（平成 25 年度研究報告書） 23-A 特-48 超高精細ＣＴ（拡大ＣＴ）の開発と画像表示に関する研究 柿沼 龍太郎 国立がん研究センター 中央病院 放射線科医長/がん予防・検診研究センター検診部 研究の分類・属性 ＴＲ／早期開発 研究の概要 現在医療の場に広く利用されているＣＴの解像度は 300 マイクロメーター程度であり、この解像度は必ずしも十分な ものとは言えない。本研究グループが今までに開発したプロトタイプの超高精細、人体応用型ＣＴは現在 120 マイク ロメーターの解像度を有する。この開発された超高精細ＣＴの開発をさらに進め 100 マイクロメーターの解像度を有 する超高精細ＣＴの開発とともに、新しい画像表示方法の開発を行いこれらの臨床応用によりＣＴによる診断精度の 飛躍的な向上を実現させる。 研究経費 22,940 千円 研究班の組織 柿沼 龍太郎 国立がん研究センター中央病 院放射線科医長/がん予防・検 診研究センター検診部 超高精細ＣＴの肺がんに対する有用性に関す る研究 仁木 登 徳島大学大学院 ソシオテクノ サイエンス研究部・教授 超高精細ＣＴの画像解析に関する研究 杉原 直樹 東 芝 メ デ ィ カ ル シ ス テ ム ズ (株)CT事業部CT開発部・担当部長 高精細ＣＴのハードウェアーおよびソフトウ ェアーに関する研究 佐竹光夫 国立がん研究センター東病院・放 射線科科長 高精細ＣＴの開発と臨床画像診断における有 用性に関する研究
大松広伸 国立がん研究センター東病院・呼 吸器内科副科長 超高精細ＣＴの肺がんに対する有用性と臨床 応用に関する研究 村松禎久 国立がん研究センター東病院・診 療放射線技師長 超高精細ＣＴの被曝線量に関する研究 村松幸男 国立がん研究センターがん予 防・検診研究センター検診部部 長 超高精細ＣＴの腹部領域における有用性に関 する研究 飯沼 元 国立がん研究センター中央病院 放射線診断科医長 超高精細ＣＴの仮想内視鏡への応用に関する 研究 麻生智彦 国立がん研究センター中央病 院・診療放射線技師長 超高精細ＣＴの画像管理と画像保管に関する 研究 五味志穂 国立がん研究センター中央病 院・診療放射線技師 超高精細ＣＴの物理特性に関する研究 鈴木雅裕 国立がん研究センター中央病 院・診療放射線技師 超高精細ＣＴの画像表示に関する研究 研究の目的と到達目標及び実績要点 全期間（目的と到達目標）： 現在医療の場に広く利用されているＣＴの解像度は 300 マイクロメーター程度であり、この解像度はより正確で 精細な診断を行うためには必ずしも十分なものとは言えない。本研究では 100～120 マイクロメーターの解像度 を有する人体応用型超高精細ＣＴの開発を行うとともに、新しい画像表示方法の開発を行い、これらの臨床応用 によりＣＴによる診断精度の飛躍的な向上を実現させることを目標としている。 （第３年次評価時点の実績要点） 1.第 2 年度までは 0.25 mm の検出器 4 列の超高精細 CT を開発し有用性を検討してきたが、第 3 年度は新たに 0.25 mm の検出器 128 列を備えた超高精細 CT を製作した。 2.ファントム実験の後、ボランティアを撮影し画質や撮影条件を評価した。 3.ファントムおよびボランティアでの検討後、病変を有する患者に十分な説明の上で同意を得て撮影を開始した。 第３年次 （到達目標）
たに 32 列以上の検出器を有するマルチスライス超高精細ＣＴの製作を行う。具体的には 128 列の検出器を有する 超高精細ＣＴの製作を目標とする。 ２.開発されたマルチスライス超高精細ＣＴを用いてファントム撮影による物理的な画像解析、人体生体に対する撮 影によって得られた臨床的有用性のデーターの収集を行い超高精細ＣＴを一般診療の場で使用可能とする薬事承 認を目指し、頭部、胸部、腹部、四肢領域において薬事申請に必要なデーターを取得する （年次評価時点の実績要点） １.0.25 mm の検出器 128 列を備えた超高精細 CT を新たに製作した。 ２.各種ファントムを用い新たな 128 列超高精細 CT の物理評価を実施した。 ３.ボランティアにて撮影条件や画質を評価した。臨床撮影においては、新たに開発された 128 列超高精細 CT では、 全肺野を短時間で撮影し拡大画像を再構成することが可能となった。 ４.現在、肺病変を有する患者を中心に撮影を継続し、臨床的有用性のデータを収集中である。今後、骨軟部腫瘍科 •リハビリテーション科、脳脊髄腫瘍科、婦人科、大腸外科などの患者をリクルートし、撮影をお願いする予定である。 研究成果と考察 第３年次評価時点 ・機器 前年度までの研究成果により人体生体において120マイクロメーターの解像度を有するＣＴの製作は完了しており、 人体撮影実験でも優れた画像が得られている。第3年次では現在のＸ線検出器4列を128列まで増やし、短時間の間に 身体の広い範囲を撮影可能な高精細ＣＴの製作を完了させる。 ・画像評価 Ｘ線検出器4列の高精細ＣＴに関する画像評価は前年度までの研究でほぼ終了しており、これらのデーターと新た に開発された128列高精細ＣＴ画像との物理的、臨床的画像特性の比較検討を行う。撮影Ｘ線量と画質との完成につ いても検討を行う。 ・臨床画像評価 肺野、整形外科領域、乳腺領域、腹部領域における臨床疾患と画像との関係を明らかとし、従来型ＣＴ画像との比 較を行う。大腸仮想内視鏡への応用についても行い、従来型ＣＴ画像との比較を行う。 全期間（第３年次評価時点） １.0.25 mm の検出器 4 列を備えた超高精細 CT にて、基礎的な物理評価および臨床例の撮影を実施した。それらの結 果を踏まえ、0.25 mm の検出器 128 列を備えた超高精細 CT を新たに開発作成した。この装置を用いて、物理評価、薬 事承認に向けた臨床データの取得を開始した。 ２. 超高精細 CT 検査後の CT データの読影および診断に効率のよい画像表示法について検討を開始した。 倫理面への配慮 検査を行う患者さん、ボランティアに対してはインフォームドコンセントを書面にて行い、書面での同意を得る。 研究に際しては国立がん研究センター倫理審査委員会に計画書を提出し承認を得ることとする。撮影に際しては法律 で定められている範囲内でのＸ線被曝量とする。画像の発表に関しては患者ＩＤ、氏名等の個人情報をすべて消去し て行う。
