市街化調整区域における建築形態規制の効果と限界 [ PDF
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(2) 3-2 建築形態規制の基準値案の分析. 以上より、自治体の一般基準の設定には 2 つの設定が. 先行検討行政庁における容積率、建ぺい率の基準設定. あり、一律規制型は、現在の白地地域に存在する既存建. は、一般基準と特殊基準によって構成されている。基本. 築規模の上限から既存不適格建築物の発生を抑制するこ. 的に白地地域の規制値は一般基準で定められており、一. とを主眼とする現実対応重視型となっている。一方、複. 般基準の適用が相応しくない地域には特殊基準を設定す. 数規制型は、地域の建築実態に応じて将来像を設定し、. ることで個別的に対応している。特殊基準の適用範囲は、. それぞれに異なる規制値を設定する計画論重視型となっ. 既存不適格建築物の発生区域や他法令と整合性をとる必. ている。. 要のある地域で設定されている。. 4. 調整区域における既存建築物の地区別特性. 一般基準の設定には2つのタイプがみられた。1つは白. 本節及び5節では福岡県北九州市の調整区域を対象と. 地地域全域を一律の基準値で規制する一律規制型、もう. して、既存建築物の環境条件別の特徴とこの特徴を規定. 1つが複数の基準値で地域別に規制する複数規制型であ. している空間要因の考察を行った(図 2)。. る(図 1)。この 2 つのタイプでは、各行政庁ごとの白地. まず、本節では調整区域を小学校区を基本とする37地. 地域における将来像の設定に差異があると考えられる。. 区に区分し、既存建築物の地区別特徴を分析した。. 各行政庁の一般基準のタイプ及び規制値を整理し、その 環境条件別に典型町丁目 を抽出. 既存不適格建築物の判定. 想定されている将来像について考察した(表 2)。. 地 区 3つの規制値による既存 単 不適格発生率の類型化 位. 一律規制型は原則的な現行の容積率 400%、建ぺい率 70%の規制基準値と白地地域の既存建築実態との乖離を 是正することを目的としている。規制値は容積率 200%、. 既存建築物及び 人口動態の分析 フィールド調査に よる環境条件の 詳細分析. 既存不適格発生率と、環境 条件との関係の考察. 建ぺい率 60% もしくは 70% を一般基準として設定してい る行政庁が最も多く、12 庁中 7 庁(46.7%)が該当する。. 町 丁 目 単 位. 図2 既存建築物の分析フロー. 一律規制型の行政庁では、現段階で想定される地域像を. 4-1 建築形態規制のシミュレーション . 明確に定めていないものが多く、上位の構想、計画等に. 調整区域の既存建築物に 200/60、100/50、80/40(容積. 柔軟な対応が可能となるように緩やかな規制値を設定し. 率 / 建ぺい率)の 3 つの一律規制値を適用し、既存不適格. ている。一方、複数規制型では、白地地域を地域の実情. 建築物の発生率について類型化を行った。3つの規制値と. に応じて区分し、それぞれに規制値を設定して、地域区. もに地区によって発生率が分散している。しかし、 200/60. 分ごとの将来像を定めている。具体的には、①調整区域. の規制値では、37 地区中 28(75.7%)の地区で既存不適格. と非線引き白地地域を区分して規制値を設定している自. 発生率が 1% 未満となり(図 3)、200/60 の規制値では、既. 治体、②既存建築実態や土地利用の方向性に基づいて規. 存建築物に対する影響が極めて小さく、特定の地域のみで. 制値を設定する自治体の 2 つの方針が確認された。. MIN=1.47. MAX=35.14. 80/40 AVE=7.41. 規制基準タイプ. MIN=0. 目的. 一律規制型(10). 現行の規制値である400/70と白地地域 の既存建築実態との乖離を是正する. MAX=10.59. 200/60 AVE=0.89. 複数規制型(5). 地域の実情に応じて、それぞれに対応 した規制値を定めて規制する. 0. 図1 一律規制型と複数規制型 表2 各行政庁の規制値とその設定理由 一般基準*. 100/50または 100/60. 