西松建設技報VOL.9
∪.D.C.624.191.1∴131.22
泥水特性に関する基礎的研究(その3)
(泥水式シールドにおける礫地盤用泥水の開発)
FundamentalStudyonCharacteristicsofSlurry−Part3−
(DevelopmentoftheSlurryforGravellyGroundinSlurryShield)
斉藤 顕次*
KenjiSait6 広川 文明=■
Fumiaki Hirokawa
平岡 博明…♯
HiroakiHiraoka
佐藤 靖彦=■=Yasuhiko Sat6
野本 寿=
ToshiNomoto 渡辺 徹=
T6ru Watanabe
新藤 敏郎*一‖一義■
Toshiro ShindT,
本研究は,間隙率30〜40%程度(k>5×10 ̄lcm/sec)の礫地盤を対象とした泥水式シー
ルド工法に用いる泥水の逸泥防止対策及び泥水加圧効果の向上を目的として研究開発を
行ったものである。その結果,粘性についてはイールドバリューYVが100dyn/cn2以上 で,また日詰め材としては砂,高吸水性樹脂及びセルロースの混合泥水が比較的良好な結 果を収めた。また,逸泥パターンとしては一度泥壁が形成された後に再貫入するケースが
あることも確認された。本研究は,透水係数が5×10 ̄1cm/sec以上の地山を対 象として逸泥防止及び泥水加圧効果の向上を図り,同時
に泥水特性や逸泥防止剤の有効性を明らかにすることを 目的とした
目 次
§1.はじめに
§2.配合計画
§3.材料選定
§4.浸透実験
§5.まとめ
§6.おわりに §2.配合計画
逸泥防止対策としては,適当な日詰め材を用いること
と,高粘性を保つことが有効とされている。このため次 に示す手順で基本配合設計を行った(Fig.1参照)。2−1対象土質
対象とした土質の粒径加横曲線をFig.2に示す。また,
同土質の室内透水試験で得られた透水係数は5×10 ̄l
cm/sec(間隙率n=29%)であった。
2−2 逸泥に対する検討
泥水材料=ま地盤条件によって制約され,その逸泥有無 のチェックは,注入工法で用いられる粒子ダラウトの適
用限界の式りが利用される。
7
§1.はじめに
透水性の高い礫層に適用する泥水式シールドの泥水は,
逸泥が少ないもの,すなわち加圧効果の高いものが必要
であり,これは切羽の安定に対して不可欠なものと考え
られる。
*技術研究部技術研究所副所長 =
技術研究部土木技術課係長 事=技術研究部技術研究所係長
■一‖−●技術研究部技術研究所 ==■
技術研究部土木技術課
泥水特性に関する基礎的研究(キの3) 西松建設技報VOL.9
材料として笠岡粘土を用いるとG85=0.06叫 G95=
0.12m2)となる。したがって,β15/G85=23,β1。/G95=
8となり,式(1)及び(2)と比較すると逸泥し易い材料であ ることがわかる
このため,配合計画では日詰め材(砂,高吸水性樹脂,
セルロース)の使用を考えた。
2−3 浸透距離の検討
泥水等のビンガム流体の浸透距離は,
Buckingham−Reiner方程式3)から次式で示される。
β=(cm)
(3)ここに, β:浸透距離(cm)
P:泥水庄(dyn/cm2)
ガ:間隙等価半径(cm)
TF:泥水のイールドバリュー
YV(dyn/
cm2)
800・〃・烏
また,斤 ¢m)
(4))′t一・● 〃
q:水の粘性係数(gf・SeC/cm2)
k:透水係数(cm/sec)
γ随:水の単位体積重量(gf/cm3)
乃:間隙率(%)
Fig.3に間隙等価半径斤と泥水の必要イールドバリュー
て/の関係,Fig.4に間隙率乃と間隙等価半径月の関係を
示す。対象地盤についてk=5×10−1cm/sec,n=29%とし,また符=1×10 ̄5gf・SeC/cm2,γw=1.Ogf/cm3
(2〔忙)とすると式(4)から斤=0.012cmが得られる(Fig.
