感情体験の分析 ( n )
一 喜 び ・ 悲 し い に つ い て ー
鈴 木 賢 男 ・ 鈴 木 国 威 ・ 上 杉 喬
An a l y s i s o f Some E m o t i o n a l E x p e r i e n c e s ( 2 n d r e p o r t ) :
On Joy and Sorrow
Masao S u z u k i ・ K u n i t a k eS u z u k i • T a k a s h i U e s u g i
T h i s i s t h e s e c o n d r e p o r t o f s u c c e s s i v e s t u d i e s on a n a l y s i s o f some e m o t i o n a l e x p e r i e n c e s . I n t h e s e s t u d i e s a s p e c i a l q u e s t i o n n a i r e was d e v i s e d , w h i c h c o n t a i n s 20 e m o t i o n a l w o r d s . Among them a r e j e a l o u s y , h a t r e d , a n g e r , j o y , s o r r o w , f e a r , d i s g u s t a n d s o o n .
S u b j e c t s were 607 s l u d e n t s o f Bunkyo U n i v e r s i t y and t h e y were r e q u i r e d t o w r i t e a b o u t t h e i r e s t deep e m o t i o n a l even t . The r e s u l t s o f t h i s s t u d y s u g g e s t e d t h a t t h e f e e l i n g o f j o y s p r i n g s up f o r a p e r s o n t o g a i n s o m e t h i n g good , a n d t h e o n e o f s o r r o w s p r i n g s up t o l o s e .
はじめに
本研究は、感情体験についての一連の研究の第
2
報であり、喜び及び 悲しみの感情について、それらの感情を最も強く感じた体験の自由記述 に基づいて、その感情の特徴を分析するものである。第
1
報(上杉喬・権場真知子、馬場史津2002
年)においては、嫉妬、憎い、怒りの感情体験を分析した。その結果、嫉妬体験は、①好意・愛 情に関する嫉妬、②能力に関する嫉妬、③ものに関する嫉妬の3種類があ
ワHaせ
感情体験の分析 (0) 一 喜 び ・ 悲 し い に つ い て 一
り、その嫉妬感情が生起する特徴は、
A)
自分にとって大切なモノ(所 有したい好意・愛情、所有したい能力、所有したい物)が、B)
自分で はなく、C)
身近な人にある(好意・愛情が向けられる、能力を持って いる、物を所有している)という3
者関係において、C)
身近な人に対 して嫉妬感情が生じるというものであった。また、憎い及び怒り体験は、①他者からの行為、②自分の行為、③社 会的事象の 3種類があり、その憎い及び怒り感情が生起する特徴は、 A)
自分にとって大切なモノ(大切にしている人、大切にしている物、大切 にしている心)が、
B)
行為者(他者、自分、社会的事象の行為者)と の2
者関係において、B)
行為者によって、A)
大切なモノが「奪われ るJ
または「巌されるJ
場合に生じるというものであった。憎いと怒り は、類似した特徴を有するが、その違いは、憎いが自身の直接的被害と、また怒りがより間接的な被害と結びついている点にあった。
本研究における、喜びと悲しみの感情は、それが生起するにおいて、
どのような特徴を有するのか、また、一般に、喜びと悲しみは対概念と なっているが、この点は、どうなのか検討したい。
方法
1
.調査質問紙本研究で使用した質問紙は、『体験した感情』として、嫉妬、後悔、憎 い、満足、屈辱、空しい、愛しい、不安、喜び、苦しい、驚き、恐れ、
怒り、寂しい、充実、嫌悪、ためらい、恥ずかしい、悲しい、失望の
20
感情を挙げ、「あなたの今までの体験の中で、次の1
から20
のよう な感情を最も強く抱いた体験・出来事を思い出して、それがどんな出来 事だ、ったのか、分かるように書いて下さい。また、その出来事がいつ頃 (何才位)の事なのかも書いて下さいJ
と教示し、『その感情を体験した‑43
ー文 教 大 学 言 語 と 文 化 第1
5
号出来事
J
を30
字程度のスペースに自由記述するものであった。2.
調査対象・時期・手続きB
大学の「感情心理学jの授業、1 9 9 9
年度( 2 2 7
名)、2 0 0 0
年度(19 0
名)、2 0 0 1
年度(19 0
名)の受講生、合計6 0 7
名に調査用紙を配付して、記 述を依頼し、その後数日をおいて回収した。調査は記名式で行った。3.
