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共同ボイコットと正当化事由

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(1)

共同ボイコットと正当化事由

和 田 健 夫

は じ め に

共同ボイコッ トは,複数の事業者が共同で,直接に又は第三者を介 して間接 的に取引を拒絶又は制限する行為である。共同ボイコッ トは不公正な取引方法 ( 一般指定 1 項)に規定 されているが,不当な取引制限として も違法 とな りう ることは従来か ら指摘 されていた。周知のよ うに ,1 991 年 7 月 に公表 された 公正取引委員会の 「 流通 ・取引慣行 に関す る独 占禁止法上の指針」( 以下 「 流 通 ・取引慣行ガイ ドライ ン」)では,共同ボイコッ トが競争の実質的制限をも た らす場合には, 3 条後段 ( 不当な取引制限)又は 8 条 1 項 1 号違反 として禁 止 され ることが明 らかにされている

1) 。

しか しなが ら,公正取引委員会の実 務には, 3 条後段の適用事例 はほとんどな く,事業者団体の場合 も 8 条 1 項 5 号 ( 不公正な取引方法の勧奨。ただ し,その場合の不公正な取引方法 は単独の 取引拒絶 と考え られている)あるいは 8 条 1項 3 号 ( 一定の事業分野における 数の制限)が適用されてきた。 したが って,公正取引委員会が この機会に,共 同ボイコッ トを 3 条後段, 8 条 1 項 1 号 として規制す る姿勢を示 したことは注

目すべ きことであろう

共同ボイコッ トは,特定の又は不特定の事業者を,集団の力によって市場か ら排除す る目的 ・効果が明白であることか ら違法性の強い行為だ とされて き

1 )公正取引委員会 「 流通 ・取引慣行に関する独占禁止法上の指針 」( 平成 3 年 7 月) , 第 1 部,第 2 ( 第 1 2 段落) 。

〔 8 9 〕

(2)

た。 しか し,実際の場面では,明白な共同ボイコットだけが問題 になるわけで はない。共同ボイコッ トには経済外なそれを含めて様々な理由を ともな うこと が多 く,また取引拒絶の効果 ( 市場の開放性に与える効果) も事案によって異 な りうる。 したが って,共同ボイコッ トを 3 条後段や 8 条 1 項 1 号によって規 制 しようとす る場合には,改めて,行為類型該当性,対市場効果要件 ( 競争の 実質的制限)の判断,さらには事業者側が共同ボイコッ トをす ることについて 正当化事由を主張 した場合の取扱などについて検討す ることも必要であろう

本稿 は, これまであまり議論 されて こなか った 3 条後段, 8 条 1 項 1 号適用に おける共同ボイコッ トの正当化事 由について,アメ リカの反 トラス ト法の判例 理論を参考に しなが ら序説的な考察を試みるものである。

Ⅰ アメ リカ反 トラス ト法 にお ける共 同ボ イ コ ッ トの判例 理論

1.pers erul e の確立

問題 の所在を知 るために,共同ボイコッ トを不当な取引制限 として取 り扱 い,事例の豊富なアメ リカ反 トラス ト法における運用を最初に考察す る。共同 ボイコッ ト ( gr oupboyc ot t )あるいは共同の取引拒絶 ( col l ect i ver ef us al t odeal )は

2)

, シャーマ ン法 1 条では pers ei l l egal のカテゴ リーに入 る行 為であるというのが確立 した判例理論 となっている。 しか し,同 じくperse i l l egal である価格協定や市場分割協定などとは異 な り,共同ボイコッ トは, 様 々な経済的な状況や動機をともなって行なわれ,またその効果 も一様ではな いために,概念内容 自体が不明確である。連邦最高裁判決か らも,その点 は必 ず しも明確ではな く ,pers erul e が適用 され る共同ボイコッ ト行為の外延に ついて種々の議論や批判を生み出 している

ここでは,まず,persei l l egal 法理を形成 した とされ る共同ボイコッ トに関す る連邦最高裁 ( 以下では単 に

2 ) ここで取 り扱 うの は,競争関係のある事業者が関与 している共同の取引拒絶の事例

であ る。わが国の研究で は,今村成和 ・私的独 占禁止法の研 究 ( 二) ( 1964 )1 21

頁以下,村上政博 ・アメ リカ独 占禁止法 ( 1987 )196 頁以下。

(3)

共同ボイコットと正当化事由 9 1

「 最高裁」 とい う)判決を年代順に検討 してみよう

共 同 ボイ コ ッ トに関す る最 初 の最 高 裁 判 決 は, 1904 年 の Mont ague v.

Lowry 判決 3) であるといわれている。 これは製造業者 と卸売業者が事業者団 体を形成 し,そこで,卸売業者 らが製造業者 らか ら,非会員の販売業者 と取引 しない という義務を取 り付 け,それに違反 した場合 には団体か ら除名す るとい う取 り決めを した事件である。そのために,非会員の販売業者の何名かが,製 造業者か らの直接取 り引きを打ち切 られ,かな り高 い価格で会員である卸売業 者か ら購入せざるをえな くな った。最高裁 は,当該協定が,州際取引に直接影 響を与えかつ制限 していることを理 由にシャーマ ン法 1 条違反 とした。 この判 決 は , rul eofreas on と pers ei l l egal の法理が未だ確立す る前の事件であっ

たため引用 され ることは少ないが,その後の共同ボイコッ トに関す る最高裁の 方針を示唆す るもの として評価 され る

4) 0

10 年後,最高裁 は, East ern St at esRet ai lLumberDeal er' sAssoc i a‑

t i onv.Uni t edSt at es 事件 5) において,再 び共同取 引拒絶を違法 とす る判断 を下 した.一般 に,最高裁の共同ボイコッ トルールの出発点 とされ るのはこの 判決である。事案 は,西部諸州の木材の小売業者の事業者団体が,需要者 に直 売 している卸売業者を調査 し,その結果を, ブラックリス トに して会員に配付 したというものであ った。最高裁 は,西部諸州 の小売市場で被告 らが どの程度 の市場 占拠率を 占めているかについては判断せず, このよ うな行為が,会員を して, リス トに名前が記載 された卸売業者 との取引を止めさせ るという必然的 な効果を もつ ことに注 目し,事業者団体の経緯や小売業者 らが卸売業者の進出 か ら自己の商圏を守 るために繰 り返 して きた紛争の事実に興 して,卸売業者の 小売市場への参入を阻止す る目的を認めた。そ して, シャーマ ン法の共謀の成

3)1 9 3U. S.3 8 ,2 4S.Ct .30 7( 1 9 0 4 ) .

4)Sul l i van ,L. A.,Ant i t r us t2 3 2( 1 9 77 ) .

5)23 4U. S. 6 0 0 ,3 4S.Ct . 9 51( 1 91 4 ) . 逆に,取引相手の信用情報や契約に関する 情報の交換か ら共同ボイコットの意図が認められなかった例 として, Ceme nt Manuf ac t ure rsProt ec t i v eAs s oc i at i onv.Uni t edSt at es,26 8U. S.5 88 ,45

S.Ct .5 86( 1 9 25 ) がある。これについては,村上前掲書 ( 注 2)20 4 頁。

(4)

立のためには,なん らかの協定 ・合意 ( agr eeme nt ) が必要であ るが, これ は直接的な証拠 によ らな くて も現実 に行なわれた ことか ら推認す ることが許 さ れるとし,本件のよ うに,消費者 に直売 した卸売業者の名前を,共同 して団体 の他のメンバーに定期的に報告す る場合 には,その行為の必然的な結果を達成 しようとす る共謀 は容易に推認で きると述べた

最高裁 は,各小売業者 には, 自己の要望に合致 しない卸売業者 との取引を拒絶す る権利があるが,他の者 と 共謀 ・結合 して,自由な取引を妨害 し,気にくわない卸売業者に強制を加えるこ とによって競争を不当に抑圧す ることはこの権利を越えるものであ り, シャーマ ン法 1条が禁止する領域の問題であるとした。また, このような行為が小売業界 の保護や公共の福祉の促進のために必要であるとして も, 自由な取引を抑圧 し, 競争を不当に制限するような手段に訴えることは許 されないとも述べている。

1930 年 の Par amountFamousLas kyCor p.Ⅴ.Uni t edSt at es 事件 6)

