうちでもバー・グとザハ一口フほ次の第4グル−プ ゐ見解に近い。
第4のグループは数理学派と目される∧びとからなり,B・C・ネムチノフ,
B.B.ノポジロブ,刀.B.カントロビソテなどがこれに属して−いる。これら の人びとの見解では.,社会主義経済における価格形成原則と支出の引算ほ,そ れ以前のいかなる構成体のもとでの価格形成原則とも異なり,それは国民経済 の最適計画の原則と関連させられねばならないと↓ている。要するに,このグ ルー・プの人びとは,「■価値説」や「生産価格説」ほ社会主義に鱒ける価格形成 原則たりえないというのである。
さしあたってわれわれほ以上の指摘だけにとどめて,次にバ・−グの見解を換 討することにしたい。多くの工業企業の活動の効率は,まず簿1に.地域的由 置,
れる設備に.依存する。これらの藷問題はすべて企画立案紅おいて解決される問 題である。企業の企画粧さいしてこその将来の経済の基礎がおかれる。もっとも 現存企業の活動を効率的とする紅は,生産の正い、雑繊と,資材および労働潜 源の節約にたいする企業集団の日常闘争が少なからず重要な意義をもつ。しか し企業が初めから非経済的な設計図をもと把.して立案されていれば,この根本 的欠陥を積極的に局服する可能性は無条件紅制約される与.ととなる。だから,
工業企業は相互に.一億の利点と欠点とをもつ多数の可能なパリアソトに応じて
建設されなくてはならない。この種の問題こそまさしく投資効率問題の核心で
ある。
価格形成と企共演動の評価問題 − 9 −
生産価格にもとづく価格形成を主張する人びとが,投資効率論争においてい
(10)
かなる立場をとっているか紅ついてほ,すでに岡稔戌の周到な説明があるの で,ここでは多くほ触れないこと紅する。バーグ㌢よ,1960年紅ソ同盟科学アカ
(11) デミー紅よって発表された「投資と新技術との経済効率決定の標準】温」紅従い ながら,償還期間の公式がもつ経済学的意義を説明している。
3=C+PHK==min
3=総支出,C=原価,PH=標準効率係数,K二=追加投資。
バ−グは・,多くのソヴ‡ト経済学者睾同じように,この計算された支出(npガ・
BeAHHbIX3aTpaT)′を最小化することた.よって,最も経済的なバ.リアソトが選 択されると考える。そしでバ−・グほ,こ・の算式におけるKを固定フォンドと流 動フォンドの合計と理解すれば,生産価格にもとづく生産支出の計算と全く同 じものに.なるという。今日でほ生産物原価の大小に.よって投資パ.リアソトを選 択することも,あるいほまた投資1ループーリ当りの生産物の最大限の増加,つ
まり追加投資の生産性によっても投資バーリアソトを選択すること.は正しくない とされている。ソ同盟では生産物原価と必要な投資との間の適正な比率を見出 すことが投資バリアソナの選択に・おいて■必要とされてこいる。これは償還期間接 の適用,いいかえれば,計算される労働支出の最小限の発見によって達成され る。この理論的問題の論拠づけに・ついてはノポジロブがすでに体系的な説明を
(12
与えている。
バ・−グは,標準効率係数の大きさほ何にもとづいて規定されるべきなのか,
また各生産部門毎に独白の標準効率係数を規定すべきか,それとも国民経済全 体について単一・とすべきか,といった問題を提起する。周知のごとく,現在の
ところソ同盟ではこれらの問題について,経済学は−・般紅承認された根拠のあ る解答を寄せていない。ソヴェトでほ.さしあたり経済効率の決定問題について
(10)岡稔,帽†画経済論序説』第3茸以下参照。
(川 ≪THrIO汚a兄MeTO月HKa OrIPeノIeJreHrr513KOHOMHtleCKO放3d)OeKTMBrrOCTH KarIH・
TaJrもHblX BJfO淡eH拷路H HOBO葺TeXHHKH B HapOAHOM XO3月iicTBe CCCP‖>>1960
u2)BBh HoBO〉KH∬OB,≪H3MePeHHe3aTPaTHHXpe3yJr;もTaTOBBCOHHaJIHCTH−
qecIく9M XO3兄ficTBe>>,CMh npHMeHeHHe MaTeMamK以B9KOHOMHqeCI(HX HCCJT e刀eノ10Ba打兄Ⅹ1959,CTp42〜213」岡稔訳,「マルクス経済学の数学的方法』,上巻,
46〜229ぺ・一汐。
第37巻 葬6号
ーーJO −−
758
の基本的な方法論上の論議に.関して三つの文献が発表されている。その第1ほ 前述の科学アカデミ・−の『標準法』であり,第2は1961年に発表された国家科
(13)
学技術委員会の『新技術の導入紅よってえられる年々の経済効果の決定法』で あり,第3ほ.ゴスプランの手に.なる1962年の『工業に.おける新技術の導入,生
