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呼吸再現性と線量指標に関する画像誘導技術の研究

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(1)

学位論文

Doctoral Thesis

肺腫瘍における定位放射線治療のための

呼吸再現性と線量指標に関する画像誘導技術の研究

(Image-guidance technique comparison on respiratory reproducibility and dose indexes for stereotactic body radiotherapy in lung tumor)

神 﨑 竜 二 Ryuji Kanzaki

2020年 3月

(2)

学位論文

Doctoral Thesis

論文題名 : 肺腫瘍における定位放射線治療のための

呼 吸 再 現 性 と線 量 指 標 に関 する画 像 誘 導 技 術 の研 究

( Image-guidance technique comparison on respiratory reproducibility and dose indexes for stereotactic body radiotherapy in lung tumor)

著 者 名 : 神 﨑 竜 二 Ryuji Kanzaki

審査委員名 : 主 査 教授 氏 名 荒木 不次男

副 査 教授 氏 名 村上 龍次

副 査 教授 氏 名 船間 芳憲

2020年 3月

(3)

目次

要旨... 1

博士後期課程在籍中の論文一覧 ... 3

謝辞... 4

略語一覧 ... 5

1

章 序論

1.1

本研究の背景 ... 6

1.1.1

悪性新生物 ... 6

1.1.2

悪性新生物に対する対策 ... 9

1.2

肺腫瘍 ... 11

1.2.1

肺癌について ... 11

1.2.2

肺癌の分類 ... 11

1.2.3

肺癌の病期分類... 11

1.2.4

肺癌の治療 ... 14

1.2.4.1

手術(外科療法) ... 14

1.2.4.2

抗癌剤(化学療法) ... 14

1.2.4.3

放射線療法 ... 14

1.2.5

放射線治療計画に関わる体積 ... 15

2

章 体幹部定位放射線治療(stereotactic body radiation therapy : SBRT)

2.1

諸言 ... 18

2.2

体幹部定位放射線治療の定義 ... 18

2.3

体幹部定位照射におけるリニアックの品質管理 ... 18

2.4

治療中の体動管理 ... 19

2.5

臓器移動による腫瘍の移動管理 ... 19

2.6

肺腫瘍に対する体幹部定位放射線治療 ... 19

2.6.1

原発性肺癌 ... 19

2.6.2

転移性肺癌 ... 19

2.7

画像誘導放射線治療(image-guided radiation therapy : IGRT)... 20

(4)

2.7.1 IGRT

の目的 ... 20

2.7.2 IGRT

の定義 ... 20

2.8

体内留置用マーカ ... 21

2.8.1

使用目的 ... 21

2.8.2

有用性について ... 21

2.9

呼吸性臓器移動対策 ... 21

2.9.1

呼吸抑制 ... 22

2.9.2

呼吸同期 ... 23

2.9.3

動体追跡 ... 23

3

章 肺腫瘍における体内マーカを用いた位置誤差の検討

3.1

諸言 ... 25

3.2

使用機器および方法 ... 26

3.2.1

対象患者とデータ取得 ... 26

3.2.2 BH

および

RTT

技術の位置誤差 ... 28

3.2.2.1 BH

技術 ... 28

3.2.2.2 RTT

技術 ... 29

3.2.3

統計処理 ... 32

3.3

結果 ... 32

3.4

考察 ... 36

3.5

まとめ ... 36

4

章 肺腫瘍における定位放射線治療時の位置誤差が線量指標へ及ぼす影響

4.1

諸言 ... 37

4.2

使用機器および方法 ... 37

4.2.1

対象患者とデータ取得 ... 37

4.2.2 BH

および

RTT

技術の線量指標 ... 37

4.2.3

統計処理 ... 37

4.3

結果 ... 38

4.3.1

線量指標 ... 38

4.3.2

線量指標と

RMS(3D)の関係 ... 41

4.4

考察 ... 43

4.5

まとめ ... 44

(5)

5

章 結論

5.1

研究成果の概要と結論 ... 45

5.2

今後の課題 ... 45

参考文献 ... 46

(6)

1

要 旨

【背景と目的】

定位放射線治療では,腫瘍に放射線を集中させ,かつ正常組織には極限まで照射を避け る高精度な位置決めと高度な照射技術が要求される.とくに,肺腫瘍に対する体幹部定位 放射線治療(SBRT)では,呼吸性移動による

internal margin(IM:体内マージン)の把握

が重要である.呼吸性移動は,他の要因に比べ規則性と随意性があり,放射線治療計画に おいてその対策が重要と考えられる.呼吸性移動管理には,呼吸性移動自体を縮小する方 法として,息止めによる呼吸制御やバンドやシェルによる腹部圧迫法等がある.呼吸性移 動を照射中に相対的に縮小するには,呼吸位相と腫瘍との関係を分析し,呼吸位相に合わ せて照射野を移動する方法や腫瘍近傍の体内マーカをリアルタイムに監視し,許容範囲の みに照射する方法等がある.本研究では,肺腫瘍に対する体幹部定位放射線治療において,

呼吸保持(BH)技術とリアルタイム腫瘍追跡(RTT)技術を用いた位置決め誤差とその再 現性を,体内に留置した金マーカの位置座標を分析することによって評価し,計画標的体 積(PTV)における線量指標(D98,D95,D2:PTV 内の

98%,95%,2%の体積に照射さ

れる線量,平均線量)と位置誤差との関係を検討した.

【方法】

本研究では,肺腫瘍における

SBRT

を施行した

29

人を対象とした.腫瘍の位置は,直径

1.5 mm

の金マーカを用いて評価した.BH と

RTT

技術における金マーカの位置誤差を解析

するための

CT

画像は,治療計画用

CT

データを使用した.CT 撮影は,患者を固定具にセ ットアップ後,連続して

3

回撮影した.両手法により求めた金マーカの位置誤差を位置決 め誤差とし,元の計画位置から位置誤差をそれぞれシフトさせたものをオフセット計画と し,再計算により求めた.PTV における線量指標(D98,D95,D2,平均線量)は,元の計 画と

BH

および

RTT

技術におけるオフセット計画の線量体積ヒストグラム(DVH)から評 価した.線量指標と位置誤差との関係は,それぞれの技術の二乗平均平方根(RMS)を用 いて分析した.

【結果】

平均位置誤差は

BH

技術では,下葉で

RMS

3.29 mm

であった.同様に,RTT 技術は

1.34 mm

であった.