は共同取引拒絶への pe rs er ul e の適用を暗示す る事件であ った。本件で は, 映画供給の大部分を占める映画製作 ・配給業者 10 名が,映画興行業者 との間で 結ぶ映画配給 ・上映に関す る統一的な契約様式の採用を協定 した。契約の中に 仲裁条項があ り,興行業者が仲裁に従 うことを拒否 した場合には,配給業者全 員がその者 との取引を拒絶す ることが申 し合わされていた。すなわち,映画制 作 ・配給業者 らの結合 された市場支配カ ーほとん どの映画 フイルムの供給を遮 断す ることので きるカ ーを,興行業者に統一的な契約の遵守を強制す るために 用いた とい う事案であった。 シャーマ ン法 1条違反 に関 して,配給業者 らは, このような措置が興行業者の信頼性を調査す るために有効な方法であ り,協定 は合理的であると主張 したが,最高裁の結論 は,当該協定が通常の競争的なプ ロセ スを抑圧 し違法で あ るとい うもので あ った。 ここで最高裁 は ,rul eof r eas on に従 ったと考え られ るが,重要 なのはその判断方法である。本判決の

3 年前 の Uni t edSt at esv.Tr e nt onPot t e ri esCo. 事件

7)

において,最高

6)28 2 U. S. 30,51 S. Ct . 4 2 ( 1 930) .同様 の事件 に Uni t e dSt at e s v .Fi r s t N a‑

t i onalPi c t ur e s,I nc . ,282 U. S. 4 4 ,51 S. Ct . 45( 1 930 ) がある。

7)27 3U.S.392( 1 927 )

(5)

共 同ボイ コ ッ トと正 当化事 由 9 3

裁 は, あ る種 の行 為 ‑ この事 件 で は価格協 定 ‑はそれ 自体 で不 当 ( unrea‑

s onabl epers e ) である ことを明 らか に してい る。本件 Paramount 判決で は,最高裁 は共同の取 引拒絶 に も perserul e が適用 され るか どうかにつ いて 議論 しなか った。 しか し,違法の結論を導 く過程 において は,いかに して競争 が影響 を受 けるのか,問題の行為がなぜ不 当なのかについてほとん ど説明 して いない。要す るに,最高裁 は, この協定の潜在的な利益 について考慮す ること に消極的な態度を とったのである

8)0

共 同 ボイ コ ッ トに関す る判例理 論の形成を さ らに推 し進 めたのが,1 941 年 の Fashi on Ori gi nat or' sGui l d ofAmer i ca,I nc.V.F. T. C. 事件

9

'で あ った。事案 は次の とお りである。被告 らは,婦人服のデザイナー,その製造 業者,原料 である布地の製造業者,およびその団体 ( FOGA)であ る。被告 らの製品は,独創的な意匠や プ リン トによって高級品のイメー ジを消費者 に与 え る販売戦略に依存 していた。 しか し,競争者の一部が,無断で これ らのデザ イ ンや布地 を複製 し ( st yl epi rat e) ,低価格 で販売 したため,被告 らの製品 の売上が大 きな影響を受 けることにな った。 そ こで,被告 らは,共同の対抗措 置 と して , ( a) 婦人服 の製造業者 は複製品を販売 した小売店 には販売 しない こ と ,( b) 布地の製造業者 は複製品を販売す る小売店 と取引 しているい なる婦人 服製造業者 に も布地を供給 しない こと,を申 し合せた。最高裁 は,本件で は, FOGA の メ ンバ ーが,婦人服 の全卸売市場 に占め る市場 占拠率 は38 パーセ ン

ト,高級品に限定すれば60 パ ーセ ン トに及 び,支配的な地位を有 していること を認めた。そ して,本件行為が シャーマ ン法の精神 に反 している点 と して ,( a ) 婦人服や布地 の製造業者の販路および小売業者の仕入先を制限 していること, ( b)FOGA の計画 に協 力 しないすべての小売業者 や製造業者 を組織 的な ボイ コ ッ トに従 わせてい ること , ( C) 取 引に関す る詳細 な報 告義務 を課す ることに よって メンバ ーの行動の 自由を奪 っていること,そ して , ( d) その必然的な傾向

8) Baue r ,∫. P.,Pe rSel l l e gal i t yorConc e r t e dRe f us al st oDeal; A Rul e Ri pef orRe e xami nat i on ,79 CoI J UM. L. R HV. 6 85 ,688( 1 97 9 ) .

9)31 2U. S.457 ,61S. Ct . 70 3( 1 94 1 ) .

(6)

として,かつその 日的および効果 として,登録 されていない布地や複製 された 意匠の販売か らの競争を直接抑圧 していること,を指摘 した。 これ らのほかに, 最高裁は,被告 らの結合が,ルールを定め,違反者を摘発 して制裁を加える私 的な 「 特殊統治機関 ( ext ra‑government alagency) 」の役割を果 していた

‑これは国家の立法権限への侵害である‑ことも付け加えている。

被告 らは,本件行為が価格の引上げや生産の制限等をともなっていないこと を理 由に違法でないと主張 した。 これに対 し,最高裁は,価格協定や生産制限 協定だけが シャーマン法およびクレイ トン法によって規制 され る行為類型では ないとし,本件のように,婦人服の取引分野における力を行使 して,自己の定 めたルールに従わない製造業者を市場か ら排除す ることも,独 占を形成する傾 向を もち,両法に違反す ると述べた。次に被告 らは,本件行為 は,オ リジナル デザイ ンの無断複製か ら製造業者,小売業者,消費者を保護す るために必要で あ り合理的であると主張 した。 この点に関する最高裁の見解は次のとお りであ る。本件行為が シャーマ ン法およびクレイ トン法に違反する理 由は,競合する 製造販売形態の一つを破壊 しようとす る意図 ・日的,その潜在的な力,独 占へ の傾向および競争者 に対す る抑圧性にあ り, このような状況では手段の合理性 は考慮 されない。それは共謀による価格の合理性が問題 にな らないのと同様で ある。また,組織的な無断複製が不法行為 に該当す るという主張について も, ( a) 複製が不法行為 にあたるかどうかは州法の問題であること ,( b) 仮に法律上不 法行為に該当するとして も,その ことは,連邦法に違反する競争制限的な結合 を正当化 しない, との理由か らこれを退けた。

共同ボイ コッ トが問題 にな る事例の一つ として,複数の事業者が共同事業 ( 共同施設の経営, ジョイ ン トベ ンチャーなど)を起 こし,非参加者にその利 用を拒否す るとい う場合がある

Associ at ed Pressv.Uni t edSt at es 事件 ( 1 94 5 )

10)

はその よ うなケースであ る。被告で あ る 1 , 2 00 以上 の新 聞社 は,

1 0 )326 U. S. 1,65 S. Ct .1416( 1 945 ) . この種 の共 同施設の利用拒否の事件 には,古

くは Uni t e dSt at esv.Te rmi nalRai l roadAs s oc i at i onofSt .Loui s,224

U.S.3 83( 1 91 2 ) がある。 これにつ いては,村上前掲書 ( 注 2)2 03 貢参照。

(7)

共同ボイコットと正当化事由 95

Ass oc i at edPres s ( AP)を設立 し,合衆国全体 にニ ュースのサー ビスネ ッ トワー クを形成 していた. APの定款 は,収集 したニ ュースをメ ンバ ー以外 の新聞社 に販売することを禁 じ, さらにメンバーに対 して, 自己の競争者 にな りうる新 聞社が APへの参加 を申請 した場合 にはこれを拒否す る権利を認 め ていた。この行為が, 共 同ボイ コッ トとして シャーマ ン法 1条違反 に問われた。

最高裁 は, この協定が,ニ ュースの収集を困難 に し,かっその コス トを高 くす ることによって,非 メンバーの新聞社を競争上不利な立場に置 き,また潜在的 競争者の参入を妨げていることを強調 した。

被告 らは, 自己の財産の処分の自由を根拠 に,本件行為が シャーマ ン法の適 用外であると主張 した。 これに対 し,最高裁 は,処分の自由は認めなが らも, 契約や結合 によって力を結集 し,州際通商における取 引を不当に妨害す ること は, この権利の範囲を越え るものであると述べた

また,AP以外 に も ne ws agencyが存在す るとい う主張 に対 して は,AP やその メ ンバ ーが提供す る ニ ュースを排他的に報道できるとい う権利が,多 くの新聞社 にライバルに対す

る競争上 の優位性を与 え,逆 に AP竃のニ ュースを利用で きない新聞が競争 上不利になる可能性が高 いとい うことが問題であると述べた。

最高裁 は, ここで は,まだ共同ボイコ ッ トが pers ei l l egal であ るとは名 言 していない。 しか し,拒絶の理 由 ・動機や経済的効果については,被告が主 張 しなか ったこともあるが考慮 していない し,なぜ考慮す る必要がないかにつ

いて も明 らかに していない。

共同ボイコッ トに perser ul e が適用 され るのか否か とい う疑問を払拭 した のが Kl or' S ,I nc.V.Broadway‑Hal eSt ores,I nc. ( 1 959 ) l l )事件で あ る

本件 の原告 ( Kl or' S) ,被告 ( Broadway‑Hal e) ともサ ンフラ ンシス コで隣接 して営業す る家庭電器製品の小売業者である。原告の安売 り攻勢 に悩 まされた被告 は,被告家電製造業者数名 (このなか には GE , RCA,Zeni t h などの有名なメーカーが含まれていた)およびその特約店 に対 して,原告への

ll )359U.S.207 ,7 9S.Ct .7 05( 1 959 ) .