感情体験時の年令一つの出来事に対して
1
つの年令が記されていたのはJ
喜びJでは5 6 7
名( 9 3
.4%)で、「悲しいJ
は5 6 6
名( 9 3 . 2 % )
であった。複数の年令、または、年令に幅(期間)のある記述については、複数の年令では感情 を強く抱いた初めての年令とすることにし、年令に幅のある記述につい ては、中央値(高校時代→
1 6
才)とすることにした。感情体験の分類
1
.喜びの分類調査対象者
6 0 7
名の内、具体的に喜びの内容を書いた人は5 8 9
名( 9 7 . 0 % )
であり、記述がなかった人は1 8
名( 3 . 0 % )
であった。内容を書いた人で、喜びの体験を感じた年齢を書かなかった人は、
8
名であった。喜び体験は、まず、「喜びの状況(どうしづ場合に喜びを感じたか)
J
によって分類できる。喜び体験の6 0 7
名の記述内容から、喜ひ・の状況につ いて分類したところ、次の1 8
分類となった。①友人、恋人、家族から、期待している物、※予定外の物をもらった 期待している物とは、主にクリスマスや誕生日などでもらった物であ
った。例えば、「生まれて初めて誕生日プレゼントをもらった時(
3
才)J、「自分の欲しかった物を人からプレゼントされた場合(6
才)J‑44
一感情体験の分析
( 0 )
一 喜 び ・ 悲 し い に つ い て 一② 美 味 し い 物 を 食 べ た
例えば、
f
今まで食べたことがなくて食べたかった物を初めて食べた とき( 2 0
才)J
、「たまに甘いものを食べた時J③望んでいる物・出来事を手に入れた
「愛犬が我が家にやってきたとき(1
3
才)J
、『初めて北海道に行って温 泉から月と湖を見たとき( 2 1
才)J
④ 給 料 を 得 た 時
「バイト代が入金されたとき(1
8
才)J
、「初めて給料をもらった(16
才)J
⑤健康や物を一次的に失ったが、失った物を再び手にした(回復)
「おばあちゃんが心臓の発作を起こして一命をとりとめたとき
J
、「大 切なものを無くして見つかったとき(18
才)J
、「さいふを落としたと 思って暗くなって帰ってきたら親にさいふも持たずにどこに行った のといわれたとき(19
才)J
⑥友人や恋人などと一緒にいる時を持てた
f
とても仲のよい友達と一緒にいた時(17
才)J
、「母の仕事が休みで、夜家にいてくれたという事
(7
才)J
⑦大切なものとの出会いを得た時
「テニスに出会ったこと(1
6
才)J
③親、友人、恋人から、愛情や祝福、プロポーズなどを得た
「誕生日に大勢に祝福されたとき(1
9 才 ) J
、『好きな人に告白されたと き(2 0
才)J
、「家族から愛されていることを実感した(17
才)J
⑨家族や友人との一体感をもった
「部活で皆で力を合わせて試合に勝った時。勝った喜びではなく、皆 の心が
l
つになれたと感じたので嬉しかった(18 才) J
、「あまり仲の良 くなかった母と、腹をわって話ができたこと(18
才)J
⑩友人や家族、先生から好意を得た
‑45
ー文 教 大 学 言 語 と 文 化 策 15号
「思いがけず、友人が自分のことを大切に思ってくれていると知った とき(1
8
才)J
、「思いもよらぬ人に優しくされた時(19
才)J
、『入院して いるとき、友達が見舞いにきてくれたこと(19
才) J
⑪自分が他人に対して行った行為によって、人が喜んだ
「自分のとった行動で喜ぶ友人を見たとき(1
7
才)J
、「銀婚式を迎えた 両親に兄弟で贈り物をして両親が泣いて喜んだとき(19
才)J
⑫自分自身が何かに打ち込み、充実した時を持った
『クラスでトップクラスの女の子とテストで張りあっていたとき
( 1 1
才)J
、「生きていることに充実感を覚えた時(2 1
才)J
⑬苦痛の終了した時、または終了後に達成感を得た時
『高校の受験が終わったとき(1
5
才)J
、「部活の演奏会が終了した直後 (18
才)J
⑬愛する人(恋人、親友)を得た
「初めて恋人ができたとき(1
6 才 ) J
、「本当に心の許し合える友人と語 ったこと(19
才)J
⑬ 大 切 な 人 と 出 会 い を 得 た 時
「大切な人に出会えたこと(1
9
才)J
、「大学で多くの人と出会えたこと (19
才)J
⑮親密な関係の人とのつながりが失われたが、再び以前のような関係を 取り戻した(回復)
『ずっと会っていなかった友達に会ったとき(1
8
才)J
、「留学していた 親しい友人と久しぶりに会った(18
才)J
⑫自分自身の努力や行為によって、成功(目標の達成や、他人からの高 い評価)した
「大学合格(
1 8
才) J
、rNHK
合唱コンクーノレで銀賞をとったとき(16
才)J
‑46‑
感情体験の分析(日) 一 容 び ・ 悲 し い に つ い て 一
⑬幸運にも、満足や婚しさを得た
「宝くじが初めて当たった時
( 1 0 0 0 0
円)(14
才)J
、「好きな芸能人と握手 できたとき( 2 0 才) J
この
1 8
分類は、得られる対象によって分けられるので、「対象J
を基準に して、「物・出来事を得る場合J(① ⑦)と、「心(愛情・好意・充実感・達成感)を得た場合
J
(③ ⑬)、「人(友人・恋人)を得た場合J
(⑬⑮)、自分自身の努力や行為によって、
f
成功(合格、受賞)J
⑫を得た場 合、「幸運(満足や嬉しさ) J
⑬を得た場合の5
つに区分できる。2. r
悲しいJ
体験の分類調 査 対 象 者
6 0 7
名 の う ち 、 具 体 的 に 感 情 体 験 を 記 述 し た 者 は5 8 6
名( 9 6 . 5 % )
、記述しなかった者が2 1
名( 3 . 5 % )
であった。このうち2
名は『書きたくなしリとする者、残りの
1 9
名が無記入であった。「悲ししリ体験は、「喜び
J
と同様に、悲しみが生じた状況(どのような 場面で悲しい思いをしたか)によって分類できた。6 9 1
名の「悲しいJ体 験の記述内容から、「悲しみが生じた状況J
について分類したところ、以 下の3 2
分類に分かれた。①「大切なモノを失う
J時
例えば、「大事なものを落としてなくしてしまった(1
9 才) J
、『好きだ った遊び道具を取り上げられ、壊された(10
才)J
②自分や身近な人の「病気・ケガ・ボケ
J
によって、健康が失われた状 態にある時自分が健康を損なっている状態としては、病気『心臓の手術が決まっ たとき(1
3
才)J
、ケガ『怪我が治らないのではなし、かと思うとき(16 才) J
