• 検索結果がありません。

常染色体優性多発性嚢胞腎疾患モデルメダカの

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "常染色体優性多発性嚢胞腎疾患モデルメダカの"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 医 学 ) 宮 本 兼 玄

学 位 論 文 題 名

常染色体優性多発性嚢胞腎疾患モデルメダカの      作成と解析

学位論文内容の要旨

  ヒト 常染色体 優性多発 性嚢胞腎( 以下、ADPKDと 略す)は1000人に1人の 発症頻度 をもつ 代表 的な遺伝 性腎疾患 である。加齢とともに主に腎臓に多発性の嚢胞を形成し、進行性の腎 機能 障害をき たす。嚢 胞の進行度に個人差があるが、多くは末期腎不全となり、透析療法が 必要 となる。 その原因 遺伝子とし てPKD1とPKD2がク ローニン グされて いる。ど ちらの遺伝 子の変異によっても同じ臨床症状を引き起こす。

  ヒトADPKDは常染色 体優性遺 伝であり、 その遺伝 学的発症機序として、two−hit説が提唱 され ている。 父母より 変異型と野 生型のPKD遺 伝子を引 き継いで出生後、成長の過程で何ら かの 原因によ り野生型PKD遺伝子に体 細胞変異 が生じる ために、PKD遺伝子の 機能が喪失し 嚢胞を形成すると考えられている。

  Pkdlノッ クアウト マウスはホモ接合体で多発性嚢胞腎及ぴ胎性致死をきたす。Pkd2ノック アウ トマウス もホモ接 合体で多発性嚢胞腎を形成し、胎性致死となるが、Pkdlノックアウト マウスとの相違点として、内臓逆位が起こる。

  現在 、嚢胞腎 モデル動 物として複数のノックアウトマウスが作成されているが、遺伝子組 換え マウスの 維持・繁 殖には多大な手間と費用が必要である。通常のノックアウトマウスで は胎 性致死と なるため 薬剤投与研究には適さない。そこで、今回、私は薬剤投与研究がより 簡便 に低コス トで実施 可能な新たな動物モデルとしてメダカに着目した。小型魚類は脊椎動 物と して基本 的な構造 を全て備え、卵が透明であることから発生学の良好なモデルとして使 われ てきた。 もうーつ の小型魚類モデルとして知られているゼブラフイッシュは前腎の形成 モデ ルとして 研究され ており、腎嚢胞形成突然変異体も多数発見されている。メダカにおい ても 、多発性 嚢胞腎を 発症する突然変異メダカが報告されており、ヒトの嚢胞腎形成の解析 に寄与しうると考えられる。

  また 近年、小 型魚類を 用いて薬物 スクリー ニングを 行う試みが成果をあげつっある。Pkd 遺伝 子異常に 基づいた 嚢胞腎形成メダカを作成すれぱ、安価に多数の個体を維持し、大規模 な薬 剤スクリ ーニング システムを構築することが可能となる。しかしメダカを用いる欠点と して 、現在の 技術では マウス以外ではノックアウト動物の作成が不可能である。小型魚類で はMorpholino anti−sense oligonucleotideによる遺伝子ノックダウン法が普及しているが、

この 方法では 系統化す ることができない。腎嚢胞発生の主たる機序は前述のtwo―hit説にあ るよ うにPKD遺伝 子の不活 化と考えら れるが、 ヒトPKD2のC末 端欠失変 異体を遺 伝子導入さ れた ラットで 腎嚢胞を 認めたとの報告があり、欠失変異体がドミナントネガティブとして働 く可能性が示唆されている。

45―

(2)

  本 研究 にお いて は、Pkd遺 伝子 操作 により、腎嚢胞を有する系統化可能なメダカを作成す ることを目的とした。

  既 存の 遺伝 子デ ータ ベー スよ り、 ヒト 、フ グ、 マウス のPkdl及 ぴPkd2を参考にメダカの Pkdl及 びPkd2の相同 検索 を行 った 。こ れを もと にcDNAラ イブ ラリ ーよ りRT―PCRを行 い、