BH

技術の位置誤差による

D98

の差は,下葉で-7.0% ± 10.8%であり,

RTT

技術の全線量指標の差は

1%未満であった.線量指標とRMS

の関係において,

BH

技術では

RMS(3D)> 2 mm

で,オフセット計画は元の計画に比べて

D98

D95

の線量減少が大き

くなった.しかし,

RTT

技術では大きな

RMS

3D

)は回避でき,両計画の

D98

D95

もに

5%以内の線量差であった.

【結論】

RTT

技術は,

BH

技術と比較して,肺腫瘍における

SBRT

の位置決め誤差を有意に低減す

(7)

2

ることが可能であり,PTV の

D98

D95

などの線量指標の確実な線量投与が実現できる.

金マーカの位置誤差は,BH 技術では,2 mm RMS 以下が必要であり,RTT 技術は,線量指

標差への影響が少ない結果となった.

(8)

3

博士後期課程在籍中の論文一覧

筆頭論文

Ryuji Kanzaki, Fujio Araki, Shinji Kawamura

Image-guidance technique comparison on respiratory reproducibility and dose indexes for stereotactic body radiotherapy in lung tumor

Medical Dosimetry. 2019; 44: 385-393

共著論文

Takehiro Shiinoki, Shinji Kawamura, Takuya Uehara, Yuki Yuasa, Takeshi Kamomae, Takaya Kotakebayashi, Masahiro Koike, Ryuji Kanzaki, Sung Chul Park,

Hideki Hanazawa, Shotaro Takahashi, Keiko Shibuya

Quality Assurance for Respiratory Gated Radiotherapy with Real-Time Tumor-Tracking Radiotherapy System

International Journal of Medical Physics, Clinical Engineering and Radiation Oncology.

Published 25 July 2014

Yuki Yuasa, Shinji Kawamura, Takehiro Shiinoki, Takuya Uehara, Masahiro Koike, Ryuji Kanzaki, Hideki Hanazawa, Shotaro Takahashi, Keiko Shibuya

Evaluation of the incident directional dependence of radiochromic film by use of Monte Carlo simulation and measurement

Radiological Physics and Technology. 2016; 9(2): 227-232

(9)

4

謝辞

本研究を行うにあたり,終始熱心なるご指導とご鞭撻を賜りました熊本大学大学院生命 科学研究部,荒木不次男教授に,深く感謝を申し上げます.また,惜しみないご支援を賜 りました帝京大学福岡医療技術学部診療放射線学科,川村慎二教授に心から感謝いたしま す.

本研究に対し,ご協力頂きました山口大学医学部附属病院,放射線治療の皆様,ならび

に,ご支援いただきましたすべての皆様に深謝いたします.

(10)

5

略語一覧

SBRT : stereotactic body radiation therapy

体幹部定位放射線治療

IGRT : image guided radiation therapy

画像誘導放射線治療

CT : computed tomography

コンピュータ断層撮影装置

MPR : multi-planar reconstruction

多断面再構成

GTV : gross tumor volume

肉眼的腫瘍体積

CTV : clinical target volume

臨床的標的体積

PTV : planning target volume

計画標的体積

ITV : internal target volume

体内標的体積

IM : internal margin

内部マージン

SM : set-up margin

セットアップマージン

OAR : organ at risk

リスク臓器

DVH : dose volume histogram

線量体積ヒストグラム

RMS : root mean square

二乗平均平方根

AAPM : American association of physicists in medicine

米国医学物理学会

EPID : electronic portal imaging device X

線平面検出器装置

RTRT : real-time tumor tracking radiation therapy

動体追跡放射線治療

(11)

6

1

章 序 論

1.1

本研究の背景

1.1.1

悪性新生物

厚生労働省の統計[1]では,我が国における平成

27

年の死亡数を死因順位別にみると,

1

位は悪性新生物で

37

131

人(死亡数の割合

28.7%),第2

位は心疾患

19

5933

人(同

15.2%),第3

位は肺炎

12

846

人(同

9.4%),第4

位は脳血管疾患で,

11

1875

人(同

8.7%)となっている(図1-1).

1-1 主な死因別死亡数の割合(平成 27

年)

(出所:厚生労働省 人口動態統計)[1]

悪性新生物の年次推移(図

1-2)をみると,一貫して増加しており,昭和 56

年以降、

死因順位では,第

1

位となっている.平成

27

年の全死亡者に占める割合は

28.7%であり,

全死亡者のおよそ

3.5

人に

1

人は悪性新生物で死亡したことになっている(図

1-1).ま

た,年齢階級別にみた死因別順位では,悪性新生物は,5~14 歳,40~89 歳と広範な年

悪性新生物 28.7%

心疾患 15.2%

肺炎 9.4%

脳血管疾患 8.7%

老衰 6.6%

不慮の事故 3.0%

腎不全 1.9%

自殺 1.8%

大動脈瘤及び解離 1.3%

慢性閉塞性肺疾患 (COPD)

1.2%

その他 22.4%

(12)

7

齢層にわたって第

1

位を占めている(図

1-3).主な部位別による死亡率(人口 10

万対)

をみると(図

1-4),男では「肺」が最も高く,平成5

年以降第

1

位となり,平成

27

年の 死亡数は

5

3170

人,死亡率は

87.2

となっている.女では「大腸」と「肺」が高く, 「大 腸」は平成

15

年以降第

1

位となり,平成

27

年の死亡数は

2

2867

人,死亡率は

35.5

となっている.また「肺」は,死亡数

2

1164

人,死亡率

32.9

であった.

(出所:厚生労働省 人口動態統計)[1]

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 220 240 260 280 300

22 ・ 30 40 50 60 2 7 17 27

脳血管疾患 心疾患

肺炎

昭和・・年

注:1) 平成6・7年の心疾患の低下は、死亡診断書(死体検案書)(平成7年1月施行)にお いて「死亡の原因欄には、疾患の終末期の状態としての心不全、呼吸不全等は書かないで ください」という注意書きの施行前からの周知の影響によるものと考えられる。

2) 平成7年の脳血管疾患の上昇の主な要因は、ICD‐10(平成7年1月適用)による 原死因選択ルールの明確化によるものと考えられる。

不慮の事故 自殺 肝疾患 結核 平成・年

悪性新生物

10

脳血管疾患

肺炎

1-2 主な死因別にみた死亡率の年次推移

(13)

8

1-3 性・年齢階級別にみた主な死因の構成割合(平成27

年)

(出所:厚生労働省 人口動態統計)

[1]

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

悪性新生物 脳血管疾患 心疾患

肺炎 不慮の事故 その他 自殺 老衰

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

100歳以上 95~99 90~94 85~89 80~84 75~79 70~74 65~69 60~64 55~59 50~54 45~49 40~44 35~39 30~34 25~29 20~24 15~19 10~14 5~9 0~4歳 総 数

悪性新生物 心疾患 脳血管疾患 肺炎 不慮の事故 老衰

自殺 その他

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

30 40 50 60 2 7 17 27

昭和‥年 平成・年

大腸

10

0 10 20 30 40 50

30 40 50 60 2 7 17 27

大腸

子宮

昭和‥年 平成・年

10 乳房

1-4 悪性新生物の主な部位別死亡率(人口10

万対)の年次推移

(出所:厚生労働省 人口動態統計)

[1]

(14)

9

1.1.2.

