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博 士 ( 理 学 ) 水 口 峰 之 学 位 論 文 題 名 Studies of Ca2十‐ binding and folding mechanism of Ca2+-binding lysozyme and a-lactalbumin

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 水 口 峰 之

     学 位 論 文 題 名

Studies of Ca2 十‐ binding and folding mechanism   of Ca2+‑binding lysozyme and a‑lactalbumin

(カルシウム結合性リゾチームとぱーラクトアルブミンのカルシウム結合,

     及びフオールデイング機構に関する研究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    a―ラ ク卜 アルブ ミンとc型 リゾチ ームは 、機能 的に はまっ たく異 なるタ ンパ ク質で あるが 、アミ ノ 酸配 列の 高い相 同性と 遺伝子 構造や 立体 溝造の 類似点 から共 通の 祖先から進化した相同タンパク質である と考 えら れてい る。カ ルシウ ム結合 性リ ゾチー ムは生 物活性 が従 来のりゾチームと、カルシウム結合能が a−ラク トアル ブミ ンと同 一であ るとい う両者 の中 間の陸 質を示 す興味 深い タンパ ク質である。ウマリゾ チー ムは カルシ ウム結 合性リ ゾチー ムで あり、 また、 このタ ンパ ク質の モルテ ング口 ビュール状態は、Q

―ラ クト アルブ ミンの モルテ ングロ ビュ ール状 態より も安定 で、 →部天然状態に類似した相互作用によっ て安 定化 されて いるこ とが既 に報告 され ている。本研究では、(1)ウマリゾチームのカルシウムイオンに 対す る配 位構造 をフー リ工変 換赤外 吸収 法によって明らかにすること、(2)ウマリゾチームのモルテング 口ビ ュー ル状態 の安定f生 を定量 的に評 価し、 フオールディング過程のいつ頃形成されるのか明らかにする こと 、(3)ウ マリ ゾチー ムとa―ラ ク卜ア ルブミ ンのモ ルテ ングロビュール状態の違いを決定している構 造部f立 、及び 相互 作用を 明らか にする ことを 目的 とした 。

    a―ラ クトア ルブミ ン分子 中で カルシ ウム結 合に必 要で あるア スパラギン酸残基(Asp82,87,88)は、

ウ マ リゾ チーム のア ミノ酸 配列で も保存 されて いる(Asp85,90,91)。 ウマ リゾチ ームのX線 立体構 造解 析は 既に 報告さ れてい るが、 カルシ ウム 非結合 状態の 結果で ある ので、カルシウムイオンに対する配位購 造に つい ての情 報を得 ること ができ ない 。赤外 吸収ス ペクト ルのCOO― 対称、 非対称 伸縮振動領域は、金 属イ オン に対す る配位 結合様 式を反 映す ること が知ら れてい る。 最初に 立鮒蒔 造既知 のウシa−ラクトア ルブ ミン の赤外 吸収ス ペクト ルを調 ぺ、 カルシ ウムに 対する 配位 隣造とスペクトル変化との相関関係を調 べた 。フ ーリ工 変換赤 外吸収 スペク トル を用い てウシa− ラクト アルブ ミン のカル シウム結合について調 べる と、COO非 対称伸 縮振動 領域で は、1578 cm‥ 、1592 cm.1付近 で強度 が増 加し、COO―対称伸縮振動 領域 では 、1388 cmIl付近のピークが1406 cm.1と1425 cni・1に高波数シフトすることカiわかった。X線構 造 解 析の 結果か ら、 これら の変化 はQーラク トアル ブミン のAsp82,87,88がカ ルシウ ムイオ ンに 対して pseudo‑bridgmg状態 で結 合した ことを 反映し てい ると考 えられ る。pseudo・bndgmg状 態の モデル 化合物 で あ るEDTAに つい て 調 べ る と 、カ ル シ ウ ム 結合 に 伴っ てC00―非 対称伸 縮振動 領域で 強度 増加、C00― 対称 伸縮 振動領 域で高 波数シ フトが 観測 され、 ウシQーラ クトア ルブミ ンで 観測さ れた変化と類似してい た 。 これ らの結 果か ら、COO− 非対称 伸縮振 動領 域での 強度増 加、COO対称 伸縮 振動領 域での 高波数 シ フ卜 がpseudo.bndgmg状 態の特 徴であ ること がわ かった 。