、身近な人が健康を鍋なっている状態としては、病気「集団治療 室で機械に固まれて、ガリガリに痩せた祖父・祖母を見た時(14
才)J
、﹃t
a uz
文教大学 iJ
g
台と文化 第15サケガ「父が事故に遭って重症を負い、前の父ではなくなってしまった とき
09
才)J
、ボケ「祖母がぼけたとき07
才)J
などであった。多 くの場合、病気・ケガの回復が難しく深刻なものであった。③身近にあり得ない(あってはならなし、)事故・事件が生じて「シヨツ ク
J
を受けた時個人的な事故によるものとして、「交通事故に遭った時。ショックだ ったので。これ以上書けません
06
才)J
や「父が家族に暴力を振る ったこと(10
才)J
、社会的な事件によるものは、「妹が医療ミスで、顔に塗った薬のせいでやけどを負った
(6才 ) J
や『少年犯罪の殺人 犯がそれを犯してしまったこと(19
才)J
であった。④ケンカやもめごとによって「家庭の不和
J
が生じた『祖父母と母親の仲が悪く、年中けんかが絶えず、家の中が暗かった こと
02
才)J
、「両親が喧嘩をしたとき(7
才)J
⑤マンガや小説、映画等の「悲しい場面Jを読んだ・見た時
『手塚治虫の『火の烏
J
を読み、次々と主人公の部落が滅ぼされてい くのを読んだとき(13
才)J
、「映画の悲しい場面を見たとき( 2 0
才)J
⑥身近な人の「悲しみに同感jした時
「父が亡くなって、泣く母を見ていた日々(1
3 才 ) J
、「同居はしていな かったが祖父が亡くなった時、父が泣いているのを見て。泣くなど想 像できなかったので、その父の悲しみの深さを,思った時、悲しかった( 2 4
才)J
⑦自分や身近な人が、周囲にいる身近な人の「犠牲になる
J
時「母の母、つまり私の祖母が寝たきりになっているのに、七人も子ど もがいるにもかかわらず、その一人である私の母しか介護にいかない 事(1
7
才)J、『人にいいように使われていると気付いたとき(18
才)J③自分や身近な人が「理不尽Jな仕打を受けた時
‑48
ー感情体験の分析(日) 一喜び・悲しいについて一
「家庭教師をしていて
J
、きなり一方的に辞めさせられた時( 2 0
才)J
、『友だちが彼氏に殴られて、いつもたくさんのあざをつくっているこ と(1
7
才)J
⑨友人と同じように行動しているのに、「自分だけ違うj結果になった 時
「水泳の授業で先生のミスで一人だけ
2
度測らされたとき(16
才)J
、r 1
年生の歓迎コンパのとき、他の友達は好感触だ、ったのに自分だけ、1
年生に怖いと言われたこと( 2 0 才 ) J
⑩あるべき自分と「ちがう自分jを感じる時
「学校生活の自分と自分の部屋にいるときの自分の違いを感じるとき (1
2
才)J
、「友達の親が死んだとき、泣けない自分が悲しかった(16
才)J
⑪自分の「無力さ
J
を感じる時「自分にはピアノの上達の限界があると知ったとき
( 1 1 才 ) J
、「弟の体 が悪いのに何もできないと知ったとき( 7
才)J
、「痛感するのは、自分 の無力( 2 0
才)J
⑫身近な人や周囲の人から「誤解されるj時
「パスの中で友達と
2
人でおもしろい事を言って笑っていたのに、目 の前に立っていた人が『人の顔を見て笑っているなんて失礼でしょ う』と誤解された時(12
才)J
、「親にチョコを盗んだと疑われたとき( 1 0
才)J
⑬身近な人に「気持ちが伝わらないJと感じる時
「大切な人に自分の気持ちが伝わっていないことに気付く (21
才 ) J
、「退職する時に、後任の方が困らないようにと、自分としては一生懸 命引継ぎをしたつもりが相手の方に理解してもらえず悲しかった
( 4 2 才 ) J
‑49
ー文 教 大 学 言 語 と 文 化 第
1 5
号⑬身近な人に自分の行為や考えが「理解されなしリと感じる時 f幼稚園の絵の教室で、すし、かを食べている子の髪を赤でぬったら、
先生に、「人間の髪は黒だからjと言われ、上から黒で塗り直された 時
(4
才)Jや「自分だって、色々考えて悩んでいるのに親から「何
も考えていなしリような言い方をされた時(1
8
才)J
⑬身近な人に「怒られたJ時
「先生にグッとにらまれて怒られたことは才)
J
、『小学校入学に備え て、母が懸命に私に名前のひらがなを教えてくれるのだが、うまく完 全に書けず、外に立たされた上、足の指を怪我したことを母に伝えら れず、悲しかった(7
才)J
⑮自分の行為によって、身近な人を「悲しませる
J
時「反抗期の自分を見て、夜こっそり泣いている父親を見た時(1
5
才)J
、「今、彼女と連絡をとっていないので、相手に辛い思いをさせている かと恩うと悲しいです(1
9
才)J
⑫「恋人とケンカ
J
した時「彼氏とけんかしたこと(1
9
才)J
、「恋人とケンカしたとき(18
才)J
⑬身近な人に、『陰口jを言われていることを知った時
r l f
中の良かった友だちに陰で悪口を言われたとき(12
才)J
、「好きだ、っ た人が私のことを二重人格だと言っていたと友人から聞いたとき(14
才)J
⑬身近な人から自分(たち)のことを悪く言われて「傷ついた
J
時『祖父が亡くなった時、小さな財産のことで遠い親戚がひどい電話を よこした日寺(1
8
才)J
⑫身近な人から自分の「存在を否定されたjと感じた時
「一族の集まりの場で酔った父親に「お前など死んでしまえ、殺して やろうか」と真剣に言われたとき(1
0
才)、「高校の時に部長をやってAU
Fh u
感情体験の分析(日)
‑}1び・悲しいについてー
いたのですが、自分の仕事を認めてもらえず、思いっきり否定された 時(17
才)J
@身近な人に「裏切られたj時
「人に嘘をつかれたとき(年令未記入)
J
、「困っている友だちを献身的 に助けたつもりなのにその事を本人に仇で返されたとき(18 才) L r
助 けてくれるはずの友だちが助けてくれなかったこと( 2 0 才 ) J
。②「失恋」した時
「中ーからずっとあこがれていた初恋の人に失恋してしまった時(17 才)
J
、「考え方が違うといって突然別れを言われたこと(19
才)J
、ま た、実際に失恋したわけではないが、想像することによって悲しみを もたらした例として、「彼女と別れそうになった時( 2 0 才 ) J
もある。⑫『自分だけ恋人がいない
J
と感じた時「友だちはどんどん彼氏が出来ていくのに、自分にはまったく出来る 気配がないと感じたとき
( 2 0 才 ) J
@ r友を失った
J
時「一番仲のよかった友人が離れていったとき、とても悲しかった