(14) 産過程の機械化と自動化の経済効率決定法』である。
科学アカデミノー・とゴスプランの効率決定法ではともに部門毎に.分化せる係数 を設定すべきだと勧告されているが,パーグほ.これらの勧告がいずれも十分な 理論的根拠づけを与えておらず,その係数の大きさはきわめて慈恵的であると 批判する。バーグが問題としているのは,不均斉な標準効率係数を設けること に・よって.国民経済にとってこいったい利益があるのかどうか,という点である。
前述のように,分化せる標準効率係数を用いるこ.とほ科学的根拠を欠ぐもので あり,それほ国民経済に.損失をもたらす以外の何ものでもない,というのがバ
−グの第1の批判点である。分化せる標準効率係数の設定を支持する人びと ほ,もし単叫・の効率係数を適用すれは,結局のところ,これは生産価格にもと づく支出計算を意味するこ.とに.なろう。しかし社会主義経済にとってはこれは 許されえないことである,というのである。パ・−グほ.,これらの人びとは独断 的なデーー・ゼを■旨目的に.弁護し,実際の経済現象を全く無視し,国民経済の利益 を無視するものであると反批判している。生産価格は資本主義経済の特殊なカ テゴ.リーであって,それほ社会主義経済とは関係をもたないというのが−・般匿 認められた見解である。資本主義のもとでの生産価格の形成は,通常は専ら競 争の作用と部門間の資本移動とによって説明されてこいる。ところが,社会主義 経済ではこのような現象ほ存在せず,したがってそこでは生産価格というカテ ゴリ」−も適用されえない。バ・−グほこのような伝統的な観念は,経済の現実匿 よって次第紅砕かれてきでおり,生産価格のカテづリーほ経済計算において広
し13)≪MeTO且HKaOrrpeAeJIeH封月【rOL(BOrO9Z(OHOMHtleCKOrO叫中etくでa,rrOJIyqaeMO−
rO Bpe3yJIbTaTeBtleRPeHⅢ5IHOBO葺TeXZIHKrr>> 1961
(14)<:MeTOAⅥKa OrIpe月eJIeHH5I9KOHOMHtleCKO葺9¢申eIくTHBHOCTHBHe皿PeH班兄
TeXZIHXH,MeXaZIH3aqM 刀 aBTOMaT封3aWM〕叩OH3BOACTBer(HhIX rIPOLteCCO8
npoM以mⅥeHHOCT疹・,1962・
価格形成と企共演動の評価尚題 ーJユー く適用され始めていると主張する。
バーグは!かれの反対者を説得するために,積極的にかれの主張を提案す る。ある生産一技術措置からえられる年々の経済効果の大きさはと計算された 支出の差によっで決定される。次式がこれである。
∋=(Cl+PHKl)M(C2+PHK9)
バ・−グは,この算式を用いれば,経済計静を改善するという問題が大きく前 進するとみている。こ.こでノう・−グが用いている算式は,国家科学技術委員会の
i「効率決定法』である。最近まで生産における節約は生産物原価の低下によっ てのみ計算されるとし,それと投資の大きさが必然的に・関連するものとほみな かった。多くの凝済学者はまだ従来の方法を決して断念しているわけではな い。しかし国家科学技術委員会の算式に.よれぼ,たとえ生産物原価の増加を導
くような措置でも,原価の増加が必要とされる投資の削減によって相殺される ならば,∴それほ経済的には効率的であるとみなすことができる。
もっともこの算式についてこは当然問題が起ってくる。いったいその算式にお いてPHKの項目ほ何を示すのか。つまりそ・れは現実の支出なのか,それとも純 粋に計算⊥の仮設的な大き.さなのか,こあ問題ほ理論的にきわめて患要であ
る。これに.たいするバ」−・グの解答はこうである。その全体の実在性を認めない で,計算された支出の構成にもとづいて経済性を判断することはできない。
PHKの項目はいかなる支出をあらわすか。それは原価に討上されない剰余労働 支出をあらわす。こうして計算された支出の総体は総労働支出,つまり生産価 格にもとづいて討算される価値をあらわす,とバーグはいう。しかもそのばあ い,標準効率係数ほ盗意的にきめられるのではなく,厳密な根拠をもつ大きさ であるとして,バーグほそれを次のように説明する。そもそも標準というの は,国民経済的効率係数と理解すべきであって,これほ所与の時点で現実に・存 在する比率,つまり年々の剰余生産物価値の社会の年平均生産フォンド価値に たいする比率である。バ」−グに.よれば,これほ次のごとく定式化される。
∑1ユー∑C
∑P
PH== ̄盲て抑= ̄う寵【
弟37巻 第6号 760 ーー ノご・一一
要するに:・,バーー・グの見解でほ標準効率係数の大きさとほ平準利潤率紅外なら ない。そしてバ−グほ,電子機械管理研究所によって行われた計算では,ソヴ
