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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 山 内 有 二

     学位論文題名

核融合プラズマ対向材料の水素および ヘリウムリテンション特性の研究

学位論文内容の要旨

    核融合炉 の燃料で、ある水素粒子は、 プラズマ対向壁に入射して 、対向壁中に保持(リテン ション)され る。保持された水素は熱ある いはイオン衝撃により脱離 してプラズマに混入する。

水 素粒 子の 壁と 境 界プ ラズ マとの行 き来は水素リサイクリング と呼ばれ、炉心プラズマの閉 じ 込 め特 性の 劣化 の 原因 とな る。一方 、プラズマ対向壁には、核 融合反応の灰であるヘリウム 粒 子 も入 射し 、保 持 され る。 保持され たヘリウムが主放電中に熱 あるいはイオン衝撃により脱 離 す ると 、炉 心プ ラ ズマ 中の へりウム 灰濃度が上昇する。このた め、自己点火条件の維持が難 し く なる 場合 もあ る 。従 って 、プラズ マ対向材料の水素およびへ りウムのりテンション特性に つ い て解 明し 、適 切 なコ ンデ ィショニ ング法を考える必要がある 。しかし、現在使用あるいは 提 案 され てい るプ ラ ズマ 対向 材料の水 素およぴへりウムルテンシ ョン特性について未だ系統的 な 評価は十分に行われていない状況にある。

    本 研究 では 、 核融 合炉 のプ ラズ マ 対向 材料 とし て考 え られ てい る黒 鉛 、B4C転化材、SiC 転 化材 およ びタ ン グス テン に対して 、水素イオンあるいはヘリ ウムイオンを照射し、このり テ ン ショ ン特 性を 調 べる とと もに、材 料間の比較を行った。また 、実機トカマク装置であるDIH‑

Dに おい て重水素放電に曝されたプラ ズマ対向材料についても重 水素リテンション特性を調ベ 、 本 研 究 で 得 ら れ た シ ミ ュ レ ー シ ョ ン実 験 結果 と比 較し た。 以 下、 本研 究の 結 果を 述ぺ る。

    ECRイ オン 照射 装 置を 用い て、 黒鉛 、B4C転 化 材くSiC転 化 材お よぴ タン グ ステ ンに 水素

(めイオンを 照射して水素を保持させた。 その後、昇温脱離分析法に より、保持された水素の昇 温 脱離 特性 およ び 水素 リテ ンション 量を求めた。黒鉛からの水 素の脱離スベクトルは単一の ピ ークを持って いたが 、他の材料では2つ のピークを持っていた。全水 素リテンション量は、B4C 転化材で最も大きく(l.Oxl018 H/crriz)、次いで黒鉛(6.7x10r' Iycm2)、SiC転化材(5.8x1017 H/cmz)、 タングステン((0.7〜1.7)x1017 H/cm2)の順となった。表面不純物濃度が異なるタングステンでは、

水 素リテ ンション量が2倍程度も異な ることが分った。水素リテ ンション量の加熱温度依存性 を 求 め、 核融 合炉 で 行わ れる べーキン グによる水素リテンション 量の低減効果を評価した。通 常 実施されてい る300‑‑400℃のぺーキングに より効果的に水素リテンシ ョン量を低減できるのは、

タ ング ステ ンお よ びB C転 化材 であ る こと が分 った 。黒鉛およ びSiC転化材のりテンション 量 を 低減 させ るた め には600 800℃の べー キン グ が必 要であるこ とも分った。照射温度を上げ て 水 素を照 射した場合、黒鉛、B C転 化材およびSiC転化材の水素 リテンション量は、照射温度 に 対 して単 調減少した。何れの材料で も、温度が300600℃の時、 室温照射の値の半分となった 。     水 素リ テン シ ョン 畳の 低減 のた め 用い られ るヘ リウ ム 放電 洗浄 を模 擬 するため、すで に 水 素を保 持している黒鉛、B C転化 材、SiC転化材およびタング ステンにヘリウムイオンを照 射 し 、保 持さ れた 水 素の 叩き 出し効果 を評価した。ヘリウムイオ ン照射により水素およびメタ ン の低温側の脱 離ピークが大きく減少した。 残留水素リテンション量は、lxl018 He/cmzのへりウム