( 2 0
才 ) J
、「けんかした友だちとの仲が回復しないこと( 2 0 才) J
@ r仲間はずれ・無視された
J
時『仲良しの子とけんかをし、私を残して友だち 2人でさっと隠れるよ うに帰っていく姿を見た時
( 1 1 才 ) J
、「やはり、いじめ。多くの人か ら無視されたりするのは、やはり悲しかった(13 才 ) J
⑫孤独や疎外、「一人ぼっち」になった時
孤独感を感じていた場合として、「学校で自分は一人ぼっちだと思い、
一人で行動していると感じたとき(1
4 才) J
。疎外感を感じていた場合 として、「友だちに一緒に帰ろうと言って、「ごめん用事があるJって
断られた時(17 才) J
。また、実際に「一人ぼっちJだと感じる状況は
‑51
ー文教大学
J
語 と 文 化 第 15号ないが、「小さな頃、お父さんがいなくなっちゃう夢を見た時
(4
才)J
のように、「一人ぼっちJ
になることを想像する場合。⑫ 人 と 「 別 れjる時
「両親が離婚すると言い出して双方の親も呼んで話し合ったこと(1
3 才 ) J o r
愛していたロックバンドが解散したこと(16 才 ) J o r "
、とこの お姉さんの結婚式。私にとって実の姉のような存在だ、ったので、何か 遠い手の届かないような所へ行ってしまうような気がして、嬉しいく せになぜか悲しかった(16 才) J
0r
高校3
年間、仲の良かった友だち と離れ離れになると思った卒業式(18才) J
0r
ホームステイをしてた 家族と別れるとき(アメリカ、コロラド州で1ヶ月) (
12 才 ) J o r
転校 するため、仲良しの友だちと別れるとき( 1 1 才) J
。⑧「ベットがいなくなる
J
時「飼っていた犬が突然いなくなった。待っても探しても帰ってくるこ とはなかった
( 2 0 才 ) J
、「飼っていた犬を知人にあげることになり、その家まで犬を送って行ったときのこと
( 1 1
才)J
⑫家族、友人、身近な人の「死J(永遠の別れ)
『祖母が亡くなった時。とても可愛がってくれていて、いつも自分の 見方だった。心のよりどころの
1
人がこの世からいなくなって悲しい (12
才)J , r
高校の同級生がなくなった時、この前まで話していたのに、と思うと悲しいし、なんとも言い表しがたい気持ちになった(1
9
才)J
。⑩飼っていたベットの「死(ベット)
J
「ずっと飼っていた犬が死んでしまった時(1
4 才 ) J
、f
飼っていたウサ ギが死んでしまった時(19才) J
、「飼っていたインコが死んだ(12才) J
@試合や試験、受験に「失敗j した時
「部活で、(吹奏楽部)コンクールに出て、関東大会に行けなかったこ と(1
6 才 ) J
、「テストで一生懸命勉強したのに、不合格だった時(科‑52
一感情体験の分析(日) 一 喜 び ・ 悲 し い に つ い て 一
目は保健体育)
( 2 5
才)J
、「現役時代、大学受験に全滅したとき(18
才)J
⑫「不運
J
な目にあった時「ディズニーランドに行ったら、スプラッシュマウンテンが中止だ、っ たとき
( 2 0
才)J
この
32
分類は、「悲しみを生じさせた興失対象(何を、誰を失ったのか)J
によって、『物・出来事を失う悲しみ~ (① ④)、『物などを失っていな いが、心(思い)を失った悲しみ~ (⑤...@)、『人・ペットを失った悲し み~ (②~⑩)、『期待していた成果を失った悲しみ~ (⑥)、『運を失った 悲しみ~ (⑧)の6
つに区分できる。但し、『心を失った』における、r5
悲しい場面J r 6
悲しみに同感J r 7
犠牲になるjは、基本的には、登場 人物や身近な人の悲しさに対する悲しみ(かわいそう)であり、同感(あるいは共感)に類するものである。
結果
1
.喜びの分布表
1
は、得られた対象によって分類されたカテゴリーと喜びを強く感 じた年齢の分布を示している。喜びの分布から認められた特徴を以下に 記した。1
)方法で記した5
つの区分(物・出来事、心、人、成功、幸運)のう ち、『成功を得た場合』に最も強く喜びを感じたと報告した人は、354名 (60.9%) であり、以下『心を得た場合~
( 8 1
名、13.9%) J
、『物 を得た場合 (88名、 15.1%)~ 、『人を得た場合 (37名、 6.4%)~、『幸 運 (20名、 3.4%)~と続いた。2)
~物・出来事を得る場合』について見ると、最も出現頻度が多かった‑53‑
文 教 大 学 言 語 と 文 化 第
1 5
号カテゴリーは、「親しい人から期待している物、予定外の物を得た
J
であった( 2 9
名、5.0%)
。閉じように『心を得た場合』についてみ ると、f
思いや祝福、プロポーズなどの愛を得たJ ( 2 9
名、5.0%)
、『人を得た場合』では、「愛する人を得た
J ( 2 0
名、3
.4%)であった。3)
全体の年齢に注目すると、多くの人は15
才から21
才に強い喜びを感 じていると報告した( 4 8 1
名、82.8%)
。それぞれのカテゴリーを検 討した場合も、同様の傾向が観察された。しかし、『物を得た場合』では、カテゴリー内で26.1%にあたる
2 3
名が、3
才から1 0
才にかけ て、強い喜びを感じたと報告した。その他のカテゴリーでは、3
才 から1 0
才の出現頻度は『心を得た場合』が4
名( 4 . 9 % )
、『人を得た 場合』がO
名、「成功を得た場合jが19
名( 5
.4%)、「ささやかな幸 福jが0
名であった。したがって、3
才から1 0
才に相対的に多くの 頻度が見られたのは、『物を得た場合』の特徴であった。‑54
一感情体験の分析
( 1 1)
一喜び・悲しいについて表1.喜び体験の年令別頻度
物・出来事者?得る翁合 心{量情・好意・充実輔・理直感)を得た場合 1 I 2 3 I 4 5 I 6 I 7 8 I 9 10 I 11 12 113 定 友
a
味e
盟ん 給 び 惜 友 大 なズ観、2震 友 が自 待自 得宮寄外 人 料 亭 般 人 切 銭 入 客 分 つ 分 た 痛
の ・ し で を に や ゃ な ど 友 や や ん が た自 フ。
輯 掴 b、』、 得 し 物 E も を 人 宜11<だ 也 k 終
f:人 物 る た た を 人 の 得 ・ 入 銀 人 が T
も を 鞠 な t たE t lニ f可 し
ら稼 食 ー 回 時 ど の 人 の 先 対 か た
'01実 ペ 幽 復 的 』 ヒ 蜘 か ‑ 生 し に 時 a手 た か た 来 一 会 合 ら 感体 治、 て 打