全長メダカPkdl及び全長Pkd2の塩基配列を決定した。

  メ ダカ では受精卵の1〜4細胞期の細胞質にプラスミドコンストラクトをmicroーinjection する こと によ り、 むガvoで 導入 遺伝 子を 発現 させ ること がで きる 。遺伝子導入された卵は およ そ7日で 孵化 し、 導入遺 伝子 の機 能の簡便な評価が可能である。野生型メダカの受精卵 に 、 メ ダ カPkdl遺伝 子の シグ ナル ペプ チド 以外 のN末 端を 欠失 させ 、タ グと してEGFPを融 合させたプラスミドコンストラクトEF−la−A−EGFP―Pkdl△Nをmicroーinjection法により遺 伝子 導入 した。屈曲を認め、組織切片による評価で前腎の嚢胞を認める個体があった。同様 に メ ダ カPkd2のC末 端を 欠失 させ 、タ グと してEGFPを 融合 させ たプ ラス ミド コン スト ラク トEF―la→AーPkd2△C−EGFPをmicro−injection法により受精卵に遺伝子導入した。稚魚の段 階で 、心 臓逆位、屈曲、前腎の嚢胞といった表現型を認めた。欠失変異体がドミナントネガ テ ィ ブ と し て 働 き 、 ノ ッ ク ア ウ ト 動 物 と 同 等 の 表 現 型 を 得 た も の と 考 え ら れ た 。   こ の結 果を受け、トランスジェニックメダカ系統を確立した。欠失変異体の遺伝子導入で は、屈曲及び致死の可能性があり、発現調節可能な系統を作るためTetーOn/Off誘導系を用い た。Tet−On誘導系はドキシサイクリン投与により導入遺伝子が発現し、TetーOff誘導系は逆 にドキシサイクリンにより遺伝子の発現が抑制される系である。Tet−On/Off系統については、

転写 因子 を持つ系統と誘導される遺伝子を持つ系統をそれぞれ確立したのち、これらを交配 させることにより得た。Pkdl△Nを持つ系統はTet―Off EGFP−Pkdl△N系統を作成し、さらに 誘導系を介さず、構成的に導入遺伝子を発現する系統として、EF―la―A―EGFP―Pkdl△N系統 を作成した。Pkd2△Cを持つ系統についてはTet−On Pkd2△CーEGFP系統及ぴEFーlaーAーPkd2

△C−EGFP系統を作成した。

  これらのトランスジェニックメダカを飼育し、組織切片を作成し、腎嚢胞を検索した。EF一1 a−A−EGFP−Pkdl△N系統のへテロ接合体成魚の組織検索では5カ月の時点では、腎嚢胞を認 めなかった。TetーOff EGFP−Pkdl△N系統は、ドキシサイクリンがなけれぱ最大活性で導入遺 伝 子 が 発 現 す る は ず だ が 、6カ 月 後 の 成 魚 の 組 織 切 片 で は 腎 嚢 胞 は 認 め な か っ た 。   Pkd2△Cを持つ系統については、EF一la−A−Pkd2△C―EGFP系統を7カ月飼育した後、ヘテロ 接合体の組織切片を作成し検鏡した。両腎に数個の中等度の腎嚢胞を認めた。また、Tet−On Pkd2△C−EGFP系 統を ドキシ サイ クリ ン10ルg/mlに4カ月 曝露 した 後、組織切片を検鏡した とこ ろ、 片腎に数個の腎嚢胞を認めた。多量に変異体を発現させた一過性実験では稚魚の段 階で 腎嚢 胞を認めているのに対して、系統化したメダカでは嚢胞形成に数カ月を要している こと から 、変異体の発現量が少ないほど、嚢胞形成に要する時間は長くなるものと推察され た。