悪性新生物に対する対策

悪性新生物に対する国の政策としては,昭和

59(1984)年度より「対がん 10

ヵ年総 合戦略」,平成

6(1994)年度より「がん克服新 10

か年戦略」を策定し,がん対策に取 り組んできた.さらに,平成

16(2004)年からは,「がん罹患率と死亡率の激減」を目

指して,がん研究の推進および質の高いがん医療を全国に普及することを目的に, 「がん 予防の推進」および「がん医療の向上とそれを支える社会環境の整備」を柱とする「第

3

次対がん

10

か年総合戦略」を推進している.

厚生労働省は,平成

17(2005)年5

月に,がん対策全般を総合的に推進するため, 「が ん対策推進本部」を設置し,同年

8

月には,がん対策の飛躍的な向上を目的とした「が ん対策推進アクションプラン

2005」を策定した.しかし,がん対策は,一定の成果を収

めてきたが,依然として重要な問題であった.そこで,平成

18(2006)年6

月「がん対 策基本法」が成立し,翌年

4

月に施行された.この法律に基づき,がん対策の基本的方 向について定めた「がん対策推進基本計画」が閣議決定された.その後,第

3

期となる

「がん対策推進基本計画」

[1]が平成30

(2018)年に閣議決定した.ここでの全体目標は,

「がん患者を含めた国民が,がんを知り,がんの克服を目指す.」ということで,

①科学的根拠に基づくがん予防・がん検診の充実

②患者本位のがん医療の充実

③尊厳を持って安心して暮らせる社会の構築 を挙げている.また,分野別施策では,

1.

がん予防として,(1)がんの1次予防,(2)がんの早期発見,がん検診(2次予防)

2.

がん医療の充実として,(1)がんゲノム医療,(2)がんの手術療法,放射線療法,薬 物療法,免疫療法,(3)チーム医療,(4)がんのリハビリテーション,(5)支持療法,

(6)希少がん,難治性がん,(7)小児がん,AYA 世代のがん,高齢者のがん,(8)病 理診断,(9)がん登録,(10)医薬品・医療機器の早期開発・承認に向けた取組

3.

がんとの共生として,(1)がんと診断された時からの緩和ケア,(2)相談支援,(3)

社会連携に基づくがん対策・がん患者支援,(4)がん患者等の就労を含めた社会的な問 題,(5)ライフステージに応じたがん対策

が示され,これらを含めたかたちとして,

4.

これらを支える基盤の整備として,(1)がん研究,(2)人材育成,(3)がん教育,普

及啓発が示されている.また,がん対策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事

項として,

(15)

10 1.

関係者等の連携協力の更なる強化

2.

都道府県による計画の策定

3.

がん患者を含めた国民の努力

4.

患者団体等との協力

5.

必要な財政措置の実施と予算の効率化・重点化

6.

目標の達成状況の把握

7.

基本計画の見直し が示されている.

がん対策は,がん患者を含めた国民全体で目指すものであり,国民衛生にとって大き

な課題である.ここでは,がん医療の充実として挙げられている、放射線療法、特に肺

癌に対する放射線療法について話を進めていく.

(16)

11 1.2

肺腫瘍

1.2.1

肺癌について

肺は,呼吸することにより,肺に吸い込まれた空気をガス交換する臓器である.口や 鼻から吸った空気は気管,さらに気管支を通って肺に入る.さらに気管支が分岐を繰り 返して肺胞という小さな袋で,血液中の二酸化炭素と空気中の酸素を交換する.肺癌は,

肺の気管,気管支,肺胞の一部の細胞が何らかの原因で癌化したものである.肺癌は,

進行するにつれてまわりの組織を破壊しながら増殖し,血液やリンパの流れにのって広 がっていく.

1.2.2

肺癌の分類

肺癌は,病変から採取した組織の病理検査によって,主に腺癌,扁平上皮癌,小細胞 癌,大細胞癌に分類される.治療にあたっては,経過や治療方法,治療効果の違いから,

非小細胞肺癌と小細胞肺癌の

2

種類に分けられる.

非小細胞癌は,肺癌の約

85%を占め,癌の発生しやすい場所,進行のしかたとその速さ,

症状などはその種類によって異なる.

小細胞肺癌は,肺癌の約

15%を占め,癌細胞の増殖のスピードが速く,転移(リンパ節,

脳,肝臓,骨など)しやすい癌である.そのため,発見時にすでに転移していることが しばしばみられる.

1.2.3

肺癌の病期分類

肺癌における病期の評価には,TNM 分類と呼ばれる分類法を使用する.これは,癌 の大きさと浸潤(T 因子),リンパ節転移の有無(N 因子),遠隔転移の有無(M 因子)

において,これら

3

因子を総合的に評価し,病気を決定する.肺癌では,病期は

0

期,

Ⅰ期(ⅠA,ⅠB),Ⅱ期(ⅡA,ⅡB),Ⅲ期(ⅢA,ⅢB),Ⅳ期に分類される. また,

小細胞癌では,限局型および進展型の分類が用いられている.これは癌の広がりと治療 方針の違いによるものである.つまり,根治照射が可能な範囲に腫瘍が限局している症 例か,または違うかを区別するためである.

1-1

に,日本肺癌学会による肺癌取扱い規約第

8

版[3]の病期分類を示す.