ま 合 令 ら
"
を つ失 絡 いに を 計 量情 をも 身ら予 行 ち。 込 た 計用 手 た い 1~ 宮 た み は
1. 10 が る た ゃ っ f: 行 終
し 入 時 偏統 た l' 為に 先. 了
て れ 失 を t.‑. 後
も
、 た 。 待 よ し
る た て プ っ た 選
物 拘 た ロ て 時 成
を ポ を 畢
予 F事 人 を
3揮鹿 2 21 i
% 50.0 50.0 25.0 2日~.O
4 輯度 l
% 50.0 50.0 5
1 ' %
80.04 80.046 掴鹿 2 2 41 1
% 25.0 25.0 50.0 12.5 12.5
7 度 1 l 2
% 14.3 14.3 28.6
8甜 直 1 1 2 l
% 16.1 16.1 33.3 16.1 16.7
9 睡直 2 i 3 1
% 40.0 20.0 60.0 20.0 20.0 10掴%E 3 l l 5
泊.3 II.l ll.l 55.6
11 i‑J。M。[ 22.22 22.2 2 22.22 22.22
12輯%車U i i 2 l
7.7 7.7 15.4 7.7 7.7
13掴 l 21 2
12.5 12.5 25.0 25.0 25.0
14傾%E i l 1
5.9 5.9 5.9 I 5.9
i 1 1 4
人(友人・窓人}を得た場合 14 15 16
す17官
ト 岳
量 :1< 再 臨
す 切
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壇 分 週る な 以 な 成
a
lこ人 人 曲 闇 ゃk も
《 と の 係 の
恋 出 ょ の 他 努 調
人 会 う 人 入 力 且
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、 な と か や や
揖 を 聞 の A 回 ら行 臨 会
友 得 係 つ 田 島 し 体
た を な 官十 高 に さ
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25.0 0.7
i 2
50.0 0.3 I 5 20.0 0.9
3 8
31.5 1.4
5 7
11.4 1.2
3 6
50.0 1.0
l 5
20.0 0.9
4 9
44.4 1.5 5 9 55.6 1.5 10 13 76.9 2.2
4 8
50.0 1.4 1 21 11 21 17 5.9 I 5.9 11.8 54.7 11.8 2.9 11 60 65
15~・ 1.6 1.5 I 1.5 1.5 1.5 I l.5 6.1 t 1.5 1.5 I 92.3 11.2 16
F%
3.2 I 11 3.2 3.2 l 6.~ト2 16.151 12.9 3.2 I 11 5.5 22.67 3.2 I 3l .2 6.52 I 1 51.16 6 3.2 I 11 6.331 17掴%直 2 l 21 51 31 7 1 11 36 11 51 3.9 2.0 3.9 I 2.0 11.8 3.9 5.9 I 3.9 13.7 2.0 2.0 r 70.6 2.0 I 8.8 18零 2.66 1.9 31 I 1.9 0.61 1 1.3 I 1.3 921 .715 I 1.9 31 1.3 I 3.25 2.64 I 1 9.104 5.28 I 0.6 1.3 21I 7 .111 7 11.16 21 .6411 126.575 1911首直 4 11 21 41 15 7 SI IS 6 4 51 15 SS 31 103 3.9 1.0 r 1.9 1.9 I 1.9 3.9 I 14.6 6.8 4.9 I 2.9 14.6 5.S I 3.9 4.91 14.6 53.4 2.9117.7 20甑度 31 11 3 101 11 31 21 11 1 1 1 31 16 71 54% 5.6 I 3.7 1.91 1.9 5.6 18.5 11.1 1.9 I 7.4 5.6 I 1.9 3.7 131.5 1.9 I 1.9 1.9 I 5.6 29.6 13.0 9.3 21
f ‑ ' f ‑
4.511 113.6 9.12 27.3"
4.5 4.5l I 4.5 11 9.1 I 4.5l 27.36 4.5 1 4.5l I 9.2 1 27.36 9.1 I 21 23.8222i‑JM[ 1 1 2 3
% 33.3 33.3 66.7 。g
24 直 2 2
% 100 0.3
27
F%
100 0.21~f-'f-
5.209 1 1 0.5 3.22811 1.2 1.19 11I 1.2 1.5 91 1 15.81 8 5.209 I 1 1.0 3.26111 1.17 0 1.0 61 I 1.5 13.89¥ 3.240 11 1.4 1.5 911 6 .34 7 360.594 3.24 01I 1 50801‑55 一
文 教 大 学 百 甜 と 文 化 第
1 5
号2. r
悲しいJ
体験の分布表 2に、「悲しい状況(どのような時に悲しいと感じたのか)
J
による3 2
分類における、体験時の年令別分布を示す。1
)悲しい体験の出現頻度は、年令不明の記述を除く5 7 1
名中、『物・出 来事を失う悲しみ』が3 4
名( 6 . 0 % )
、『心を失った悲しみ』が8 6
名 (15 . 1
%)、『人・ベットを失った悲しみ』が4 3 5
名( 7 6 . 2 % )
、「失敗J
が1 2
名( 2 . 1
%)、「不運」が4
名( 0 . 7 % )
であった。2) W
物・出来事を失う悲しみ』について見ると、出現頻度の最も多かっ たものは、r2
病気・ケガ・ボケJ
とr3
ショックjであり(共に1 2
名、2 . 1
%)、次いで、r1
大切なモノを失うJ (7
名、1.2%)
、r4
家庭の不和J (3
名、0 . 5 % )
であった。3) W
心を失った悲しみ』では、r 2 1
裏切られたJ
が1 4
名( 2
.4%)、r 1 1
無力さjが1 1
名(1.9%)
、r5
悲しい場面J
とr 1 4
理解されないj及
びr 2 0
存在を否定されたJ
が共に7
名(1. 2 % )
、r6
悲しみに同感J
、r 1 5
怒られるJ
が共に6
名 (1.0%)
、続いてr
lOちがう自分J r 1 6
悲 しませるJ
(共に5
名、0 . 9 % )
、rs
理不尽J r 1 3