(8)

製品の供給を停止す るか,・ 差別的な高価格で販売するよ うに要請 し成功 した。

この行為が違法な共同ボイコッ トであるとの主張に対 して,被告 らは ,( a ) 原告 が取引を失 って も,サ ンフランシスコにはメーカーの製品を販売す る数百の販 売業者が存在す る 。( b) 商品の価格,数量,品質 には影響を与えないか ら被告 ら の行為は合理的である, と抗弁 したが,最高裁の受け入れるところとはな らな か った。最高裁 は, シャーマ ン法 1条で禁止 される行為のなかには,その 「 本 質あるいは性格 ( nat ureorcharact er)」 か ら不 当に制限的な ものがあ り, この場合には,裁判所は個別的に有害な効果の発生を審査す る必要がないとの 見解を示 した後,次のように述べた。

「 共同ボイコッ ト又 は事業者 らが共同 して他の事業者 との取 引を拒絶す る行為 は,長 い 間,禁止 された類型であるとみなされて きた。特定の状況 においてそれ らの行為が合理 的であるとの主張によって,違法性を免れることはなか った。‑たとえそれ らの行為が価 格を引下げ,あるいは一時的に競争を促進す るように働いたとして も,禁止 された。1 2 )」

最高裁は,本件 は,事業者が単独で他者 との取引を拒絶 した り,製造業者が 販売業者 との間で排他的取引契約を結んだとい うような事例ではな く,製造業 者 と販売業者の結合の事例であると述べた。そ して, この結合 は ,( a) 開かれた 競争的な市場で商品を購入す る自由を原告か ら奪 って最終的には市場か ら排除

し ,( b) 原告に商品を販売す る自由を売 り手か ら奪い,そ して ,( C) 原告のような 小規模な販売業者を徐 々に市場か ら排除する可能性のゆえに,その本質および 性格上独 占に至 る傾向 ( m onopol i st i ct endency) を有す ると結論 した

13'。

1 2 )I d.at21 2,709.

1 3 ) この事件では,原告 は競争 に与え る影響 については全 く証明せず,被告 も,他 に販 売業者が多 く存在す ることだけを主張 したにす ぎなか った。 この判決が,いかな る 正 当化事 由の主張 も認 めない とい う意 味での persei l l egal を認 めた ものか につ いては疑問が もたれている ( Areeda & Kapl ow,Ant i t rustAnal ys i s,Prob‑

1 ems,Text ,Cas es,4 t hed. , ¶263( 19 88 ) , Sul l i van,Supranot e4,at2 36 ) 0

また この判決 は,被告の動機や競争 に与え る影響をなぜ審査す る必要がない ものか

については十分説 明 していないとい う指摘 もある ( Rahl ,∫.A.,PerSeRul es

andBoycot t sUndert heShe rmanAct:SomeRef l ec t i onsont heKl or' s

Case,45VA.L REV.11 65 ,1 167( 19 59 ) ,Baue r,Supranot e8 ,at6 90 ) 0

(9)

共同ボイコットと正当化事由 97

この判決によ り共同ボイコッ トに関す る最高裁の態度が一応明 らかになった といえよ う。そ して,これまでの事件 における判決理 由によれば, 共同ボイ コッ

トの悪性 は,参加事業者の取引の 自由を制限す ることよ りも ( それ も指摘 され ているが) ,む しろ第三者 (とくに競争者)の活動 に影響を与 え,市場か ら排 除す る危険性を有 している点 に求め られている。ただ, 前述の East ern St at es 事件, FOGA 事件, AP 事件 らは,競争者排除の意図が明確 に現れていた と い うケースではなか った。 しか し,最高裁 は,事業者 らの一連の行為か らその よ うな目的 ・効果を合理的に認定す ることがで きたのである

14)。

その もとで次 に下 された興味ある最高裁判決 は, Radi antBurners,I nc.

Ⅴ.Peopl esGasLi ght & Coke Co. 事件 ( 1 9 6

1) 15)

である。 これは,事業者 団体 による自主規格 と共同ボイコッ トとい う,共同ボイコッ ト規制の範囲が問 題 になるケースの一つに も関連す る事件であった。事案 は次の とお りである

原告 ( Radi ant ) は, イ リノイ州 で,家庭 や ビル 内での暖房 に用 い るガ ス バーナーの製造 ・販売を営む業者であった。天然ガスの安全性を確保す るため に,被告ガス会社,ガスパイプライ ン会社およびガス器具の製造業者 らは,被 告事業者団体 ( Ameri can GasAss oci at i on:AGA) を設立 し, この団体 にガス器具の検査 と承認の業務を委ねていた。そ して,ガス会社 らの問では, AGA の認証 ( sealofapprova l )を得ていないガス器具が用い られている場 合 には,当該需要者 には天然ガスの供給を しないとい う合意がなされていた。

原告 は二度 にわた って AGA に認証の申請を したに もかかわ らず,拒否 され たため本件訴訟 に及んだ。原告の主張 は ,( a ) 検査が客観的な根拠に基づいてお

1 4 )St l l l i van,S upranot e4,at2 411 245 .Sul l i van は ,pe rs ei l l egal の対象を競 争者を市場から排除する二次ボイコットに限定し,この行為を 「 共同ボイコット」

とよび,その他の共同取引拒絶と区別すべきであるとする。したがって,共同ボイ コットの判例とされる前述の FamousLas ky 事件および Fi rs tNat i onal 事件 は,価格協定の一種であって,共同ボイコットと区別する ( at257 ) 。シカゴ学派 の立場から , Bor k は, 合法的な経済目的を共同で追求する努力をともなわない「 裸 のボイコット ( nakedboyc ot t ) 」についてだけ pe rs e ルールを適用すべきであ

るとする 。Bork,R.,TheAnt i t r us tParadox3 3 4( 1 97 8 ) 0

1 5 )3 6 4U. S.6 56, 81S. Ct . 36 5( 1 9 6 1 ).

(10)

らず, 被告 ら( そのなかには原告の競争者 もいた)古 手よって懇意的になされた, ( b) 原告の製品は AGA が承認 した製品よ りも安全,効率的であ り,耐久性 に もす ぐれていた ,( C ) 被告 らは,AGA の認証を得ていない原告の製品を使用す る需要者 にはガスの供給を拒絶 し,原告を有効に市場か ら排除す ることによっ て違法な共謀 ・結合の目的を遂げた, というものであった。

控訴裁判所 は ,pe rsei l l egal となるようなボイコッ トの類型が証明されて いない との理 由で,請求を棄却す る地裁判決を容認 した。 しか し最高裁 は, Kl or' S判決 と矛盾す るとして原判決を破棄 した。原告の主張 ( 上記( C) ) は, 明確に 「シャーマ ン法が禁止す る取引制限および公衆への害 ( publ i charm) の一類型」を証明 しているというのである。すなわち、

「もし,主張にかか る共謀のゆえに,上告人のガスバーナーを買 った者が,それを使用 す るとガスを購入で きないのであれば,上告人 は,その性能が どのよ うな ものであろ う

と も, ガ スバ ーナーを販売す る ことがで きない ことは明 らかで あ る。 したが って, AGA によって承認 されていないことを理 由に,原告 の Radi antBur ne r を使 った場 合 にはガスの供給 を共謀 して拒絶す ることは,その 『 本質または性格』か ら不当に制限 的であ り, コモ ンローや法令 によって禁止 され る種類の制限の一つに該当す る。・ ・ ・ この 種の制限については,‑裁判所 は,種 々の事例 において有害な効果が実際に発生 してい

るか どうかを審査す る必要 はない 。 1 6) 」( 原文の引用符を一部省略)

と述べたのである。原告の主張の力点 は,AGA の内部で,ガス器具製造業者 らが,ガス会社 と共謀 し,認証制度を窓意的に運用す ることにより競争者を排 除 したというところにあった。そうなると,原告が争 ったように,安全性基準 の合理性,その運用の公正さも争点になるが,最高裁 は,その点は判断せず, ガス会社の供給拒絶をシャーマ ン法違反 としたのである

そのため,認証制度

と共同ボイコッ トの関係 は正面か ら取 り上げ られなか った。

次に団体による自主規制 と共同ボイコッ トが問題 となった事件に, Si l verv.

