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ノルアドレナリン長期投与ラットにおける心筋細胞膜

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 佐 藤 勝 彦

学 位 論 文 題 名

ノルアドレナリン長期投与ラットにおける心筋細胞膜

B受容体〜アデニレ―トサイクレース系の変化

学位論文内容の要旨

    I研究目的

  従来より、高齢者や慢性うっ血性心不全患者ではカテコラミンに対す る反応性が低下していることが報告されている。これらの患者において は血中カテコラミンの増加が認められることから、慢性的なカテコラミ ン刺激による心血管系の脱感作が、反応性低下の機序に関与していると 考えられてきた。近年、動物実験の結果から、脱感作状態においては細 胞膜カテコラミン受容体数の滅少のみならず、受容体刺激を触媒蛋白に 伝達するGTP結合蛋白(G蛋白)にも変化を生じているとの報告が数多く なされているが、G蛋白の変化に関する報告は、用いた実験系により様 々であり、現在なお意見の一致をみていない。本研究の目的は、高齢あ るいは慢性心不全状態を想定して、血行動態や代謝系に影響を与えない 程度の少量のノルアドレナリン(NA)をラットに持続投与し、心筋細胞 膜ロ受容体〜アデニレ一卜サイクレース系(AC系)の各構成要素(受容 体、G蛋白、触媒酵素)に如何なる経時的変化を生ずるかを検討するこ とにある。

    H方法

  対象は雄性Wistar Kyoto Rat(WKY:20週齢、体重約380g)を用いた。

ラット背部皮下に植え込んだAlzet社製浸透圧ポンプによりNAを持続的 に投 与した (投 与量0. 25pg/kg/min) 。投 与期間 によ り3日 、7日、

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14日投与群 の3群にわけた 。また、生理 食塩水を14日間投 与した群を対 照 とし た (各 群6匹) 。 投与 前 、投 与 開始 後3、7、14日目 に体重、血 圧、心 拍数を測定し た。血圧は無痲酔下にTail―cuff法で測定した。各 薬物投 与後、断頭、 開胸し、心臓を切り出した。大血管、左右心房を切 り放し 、左右両心室 重量を測定した 後、4℃のりン 酸緩衝液に浸し、ポ リト口 ンでホモジェ ナイズレた後、遠心分画法により心筋細胞粗膜標本 を作製 した。ロアド レナリン受容体(ロAR)の密度(Bmax)、解離定数   (Kd)は、ロARの放射性アンタゴニストである ̄2°I―cyanopindolol(IC YP)と粗膜 標本との結合 実験により求めた。粗膜標本を適量のコール酸 とイン キュペー卜し た後、超遠心分離し、その上清をコール酸抽出物と した。3 P―NADの存在下にコール酸抽出物と、コレラ毒素または百日咳 毒素を反応させ(ADPーリボシル化反応)、反応液のRI量からそれぞれ促 進性G蛋白(G.)、抑制性G蛋白(Gi)のロサプュニット量を求めた。ま た、それぞれの反応液をSDSーポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動 し(SDS−PAGE)、引き続きオートラジオグラフィーを行った。アデニレ ートサ イクレースの 酵素活性(AC活性)はa3 P−ATPを含む緩衝液に種 々の薬物(Isopro terenol、GTP、GTPアS、Forskolinそれぞれ100ルM)を 添加し 、粗膜標本と インキュペート後、生成されたcAlIP量をSalomonら の 方 法 に よ り 算 出 し た 。 蛋 白量 は、 ア ミノ プ ラッ ク 法に て 求め た。

    m結果

1)体重、血圧、心拍数、心室重畳:薬物投与開始から投与終了時まで、

各群と も対照群とほ ぼ同様の体重増 加を示レた。 また投与開始後、3、 7、14日目の 血圧、心拍数 も対照群と有 意差を認めなか った。断頭時の 体重あ たりの両心室 重量は各群で有意差がなく、NA14日間では心肥大は 形成されなかった。

2)ロア ドレナリン受容 体:ロARの密度 (Bmax)は、対照群、3、7、14 日投与 群でそれぞれ70.7土6.2、51.4土5.8、41.5土7.2、49.5土8.2