ェト国民経済全体についてみると,現存企業の生産フォンドに・対象化されてい る1ル−・ズりの資本は現在のところおよそ20カぺ−クの剰余生産物を生むと指 摘して:いる。バ−−グほ.こ.のようにしてこいまや標準効率係数とはノポジロフのい
う「道連関支出.1を意味すると理解する。かれの表現を用いると,社会の資源 のうちから個別企業の生産フヵ・ソド形成に資本Kを転ずることは,この資本の およそ20%に相当する額だけ,他のすべてごの企業の操業に要する社会の経常費 を増加させる。バ」−・グのヱ.の言葉からすれば,計算された支出の算式における 項目PHKの経済的本質は全く明瞭であろう。この瓢式に従えほ,ある企業の生 産物の形成に.要する経常支出は二つの項目の合計額,つまり原価(C)とこの 企業の投資額にたいする標準利子(PHK)とからなる?この後老の大きさは,
この企業の生産フォンドの形成に.支出される扱資の凍結のためにト社会的生産 ゐ他の個所で失われる剰余生産物の価値表現である。資本手段(K)をある年 産部門もしくは個別企業に配分することほ,結局においてその大きさだけ残り のすべての企業の技術装備率を引きあげるという社会の可能性を制限する。要 するに.,−一億の可能性を喪失するという意味において1ある生産部門に資金を 配分することは他の生産部門に一億の損失をもたらす。このようなバ−グの見 解は,他の社会主義国,たとえばポ−ランドやハンガーリーでほすでに一腰的承 認をえてこいるが,ソグェトに関するかぎり,現状でほ賛成論よりも反対論が多 いようにみられる。
バ・−グの見解を批判するものとしては,B.クラソフ云キ−があげられる0
(15) クラソフスキ一一によれば,「損失」というような概念は正しくない○金属生産
の能力の拡大に向けられる投資は,はたして機械建設の額失をもたらすのであ
ろうか。その部門の技術的な改造紅よって金属生産物の数最が増大し,金属の
原価が低下すれほデその企某が低廉な金属を供給するかぎりにおいて,械械建
(1劫 9KOHOMHqeCKa兄う¢如KTばBHOCでbMeXaHH3a即=aBTOMaTH3a岬班npOH3BO月一
CTBa,川62,CTp・41▲
価格形成と企業活動の評価綿題 ーユター「
設の効率が向上しうるので奉る。あるいは.電力紅おける投資は国民経済の全部 門軋とって進歩の条件ではないのか。電工業の投資を発展の条件とは塾ない で,農業や輸送等々に.たいする損失ということができようか。こ.のようなクラ ソフスキ・−の批判に.たいして,バ・−グほこの考えが−・見すると説得的であるか にみえながらも,その実は追加投資を利用する別qバーリアソトあミありうること を全く考将に入れてし、ないと批判する。社会ヨ三蔵国家と・いえ・ども,拡大終生産 のために無限の資源を配分することほできない。そ・の点でクラソフスキー・の主 張ほ根拠を失う。クラソフスキ一に.あってほ問題の立て方そのものが正しくな い。クラソフスキ・−のようなアブローrチをとれほ,経済効率の問題を論ずるこ とが初めから無意味なのである。この点でほバ−グの主張を正当とみるべきで あろう。
またPHKの稟在鮭そのものを批判し,引算された支出の最小限によって経済 性を判定することの妥当性を疑う人もある。そ・の典型的な代表者がA.且.エ メ.リャ−ノフである。エメ,リャ・−ノブによれば,「計算された支出を用いて最
/
適バ.リアソトを選択する方法は,次の2つの理由に.よって正しいとみなすこと ができないム第1に.PHKの潰だけ原価を高めることを1年という枠内では.理論 的に根拠づけることができないし,欝2に・ほこ.のような選択方法は,経済効率
上指標の比較の長めの基底の速定についての方法論的な指摘に.矛盾する。 バ リアソトの基底との比較でほなく,バ.リアソト問の比較が,討算を実生活との
(16)
関係をもたない仮設的なものたらしめる。」
第1表 投資バタアントの選定方法
指 標 の 名 作 第1バリアントl第2バリアソトl算3バリアント 好一投資(千ループリ)
C一・年生産物原価
(千ル−プリ)
C十P〟∬一計界された 支出 (千ループリ)
r一基底バリアソF紅
対する償還期間(年数)
(16)TaM光e,CTP−・75■
1400 1050
1330
2小7
帯37巻 第6号
ーJイ ー・ 762
こ羊で仮設例を用いてエメリャ−ノフの見解を検討しておこう。この第1表 から明らかなように.,バ」−−プが依拠する計算された支出に.よれぼ,最適バリア
ソトは帝3であって第2でほない。ところが,エメリャ・−ノフのように基底バ リアン十との比較によって最適バリアソトを選べほlパーーグの主張とは正反対 に第2バリアソトが最適となる。ところで,第2と第8の両バリアソトを比較 すると,その償還期問は,公式によって3年となる。追加投資が