(17)

12

TNM臨床病期 分類

N0 N1 N2 N3 M1a M1b

単発 遠隔転移

M1c 多発 遠隔転移

T1 T1a(≦1 ㎝) ⅠA1 ⅡB ⅢA ⅢB ⅣA ⅣA ⅣB

T1b(1-2 ㎝) ⅠA2 ⅡB ⅢA ⅢB ⅣA ⅣA ⅣB

T1c(2-3 ㎝) ⅠA3 ⅡB ⅢA ⅢB ⅣA ⅣA ⅣB

T2 T2a(3-4 ㎝) ⅠB ⅡB ⅢA ⅢB ⅣA ⅣA ⅣB

T2b(4-5 ㎝) ⅡA ⅡB ⅢA ⅢB ⅣA ⅣA ⅣB

T3 T3 (5-7 ㎝) ⅡB ⅢA ⅢB ⅢC ⅣA ⅣA ⅣB

T4 T4 (>7 ㎝) ⅢA ⅢA ⅢB ⅢC ⅣA ⅣA ⅣB

日本肺癌学会編:肺癌取扱い規約第

8

版(2017).金原出版より作成

TNM

分類(8 版,2017 年)

T _

原発腫瘍

TX:原発腫瘍の存在が判定できない,あるいは喀痰または気管支洗浄液細胞診でのみ陽

性で画像診断や気管支鏡では観察できない

T0:原発腫瘍を認めない

Tis:上皮内癌(carcinoma in situ)

:肺野型の場合は,充実成分径

0 cm

かつ病変全体径

≦3 cm

T1:腫瘍の充実成分径≦3 cm,肺または臓側胸膜に覆われている,葉気管支より中枢へ

の浸潤が気管支鏡上認められない(すなわち主気管支に及んでいない)

T1mi:微少浸潤性腺癌:部分充実型を示し,充実成分径≦0.5 cm

かつ病変全体径≦3 cm

T1a:充実成分径≦1 cm

でかつ

Tis・T1mi

には相当しない

T1b:充実成分径>1 cm

でかつ≦2 cm

T1c:充実成分径>2 cm

でかつ≦3 cm

1-1

日本肺癌学会による肺癌取扱い規約第

8

版の病期分類

(18)

13

T2:充実成分径>3 cm

でかつ≦5 cm,または充実成分径≦3 cm でも以下のいずれかで

あるもの

主気管支に及ぶが気管分岐部には及ばない

臓側胸膜に浸潤

肺門まで連続する部分的または一側全体の無気肺か閉塞性肺炎がある

T2a:充実成分径>3 cm

でかつ≦4 cm

T2b:充実成分径>4 cm

でかつ≦5 cm

T3:充実成分径>5 cm

でかつ≦7 cm,または充実成分径≦5 cm でも以下のいずれかで

あるもの

壁側胸膜,胸壁(superior sulcus tumor を含む),横隔神経,心膜のいずれかに 直接浸潤

同一葉内の不連続な副腫瘍結節

T4:充実成分径>7 cm,または大きさを問わず横隔膜,縦隔,心臓,大血管,気管,反

回神経,食道,椎体,気管分岐部への浸潤,あるいは同側の異なった肺葉内の副腫瘍結 節

N_

所属リンパ節

NX:所属リンパ節評価不能 N0:所属リンパ節転移なし

N1:同側の気管支周囲かつ/または同側肺門,肺内リンパ節への転移で原発腫瘍の直接浸

潤を含める

N2:同側縦隔かつ/または気管分岐下リンパ節への転移

N3:対側縦隔,対側肺門,同側あるいは対側の前斜角筋,鎖骨上窩リンパ節への転移 M_

遠隔転移

M0:遠隔転移なし M1:遠隔転移がある

M1a:対側肺内の副腫瘍結節,胸膜または心膜の結節,悪性胸水(同側・対側),悪性心

囊水

M1b:肺以外の一臓器への単発遠隔転移がある

M1c:肺以外の一臓器または多臓器への多発遠隔転移がある

日本肺癌学会編:肺癌取扱い規約第

8

版(2017).金原出版より引用[3]

(19)

14 1.2.4

肺癌の治療

1.2.4.1

手術(外科療法)

癌病巣を手術で除去する局所療法である.他の部位に転移した転移巣も取り除く.癌 の治療法としては,最も基本的な治療法である.

肺癌の手術は,非小細胞癌においては,Ⅰ期~Ⅱ期の場合が適応となり,

IIIA

期は集 学的治療グループでの検討が推奨されている.小細胞癌においては,Ⅰ期~Ⅱ

A

期が適 応となる.

手術の方法は,癌の範囲や浸潤度によって異なる.主な術式は,癌がある肺葉のみを 切除する肺葉切除術,片方の肺すべてを切除する片肺全摘術を行う.また,肺葉の中で も,癌がある部分だけを切除する区域切除術,区域の中からさらに肺癌のある部分だけ を切除する楔状切除がある.また,手術の方法は,癌の範囲や浸潤度によっても異なっ てくる.

1.2.4.2

抗癌剤(化学療法)

化学物質(抗がん剤)を利用して,癌細胞の増殖を抑え,癌細胞を破壊する内科的治 療である.手術による外科療法や放射線療法が局所療法であるのに対し,全身の癌細胞 を攻撃することができる全身療法である.

小細胞癌では,抗癌剤による治療効果が期待できるため,ほかの治療法との併用療法 が治療の第一選択となる.非小細胞癌では,小細胞癌に比べ治療効果が低く,手術適応 外の症例に対して行われる.また,再発癌や遠隔転移がある場合は,化学療法が治療の 中心となる.

化学療法は,プラチナ製剤と呼ばれる薬剤と,他の抗癌剤を併用して治療が行われる.

治療期間は,3~4 週を

1

コースとして複数回繰り返す.

1.2.4.3

放射線療法

放射線を使用して,癌細胞の増殖を抑え,縮小させ,そして破壊する,局所療法であ る.癌に侵された臓器の機能や形態を温存でき,全身的な影響が少なく,比較的高齢者 へも適応できる治療法である.

放射線療法には,癌細胞を死滅させる根治的治療と,痛みや神経症状を和らげるため に行う緩和的放射線療法がある.

非小細胞癌の場合,手術適応とならないⅠ期,Ⅱ期,胸水を認めないⅢ期が対象であ

(20)

15

る.小細胞癌の場合には,限局型が対象となり,抗がん剤治療と並行して行われる.

放射線療法は,

1

1

回,週

5

回照射し,

5

週間から

6

週間の治療期間が必要である.

1.2.5

放射線治療計画に関わる体積

放射線治療では,最初に放射線を照射する体内の必要な領域(体積)を,三次元的に 設定する必要がある.この設定した領域に対して,放射線治療計画で,どのような放射 線治療を行うかを決定する過程であり,体積の設定は重要である.

放射線治療計画では,治療計画のために撮影した

CT

画像を用いて行われ,放射線治 療に必要な体積等も

CT

画像を用いて行われる.