(fmol/mg protrein)であり、3日投与群から有意に滅少し以後低値を維

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持 し た 。 一 方 、 解 離 定 数 (Kd)は 各 群 間 で 有 意 差 を 認 め な か っ た 。 3)促 進 性GTP結 合 蛋 白 質 (G。 ) : コレ ラ 毒素 に よりADPリ ボ シル 化 され G, をSDSPAGE、オ一卜 ラジオグラ フィ―で解 析した結果 、ラット心 室 筋 に は45KD47KD52KD3種 類 のaサ ブ ュ ニ ッ ト が 存 在 す る こ と を 確 認 し た 。 そ の 総 量 は 、 対 照 群 、3714日 投与 群 でそ れ ぞれ1. 720 0. 261、1.413土0.273、1.773土0.0421.774土0407(pmol/mg protein で あ り 、3日 投 与 群 で 滅 少 す る 傾 向 を し め し た が 有 意 差 は な か っ た 。 4) 抑 制 性GTP結 合 蛋 白 質 (Gi) : 百日 咳 毒素 に よりADPリ ボ シル 化 反応 を 行 っ た 結 果 、Giaサ プ ュ ニ ッ ト は、 オ ― トラ ジ オグ ラ フィ ― 上、40 KDの 単 一 バ ン ド と し て 検 出 さ れ た 。 そ の 量 は 対 照 群 、3714日 投 与 群でそれぞれ6 0200.844、6.170土0741、8076土1.2507.370 1 182pmol/mg protein)であ り、7日 投与群で有 意に増加しており、14 日投与群でも高値を維持していた。

5)アデ ニ レ― ト サイ ク レー ス 活性 :Isoproterenol( ロARに 作用 ) 、GTP 7S (G.、Giに作 用 )、Forskolin (ACの 触 媒蛋 白 に直 接 作用 ) 存在 下 で AC活 性 は 、 い ず れ も3日 投 与 群 か ら有 意 に 低値 を 示し 、 以後14日 投 与 群まで低値を維持した。

    ′IV考察

  本 研 究に おけるNA投 与量は、血 圧や心拍数 を上昇させ ない、.い わゆる subpressor doseに 設 定 し た 。 こ の 結 果 、投 与 期間 を 通し て 対 照群 と ほ ぼ 同 様の 体 重増 加 が得 ら れ、 他 の代 謝 系に お よぱ すNAの 影 響は 少 なか っ た と 思 わ れ た 。 こ の 少 量 のNA持 続 投 与に よ ルロAR密度 は 投与3日目 に お い て既 に 有意 な 低下 を 認め 、 以後14日目 まで 低値を維持 した。G;量は有 意 で は な い が 投 与3日 目 で 一 過 性 に 減 少 、Gi量 は 投 与7日 目 よ り 有 意 に 増 加 し 以 後 高 値 を 維 持 し た 。 ま たAC活性 は 投与3日 目で 既 に有 意 に低 下 し 始 めて い た。 慢 性的 な カテ コ ラミ ン に対 す る心 血 管系 の 脱 感作 を 引き 起 こ す 機 序 に つ い て は 、Lefkowitzら が、 カ エル 赤 血 球に お いて 脱 感作 現 象 と細 胞 膜受 容 体現 象 との 強 い相 関 を示 し たこ と を報 告 し て以 来 、様

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々な脱感作モデルあるいは病態モデルを用いて研究されてきた。また、

近年では受容体のみならず効果器である触媒蛋白活性、さらにそれに刺 激を伝達するG蛋白についてもその機能的、構造的変化が注目されるよ うになった。シチメンチョウ赤血球におけるカテコラミン脱感作や肝細 胞におけるプロスタグランジン脱感作ではG。量は変化しないが、その活 性の低下が報告されている。また培養腎細胞を用いた実験では、グルカ ゴンによる脱感作で、Giの総量が有意に増加していることが報告されて いる。さらに、病態における変化として、高血圧自然発症ラットでは、

G.の量的変化を来 さずにその活性が低下しているとする報告や、ヒト不 全心において40KDのGiが健常心に比して有意に増加していたとする報告 がある。これらの病態における変化はいずれも過剰の内因性カテコラミ ンによる脱感作状態によるものと考えられている。本研究においてラッ トに少量のNAを持続投与することにより、不全心と同様の心筋細胞膜情 報伝達系の変化が観察された。さらに、その変化の出現時期は各構成要 素で異なることが判明した。すなわち、過剰のカテコラミン刺激が持続 すると、まず受容体密度の減少、触媒酵素活性の低下が生じ、刺激の受 容( Input)と細胞内での効果発現(Output)がほぱ同時期に抑制され る。さらに過剰刺激が持続すると、受容体―触媒酵素間の刺激伝達を担 うG蛋白にも変化(G,の減少、Giの増加)が生じ、全体として細胞外か らの過剰刺激の細胞内への伝達を抑制する方向へ変化することが示され た。今後はG蛋白の機能的変化に関する検討も必要であると思われた。

    V結語

  少量のNAを持続的に投与したラット心筋細胞膜におけるAC系各構成要 素の経時的変化を検討した。ロ受容体密度、アデニレ←トサイクレース 活性は3日投与群において既に低下レ、以後低値を維持した。G;量は3 日投与群で一時的に減少する傾向がみられた。Gi量は7日投与群で有意 に増加し、以後高値を維持した。以上より、心筋細胞膜情報伝達系全体 としては、過剰刺激の伝達を抑制する方向に変化することが示された。

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    北 畠    顕 副 査    教 授    斉 藤秀 哉 副 査    教 授    本 間研 一