本研究に関連する、本研究期間中の主な発表論文等 平成 25 年度
（雑誌論文）
1. Kakinuma R, Ashizawa K, Kusunoki Y, Kobayashi T, Kondo T, Nakagawa T, Hatakeyama M, Maruyama Y. Management of subsolid nodules. Chest 144(5): 1741-1742, 2013.
2. Ishihara T, Kobayashi T, Ikeno N, Hayashi T, Sakakibara M, Niki N, Satake M, Moriyama N. Evaluation of a near-infrared-type contrast medium extravasation detection system using a swine model, J Comput Assist Tomogr, 38(2):285-292, 2014.
3. Maklad A S, Matsuhiro M, Suzuki H, Kawata Y, Niki N, Satake M, Moriyama N, Utsunomiya T, Shimada M. Blood vessel-based liver segmentation through the portal phase of an abdominal CT dataset, Medical Physics, 40(11), 113501(17pp), 2013. 4. 豊田修一、片貝智恵、仁木登 保健医療分野における情報視覚化 情報処理学会デジタルプラクティス 4(3): 251-259, 2013. 5. 高橋英治、鈴木秀宣、河田佳樹、仁木登、中野恭幸、上野淳二、原田雅史、森山紀之 胸部マルチスライス CT 画 像を用いた骨粗鬆症診断支援システム 電子情報通信学会論文誌 J.96-D(4):892-900，2013. 6. 松廣幹雄、鈴木秀宣、河田佳樹、仁木登、上野淳二、中野恭幸、小川惠美子、室繁郎、大松広伸、森山紀之 胸 部マルチスライス CT 画像における葉間裂抽出法 電子情報通信学会論文誌 J.96-D(4):834-843, 2013.
7. IkedaM, Okusaka T, Furuse J, Mitsunaga S, Ueno H, Yamaura H, Inaba Y, Takeuchi Y, Satake M, Arai Y. A multi-institutional phase II trial of hepatic arterial infusion chemotherapy with cisplatin for advanced hepatocellular carcinoma with portal vein tumor thrombosis. Cancer Chemother Pharmacol 72: 463-470, 2013. 8. Ikeda M, Mitsunaga S, Shimizu S, Ohno I, Takahashi H, Okuyama H, Kuwahara A, Kondo S, Morizane C, Ueno H, Satake M, Arai Y, T.Okusaka. Efficacy of sorafenib in patients with hepatocellular carcinoma refractory to transcatheter arterial chemoembolization. J Gastroenterol DOI 10.1007/s00535-013-0853-7: 1-7, 2013. 9. Kunoa H, Onaya H, Fujii S, Ojiri H, Otanie K, Satake M. Primary staging of laryngeal and hypopharyngeal
cancer: CT, MR imaging and dual-energy CT. European Journal of Radiology 83: e23-e35, 2014.
10. Akashi Y, Oda T, Ohara Y, Miyamoto R, Kurokawa T, Hashimoto S, Enomoto T, Yamada K, Satake M, Ohkohchi N. Anticancer effects of gemcitabine are enhanced by co-administered iRGD peptide in murine pancreatic cancer models that overexpressed neuropilin-1. British Journal of Cancer. DOI: 10.1038/bjc.2014.49: 1-7, 2014.