気持が伝わらないJ r 1 7
恋人とケンカJ
(共に3
名、0 . 5 % )
、r7
犠牲になるJ r 9
自分だ け違うJ r 1 2
誤解されるJ
(共に2
名、0 . 3 % )
であった。なお、r 1 9
許されないjは全て (2例とも)年令が未記入のものであったため、表中には記載しなかった。
4) W
人・ペットを失った悲しみ』では、r 2 9
死(人)Jが 1 9 1
名( 3 3
.4%) で最も多く、次いでr 3 0
死(ベット) J
が9 6
名(16 . 8 % )
、r 2 7
別れJ( 6 0
名、1 0 . 5 % )
、r 2 2
失恋J ( 4 8
名、8
.4%)、r 2 6
一人ぼっちJ
(13
名、2 . 3 % )
、r 2 5
仲間はずれ・無視されたJ(
10
名、1.7%)
、r 2 8
ベットが いなくなるJ (9
名、1.6%)
、r 2 3
自分だけ恋人がいなしリr 2 4
友を失 うJ
が共に4
名( 0 . 7 % )
であった。人の死とベットの死を合わせた‑56
ー感情体験の分析 (s) 一 喜 び ・ 悲 し い に つ い て 一
場合、
2 8 7
名( 5 0 . 3 % )
であり、全ての悲しい体験のうち、半数を占 めた。5) 表 2
の構成パーセントは、3 2
分類、及び『物・出来事を失う悲しみ』『心(思い)を失う~ w人・ベットを失った悲しみ』の区分における 年令毎の悲しい体験の比率を示すものである。
『人・ペットを失った悲しみ』は、ほとんど全ての年令で、
50%
を 超えた。しかし、90%
を超える比率を示す年令層もある中で、3. . . . . . . .
7
才、1 8 . . . . . . . . 2 1
才では70%前後の出現率に留まるものが比較的多かっ た。『物・出来事を失う悲しみ』は、15%
を超える出現率が3 . . . . . . . . 7
才に見られた。3
才では1
名( 3 3 . 3 % )
、7才では2
名( 2 3 . 1
%)で あった。『心(思し、)を失う悲しみ』は、30%
を超える出現率が3 . . . . . . . . 7
才に見られ、3
才では 2名( 3 3 . 3 % )
、6
才では3
名( 3 3 . 3 % )
であった。1 8 . . . . . . . . 2 1
才では、いずれも15%
を超える比率を示した。中 でも、2 0
、21
才は25%を超えていた。『人・ペットを失った悲しみ』の中では、
r 2 2
失恋」が1 5 . . . . . . . . 2 4
才ま でにかけて出現し、8 . 3 . . . . . . . . 3 3 . 3 %
の比率を示していた。r 2 5
仲間はず れ・無視されたJは、1 0 . . . . . . . . 1 3
才までに集中して出現し、3
.4. . . . . . . . 1 0 . 8 %
の比率を示していた。人の死とペットの死における出現率が極端に 逆転してしまう年齢層は、7 . . . . . . . . 8
才で7
才ではr 2 9
死(人)Jが 1
名 で9.1%、r 3 0
死(ベット) J
が6
名で54.5%であり、8
才では「死(人)J
が 1名で8.3%、「死(ペット)J
が7
名で58.3%であった。『物・出 来事を失う悲しみ』の中では、r3
ショックJが 3 . . . . . . . . 4
才にかけて 比較的高い出現率を示し、3才では 1
名(33.3%)
、4才で 1
名 (16.7%)であった。また、 r4
家庭の不和J
は、7
才で 2名(18.2%)
という比較的高い出現率を示した。『心(思し、)を失った悲しみ』の中では、
r1 5
怒られるJは
、3 . . . . . . . . 7
才までの出現率が15%
を超え﹃t
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金 体
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合併
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U円
感情体験の分析
( n )
‑11‑び・悲しいについてー
ていて、
6
才で 2名( 2 2 . 2 % )
、4才で1
名(16 . 7 % )
であった。r 1 3
気持が伝わらないJ
は、2 0
才での出現率が比較的高く、 2名で1 8 . 2 %
であった。また、出現頻度の最も多かった「死(人)
J
とf
死(ペット) J
の記述 内容に関しては、失った対象を具体的に明記しであるものが多く、対象 別の頻度を集計した。1 ) r
死(人)J
を悲しいとした1 9 1
名のうち、祖父母(曽祖父母を含む) の死が、1 0 9
名( 5 7 . 1
%)友人( 3 1
名、1 6 . 2 % )
、親類(16
名、8
.4%)、 父母 (11名、5 . 8 % )
いとこ (2名、1.0%)
、兄弟姉妹(1
名、0 . 5 % )
、 部活の先輩、担任の先生などのような身近な人(14
名、7 . 3 % )
、尊 敬 す る 人 物 (2
名、1 . 0 % )
であった。その他、想像した死によるも のが5
名( 2 . 6 % )
であった。また、死に至った理由を特に記述しで あるものは、1 7
名であり、「事故J
によるものが9
名、「がん」が4
名、心筋梗塞などのように「突然J
死んだとするものが 2名、「自 殺jが 2名であり、1 7
名中 11名( 6 4 . 7 % )
が友人の死の理由を記述したものであった。
2) r
死(ペット)J
を悲しいとした9 6
名のうち、犬の死が、3 1
名( 3 2 . 3 % )
、 猫( 2 2
名、2 2 . 9 % )
、鳥(14
名、1 4 . 6 % )
、ハムスター(6
名、6 . 3 % )
、 うさぎ(3
名、3 . 1 % )
金魚(2
名、2 . 1 % )
、 カ メ (1
名、1.0%)
であり、複数のベットを記述したものが2
名( 2 . 1
%)、具体的な動 物名を記述していないものが1 3
名(13 . 5 % )
であった。その他、「犬 が死にそうになったjと「生き物は死ぬと知った時J
が、それぞれ1
名 (1.0%)
であった。また、死に至った理由を特に記述しである ものは、1 2
名であり、「事故jが4
名、「鳥かごを落として、首を折 ってしまったJ等の「不注意Jによって死なせてしまったものが 3