CT

撮影時の体位は,治療時の体位で行 われ,固定具等を用いる場合があるので,

CT

撮影前に十分な検討が必要となる.放射線 治療計画を作成するにあたって,正確に記録,報告されなければならない.そのために,

ICRU Report 50[4]と Report 62[5]では,放射線治療で受け入れられるわかりやすい概

念と定義が提案されており,放射線治療はこれに従って行う必要がある.また,

ICRU

は,新たに

ICRU Report 83[6]を公表した.これは,ICRU Report 50

Report 62

を補 うものである.これらレポートには,治療計画に必要な各体積とマージンに関しての記 述があり,その定義を記す.

(1)肉眼的腫瘍体積(gross tumor volume : GTV)

GTV

は,腫瘍の進展や存在が肉眼的に確認できるもののことであり,原発巣,転移の 可能性があるリンパ節腫大,その他の転移をすべて含むものでる.

GTV

は,画像診断(X 線検査,CT 検査,MR 検査,US 検査,内視鏡等)によって決定される.

(2)臨床的標的体積(clinical target volume : CTV)

CTV

は,確認できる GTV と治療すべき潜在性の悪性腫瘍から決定されなければなら ないものであり,明らかに確認できる腫瘍に加えて臨床的に進展が疑われる部分も含む ものでる.そのためにも,十分な線量が投与される必要がある.

(3)計画標的体積(planning target volume : PTV)

PTV

は,

CTV

に処方した線量を確実に照射するためのものである.そのために,すべ

ての不確実性を考慮して決定されなければならない.このためには,二つのマージンが

ある.一つは,予想される生理的な動きや,基準点から

CTV

が動くことを保証するマ

(21)

16

ージンであり,これを体内マージン(internal margin : IM)といい,

IM

は大抵の場合,

CTV

の周りに,非対称的に付加される.二つめは,治療計画時から治療終了までを通じ て,照射位置が不正確であったり,再現性がなかったりすることを保証するセットアッ プマージン(set-up margin : SM)ある.SM は,治療方法,患者固定法,治療装置,

あるいは施設によって変化する.

(4)体内標的体積(internal target volume : ITV)

ITV

は,

CTV

の生理的な動きを考慮したものであり,

CTV

IM

を含む体積のことで ある.つまり,体内の予想される生理的な動きや,CTV が動いたり形状が変化したりす る影響を保証するものである.

(5)体内マージン(internal margin : IM)

IM

は,整理的な動きや,内部の基準点に対応する座標に対して動いたり,大きさや形 が変わったりすることを保証するマージンであり,CTV の周りに非対称的に設定する.

これは,呼吸性移動,嚥下運動,腸管の蠕動運動,腸管内容量,尿,出血,炎症,胸腹 水,筋肉運動,腫瘍の縮小や増大などが対象となる.

(6)セットアップマージン(set-up margin : SM)

SM

は,治療計画時から治療終了までを通じて,患者セットアップの再現性や治療装 置の位置精度などを保証するためのマージンである.

(7)リスク臓器(organ at risk : OAR)

OAR

は,放射線感受性が,治療計画や処方線量に強く影響する正常組織のことである.

(22)

17

体内マージン : IM

internal margin

計画標的体積 :

PTV

(planning target volume)

セットアップマージン : SM

set-up margin

体内標的体積 :

ITV

(internal target volume)

肉眼的腫瘍体積 : GTV

gross tumor volume

) 臨床的標的体積 :

CTV

clinical target volume

1-5 ICRU report 62

での各ターゲットの定義[6]

(23)

18

2

章 体幹部定位放射線治療(stereotactic body radiation therapy : SBRT)

2.1

諸言

体幹部における定位放射線治療とは,体幹部に限局した比較的小さな早期癌に対して,

局所制御の向上と周囲正常臓器に対する有害事象の低減のために,多方向から照射する 技術と照射した放射線を,病変部に対して正確に照射する技術の両方を満たさなければ ならない.

定位放射線治療の特徴は,寡分割照射で大線量を投与することであり,高い生物学的 効果が期待される.また,このことは,治療時の放射線照射の位置正確性が非常に重要 であるということである.

2.2

体幹部定位放射線治療の定義

[7]

体幹部定位放射線治療とは,以下に示す項目を満たすものと定義される.

1)

直線加速器(マイクロトロンを含む)を用い,多方向から

3

次元的な放射線照射(5

~10 門の固定多門照射,多軌道回転運動照射)を,小さな照射野に対し,大線量を短時 間に照射すること.

2)

照射回毎の照射中心位置のずれ(固定精度)を

5 mm

以内であることを確認する.毎 回の照射中心位置がわかるように記録する(ただし,

5 mm

とは,3 次元の各軸方向の最 大のずれ量であり,ベクトル距離ではない).

3)

固定フレームあるいはシェル等を用いて患者の動きを固定する.または生理的呼吸性 運動や臓器の体内移動に同期,追跡,または追尾して照射を行い,照射中のずれに対し ても精度管理を行う.

ここでの固定精度

5 mm

とは,セットアップに関わる精度を意味し,例えば骨格によ る位置照合を行う場合には,治療計画時の位置照合画像と照射回毎のポータル画像上で,

ずれが

5 mm

ということである.

2.3

体幹部定位照射におけるリニアックの品質管理

体幹部定位照射は,患者の固定精度に対して

5 mm

以内であることを要求している.

この固定精度

5 mm

とは,純粋にセットアップにかかる精度を意味している.しかし,5

mm

以内には,リニアックの幾何学的駆動誤差も含まれており,注意しなければならな

い.また,ガントリ回転,コリメータ回転,寝台回転を組み合わせて

3

次元的に放射線

(24)

19

を腫瘍に集中させるため,リニアックの駆動系の精度は重要であり,その精度の管理に 関しては種々ガイドラインが提供する精度指針以上の精度を確保するつもりの取り組み が必要である.

2.4

治療中の体動管理

治療中の固定精度について,ここでは骨構造の変動という意味での精度である.つま り,セットアップ保持精度のことである.治療中の患者を同一位置,骨格を保持するた めには,固定具(体幹部用シェル,ボディフレーム,吸引式固定具等)の使用が有効で ある.

2.5

臓器移動による腫瘍の移動管理

固定精度

5 mm

には臓器移動による腫瘍の移動は含まれないため,体内標的体積

(internal target volume : ITV)で対応する.ただし,腫瘍の移動量が大きい場合で,

肉眼的腫瘍体積(gross tumor volume : GTV)ないし臨床的標的体積(clinical target

volume : CTV)に比べITV

の大きさが非常に大きくなるときは,結果として正常臓器へ

の被曝線量が多くなるため,注意が必要である.