基本的に低層住宅地としての環境を維持する地域 山口県 とするために比較的厳しい基準を採用. 200/60 50/30 100/50 200/60 50/30 80/40・50 100/50 100/60 50・80/30・40 80・100・200/40・50・60. 8.0. 10.0 20.0 30.0 40.0 (%) 不適格発生率の 範囲. 該当する先行検討行政庁. 中長期的に問題が発生しないようにするために 比較的緩やかな基準を採用. 100/50 200/60 100/60. 6.0 平均不適格 発生率. 図3 規制値別の既存不適格建築物発生率の地区別分布. 200/60または 200/70. 400/70. 4.0. * 数値は容積率(%)/ 建ぺい率(%). 基準値採用の理由. 基本的に問題がなく、全面的に規制強化する 必要性が感じられない. 一般基準*. 2.0. 各地区の 不適格発生率. *( )は該当する特定行政庁数. 複数規制. AVE=2.62. MIN=0. 建築形態規制. 一律規制. MAX=21.71. 100/50. 各規制値の適用地域 原則として市街化調整区域 非線引き白地地域. 秋田県、山形県、福井県、岐阜県 三重県、京都府、高知県. 奈良県、広島県 該当する先行検討行政庁 埼玉県. 低層住宅区域、田園地区、既存集落区域 工業団地区域、用途地域周辺区域 郊外幹線沿道区域、旧市街地区域. 長野県. 自然地域、農業地域 集落地域. 新潟県. 歴史集落地域、混合地域、特定地域 自然公園特別地域、風致地区特別地域 近接する第一種低層住居専用地域との 整合を図る地域. 神奈川県. 原則として非線引き白地地域 非線引き白地地域における規制密集市街地など 市街化調整区域 非線引き白地地域. *( )内の数字は地区数を表す 東京都. 図4 不適格建築物発生率のクラスタ分析結果. 21-2.
(3) 表 3 各クラスタの既存不適格 発生率の特徴 80/40. 100/50. 200/60. 表4 集住形態条件とクラスタ の関係. 0.89%. 0.25%. 15. クラスタ1. クラスタ2. 6.91%. 2.31%. 0.65%. 14. クラスタ2. クラスタ3. 13.46%. 4.07%. 1.10%. 5. クラスタ3. クラスタ4. 14.88%. 8.06%. 3.16%. 2. クラスタ4. クラスタ5. 35.14%. 21.71%. 10.59%. 1. クラスタ5. 計画的 開発型. クラスタ クラスタ5. 大字今津. 漁村型. クラスタ4. c. 大字安屋 農村型. 農村型. 典型町丁目 大字柄杓田. 集落形態条件. 地区数. 3.44%. クラスタ1. 集住形態条件. 山村型. 大字曽根新田. クラスタ3. 大字伊川. クラスタ2. 山村型 大字木下 計画的開発型. 漁村型. クラスタ1. 大里桜ケ丘 大字母原. - 20.0% - 15.0% - 10.0% - 5.0%. 効果があるといえる。次に、3つの規制値での判定結果を. 0.0%. 5.0%. 10.0% 15.0% 20.0%. 図 5 1995 年度 -2000 年度の典型町丁目別人口増減率. 基にクラスタ分析によって、5つに類型化した。クラスタ. 集住形態条件. 典型町丁目 大字柄杓田. 別の特徴をみると、クラスタ 4、5 の地区数はそれぞれ 2、. 漁村型. クラスタ クラスタ5. 大字今津 クラスタ4 大字安屋. 1 であり、特別なクラスタである。クラスタ 4 は 100/50、. 農村型. 200/60で相対的に高い発生率を示し、クラスタ5は3つの. 山村型. 規制値全てで突出した発生率を示している。その他の3つ. 計画的開発型. 大字曽根新田. クラスタ3. 大字伊川. クラスタ2. 大字木下 クラスタ1. 大里桜ケ丘 大字母原. 0%. のクラスタは、段階的に発生率が大きくなっている。クラ. 1960-1969. 10%. 20%. 30%. 1070-1979. 40%. 50%. 60%. 70%. 80%. 1980-1989. 90% 100%. 1990-2000. 図6 典型町丁目別建築年次階級割合. スタ 1、2 の地区数は 14、15 とほぼ同数であり、クラスタ 集住形態条件. 