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ソウハチ,/ ヾ/ ヾガレイ,アカガレイの 視 覚特性に 関する基礎的研究

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 水産 科 学 ) 松田 圭 史 学 位 論 文 題 名

ソウハチ,/ ヾ/ ヾガレイ,アカガレイの 視 覚特性に 関する基礎的研究

学位論文 内容の要旨

【背景と目的】

  硬骨 魚類 の脳 髄の 形態 およ び眼 の構造と機能は種によって変化に富み,その種の持つ習 性や種固有の生態的地位,外部環境を極めてよく反映する。合理的な漁業を行うためには,

漁 獲対 象と なる 生物 の生 態を 知り ,行動解発の要因となる外部刺激の入カを受け持つ感覚 器に関する知見を得ることが必要である。

  近年 の研 究に よっ て桁 網に 対す る底棲幼稚魚数種の逃避行動や入網行動の違いは採集効 率 に影 響す るこ とや ,ト ロー ル網 に遭 遇し た異 体類 は環境 条件 によって逃避行動(escape behavior),または回避行動(avoidance behavior)を選択し,この反応行動の違いは漁具と魚の 距 離お よぴ 種に 固有 の習 性が 要因 であることが明らかにされてきた。また漁場の光環境に よ っ て も 漁 獲 対 象 魚 の 漁 具 に 対 す る 反 応 行 動 が 変 わ っ てく る こ と が 報告 され てい る。

  魚類 の感 覚生 理学 的研 究は1970年代に漁業研究の一手法として確立された。以来,魚類 の 視覚 特性 にっ いて は数 々の 基礎 研究が行われ,漁具に対する反応行動を説明するための 知見が得られてきている。

  漁具 に対 する 行動 にお いて ,音 響刺激は注意喚起の役割にすぎず,実際に接近する漁具 は 視覚 によ って 初め て知 覚さ れ, 行動にっながるとされている。異体類は無鰾魚であるた め ,行 動解 発に は視 覚に 起因 する ところが大きいと推察される。過去,摂餌生態や生息水 深 など の異 なる 異体 類の 視覚 特性 を比較した研究例は少をく,異体類を対象とした合理的 な 漁 具 , 漁 法 の 立 案 を 目 指 す う え で , 視 覚 特 性 の 解 明 が 必 要 で あ る 。   本研究では北海道噴火湾における重要魚種であるソウハチ(Cleisthenes pinetorum),ババガ レイ(Microstomus.achne),アカガレイ(llippoglossoides dubius)を対象として,その生態およ び 漁具 ーの反応行動特性の究明に基礎的知見を得ることを目的に,3種の視覚特性(視力,

視軸方向,色覚,分光感度)を求めた。

【脳髄の外形と感覚器の特性】

  供試魚を断頭して即殺し,脳髄を観察した。脳髄の形態は plaice type に属すると考えら れ る。 いず れも 他部 位に比 べて 視蓋が膨隆しており,諸感覚器の中で視覚が最も重要であ ると推測される。ソウハチ,ババガレイはアカガレイと比較して嗅球が発達しているため,

索 餌に 関し て嗅 覚の 重要性 も考 えら れる 。小 脳(Cerebellum)は3種とも発達していないた め,運動視より形態視が重要であると推察された。

(2)

【網膜の組織学的特 性からみた視覚特性】

  網 膜 の 組 織 構 造 に つ い て 切 片 を 作 製 し て 調 べ た と こ ろ , す べ て の 部 位 で 単 錐 体 と 双 錐 体 か ら な る 四 方 形 配 列 が 観 察 さ . れ た 。 紫 外 錐 体 で あ る と 考 え ら れ た 付 加 単 錐 体 は, ババ ガ レ イ , ア カ ガ レ イ の 背 側 後 方 部 位 で 最 も 多 く 観 察 さ れ て い る こ と か ら , バ バ ガ レ イ , ア カ ガ レイの視軸方向は紫 外線感度が優れていると推察される。