New Yor kSt ockExc hange ( 1 963 )

17

'がある。 この事件で は, 自主規制 に

1 6 )I d. at 659 ,3 67 .

1 7 )37 3U. S.3 41 ,8 3S.Ct .1 246( 1 9 6 3 ) .

(11)

共 同ボイ コ ッ トと正 当化事 由 99 法的な裏付 けが存在 していた点で興味深い。原告 ( Si l ver)は,店頭市場 にお いて地方債を売買す るブローカーであ り,被告 はニューヨーク証券取引所であ る。原告 は被告の会員ではなか った。非会員のブローカーにとって,証券取引 の最前線で活動す る証券会社か ら即時に取引情報を入手で きることが極めて重 要 な ことであった。そ こで原告 は,主要な証券会社 との間で電話回線を設置 し て,情報ネ ッ トワークを形成 したが,そのなかに被告取引所の会員が 1 0 数名含 まれていた。 これ らの会員 は,取引所の規則 に従 って,原告 との電話回線設置 の承認を被告取引所に求めた。被告 は,最初暫定的に これを認 めていたが,そ の後,原告 に事前の通知をす ることな く,不承認の決定を し,当該会員 に回線 を撤去す るよ う命令 した。そのため, 原告 は, 取引量の大幅な減少を こうむ り, 一部事業の廃止 に追い込 まれた。

証券取 引所 は,証券取 引所法 ( Sec uri t i esExchangeAct )によ って,会 員の取引業務 に関 し自主ルールを制定す ることが義務づ け られている。本件で は, この義務の存在が,被告の反 トラス ト法上の責任を免除す るかどうかが最 大の争点 になった。最高裁 は,まず,証券取引所法の諸規定によって反 トラス ト法の適用が除外 され るのは ( 解釈 による廃止 : i mpl i edre pea l ),「 証券取 引所法を機能 させ るために必要な限 りにおいてのみ, しか もその場合で も,必 要最小限の範囲で」認め られると述べた。最高裁の結論 は,本件行為が シャー マ ン法 1 条 に違反す るとい うものである

そこに至 る判断プロセスは次の とお

りである。

( a) 証券取引所法 による適用除外が認め られなければ,本件行為 は,それ 自体 で ( pe rse) シャーマ ン法 1 条違反である。すなわち,証券取引所 とそのメ ン バ ーによる共同行為 は,一言でい うと,店頭証券市場 におけるブローカーとし て有効に競争す るために必要なサーヴィスを原告か ら奪 う共同ボイコッ トであ

したが って,他の法令の政策 にもとづ く正当化事 由がなければ,証券取引 所の行為 はシャーマ ン法違反である。

( b) 証券取 引所法 は,証券取 引委員会 ( Securi t i esandExc hangeCom‑

mi ss i on) に取引所の規則の変更を命ず る権限を与えているが,それは,ルー

(12)

ルの具体的な執行を審査す る管轄権までは含んでいない。 ここでは権限の重複 の問題 は起 こらない。取引所の自主規制活動をなん らかの方法で審査す ること

は,証券取引所法の目的遂行 と対立 しない。取引所の自主規制が競争制限的に 作用す ることを防止す るには,反 トラス ト法が最 も適 している。

( C ) 証券取引所法の規定の趣 旨は,反 トラス ト法の適用を全面的に除外す るほ ど十分 に浸透 しているわけではないが,同法の目的の範囲内にある自主規制を 執行す る個別的なケースでは,それが反 トラス ト法違反の請求に対する正当化 事由とみなされ る場合がありうる。

( d) 本件の場合 は,電話接続の集団的な拒絶が, とうてい正当化 されえないよ うな状況でお こった。すなわち,原告の再三の要求にもかかわ らず,接続を拒 否 した理 由 ( 原告の欠格事由)を開示 しなか った し,原告にそれに対する反論 の機会 も与えなか った。 この ことは,証券取引所法が認めた自主規制権限の範 囲を明白に逸脱するものであ り, これでは,同法を根拠に した正当化の抗弁の 入口にも達 していない。 したが って,取引所の行為 はシャーマ ン法 1条違反で

ある。

さ らにまた,Uni t edSt at esv.Ge neralMot orsCorp. 事件 ( 1 966 )

18

) で も共同ボイコッ トの pe rs erul e が確認 された。 本件では , GM とそのディー ラーの団体 とが協力 して,値引販売を行な う販売業者‑の GM 車の供給を阻 止 した ことが シャーマ ン法 1条違反 とされた。 最高裁 は, 先例を引用 しなが ら,

ある種の協定は, 競争に与える有害な効果のゆえに,およびそれを償 う利点 ( re‑

deemi ngvi r t ur e)が欠 けているために不当であることが最終的に ( conc l u‑

s i vel y)推定 され, したが って,それが実際に もた らした害,あるいは正当化 事 由について詳細に検討するまで もな く違法であるとし,共同ボイコッ トはこ

のような性格の行為であると述べた。最高裁 は,さらに共同ボイコットの違法 性の根拠 にも触れている。すなわち,次のよ うな判示である

1 8 )384U. S.1 27,86S. Ct . 1 321( 1966 ) .

(13)

共同ボイ コ ッ トと正 当化事 由 101

「これ らの事件 ( Kl or' S, Fas hi on Or i gi nat or s'Gui l dofAme r i ca,Eas t e r n St at esReai lLumbe rDe al e r s'As s n .事件。筆者注)の原則 は,複数 の ビジネス マ ンが, 他者か ら‑商品へのアクセスを奪 うことを 目的に, 共同 して行動す る場合には, その行動の背後にある経済的な動機を審査す る必要 はないとい うことである。・ ‑共謀 あ るいは結合 という手段 により事業者を市場か ら排除することは, シャーマ ン法に体現 さ れている自由市場の原理への重大な背反であ り,利益や 自動車販売 システムの維持を理 由に許容 され るものではない。それは ,( FOGA 事件 において)不法行為の防止が理 由にな らなか ったの と同様である。‑われわれは,さらに,本件の結合の成功のなかに は,価格競争の実質的な制限が存在 していた ことを認める

。 19)

2.共 同ボイ コ ッ トの範囲 ‑Nort hwes t 判決 と I ndi anaFederat i on of Dent i st 判決

persei l l egal になる共同ボイ コッ トについては, しか しなが ら依然 として 不明瞭な部分 ( 行為類型, 行為主体 の性格, 市場 における地位,拒絶の理 由等) があ り, とくに下級裁判所での取 り扱いは極めて錯綜 しているといわれ る。 こ のよ うな状況の もとで,近年, perserul e が適用 され る共同ボイコッ トの範 囲 を 限 定 す る最 高 裁 判 決 が 出 され た。 た とえ ば, 1 985 年 の Nor t hwest Whol esal eSt at i oners v. Paci f i cSt at i nonery & Pri nt i ng 判決 2 0 )で は, 事務機器の小売業者を組合員 とす る被告協同組合が,事前の通知をす ることな く原告を除名 した ことが, シャーマ ン法 1条違反 に該当す るか どうかが争われ た。被告 は,事務機器を共同購入 し,組合員に卸売 りを行なっていた。非組合 員 も被告 と取 り引 きす ることは可能であるが,組合員よ りも高 い価格を支払わ なければな らなか った。共同ボイ コッ ト事件のなかでよ くみ られ る団体か らの 除名のケースである。

本件では,被告が協同組合であったことが重要なポイン トとなった。原告 は, pers erul e が適用されるべきであると主張 したが,最高裁は,本件行為 は rul e ofreasonによって判断されるべ きであるとした。 結論 に至 る過程で, 最高裁 は, 先例を回顧 しなが ら, pers ei l l egal とされてきた共同ボイコッ トの類型につい

1 9 )I d. at 1 46,1 3 3 1 .

20 )47 2U.S.2 84 ,1 05S.Ct .261 3( 1 985 ) .