4参照)。さらに,泥水圧P=250×980dyn/cm2,R=
0.012c叫 ゼ=10cmとして式3)から必要YVを求めると,
T,=73.5dyn/cm2となる(Fig.3参照)。
2−4 土粒子保持の検討
泥水の土粒子保持に関しては,Weiss4)により次式が 提案されている。
βぴ=3/2・り・打/(笹−γJg (00)(5)
ここに,βⅣ:泥水中に保持される土粒子の限界径
(cm)
笹:土粒子の密度(gf/cm3)
竹:泥水の密度(gf/cm3)
g:重力加速度(cm/sec2)
一方,TerzaghiやH.Muller−Kirchenbauer5)によれ ば,限界径βひと切羽土層の粒径加積曲線のβ15が関係づ
けられ,
β.5≦(5〜8)βひ (6)
のとき,限界径丑逐保持する泥水は切羽の崩壊を防止で
Fig.1泥水配合検討フローチャート
00錮80m60504030201000
1
︵㌔︶ 徴︷ご−苗毒麺
0.1 1−0 10.0
粒 径 β(m)
粗 砂 柵 砂 シ ル ト
0.074 0.42 2.0 4.76 Fig.2 対象1二質の粒径加積曲線
75
β15/C85≧15
β10/G,5≧8
ここに,β15トDlO:土の粒度試験より求めた粒径加積 曲線の15%径と10%径 G85,G95:ダラウト材料の粒度試験より求
めた粒径加積曲線の85%径と
95%径
Fig.2よりβ15=1.4仙叫刀.0=0.97Ⅷであり,基本泥水
8
泥水特性に間する基礎的研究(その3)
西桧建設才支報VO」.9
験結果をFig.5,6にYVとろ過水量の関係で表した。こ れらの結果から,塩分混入によるろ過水量への影響の少 ない妙義ベントナイトを選定した。
Tablel使肘添加剤
O nU O nU l リ︼
︵N∈三t−−音︶︑し
涼 加 剤 品 名 効 果 ・ 特 性 増 村j 剤 TP30 泥塔形成什が良く、耐l萄什、耐塩什に憧れる クニーモス クニゲルⅤ=泥水改質剤 逸泥防Il二剤 抄 =詰め効果 KTシール 綿花及強化スフを成分とし、分散性が人きい スミカゲル S50 高吸収性樹脂 hナ 揮(剤 テルフローE セメント、塩分によるi−i染のr・防、改三毛i
0.01 0.02 0.03 0.04 0.05
斤(cm)
Fig.3 問憬等イ肘半径月と泥水のイールド バリュー りの関係
凡 例(塩分0%)
ベントナイト ii己り・
クニゲルVl ○ 妙 義 △
0 0
1
︵UU︶ ︼−I■号瑠正
脊。
血色 瓜 C o △
0 100 200 300 400 YV(dyn/crn2)
Fig.5 イールドバリュー YVとろ過水星 の関係(塩分0%)
500
0 10 20 30 40 50 60
=l膝率〃(%)
Fig.4 間隙率〝と間隙等価半径斤の関係
きることが実験的に確認されている。
したがって,対象上層のβ15=1.4伽皿を式(6)に代人す るとβひ=0.3mmとなる。日詰め材として限界径のJ倍程 度の砂の混入を計画すると♪ぴ=1mm程度の保持力りカ冒
必要となる。
式(5)にDv=1mm,yk=2.65gf/cm3,rf=1.20gf/cm3を 代入すると,Tf=30dyn/cm2となる。
2−5 必要粘性の決定
2−3および2−4の検討から,粘性の高い値を取る
とTF=73.5dyn/cm2となる。したがって,配合計画に当7:ってはYV=73.5dyn/
cm2=15.41b/100ft2£L上の泥水を目標とした。
凡 例(粘分1%)
ベントナイト .i己り・
クニゲルVl ○ 妙 義 △
0 5
︵︺U︶⁚等号尋吋
0
0 宅 0
41C O
△ 色 △
200 300 400 500
0 100
YV(dyn/cTn2)
Fig.6 イールドバリューYVとろ過水量 の関係(塩分1%)
§4.浸透実験
4−1 泥水配合
泥水配合に当たっては,Table2に示す基準を設け配 合泥水を選定した。
4−2 浸透実験結果
選定された泥水について浸透実験2)を実施し逸泥の判
定をした。逸泥状態を3パターンに分け,その例をFig.7
〜9に示右Fig.7の逸泥の場合では,溢水量の勾配が小 さくならず,3筒所の間隙水圧が上昇している。Fig.8の
§3.材料選定
粉末粘土だけの泥水は,ろ過特性等において劣るため ベントナイトの添加を計画した。また,所要の特性を得
るためTablelに示すような増粘剤,逸泥防止剤および 分散剤等の添加剤を加えた。
対象地盤の地下水には塩分が1%程度含まれるため,
塩分混入による特性の変化を調べ,ベントナイトの選定 を行うこととした。各種の泥水配合を行い,その泥水試
泥水特性に関する基礎的研究(その3) 西松建設技報VOL.9
Table2 泥水特性基準 示す。YVが100dyn/cm2以上で逸泥がほぼなくなってい る。図中の黒ヌキは砂を添加せず増粘剤だけを添加した 泥水であり,かなり大きなYVを持たないと逸泥を防ぐ
ことはできない。砂を日詰め材として用いた泥水では,
それ以外に高吸水性樹脂等を添加した混合泥水が比較的 良好な結果を得た。