    ウ マリ ゾチー ムにつ いて同 様に 調べる と、C00―非 対称伸 縮振 動領域 では1578cm‥、1595cm.1付近 で強 度が 増加し 、C00―対称 伸縮振 動領 域では 、1391cm.1付 近のピ ークが1404c皿,1と1426cm・1に高波 数 シ フ卜 するこ とが わかっ た。こ れらの 変化はpseudo‐bhdg血g状態の 特徴 であり 、a−ラク 卜アル ブミ ン の スペ ク卜ル 変化 と類似 してい る。し たがっ て、 ウマリ ゾチー ムのAsp85,90,91はpseudo―bndging 状態 でカ ルシウ ムイオ ンに配 位して いる ことが わかっ た。

    生 体内で 合成さ れた タンパ ク質ポ りペプ チド 鎖は、 その特 異的な立淵冓造へとフオールディングして はじ めて その機 能を発 揮する 。夕ン パク 質がど のよう にフォ ール ディングするのかを理解することは生物     ―24―

(2)

物理学 の重 要な課 題の1っで ある。 求次タンノくク質のフオールディング過程でよく観測される中聞体とし てモル テン グロビ ュール 状態が 知られ てい るが、 モルテ ングロビュール状態のフォールディング過程にお ける意義は未だ理解されていない。

    ウマ リゾチ ームの モル テング 口ビュ ール状 態の 安定性 を定量的に評価するために、平衡条件下でのグ ア ニジ ン 塩 酸 塩 によ る 変 性 過 程を2次 構 造 と3次 構 造 を それ ぞ れ 反 映 す る230 nmと292.5 nmの 円二 色 性を用 いて 調べた 。モル テング 口ビュ ール 状態か ら変性 状態への転移に伴うギブス自由エネルギー変化は ウマリゾチームで4.33‑4.37 kcal mol.1と決定された。ウシQーラク卜アルブミンでは1.42 kcal mol,1であ る から 、 ウ マ リ ゾチ ー ム の モ ルテ ン グ 口 ビュ ール 状態は 非常に 安定で あるこ とを 示すこ とがで きた。

    変性 状態か らのり フオ ールデ ィング 反応と 天然 状態か らのアンフオールディング反応をストッブトフ 口ーCD法で調 べるニ とによ って 、フォ ールデ ィング 過程で 過渡 的に蓄 積する 中間体 や遷 移状態 について の情報 を得 ること ができ る。フ ォール ディ ング反 応初期 に蓄積する中間体(バーストフェイズ中間体)に ついて 調ぺ たとこ ろ、ウ マリゾ チーム のバ ースト フェイ ズ中間体の安定性と構造が、平衡条件下で観測さ れるモ ルテ ング口 ビュー ル状態 に類似 して いるこ とを示 すことができた。したがって、ウマリゾチームの 安定で 構造 化され たモル テング 口ビュ ール 状態は 、フオ ールディング反応開始後の数十ミリ秒で形成され ることが明らかとなった。

    ウマ リゾチ ームのモルテングロビュール状態のフオールディング反応に対する役割を理解するために、

この中 間体 がフオーノレディング経路上に存庄するのかどうかをモデルを仮定して調ぺた。フオールディン グ 経路 上 に 存 在 する と 仮定し たOn‑pathwaymodelで は、 天然状 態形成 の速度 定数 が10s 1で あっ たのに 対して 、フ オール ディン グ経路 上に存 任し ないと 仮定し た0晏pathwりmodelでは2X10・4s.1と なり、 タ ンパク 質の フオー ルディ ングで は非現 実的 な値を 示した 。したがって、ウマリゾチームのフオールずィン グ反応は0n・pathwaymode1で記述できることが示された。

