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学位論文題名Structure−Function Relationship of CytochromeC in the Respiratory Chain

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 坂 本 光 一

     学位論文題名

Structure − Function Relationship of CytochromeC     in the Respiratory Chain

(呼吸鎖におけるシトクロムc の構造機能相関の解明)

学位論文内容の要旨

  

生体 エネル ギーとして用いられるATPの合成には,呼吸鎖とよばれる一連の膜タンパク 質問の電子伝達が必須である,この電子伝達を担うタンパク質としてシトクロムc (Cytc) が知られており,Cytcは呼吸鎖においてシトクロムぬ

1

複合体(Cyt bc1)とシトクロムc酸 化酵 素(Cc0)問の電子伝達を担っている.Cyt bc1から電子を受け取ったCytcは,Cc0と結 合す ることに より電子を伝達し、伝達された電子はCc0に韜いてプロトンおよぴ酸素分子 と反 応するこ とによって水分子へと変換される,この酸素還元反応には

4

電子が必要であ る が ,

Cytc

1

度 に

1

電 子 しか

Cc0

に伝 達 す るこ と が でき な い. そのた め,Cytcと

Cc0

はその電子伝達部位の酸化還元状態を変化させ,会合・解離を繰り返しながら電子の授受 を繰り返していると考えられる,このように,

Cyt c‑Cc0

間の電子伝達反応には,酸化還元 状態に応じた会合・解離を制御する機構が存在すると想定されるが,その知見は十分に得 られてはいない.そこで申請者は本論文において,分光学的・熱力学的手法などを用い,

この ような酸 化還元 状態に応 じた

Cytc

とCc0間の電子伝達の分子機構を,

Cyt c‑Cc0

複合 体 の 構 造 に 着 目 し て ア ミ ノ 酸 残 基 レ ベ ル で 解 明 す る こ と を 試 み た .

  

本論文は四章から構成されており,第一章では,複合体形成反応を熱力学的に検討する こと が可能な 等温滴定カロリメトリーを用い,

Cytc

Cc0

の複合体の安定性およびその複 合体 の量論比 を求めた.その結果,

Cytc

Cc0

の複合体形成反応は,1ニ

1

の量論比でKDが

17.2

土l.1 yM(25℃)で結合する吸熱反応であり,エントロピー駆動型の反応であることが明 らかとなった.このエントロピー変化を,回転・並進,脱水和,そして構造変化によるエ ントロピー変化に分割して解析を行ったところ,脱水和と構造変化に由来するエントロピ ー変化が全体のエントロピー変化に大きく寄与していることが示された.っまり,Cytc―

Cc0

複合体の 形成時において,熱力学的に不利なエンタルピー変化は,脱水和と構造変化 によって増大するエントロピー変化によって補償していることが明らかとなった,過去の 研究より,複合体形成時における脱水和は,主に疎水性残基による疎水性相互作用の結果 であ ることが 指摘されている.このことより,

Cytc

Cc0

は疎水性相互作用が駆動カとな って電子伝達複合体を形成し,それに伴って,水分子の脱水和と複合体形成時の構造変化 に よ って エン トロピ ーを獲得 し,結合 時のエ ンタルピ ーの損 失を補う と考え られる.

  

第二 章では, 酸化還元状態に応じたCytc―Cc0複合体の会合・解離の分子機構を明らか にす るため, アミノ酸残基レベルで結合部位を検討することが可能な1H‑15N HSQC法を用 い て ,CytcのCc0結 合部位 の同定を 試みた .結合型 である 還元体

Cytc

Cc0

結 合部位の 同定を行った結果,Cytcのへムのチオエーテル基周辺のアミノ酸に由来するピークの幅広 化,あるいはそのピーク位置に変化が観測された,同定されたアミノ酸残基には,第一章 から予想されたようにIleなどの非極性残基が含まれていることから,これらの疎水性残基

‑ 240

(2)

に よ る 疎 水 性 相 互 作 用 がCytcCc0複 合 体 の 形 成 の 駆 動カ とし て の役 割を 果た して い るこ と が 示 さ れ た , さ ら に , こ の 領 域 に はLysGluな ど の 極 性 残 基 が 多 く 含 ま れ てお り ,第 一 章で 述べ た疎 水 性相 互作 用だ けで な く, 静電 相互 作用 もCyt c‑Cc0複 合体 形成 に重 要 であ る こ と が 示 さ れ た ,

a Figure l.  Amino acid residues

affected by the binding to Cco in (a) ferrous and (b) ferric Cyt c.