比 重 1.10→1.25 Y V 151b/100ft2程度 ろ過特性 20cc以下(塩分堀人後)
比重安定度 90%以上
(CC)(kgf/cm2)
卜﹂1﹂一1卜一1.一﹂■﹂卜1111
5 4 3
0 0 0
0 0 nU
O O O
O O O
5 4 3
溢水号//
_・・一・−ノ / / 泥水庄
5 0 5 2 2 1
0 0 0
︵N∈U\顎こ 壬﹂ ﹄
︵訳︶ 掛川こ巳q雇腫
0 ハリ O O O 2 4 エリ OO ハリ l爪U 5 1 0
0 0
0 1 2 3 4 5 6
経過時間(分)
Fig.7 浸透実験結果(逸泥の場合)
1 2 3 4
経過時間
、Fig.10 有効加圧率の説明
5
(CC)(kgf/cm2)
◎ 逸泥なし
○ 再貴人の場合
△ 逸泥
(黒ヌキは砂分無添加)
0 0
5 4 0 0 0 0 0 nU
溢水量 / /
・・一一・−・・l
3000Pt3「
泥水庄 / /
㊥●
2000lO 2 1000れ1
0 1 2 3 4 5 6
経過時間(分・)
Fig.8 浸透実験結果(再貴人の場合)
0 0 2
︵N碧\亡ゝp︶ Aト
◎
△
(CC)(kgf/cm2)
KTr_ル≠ 什 亨 帥 5W c≠
5000
4000
3000
2000
1000
△ △
溢水量 間隙水圧(上)
35 間隙率犯(%)
0 1 2 3 4 5 6
、 経過時間(分)
Fig・9 浸透実験結果(逸泥しない場合)
Fi!‖1浸透実験結果(間隙率州とYVの関係)
また,溢水量¢と間隙率稚から泥水浸透距離を換算し,
温水量の時間変化量とi式部巨離換算値の関係(d(フ/d′
〜ゼ曲線)を逸泥の有無別にFig.12,13に示す。逸泥の 有無によらずd(∋/dgのピーク値は同程度であるが,逸 泥する場合には,ピーク後dQ/dtが0に収束せず一定値 を保って溢水する。このように,d(∋/d f〜ゼ曲線は間 隙水圧の変動とともに逸泥判定指標の一つとなる。
再貫入状態では一度減少した間隙水圧が再び上昇する。
Fig.9の逸泥のない場合では,間隙水圧が減少し溢水量 の増加もなくなり,有効加圧率が100%に近づく。ただ
し,ここで有効加圧率はFig.10に示されるように定義さ
れ,対象地盤に対する泥水の加圧効果の程度を表す。
浸透実験結果を間隙率乃とYVとの関係でFig.11に
10
泥水特性に関する基礎的研究(その3)
西松建設才貴報VO」.9
の卜屑での実験となったが,k>5×10.1cm/secの地盤
ではYVが100dyn/cm2以上で逸泥はなく有効加圧率が
100%に近づく。
2)浸透実験から,逸泥のパターンは大別すると2つに
分けられる。1つはまったく泥膜が形成されず逸泥する パターンと,もう一つは1度i闇莫が形成された後,有効
加圧率の増加に伴い泥水が再貰入するパターンである。3)逸泥の有無によらず泥水加圧直後の溢水量は同程度 であるが,逸泥する場合にはd¢/dJが0に収束せず一 定伯を†某って溢水する。
4)榊牒率の人きい礫層では,逸泥防止剤は単一で使用
するよりも,裡数の添加による混合泥水が,定性的では
あるが,良い縦果を得ている。また,高吸水性樹脂は吸水すると弾力のある粒状となるため,間隙になじみ易く,
ll.言.fiめ柑として有効な働きをする。
温水量の時間変化量 dO/d t(cc/sec)
0 50 100 150
︵‖U l
︵∈︒︶ 干撃嶽汝道警宰澗望
§6.おわりに
本研究は礫地盤に泥水式シールドを採用する現場を対 象に泥水の逸泥防IL対策と有効加圧率の向上を目的とし て実験を行った。現在,工事は進行中であり室内実験と
の対比を十分に行えないが,今迄の掘進では逸泥等もな
く順調に推移している。
参考文献
1)例えば,土質工学会:地盤改良の調査・設計から施 工まで,pp.271,1978.
2)斉藤 他:泥水特性に関する基礎的研究,西松建設
技報 VoL 8,pp.10−1軋1985.3)島田・兼松:現場技術者のための薬液注入工法,コン
ストラクション,第11巻1号,1973.
4)Weiss:Die standsicherheit Flussigkeitsgestut−
Zter Erdwande,Bauingerieur−Praxis,Heft70,
Verlag von Wilhelm Ernstu.Sohn,Berlin−
Munchen,1967.
5)Muller−Kirchenbauer:Stability of slurry
trenchininhomogeneoussubsoil,第9回国際土質
基礎会議,SeSSion3,東京,1977.
Fig.12 dQ/d t一旦曲線(逸泥の場介)
温水量の時間変化量 dQ/d t(cc/sec)
0 50 100 150
‖ l
︵∈︒︶ 言草琳華考量瑠嘲叫
Fig・13 dQ/d t〜ゼ曲線(逸泥しない場介)
§5.まとめ
礫地盤用泥水の研究開発から明らかになった事項は以 卜のとうりである。
1)浸透層の構造上,宰l句透水試験よりも大きな間隙率
11