(14)

て明 らかに しよ うと試みている。長 くなるが,その部分を引用 してみよう

「 『 共 同ボイ コ ッ ト』 は, しば しば, 1 条 の適用 に関 して は,それ 自体違法 の取 り扱 い に値す る種類 の経済行為 とされ る‑。 しか し,正確 にいかな るタイプの行為が この禁止 行為 の範 噂 に入 るのか につ いて は,全 く不 明確 で あ る。共 同 ボイ コ ッ トに対す る pe r serul e の適用範囲 に関 して は, perse 法理 の他 の側面 よ りも混乱 がみ られ る。‑ し たが って,それ 自体で禁止す ることが必要 な共同の取 引拒絶の範 噂を定 め る場合 には相 当の注意が必要であ る。‑

本裁判所が,perse アプ ローチを採用 して きた事件 で は,一般 に,単独又 は複数 の 企業が,競争者 に対 し,競争す るために必要 な諸 関係を,直接拒絶す るか又 は供給者 や 顧客 を説得 もしくは強制 して拒絶 させ ることによ って,共 同 して不利 な立場 に陥れ るよ うとす る行為が含 まれて いた。‑ これ らの事件で は,ボイ コ ッ トは,しば しば, ボイ コ ッ トされた企業を して競争を可能 にさせ るために必要 な供給,施設又 は市場へのア クセス を遮 断 し ( Si l ve r,Radi antBurne rs の各事件) , また, しば しば, ボイ コ ッ ト企業 は,関連市場 において支配 的な地位 を有 していた ( Si l ve r ,AP,FOGA の各事件) 0 加 えて, これ らは,一般 に,全体 の効率性 を高め市場をよ り競争的にす ることを意図 し て行 なわれた とい う主張 によって正当化 され ない行為であ った。 このよ うな状況の もと で は,反競争 的 な効果 の蓋然性 ( l i kel i hood)は明 白で あ り,対抗す る競争促進 的 な 効果 の可能性 ( poss i bi l i t y) は期待で きない。

21

) 」( 引用符を省 略)

最高裁は, 協同組合によるすべての制限的な行為や排除行為が , persei l l egal とされ るボイコッ トのよ うに,反競争的要素が支配的な性格の行為であるとは 考え られないと述べた。被告 Nort hwest のよ うな協同組合の行為 は,性格的 に競争制限的効果が内在す る共同行為ではな く,む しろ,経済効率を高め,市 場を競争的にす ることを 目的 としている

すなわち,参加小売業者 は,購入や 在庫管理 における規模の経済を達成 し,共同購入組織がなければ不可能であっ たような商品へのアクセスを確保す ることがで きるよ うになる。また, コス ト 節約や注文の保証 によって,小規模の小売業者 は,価格の引下 げや,大規模の 小売業者 と有効に競争す るために必要な商品在庫を維持することが可能になる。

このよ うに述べたあと,最高裁 は,本件除名行為に関 しては次のよ うに述べ

2 1 )I d.at29 3‑ 294 ,261 9‑ 2620 .最高裁 は ここで,過去 の判例 を回顧 して い る。 その

なかには, ここで取 り上 げた判決が含 まれている。

(15)

共 同ボイ コ ッ トと正 当化事 由 10 3 た。 共同購入 のための組合が有効 に機能す るためには, 合理的なルールを定め, 執行 しなければな らない。除名のルール も,協同組合 にとって,組合員の信用 度を監視す るために必要 な手段であるか もしれない し,除名行為が,性格的に 反競争的効果 しか もたないとい う状況 は,少な くとも本件のような事情の もと で は,考え られない。協同組合が市場支配力又 は有効 な競争 に不可欠 な要素へ の排他的なアクセスを有 していない限 り,除名が常に反競争的な効果を もた ら す可能性があるとい う結論 は正 当化 されない。協同組合の共同購入事業に関 し てそのよ うな証 明がない限 り,裁判所 は ,rul eofreason を適用す るべ きで ある。 このよ うに述べて, perserul e に従 って本件行為を違法 と判断 した高 裁判決を破棄 し,差 し戻 した。

もう一つの F. T.C. Ⅴ.I ndi an8 =Federat i on ofDent i st s 事件 ( 1 9 86 )

22)

の事案 は,イ ンディアナ州の歯科医師の 8 5 パーセ ン トを会員 とす る被告歯科医 連盟が,会員に,患者のエ ックス線写真 ( 保険金支払の判断資料 として必要 な 資料であった)を保険会社に提供す ることを拒否 させた とい うものであった。

最高裁 は,歯科医連盟の行為 は,歯科治療の団体保険に加入 している患者 に対 して,希望す るサー ビス ( 請求書 とともに患者のエ ックス線写真を提供す る) を共同 して拒絶す ることを意味 してお り, これは従来共同ボイ コッ トとよばれ て きた ものに類似 していることを認めたが ,perserul e の適用 は否定 した。

すなわち,次のよ うに述べた。

「 本裁判所 は,過去 において,共同ボイ コッ トはそれ 自体 ( perse ) 違法であると述 べたことがあるが‑,われわれは,歯科医連盟の政策を 『ボイコッ ト』にむ りや り分類 し ,pers erul e を適用す ることは辞退す る。最近 われわれが, Nor t hwestWhol e‑

sal eSt at i oners v. Paci f i cSt at i nonery & Pri nt i ng 事件 において認 めたよ うに, 共同ボイコッ トに分類 され る取引制限の類型は無差別 に拡大 され るべ きではない 。pe r se アプローチは,一般 に,市場支配力を もった企業が,供給者や顧客を して競争者 と 取引させないようにす るために, これ らの者をボイコッ トす るケースー明 らかに本件 は それに該当 しない‑に限定 されてきた。さらに,われわれは,専門的な技能を有す る職 業 の団体 ( prof es si onalass oci at i ons ) によ る 自主規 制 をそれ 自体不 当 ( perse

2 2 )47 6U. S.4 47 ,1 0 6S. Ct .20 0 9( 1 9 8 6 ) .

(16)

unr eas onabl e ) と して取 り扱 うこと,・ ‑および,一般 に,特定の行為の経済的影響が ただちに明 らかで はない場合 には ,pe rse 分析を取引関係のなかで課 された制限に拡 大す ることを控えて きた。このよ うに,‑われわれは, 本件の制限行為を ,pe rsei l l egal

のルールではな く ,rul eofreason の もとで評価す る。2 3 )」

しか し,結局 は ,rul eofreason に従 い連盟の行為 を違法 とした FTC の 判断を正当であるとした。その際,本件行為が不当でないことの理 由として連 盟が挙げた三っの主張をすべて退 けた。

まず ,( a ) FTC が関連市場の画定およびそ こでの連盟の会員の力を正確 に認 定 していないとの主張に対 しては, この作業 は,当該行為が反競争的な効果を もた らす可能性を判定す るための ものであるか ら,本件の ごとくに実際に効果 が認め られ る場合 には,それが行なわれな くて も誤 りで はない と述べた。

( b) 同様 に FTC が,エ ックス線写真の提供を拒否すれば,提供 した場合 よ り も患者にとって医療サー ビスの費用が高 くなるとい うことを認定 していないと の主張について,最高裁 は次のよ うに述べた。エ ックス線写真の提供を求める のは保険金請求の審査 コス トを下 げることにあ り,その 目標が実際に達成 され たか どうかは違法性判断にとって重要ではない。仮 に保険会社や患者にとって 役 にたたない情報であって も,連盟が勝手 にその情報を不要 と決めることは許

されない。

( C ) 連盟 は, さらにエ ックス線写真の提供拒否が 「医療の質」を維持す るため に必要であると主張 した。すなわち,エ ックス線写真は,それだけでは,歯科 医療 における診断や適切な治療方法を発見す るための十分な資料 とはな りえな い。保険会社が,歯科医師が使用す るすべての診断資料をみないで,エ ックス 線写真だけにもとづいて保険金を支払 うようになれば,実際に患者の利益にな るよ うな治療に対す る支払を拒否す るという誤 りを犯 し,その結果患者 は適切 な治療を うけ られな くなる危険があるとい うものである

これに対す る最高裁 の解答 は次の とお りである。主張 は,要す るに,消費者が選択の際に必要だ と

23)I d. at 45 8‑ 459,201 8.