3 は 5 つの地区となっている(図 4、表 3)。. 典型町丁目 大字柄杓田. 4-2 クラスタ分類と地区の環境条件の比較. 漁村型. 5つのクラスタに対する既存建築物の特徴を環境条件. 農村型. クラスタ クラスタ5. 大字今津 クラスタ4 大字安屋 大字曽根新田. クラスタ3. 大字伊川. クラスタ2. 山村型. に注目して分析する。ここでは、北九州市の調整区域の. 大字木下 計画的開発型. 環境条件として、漁村型、山村型、農村型、計画的開発型. 大里桜ケ丘. クラスタ1. 大字母原. 0%. の 4 つに分類し、クラスタとの関係を分析した(表 4)。 クラスタ 4、5 の地区は全て漁村型の集住形態であり、. - 100㎡. 100- 200㎡. 10%. 200- 300㎡. 20%. 30%. 300- 400㎡. 40%. 50%. 60%. 400- 500㎡. 70%. 80%. 500- 1000㎡. 90% 100% 1000㎡-. 図7 典型町丁目別敷地面積階級割合. 多くの既存不適格建築物が存在している。これらの地区. 小な宅地であり、既存不適格発生率は極めて高いクラス. では、今後、より一層の建築形態規制によるコントロー. タ4または5となっている。今後の規制方針としては、さ. ルが必要であり、建築形態規制による効果が期待できる. らに強化した建築形態規制を行う必要があるが、狭小な. 地区といえる。. 宅地では、現在よりさらに小規模の建築物しか建設でき. 一方、クラスタ 1、2、3 には、計画的開発型、山村型、. ない。このような地区では、コミュニティの存続や健全. 農村型の 3 つの地区が混在しており、既存不適格発生率. な建築更新を行うための対策が必要とされ、それぞれの. と環境条件の間に明確な関係はみられない。. 問題を建築形態規制のみで改善することは困難である。. 4-3 既存建築物及び人口動態の環境条件別分析. 5. 既存建築物の地区別特徴を規定する空間要因. 環境条件と既存建築物の関係を考察するため、8 つの. 前節では、調整区域における環境条件と地区全体の既. 典型町丁目を抽出し、敷地規模、建築年次、人口動態の. 存建築物の特徴について考察した。本節では典型町丁目. 分析を行った。既存建築物の敷地規模、建設年次は1960. のフィールド調査を基に、地区の既存建築物の特徴を規. 年から2000年までの建築確認申請のデータを基に、人口. 定している空間要因を地域レベルと敷地レベルの2つの. 動態は 1995 年度と 2000 年度の国勢調査のデータを基に. 空間スケールから分析した(図 8)。. 分析した。その結果、敷地規模、建築年次の既存建築実. まず、地域レベルの空間要因として、急斜面等の地形. 態及び人口動態の傾向は、建築形態規制の規制値との関. 条件や農用地区域等の都市計画法制度に基づく法規制か. 係よりも、地区の環境条件によって特徴づけられている. ら規定される「開発可能領域」と、地形条件や基盤の整. ことがわかった(図 5、図 6、図 7)。. 備状況から規定される「道路線形及び幅員」の 2 つを設. 例えば、計画的開発型の大里桜ケ丘では、建築年次が. 定する。まず、 「開発可能領域」についてみると、開発域. 1960 年から 1969 年の間に 46.3% と集中しており、1972. のスプロールが可能な地域では、地域の環境条件を維持. 年の線引き制度導入以前の開発と予測され、大里桜ケ丘. しながら周辺に連担域を拡大することができる。一方、. の既存不適格発生率は最も小さいクラスタとなってい. 大里桜ケ丘や大字曽根新田のように現在の連担域以上の. る。しかし、現在の状況は、狭小な敷地や建築更新の停. スプロールが困難な地区では、限定的な領域の中で、建. 滞、人口衰退といった問題が発生している。. 築更新及び高度利用の開発手法を用いなければならない。. また、同様に人口が衰退している漁村型の大字柄杓田. 次に、敷地レベルの空間要因として、道路基盤や分筆. と大字今津では、敷地面積の 50% 以上が 100 ㎡以下の狭. 等による敷地境界の変更によって規定される「区画形質」. 21-3.
