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目標達成型思考の自由記載式看護計画と 問題解決型看護計画の比較

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 佐 藤 ひ と み

学 位 論 文 題 名

目標達成型思考の自由記載式看護計画と 問題解決型看護計画の比較

―テキストマイニングを用いた分析による患者の個別性の記述の有無一

学位論文内容の要旨

【背景 と目的 】看護記 録の電 子化は1990年 代後半 より医師 の記述 の電子化(いわゆる 電子カルテ)と並行して電子温度版から看護の叙述記録へと進んできた。叙述記録を電子 化する場合、看護計画については問題解決型思考で標準化されたりス卜からの選択方式を 用 いる 場 合 が多 い。代 表的な方 法とし てNANDA (North American Nursing Diagnosis Association)・NOC (Nursing Outcomes Classification)・NIC (NursingInterventions Classification)による分類を用いる方式があり主流をなしている。一方、北海道大学病院 看護部では患者の個別性を尊重した計画的な看護の実践を方針としていることから、問題 解決型思考を用いず、目標達成型思考で自由記載型の看護計画を選択した。本研究では、

この自由記載型で電子化した看護計画を抽出して分析し、「患者の個別性」を尊重した看護 計画が立案されているかどうかを明らかにすることを目的とした。方法として、テキスト マイニングを用いて問題解決型思考で標準化されたりストから選択した看護計画との比較 を行い、標準化されたりストに該当しなぃ部分があるかどうか、その部分が「患者の個別 性」の表現であるか否かを検討した。

【対象 と方法 】2004年1月〜 12月に北 海道大 学病院に「網膜剥離」で入院した患者114 名のう ち「網 膜復位術」を受けた49名の看護計画を対象とした。この疾患を選択した理 由は疾患の進行度による看護への影響が少ないため、看護の個人差が少ないと考えたため である。抽出した看護計画は「看護目標」「看護小目標」「具体策」であり、これらをテキ ストマイニングを用いて分類した。分析は2段階に分け、まずそれぞれを標準看護計画と 比較した。比較に用いた標準看護計画はA病院の協カを得て提供を受けたものと、.Jaffe 著「看護診断に基づく看護ケア基準◎」の翻訳版を用いた。第2段階として、「具体策」

を 「NIC」の 分 類 ラベ ル お よ び定 義 と 比較 した。比 較に用 いたNICはDochtermanらの

「 看護 介 入 分類(NIC)原 著 第4版 」 の翻 訳 版を用い た。テ キストマ イニン グにはJUST SYSTEMS社 のCB Market Intelligenceを 用いた 。このソ フトウェ アは、 自由記述 文を 解析して関係性を抽出し、集計処理と関係性情報の数値化を行う機能を有する。また類似 度 の 高 い 文 書 の 関 係 性 を デ ン ド ロ グ ラ ム と し て 視 覚 的 に 表 現 す る 。

【結果】1.標準看護計画との比較

自由記載型看護計画をテキストマイニングを用いて分類し、同じ「クラスタ」内に違う意 図の文章が混じらなぃ時点で細分化を止めた。「看護目標」は11分類、「看護小目標」は 24分類、「具体策」は36分類に分かれた。この各分類の代表的文章を選んで標準看護計画 と比較した。看護目標は、標準看護計画における看護問題に対する目標という考え方とは     ―491―

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違い、ある程度の期間で達成できる状態と定義されており比較できなかった。看護小目標 では「手術の流れをイメージできて準備ができる」「十分な情報提供を受けられ、治療経過 を理解できる」は自由記載型看護計画にあるが標準看護計画には無いことがわかった。他 方、標準看護計画にある「「損傷予防の安全対策を行う目的を理解し協カできる」など5項 目が自由記載型看護計画には無かった。具体策の比較では、代表的な文章をそれぞれに対 応するよう並べ替えて比較した。その結果、自由記載型看護計画では「誰に対して」「いつ」

「どのように」などの条件が書かれていた。それらは主に、年齢、家族背景、合併症の有 無など固有の条件に応じて記述されていた。また「遠慮がち」、「問いかければ思いを表出 できる」など、患者の意思の表現の仕方にあわせた看護師の行動も記載されていた。他方、