1400−1100
73/2 = = 3年
1150−1
4年の標準期間(標準効率係数を0.2と仮定している)よりも短かい3年で償 還されるから,このほあい欝3バリアソトは明らかに.より経済的であることが わかる。しかしエメリャーノブは.別の見解を支持し,第1バリアソトほすでに実 現しているバリアソトであるのに.,第2および第8の両バリアソトは企画段階
に.あるに.すぎないと指摘する。エメリャー・ノフに.従え.ほ,まだ実現していない 2つのパーリアソトを相互■に.比較するととは容認できないというのである。かれ が計算を実生活とつながりのない仮設的ものたらしめるというのはこ.の点であ る。はたしてエメジャーノブの見解を支持できるだろ・うか。かれの立場を支持 することに.は無理がある。理由の第1ほ.,実際には何ら基底バ.リアソトがな
く,企画バ.リアソト相互間で比較をしなくてはならないようなばあいが多い。
しかしエメ.リャー・ノブのいうように,基底パーリアソトがあるぼあいでも,その 提案を受け入れるわけにはいかない。いまや第2バリアソトが最適とみなさ
れ,実生活に.おいて∴実現されるとしよう。ところが時間が経過して周じ使途を もつ対象を建設することが必要になったとすれば,そのとき紅は第2バ.リアソ
トを基底バ.リアソトとして採用しなくてはならない。こ.の第2バリアソトと界 8バ.リアソトを比較すると,前述のように.8年の償還期間がえられ,いまや欝 8バ.リアソトが第2バリアン、Lトよりも経済的であることを認めなくてはならな い。そうすると,何のために第2バターアントをより経済的とみなし,それを実
際匹実現したことが問題となる。こ.れが第2の反対理由である。バ−グが指㈲
するように,.エメ.リャ−・ノフの見解は根拠がなく,それはただ経済効率の計
価格形成と企業活動の評価問題 −ヱ古−・
に従事せる実務家をしてその方向を見失わしめるだけであろう。この点の理論
(lrl
的問題紅ついてほ,ノポジロフが詳細な分析を与えている。
バ−グは,「計算きれた支出」の算式が生産物の生産に患する総支出の正確 な表現であって,これに.よって個々の企業と国民経済全体との問の経済的な相 互関係の.バランスを正しく理解することができるとしてこいる。各企兼は・,自己 の生産活動のために,社会からまず第1に数年間利用される生産フォンドを受 けとり,そして第2にほ労勘対象と,・その労働者のための生活資料を受けと る。この企業が自己の生産物を生産しうるためにほ.,社会の他の諸企業がそれ に必要な資材,原料,燃料,.エネルギ−や,賃銀の大きさ軋照応せる労働省の ための生活資料を供給するように常に活動しなぐてはならない。生産フヵソド の償却をも含めてこの経常費ほ,この企業の生産物原価(C)を構成する。だか
ら,原価(C)はこ.の企業の活動に.よって生ずる社会の支出の第1の構成部分で ある。そして前述のように→この企業に.たいするKの大きさの生産フヵソドの割
当ほ社会の他の企業の技術的装備を制約し,そのためにそれらの企業での生産
物原価は技術的に可能とされるよりもPHKの大きさだけ大きくなる。これほ.こ の企業紅よって一生ずる社会の支出の第2の構成部分である。ノ圭一グの考えで は,ある生産物を技術装備率の高い労働で生産するととが,ある他の生産物を 装備率の低い労働で生産することと有機的に関連している以上,ある生産物の
「貴の社会的価億」をその生産物を実際に.生産した企業や部門の枠内で測定す ることほできないのであり,全社会的見地から測定する必要がある。バ−・グに よれほ「労働支出の社会的評価」を与えるものが,これまで説明したような生 産価格にもとづく「計算された支出」なのである。同氏が指摘されたように,
「社会がある生産物の生産紅要する支出の測定は即自的紅,つまりこの支出の 効果ときりはなして,おこなうこと這ミ・できるのか,それとも全国民経済的見地
(ユ8)
からみた効果という観点から,【社会的評凧」をおこなうべきかという問題」
こそが,価値説と生産価格説とを分つ基本的な論点である。生産価格説を支持
(相 同稔訳,『マルクス経済学の数学的方法_』,上巻,特に第3章と欝4章参照。
(相 聞稔,『計画経済論序弧』,215ぺ岬汐。
・− J6 → 第37巻 第6号
764する人びとのうちでも,バーグほノポジロフの「逆連関支出」という構想を部 分的にとりいれている点で特徴的である。
ところで,いま企業が社会的価値に照応せる貨幣評価額(U)だけ生産物を つくり,生産支出(C+PHK)をこえるとすれば,その活動によって社会には
−・定の利益がもたらされるとみなすことができる。社会とこ.の企業との経済的 相互関係の差額ほプラスとなる。企業紅よって社会にもたらされる利益,つま