  ソ ウ ハ チ は 左 眼 が 背 側 に 回 り 込 ん で い る た め , 左 右 眼 で 錐 体 密 度 分 布 に 違 い が 出 る こ と が 予 想 さ れ た が , 分 散 分 析 の 結 果 か ら は3種 と も 左 右 眼 で 有 意 な 差 は 認 め ら れ な か っ た 。 バ バ ガ レ イ は 吻 端 を 中 心 と し て 左 右 眼 の 位 置 は ほ ば 対 称 で あ り , 遊 泳 や 捕 食 行 動 の 際 に 左 右 の 網 膜 で 異 社 る 錐 体 密 度 分 布 を 持 つ 必 要 性 は 無 い も の と 考 え ら れ る 。 ア カ ガ レ イ はf左 右 の 眼 球 の 中 心 間 の 距 離 / 全 長 ) の 値 は ソ ウ ハ チ の0.098に 対 し て バ バ ガ レ イ と 同 じ0.073と 両 眼 が 接 近 し て い る こ と か ら 左 右 眼 の 錐 体 密 度 分 布 に 違 い が な い と 推 測 さ れ る 。 ソ ウ ハ チ の 左 目 は 遊 泳 中 に 真 下 方 向 を 見 る こ と が で き る と 推 測 さ れ る が , 右 目 は 構 造 的 に 真 下 方 向 が 死 角 に な っ て い る 。 ソ ウ ハ チ の 右 眼 網 膜 のdorsal付 近 で の 錐 体 細 胞 密 度 が 疎 で あ る の は , 眼 球 の 位 置 か ら 妥 当 で あ る と 考 え ら れ る が , 左 眼 でdorsal付 近 の 錐 体 細 胞 密 度 が 高 く な っ て い な い の は 眼 球 の 位 置 か ら 考 え て 不 自 然 で あ る 。 し か し , 異 体 類 は 基 本 的 に 泳 ぎ 回 ら な い 魚 種 で あ り , 着 底 し て い る 時 は 真 下 方 向 か ら 敵 に 襲 わ れ る こ と が な い た め , 真 下 へ の 視 野 が 必 要 た い た め と 考 え ら れ る 。 バ バ ガ レ イ , ア カ ガ レ イ の 眼 球 は 構 造 的 に 真 下 方 向 が 死 角 に な っ て お り , 遊 泳 中 に 真 下 方 向 を 見 る こ と は で き な い と 推 測 さ れ る 。   方 向 別 の 視 カ を 全 長 の ほ ば 同 じ 個 体 で 比 較 し た 時 , 視 力 ( 前 方 下 , 前 方 , 上 方) は, ソ ウ ハチ(0.093,0.086,0.127),ババガレイ(0.075,0.089,0.06),アカガレイ(0.109,0.091,0.085) と な っ た 。 こ の 視 カ は 理 想 条 件 の 下 で は , 視 軸 方 向 別 に ソ ウ ハ チ(3.2m,3.Om,4.4m), バ バ ガ レ イ(2.6m,3.lm,2.lm), ア カ ガ レ イ(3.8m,3.lm,2.9m)の 距 離 か ら10mrnの 間 隔 の2 点 を 識 別 で き , 前 方 下 方 向 で は ア カ ガ レ イ は バ バ ガ レ イ に 比 べ て1.5倍 先 , 上 方 向 で は ソ ウ ハ チ は バ バ ガ レ イ に 比 べ て2.1倍 先 で あ る と 考 え ら れ る 。3種 は 両 眼 球 自 体 が 頭 か ら 突 き 出 し て い る た め 前 方 下 , 前 方 , 上 方 の 方 向 に , 視 カ は 発 揮 さ れ て い る と 推 測 さ れ る 。 視 カ が 最 も 優 れ て い る 方 向 が3種 で 異 な る こ と は , 漁 具 の 接 近 し て く る 方 向 に よ っ て 知 覚 で きる距離に影響し, 反応距離も異なってくることが考えられる。

  バ バ ガ レ イ , ア カ ガ レ イ で は ソ ウ ハ チ よ り も 眼 球 の 間 隔 が 狭 く , 両 眼 視 野 は ソ ウ ハ チ よ り も 広 い 。 両 眼 視 は 距 離 が 分 か る た め , 餌 に 狙 い を 付 け , 捕 食 す る に は 有 利 で あ る 。 ソ ウ ハ チ で は 左 眼 が ほ ば 背 側 に 位 置 し て 描 り , バ バ ガ レ イ , ア カ ガ レ イ に 比 べ 単 眼 視野 が広 く , 運動視に優れると推 察される。

