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カブトムシ幼虫の体重と頭幅の性差間比較

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Academic year: 2021

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伊丹市昆虫館研究報告 第 4 号 2016 年 3 月

カブトムシ幼虫の体重と頭幅の性差間比較

田中良尚

伊丹市昆虫館

Sex differences in body weight and diameter of head cap,

in larva of Trypoxylus dichotomus septentrionalis

(Coleoptera

: Scarabaeoidea)

Yoshinao TANAKA

Itami City Museum of Insects

(2016 年 3 月 10 日受理) はじめに     昆虫類は同種内における性的二型をもつ種が多く、特 に闘争の際の用途として発達した器官を獲得したカブト ムシ類やクワガタムシ類などでそれは顕著である(間瀬 ら , 2015)。日本産のカブトムシも例外ではなく、成虫 では雄の頭部に体長に比して巨大な頭角が備わっている が、一方の雌の頭部には小さい突起が認められるのみで ある(岡島・荒谷監修 , 2012)。しかし頭角をのぞいた 雄の体長は、個体差が非常に大きい種ではあるものの、 雌の体長と比較すると差がほぼ無い(羽馬 , 2015; 桐谷 , 2012)。では、幼虫時の体重および頭幅に雌雄差はある のだろうか。意外にも、現在その点について報告してい る先行事例はない。  以上の疑問を調べる好機が、伊丹市昆虫館友の会の催 事で訪れた。カブトムシの幼虫を堆肥の中から掘り出す という内容で、多数の会員が参加した催事である。その 催事により多数のサンプルを得ることができたので、以 下より先の疑問に対する回答を記述したい。 調査方法  2015 年 3 月 21 日、昆陽池公園(所在地:兵庫県伊丹 市昆陽池 3 丁目)内において、地面の上に直接小山状に 盛られた剪定枝発酵堆肥中から、カブトムシ日本本土亜 種(Trypoxylus dichotomus septentrionalis) の 幼 虫 を 採取した(図 1)。採取した幼虫は、外見上で雌雄を判別 し(図 2)、体重ならびに頭幅(頭頂部から口器を結ぶ線 に対し直角に交わる線の最長部 , 図 3)を計測した。体 重の計測には電子計量器(㈱タニタ製 , デジタルクッキ ングスケール KD-320:計測単位 0.1g)、頭幅の計測に はステンレス製直尺(シンワ測定㈱製:計測単位 0.5mm) を用いた。 問い合わせ先 〒 664­0015 伊丹市昆陽池 3­1 伊丹市昆虫館        e-mail:[email protected] 図 1 幼虫の採取状況

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14 田中良尚 結果  採取できた本種の幼虫は 198 頭、全て終齢幼虫であり、 そのうち雄は 113 頭、雌は 85 頭だった。  雄の体重は 20.6-43.3g の範囲で 32.0 4.08g(平均値 標準偏差、以後同)、頭幅は 10.0-12.5mm の範囲で 11.4 0.54mm であり、体重と頭幅には正の相関があっ た(相関係数 0.55)(図 4)。雌の体重は 15.9-26.9g の 範囲で 22.5 2.61g、頭幅は 9.5-11.5mm の範囲で 10.7 0.51mm であり、こちらも体重と頭幅には正の相関 があった(相関係数 0.57)(図 5)。雌雄間での体重お よび頭幅については、それぞれ有意な差が認められた (p<0.05)(図 6, 7)。 考察  サンプルを採取した昆陽池公園には本種が生息してお り、公園内の腐植質を発生源としているほか、人工的な 図 2 カブトムシ幼虫の雌雄判別箇所(左:雄 , 右:雌)    雄には第9腹節の腹側に V 字状の紋が見られる    (黒丸で示した部位) 図 3 頭幅の計測位置( 部) y = 0.0732x + 9.0142 8 9 10 11 12 13 10 15 20 25 30 35 40 45 50 y = 0.1114x + 8.1462 8 9 10 11 12 13 10 15 20 25 30 35 40 45 50 頭幅(mm) 体重(g) 図 4 カブトムシの雄幼虫の体重と頭幅 頭幅(mm) 体重(g) 図 5 カブトムシの雌幼虫の体重と頭幅 10 15 20 25 30 35 40 45 体重(g) 雄       雌 図 6 カブトムシ幼虫の体重の雌雄間比較 *箱の上辺は第3四分位値、内部の横線は中央値、底辺は第1四分位値 8 9 10 11 12 13 雄       雌 頭幅(mm) 図 7 カブトムシ幼虫の頭幅の雌雄間比較 *箱の上辺は第3四分位値、内部の横線は中央値、底辺は第1四分位値