りその活動に.よる経済的効果ほ次のように.なる。すなわち,
9=u−(C+PHK)
社会の手紅ゆだねられる生産高(U)ほ前払せる支出を完全に相殺する。それど ころか社会の剰余生産物ほ経済的効果(∋)の大きさだけ追加して増加され
もしそ・れと反対に売上額(u)が支出(C+PHIく)よりも小さければ,企業ほ社会
にたいしてそれと引換えに渡すものよりもうるものの方が大きいとと,すなわ ち社会に利益をもたらさないことを意味する。′バ−グの提案せる計算された支 出と結果の比較という原則やそめ効率評価ほ.現在のところまだ実際に.ほ.適用さ れてほいない。
3 企業活動の評価基準の問題
バ・−グは ,従来の総生産高指標とそれ紅もとづく報賞制度についてきびしい 批判を加えているが,その点についてはすでに.説明したので触れない。かれね 積極的に企業活動の評価の−・般的指標として,前述の企業の経済的効果一9去 u・−(Cヰ伽K)−・の大きさを代案として提唱する。この効果が大きければ大き
いはど,企業はより効率的,より経済的に活動したこと把.なる。この指標匿椎 個別企業の生産活動のあらゆる側面が反映されている。しかし現行の経済計算
システムと現行の価格体系を利用しているかぎり,この指標ほもちろん企発臥
動の効率を正しくあらわすことができない。それがうまく適用されるに.は,そ
のためにはまず一億の条件を整備しなくてほならない。この条件とはいか寧る
ものであり,この条件のもとでは選ばれた指標ほどのよう紅作用するであろう
か。バ−グが提案する条件軋ついて以下要約して述べよう。
価格形成と企業活動の評価問題 ープアー 第1にあらゆる種類の生産物価格は,総支出に.もとづいて構成さるべきであ
る0原価の外軋投資について−一億の利子を考慮すべきであこる。それ以外に価格 は商品の代替性や不足や品質の条件を十分正確紅考慮すべきである。しかしこ の点についてほバ・−グほ具体的には余り詳しく説明していない。
第2虹現行の生産フォンドの「額債制」を解消すべきである。国家から固定 フォンドや流動フヵンドを受けとる企業はそれぞれ,その利用に.さいして国民 経済的効率匹等しい,きびしく定められた一・定の使用料を毎年国家予界の収入 軋支払うべきである。
第3に生産の成果(u)は,生産された生産物の数豊についての実績資料のみ によっでではなく,その生産物の実現のために.企業の経常勘定に.計上される資 金恩によって評価さるべきである。
第4に.−・定品質の生産物の数鼻,品目構成および納入期日をきめた各企業の 生産計画ほ,生産者と消費者との問の直接的な二面的な契約関係の基礎の上に つくられるべきである。もし何らかの事情紅よって決められた生産物の納入期 日が企業によっそ破られるばあいにほ,前もって契約のさいに虐められた違約 金を相手企業に.支払うべきである。この点でのバ・−グの提案はリ−ベルマンや
(19)
トラべズニコフとはぼ同じようである。
バー・グが提案した企業の経済的効果は,本質的に・は企業利潤である。各企業 は自己の生産物を実現することによって総売上高(u)をかくとくする。この総 売上高からPHKの大きさで示される生産フォンドの利用にたいする使用料を支 払い,そして原価を補填する。もしすべてこの支出よりも総売上高が大きけれ ば,その残差余剰ほ企業利潤となる。バ−グの指摘する企業利潤は,通常の利 潤概念一原価を上」司る売上高の超過額−と混同してはならない。いいかえ.る
と,バーグの「企業利潤」は通常の利潤よりも生産フォンドの利用にたいする 使用料中大きさ(PHIそ)だけ少ない。バ・−・ザは企業活動の−・般的指標を通常の利 潤とほみないで,かれの意味での「企業利潤」のみであると提案する。
(1功 ダニ・トラぺズニコフ,「弾力的で経済的な企業管理のすすめ」,『思想』,1964年
第12号,177〜182ぺ−ジ。
第37巻 第6替
トーJざ − 766
企業利潤ほ,生産高の増加や生産物の品質の改善によっても,あるいは生産 物原価の節約に.よっても,さらに」は生産フォンドの最も効率的な利用によって
も増加することができる。あらゆるばあいに.企業利潤の増加ほ社会的な富の実 質的な増加を意味する。
前に指摘したように,生産フォンドの無位制とそ・の効率的な利用軋たいする 企業集団の直接的な物質的関心の欠除こそが,設備利用の苺要な欠陥の主たる 原因である。企業やソブナルホーズは.しばしば水増した,経済的に.根拠のない 機械や設備,原料,燃料,資材等の申告を提出し,これが生産手段の過度の在 庫を導く。このような過大な在庫ほ生産物原価にも反映されず,そして企業ほ
この面でいかなる経済的障害にもぶつからない。だからこの欠陥を除くために は,フヵ・ンド有偵例の原則を導入するこ・とが必要であり,そうするこ・とによ?