【 遠 近 調 節 能 力 】

  水 晶 体 の 移 動 距 離 と 移 動 方 向 を 計 測 し , 遠 近 調 節 能 カ を 調 べ た 。 ま た 焦 点 の 合 う 最 短 距 離NPを 求 め た 。 水 晶 体 の 移 動 方 向 の 平 均 は 正 面 か ら ソ ウ ハ チ で2° 上 方 , バ バ ガ レ イ で13° 上 方 , ア カ ガ レ イ で32° 上 方 と な っ た 。 水 晶 体 が 動 い た 方 向 は 錐 体 最 濃 密 部 位 と 水 晶 体 の 中 心 を 結 ぷ 直 線 で あ る 視 軸(Visual axis)方 向 と ほ ば 同 じ と な っ た。NPは , ソウ ハチ で全 長(TL) の0.87倍 , バ バ ガ レ イ で 全 長(TL)の0.65倍 , ア カ ガ レ イ で 全 長(TL)の1.02倍 と な っ た 。   3種 で 眼 と 吻 端 ま で の 距 離 とNP/TLに は 正 の 相 関 関 係 が あ り , ソ ウ ハ チ で は 左 右 眼 で NP/TLが 異 な り 焦 点 調 節 能 カ は 吻 端 ま で の 距 離 が 近 い 右 目 が 優 れ て い る 。 バ バ ガ レ イ の 餌 は ソ ウ ハ チ , ア カ ガ レ イ に 比 べ て 口 器 の 形 状 か ら も わ か る よ う に 小 さ い も の が 多 い が , バ バ ガ レ イ は 餌 を 捕 ま え る 際 に , ソ ウ ハ チ , ア カ ガ レ イ よ り も 吻 端 近 く ま で 餌 に 両 眼 視 で 焦 点 を 合 わ せ る こ と が で き , ゴ カ イ な ど の 小 動 物 を 的 確 に 捕 ら え る こ と が で き る と 考 え ら れ る 。

    ―1195ー

(3)

【色彩 弁別能カおよび分光感度特性】

  網 膜 の 水 平 細 胞 よ り 導 出 さ れ るS電 位 を 指 標 と し て , 色 覚 と 分 光 感 度 特 性 に つ い て 調 べ た 。 得 ら れ たS電 位 応 答 は ソ ウ ハ チ の543個 の 水 平 細 胞 でLl型(10.3% ) ,L2型(89% ) ,L3 型(O.40/0.),C1型(0.4%),ババガレイの549個の水平細胞でLl型(5.3%),L2型(94.7%),ア カ ガレ イの252個 の水 平細 胞でLl型(16.7%) ,L2型(69.8% ),L3型(1.6%),C3型(11.9%)で あ っ た 。 紫 外 線(336nm,365nm)感 度は すべ ての 応答 波形 で確 認さ れた 。 ソウ ノヽ チ, アカ ガレ イ はC型 が 記 録 さ れ た こ と か ら 色 覚 を 有 す る と 推 測 さ れ る 。C型 か ら ソ ウ ハ チ は470‑493nm に 過 分 極 の ピ ー ク ,597nmに 脱 分 極 の ピ ー ク を 持 ち , 青 色 光 と 黄 色 光 の 対 比 に 優 れ て い る こ と , ア カ ガ レ イ は447‑518nmに 脱 分 極 の ピ ー ク ,646‑694nmに 過 分 極 の ピ ー ク を 持 ち , 青 色 光 〜 緑 色 光 と 赤 色 光 の 対 比 に 優 れ て い る と 考 え ら れ る 。 漁 具 へ の 応 用 と し て は , 刺 網 な ど 魚 に 気 付 か れ な ぃ 効 果 を ね ら う の で あ れ ば , 海 中 で コ ン ト ラ ス ト の 小 さ い 青 か ら 緑 色 が 適 当 で あ り , 光 が 十 分 に 透 過 し て い る 水 深 層 で , 底 建 網 の 垣 網 部 や 底 曳 網 の 袖 網 部 な ど に 視 覚 的 遮 断 効 果 を 与 え る に は ア カ ガ レ イ で は 赤 色 , ソ ウ ハ チ で は 黄 色 が 効 果 的 で あ る と 考 え ら れ る 。 バ バ ガ レ イ は 色 の 判 別 能 カ が 劣 っ て い る と 考 え ら れ る が , 視 覚 的 遮 断 効 果 を 与 え る に は 背 景 色 と コ ン ト ラ ス ト の 大 き い 色 で あ れ ば 効 果 的 と 推 察 さ れ る 。   出 現 頻 度 の 高 いL2型 か ら 網 膜 の 相 対 分 光 感 度 曲 線 を 作 製 し た 。 最 大 感 度 波 長 は ソ ウ ハ チ544nm, バ バ ガ レ イ と ア カ ガ レ イ は518nmと な っ た 。 夜 間 に 光 刺 激 に よ る 駆 集 , 蝟 集 等 の 行 動 制 御 を 行 う の で あ れ ば 光 源 に は ソ ウ ハ チ518nm, バ バ ガ レ イ , ア カ ガ レ イ で は544nm の 波 長 帯 を 用 い る と 海 水 の 透 過 率 も 高 く , 放 射 照 度 当 た り 最 大 の 効 果 が 得 ら れ る と 推 測 さ れ る 。 最 大 感 度 波 長 が ソ ウ ハ チ544nmと な る の は , 生 息 域 が 懸 濁 物 質 の 多 い 沿 岸 域 で あ る た め と 考 え ら れ る 。 バ バ ガ レ イ は ソ ウ ハ チ , ア カ ガ レ イ に 比 べ て 相 対 分 光 感 度 曲 線 の 指 向 性 が 強 か っ た が ソ ウ ハ チ , ア カ ガ レ イ は バ バ ガ レ イ に 比 べ て 活 発 に 遊 泳 す る こ と か ら 広 い 波 長 帯 に 適 応 し て い る た め , バ バ ガ レ イ は 僅 か な 波 長 の 違 い も 感 知 で き る こ と で , 色 彩 に 乏しい 砂泥の中で餌の発見に有利であるためと考えられる。