  以 上、PkdlN末 端欠 失変異 体導 入ト ランスジェニックメダカでは表現型が得られなかった が、Pkd2C末 端欠 失変 異体導 入ト ラン スジェニックメダカでは、十分な発現量があれぱドミ ナン トネ ガティブ変異体として機能し腎嚢胞を形成すると考えられた。今後、ホモ接合体の 作成や発現調節系のさらなる向上により、Pkd2欠失変異体導入トランスジェニックメダカが、

嚢胞形成における薬剤曝露試験において有効な新たなモデル動物となる可能性が示唆された。

46

(3)

学位論文審査の要旨 主 査    教授    小池隆夫 副 査    教授    畠山鎮次 副査   教授   野々村克也

学 位 論 文 題 名

常染色体優性多発性嚢胞腎疾患モデルメダカの      作成と解析

  学 位論 文の 内 容は 、ヒ ト疾 患で ある 常染 色体 優性 多発 性嚢 胞腎 の治 療 及び 病態 解明のた め新たな疾患モデル動物としてメダ カに着目したものである。・

  ヒ ト 常 染 色 体 優 性 多 発 性 嚢 胞 腎 は1000人 に1人 の 発 症 頻 度 を も つ 代 表 的 な 遺伝 性腎 疾 患で ある 。加 齢 とと もに 主に 腎臓に多発性の嚢胞を 形成し、進行性の腎機能障害をきたす。

そ の 原 因 遺 伝 子 と し てPKD1PKD2が ク ロ ー ニ ン グ され てい る。 どち らの 遺伝 子の 変異 に よっ ても 同じ 臨 床症 状を 引き 起こ す。 通常 のノ ック アウ トマ ウス では 胎 性致 死と なるため 薬剤 投与 研究 に は適 さな い。 本論 文で は薬 剤投 与研 究が より 簡便 に低 コ スト で実 施可能な 新た な動 物モ デ ルと して メダ カに 着目 した 。多 発性 嚢胞 腎を 発症 する 突 然変 異メ ダカが報 告さ れて おり 、 ヒト の嚢 胞腎 形成 の解 析に 寄与 しう ると 考え られ る。 し かし 、現 在の技術 では マウ ス以 外 では ノッ クア ウト 動物 の作 成が 不可 能で ある 。腎 嚢胞 発 生の 主た る機序は PKD遺 伝 子 の 不 活 化 と 考え られ るが 、 欠失 変異 体が ドミ ナン トネ ガテ ィブ とし て働 く可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る 。 本論 文に おい ては 、Pkd欠失 変異 体に より 腎嚢 胞を 有す るメ ダカ を 作成することを目的とした。

  ヒ ト 、 フ グ 、 マ ウ ス のPkdl及 ぴPkd2を 参 考 に 既 存の 遺伝 子デ ータ ベー スの 相同 検索 に より、メダカPkdl及びPkd2をクロー ニングした。

  野 生 型 メ ダ カ の 受 精 卵 に 、 メ ダ カPkdlN末 端 を 欠 失 さ せ 、 タ グ と し てEGFPを 融合 さ せたコンストラクトEF−laーAーEGFPーPkdl△Nをmlcro―injection法により遺伝子導入した。

屈 曲 を 認 め 、 前 腎 の 嚢 胞を 認め る個 体が あっ た。 同様 にメ ダカPkd2C末 端を 欠失 させ 、 タグ とし てEGFPを融 合さ せた コンストラクトEF−la一A−Pkd2△CーEGFPをmicro−injection 法に より 受精 卵 に遺 伝子 導入 した 。稚 魚の 段階 で、 心臓 逆位 、屈 曲、 前 腎の 嚢胞 といった 表現型を認めた。

  こ の結 果を 受 け、 トラ ンス ジェニックメダカを作 成した。欠失変異体の遺伝子導入では、

屈曲 及び 致死 の 可能 性が あり 、発 現調 節可 能な 系統 を作 るためTet−On/Off誘導系を用いた 系統 も作 成し た 。EF−la一A−EGFPーPkdlN系 統の 成魚 の組織検索では5カ月の時点では、