2.6

肺腫瘍に対する体幹部定位放射線治療

2.6.1

原発性肺癌

原発性肺癌に対して,腫瘍最大径が

5 cm

以内であり,リンパ節転移や遠隔転移がない ものである.すなわち

T1N0M0

および

T2aN0M0

が適応となる.しかし,腫瘍の存在 部位が縦隔に近接しており,正常臓器(気管,気管支,食道,肺動脈,脊髄等)に大線 量が照射される可能性が高い場合には適応とすることは難しいと考えられる.

2.6.2

転移性肺癌

転移性肺癌に対して,腫瘍最大径が

5 cm

以内で

3

個以内,原発巣が制御され,かつ 他臓器転移がない病変が適応となる.

肺腫瘍に対する定位放射線治療では,照射対象となる

CTV

は,GTV の周囲にある癌細 胞の微小な浸潤を含む体積となるが,孤立性肺腫瘍の場合は,多くは

GTV

と同一と考 える.また,肺腫瘍は,呼吸性移動があるため,呼吸による腫瘍の動きを保証するため,

IM

を設定し,この体積を

CTV

に付加して

ITV

を設定する必要がある.しかし,定位放

(25)

20

射線治療は,寡分割照射であり,正常組織への線量をできるだけ低減する必要がある.

このため,呼吸性移動対策が必要とされ,様々な照射方法が開発されてきた.

肺腫瘍の位置は,体外からは確認することができず,X 線撮影や透視でも,周りの組 織と吸収差が小さい腫瘍自体の位置の把握は難しい.このため,腫瘍位置を正確に把握 するため,代用として腫瘍近傍に

X

線で確認できるマーカを埋め込む方法が行われてい る.しかし,正確な腫瘍位置を決定するにはマーカ位置と腫瘍位置との関係を検証する 必要がある.

2.7

画像誘導放射線治療(

image-guided radiation therapy : IGRT)

2.7.1 IGRT

の目的

IGRT

は,放射線治療実施時に,患者セットアップの誤差を最小限に抑え,標的に対 しては正確な照射精度を向上させることで,癌の治療制御率を向上させ,放射線による 正常組織の有害反応を減らすことを目的とした治療法である.近年は,技術の進歩によ り,様々な装置が開発されている[8].

2.7.2 IGRT

の定義

IGRT

臨床導入のためのガイドライン[9]では, 「IGRT とは

2

方向以上の二次元照合画 像,または三次元照合画像に基づき,治療時の患者位置変位量を三次元的に計測,修正 し,治療計画で決定した照射位置を可能な限り再現する照合技術を意味する.」と定義し ている.

診療報酬上は, 「IGRT とは毎回の照射時に治療計画時と照射時の照射中心位置の三次 元的な空間的再現性が

5 mm

以内であることを照射室内で画像的に確認・記録して照射 する治療のことである」とされ,以下に示す位置照合装置が放射線治療装置と同室に設 置されている必要がある.

(a)2 方向以上の透視が可能な装置

治療室内設置の装置,放射線照射装置に付属の撮影装置

(b)画像照合可能な

CT

装置

治療室内に設置された

CT

装置,放射線照射装置に付属のコーンビーム

CT

撮影装置

(c)画像照合可能な超音波診断装置

直線加速器を用いた定位放射線治療において固定精度を保証するために用いられてい

る画像誘導手法を踏襲するため,照射室内において

EPID(electronic portal imaging

(26)

21

device)などを用いて撮影された2

方向以上のポータル画像(portal image)によって,

治療計画時と照射直前時の照射中心位置の三次元的な空間的再現性が

5 mm

以内である ことを証明できる方法を許容する.

2.8

体内留置用マーカ

2.8.1

使用目的

放射線治療において,腫瘍の位置を体外から把握することは非常に重要なことである.

そのために,IGRT では,X 線撮影装置で確認できる直径数 mm の金属マーカを事前に 腫瘍近傍に留置し,患者セットアップの誤差と腫瘍の生理的な移動誤差を低減する目的 で,腫瘍位置の代用として用いられる場合がある.

2.8.2

有用性について

体内埋め込み金属マーカを有用に使用するためには,金属マーカの視認性が十分高く,

埋め込みのリスクよりも,金属マーカを使用しない放射線治療のリスクが高いこと,金 属マーカを使用することにより,体内の腫瘍位置の把握が,マーカを使用しない方法よ りも優れているデータがあること,から判断する必要がある.また,金属マーカの素材 としては,

99.99%

以上の純金が使用されている.金は,極めて溶けにくい金属であり,

金によるアレルギーは他の金属に比較し低いことから,生体に及ぼす危険性も少なく,

安全に使用できると考えられる.形状は,使用目的によって,様々なものが使用されて いる.

2.9

呼吸性臓器移動対策

体幹部定位放射線治療では,目的臓器の生理的な動きが,重大な誤差の要因となり得

る.臓器の動きには,様々な要素(呼吸性移動,心臓の拍動,嚥下運動,腸管の蠕動運

動,出血,炎症等)があるが,特に呼吸性移動は,胸部において,最も大きく,また高

頻度に発生する臓器移動である.つまり,体内マージン(internal margin : IM)の最大

の要素である.しかし,呼吸性移動は,他の臓器移動に比べて規則性があり,比較的制

御が可能であることから,様々な対策が考案されている.現在,呼吸性移動対策として

使用されている方法には,呼吸自体を抑制することにより腫瘍自体の動きを縮小する方

法,呼吸性移動を計測または監視し,呼吸位相に合わせて治療する方法等が考案されて

いる.

(27)

22 2.9.1

呼吸抑制

浅い呼吸,または呼吸停止を行う方法は,呼吸性移動による影響を低減することが期 待できる.呼吸停止の方法としては,患者自身による自発的な呼吸停止と,肺容量を監 視し強制的に呼吸停止を行う方法等がある.

浅い呼吸を保持するためには,酸素を吸入することにより,呼吸数や換気量をある程 度,抑制することが期待できる場合もある.また,積極的な方法として,腹部圧迫によ る,呼吸抑制法がある.この方法は,腹部を圧迫することにより,呼吸時の横隔膜運動 を縮小させる方法である[10-12].体幹部用固定具の腹部圧迫板などを使用し行われる

(図

2-1).患者によっては,圧迫によって,または,圧迫による苦痛によって,呼吸が

不安定になることがあるので注意が必要である.