Positively  charged,  negatively charged, and non‑polar residues are shown in blue, red, and yellow, respectively.,

  次 に ,CytcCc0か ら 解 離 す る 状 況 を 想 定 し た 酸 化 型CytcCc0結 合 部 位 の 同 定 を 行 っ た 結 果 , 結 合 部 位 は 還 元 型 と 酸 化 型 で 大 き く 変 化 は し ない もの の, 酸化 型 のCc0結 合部 位 で は ,N末端 の極 性残 基の 相 互作 用が 減少 した 一 方で ,ヘ ム近 傍 の非 極性 残基 の相 互 作用 が 増 加 し た こ と が 明 ら か と な っ た(Figure l).こ の 酸 化 還 元 依 存 的 なCytcCc0結 合 部位 の 変 化 は , 構 造 変 化 に よ っ て タ ン パク 質問 の電 子 伝達 反応 が制 御 され てい るこ と, そ して 静 電 相 互 作 用 が 減 少 す る こ と に よ るタ ンパ ク質 複 合体 間の 親和 カ の変 化が 起こ り, 解 離す る こ と を 示 唆 し て い る .

  第 一 章と 第二 章に お いて ,Cyt c‑Cc0複合 体の 会 合・ 解離 機構 を 熱力 学的 手法 や分 光 学的 手 法 を 用 い て 明 ら か に し て き た. しか しな がら , タン パク 質複 合 体の 会合 ・解 離に は タン パ ク質 構造 の「 静 的」 な構 造だ けで な く, 「揺 らぎ 」も 重 要な 役割 を果 たしていることが指 摘 さ れ て い る . そ こ で 第 三 章 で は , 二 次 元NMRデ ー タ の 緩 和解 析 およ びモ デル フリ ー 解析 を 用 い , 電 子 伝 達 複 合 体 の 構 造上 の揺 らぎ を検 討 する こと によ り ,タ ンパ ク質 構造 の 揺ら ぎ がCytcか らCc0へ の 電 子 伝 達 反 応 に 寄 与 し て い る か を 明 らか に する こと を試 みた , その 結 果 ,CytcCc0が 電 子 伝 達 複 合 体 を 形 成 す る こ と に よ り ,CytcCc0結 合 部 位 だ け で な く 分 子 全 体 に 揺 ら ぎ が 制 限 され るこ とが 明ら か とな った .こ の 結果 は,Cytcの揺 ら ぎが 制 限 さ れ た 状 態 でCc0へ の 電 子 移 動 が 起 こ る こ と を 示 唆 し てい る .こ のよ うな 電子 伝 達反 応 時 に 揺 ら ぎ が 制 限 さ れ る と いう 生物 学的 意義 は まだ 明ら かと な って いな いが ,こ の 運動 性 の 制 限 が 部 位 特 異 的 で か つ 効率 的な 電子 伝達 を 行う 上で ,重 要 な役 割の 一端 を担 っ てい る もの と想 定さ れ る,

  第 四 章 で は, 第二 章 で同 定さ れた 結合 部 位に 存在 する 個 々の 極性 残基(Lys)と 非極 性 残基 (Ile)の 役 割 に っ い て 検 討 す る た め ,LysIle変 異 体 を 用 い てCytcか らCc0へ の 電 子 伝達 反 応 の 活 性 測 定 を 行 っ た 後 , ミ カ エリ ス・ メン テ ン型 の解 析を し, 電 子伝 達複 合体 の 解離 定 数 に 相 当 す る ミ カ エ リ ス 定 数KMお よ ぴ 代 謝 回 転 数kcatを 求 め た ,LysLeuに 変 え た変 異 体 のK13LK86/87Lで はKMが ,K7/8LK79Lで はkcatが 大 き く 変 化 し て い た , こ の 結 果 は,Lys138687が電 子伝達複合体の 親和性に寄与していること, そしてLys7,8,79は電 子 伝 達 速 度 の 制 御 あ る い は 電 子 伝 達複 合体 の解 離 に寄 与し てい るこ と を示 唆し てい る .一 方 ,IleAlaに 変 え た 変 異 体 で は ,KMおよ ぴkcatとも に変 化は ほと ん どな かっ た。 こ の結 果 よ り ,Cyt c‑Cc0複合 体の 形 成の 駆動 カと なる 疎 水性 相互 作用 は特 異 性が 低く ,ア ミ ノ酸 側 鎖 の 大 き さ の 違 い は 電 子 伝 達 反 応 に 大 き く 影 響 し な い こ と が 示 さ れ た .

