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Academic year: 2021

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Title 側鎖による三環性骨格制御を基盤とする新規PPARγ作動薬の創製研究 [論文内容及び審査の要旨]

Author(s) 山本, 圭介

Citation 北海道大学. 博士(薬科学) 甲第13966号

Issue Date 2020-03-25

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/77829

Rights(URL) https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/

Type theses (doctoral - abstract and summary of review)

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File Information Keisuke̲YAMAMOTO̲abstract.pdf (論文内容の要旨)

Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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学 位 論 文 内 容 の 要 旨

博士の専攻分野の名称 博士(薬科学)

側鎖による三環性骨格制御を基盤とする新規PPARγ作動薬の創製研究

ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体 (PPAR) γは核内受容体スーパーファミリーの一つ であり、リガンド依存的に標的遺伝子の転写活性を調節することにより、末梢のインスリン感受 性、脂肪細胞への分化誘導およびグルコースの恒常性を制御している。PPARγは同じく核内受容 体であるレチノイドX受容体α とヘテロ二量体を形成し、下流制御遺伝子のプロモーター領域 に存在するDNA応答配列に結合することにより、転写因子として働くことが知られている。

これまでに、チアゾリジンジオン誘導体であるピオグリタゾンやロシグリタゾンなどの複数の

PPARγ作動薬が2型糖尿病の治療薬として開発されている。PPARγは脂肪細胞の分化に関わる

adipocyte fatty acid-binding protein 2などの遺伝子の転写を活性化することにより、脂肪前駆細胞か ら脂肪細胞への分化誘導を制御していると言われている。例えば、マウス線維芽細胞様細胞株で

ある3T3-L1の脂肪細胞への分化誘導がよく知られている。

上記のようなPPARγ活性化に基づく脂肪前駆細胞の分化誘導作用と同様に、PPARγ作動薬に よる低分化がん細胞の分化誘導の可能性が考えられる。実際に、PPARγ完全作動薬であるチアゾ リジンジオン誘導体エファツタゾンは、未分化甲状腺がんなどのがん細胞に対して分化誘導作用 を示すことから、従来とは異なる作用メカニズムを有する抗がん剤として期待されている。しか し、これまでのPPARγ 完全作動薬はチアゾリジンジオン構造に起因すると考えられる体液貯留 等の副作用が確認され、承認まで至っていない。筆者は、このような既知作動薬とは異なる結合 様式を有する新規骨格のPPARγ作動薬であれば、副作用が回避できると仮定し、研究に着手し た。

新規抗がん剤を指向した独自骨格を有するPPARγリガンドの取得を目指し、筆者は独自の化 合物ライブラリーを使ったPPARγレポーター遺伝子評価によるハイスループットスクリーニン グを実施した。その結果、ジベンゾアゼピン誘導体1-DMがヒット化合物として得られた。本化 合物はチアゾリジンジオン構造を持たず、既存のPPARγ作動薬とは異なる骨格を有していたが、

レポーター遺伝子評価におけるEC50値が4564 nMと高く、PPARγ 作動活性が弱いという課題が あった。一般的に、PPARγ作動薬はテトラゾールのような酸性構造が作動活性に重要であること が報告されていることから、1-DMのテトラゾールのコンフォメーションを固定することを目的 として、アゼピン窒素原子に隣接する炭素原子上にメチル基を導入した。の結果、強力なPPARγ 作動活性 (EC50 = 197 nM) を有するジベンゾアゼピン誘導体1 (RもしくはS体、86%ee) を見出 した。

1はジベンゾアゼピン窒素隣接位に上述のメチル基導入に伴う不斉炭素を有することから、誘 導体合成の過程で、都度不斉構築を考慮する必要があり、母核およびイミダゾピリジンの効率的 な最適化研究が困難になることが想定された。そこで、1-DMおよび1のテトラゾールと三環性 骨格の安定配座を考察することにより、不斉炭素を回避した代替母核の化合物デザインを実施し た。分子モデリングソフトMacroModelを用いて1-DMおよび12位ベンゾイミダゾールをメ チル基に置換したモデル基質の最安定配座を探索した。1-DMのモデル基質1-DM’の最安定配座 を探索したところ、ジベンゾアゼピンの両端のベンゼン環がフリップしたような配座に加え、テ

