博 士 ( 工 学 ) 山 内 有 二
学位論文題名
核融合プラズマ対向材料の水素および ヘリウムリテンション特性の研究
学位論文内容の要旨
核融合炉 の燃料で、ある水素粒子は、 プラズマ対向壁に入射して 、対向壁中に保持(リテン ション)され る。保持された水素は熱ある いはイオン衝撃により脱離 してプラズマに混入する。
水 素粒 子の 壁と 境 界プ ラズ マとの行 き来は水素リサイクリング と呼ばれ、炉心プラズマの閉 じ 込 め特 性の 劣化 の 原因 とな る。一方 、プラズマ対向壁には、核 融合反応の灰であるヘリウム 粒 子 も入 射し 、保 持 され る。 保持され たヘリウムが主放電中に熱 あるいはイオン衝撃により脱 離 す ると 、炉 心プ ラ ズマ 中の へりウム 灰濃度が上昇する。このた め、自己点火条件の維持が難 し く なる 場合 もあ る 。従 って 、プラズ マ対向材料の水素およびへ りウムのりテンション特性に つ い て解 明し 、適 切 なコ ンデ ィショニ ング法を考える必要がある 。しかし、現在使用あるいは 提 案 され てい るプ ラ ズマ 対向 材料の水 素およぴへりウムルテンシ ョン特性について未だ系統的 な 評価は十分に行われていない状況にある。
本 研究 では 、 核融 合炉 のプ ラズ マ 対向 材料 とし て考 え られ てい る黒 鉛 、B4C転化材、SiC 転 化材 およ びタ ン グス テン に対して 、水素イオンあるいはヘリ ウムイオンを照射し、このり テ ン ショ ン特 性を 調 べる とと もに、材 料間の比較を行った。また 、実機トカマク装置であるDIH‑
Dに おい て重水素放電に曝されたプラ ズマ対向材料についても重 水素リテンション特性を調ベ 、 本 研 究 で 得 ら れ た シ ミ ュ レ ー シ ョ ン実 験 結果 と比 較し た。 以 下、 本研 究の 結 果を 述ぺ る。
ECRイ オン 照射 装 置を 用い て、 黒鉛 、B4C転 化 材くSiC転 化 材お よぴ タン グ ステ ンに 水素
(めイオンを 照射して水素を保持させた。 その後、昇温脱離分析法に より、保持された水素の昇 温 脱離 特性 およ び 水素 リテ ンション 量を求めた。黒鉛からの水 素の脱離スベクトルは単一の ピ ークを持って いたが 、他の材料では2つ のピークを持っていた。全水 素リテンション量は、B4C 転化材で最も大きく(l.Oxl018 H/crriz)、次いで黒鉛(6.7x10r' Iycm2)、SiC転化材(5.8x1017 H/cmz)、 タングステン((0.7〜1.7)x1017 H/cm2)の順となった。表面不純物濃度が異なるタングステンでは、
水 素リテ ンション量が2倍程度も異な ることが分った。水素リテ ンション量の加熱温度依存性 を 求 め、 核融 合炉 で 行わ れる べーキン グによる水素リテンション 量の低減効果を評価した。通 常 実施されてい る300‑‑400℃のぺーキングに より効果的に水素リテンシ ョン量を低減できるのは、
タ ング ステ ンお よ びB C転 化材 であ る こと が分 った 。黒鉛およ びSiC転化材のりテンション 量 を 低減 させ るた め には600 800℃の べー キン グ が必 要であるこ とも分った。照射温度を上げ て 水 素を照 射した場合、黒鉛、B C転 化材およびSiC転化材の水素 リテンション量は、照射温度 に 対 して単 調減少した。何れの材料で も、温度が300600℃の時、 室温照射の値の半分となった 。 水 素リ テン シ ョン 畳の 低減 のた め 用い られ るヘ リウ ム 放電 洗浄 を模 擬 するため、すで に 水 素を保 持している黒鉛、B C転化 材、SiC転化材およびタング ステンにヘリウムイオンを照 射 し 、保 持さ れた 水 素の 叩き 出し効果 を評価した。ヘリウムイオ ン照射により水素およびメタ ン の低温側の脱 離ピークが大きく減少した。 残留水素リテンション量は、lxl018 He/cmzのへりウム
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照 射 量 ま で 急 激 に 減 少 し 、 そ の 後 ほ ぼ 一 定と な っ た 。 しか し 、 タ ン グス テ ン で は 、Sx10n He/cmz 以 上 の ヘ リ ウ ム 照 射 を す る と 逆 に 水 素 リ テ ン シ ョ ン 量 は 増 加 し た 。 こ れ ら の プ ラズ マ 対 向 材 料 に お い て 、 ヘ リ ウ ム イ オ ン 照 射 に よ り 水 素 リ テ ン シ ョ ン 量 は 照 射 前 の0.35‑0.6と なり 、 大 き く 減 少 し た 。 特 に 効 果 的 に 除 去 さ れ た の は タ ン グ ス テ ン お よ びB4C転 化 材 で あ っ た 。 ヘ リ ウ ム イ オ ン 照 射 に よ る 水 素 リ テ ン シ ョ ン の 低 減 効 果 を べ ー キ ン グ と 比 較 し た 場 合 、 ヘ リウ ム イ オ ン 照 射は低 い温度 下に おいて 効果的 である こと が分っ た。