名、飼っていた鳥が猫に「襲われたJが3
名、心不全などのようなnHd
Fh u
文 教 大 学 言 語 と 文 化 第
1 5 l }
f突然
J
死が2
名であった。考察
本研究では、基本感情である喜びと悲しみの多彩な意味および構造と それらの関係を、自由記述法を用いる事によって、明らかにした。本研 究により明らかになったことは、基本的に、喜びは、『様々な対象を得るj
ことによって、悲しみは「様々な対象を失う
J
ことによって、生み出さ れる感情であった。1
.喜びの特徴と構造喜びの源泉は、何かを得ることであった。
1) r
物を得た場合J
人々は物を得ることや出来事を体験することによって、喜びを感じる。
喜びを感じる時の物は、単なる物理的な物ではなかった。特徴の
1
つは、友人や家族、恋人からの「物Jであり、クリスマス・プレゼントや誕生 日プレゼントに代表される「好意や愛
Jを表象する「物
jだということ である。特徴の2
つは、「得るjことを熱望していたものであったり、突 然もらったりする場合に「喜びJを強く感じるということも示されてい る。他には、美味しい物を得ることによって感じることのできる「充実 感J、犬などの望んでいる物を得るもしくは家族旅行などの願いが叶うこ とによって得られる「満足J
、一所懸命に働いて給料を得たことによって 感じられる「努力J
、一時的に健康・ものを失ったが、それを取り戻した『回復
J
、友人や家族と時間・場所を共有する「一緒J
、大切な物・出来事 を手に入れた「出会しリなどもあった。2) r
心を得た場合J
直接物を得なくとも、愛情や好意などを受け取ることによって、喜び
‑60
ー感情体験の分析 (0) 一喜び・悲しいについてー
を得る場合である。具体的に得られる物は、プロポーズや祝福を得る「愛j、 仲間と一緒に作業などを行うことで得られた『一体感
J
、先生や友人から 受け渡される「好意j、自分が他人に好意を与えることにより、他人から 再び渡される「好意J
、何かに打ち込むことで得られる「充実した時J
、 困難な作業などが終わることで得られた「達成感心押さえられていた感 情を再び得る「回復」であった。3) r
人を得た場合J
喜びはまた、人を得ることによって、感じる。恋人や友人を得ること は大きな喜びであり、失われた関係が「回復Jし、再び恋人や友人を得 ることも含まれる。
4) r
成功J
成功は、自分自身が困難な状況を乗り越える時に得られ、それによっ て喜びを感じる。具体的には、努力して成功を得る「成就
J
、中学・高校・大学への入学や資格を得ることになる「合格」、試合で勝つ「勝手Ij
J
など である。5) r
ささやかな幸福J願っている物がほんの少しだけ得る場合などが上げられる。
喜びの体験で、
5
つの区分のうち最も頻度が多かったカテゴリーは「成 功」であった。「成功」の多くは、『合格J
や「勝利J
などの学校と関係 がある出来事であった。『成功jが多かった理由は、本研究で対象となっ た被験者の多数が20
才から22
才であったために、最近の出来事である「大 学合格Jに強い喜びを感じているからであろう。また、青年期では、外
界の困難を乗り越えるために、自分自身の成長のために、様々な努力を 行うと考えられる。そのため、受験などの困難に打ち勝つことに強い喜 びを持っとも言える。また、『物を得た場合j、「心を得た場合J
、「人を得‑61‑
文教大学
2
語 と 文 化 第15号た場合jにおけるそれぞれのサブ・カテゴリー内で、つねに喜ひeの源泉 となっているのは、いずれも「愛と好意」であった。このことは、「成功j
と「愛jの2つが喜びを喚起する最大の源泉であると言える。
年齢を考慮に入れると、幼児期
(3
才から10
才)に富・びを多く感じ た対象は、5
つの大きなカテゴリーでは、「物J
であった。もちろん、「心J
や『成功J
なども観察されたが、「物jほど多くはなく、「人J
に関して は全く報告されなかった。このときの「物jは、主にクリスマスや誕生 日などのイベントの時にもらった物である。その背景には『愛jが感じ られるとしても、プレゼントを得ることは、単純で理解がしやすいと考 えられる。次に何かを得る主体について見ると、何かを得る主体は、主に「自分
J
であるが、「父親の病気が回復するj、「弟を迎えに来るJ
など、直接何か を自分が得て無い場合でも、喜びを感じる時があった。また、自分が他 人に働きかけることによって得た「相手の好意J
によって、喜びを感じ る場合もあった。以上から、喜びの基本構造は「得る」ことであり、その過程の多くは、
単純に対象を得る場合である事が明らかになった。一般に『得る
J
は、0がプラスになることであるが、それだけでなく、負の状態から 0もし
くは正の状態に移行する場合、他人に働きかける事で好意を得る場合な どもあることも示された。また、得る主体は、直接的、間接的共に「自 分J
であり、間接的である場合は父・祖母・弟などの身近な人であった。このような構造から予測される現象であり、かっ観察されなかった「得 ること J を考えてみたい。本研究で、他人が他人に向けられた「好意J もしくは他人の「回復jによって、間接的に「得るjことで喜びを感じ る過程が見いだされた。それとは逆に、相手が負の状態になることによ り、自分が相対的に高い状態になることを『得るjことにより喜びを感
‑62
ー感情体験の分析
( 1 1 )
一 喜 び ・ 悲 し い に つ い て ーじる場合も構造から予測される。しかし、本研究では、これらの現象は 見いだ、されなかった。人間は小説・映画などのフィクションを見た場合 や相手の苦しい状態を見た時に、悲しい場面を容易に自分に起こった出 来事と捉えてることが知られており、本研究の「悲しみ
J
の分類でも、多数報告されている。すなわち、相手が何かを失うような状態は悲しい 出来事であり、そのような状態を目撃した場合、自分自身の心の状態も 容易に悲しみとなり、少なくとも強し、喜びにはならないのであろう。逆 に、相手が得た事による喜びの状態を目撃した場合、それを自分の出来 事として捉えた場合は喜びとなり、相手の状態が良くなったと捉えるな らば、嫉妬になるのではなし、かと恩われる。上杉・権場・馬場(
2 0 0 2 )
は、 物・能力・好意などが自分に向けられず、身近な人に向けられる時に、嫉妬を体験すると報告している。したがって、相手の状態が良くなる場 合には、喜びから嫉妬が生じると考えても良いと恩われる。
2.