(17)

共 同ボイ コ ッ トと正 当化事 由 10 5 考える情報‑の自由なアクセスを許す無制約 な市場では,消費者 は無分別な, 時には危険です らあるような選択行動 とることになるとい う趣 旨であるが, こ のような議論 はシャーマ ン法の基本政策 に反す る。また, この情報提供が歯科 医療サー ビス市場で患者 に不利益 になると信ず る理 由はない。なぜな ら,保険 会社 は,患者 との契約を とるために競争 しているのであるか ら, コス ト節約だ けを考え,顧客の利益を無視す るよ うな ことはで きないか らである。

このよ うに, 現在では ,perserul e が適用 され る共同ボイ コ ッ トの範囲 は, ある程度類型化 されてい る 。Yon Kal i nowski によれば,共同ボイ コッ トに は次の 3 タイプがあるという。すなわち , ( a) 市場支配力を もった事業者 らが, 彼 らの競争者 との取引をやめさせ る目的で,その供給者や需要者をボイコッ ト す る ( 二次ボイコッ ト) とい う, ここで検討 したケースのはかに ,( b) それ 自体 が persei l l egal である協定の実効性を はか るために共同 して取 引拒絶す る 場合 , ( C) ある取引段階の事業者 らが,他の取 引段階の事業者をボイコッ トし,

ボイコッ トされた当該事業者 の競争者を利す る場合,である

24) 。

‑3. 非商業的 目的 と共同ボイコッ ト

共同ボイコッ トは,政治的,宗教的あるいは倫理的価値の実現のために用い られ ることが多 い。 このよ うな目的が ,perserul e の適用あるいは違法性 の 判断において どのよ うな影響を及ぼすかは簡単 には説明で きない。 これ らの目 的は,競争者を市場か ら締め出すための単なる口実 として主張 され る場合があ る。また,純粋 にこのよ うな価値を信奉 して行動 した場合で も,集団で購入や 販売を拒絶す ることは,被拒絶者 に強い経済的イ ンパ ク トを与え ることが あ

2 4 )YonXal i nowski ,Ant i t rustLawsandTradeRegul at i on ,§ 6 D. 01 ( 1 99 2 ) . 下級裁判所の動向 ( 統一 されていない) について も同書を参照。要す るに, per s ei l l egal となる共同ボイコッ トは行為の外形のみでは不十分であり,一定の付加 的状況の審査を必要 とす ると考え られ, 緩和 された perserul e が用い られている。

その他, 共同ボイコッ トの類型化を試み るもの として , Bauer,Supranot e8 ,at7

05‑ 71 7(pe rserul e は動機,反競争的効果,強制 ・排除の意図を審査 した うえ

で適用すべ きだとす る) ,また村上前掲書 ( 注 2)参照。

(18)

り,経済的効果を抜 きには議論で きないこともある。 また,その際,そのよう な目的を追求す るために共同ボイコッ トを用いることが適切かどうか とい う,

目的一手段の適合性 も問題 となる

たとえば,1 943 年の Ameri canMedi calAss oci at i onv.Uni t edSt at es 事 件 2 5 )で は, 医 師会 とそ の地 方 支 部 が, 前 払 方 式 の 医療 業 務 ( pre pai d medi calcar e)が医師の倫理 に反す るとして, このよ うな業務 に従事す る医 師を協会 か ら除名 し,病 院等 の医療 に必要 な設備 の利 用 を拒 否 した ことが シャーマ ン法 1条違反 に問われた。 控訴・ 裁判所 は, 協会が職業倫理基準 を定 め, 自己規律を行な うことは許 され るが,その ことと,競合す る医師のグループを

ヽ 打倒 しよ うと努力す ることは別である述べた。協会 には,説得や議論 とい うよ

り安全かつ穏便 な方法で, 自分たちの考え方や医療方法が正 しいことを一般大 衆 に訴え,支持を得 るという途が与え られている。その目的が公共の福祉の実 現や詐欺的で不公正な医療を排除す ることにあった として も, シャーマ ン法上

の責任を免れ るには不十分である述べた。

地裁判決であるが,1 9 46 年 の HughesTool Co. Ⅴ.Mot i onPi ct ureAs‑

s oci at i on事件 2 6 )の事案 は,映画製作会社の団体であ る被告が,原告の映画 宣伝が下 品 ( i ndecent ) であるとの理 由で認証 ( sealofapprova l )を与え なか った とい うものである。明白な共同ボイコッ トは存在 していなか った。団 体のメ ンバー間で原告 と取引 しないという申 し合わせ はなか った し,興行業者 に対 して原告 と契約 しないよ うに働 きかけた事実や消費者 に原告の映画を見な いよ うに説得 した事実 もなか った。 しか し ,Sul l i vanによれば,ボイコ ッ ト の効果 は,前述の Radi antBurners 事件 ほど強 くはないが,それ に類似す

るものであった。 したが って, もし,認証制度が合理的で,客観的な基準 に従 い公正な手続で運用 されているという事実が欠 けていれば,問題 とな りうる事 案であ った ㌘)。 しか し,裁判所 は,産業全体の健全性 を維持す るとい う目的

2 5 )1 3 0F.2 d2 3 3( D. C. Ci r .1 9 4 2 ) , ar f ' d,31 7 U. S.51 9( 1 9 4 3 ) . 2 6 )6 6F. Supp.1 0 0 6( S. D. N. Y. 1 9 4 6 ) .

2 7 )Sul l i v an,S upr anot e4 ,at2 6 3 .

(19)

共同ボイコットと正当化事由 107 が適切であった とい う理 由か ら,合法であると判断 した。

Mol i nasv.Nat i onalBas ket bal lAss ocat i on事件 ( 1 96 1 )2 8 )は, プ ロ

・バスケ ッ トボール所属チームの試合 に関 して渚を行なった ことが連盟の倫理 規約に反す るとして,所属チームと連盟か ら除名 され選手生命を奪われた原告 が,反 トラス ト法訴訟を提起 した事件である。裁判所 は,所属チームの勝敗 に ついてギャンブルをす ることを禁止 した連盟規約 は,プロスポーツに対す る公 衆の信頼を維持す るために必要であり,合理的であること,およびそれを原告に 適用 したことにも合理性があるとの理由で,除名行為を合法であると判断 した。

政治的な目的の場合 には,若干問題が複雑である。 この場合 には,表現の自 由等の憲法上の権利が関連 して ぐるか らである

.

一例 をあげれば,1 98 0 年 の Mi ssouri v. Nat i onalOrgani zat i onf orWomen事件 怨)はまさにその よ

うな事件であ った。被告全 国婦人連盟 ( Nat i onalOrgani zat i onf orWom‑

en;NOW) は, 1 97 2 年 に連邦議 会 で採 択 され た性 差 別 禁止 条 項 ( Equal Ri ght sAmendment;ERA) を承認 しない州では大会を開催 しない ことを 決定 し,同時 に手紙 や個人 的接触 を通 じ,他 の組織 に も同調 を求め るキ ャン ペー ンを行な った。その結果, ミズー リ州のホテルや レス トラン,および同州 の経済全体が相 当の過 失を蒙 ることになったため,同州が差止めを求めた。第 八巡回控訴裁判所 は,NOW のボイ コッ トキ ャンペー ンを,ERA への国民の 注意を喚起 し,州 の立法機 関に承認 を働 きか ける行動であ ると評価 し,No‑

err‑Penni ngt on法理 を適 用 して, シャーマ ン法 の適用 を除外 した。No‑

e rr‑Penni ngt on 法理 について詳論す る余裕 はないが,私人が競争制限的な 目的を,政府や立法機関を通 じて達成 しよ うとす る場合 には,その行為には反 トラス ト法の適用が除外 され るとい う原則であ り,判例上形成 されてきた もの である

それは,合衆国憲法第‑修正 によって認め られた権利 ( 言論,集会, 結社,請願の権利) と反 トラス ト法の調整原理 としての側面を有 している3 0 ).

2 8 )1 9 0F, Supp.2 41( S. D. N. Y. 1 9 6 1 )

2 9 )6 2 0F. 2 d1 3 01(8t h. Ci r. ) ,c e r t .de ni ed,4 4 9U. S.8 4 2( 1 9 8 0 ) .