ECRイ オ ン 照 射 装 置 を 用 い て 黒 鉛 、B C転 化 材 、SiC転 化 材 に ヘ リ ウ ム イ オ ン を 照 射 して 、 保 持 さ れ た ヘ リ ウ ム の 昇 温 脱 離 特 性 を 調 べ る と と も に 、 ヘ リ ウ ム リ テ ン シ ョ ン 量の 照 射 量 依 存 性 に つ い て 評 価 し た 。 ヘ リ ウ ム 脱 離 ス ベ ク ト ル は 、 黒 鉛 で は 単 一 の ピ ー ク 、B C転 化 材 お よび SiC転 化 材 で は2つ の ピ ー ク を 持 っ て い た 。 こ れ ら の ピ ー ク 温 度 は 、 黒 鉛 で は 約300℃ 、B4C転 化 材 お よ びSiC転 化 材 で は 約300℃ お よ び 約900℃ で あ っ た 。 両 転 化 材 の 低 温 側 ピ ー ク は 、 材 料 中 の 炭 素 成 分 に 起 因 す る ヘ リ ウ ム の 脱 離 分 と 考 え ら れ る 。 ヘ リ ウ ム リ テ ン シ ョン 量 の 照 射 量 依 存 性 を 調 ぺ た 結 果 、 何 れ の 試 料 で も2xl018 Hem2の ヘ リ ウ ム 照 射 量 で ほ ぼ ヘ リ ウ ム リ テ ン シ ヨ ン量 は 飽 和 し た。 ヘ リ ウ ム リテ ン シ ョ ン 量は 、SiC転化 材 で 最 も 大き く (4.2x1017Hヅan2)、次 いで黒 鉛(3.4x1017He/cm2)、B C転化材く2.7x10 Hリcm2)の順となった。水素濃度と比較した結果、
ヘ リウ ム 濃 度 は 水素 濃 度 の (15〜30)% と な り 、 か なり 高 く な る こと が 分 っ た 。従 っ て、主 放電中 の ヘ リ ウ ム 脱 離 を 抑 え る た め 、 主 放 電 前 に べ ー キ ン グ 等 で ヘ リ ウ ム リ テ ン シ ョ ン量 を 低 減 し て お く 必 要 が あ る こ と が 分 っ た 。 ペ ー キ ン グ に よ る ヘ リ ウ ム リ テ ン シ ョ ン 量 の 低 減効 果 を 調 べ る た め 、 ヘ リ ウ ム リ テ ン シ ョ ン 量 の 加 熱 温 度 依 存 性 を 求 め た 。 こ の 結 果 、 黒 鉛 中 のヘ リ ウ ム は 通 常 の べ ー キ ン グ で か な り 除 去 さ れ る こ と が 分 っ た 。 一 方 、B C転 化材 お よ びSiC転 化 材 中 のヘ リ ウ ム は800℃ ま で ほ と ん ど 減 少 せ ず 、 ベ ー キ ン グ に よ る 低 減 化 は 難 し い こ と が 分 っ た 。 実 機 プ ラ ズ マ 対 向 材 料 の 水 素 リ テ ン シ ョ ン 特 性 を 評 価 す る た め 、 大 型 ト カ マ ク 装 置 の Dm‐Dで 重 水 素 プ ラ ズ マ に 曝 さ れ た 黒 鉛 お よ ぴB4Cの 重 水 素 リ テ ン シ ョ ン 特 性 を 評 価 した 。 黒 鉛 お よ びB→Cに 対 し て 昇 温 脱 離 分 析 を 行 う と 、 保 持 さ れ たDは 主 と し てHD、Dユ 、CD。の 形 で 放 出 し た 。HD、D2`CD4と し て 放 出 さ れ る 割 合 は 、 黒 鉛 面 で は 各 々40% 、27% 、33ゲDと な り 、B4C 面 では 各 々40ゲD、21ゲ。 、39ゲ 。と な っ た 。B4C面 か らの 重 水 素 の 総 脱離 量 は 黒 鉛 面より 若干大 き い か 同 程 度 で あ っ た 。 ま た 、B C面 から の メ タ ン の脱 離 量 は 、 放 電中 に 起 こ る 最表 面 の 炭 素 の堆 積 に よ り 大 き く な っ た 。 重 水 素 リ テ ン シ ョ ン 量 の2次 元 分 布 を 求 め た結 果 、 試 料 の端 の 部 分 で 大 きくな ること が分 った。
以 上 、 本 研 究 で は 、 核 融 合 炉 の プ ラ ズ マ 対 向 材 料 の 候 補 と な っ て い る 黒 鉛 、B4C転 化 材 、 SiC転 化 材 お よ び タ ン グ ス テ ン に 対 し て 、 水 素 リ テ ン シ ョ ン 特 性 を調 べ る と と もに 、 水 素 リ テン シ ョ ン 量 を 低 減 さ せ る た め に 必 要 な べ ー キン グ 条 件 お よび ヘ リ ウ ム イオ ン 照 射 条 件を 評 価 し た 。 ま た 、 ヘ リ ウ ム 灰 濃 度 の 増 大 の 原 因 と な る ヘ リ ウ ム リ テ ン シ ョ ン 特 性 に つ い て も評 価 し 、 か な り の ヘ リ ウ ム が 壁 に 保 持 さ れ る こ と を 示 し た 。 こ れ ら は 、 核 融 合 炉 壁 の コ ン デ イシ ョ ニ ン グ に におぃ て重要 な結 果を提 供して いる。
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