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Title
N‑acetyl‑L‑cysteine prevents bacteria‑induced hypersecretion of gel‑forming mucin from human bronchiolar epithelial cells
Author(s) 小泉, ちあき Journal , (): ‑
URL http://hdl.handle.net/10130/3621 Right
氏名 小泉 ちあき
学位 博士(歯学)
学位記番号 第2092号(甲 第 1305 号)
学位授与年月日 平成27年 3月31日 学位授与の要件 学位規則第4条第1項 論文審査委員 主査 齋藤 淳 教 授
副査 櫻井 薫 教 授 副査 井上 孝 教 授 副査 石原 和幸 教 授
学位論文名 N-acetyl-L-cysteine prevents bacteria-induced hypersecretion of gel-forming mucin from human bronchiolar epithelial cells
学位論文内容の要旨
1.研究目的
気管支における炎症や酸化ストレスを介した粘液、すなわちムチン(MUC)の過剰分泌やそれに伴 う喀痰の蓄積は、慢性炎症性肺疾患の罹患率や死亡率に深く関与している。抗酸化アミノ酸誘導体で あるN-acetyl-L-cysteine(NAC)は細胞内に急速に吸収され、細胞の抗酸化能を向上させることで酸化 ストレスを抑制する。そのため、慢性炎症性肺疾患の補助的予防薬として用いることができると考え られる。本研究の目的は、細菌との共培養環境下において、気管支上皮細胞の酸化還元状態と炎症性 反応と関連した、MUC産生へのN-アセチル-L-システインの取り込み効果を評価することである。
2.研究方法
NAC(20mM)含有、もしくは非含有のヒト小気道上皮細胞用増殖培養液中で、細気管支上皮細胞 を3時間前培養した後、Streptococcus pneumoniae添加もしくは無添加の培養液に交換し、8時間培 養した。培養後に、生細胞数、活性酸素種(ROS)量および細胞内抗酸化物質量による細胞内酸化スト レスレベル、非特異的にムチンを検出するアルシアンブルー染色の比色定量、分泌型ムチンである MUC5ACおよび膜性ムチンであるMUC4の免疫蛍光染色法を用いたムチンの種類と産生レベル、マ ルチプレックスによる炎症性サイトカイン分泌定量とプロスタグランジン(PG)E2産生蛍光定量によ る炎症反応に関して、それぞれ評価を行った。また、ムチンおよび炎症性サイトカインの遺伝子発現 レベルを逆転写ポリメラーゼ連鎖反応により解析した。
3.研究成績および結論
S. pneumoniaeと共培養することで、細気管支上皮細胞の生細胞数は減少したが、NAC前処理
を行った細胞では減少しなかった。細菌共培養により、細胞内 ROS 量の増加と細胞内抗酸化物質量 の低下を認めた。しかしNAC前処理を行った細胞では、細菌による細胞内ROS量の増加は認めず、
また、抗酸化物質量は細菌と共培養していない細胞の値よりも高かった。細菌共培養により、インタ ーロイキン(IL)-1β, -6および-8の分泌量とPGE2合成量は増加した。また、IL-6と-8およびシクロ オキシゲナーゼ(COX)2の遺伝子発現レベルは上昇した。しかし、NAC前処理を行った細胞では、細 菌と共培養してもそれらの値は増加しなかった。また、NAC 前処理を行った細胞では、細菌との共 培養による非特異的ムチンの検出量増加を認めなかった。免疫蛍光染色と遺伝子発現解析において、
細菌と共培養した細胞で、MUC5ACの発現上昇を認めた。一方、NAC前処理を行った細胞では、細 菌との共培養の有無に関わらず、MUC4の発現上昇を認めた。これらから、NACを取り込ませるこ とで、細気管支上皮細胞における細菌感染による炎症反応と粘液の過剰産生を防ぐことが示された。
そのメカニズムとして、細胞の感染防御機構の一つとして、膜性ムチンの発現上昇に伴う細胞への細 菌感染の阻止により、アラキドン酸カスケードの進行が抑制されたと考えられた。
最終試験の結果の要旨および担当者
報 告 番 号 甲 第1305号 氏 名 小泉 ちあき
最終試験担当者
主 査 齋藤 淳 教 授 副 査 櫻井 薫 教 授 井上 孝 教 授 石原 和幸 教 授
最終試験施行日 平成26年 1月 8日
試 験 科 目 歯科補綴学
試 験 方 法 口頭試問
試 験 問 題 主題ならびに関連問題
結 果 の 要 旨
本審査委員会は主題ならびに関連問題について最終試験を行った結果、十分な学識を 有することを認め、合格と判定した。
学位論文審査の要旨
本研究は、細胞-細菌共培養試験を行い、細気管支上皮細胞の酸化還元状態と炎症性反応と関連した、
ムチン(MUC)産生へのN-アセチル-L-システイン(NAC)の細胞内への取り込み効果を検討したもので ある。
本審査委員会では研究方法の妥当性や得られた結果の解釈と意義などを中心に以下のような質疑 が行われた。①NAC取り込みにより、S.pneumoniaeと共培養された細気管支上皮細胞における炎症 性サイトカインの産生が増加しなかった機序について、②NACが細胞内に取り込まれたことを示す根 拠について、③S.pneumoniaeを使用した理由について、④気管支の解剖学的構造および構成細胞と 関連した細気管支上皮細胞を用いた理由ついてなどの質問がなされた。これらの質問に対する回答と して、①本実験系での酸化ストレスを与える因子が細菌のみであることを踏まえ、NACを細胞に取り 込ませることによって、細胞内酸化ストレスが抑制され、かつ、細菌感染に抵抗する分子であるMUC4 の発現が上がったことから、NAC取り込みによる細気管支上皮細胞の抗感染性の向上が考察されたこ と、②NACはある種のトランスポーターを介して細胞内へ能動輸送され、細胞内で様々な酵素反応を 経て、細胞内抗酸化物質であるグルタチオン(GSH)量を増加させることが文献的に示されており、本 実験においても、NAC含有培養液で培養した細胞でGSH量が増加したことから、NACが細胞へ取り込 まれたと論理的に判断できること、③口腔内常在菌であり、市中肺炎における有病率や死亡率の増加 に深く関与し、多くの抗菌薬に対し耐性菌が認められるため、感染抵抗性を研究する上で有効である と考えられること、④細気管支上皮組織は、解剖学的に気管支の総断面積の大部分を占めており、組 織学的には線毛細胞や基底細胞など気管支上皮組織に類似した構成であるとともに、分泌細胞として Clara細胞という特殊な細胞も存在するため、気管支における炎症性疾患の病態にとって重要な組織 とされていることやNACは気管支の深部まで到達可能な霧状で応用可能なことから、NACの慢性炎 症性肺疾患に対する補助的予防薬としての有用性を示すうえで適切な使用細胞であることなどが説明 された。また、その他の質問に対しても妥当な回答が得られた。さらに、タイトル、方法、結果およ び考察中の専門用語や文章表現、図表の最適化に関して指摘があり、訂正が行われた。
その結果、本研究で得られた知見は歯学の発展に寄与するところ大であり、学位授与に値するもの と判定された。