3 0 )これについては,たとえば ,Fi s c he l , D. R ‥ Ant i t r us tLi abi l i t yf orAt ‑

(20)

このよ うに,政治的なボイコッ トの場合 には,反 トラス ト法の適用 自体が排除 され る場合があ りうる

31)。

Ⅱ 日本法の検討

1.共同ボイ コッ トと競争の実質的制限

前述の流通 ・取引慣行ガイ ドライ ンでは, どのよ うな行為が共同ボイコッ ト とされているのであろ うか。同ガイ ドライ ンでは , 「 事業者が競争者や取引先 事業者等 と共同 して又 は事業者団体が,新規参入者 の市場への参入 を妨 げた り,既存の事業者を市場か ら排除 しよ うとす る行為 は,競争が有効 に行なわれ るための前提条件 となる事業者の市場への参入の自由を侵害す るものであ り, 原則 として違法 となる。 」 3 2 )とされている。そ して,違法 とな りうる具体的な 行為 として同ガイ ドライ ンが挙げているものは,直接 に取引を拒絶 し又は取 引

t empt st ol nr l uenceGov ernmentAct i on:TheBasi sand Li mi t soft he Noerr ‑ Penni ngt onDoct ri ne,45U.C J f T .L. REV. 80 ( 1977 ) ,Not e ,Appl i ‑ cat i onofSherman Actt oAt t empt st ol nr l uenceGov ernmentAct i on , 81 HARV. L. RI く V. 847( 1968) .八木真幸 「 政府請願行為 と反 トラス ト法 の適用

‑ノア ・ベニ ン トン理論 と不実除外の事例研究( 1 ) 〜( 4 ) 」公正取 引437 号 16 頁,438 号 21 号 ,439 号 49 頁 ,440 号 53 頁。

3 1 )Not e , Now orNever:I sThereAnt i t rus tLi abi l i t yf orNonc ommerci al Boycot t s?,80 Col , UM. L RHVL .1317( 1980 ) 。 政治 目的 とい うことだけで シャー マ ン法の適用を最初か ら排除す るので はな く,市場支配力のテス トによって合法 ・ 違法を決め るべ きであるとす る見解 もあ る ( Not e,A MarketPowerTes tf or Noncommerci alBoycot t s,93Y.L ∫ . 523( 1984 ) 0

32)公正取引委員会 「 流通 ・取引慣行 に関す る独 占禁止法上の指針 」 ( 平 成 3 年 7 月) 第 1 部,第 2,1 ( 第 1 2 段落) 。共同ボイコッ トを不 当な取引制限行為 として問題 と す る場合,一般 には 2 条 6 項の例示 にある 「 取引の相手方の制限」に該当す ると読 明 され る。 もっとも,共同ボイコッ トの内容である間接的な取 引拒絶を行為者問の 取引先制限 にあてはめ ることは,厳密 にいえば困難であるか もしれない ( 間接取引 制的な取 引先制限 も含む と考えれば可能か も しない) 。 また,取 引段階の異 なる事 業者 ( 単独)がボイコッ トを指導 ・要請あるいは維持す る役割 を果 しているが,明 確 な事業活動の制限を引 き受 けていないよ うな場合 も ( 実際にはほとん どないと思 われるが) , これ らの事業者 も含めて取引先の制限を行 っているとはいいがたい。 し か し, これ らの場合で も , 相互 に事業活動 を拘束」 していることには変 りがな

い 。

8 条 1 項 1 号の場合は行為類型に限定がない。

(21)

共 同ボ イ コ ッ トと正 当化事 由 109 先に働 きか けて拒絶 させ,事業者 ( 間接的な拒絶 の場合 には競争者)を市場か

ら排 除す る共 同行為 で あ る。 これ はアメ リカ反 トラス ト法 で persei l l egal の取 り扱 いを受 けて きた行為類型 に も, ほぼ対応す る。

共同ボイ コッ トが 3 条後段や 8 条 1 項 1 号違反 とな りうることは,前述 ガイ ドライ ンが 出る以前か ら一部 の論者 によ り指摘 されていた 3 3 )。 しか し,集団 で他 の事業者を市場か ら排除す ることを特徴 とす る共同ボイコ ッ トは,市場の 価格決定 メカニズムに直接影響を及ぼす行為であ る価格協定や数量制限協定な どのいわゆるカルテルとは,行為の性格や競争 に与える効果の点で完全 に同 じだ とい うわけではない。 したが って,まず検討 しなければな らないことは,競争の 実質的制限の成立,判断をどのように考えるか ということである 。 この問題を提 起 したのは今村成和教授である。今村教授 は,競争の実質的制限を,東宝 ・スバ ル東京高裁判決の流れを くむ 「 市場支配」 ,すなわち事業者又 は事業者集団が価 格その他の取引条件を左右 して市場を支配できる状態, という意味だけで理解す ると,共同ボイコッ トのような行為を不当な取引制限 として とらえる余地 はない と指摘す る。教授によれば, この ことが,従来,共同ボイコッ トを不当な取引制 限の一つ と考えることを妨げて きた。そこで教授 は,競争の実質的制限が認め ら れる場合を ,( a ) 事業者 による価格支配又はその他の取引条件の支配が行なわれて いる場合 ( 統合型市場支配) と , ( b) 市場の開放性が妨げ られている場合 ( 閉鎖型 市場支配) とに分 け,共同ボイコ ッ トや私的独 占は後者 の タイプの市場支配の 問題であるとす る。共同ボイコッ トの場合 は,共 同 して取 引を拒絶 し事業者を 市場か ら排除す ることが,市場の開放性を妨 げることであ り,その事実を もっ て,競争者の実質的制限を認め うるとす る。このよ うな構成 は,反 トラス ト法に おいて pers ei l l egal とされ る共同ボイ コッ トに関す る考え方 と共通す る

34'。

33 ) 今村前掲書 ( 注 2)1 23 頁,正 田彬 ・全訂独 占禁止法 Ⅰ ( 19 80 )332 頁,美方謙二

「 取 引先制限カルテルに対す る規制強化の動向 と問題点( 1 ) 〜( 3 ) 」公正取引 303 号 2 貢 ,305 号 6 頁 ,306 号 22 頁,今村成和 ‑丹宗 昭信 ‑実方謙二 ‑厚谷嚢 児編 ・注解 経済法 〔 上巻 〕 ( 1 9 85 )1 30 貢 ( 実方謙二 ‑和 田健夫)など。

34 ) 今村成和 ・独 占禁止法入門 ( 第 3 版) ( 1 9 92 )6 4‑68 貢。前述のガイ ドライ ンの引

(22)

共同ボイコッ トに対 して厳格な立場を示す ものである。

筆者 は,競争の実質的制限を,経済主体間の自由な取引を通 じて市場価格が 形成 され,それが各経済主体の行動を規制す るというプロセスの繰 り返 しによ り,適正な資源配分等の経済成果や分権的経済秩序が実現 されるという競争の 機能を侵害す るであ り, このことは,事業者や事業者集団の側か らみれば,市 場の価格,取引条件等をその意思でコン トロールできる ( 完全に支配で きる状 態である必要 はない)市場支配力が形成 ・維持 されている場合 に認め られ る と,統一的に理解 している。そ して,共同ボイコットの違法性 も, このような 市場支配 ( 今村教授のい う 「 統合型市場支配 」) を中心に した競争の実質的制 限の解釈によって判断で きると考える3 5 )。最 も問題 となるのは,反 トラス ト 法で も persei l l egal とされて きた類型のボイコッ ト,すなわち,競争事業 者を市場か ら排除又は新規参入を阻止す るために,供給者 ・顧客に働 きかけて 取引を拒絶させ る場合 ( いわゆる二次ボイコッ ト)であろう

前述ガイ ドライン が,問題 となりうる例 として挙げている多 くの行為が これに該当す る3 6 )。 これ

らの行為 は,一般に,それにより潜在的競争圧力か ら解放 され,参加事業者間 での非競争 的な状況を維持 した り,市場 にお ける供給量 の増大 を抑えて価

用部分 ( 注32 ) は今村説に近い考え方である。 しか し,ガイ ドライ ンが,他方で, 後述のように,競争への影響を個別的に検討す る必要性を指摘す るのは,一貫性を 欠 くという印象を与える。なお,わが国の独 占禁止法には, シャーマ ン法 1条 と異 なり,競争の実質的制限という要件がある。 したが って,理論上 は,競争機能に対 す る阻害的効果の認定が違法行為の成立の前提 になっているか ら,独 占禁止法は, rul eofreas on を原則 としているといい うる。 しか し, この ことは,同法の運用 において persei l l egal 的な取 り扱いが全 く許 されないということを意味 しない。

pers e ルールは,行為の性格上反競争的な行為 については競争阻害効果を具体的 に認定するまで もな く違法 とす るというものであり,裁判所が数多 くの シャーマ ン 法 1 条事件か ら形成 してきた,競争阻害効果の立証範囲に関す るルールである。 し たが って,わが国で も,競争の実質的制限の認定の際に, このようなルールの趣 旨 を採 り入れることは理論的にも,実際上 も不可能ではない。

35)私見 は,丹宗暁信他 ・論争独 占禁止法 ( 近刊)で明 らかにされる予定である。

36) ここでそれ らを記述す ることは しないが,流通 ・取引慣行ガイ ドライ ンでは,販売 業者や製造業者が,新規参入者や輸入品を阻止す るために共同 して取引拒絶す る場 合 (この場合取引段階の異なる者 も含まれる)が例示 されている ( ガイ ドライ ン第

1 部,第 2 , 2 ない し4) 0

(23)