て生産フヵンドにたいする企業集団の無責任かつ不住藩な態度が排除される。
このような原則が実施に移されると,在庫管理がわるく,不必要な資材が膨脹 すれほ,それだけ企業利潤が減少し,それにともなって企業の生産集団に与え′
られる報貨金の減少を導くことになる。またフォンドに.たいする使用料の支払 が必要となれほ,企業管理者ほ不当紅.大きい設備や資材の在膵をふやそうとす
る傾向は断ちきられ,現存フヵ・ンドの効率的利用を図らざるをえない。以上の 点でパーグの提案はり・−ベルマンのそれと根本的にほ.一・致している。
次にはパーグの具体的な提案を検討しよう。フヵ・ンド有償制がとられると,
たとえば企業ほその価値の20%を国家予算に毎年支払うことができないような
機械を採用することほなくなる。この胎果,効率的でない技術の採用を企業は 思いとどまるようになり,経済効果があがるばあいにのみ生産の機械化や自動 化がおこなわれること紅なる。現在のソブストでは生産の機械化や自動化の経 済性が十分検討されないまま紅,あたかもそれが自己目的であるかのごとき状 腰が生れているとバ【グは指摘している。フォンド有償例のもとでは,企兼ほ 現実に効率的な技術の利用,支出の削減,企業利潤の増大にたいする経済的刺
戟を自ら真剣紅探し求めなぐてはならない。
各企業の活動に.よって社会がうるものが大きくなればなるはど,その集団の
物質的奨励フォンド(如H月MaTep皿刀bHOrO口00叩e冊)も当然大きくなく
価格形成と企業活動の評価問題
−J9・一−て−はならない。しかしこの原則を守るからといって,企業利潤のすべてを・その 手紅留保すること▼は必ずしも必要でほない。バーグ紅よると,企楽利潤のうち 一億の特別報賞金(AO叔OBOeyqaCTHe)を企業集団のために.予定すればよい。
かれは一例として国軍にたいしてフォンド使用料を支払った残余の企業利潤の 30−−40%をこれに.あてればよいという。
物質的奨励フ元・ンドは個人的奨鱒と集団的奨励との二種頬に分かれる0前者 は個人にたいする貨幣報賞やサナトリユ.ムとか休息の家とかへのパスなどであ る。こ.れにたいし七集団的奨励ほ企業集団の社会的文化的必要(託児所,幼稚 園仁クラブ,競技場など)を充足すべきである。物質的奨励フォンドの要求は 具体的な企業における勤労者数に依存する。こ
からのその控除額ほ各企業紅おける勤労者数を考慮し生産部門毎に分化して もよいと提案して−いる。この点で.リ−ベルマンの方がいっそう具体的な提案を
(20)
試みている。すなわち,.リーベルマンにあってほ,各部門別に利潤率の遂行ノ 第2表リ−ベルマンの企業報賞等級表
※ 全体として資本1ルーブルにつき5..5カぺ−クをこえないこと
ルマ(等級衰)が作成され,企業利潤率の達成度合に応じて一企業に.報賞を与え る。しかも企業への報賞金の等級表ほ長期間にわたって変更しない(たとえば 価格の大幅な変吏が必要になるまで)。ここに示された.リーベルマンの企業報 賞等級表は機械工実のためにつくられた見本である。ヅ−ベルマンの提案によ
って具体的にそれをみよう。
伽)イェ・リ・−ベルマン,「計画,利潤,プレミアム」,『世界週報』,1962年11月13日一弓,
35ぺ−汐。
第37巻 第6号
ー20・− 768
利潤率ほ,いうまでもなく,利潤額を総資本(固定資本プラス流動資本)で 割ったものであるから,ある企業中利潤額が750万ルー・プルで,総資本の年平 均額を5000万ル一プリとすれば,利潤率は柑%である。これほ等級表の10り1%
′}20%に.該当する。そうすると,まず総資永1ル叫プル紅ついて3カぺ・−クの 報賞金が与えられるから,計150万ルーブル(5000万ル・−プル×0.03=150万ル
−・プル)の報賞金を手にすることができる。ところが,当該等級表の最低限(
この例では10.1%をこえる利潤額,すなわち505万ルーブル(5000万ルーブル
×0.101)をこえる利潤額に.たいして9%の報賞金が追加される。つまり750万 ルニプルから505万ルーブルを差し引いた245万ル−ブルの9%だから,22万10 00ルーブルの追加報裳金を与えられる。この例でほ結局両者を合せて172方100 0ルーブルの報賞金を企業が受けとることとなる。また利潤計画が未遂行紅湛
