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トランプ技術の習得を支援するカード型デバイスの提案

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(1)

トランプ技術の習得を支援するカード型デバイスの提案

津田 顕輝

複雑系知能学科 1014016

指導教員 塚田 浩二

提出日 2018 年 1 月 29 日

Card Type Device to Support Acquirement of Card

Techniques

by

Kenki TSUDA

BA Thesis at Future University Hakodate, 2018

Advisor: Prof. Koji TSUKADA

Department of Complex and Intelligent Systems Future University Hakodate

(2)

such projects, they often equip sensors on “ tools ” (e.g., balls) to detect motions of the tools. Meanwhile, there are few projects to support acquirements of card techniques, such as shuffling, cutting and so on. Therefore, we propose a card-type device to support skill acquirements of cards. We designed thin sensors using patterns of conductive ink to keep the thickness and shape of common cards. We develop the prototypes of the card-type device and feedback application. Using the prototypes, we perform the evaluation to analyze difference of sensor data of subjects with different skill levels. Finally, we reveal the possible usefulness of the device for acquiring card techniques.

Keywords: Cards, Skill Acquirements, Conductive ink

概 要: 現在,演奏,スポーツ等様々な分野でセンサや IT を使った技術の習得支援が多く研究さ れている.その中でも道具にセンサを装着して道具の動きを直接計測する手法は一般的であり,製 品化されて広く使われているものも多い.しかし,トランプ等のカードの技術(例: シャッフル/ カット)の分野では,センサや IT を活用した技術習得支援の例は少ない.本研究では,トランプ 技術の習得を支援するために,形状と使い心地がトランプに近いカード型デバイスを提案する.ま た,カード型デバイス自体のプロトタイプと,それを用いて使用するフィードバック用アプリケー ションの実装も行った.その後,作成したプロトタイプを用いて熟達者と初心者に実験としてトラ ンプ技術を行ってもらった.実験によって得られたデータを収集/分析して,その違いや特徴を明 らかにすることでトランプ技術のコツ等を推定し,技術習得支援に利用できる可能性を示した. キーワード: カード, 技術習得, 導電性インク

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目 次

1章 序論 1 1.1 背景 . . . . 1 1.2 研究目標 . . . . 1 1.3 論文の構成 . . . . 1 第2章 関連研究 2 2.1 道具にセンサを搭載した例 . . . . 2 2.1.1 タップダンサーの技術向上のためのリズム計測タップシューズの開発 2 2.1.2 6軸モーションセンサーによる包丁操作の記録 . . . . 2 2.1.3 スマートテニスセンサー . . . . 2 2.1.4 miCoach smartball . . . . 3 2.2 導電性インクを用いてセンサを作成した例 . . . . 3

2.2.1 Flexy: Shape-Customizable, Single-Layer, Inkjet Printable . . . . . 3

2.2.2 プロトタイピングのための紙製タッチセンサの設計及び操作認識プ ログラムの開発 . . . . 3 2.2.3 銀ナノインクを用いた非接触読み取り可能なパッシブ型静電容量式 圧力センサと着圧測定への応用 . . . . 3 2.3 トランプを拡張した例 . . . . 3 2.3.1 プロジェクタ・カメラシステムによるトランプゲームの拡張環境の 構築 . . . . 3 2.3.2 ICタグを用いた音声出力型電子トランプの開発 . . . . 4 2.3.3 映像技術を活用したカードマジック . . . . 4 2.4 本研究の特徴 . . . . 4 第3章 カード型デバイス 5 3.1 カード型デバイスの概要 . . . . 5 3.2 対象とするトランプ技術の例. . . . 6 3.2.1 リフルシャッフル . . . . 6 3.2.2 シャリアカット . . . . 6 3.2.3 スプリング . . . . 7 第4章 実装 8 4.1 カード型デバイス . . . . 8 4.2 フィードバック用アプリケーション . . . . 8

(4)

5章 実験と評価 11 5.1 基礎的性能の評価 . . . 11 5.1.1 曲げセンサ . . . 11 5.1.2 タッチセンサ . . . 14 5.2 トランプ技術データ計測の評価 . . . 14 5.2.1 目的 . . . 14 5.2.2 手法 . . . 15 5.2.3 結果と考察 . . . 166章 議論 20 6.1 本システムの有用性 . . . 20 6.2 本システムの課題 . . . 207章 結論と今後の展開 21 7.1 まとめ . . . 21 7.2 今後の方針 . . . 21

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1

序論

本章では,本研究の背景と目的,本論文の構成について述べる.