11. 篠﨑雅史，村松禎久，佐々木徹 X 線 CT における Dose Index Registry システムによる Notification Value の決 定過程 日本放射線技術学会雑誌 70(1), 11-18, 2014．
12. 村松禎久、荒井美紀、石垣陸太、新井知大、野村恵一、藤井啓輔、佐々木徹、花井耕造、待鳥詔洋、森山紀之 低 線量肺がん CT 検診画像の精度管理（施設認定制度を見据えて） CT 検診学会誌 20(2):70-76, 2013.
13. Miyake M, Iinuma G, Taylor SA, Halligan S, Morimoto T, Ichikawa T, Tomimatsu H, Beddoe G, Sugimura K, Arai Y. Comparative performance of a primary-reader and second-reader paradigm of computer-aided detection for CT colonography in a low-prevalence screening population. Jpn J Radiol 31:310-319, 2013.
（学会発表）
1. Kakinuma R, Muramatsu Y, Moriyama N, Kusumoto M, Tsuta K, Maeshima A, Asamura H. Ultra-high-resolution CT of the lung: image quality of a prototype scanner. Radiological Society of North America, Scientific Presentations of 2013 Annual Meeting.
2. Kakinuma R, Moriyama N, Muramatsu Y, Kusumoto M, Tsuta K, Maeshima A, Asamura H. Ultra-high-resolution CT images of lung adenocarcinomas obtained using a prototype scanner. Radiological Society of North America, Educational Exhibits of 2013 Annual Meeting.
3. Kawata Y, Niki N, Ohmatsu H, Aokage K, Kusumoto M, Tsuchida T, Eguchi K, Satake M, Kaneko M, Moriyama N. Potential usefulness of a topic model-based categorization of lung cancers as quantitative CT biomarkers for predicting the recurrence risk after curative resection, SPIE Medical Imaging, 2014. (to appear) 4. Suzuki H, Kawata Y, Niki N, Nakano Y, Ohmatsu H, Kusumoto M, Tsuchida T, Eguchi K, Kaneko M, Moriyama
N. Longitudinal follow-up study of smoking-induced emphysema progression in low-dose CT screening of lung cancer, SPIE Medical Imaging, 2014. (to appear)
5. Fukuoka Y, Kawata Y, Niki N, Umetani K, Nakano Y, Ohmatsu H, Moriyama N, Itoh H. Microstructure analysis of the pulmonary lung of the secondary lobulus by a synchrotron radiation CT, SPIE Medical Imaging, 2014. (to appear)
6. Muramatsu Y, Ishigaki R, Hanai K, et-al, Development of a Dose Index Registry in Japan –Dedicated for Low-dose Lung Cancer CT screening- , Radiological Society of North America, Informatics (Stand-alone computer exhibit) of 2013 Annual Meeting.
7. Gomi S, Tsukagoshi S, Suzuki M, Nagasawa H, Aso T, Kakinuma R, Moriyama N. Image quality of ultra-high resolution CT in breast cancer：phantom study. European Congress Radiology 2014
（書籍） 1. 山口功，村松禎久，花井耕造，長尾啓一：低線量肺がん CT 検診の知識と実務 改訂２版，オーム社，2013 年 12 月 25 日発行，東京 （知的財産権） （政策提言（寄与した指針等）） （その他）
1. Niki N.【Invited Talk】Multiscale image analysis of lung CT images, MICCAI 2013 the fifth international workshop on pulmonary image analysis, 2013.9.26, Nagoya. (Nagoya University)
2. 仁木登 「特別講演」肺のＣＴ画像解析―基礎研究から実用まで―，第 14 回千葉県ＣＴ研究会，2013.8.31，千 葉(三井ガーデンホテル千葉).
3. 仁木登 放射光 CT を用いた肺微細構造の解析，第 32 回日本医用画像工学会大会，SP3-3，2013.8.3，東京(産業 技術総合研究所).
4. Niki N. Multi-scale organ modeling: from macro to micro, IEEE-EMBC2013 Workshop, 2013.7.3, Osaka.(Osaka international convention center).
5. Niki N. Human pulmonary acinar analysis through 3D SRμCT images, CARS2013, 2013.6.26, Heidelberg (Heidelberg convention center).
6. 村松禎久 CT の線量評価：現況と今後の展開，第 36 回防護分科会ﾜｰｸｼｮｯﾌﾟ，日本放射線技術学会，横浜（パシフ ィコ横浜），2013.4.14
7. Muramatsu Y. Acceptance and Constancy tests for CT-AEC: Retrials for Temporal (ECG-gated) mA modulation, IEC 62B/MT30 Computed Tomography Meeting, Los Angeles (UCLA), USA, 2014.3.19