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照 射 量 ま で 急 激 に 減 少 し 、 そ の 後 ほ ぼ 一 定と な っ た 。 しか し 、 タ ン グス テ ン で は 、Sx10n He/cmz 以 上 の ヘ リ ウ ム 照 射 を す る と 逆 に 水 素 リ テ ン シ ョ ン 量 は 増 加 し た 。 こ れ ら の プ ラズ マ 対 向 材 料 に お い て 、 ヘ リ ウ ム イ オ ン 照 射 に よ り 水 素 リ テ ン シ ョ ン 量 は 照 射 前 の0.35‑0.6と なり 、 大 き く 減 少 し た 。 特 に 効 果 的 に 除 去 さ れ た の は タ ン グ ス テ ン お よ びB4C転 化 材 で あ っ た 。 ヘ リ ウ ム イ オ ン 照 射 に よ る 水 素 リ テ ン シ ョ ン の 低 減 効 果 を べ ー キ ン グ と 比 較 し た 場 合 、 ヘ リウ ム イ オ ン 照 射は低 い温度 下に おいて 効果的 である こと が分っ た。

    ECRイ オ ン 照 射 装 置 を 用 い て 黒 鉛 、B C転 化 材 、SiC転 化 材 に ヘ リ ウ ム イ オ ン を 照 射 して 、 保 持 さ れ た ヘ リ ウ ム の 昇 温 脱 離 特 性 を 調 べ る と と も に 、 ヘ リ ウ ム リ テ ン シ ョ ン 量の 照 射 量 依 存 性 に つ い て 評 価 し た 。 ヘ リ ウ ム 脱 離 ス ベ ク ト ル は 、 黒 鉛 で は 単 一 の ピ ー ク 、B C転 化 材 お よび SiC転 化 材 で は2つ の ピ ー ク を 持 っ て い た 。 こ れ ら の ピ ー ク 温 度 は 、 黒 鉛 で は 約300℃ 、B4C転 化 材 お よ びSiC転 化 材 で は 約300℃ お よ び 約900℃ で あ っ た 。 両 転 化 材 の 低 温 側 ピ ー ク は 、 材 料 中 の 炭 素 成 分 に 起 因 す る ヘ リ ウ ム の 脱 離 分 と 考 え ら れ る 。 ヘ リ ウ ム リ テ ン シ ョン 量 の 照 射 量 依 存 性 を 調 ぺ た 結 果 、 何 れ の 試 料 で も2xl018 Hem2の ヘ リ ウ ム 照 射 量 で ほ ぼ ヘ リ ウ ム リ テ ン シ ヨ ン量 は 飽 和 し た。 ヘ リ ウ ム リテ ン シ ョ ン 量は 、SiC転化 材 で 最 も 大き く (4.2x1017Hヅan2)、次 いで黒 鉛(3.4x1017He/cm2)、B C転化材く2.7x10 Hリcm2)の順となった。水素濃度と比較した結果、