1.1

背景

近年,スポーツや楽器演奏等の分野において,センサやITを用いて技術を定量的に計 測し,習得支援に活用する研究が盛んに行われている[1-5].その中でも道具にセンサを取 り付ける手法は一般的であり,MIZUNO社のスイングトレーサー[1]のように製品化され て広く使われるようになってきている.しかし,シャッフルやカットに代表されるトラン プ等のカードを使ったテクニック(以下,トランプ技術)においては,センサやIT を用 いて技術を定量的に評価して習得支援を行う例は少ない.そのため,現在のトランプ技術 の習得方法は,熟練者の技術を見て盗む,文献を参考に練習を繰り返す,といった古典的 な手法が一般的である.また,スポーツ等に比べトランプ技術に精通している熟練者の人 口は少なく,熟練者の技術に学ぶことも一般に困難である.このような背景から本研究で は,トランプ技術のデータを収集/分析して定量的に評価するために複数のセンサを搭載 しつつも,トランプに近い形状と使い心地を持ったカード型デバイスを提案する.

1.2

研究目標

本研究では,トランプ技術のデータを収集/分析して定量的に評価するために複数のセ ンサを搭載しつつも,トランプに近い形状と使い心地を持ったカード型デバイスを提案す る.さらに,カード型デバイスと,フィードバックアプリケーションのプロトタイプを実 装する.プロトタイプ作成後は,評価実験を行い本システムの有効性を検証する.

1.3

論文の構成

ここでは,本論文の構成を示す.第2章「関連研究」では,本研究と関連の深い研究と して,道具にセンサを取り付けてデータを収集し,技術の習得を支援する事例とトランプ を拡張した事例を紹介する.第3章「カード型デバイス」では,作成したプロトタイプの コンセプトと実装について記す.第4章「実装」では本研究で提案するカード型デバイス とフィードバック用アプリケーションのプロトタイプの実装について述べる.第5章「評 価実験」では本研究のシステムの基礎的な性能とトランプ技術のデータ計測についての調 査をし,考察する.第6章「議論」では,現在考えられる課題について触れる.第7章「結 論と今後の展望」では,本研究のまとめと今後の展望について記す.

(6)

2

関連研究

本章では,「道具にセンサを搭載した例」,「導電性インクを用いてセンサを作成した例」, 「トランプを拡張した例」の三点から本研究に関連する研究事例を紹介する.

2.1

道具にセンサを搭載した例

本節では,演奏,料理,スポーツに用いる道具にセンサを取り付けてデータを収集し, 技術の習得を支援する事例を紹介する.

2.1.1

タップダンサーの技術向上のためのリズム計測タップシューズの開発

山元ら[2]は,タップダンサーの技術向上のためのリズム計測タップシューズを開発し た.これはタップシューズに9軸モーションセンサと圧力センサを取り付けたもので,タッ プのタイミングと足の姿勢をそれぞれ測定する.山本らはこのタップシューズで計測した データからタップのタイミングとステップの識別を行い,ステップごとの打刻時刻のずれ を解析することでタップダンスの演奏の特徴を評価できることを確認した.

2.1.2

6 軸モーションセンサーによる包丁操作の記録

由良ら[3]は,料理に用いる包丁の柄の両端に6軸モーションセンサを取り付けて,キュ ウリの小口切り,人参と大根のイチョウ切り,大根の桂むきを行った際のデータを収集/ 分析した.その結果,それぞれの材料・切り方において被験者間に明確な違いがあり,包 丁操作の特徴を見出せることを確認し,熟達者と初学者の違いから上達のためのアドバイ スができる可能性を示した.

2.1.3

スマートテニスセンサー

Sony社のスマートテニスセンサー[4]は,テニスのスイング習得支援のための製品であ る.モーションセンサと振動センサが搭載されており,ラケットエンドに装着してラケッ トを使用することでスイングの際のラケットの動きやボールが当たった際の振動を検知し て,データを使用者のスマートフォンに送る.スマートフォンではスイングや打ったボー ルの詳しい様子を表示する.また,それらの情報は後から振り返ることもでき,長期的な 練習の支援にも活用できる.

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2.1.4

miCoach smartball

adidas 社のmiCoach smartball[5]は,加速度センサを内蔵し,様々な情報を取得でき るサッカーボールである.通常のサッカーボールと同様に蹴るだけで,蹴られた位置,飛 距離,回転数等を取得できる.また,専用アプリケーションでデータを可視化したり,プ ロのサッカープレイヤーのデータと比較したりできる.

2.2

導電性インクを用いてセンサを作成した例

本節では,導電性インクを用いてセンサを作成した事例を紹介する.