ったばあいには,実際の達成利潤率隼・応じて一等級表に・よって報鼠金を受ける。
利潤計画を超過遂行したげあい匿は,計画率と超過遂行率との平均とされる。
とれ以外に.リーベルマンは新技術の開発にたいしては,計画内での新製品の比 重に応じて報賞額な増減するような等級表の作成も提案して−いる。またトラぺ ズニコフのばあいにほ,新技術の導入や新製品の開発にともなう支出増加のた め紅,−・時その′企業の製品価格を高くするという「可変価格削」を提唱してい
tご王\
る。これらの人びとの提案はバ−グにおけるよりも具体的・現実的である。し かし経済理論的な頗拠づけの問題に.なると,多くの問題が残されているよう匿 みえる。
生産の改善措置も企業フォンドによって融資するようにとの提案が若干の経 済学者からなされているが,バ−・グほ.正しい方策ではなく,このようなことが 可能となれば,資金利用の低効率を招くとしてこれに反対する。バー・グの見解 でほ,企業集団の物質的奨励に予定されないような企業利潤部分があるとすれ
ば,これほむしろ国家予算の才入にととごとく移すべきだという。しかし同時
に各企業ほ,ゴスバンクから生産改善のために.必要な資金を借りることが き,その貸付金紅ついてほきめられた利子を支払うべきだと提鳴している。
(2カ トラぺズニコフ,前掲邦訳論文,180ぺ」−・汐。
価格形成と企業活動の評価関越
−2J−周知のように.,各工業部門は相異なる技術をもつ企業の総体であり,殊に採 取産業では生産の自然的条件にかなりの差がある。′生産技術や自然的条件の差 は.もともと企業集団紅は関係のないものでありながら,現実には同一・生産物の 単位生産費に大きい差を生ぜしめる原因である。だから,生産物価格が単一・の
ものであって,しかもフォンドの使用料が同じであるばあいには,技術的紅新 しい企業は有利となり,より多くの企業利潤を受けとることノになる。このよう な不均等をいかにしてなくするか,バーグはその方法として2つの方法を提案
している。第1は実際の効率に応じて生産フォンドにたいする支払額を個々の 企業毎に差別すること。第2はフォンドの利用については同一・額を徴収する が,その代りにその現実の価値ではなしに,実際の効率に応じてフォンドを評 価すること。以上がバ−グの方法である占 いずれの方法によっても,企業が国 家にたいして支払うフォンドの総支払額ほ.同じである。だが実際に適用しやす いのは第2の方法である。というのほ.,企業の異った生産条件をより正確に平 均化することができるからである。企業毎に興ったフオンド使用料をとれば,
フヵ・ソド使用料の小さい企業に新しい投資手段が投下される傾向を生じ,その 結果,投資の国民経済的効率ほ引きさげられる恐れがある。その意味で第1の 方法は避けるべきかも知れない。
それではバーグのいうように,実際の価値ではなしに実際の効率によって生 産フォンドを評イ面するのにほどうすれ咋よいのだろうか。いまある企業の生産 費が部門の平均生産費に照応していると仮定する。・そ・の企業の生産物を実現す るさいにほ,企業ほ総生産支出(C十PHK)に等しい売上高(u)をうるであろ
う。この企業ではバ」−グの意味での企業利潤は存在一しない。この企業ほ,初会 に標準的な大きさの剰余生産物を保証するとの意味において,標準的に活動し ている。このようなほあい仁社会はこの企業に剰余生産物の中から一億部分を 企業集l寸】の物質的奨励のために・さくべきであろうか。バーグはそうすべきであ るとの立場をとる。
それではすべての企業から同一Lのフヵンド使用料を徴収するという原則と,
企業への物賀的奨励フォンドの配分をいかにして態合することができるであろ
解37巻 第6号 770
−22 −
うか。各企業に.たいして企業が支払わなくてもかまわないフォンドの大きさを 規定し,すべての企業紅とって年々きびし
国家予算の才入に支払うぺきそれぞれのフ九ンドの大きさを規定すればよい。
バーグの仮設例でほ次のように.説明される。いま当該企業の総利潤がある年に 3.6百万ルーブルであったとしよう。標準効率係数が20%に.等しいとしたほあい には,さきの利潤には18百万ル−プルの生産フォンドが照応する。現存企業もこ れと同じよう紅旗起されるとして,奨励フォンドの最低限の大きさが120千ル