    球状 タンパ ク質の フオ ールデ ィング を理解 する ために は、経路上に蓄積する中間体のみならず、反応 の遷移 状態 にっい ての情 報を得 ること も重 要であ る。ウ マリゾチームの遷移状態で疎水性表面がどの程度 埋もれ た状 態にあ るのか を速度 定数の 変性 剤濃度 依存性 から調べた。その結果、ウマリゾチームの遷移状 態では 疎水 性表面 の83%が 内部 に埋も れた状 態にあ り、ウ シa―ラク 卜ア ルブミ ンでは52%であることを 考 慮 す る と 、 ウ マ リ ゾ チ ー ム の 遷 移 状 態 は か な り 構 造 化 が 進 ん だ 状 態 で あ る こ と が わ か った 。     0―ラク トアル ブミン のhehXD(残 基番号105.109) はへ りック ス構造 を示し たり、 ルー プキ薛 造を 示した りす るニと が知ら れてお り、非 常に 運動陸 が高い ことが以前に行われた研究によって明らかとなっ て いる 。 し た が って 、a一 ラクト アルブ ミンのhehxDはnexible100pとも 呼ば れてい る。そ れに対 して 、 ウ マリ ゾ チ ー ム のhehDはQ― ヘ リ ッ クス を 形 成 し て おり 、 運 動 性 が低い ことが 知られ てい る。し たが っ て、 ウ マ リ ゾ チー ム のhehxDがモ ルテン グ口ビ ュール 状態の 高い 安定性 と天然 状態に 類似 した構 造を 保持す るた めに大 きく寄 与して いる可 能性 が高い と推測 される。そこで、aーラク卜アルブミンのnexible loopを ウ マリ ゾ チ ー ムのhehxDの アミノ 酸配列 に置 き換え たキメ ラタン パク 質(HLAEI」z)を 遺伝子 工 学的手 法に よって 作製し た。モ ルテン グ口 ビュー ル状態 から変陛状態への転移に伴うギブス自由エネルギ ー変化 にっ いて調 ぺると 、HLAELZで は4.45−4.51kcalm0111であっ た。ヒ 卜Q―ラク トアル ブミ ンでは 3.54kcalm01‥、ウ マリゾ チー ムでは4.33kcalmol.1であるから、ヘリックスの置換によって、キメラタ ンパク 質の モルテ ングロ ビュー ル状態 は約1kcalmol.1安定 化し、 ウマリ ゾチ ームのモルテング口ビュー ル 状態 と 同 程 度 の安 定 陸 を 獲 得し た ニ と を示 すこ とがで きた。 また、HLAELZのモ ルテ ング口 ビュー ル 状態で は、 ウマリ ゾチー ムのモ ルテン グロ ビュー ル状態 と同様にトリプトファン側鎖の特異的なパッキン グが一 部残 ってい ること が示さ れた。 さら に、ア クリル アミドクエンチングの実験を行い、トリプトファ ン 側鎖 の 溶 媒 に 対す る 露 出 度 にっ い て 調 べた 。そ の結果 、HLAELZの トリプ トファ ン側 鎖は一 部溶媒 か ら 遮蔽 さ れ た 環 境に あ る こ と が示 さ れ た 。0一 ラ ク ト ア ル ブミ ン のモ ルテン グロ ビュー ル状態 では、

′Iい103、啣104、His107は 非 天 然 の 相互 作 用 を し てい る と 考 え られ て い る 。Hk丶ELZで はHis107は 啣 に変 異 さ れ て いる の で 、 こ の非 天 然 の 相 互 作用 はHLAELZの モ ルテ ン グ ロ ビ ュー ル 状 態で は存在 し ていな いと 考えら れる。 したが って、HLAELZの モルテ ング口 ビュー ル状 態では ′I坤104の環境 カiヒ卜a ー ラク ト ア ル ブ ミン と 異 な っ てい る 可 能 性が 高い 。これ らの結 果から 、HLAELZの モル テング 口ビュ ー ル 状態 で はr104と 、 変 異に よ っ て 新 た に導 入 さ れ たnp107で側 鎖 のノ くッ キング が一部 残って おり、

溶媒から遮蔽された状態にあると考えられる。

    HLAELZで 観 測 され た モ ル テ ン グ口 ビ ュ ー ル 状態 の 高 い 安 定性 が ウ マ リ ゾチ ー ム のhehxD固 有 の 安定性 に由 来する ものか どうか を調べ るた めに、hehx一cod予測 プログ ラムを 用いてへりックス形成能を

(3)

調 べた 。 そ の 結 果、 ウ マ リ ゾ チー ム のhelixDの へりッ クス 形成能 はn一ラク トアル ブミン のhelLxDよ り低い ことが 示さ れた。 したがって、ウマリゾチームのモルテングロビュール状態の高い安矧生はhelLxD 固有の 安定r生に 由来す るも のでは なく、helixDと他の構造部位との長距離相互作用によるものであるこ とが示 唆され た。