(4) 図8 既存建築物の空間規定要因と典型事例. と、前面道路や隣地環境などを考慮した建築位置によっ. 既存建築物の特徴を規定する空間要因. て規定される「空地形状」を設定する。 「空地形状」では、. 集団規定のあり方. 地域レベル. 地域レベル. 仕様規定. 大字曽根新田のように敷地内の空地形状が隣地と連続す. 開発可能領域. 区画形質. <規制型>. るように前面道路に面して設けられている地区があるに. 道路線形及び幅員. 空地形状. 対し、大字伊川のように四方を住宅に囲まれたような敷. 現在の形態規制 では地区ごとの 既存建築物の特 徴は反映されて いない. 建築規模の上限値を規制 することで、地区をコン トロールする手法. 地が多い地区では空地が小規模になり、さらに、不規則. 性能規定. 今後の課題. に分散することとなる。また、漁村型や古い計画的開発. 空間要因の特徴を反映した 建築誘導の性能指標の提示. 型の地区では狭小な敷地が多いため空地の確保はほとん. <誘導型> 地域の実情を反映した性 能を確保することで地区 をコントロールする手法. どできない。大字伊川や狭小な敷地が多い地区では、連. 図9 空間要因のまとめと今後の課題. 担した隣地と共同で一定規模の空地を設けるといった誘. らに、環境条件別に抽出した典型町丁目の敷地規模、建. 導策が考えられる。. 築年次、人口動態をみると、調整区域には集住形態条件. 6. まとめ. ごとに多様な既存建築物の特徴があり、これらを建築形. 本研究では、まず、平成12年度の建築基準法改正に伴. 態規制のみで反映することには限界があるといえる。. う特定行政庁の取り組みを整理した。規制基準値の設定. さらに、典型町丁目でのフィールド調査により、 既存建. 手法は、一律規制を設けて現行の容積率 400%、建ぺい率. 築物の特徴を規定する空間要因として、地域レベルでは. 70%の規制と現在の白地地域の既存建築実態の乖離を是. 「開発可能領域」と「道路線形及び幅員」が、敷地レベル. 正する現実対応重視型と、地域の既存建築実態や土地利. では「区画形質」と「空地形状」があることを実証し、こ. 用の方針ごとに複数規制を設ける計画論重視型の2つの. れらの空間要因を反映した建築物の誘導の有効性を指摘. タイプがみられた。これらの 2 つのタイプは、規制基準. した。今後の課題は、 建築誘導の具体的な性能指標を提示. 値設定の目的が基本的に異なっていることを指摘した。. することが挙げられる。. 次に、建築形態規制に基づく既存不適格発生率のクラ. *1 都市改革中央審議会答申より抜粋. スタ分析を行った結果、37地区中34地区が該当するクラ スタ1から3では既存建築物発生率が近似値であっても、 地区の環境条件が異なっていることを明らかにした。さ. 21-4. *2 国の技術的助言(H13.5.15)より抜粋 参考文献:竹下輝和 他 2 名「北九州市における市街化調整区域の建築実態に関する 研究」2001 年度大会学術講演梗概集 日本建築行政会議市街地部会 平成 13 年度報告書 北九州市地区計画運用基準策定調査報告書 平成 14 年.
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