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15 カブトムシ幼虫の体重と頭幅の性差間比較 発生源を設置するだけでも自然に発生する。今回サンプ ルに供した幼虫は環境面および餌条件の面で差が出ない よう、至近距離にある堆肥中から出てきたものだが、同 性内での体重の最低値と最高値では雌雄とも 2 倍程度 の差があった。この理由については、産卵された時期 が異なっていることが指摘されている(Plaistow et al. ,2005)。  幼虫の頭蓋は他の部位と比較して硬く、伸縮性が低い。 このため終齢幼虫の頭幅は亜終齢幼虫の体サイズの影響 を受けていると考えられ、それが体重と頭幅の相関性と して表れている可能性がある。尚、野外では幼虫の成長 は 11 月までに終わる(Plaistow et al. ,2005)とされて いるため、調査日以後、体重および頭幅については劇的 な変化が生じていないと考えられる。  今回、本種の幼虫を対象とした調査で、雌雄間では雄 の方が重く、頭幅についても雄の方が大きいことが明ら かとなった。本調査では、成虫の頭角の存在が幼虫時の 体重および頭幅の雌雄差に関与しているのかについては 明確に言及できないものの、可能性は大きいと思われる。 おわりに  本調査で得られた幼虫の性比は雄:雌= 1:0.75 であ り、差が大きい。これがサンプリング方法に起因するも のなのか、または本調査のみに見られた傾向なのか、も しくは普遍性をもつ傾向なのかは興味深く、今後の調査 対象としたい。    謝辞  カブトムシの幼虫のサンプリング並びに体重および頭 幅の計測に参加・尽力していただいた伊丹市昆虫館友の 会会員各位(木村太一、中本南、大西裕、竹内遥城、竹 内敦城、竹内めぐみ、千堂陽音、千堂光雄、市居隼人、 市居享二、西川賢、西川宙希、高山淳、高山翔純、高山 結哉、黒木恭子、黒木陽大、黒木統晴、池ノ上ひとみ、 池ノ上浩太、池ノ上紬、井上治彦、片山俊治、藻川芳彦、 年神寛(順不同・敬称略))に感謝申し上げる。 引用文献 羽馬千恵 (2015) 北海道伊達市における国内外来種カブ  トムシの体サイズの記録 . 昆虫と自然 50(9):p42-44. 桐谷圭治 (2012) 里地里山の生物指標としてのカブトム  シの基準個体群密度の設定と個体群動態 . 昆蟲(ニュー  シリーズ), 15(4):232-242. 間瀬睦月・大出高弘・新美輝幸 (2015) カブトムシの性  差決定遺伝子に関する研究 . 昆虫と自然 50(11):p27- 29. 岡島秀治・荒谷邦雄(監修)(2012) 日本産コガネムシ上  科標準図鑑 . 300pp. 学習研究社 . 東京 .

Plaistow SJ, Tsuchida K, Tsubaki Y, Setsuda K,(2005) The effect of a seasonal time constraint on  development time, body size, condition, and morph  determination in the horned beetle Allomyrina     dichotoma L. (Coleoptera:Scarabaeidea). Ecological  Entomology, 30:692-699.

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