学 位 論 文 題 名

ノ ル ア ド レ ナ リ ン 長 期 投 与 ラ ッ ト に お け る 心 筋 細 胞 膜 ロ 受 容 体 〜 ア デ ニ レ ー ト サ イ ク レ ー ス 系 の 変 化

に あ る 。

【 方 法 】20週 齢 の 雄 性WKYラ ッ ト の 背 部 皮 下 に 浸 透 圧 ポ ン プ を 植 え 込 み 、 こ れ に よ りNA025gkg/min) を 持 続 投 与 し た 。 投 与 す る 期 間 に よ り 、3 日 間 、7日 間 お よ び14日 問 持 続 投 与 群 の3群 に 分 け た 。 生 理 食 塩 水 を14日 間 持 続 投 与 し た 群 を 対 照 群 と レ た ( 各 群6匹 ) 。 投 与 終 了 後 断 頭 し 、 両 心 室 を 切 り 出 し 、 ホ モ ジ ェ ナ イ ズ 後 遠 心 分 離 法 に よ り 心 筋 粗 膜 標 本 を 作 成 し た 。 ロ ARの 密 度 お よ び 親 和 性 は 、 エz5Icyanopindololに よ る 受 容 体 結 合 実 験 の 結 果 か ら 求 め た 。 促 進 性 お よ び 抑 制 性G蛋 白 のaサ プ ユ ニ ッ ト は 、  3PNAD 在 下 で 、 粗 膜 標 本 の コ ー ル 酸 抽 出 物 と コ レ ラ 毒 素 お よ び 百 日 咳 毒 素 を そ れ ぞ れ 反 応 さ せ (ADPリ ボ シ ル 化 反 応 ) 、 反 応 生 成 物 を オ ー ト ラ ジ オ グ ラ フ ィ ー で 表 し 、 さ ら に フ ィ ル 夕 ― ト う ッ プ 法 に て 定 量 し た 。AC活 性 は 、  3 P‑ATP 含 む 緩 衝 液 に 種 々 の 葉 物 (Isopro terenolGTPGTP7SForskolinそ れ ぞ 100皿 醯 ) を 添 加 し 、 粗 膜 標 本 と イ ン キ ュ ペ ― ト 後 、 生 成 さ れ たcAUP量 を

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3日 間投与群で 既に有意に減少レ、以後14日間投与群まで低値を維持した。

親和性に 関しては、 各群間に有 意差を認め ず、ロARの質的変化は生じなか ったと考 えられた。 促進性G蛋白のaサブユニ ッ卜はオートラジオグラフイ ーの結果 、分子量42KD、47KD、52KDの3種類が存在し、その総量は、有意で はないが 、3日 間持続投与群で一時的に減少する傾向を示した。一方、抑制 性G蛋 白 のaサ ブュ ニ ット は 分子 量40Kdの1種 類のみであ り、その総 量はN Aの7日間持 続投与によ り、対照群 に比して有 意に増加し、14日間持続投与 群においても高値を維持していた。AC活性に関しては、触媒蛋白に直接作用 するForskolin刺激におい て、3日 間持続投与 群で既に有意に低下しており 以 後14日間持 続投与群ま で活性抑制 が認められ た。ロAR、G蛋白レベ ルを 刺激した 場合も同様 の傾向を示 した。以上 の結果から、少量のNAにより持 続的に口 刺激を与えた場合、心筋細胞膜において、まず早期の段階で、ロA R密 度の滅少とAC活 性の低下が 生じ、刺激 の受容(Input)と効果の発現(

Output)がほ ぼ同時期に抑制され、さらに長期に刺激が持続すると、受容体 一触媒蛋 白間の情報 伝達を担うG蛋白 にも変化(促進性G蛋白の減少、抑制 性G蛋白の増加 )が生じ、情報伝達系全体として過剰刺激の伝達を抑制する 方向に変化することが示された。

  口頭発表 の審査会に おいて、斉 藤教授より 、NA投与量の設定について、

高齢者において血中カテコラミンが増加する機序について、本間教授より、

NA投与中の 心機能の変 化について 、血行動態 に影響がなかったにもかかわ らず、ロA‑Rが滅少した機序について、剣物教授より、これらのAC系の変化 は可逆性 であるか否か、G蛋白の機能的変化についての考察、古館教授より KIBGとICYPの結合特 性の違いに ついて、さ らに管野教授より、NA持続投与 に よるd受容体、Gq蛋 白に対する 影響につい てなどの質 問がなされ た。こ れらに対し、申請者は概ね妥当な回答を行った。その後行われた斉藤本間両 教 授 と の 諮 問 に お い て も 、 概 ね 妥 当 な 回 答 が な さ れ た 。     本研究は 、NAの持続投 与により、 従来報告されているロ受容体の減少の みナょらず、早期にはAC活性の低下を伴い、さらに長期にわたるとG蛋白レベ ルでの情報伝達抑制が生じる可能性を示したものであり、有意義な研究と考 えられ、学位授与に値する。

参照

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