標準看護計画では、感染徴候の観察と対処方法、低視力患者への誘導方法などの日常生活 の援助方法が詳細に記述されていた。

2.NICとの比較

  自 由 記載 型看 護計 画の532種類 の 「具 体策 」をNICの514のラ ベルと比較した 。比較 はラベルの定義に照らし合わせ て該当するか否かで判断した。その結果、272種類の具体 策がNICと 一致、138種類の具体策は不完全一致、122種類の具体策は不一致と判 定され た。 不 完全 一致の具体策とは、2種類以上のNICラベ ルが含まれているもの、NICラベル の定義と一致していると判断する根拠が弱いものなどである。具体策には関連のある複数 の内容が1つの具体策にまとめて記述されているものがある 。これはNICでは別のラベル として定義される。またラベルとの一致の判断根拠が弱いものとしては、何についての疑 問や不安や受け止めかが不明な ど、対象や目的語が省略されているものやNICの定義自体 に解釈の幅があり判断しかねるものがあった。不一致の具体策では、患者の意志を医師に 代弁する行為、問いかけられなければ表現しなぃ患者に対して看護師が気を配って聞き出 したりするような「声かけ」や、その患者特有の条件・希望を反映した内容が見られた。

【考察】

  標準看護計画と比較した結果、看護小目標では違いが少なく、具体策では違いが多かっ た。看護小目標では対象とした疾患の場合「手術を受けて自宅に帰る」という到達すべき 状態には個人差が少ないため、看護小目標に「患者の個別性」を示す表現が少ない。具体 策で違いが多いのは、年齢、合併症など患者の個別の条件に応じた内容が多種多様に含ま れていたためである。到達すべき目標は同じでも療養経過には個人差があり、患者の受け 止めや生活背景、考え方はそれぞれに違いがある。具体策はこの個人差に応じて援助して いくことが必要な部分であり個別性が違いとして表れた。

  具体策とNICとの比較では、一致する具体策は頻度の高い行為であり、頻度の高い行為 を最大公約数的な表現で標準化 しようとするNICの目的に合致していた。不完全一致の具 体策は、1項目に2種の具体策が 含まれるものであり、これは目標達成型思考で自由記載 方式の関連する「A」と「B」という具体策で目標を達成するという並列を許す自由さから 生じている。具体策側の問題としては「何について」の説明や受け止めかが省略されてい るなど曖味な表現等の問題があった。これは自由記載方式の欠点であり、日本語特有の暖 味さが現れたと思われる。また 、NICのラベル定義にも解釈の幅がある用語が使われてお り、具体策の意図が一致するか 否かの判断に迷う項目があった。これはNICが標準化され 抽象化されたために、解釈に幅 が生じたと考える。NICと不 完全一致の項目は、まだNIC に採用されていなぃ行為、NICの母体である米国と医療保険制度や文化的背景が違うため に生じたものが含まれる。NICは看護問題を解決するための具体策として開発されており、

問題ではなぃ「患者の特性」に 対して行う事項は検討されていない可能性が高い。また NICは開発途中であり、不足の項目があることも十分に考えられる。その他「どのように」

行うかという個別の対応は標準化できない部分として残ると考える。テキストマイニング

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による分類をさらに細分化しても分類化が不可能な項目も残る。これは患者の個別性に対 応した部分と考え る。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査    教 授

副 査    教 授 副 査    教 授

櫻井恒太郎 寺 沢 浩 一 前 沢 政 次

学 位 論 文 題 名

目 標 達 成 型 思 考 の 自由 記 載式 看護 計画 と 問 題 解 決 型 看 護 計 画 の 比 較

―テキストマイニングを用いた分析による患者の個別性の記述の有無―

  看 護記 録の 電子 化を行う場合、看護計画につ いては問題解決型思考で標準化されたりスト か ら の 選 択 方 式 を 用 い る 場 合 が 多 い 。 代 表 的 な 方 法 と し て はNANDA(North American Nursing Diagnosis Association)・NOC(Nursing Outcomes Classification).NIC (Nursing Interventions Classifi.cation)による分類を用いる方式がある。北海道大学病院看護部では 患者 の個 別性 を尊 重した計画的な看護の実践を 方針としており、電子化に際しても問題解決 型思 考を 用い ず自 由記載型の看護計画を選択し ている。本研究では、この自由記載式看護計 画の記載における「患者の個別性」を 尊重した表現の有無を明らかにすることを目的とした。

研究 方法 は、 自由 記載式看護計画の記載をテキ ス卜マイニングによるデンドログラムを用い て分 類し 、標 準化 された問題解決型看護計画と 比較してその差異が「患者の個別性」の表現 であ るか 否か を検 討 した 。分 析対 象は2004年1月 〜 12月 に北 海道 大学 病院に「網膜剥離」