ヘ リウ ム 濃 度 は 水素 濃 度 の (15〜30)% と な り 、 か なり 高 く な る こと が 分 っ た 。従 っ て、主 放電中 の ヘ リ ウ ム 脱 離 を 抑 え る た め 、 主 放 電 前 に べ ー キ ン グ 等 で ヘ リ ウ ム リ テ ン シ ョ ン量 を 低 減 し て お く 必 要 が あ る こ と が 分 っ た 。 ペ ー キ ン グ に よ る ヘ リ ウ ム リ テ ン シ ョ ン 量 の 低 減効 果 を 調 べ る た め 、 ヘ リ ウ ム リ テ ン シ ョ ン 量 の 加 熱 温 度 依 存 性 を 求 め た 。 こ の 結 果 、 黒 鉛 中 のヘ リ ウ ム は 通 常 の べ ー キ ン グ で か な り 除 去 さ れ る こ と が 分 っ た 。 一 方 、B C転 化材 お よ びSiC転 化 材 中 のヘ リ ウ ム は800℃ ま で ほ と ん ど 減 少 せ ず 、 ベ ー キ ン グ に よ る 低 減 化 は 難 し い こ と が 分 っ た 。     実 機 プ ラ ズ マ 対 向 材 料 の 水 素 リ テ ン シ ョ ン 特 性 を 評 価 す る た め 、 大 型 ト カ マ ク 装 置 の Dm‐Dで 重 水 素 プ ラ ズ マ に 曝 さ れ た 黒 鉛 お よ ぴB4Cの 重 水 素 リ テ ン シ ョ ン 特 性 を 評 価 した 。 黒 鉛 お よ びB→Cに 対 し て 昇 温 脱 離 分 析 を 行 う と 、 保 持 さ れ たDは 主 と し てHD、Dユ 、CD。の 形 で 放 出 し た 。HD、D2`CD4と し て 放 出 さ れ る 割 合 は 、 黒 鉛 面 で は 各 々40% 、27% 、33ゲDと な り 、B4C 面 では 各 々40ゲD、21ゲ。 、39ゲ 。と な っ た 。B4C面 か らの 重 水 素 の 総 脱離 量 は 黒 鉛 面より 若干大 き い か 同 程 度 で あ っ た 。 ま た 、B C面 から の メ タ ン の脱 離 量 は 、 放 電中 に 起 こ る 最表 面 の 炭 素 の堆 積 に よ り 大 き く な っ た 。 重 水 素 リ テ ン シ ョ ン 量 の2次 元 分 布 を 求 め た結 果 、 試 料 の端 の 部 分 で 大 きくな ること が分 った。

    以 上 、 本 研 究 で は 、 核 融 合 炉 の プ ラ ズ マ 対 向 材 料 の 候 補 と な っ て い る 黒 鉛 、B4C転 化 材 、 SiC転 化 材 お よ び タ ン グ ス テ ン に 対 し て 、 水 素 リ テ ン シ ョ ン 特 性 を調 べ る と と もに 、 水 素 リ テン シ ョ ン 量 を 低 減 さ せ る た め に 必 要 な べ ー キン グ 条 件 お よび ヘ リ ウ ム イオ ン 照 射 条 件を 評 価 し た 。 ま た 、 ヘ リ ウ ム 灰 濃 度 の 増 大 の 原 因 と な る ヘ リ ウ ム リ テ ン シ ョ ン 特 性 に つ い て も評 価 し 、 か な り の ヘ リ ウ ム が 壁 に 保 持 さ れ る こ と を 示 し た 。 こ れ ら は 、 核 融 合 炉 壁 の コ ン デ イシ ョ ニ ン グ に におぃ て重要 な結 果を提 供して いる。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

核融合プラズマ対向材料の水素および へりウムリテンション特性の研究

   核 融合 炉の 燃料 であ る水素 粒子 は、プラズマ対向壁に入射して、対向壁中に 保持(リテンション)される。保持された水素は熱あるいはイオン衝撃により脱離 して プラ ズマ に混 入す る。水 素粒 子の壁と境界プラズマとの行き来は水素リサ イクリングと呼ばれ、炉心プラズマの閉じ込め特性の劣化の原因となる。一方、

プラ ズマ 対向 壁に は、 核融合 反応 の灰であるヘリウム粒子も入射し、保持され る。保持されたへりウムが主放電中に熱あるいはイオン衝撃により脱離すると、

炉心 プラ ズマ 中の へり ウム灰 濃度 が上昇する。このため、自己点火条件の維持 が難 しく なる 場合 もあ る。従 って 、プラズマ対向材料の水素およびへりウムの りテ ンシ ョン 特性 につ いて解 明し 、適切なコンディショニング法を考える必要 があ る。 レか し、 プラ ズマ対 向材 料の水素およびヘリウムリテンション特性に つ い て 未 だ 系 統 的 な 評 価 は 十 分 に 行 わ れ て い な い 状 況 に あ る 。    本 研究 では 、核 融合 炉のプ ラズ マ対 向材 料と して 考え られ ている黒鉛、B4C 転化 材、SiC 転化材およびタングステンに対して、水素イオンあるいはへりウム イオ ンを 照射 し、 この りテン ショ ン特性を調べるとともに、材料間の比較を行 った 。ま た、 実機 トカ マク装 置で あるDIII‑D において重水素放電に曝されたプ ラズ マ対 向材 料に つい ても重 水素 リテンション特性を調べた。以下、結果の要 点を述べる。

