76 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(22) フジ タ ナオ ヤ藤田直也(昭和3
博士(医学) 乙第1368号平成5年4月16日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
Chronic e仔ects of metoprolol on myocardia1β・adrenergic receptors in doxorubicin・induced cardiac damage in rats (アドりアマイシン障害心におけるメトプロロールの心筋細胞膜β受容体に およぼす影響) (主査)教授 細田 瑳一 (副査)教授 重田 帝子,東間 紘論文 内 容 の 要 旨
目的 心不全患者に対するβ遮断薬の投与は禁忌である とされてきたが,近年,長期β遮断薬の投与は拡張型 心筋症の患者の心機能を改善するとの報告がある.一 方,アドリアマイシンンはその副作用に心筋障害があ ることが知られている.今回,この副作用を利用して ラットに心筋障害を作製し,さらにβ遮断薬長期投与 の障害心における心筋細胞膜β受容体,ノルエピネフ リン動態,および心機能におよぼす影響について検討 を行った. 方法 ラット(n=22)の尾静脈よりアドリアマイシンを3 mg/kg/週×5週を投与し,最終投与1週間後にM群 (メトプロロール10mg/kg/日:持続皮下注;n=11), D群(生理食塩水持続皮下注;n=11)の2群に分け た.さらに3週間後にカテーテルにて心内圧を測定後, 心臓を摘出し,心室筋を1-125iodocyanopindololを用 いてradioligand binding assayにて心筋細胞膜β受 容体を測定した.また,血中,心筋ノルエピネフリン をHPLC法にて測定した.対照群として同週齢のラッ ト(C群;n=11)を用いた. 結果 アドリアマイシン投与群(D,M群)では胸水の貯 留を認め,光顕所見では心筋の肥大,問質の変性,繊 維化を認めた.D群では, C群に比しβ受容体(fmol/ mg protein)の低下,血中ノルエピネフリン(ng/ml) の増加を認め,β受容体のdown-regulationを認めた が,M群では,共にD, C群の中間値を示した(β受 容体:C群;66+5,D群;46±9, M群;57±8,血中 ノルエピネフリン:C群;0.4±0.3,D群2.2±1.3,M 群;1.0±0.6).心筋ノルエピネフリン(ng/g)は, D 群では低下していたが,M群では, D群に比し増加し ていた(C群;697±105,D群;372±92,M群;495± 87).左室拡張終期圧(mmHg)はD群では上昇してい たが,M群ではD, C群の中間値を示した(C群; 5.2±1.2,D群;14.0±2.8, M群;8.5±2.1). 考察 ラットのアドリアマイシン障害心モデルは病理所 見,血行動態,血中,心筋ノルエピネフリン動態より,慢性心不全モデルと考えられた.心筋β受容体の
down-regulationのメカニズムは,少なくとも血中ノ ルエピネフリンの上昇によるものと思われ,心筋ノル エピネフリン低下の機序はノルエピネフリンの放出, 枯渇が考えられた.心不全におけるβ遮断薬の有効な 心筋β受容体のup-regulationによるカテコラミンに 対する反応性の改善,カテコラミンからの心毒性の保 護効果,心臓拡張期コンプライアンスの改善などが考 えられているが,今回の実験でもこれらのメカニズム が心機能を改善したものと考えられた. 一682一77 結論 ラットのアドリアマイシン障害心モデルはヒトの心 不全と同様の血行動態,生化学的変動を示した.さら にメトプロロール長期投与にて心筋細胞膜β受容体 のup・regulationおよび心機能の改善を認めたことよ り,β遮断薬の心不全における治療薬となりうる基礎 的傍証を得た.