腎嚢 胞を 認め な かっ た。Tet−Off EGFP―PkdlN系 統も 、6カ月後の成魚の組織切片では腎 嚢胞 は認 めな か った 。Pkd2△Cを 持つ 系統 に つい ては 、EF−laーA−Pkd2△C―EGFP系 統を7 カ月 飼育 した 後 、両 腎に 数個 の中 等度 の腎 嚢胞 を認 めた 。また、Tet―On Pkd2△C−EGFP系 統 を ド キ シ サ イ ク リ ン10g/mlに4カ 月曝 露し た後 、組 織切 片を 検鏡 した とこ ろ、 片腎 に 数個 の腎 嚢胞 を 認め た。 多量 に変 異体 を発 現さ せた 一過 性実 験で は稚 魚 の段 階で 腎嚢胞を

47―

(4)

認めているのに対して、系統化したメダカでは嚢胞形成に数カ月を要していることから、

変異体の発現量が少ないほど、嚢胞形成に要する時間は長くなるものと推察された。Pkd2C 末端欠失変異体導入トランスジェニックメダカでは、十分な発現量があれば腎嚢胞を形成 すると考えられた。

  学 位申請者 宮本兼玄 の学位論文公開発表は、平成19年7月31日に医学部臨床大講堂に おいて行われた。申請者はスライドを用いながら約15分に渡って学位論文内容の発表を 行 った。そ の後、副 査畠山鎮次教授から、コンストラクトのN末端の向きについてcell lineに 入れFACSで調 べたか、 一過性発 現で表現型 が出たものはEGFPによる螢光が強か ったか、系統化したメダカで腎嚢胞が少ないのは発現量が少なかったためか、細胞では ret‑On誘導系ははわずかのドキシサイクリンでも反応してしまうが水槽中のメダカでは どうなのかといった質問があった。

  次いで副査野々村克也教授から、実験は前腎の嚢胞をみているのか、小さな腎嚢胞も あるのか、メダカを用いたそもそもの理由は薬剤曝露試験に使うためだがどうしたらもつ と安定して多数の腎嚢胞ができるのかといった質問があった。その後、主査小池隆夫教 授から、一過性発現実験では前腎に腎嚢胞ができているがヒトでは後腎に嚢胞ができる。

こ れは同じ ことと考 えていい のか、魚のPkdlの機能は 何か、Pkd2のC末端欠失 変異体 では心臓逆位が起きたが生物学的意義は何か。ヒトで心臓逆位がおきるのか、ミュータジ エネシスで突然変異体をっくれぱ腎嚢胞はできるか、メダカの研究からヒト疾患である常 染色体優性多発性嚢胞腎に対するアプローチや展望を何か得たかといった質問があった。

い ず れ の 質 問 に 対 し て も 、 申 請 者 は 自 験 例 や 文 献 を 引 用 し 、 適 切に 回 答し た 。   この論文は常染色体優性多発性嚢胞腎の病態解明に寄与する点で高く評価され、今後、

腎 嚢 胞 の 疾 患 モ デ ル 動 物 と し て メ ダ カ が 利 用 さ れ る こ と が 期 待 さ れ る 。   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑚や取得単位なども 併 せ申請者 が博士( 医学)の 学位を受け るのに充 分な資格を有するものと判定した。

48ー

参照

関連したドキュメント

市場を拡大していくことを求めているはずであ るので、1だけではなく、2、3、4の戦略も

今日のお話の本題, 「マウスの遺伝子を操作する」です。まず,外から遺伝子を入れると

しかしながら生細胞内ではDNAがたえず慢然と合成

の多くの場合に腺腫を認め組織学的にはエオヂ ン嗜好性細胞よりなることが多い.叉性機能減

 12.自覚症状は受診者の訴えとして非常に大切であ

 毒性の強いC1. tetaniは生物状試験でグルコース 分解陰性となるのがつねであるが,一面グルコース分

の総体と言える。事例の客観的な情報とは、事例に関わる人の感性によって多様な色付けが行われ

図 21 のように 3 種類の立体異性体が存在する。まずジアステレオマー(幾何異 性体)である cis 体と trans 体があるが、上下の cis