で 入 院 し た患 者114名 のう ち 「網 膜復 位術 」を 受け た49名の 看護 計画 とし 、標 準看 護 計画 と の 比 較 、 お よ び 具 体 策 とNICと の 比較 の2段 階の 分析 を行 った 。標 準看 護計 画と の 比較 では 、看 護小 目標 に おい て「 手術 の流 れを イメージできて準備ができる」 等の4項目が自由 記載型看護計画にのみ存在した。具体 策の比較では、自由記載型看護計画では「誰に対して」

「い つ」 「ど のよ う に」 など の条 件の 記載 が付与されていた。NICとの比較では、自由記載 式 看 護 計 画 の532個 の 「 具 体 策 」 をNICの514の ラ ベ ル の 「 定 義 」に 照ら し合 わせ て 該当 す る か 否 かを 判定 した 。そ の結 果、272種 類の 具体 策がNICと 一致 、138種 類の 具体 策 は不 完全 一致 、122種類 の具 体策 は不 一致 と判 定さ れ た。 不完 全一 致の 具体策 とは、2種類以上 のNICラ ベ ル が 含 ま れ て い る も の 、NICラ ベル の定 義と 一致 して いる と判 断す る根 拠 が弱 いも のな どで ある 。不一致の具体策では、患者 の意思を医師に代弁する行為、看護師が気を 配っ て思 いを 聞き 出 す行 為、 など 患者 特有 の条件・希望を反映する内容で あった。NICと一 致す る具 体策 は頻 度の高い行為であり、頻度の 高い行為を最大公約数的な表現で標準化しよ

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うとするNICの目的に合致していた。不完全ー致の具体策は、1項目に2種の具体策が含ま れるものや曖昧な表現があった。また、NICラベルの定義にも解釈の幅がある用語が使われ ている場合があった。これはNICが標準化され抽象化されたために、解釈に幅が生じたと考 えられる。またNICはまだ開発途中であるため不足する項目があるとも考えられる。最終的 に「どのように」行うかという患者の希望・要望などに応じる部分は標準化できない部分と して残る。

  以上の発表に対し、副査の前沢教授より、目標達成型思考と問題解決型思考は補完しあう ものであり、双方のよいところを生かすものではないか、との質問があった。申請者は、補 完する部分についてはこの研究で自由記載文を分析することで、標準化できる部分と、標準 化出来ない部分として明らかになると回答した。さらに、個別性の有無の評価にテキストマ イニング以外の方法を用いなかった理由について質問があった。申請者は、テキストマイニ ングは個別性の有無を明らかにすることが目的ではなく、大量の文章を機械的に分類するた めに用いたと回答した。さらに前沢教授より、目標達成型思考にも欠点があり、感性の鈍い 人などへの教育などの取り組みや現状についての質問があった。申請者は、感性やその教育 に看護計画の分析結果を用いることはむっかしく、感性や技術の差は、看護情報の聞き取り などコミュニケーションに表れると考えていると回答した。っづいて副査の寺澤教授より、

日本語特有の曖味さにっいて日常業務で取り組んでいることがあるかとの質問があった。申 請者は、カンファレンスで看護計画の表現や内容を検討していること、また記録の監査を行 っていると回答した。続いて、保健学科の良村教授より、具体策と看護基準との関連をどの ように考えるかとの質問があった。申請者は、今回の研究では個別性に着目したので看護基 準との比較は行わなかったと回答した。さらに主査の櫻井より今後電子化が普及していく上 での方針にっいて質問をした。申請者は、ケアなど言葉が同じでも施設により解釈の幅が違 う場合が頻繁にあるので、用語の定義を確実にするということが先決と考えると回答した。

また櫻井より、NICの開発が進めぱ、不一致の部分が減るのかそれとも平行線のままかにつ いて質問した。申請者は不一致が減る部分と、平行線のままの部分が残ると回答した。さら に、NICの内容が理解しにくい例は翻訳の問題かNIC自体の問題かとの質問に対して、申 請者は、翻訳の問題と思われると回答した。この点にっいて、良村教授より、NICは翻訳に 携わった人でなけれぱ理解できない部分があり、今回の結果を他の研究者の成果とすり合わ せていけば精密な内容になると思われるとのコメントがあった。

  この論文は、電子化の進む医療記録の中で、患者の個別性と標準化の両立にっいての看護 記録の記載方式のあり方を情報学的手法を利用して解析を試みた点で高く評価され、今後、

北大病院看護部が開発してきた自由記載方式の利点を裏付け普及させることが期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併 せ 申 請者 が博士 (医 学) の学 位を 受け るの に充 分な 資格 を有 する ものと 判定 した 。

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参照

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