2.2.1

Flexy: Shape-Customizable, Single-Layer, Inkjet Printable

Vadgamaら[6]は既製のインクジェットプリンタで出力可能な導電性インクを用いた曲 げセンサのパターンを考案した.また,その曲げセンサを使用する5つのアプリケーショ ン例を提示し,その実用性を示した.

2.2.2

プロトタイピングのための紙製タッチセンサの設計及び操作認識プログラ

ムの開発

山路ら[7]は,タッチ操作やホバー操作を検出する機能を持つオブジェクトをプロトタ イピングするための開発環境を作成した.その際,紙に導電性インクを用いて印刷された 様々な電極パターンを有するタッチセンサを設計し,またそのタッチセンサ用の操作認識 プログラムを作成した.

2.2.3

銀ナノインクを用いた非接触読み取り可能なパッシブ型静電容量式圧力セ

ンサと着圧測定への応用

橋爪ら[8]は,衣服が人体に対して与える圧力を計測する問題となる体表面に触れる配 線の排除を目的として,センサに与えられた圧力を無電源・非接触で読み取ることのでき る導電性インクを用いた薄型のパッシブ型圧力センサを提案した.

2.3

トランプを拡張した例

本節では,トランプを用いたゲームやマジックを拡張した事例を紹介する.

2.3.1

プロジェクタ・カメラシステムによるトランプゲームの拡張環境の構築

田中ら[9]は,プロジェクタ ・カメラシステムにより,トランプを用いた既存のゲーム の拡張を行った.ゲームを行う場の上部に設置したカメラでカードのマークと数字を識別 し,手の出現する位置からプレイヤーを特定した.そして,プロジェクタを用いてカード

(8)

にエフェクトを投影した.これにより,トランプを用いたゲームのエンターテインメント 性とコミュニケーション性の向上に成功した.

2.3.2

IC タグを用いた音声出力型電子トランプの開発

荒川ら[10]は視覚障害者と晴眼者が共通のルールでゲームを行うことができるように, ICタグを内蔵した音声出力型の電子トランプを開発した.そして,開発した電子トラン プを用いて実際に視覚障害者にゲームを行ってもらい,晴眼者と同条件でゲームを行うこ とが可能であることを確認した.

2.3.3

映像技術を活用したカードマジック

金山ら[11]は,トランプマジックにAR,プロジェクションマッピング,タブレットを 用いた映像を組み合わせて使用した.これにより,その場を盛り上げる演出や,映像上の カードと実物のカードが相互に作用したように見せたり,映像がなければ成り立たないス トーリーのあるマジックを実現した.

2.4

本研究の特徴

2.1節で紹介した事例は,スポーツ等で用いる道具に直接センサを搭載することでデー タを収集し,得られたデータを用いて技術の習得の支援を目指したものである.本研究に おいてもカードという道具に2.2節で紹介したような導電性インクを用いて作成したセン サを取り入れることによって,トランプ技術のデータの収集/分析や技術習得を支援でき ると考える.また,本研究で提案するカード型デバイスは2.3節で紹介した事例のような トランプを用いたゲームやマジックを拡張するものとは異なり,トランプを扱う技術の習 得の支援を目指したものである.

(9)

3

カード型デバイス

本章では,提案するカード型デバイスの概要について述べる.

3.1

カード型デバイスの概要

本稿で提案するカード型デバイスは,カードとセンサを一体化することでトランプ技術 のデータを収集し,定量的に分析/比較することを目的とする装置である. 搭載するセ ンサの設計にあたって,以下の二点を考慮した. (1) トランプ技術に直結するカードの物理量を計測すること (2) できる限りトランプカードと同様の薄型の形状とすること, (1)については,著者の一人がマジックを通してトランプ技術にある程度習熟している経験 も踏まえて,特にシャッフルやカット等のカードの基礎的な扱いに重要になる「指がカード のどこに触れているか」「カードがどの程度曲がっているか」を計測することとした.(2) については,薄型のフレキシブル基板と基板上のパターン自体を利用して,静電容量型 タッチセンサと曲げセンサを構築することにした.図3.1に,カード型デバイスの利用イ メージを示す.デバイスはカードの山の一番上/一番下/またはその両方に置くことを想 定している.また,実際のトランプに厚さと曲げた際の硬さを近づけるために,トランプ の片面を紙やすりで削って薄くしたものをカード型デバイスと貼り合わせた. 図 3.1: 提案システムの利用イメージ

(10)

3.2

対象とするトランプ技術の例

本研究で作製したカード型デバイスは,マイコン部と接続するためのコネクタとケーブ ルが付いていることや,すべてのカードをカード型デバイスに置き換えることができない という理由から,対象とするトランプ技術が制限されてしまっている.一方,この枠組み でも計測可能と思われるトランプ技術も存在する.そこで,本章では本研究の対象とする 基本的なトランプ技術の例を3つ紹介する.