   黒 鉛、 B4C 転 化材 、SiC 転化 材お よび タン グス テン に水 素(H) イオンを照射し て水 素を 保持 させ た。 その後 、昇 温脱離分析法により、保持された水素の昇温 脱離 特性 およ び水 素リ テンシ ョン 量を求めた。黒鉛からの水素の脱離スペクト ルは 単一 のピ ーク を持 ってい たが 、他 の材 料で は2 つのピ ーク を持っていた。

全水 素リ テン ショ ン量 は、B4C 転 化材で最も大きく、次いで黒鉛、SiC 転化材、

夕ン グス テン の順 とな った。 水素 リテンション量の加熱温度依存性を求め、核 融合炉で行われるべーキングによる水素リテンション量の低減効果を評価レた。

通常 実施 され てい る300 〜400 ℃の ぺーキングにより効果的に水素リテンション 量を 低減 でき るの は、 夕ング ステ ンお よび B4C 転化 材であ るこ とが分った。黒

明 郎

之 明

友 俊

尚 惣

野 科

川 貫

日 山

粥 大

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

鉛およびSiC 転化材のりテンション量を低減させるためには600 〜800 ℃のべー キングが必要であることも分った。

   水素リテンション量の低減のため用いられるへりウム放電洗浄を模擬する ため、すでに水素を保持している黒鉛、B4C 転化材、SiC 転化材およびタングス テンにへりウムイオンを照射し、保持された水素に対する叩き出し効果を評価 した。ヘリウムイオン照射により水素の低温側の脱離ピークが大きく減少した。

ヘリウムイオン照射により水素リテンション量は照射前の0135 〜0.6 となり、大 きく減少した。特に効果的に除去されたのはタングステンおよび B4C 転化材で あった。

   黒鉛、 B4C 転化材、SiC 転化材にへりウムイオンを照射して、保持されたへ りウムの脱離特性を調べるとともに、ヘリウムリテンション量の照射量依存性 について評価した。ヘリウム脱離スペクトルは、黒鉛では単一のピーク、B4C 転化材およびSiC 転化材では 2 つのピークを持っていた。これらのピーク温度 は 、 黒鉛 で は約 300 ℃ 、B4C 転化材およ び SiC 転 化材では約 300 ℃およ び約 900 ℃であった。ヘリウムリテンション量は、SiC 転化材で最も大きく、次いで 黒鉛、B4C 転化材の順となった。水素濃度と比較した結果、ヘリウム濃度は水 素濃度の(15 〜30) %となり、かなり高いことが分った。従って、主放電中のへり ウム脱離を抑えるため、主放電前にべーキング等でへりウムリテンション量を 低減しておく必要があることが分った。

   実機プラズマ対向材料の水素リテンション特性を評価するため、大型トカマ ク装置のDIII‑D で重水素プラズマに曝された黒鉛およびB4C の重水素リテンシ ヨン 特性を評価 した。黒鉛 および B4C で保持されたD は、主とレて HD 、D2 ヽ CD4 の形で放出した。 HD 、 D2 、CD4 として放出される割合は、黒鉛面では各々 40 %、 27 %、 33 %となり、 B4C 面では各々40 %、21 %、39 %となった。 B4C 面 からの重水素の総脱離量は黒鉛面と比べ若干大きいか同程度となった。また、

B4C 面からのメタンの脱離量は、放電中に起こる最表面の炭素の堆積により大 きくなった。

   これを要するに、著者は、核融合プラズマ対向材料の水素およびヘリウムリ テンション特性について多くの新知見を得たものであり、核融合プラズマの閉 じ込め性能の向上に貢献するところ大なるものがある。

   よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと

認める。

参照

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