(4)

学位論文審査の要旨

副 査    教 授    新 田 勝 利 副 査    教 授    田 中    勲 副 査    教 授    山 岸 晧 彦 副 査    助 教 授    出 村    誠

     学位論文題名

Studies of Ca2 十‑binding and folding mechanism   of Ca2 十‐binding lysozyme and cx‑lactalbumin

( カ ル シ ウ ム 結 合 性 リ ゾ チ ー ム と ぱ ― ラ ク ト ア ル ブ ミ ン の カ ル シ ウ ム 結 合,

     及 び フ オ ー ル デ イ ン グ 機 構 に 関 す る 研 究 )

   蛋白質ポリペプチド鎖はその特異的な立体構造へと折り畳まれて初めてその機能を発揮する。

球状蛋白質の折り畳み過程でよく観測される中間体としてモルテング口ビュール状態が知られ ている。また、多くの金属蛋白質にとって金属イオンの結合は、その構造や安定性に寄与して い る場合が多い。申請者は(1 )カルシウム結合性リゾチームであるウマリゾチームとカルシ ウ ムイオン の結合様 式の解 明、( 2 )ウマリゾチームの折り畳み反応機構の解析、(3 )中間 体安定化機構の分子論的解明に関する研究成果を、カルシウム結合性リゾチームとゼーラクト ア ルブミン のカルシ ウム結 合、及びフォールディング機構の研究として体系的にまとめた。

   申請者は、ウマリゾチームの変性過程を円二色性(CD) 測定によって追跡して、ウマリゾチー ムのモルテング口ビュール状態は非常に安定であることを示した。またウマリゾチームの安定 で構造化されたモルテングロビュール状態は、巻き戻りの初期(数十ミリ秒)に蓄積する中間 体 と同一で あること を実験 的に示し た。さ らに申請 者は、 on‑pathway model とoff‑pathway model に基づいて実験デ一夕から天然状態形成の反応速度定数を導出したところ、前者から20 s . 1 と妥当な 数値を 得て、ウ マリゾチームの巻き戻り反応はOn‑pathway model で記述できる ことを示した。またウマリゾチームの巻き戻り反応経路の遷移状態はかなり構造化が進んだ状 態であることも明かにした。これらの結果は、一般に巻き戻り反応初期に形成されるモルテン グ ロビュー ル状態が 、蛋白 質の巻き戻りにとって必須の中間体であることを示唆している。

   申 請者は、 ウマリ ゾチーム のhelixD がモルテングロビュ―ル状態の安定性と構造保持のた め に大きく 寄与して いると 推測し、d ―ラクトアルブミンのflexible loop をウマリゾチーム の helixD のア ミ ノ 酸配 列 に 置き 換 え たキ メ ラ 蛋白質 (HLAELZ) を作製 した。巻 き戻り の熱 力 学的研究 から、HLAELZ はウマリ ゾチー ムのモル テング ロビュー ル状態と 同程度 の安定性 を獲得したこと、モルテング口ビュール状態ではウマリゾチームと同様にトリプトファン側鎖 の特異的なパッキングが一部残っていることを示した。さらに螢光分光学的な実験によってモ ル テ ン グロ ビ ュ ール 状 態 では Trp104 と変 異 に よって 導入され た Trp107 の側 鎖のパッ キン グが一部残っており、溶媒から遮蔽された状態にあると推測した。さらに、helix ‐ coil 予測プ ロ グラムか らウマリ ゾチー ムのモル テング ロビュー ル状態 の高い安 定性はhelixD と他の構 造部位との長距離相互作用によるものであると結諭づけている。上記のキメラ蛋白質にっいて

27―

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得られた研究結果は、球状蛋白質におけるモルテング口ビュール状態の安定化因子について分 子論的な一般性を引き出す 重要な研究成果といえよっ。

   学位論文の公開発表の質疑応答では、申請者は自ら行った実験の結果や過去の論文の内容な どを引用し、豊富な知識に基づいて質問 に明快に回答した。

   以上のように申請者は、球状蛋白質の立体構造形成機構についていくっかの重要な知見を示

した。審査員一同はこれらの成果を高く評価し、申請者が北海道大学博士(理学)の学位を授

与される資格が充分にあるものと認定し た。

参照

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