悲しみの内容の発達的な変化本研究における調査は、「悲しみをはじめて感じたのは、何才頃である か
J
ではなく、「今までの体験の中で、悲しみの感情を最も強く抱いた体 験・出来事を思い出してJ
記述してもらうものであった。いずれの年令 (屑)においても『人・ベットを失った悲しみ』は過半数を超えており、これが基本的な悲しみ感情を表していると考えられる。しかしながら、
表
2
に示された結果は、『悲ししリ感情を体験する状況が発達的に変化す る様子をある程度示している。3‑‑7
才の頃、比較的出現頻度の高かったものは、『物・出来事を失う 悲しみ』のr 3
ショック Jr 4
家庭の不和J、『心(思し、)を失った悲しみ』の
r 1 5
怒られるJであった。「ショック」の内容は、「父が家庭に暴力を
振るったこと」や「妹が医療ミスで、顔に塗った薬のせいでやけどを負‑63
ー文教大学
3
語 と 文 化 第15
号った
J
であり、どの年代においても直視に耐えない状況であるが、年令 の高い者が、加害者である父や医者に対する「怒りJ
感情を強く抱くの とは違い、加害者を明確に対象化できないのではないか。つまり、家庭 内で目の当たりにした ひどさ(ありえないこと)"の恐ろしさに、ただ 打ち震えていたのではないか、と考えられる。 f家庭の不和J
の内容は、「父母のケンカ・仲の悪さjであり、この頃の子どもが父母と共にいる家 庭を中心とする世界で生きていることと一致している。「怒られるjの内 容においても、「親に怒られた
J r
家から閉め出されたJ r
先生にグッとに らまれて怒られたことJ
であり、普段は庇護・保護されている世界から はじき出される様な、非常に 怖い"体験であり、中心とする世界の喪 失をうかがわせるものであろう。1 0 . . . . . . . 1 3
才の頃、比較的高い出現頻度を示したr 2 5
仲間はずれ・無視さ れたjの内容は、「仲間だと思っていた人みんなに無視されたときJ
であ り、楽しさを共有していた、学校の友だちを中心とした仲間そのものか ら、はじき出されている悲しみであり、友だち同士の世界もまた大切な ものとなっている。1 5 . . . . . . . 2 4
才までの思春期・青年期に出現したr 2 2
失恋Jは、恋愛感情を 抱く相手としての、異性との関わり・世界が大切になっていることを表しているであろう。
2 0
,2 1
才の頃、比較的高い出現頻度を示したr 1 3
気持が伝わらないjの 内容は、「思うように自分の気持を人に伝えられないJr
自分のやる気が いくらあっても全く見てもらえない時もあるjことであり、友だちゃ異 性との関係も含むが、一般的に大事にしたい人間関係の中で、自分がよりよい世界を作りえない悲しみを表わしているのであろう。
‑64‑
感情体験の分析 (U) 一啓び・悲しいについて一
3.
悲しみ感情の源泉どの年令(層)でも出現頻度の高かった『人・ペットを失った悲しみ』
は、悲しみ感情の基本となるもので、特にその中でも出現頻度の高い『死 (人・ベット
) J
は、永遠に取り戻すことのできない喪失体験であり、「人 間の意思ではどうすることもできないJ
という性質をもっている。ここ に、悲しみ感情の源泉が、「失うJ
ことにあることが典型的に示されている。また、ある程度認められた悲しみ感情内容の発達的変化は、乳幼児期 には、「庇護・擁護してくれる大人(父母もしくは家庭)
J
と結びついて、学童期には「楽しさを共有してくれる友だち(仲間)
Jとも結びつく。思
春期・青年期には「恋愛感情を抱いた異性j、また「一般的に大事にした い人間関係jに係わっていることも示した。これは、悲しみの感情が、その生活と人生において最も大切と思っている人に受け入れてもらえず、
その人との結びつきを失う(喪失する)と感じた時に生ずるものであり、
これらの心地よい世界を得ることや、持続していくことが、「自分自身の 意思や力(能力)ではどうしようもできない、できなかった
J
ということと結ひ'ついていることもまた、示されている。
4.
喜びと悲しみについて以上から、全体として、喜び感情は、自分にとって大切な人・物・事 象を「得る」ことと結びつき、その反対に、悲しみ感情は、自分にとっ て大切な人・物・事象を「失う
J
ことと結びついていることが示された。その意味では、喜びと悲しみは、対極的な関係にある感情であるという ことが、本研究においても示された。しかし、喜びと悲しみが対極的な 関係にあるということは、体験する事象の対極性と両感情の強さに等価 性があることまで意味するものかは不明である。例えば、内容的に、「死J
と「誕生Jは対極性をもっと考えられるが、「死Jに対する悲しみの程度