(3)

酸配置がCytcや

Cc0

と他の電子伝達タンパク質において類似していることから,本研究で 得 ら れ た 知 見 が 電 子 伝 達 機 構 の 一 般 則 の 解 明 に 繋 が る もの と 期待 さ れ る.

‑ 242

(4)

学 位 論 文 審 査 の要 旨

     学位論文題名

Structure ― Function Relationship of CytochromeC     in the Respiratory Chain

     (呼吸鎖におけるシトクロムc の構造機能相関の解明)

  

本論文は 生体内でのエネルギー生産機構として重要な呼吸鎖における電子伝達機構、特 にその電子伝達系の末端に位置し、これまで多くの研究者がその機構解明を試みてきたシト ク ロ ム

c (Cytc

)か らシト クロムc酸化酵 素

(Cc0)

への電子 伝達反 応の構造 機能相 関を明 ら かにし ようとし たもの である。 第一章 では、CytcとCc0間の電子伝達複合体形成を熟力 学的に検討し、この反応が吸熱反応で、エントロピー駆動型であることを明らかにしている。

さらに、著者は熱力学的パラメータの解析から、この電子伝達複合体形成では、疎水 出旧互 作用が駆動カとなることを決定し、それに伴う脱水和と構造変化によるエントロピー増加に よ り 、 相 互作 用 形 成に 伴 う エン タル ピーの 損失を補 うという 新たな 機構を示 唆した 。

    

第二章で は、さ らに詳細 に電子伝 達複合 体形成の 機構を 明らかにするため、1H‑15N

HSQC

法を用 いて、

Cytc

Cc0

結 合部位の 同定を 試みた。 第一章 から予想 された ように相 互 作用部 位には

Ile

などの非極性残基が含まれ、疎水性相互作用がCytcとCc0複合体の形成 の駆動カとしての役割を果たしていることが確認された。また、相互作用部位には極性残基 も多く存在し、静電相互作用もこの複合体形成に重要であることが示された。このように電

郎 靖

定 一

浩 和

   

森 口

田 野

石 坂

武 河

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

(5)

らかとなり、この結果は、構造変化による蛋白質問の電子伝達反応の制御という新たな電子 伝達制御機構を意味し、学術的に非常に興味深い。

  

著者 はさらに 以上の ような「静的」な構造だけでなく、蛋白質複合体の会合・解離にお いて,重要な役割を果たしていることが指摘されている蛋白質構造の「動的構造」すなわち

「構 造的揺ら ぎ」にも 注目し 、第三章 では、 二次元NMRの緩 和解析を 通して、Cytcは

Cc0

と電子伝達複合体を形成する際にはその相互作用部位だけでなく、分子全体に揺らぎが制限 されることを明らかにしている。この結果は、電子伝達反応における蛋白質の構造的揺らぎ の寄与を示す興味深い知見である。

  

次いで第四章では、第二章で同定された結合部位に存在する個々の極性残基

(Lys)

と非極 性残 基(Ile)の 役割に っいて検討するため、その変異体を用いてCytcからCc0への電子伝達 反応の活性測定を行なうことで、相互作用部位に位置する個々のアミノ酸残基の機能的役割 を明確にすることを試み、電子伝達速度と電子伝達複合体形成のそれぞれに寄与するアミノ 酸残基の同定に成功している。ここで得られた知見は、電子伝達機構における構造機能相関 を考える上で重要な情報となる。

  

以上、本論文により、呼吸鎖におけるCyt c‑Cc0複合体の形成は、疎水´出F日互作用が主な 駆動カであり、さらに、静電相互作用も複合体の親和カや解離に重要な役割を果たすことが 明ら かとなっ た。また 、これ らの相互 作用は

Cytc

の酸化状態に依存し、さらにCc0との相 互作用によりその構造上の揺らぎも変化することで、部位特異的な電子伝達が起こると考え られ る。これ らの成果 はCytcとCc0との 電子伝達 反応のみならず、生体内の多くの電子伝 達反応の解析においても有用な情報となり、本論文で得られた知見は生体内電子伝達機構の 一般則の解明に繋がるものと期待される。これを要するに、著者は、呼吸鎖における電子伝 達反応の分子機構にっいて新知見を得たものであり、酸素呼吸生物の生命維持にとって必須 な呼吸鎖における電子伝達反応に対して、その分子論的解明を進めるにあたり貢献するとこ ろ大なるものがある。

  

よっ て著者は 、北海 道大学博 士(理学 )の学 位を授与 される 資格ある ものと認める。

‑ 244

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