  本 研 究 で 得 ら れ た 結 果 は ソ ウ ハ チ , バ バ ガ レ イ , ア カ ガ レ イ の 生 態 と 漁 具 ー の 反 応 行 動 特 性 の 究 明 に 基 礎 的 知 見 を 提 供 す る も の で あ り , ソ ウ ハ チ , バ バ ガ レ イ , ア カ ガ レ イ を 対 象 と し た 合 理 的 漁 業 の 立 案 に 貢 献 す る も の と 考 え ら れ る 。

(4)

学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

山本勝太郎 飯田浩二

川村軍蔵(鹿児島大学)

平石智徳

学 位 論 文 題 名

ソウハ チ,ババガレイ,アカガレイの 視覚特 性に関 する基礎的研究

  異 体 類 は 体 が 左 右 不 相 称 で 眼 は 頭 部 の 片 側 に あ り , 眼 球 は 頭 部 か ら 突 出 し て い る 。 本 研 究 は , こ の 異 体 類 の 特 異 を 眼 に 注 目 し , 北 海 道 噴火 湾の 漁業 重要 種で ある ソ ウノ ヽ チ(Cleisthenes pinetorum), ババガレイ(Microstomus achne),アカガレイ(llippoglossoides dubius)を 対 象 と し て , そ の 生 態 お よ ぴ 漁 具 へ の 反 応 行 動 特 性 の 究 明 に 基 礎 的 知 見 を 得 る こ と を 目 的 に , 以 下 の4つ の 視 覚 特 性 に 関 す る 実 験 を 行 っ た も の で あ り , 審 査 員 一 同が高く評価した点は以下の通りである。

1) 供 試 魚 を 断 頭 し て 即 殺 し 解 剖 学 的 に 脳 髄 を 観 察 し ,3種 の い ず れ も 他 部 位 に 比 べ て 視 蓋 が 発 達 し て い る こ と か ら 諸 感 覚 器 の 中 で 視 覚 が 最 も 重 要 で あ る こ と , ま た 小 脳 は3種 と も 発 達 し て い な い た め 運 動 視 よ り 形 態 視 が 重 要 で あ る こ と を 指 摘 し て い る 。 こ こ で 得 ら れ た 解 剖 学 的 知 見 は , 今 後 , 他 の 異 体 類 の 視 覚 特 性 を 考 察 す る 上 で 基 礎 的 な 知見であると評価できる。