共 同 ボイ コ ッ トと正 当化事 由 1 1 1 格の下落を防止す るなどの効果が内在 している。 この場合,参加事業者の数や 市場 占拠率をみ ることが必要だ と思 うが, ほとん どの事業者が参加 しているの が通常であろ うか ら ( そ うでなければ意味がない) ,競争者排除の意図 ・目的 が明白な共同ボイ コ ッ トにつ いては,市場支配力の形成を認 めることがで きよ う3 7 )。従来, このよ うな行為を事業者団体が行 った場合には, 8 条 1 項 3 号, 5 号が適用 されて きた。 しか しこれか らは, この種のケースは, 1 号の適用事 例 として判断すべ きであろ う

ーしか し,反 トラス ト法の判例か らも明 らかなよ うに,実際の場面で は,明白 な共同ボイコ ッ トだけが問題 になるわ けで はない。取引拒絶 には経済外なそれ を含めて様 々な理 由や背景の もとに行われ ることがあ り, また事業者の市場か らの排除 も,間接的に,あるいは結果 として発生す る場合 もある。排除の程度 ( 市場の開放性 に与え る効果) も事案 によ って異な りうる。 このよ うな場合 に は,当該行為が行われた事情 や理 由,事業者 を排除す る目的や効果,排除の程 度 などを総合的に考慮す ることが必要 になろ う。前述 ガイ ドライ ンも, この点 について次の よ うに述べて いる。「 共同ボイ コ ッ トには,様 々な態様の ものが あ り,それが事業者の市場‑の参入を阻止 し,又 は事業者 を市場か ら排除す る こととなる蓋然性の程度,市場構造等 によ り,競争 に対す る影響の程度 は異な る。共同ボイ コッ トが行われ,行為者 の数,市場 における地位,商品又は役務 の特性等か らみて,事業者が市場 に参入す ることが著 しく困難 にな り,又 は市 場か ら排除 され ることとなることによって,市場 における競争が実質的に制限

37 )Sul l i van,Supranot e4,at257( 「 典型的なボイコ ッ トは,ある レベルの事業者 が同 じレベルで参入 を阻害す る手段であ る。 それ は市場支配力 ( marketpower) を形成又 は維持す る ( あるいはそ うしようと企て る)方法の一つである 」) 。共同ボ イコッ トに 3 条後段が適用 された数少ない例の一つである旭砿末事件 ( 最高裁昭和 6 3 年 3 月 4 日第二小法廷判決,審決 は昭和59 年1 0 月 1 5 日 ・審決集31 巻 33 貢)の旭砿 末 と住友 セメン トの協定 は, このよ うな意味での共同ボイコ ッ トの例 ともみること がで きる。すなわち,旭砿末 と住友セメ ン トが,それぞれの競争者の新規参入を阻 止す るために, 原材料の供給 の制限を行 ったとい う評価 もで きるか らであ る。ただ, 典型的な共同ボイコッ トと違 う点 は,両社が同時に原材料の供給者で もあ ったとい

うにす ぎない。 しか し,審決における違法性の とらえかたに関 しての疑問につ いて

は, ジュ リス ト昭和五九年重要判例解説,経済法 4 事件 ( 和 田健夫)参照。

(24)

される場合には不当な取引制限 として違法 となる詔)」 。たとえば,ボイコッ ト 参加事業者の数が少ない一次ボイコッ ト ( 直接的なボイコッ ト)の場合で,排 除の程度が相対的に弱 く ( 他 に取引相手が見 出 しうる),あるいは一応の合理 的な理由 ( 財務状況のよ くない取引相手,信頼性の悪い販売業者の淘汰)が と

もなっているような場合には,競争の実質的制限 とまでは至 らないと判断され ることもあ りうるであろう。

共同ボイコッ トが 3 条後段および 8 条 1 項 1 号の守備範囲に入 ることになれ ば,不公正な取引方法 ( 一般指定 1 項) ,あるいは 8 条 1 項 3,4,5 号 との関 係 はどのようになるのだろうか。結論か らいえば,理論的にも,実際上 も, こ れ らの諸規定の存在意義 は失われないであろう

3 条後段 と一般指定 1 項の対 象 となる行為類型 は重複すると思われるが,適用範囲の関係 は,競争の実質的 制限と公正競争阻害性 という違法要件の性格の差にも関連す る困難な問題であ り,筆者 も十分検討するに至 っていない。ただ少な くとも,競争の実質的制限 が認め られ る限 り, 3 条後段を優先的に適用すべ きであると思われ る

した が って,従来原則的に1 9 条の問題 として説明されてきた共同の取引拒絶 は, こ れか らはまず 3 条後段の適用可能性が検討 されなければな らないが 封),そのな

38 ) 第 1 部,第 2,1 。そ して,競争 の実質的制限が認め られ る例 として,( D価格 ・品 質面で優れた商品を製造 し,又は販売す る事業者,②革新的な販売方法をとる事業 者,③総合的事業能力が大 きい事業者,が市場か ら排除されたり参入を著 しく阻害 され る場合,④競争が活発 に行われていない市場への参入が著 しく阻害 され る場 合,⑤参入 しよ うとす るすべての事業者 に対す る共同ボイコッ トであって,参入が 著 しく阻害 され る場合,が示 されている。今村教授は,共同ボイコッ トは事業者や 新規参入者を市場か ら排除 し,市場の開放性を妨 げる点に競争の実質的制限の根拠 があるのであ り,①〜@ のよ うに排除 され る事業者を限定す ることに反対 され る

( 書斎の窓 1 9 9 3 年 4 月号 4 3 頁) 。 しか し, これは,あ くまで も一例であろ う。ガイ ドライ ンで は,⑤ も挙げ られている。 しか し,「 著 しく」 とい うことばが附 されて いるように,ガイ ドライ ンは排除の程度を問題 としていることは明 らかである。

3 9 ) これまでに,価格協定に付随 して取引拒絶が行なわれた事件 はい くつかあるが,審

決では価格 カルテルの実効性担保手段 と評価 されている。詳細 は,今村 ‑丹宗 ‑実

方 ‑厚谷前掲書 ( 注 3 3 )1 3 0 頁 ( 美方謙二‑和田健夫)。今後 は独 占禁止法上達法な

目的を達成す るために共同ボイコッ トが行われる場合で も,ボイコッ ト自体 に 3 条

後段, 8 条 1 項 1 号を適用することを検討すべ きである。

(25)

共 同 ボイ コ ッ トと正 当化 事 由 113

かで,競争の実質的制限にまでは至 らないが,不公正な取引方法 として問題 と なるケースがありうることは完全に否定はで きないであろう。 8 条 1 項 1 号 と

3,4,5 号の場合は,規制対象に関 しては,行為類型を特定 していない 1号が 3,4,5号を包摂する関係にある。 ここで も競争の実質的制限が認め られ る場 合には, 1号が優先 して適用 されることになろう4 0

) 。

2. 共同ボイコッ トと正当化事由

ここでは,共同ボイコッ トあるいは共同ボイコッ ト類似の結果が もた らされ る場合 において,行為者が主張す る正当化事由をどのように評価すべ きについ て考察す る。考察 は, 3 条後段,および 8 条 1 項 1 号に関するものであるが, 最初に不公正な取引方法 ( 一般指定 1項)におけるこの種の問題についての議 論をみてお こう

( 1) 不公正な取引方法における議論

一般指定 1項の共同の取引拒絶に関する議論では,共同の取引拒絶は,例外 的に 「 正当な理 由」がある場合を除いて,行為 自体か ら違法 ( 不当)であると されて きた。そ して,「 正当な理 由」の有無 は,公正競争阻害性の観点か ら判 断され るべ きであるとす るのが通説 ・判例の立場である

したが って,「 正当 な理 由」の存在は,「 公正な競争を阻害 しない」 とい う文脈で主張 されなけれ ばな らず, 「 事業経営上必要 あるいは合理的であるとい うだけでは,『 正 当な 理 由』があるとす ることはで きない

4

1 )ことになる。

このような解釈を前提に,行為の性格上違法性が強いとされる共同の取引拒 絶で も,例外的に 「 正当な理 由」が認め られ る場合があることは従来か ら指摘 されていた。 これは,独 占禁止法違反行為 ( 主 として不当廉売が想定 されてい

40 )た とえば これまで,事業者 団体が事業者 に取 引拒絶を勧奨 した ことが 8 条 1 項 5 号 違反 にあ るいは加入制 限が同 3 号違反 問われたケースのなか には,今後 は 1 号違反 と して取 り扱 うべ きものが存在す る。この点で有益 な示唆 とな るのは, 厚谷棄児「 集 団的不公正 な取 引方法 につ いて」北大法学論集43 巻 4 号495 頁。

4 1 )最高裁 昭和50 年 7 月 1 1日第二小法廷判決,民業29 巻 6 号 951 頁 ( 育児用粉 ミル ク事

件) 。

参照

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