呼吸停止法には,まず,患者自身が自発的に呼吸停止を行う方法がある.この方法は,

胸壁や腹壁の動きにより,呼吸位相をモニタリングしながら呼吸停止を行うことが行わ れている[13].また,active breathing control(ABC)system [14]のように,強制的に 呼吸停止を行う方法もある.この装置は,弁付きの肺活量計を介して,患者の呼吸周期 を監視し,目的の肺容量レベルで呼吸保持を補助するものである.呼吸停止法では,呼 吸停止自体の精度や再現性を求めるには,患者の十分な理解と練習が必要である.また,

個人差があることも理解し,行う必要がある.

2-1

腹部圧迫による呼吸抑制[12]

Stereotactic body frame

に,横隔膜の動きを抑制するための腹部圧迫用としてプラスチ

ック製プレートを追加し使用している.

(28)

23 2.9.2

呼吸同期

呼吸同期法とは,自由呼吸下の患者において,呼吸位相を測定しながら,指定した位 相に同期させて,放射線を照射する方法である.呼吸性移動をモニタリングするシステ ムに,RPM(Real Time Positioning Management System )[15] がある.これは,胸 腹壁上にマーカブロックを置き,それに赤外線発光体を当て,発光する反射マーカの移 動量を,CCD トラッキングカメラで録画し,マーカの移動量を呼吸波形に変換するシ ステムである(図

2-2).振幅や位相を基にした同期が可能である.他には,歪ゲージブ

リッジ回路で腹部の圧力を感知し,呼吸波形に変換するシステム等がある.これらのシ ステムは,体表面の動きにより呼吸波形を求めている.しかし,呼吸運動は,横隔膜,

胸壁や腹壁などの動きの合成であるため,一部位のみの変化量の測定と相関していると は限らないために確認が必要となる.

2-2

呼吸同期システム[16]

RPM

を使用した,CT 撮影時のセットアップ.

(a)赤外線カメラ,(b)反射体(患者の腹部に配置する).

2.9.3

動体追跡

動体追跡法とは,自由呼吸下の患者において,X 線透視装置を使用し,リアルタイム に腫瘍位置を直接,または,腫瘍近傍に留置したマーカの位置から間接的に追跡しなが ら放射線を照射する迎撃照射法と,呼吸位相と腫瘍位置との関係を分析し,照射野を呼

a

(b)

(29)

24

吸位相に合わせて照射野を移動させ照射する追尾照射法がある.迎撃照射法を行うシス テムに,Real-time Tumor-tracking Radiation Therapy(RTRT)system[23,24] があ る.これは,金属マーカを追跡するために

2

組の

X

線透視装置が搭載されており,

X

線 束の中心軸は治療のアイソセンタで交わる.この

2

方向からの透視画像をリアルタイム に取得し,金属マーカが,治療計画で決定した座標上にあり,また,許容誤差内にマー カを検出したときのみ放射線を照射するシステムである.迎撃照射法は,許容誤差内に,

マーカを検出したときのみに照射するため,間歇照射となるため,時間効率は悪く,治 療時間の延長が問題となる.また,マーカを用いているため,マーカと腫瘍との臓器移 動による位置関係やマーカ自体の移動等による位置誤差にも注意が必要である(図

2-3).

追跡照射法は,腫瘍やマーカと体壁の動きの関係による運動パターンを解析し,体壁の 動きで放射線を照射するシステムである.照射時間の時間効率は高いが,臓器移動の予 測誤差,マーカと腫瘍との変動誤差等には注意する必要がある.

2-3 上段は,The real-time tumor-tracking

(RTRT)system と同期したリニアックであ

る.下段は,模式図である[23].

(30)

25

3

章 肺腫瘍における体内マーカを用いた位置誤差の検討

3.1

諸言

放射線治療において,近年,画像誘導放射線治療(IGRT)が臨床現場で広く利用され ている[17,18]. IGRT とは,2 次元または

3

次元画像を用い,治療時の患者位置変位量 を計測,修正し,治療計画時の照射位置を再現する照射技術である.体幹部定位放射線 治療(SBRT)[19,20]は,比較的小さな早期癌を対象に,多方向から寡分割で大線量を 投与する照射技法であるが,このような高精度外部放射線治療を行うためには,ターゲ ットに高精度な定位と位置決めが必要とされるため,IGRT は必要不可欠な技術である.

さらに,体幹部における生理的な臓器移動は,肺腫瘍における

SBRT

の中でも,最も検 討されるべきものである.

照射中の標的の位置決め精度は,肺腫瘍における照射回毎の

SBRT

において,5 mm 以内の誤差を有することが推奨されている.したがって,肺腫瘍患者の治療計画

CT

(Computed Tomography)では,息止めの再現性が非常に重要となる[21,22]. 多くの 報告が,異なる方法を用いて ,呼吸運 動に及ぼす計画と設定の影響 を報告し ている

[23-35].肺腫瘍における呼吸運動の管理は,様々な方法で行われてきたが,最適な照射

方法は現在のところ確立されていない.つまり、患者の息止めの再現性を調べ,肺腫瘍 における

SBRT

の呼吸停止(BH)技術またはリアルタイム腫瘍追跡(RTT)技術の適 応を決定することが重要である.

我々の施設では,SBRT は,気管支内視鏡を介して挿入された,視認性がある金球マ ーカを使用して行われている.この方法は,移動する腫瘍,特に肺腫瘍の臓器運動およ び位置誤差の内部およびセットアップマージンを減少させることができる[13,24].

我々は,IGRT システムとして,動体追跡放射線治療装置(real-time tumor tracking

radiation therapy : RTRT)

(Mitsubishi Electric,

Tokyo,Japan)を使用した. RTRT

システムは,治療室内に配置された

2

式の診断用

X

線テレビユニットから構成され,照 射中に金球マーカを三次元的に検出することができる. 診断用

X

線束の中心軸は,放 射線治療装置のアイソセンタと一致するように配置されている.治療中,放射線治療ビ ームは,マーカ位置が,予め計画されたマーカ位置の許容範囲内にあるときに照射され る. 一方,マーカが計画されたマーカ位置の許容範囲から外れると,放射線治療ビーム は停止される.つまり,間歇照射の治療となる.