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トラゾールの配向が2位メチル基とanti, synの相対配置の配座、計4種が確認された。一方で、

メチル基導入体1のモデル基質(R)-1’および(S)-1’は、三環構造のフリップとテトラゾールの配向 の組み合わせが異なる2種類ずつの配座 (鏡像異性体の関係) が確認された。次に、不斉炭素を 回避し、かつテトラゾール部のsyn及びanti配向を不飽和結合のE/Z異性体によって模倣する骨 格として、ジヒドロジベンゾシクロヘプテンメチリデン構造を考案した。対応するモデル基質2’

(Z体) および3’ (E体) の安定配座は、メチル基導入体14つの安定配座とよく重なったこと から、ジヒドロジベンゾシクロヘプテンメチリデン構造はジベンゾアゼピン誘導体1の活性配座 を模倣できる代替骨格として有望と考えられた。そこで、化合物1と側鎖が対応するジヒドロジ ベンゾシクロヘプテン誘導体5を合成したところ、1と同程度のレポーター活性を示したことか ら、効果的に母核変換することに成功した。

化合物5のイミダゾピリジン部位を最適化し、母核をジベンゾオキセピンに変換した9は強力 なレポーター活性 (EC50 = 2.4 nM) を示した。また、9は他のPPARγ作動活性よりも著しく低い

濃度 (1 nM~) から低分化胃がん細胞株MKN-45に対して分化誘導活性の指標である細胞凝集活

性を示した。さらに、9は他のPPARγ作動薬とは異なるPPARγタンパク質への特徴的な結合様 式を示した。このようなPPARγ タンパク質に対する独自の結合様式ががん細胞の強力な分化誘 導活性に繋がっている可能性がある。しかし、化合物9はヒト肝固有クリアランスが高く (hCLint

= >24.9 L/h/kg)、臨床開発するためには代謝安定性の大幅な改善が必須であった。そこで、母核変

換体の主酸化代謝部位と想定される箇所にフッ素原子を導入することにより、強力ながん細胞の 凝集活性を維持しつつ、大幅な代謝安定化した化合物9aを取得した (EC50 = 1.0 nM, hCLint = 3.2 L/h/kg)

さらなる薬物動態改善のため、ベンゾイミダゾール構造の最適化を図ることにより見出され たイミダゾ[1,2-a]ピリジン誘導体17aは、強力な細胞凝集活性 (EC50 = 2.4 nM) かつ高い代謝安 定性 (hCLint = 2.2 L/h/kg) を示し、9aよりも優れたマウスPKを達成した (マウスAUC, 10 mg/kg, po, 9a:1480 ng·h/mL, 17a:6890 ng·h/mL)。このように得られた有望化合物17aAsPC-1 下腫瘍マウスにおける薬効を評価したところ、経口投与において有意な腫瘍の増殖抑制作用が 認められた。また、化合物17aは、非チアゾリジンジオン構造の新規骨格を有していることか ら、PPARγ作動薬の課題である体液貯留作用を回避していることが期待された。本化合物のマ ウス過剰量投与時 (AsPC-1薬効用量の8倍、200 mg/kg12回、4日間投与) における体液 貯留は、溶媒投与群に対し有意差がつかない程度であり重篤な体液貯留を示さないことを確認 している。

以上のように、本化合物はチアゾリジンジオン構造を持たない初の強力なPPARγ がん分化誘 導剤であり、マウス薬効モデルで有意な抗腫瘍効果を示し、かつ体液貯留などの副作用も軽微で あることから、低分化がんに対する新しい治療薬としての展開が期待される。

参照

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