2) 左 右 眼 の 網 膜 を 細 分 し た 組 織 切 片 を 作 製 し 網 膜 の 組 織 構 造 に つ い て 調 ベ , す べ て の 部 位 で 単 錐 体 と 双 錐 体 か ら な る 四 方 形 の 錐 体 配 列 を 観 察 し て お り , ま た 紫 外 錐 体 で あ る と 考 え ら れ る 付 加 単 錐 体 を バ バ ガ レ イ , ア カ ガ レ イ の 背 側 後 方 部 位 で 最 も 多 く 観 察 し た こ と か ら , こ の 部 位 で バ バ ガ レ イ , ア カ ガ レ イ は 紫 外 線 感 度 が 優 れ て い る と 推 測 し て い る 。 錐 体 の 最 濃 密 部 位 か ら 求 め た 視 軸 方 向 は , ソ ウ ハ チ で 前 方 と 上 方 , バ バ ガ レ イ で 前 方 下 と 前 方 , ア カ ガ レ イ で は 前 方 下 と な る こ と を 求 め て い る 。 方 向 別 の 視 カ を 全長 のほ ぼ同 じ個 体で 比較 した時,視力(前方下,前方,上方)は, ソウハチ(0.093, 0.086,0.127), ババ ガレ イ(0.075,0.089,0.06),アカガレイ(0.109,0.091,0.085)とな る こ と を 田 村 の 式 か ら 求 め て い る 。 ま た , 左 右 眼 の 距 離 を 全 長 で 割 っ た 値 は , ソ ウ ハ チ で0.098, バ バ ガ レ イ と ア カ ガ レ イ で は0.073と な り , バ バ ガ レ イ , ア カ ガ レ イ で は ソ ウ ハ チ よ り も 眼 球 の 間 隔 が 狭 く 両 眼 視 野 は ソ ウ ハ チ よ り も 広 い こ と か ら , 餌 に 狙 い を 付 け 捕 食 す る に は 有 利 で あ る こ と , ソ ウ ハ チ で は 左 眼 が ほ ぼ 背 側 に 位 置 し て お り , バ バ ガ レ イ , ア カ ガ レ イ に 比 ベ 単 眼 視 野 が 広 く , 運 動視 に優 れる こと を指 摘し て いる 。 こ れ ら の 知 見 は 底 着 性 の 異 体 類 の 摂 餌 生 態 を 考 え る 上 で 基 礎 的 な 知 見 と し て 評 価 で

(5)

きる。また,ソウハチは左眼が背側に回り込んでいるため,左右眼で錐体密度分布に 違いが出ることが予想されたが,分散分析の結果から3 種とも左右眼で有意な差は認 められなかったことを確認しており,このことは異体類の視覚特性を考える上で新し い知見として評価できる。

3

)摘出した水晶体に電気刺激を与えてその移動方向を求め,ソウハチで20 上方,バ バガレイで13 °上方,アカガレイで32 ゜上方となる結果を得ており,この方向は錐体最 濃密部位と水晶体の中心を結ぶ直線である視軸の方向と一致することを確認してい る。また, 水晶体の移動距離から焦点の合う最短距離NP の全長

TL

に対する比はソ ウハチで0.87 ,ババガレイで0.65 ,アカガレイ

1.02

となることを求めており,ババガ レイは餌を捕まえる際に,ソウハチ,アカガレイよりも吻端近くまで餌に両眼視で焦 点を合わせることができ,ゴカイなどの小動物を的確に捕らえることができると考察 している。この知見は,2 )の知見と同様に異体類の摂餌生態を考える上で基礎的な 知見として評価できる。また,これら3 種の眼球運動を観察し,活発に眼を動かすこ とによって左右上下方向に視軸を向け最適な視カを実現させていることを確認して いる。この眼球運動の観察結果は異体類の視覚特性の解明に新たな知見を与えるもの と高く評価できる。

4

)網 膜の水平細 胞より

S

電位を導出 し,最も多く導出された

L2

型S 電位から網膜 の相対分光 感度曲線を求め,生息水深が浅い(200m 以浅)ソウハチは544nm に,生 息水深が深 い(400m 以浅)ババガレイとアカガレイでは518nm に最大感度があるこ とを示している。また,

C

型S 電位が導出されたソウハチは青色と黄色,アカガレイ は青緑色.と赤色に色覚を有すること,C 型S 電位の導出が出来なかったババガレイは 色覚が劣ることを指摘している。ババガレイが色覚に劣るのはその相対分光感度曲線 の指向性が強いことから僅かな波長の違いも感知することで,色彩に対する劣性をカ バーしているものと考察している。これらの知見は漁具設計上重要な知見となること から高く評価できる。

  

以上の成果は,特異な形態を有する異体類の視覚特性に関して基礎的な知見を得た

ものと高く評価できる。よって審査員一同は申請者が博士(水産科学)の学位を授与

される資格のあるものと判定した。

参照

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