最近,肺腫瘍における

SBRT

のために,4 次元コンピュータ断層撮影(4DCT)画像

(31)

26

を用いた治療計画が実施されている[36].しかし,我々の施設では,呼吸信号を一連の

CT

画像と同期させることができないため,

4DCT

は使用されていない.このように,我々 の施設の治療計画

CT

画像は,呼吸停止(BH)CT スキャンを使用して,安静呼気で取 得される. 呼吸停止下での

CT

画像は,自由呼吸下での

4DCT

画像とは異なる場合があ る[37].このため,呼吸停止下

CT

画像は,治療時と同じ呼吸位相になるように取得する 必要がある. 呼吸位相の再現性を確認するために,我々の施設では,呼吸停止下での

CT

画像を

3

回取得し,確認を行っている.

アイソセンタに対応する金球マーカの座標と,ターゲット内の処方点との間の関係は,

治療前の

CT

画像を用いて決定される. しかし,実際の金球マーカの位置は,息止め

CT

画像の呼吸停止再現性に応じて,計画されたマーカ位置と一致しないことがある[25].

この現象は,マーカと周囲の組織が回転を伴う動きをした場合に観察されている. マー カ位置の検証のための

RTT

技術は,計画と治療の間のマーカの自動マッチングを可能に し,移動および回転の定量的位置誤差を得るために使用した.

BH

技術は,肺腫瘍における呼吸停止による

SBRT,または呼吸停止により画像を取

得した

IGRT

SBRT

を想定しており,RTT 技術は,体内基準マーカ,または腫瘍をリ アルタイムで認識し,治療中,腫瘍の動きに同期し治療する

SBRT

を想定している.こ の研究では,3 回連続してスキャンされた治療計画

CT

画像における金球マーカの位置 座標を分析することによって,肺腫瘍における

SBRT

BH

および

RTT

技術の位置決 め誤差およびその再現性を評価した.

3.2

使用機器および方法

3.2.1

対象患者とデータ取得

対象は,

RTRT

を用いて,肺腫瘍に対して

SBRT

を施行し治療された

29

名の患者(男 性

19

名および女性

10

名)である.17 個および

12

個の腫瘍位置は,それぞれ上葉に

17

個および下葉に

12

個であった.患者の平均年齢は

74

歳(34〜87 歳の範囲)であった.

詳細は,表

3-1

に示す.

(32)

27

3-1 患者概要

Patient no. Age (year) Sex Tumor location

1 73 F Left lower

2 84 M Right upper

3 43 F Right upper

4 73 M Right upper

5 75 M Right upper

6 34 F Right lower

7 74 F Left upper

8 87 F Left upper

9 75 F Right upper

10 87 M Right lower

11 83 F Right lower

12 71 F Right lower

13 65 M Left lower

14 80 F Right upper

15 78 M Right upper

16 86 M Right upper

17 68 M Right upper

18 68 M Right lower

19 71 M Right lower

20 66 M Left upper

21 80 M Left lower

22 74 M Right upper

23 80 M Right upper

24 85 F Right upper

25 82 M Right lower

26 74 M Right lower

27 75 F Right upper

28 81 M Left lower

29 72 M Right upper

(33)

28

本研究は,山口大学病院の施設審査委員会の承認を受けたプロトコルに従って行われた.

患者の治療計画

CT

画像は,Asteion TSX-021A / 3A 4 スライス

CT

スキャナ(東芝メディ カルシステムズ社製)と,治療用寝台(三菱電機社製)からなる

CT-on-rails

システムを用 いて取得した. CT 画像の取得は,患者セットアップ後,連続して

3

回実施し,治療計画 のために安静呼気相で,各患者に対する体内の金球マーカにおける呼吸停止の再現性,お よび

CT

画像内の目標ターゲット位置を確認した.各患者に対して,気管支内視鏡(オリ ンパス社製)を用いて,肺腫瘍の近くに

3

個の金球マーカ(直径

1.5 mm)を挿入した[23].

各患者の

CT

画像を

3 mm

のスライス厚で収集した. これは,治療計画を行うための治療 計画

CT

撮影条件である. すべての患者を治療用寝台に仰臥位でセットアップ後,患者固 定具であるウイングボードおよび

Vac-Lok

(MED-TEC 社製)を用いて固定した. 息止め 技術は,呼気相の間に再現性のある安静呼気相を維持するために,患者に対し,口頭で指 導することによって実施した.呼吸管理は,アブチェス(APEX Medical 社製)を用いて 評価した. この装置は,胸部および腹壁の動きに応じて患者の呼吸レベルを確認すること ができる. 呼気相は,最も再現性の高い呼吸相である[38].

計画標的体積(PTV)は,各患者に適切な内部マージンを含めることによって設定した.

PTV

の平均および標準偏差は,30.7±20.5 cm

3

(8.5〜96.7 cm

3

)であった.腫瘍境界が

CT

画像上で,明確ではなかったため,正確な肉眼的腫瘍体積(GTV)自体を描出するのが困 難であった. そのために,PTV と

GTV

との間の総マージンは臨床を考慮し,5〜10 mm の範囲で設定した. 線量処方は,PTV の基準点に設定した. PTV 内の基準点はアイソセ ンタに対応するように配置した. 標準的な総線量/分画スケジュールは,4 分画で

48 Gy

から

8

分画で

60 Gy

の範囲であった.

3.2.2 BH

および

RTT

技術の位置誤差

金球マーカの位置座標を,CT 装置のアプリケーションソフトウェアである,CT ポート

(東芝メディカルシステムズ社製)を用いて,多断面再構成(MPR)画像によって分析し た. それらの座標は,マーカ画像の中央を手動で設定した. 金球マーカの位置誤差は,

BH

および

RTT

技術における

2

つの測定基準によって分析した. 両技術の位置誤差は,

以下に示す,三次元誤差,および二乗平均平方根(RMS)値によって解析した.

3.2.2.1 BH

技術

BH

については,位置誤差は,最初の

CT

画像とその後の

CT

画像における金マーカの座 標間の幾何学的な差として定義され,以下のように計算された:

𝐸𝑟𝑟𝑗,𝑘𝐵𝐻(𝑥, 𝑦, 𝑧) = |𝑚𝑗,𝑘(𝑥, 𝑦, 𝑧) − 𝑚1,𝑘(𝑥, 𝑦, 𝑧)| (1a)

ここで,

j

はスキャン回数(

j = 1〜3),k

は金マーカ(

k = 1〜3)の数,𝐸𝑟𝑟𝑗,𝑘𝐵𝐻(𝑥, 𝑦, 𝑧)

は,

図 1-5  ICRU report 62  での各ターゲットの定義[6]
図 2-1  腹部圧迫による呼吸抑制[12]
図 2-3  上段は, The real-time tumor-tracking
表 3-1  患者概要
+5

参照

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