−プルであって,企業利潤からの接除率が80%だとすれば,企巣利潤の最初の大 きさは400千ルーブル(120千ル・−プルナ0.3)に.等しくなろう。そしてこの利 潤にほ2百万ルーブル(400千ル鵬・プルナ0.2)が対応する。要するに,2百万 ル・−プルの生産フヵンドの利用に.たいしてほこの企業ほ何ら使用料を支払う必 要がなく,残りの16百万ル−プルについて企業は年々3.2百万ルーブル(16百 方ル−プル×0.2)だけ支払えはよい。もし将来この企業が育万ル叫プルだけ そのフォンドをましたとすれば,それに対して84百万ル−プル(〔16百万ル∵
ブル+百万ル−プル〕xO.2)を支払うことになろう。以上はその総支出が部門 平均値に.等しく,単一・価格がとられるほあいの支払原則であるが,特別にす
ぐれた技術もしくは特別に.恵まれた生産の自然的条件をもつ企業のばあい匿 は,いかに処理すべきであろうか。いま企業のもつ生産フォンドの現実の価値/
が18百万ルーブルであり,標準効率係数が20%であるぼあいにほ.,これだけの 愚の生産フォンドを有する企業は年々8.6百万ル−プルに相当する年生産物価 額の原価超過額をもたなくて−はならない。ところがその企業がつくる生産物の 単位雀慮費か部門平均のそれを著しく下回るために.,原価を上回る売上超過朝 が3.6百方ルーブルでほなしに.,5.4百万ル−プルであったとしよう。そうする と,標準効率係数紅対応せる生産フォンド額はもはやi8百万ル−プルではなく 27百万ルーブルとな∴る。つまりこの企業のフォンドは27百方ル−プルと評価さ
れなくてはならない。同時に.前述の規定によって,こ.のフォンドのうちB
ルーブルについては企業は何らの支払を要しないから,残りの25百方ルーブル
について年々5百万ル・−ブノりを支払うことに.なる。このはあい企巣利潤の大
価格形成と企共活動の評イ舐問題
ーご.;−さは,一前と同じように,400千ルーブル(5.4百方ルTブルー5百方ルーブル)
となり〜企業集団への奨励フォンドは120千ルーブルとなる。いま説明 うな先進企業のフォンドの評価の引きあげが根拠のないものとみなされてはな らない。先進企業のフォンドが9百方ル・−プルだけ増大することに.よって,古 い企業の生産フォンドの評価を同じ額だけ減少せしめるようになり,それは道 徳的に陳腐化し,もはや生産集団とほ無関係な原因によっで以前の大きさの利 潤をうることを嘩証されえない。この生産部門の企業の生産フヵ・ンドの総評価 額の変化ほ起らない。、、それほフォンドの価値額に等しい。バーーグはこのような 考えから個々の企業フォンドの再評価を周期的に.行うべきだとしている。
経済学老の中にはフォンド有偵■制原則を導入することがいま以上に欠損企業 数を増加させると危ぶむものがいる。しかしパ−グの見解ではこれはもちろん 誤解にすぎない。というのは,生産フォンド有償制の導入に.あたって∵ほ当然に それ相応の支払の可能性を保証するような価格体系の整備も同時に・おこなわれ るからである。その結果,欠損企業の数ほ′増大しないばかりか,この原則に従 うかぎり,討画的な欠損企業が存在する可能性そのものがなくなる。提案され た新しい独立採算制システム,すなわち生産価格にもとづく価格形成原則とフ ヵンド有償性がとられるならば,そのばあい何らかの企業が欠損を生ずるのほ その企業の活動が効率的でないこ.とを証明する以外のなにものでもない。しか し新しい提案のもと.でも当然問題が起る。新たに.建設される企業でほ生産能力 が稼動するまでの期間,また現存企業では新製品の開発の時期には,・それら鱒 企業では不可避的に.支出の増大に直面する。当然このような事態を予想してそ の支出の負担増加をカバ・−するような方策を考え妃入れてお・くべきであり,バ
−グほ.この方策を追加投資の問題とみている。つまりかれによると,計画に比
べて少ない追加支出で新製品の開発をなしえたほあいにほ,そ・の節約紅たいし
て企業集団に_物貿的奨励をおこなうべきだというのである。■しかしこの問題に
ついてはそれ以上言及していない。以上に.みたどとく,パーーグの提案はその基
本的方向ではリー・ベル■マン教授やトラぺズ主∴コフ氏などと変りほない。そし七
利潤率を企業活動評価の唯一・の基準とす−る居で,バーグほ積極派に属している
第37巻 第6号
772・−・24 {−