3.2.1

リフルシャッフル

リフルシャッフルとは,カードの山を二つに分け,両手でそれぞれの端をはじいて噛み 合わせ,その後,再び一つの山に合わせるシャッフルである(図3.2).このシャッフルは 全ての動作が終了するまで,カードの山の一番上と一番下のカードが常に指に触れている. また,カードをはじく際の曲げ具合もシャッフルを上手く行う際の重要な要素であると考 えられるため,本研究のカード型デバイスの使用に適していると言える. 図3.2: リフルシャッフルの手順

3.2.2

シャリアカット

シャリアカットは,カードの上下を入れ替えるカットである.まず,カードの山を片手 の指先で持ち,その山の下半分ほどを手のひらの上に落とす.その後,落とした下半分の カードを人差し指で押し上げ,上半分のカードと場所を入れ替え,カードをまた一つの山 に戻すカットである(図3.3).この技も全ての動作が終了するまで,カードの山の一番上 と一番下のカードが常に指に触れている.また,カードの下半分と上半分を入れ替える際 にカードのどこに指をおいて支えるかが重要であるため,本研究の対象に適していると考 えた. 図3.3: シャリアカットの手順

(11)

3.2.3

スプリング

スプリングはカードの山を片手で持ち,カードを曲げていくことで,もう片方の手に一 枚ずつ飛ばしていく技である(図3.4).カードを綺麗に一枚ずつ飛ばし,この技をうまく 行うには,カードの曲げ具合が重要であると考えられる.そのため,本研究の対象として 適しているといえる. 図3.4: スプリングの手順

(12)

4

実装

本章では,提案するカード型デバイスとフィードバック用アプリケーションのプロトタ イプの実装について述べる.

4.1

カード型デバイス

まず,プロトタイプのカ―ド部の外観を図4.1に示す.カード部はトランプと同様の形 状と使い心地を目指しているため,薄くて柔軟性のあるフレキシブル基板を用いて実装 する.カードの厚みは73μmで,サイズはトランプで最も一般的なポーカーサイズ(約 63mm×約 89mm)と同様とした.次に,前述したように,フレキシブル基板上のパター ンを用いて,静電容量式タッチセンサと曲げセンサを設計した.図4.1左に,設計したパ ターンを示す.ここで,カード周辺の8つの多角形のパターンが静電容量式タッチセンサ, 中央の何度も往復する1つのパターンが曲げセンサとなっている.曲げセンサの設計には, Vadgama らの手法[6]を参考とした.各パターンは,カード下部のコネクタを介してケー ブルで制御基板に接続され,制御用の回路を通してマイコン(Arduino Pro Mini)の入出

力ピンに接続される(図4.2).静電容量タッチセンサの仕組みはデジタル出力をHighに してから,デジタル入力がHighになるまでの遅延時間を図る.静電容量タッチセンサに指 が触れると,遅延時間が長くなる.その遅延時間の長さから,触れているかどうかを判断 する.こうして設計したカード型のパターンを,P-Flex(エレファンテック株式会社)の サービスを利用して,導電性インクベースのフレキシブル基板として実装した(図4.1右). 次に,処理の流れについて説明する.曲げセンサ部分が曲がる際の抵抗値の変化や,タッ チセンサ部分に指が触れた際の静電容量の変化をマイコンで検出し,正規化した上でコン ピュータにシリアル通信で送信する(図4.3).

4.2

フィードバック用アプリケーション

ここでは,フィードバック用アプリケーションについて説明する.フィードバック用ア プリケーションは,センサデータの記録,PC上のWebカメラでの動画撮影機能,および 以前記録したセンサデータと動画の再生機能を備える.ユーザは,カメラで自分の手元を 撮影しながら,動画とセンサデータを合わせて保存することができる.保存した動画/セ ンサデータは同期して再生することで,手元のカード操作とセンサの状態を併せて視覚的 に振り返ることができる(図4.4).

(13)

図4.1: 設計したパターンとカード部の外観

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図 4.3: 処理の流れ

(15)

5

実験と評価

本章では,「基礎的性能の評価」と「技術習得支援効果の評価」,二つの実験について, 目的,手法,結果及び考察について述べる.

5.1

基礎的性能の評価

基礎的性能の評価実験では,作製したカード型デバイスのプロトタイプにおいて,各セ ンサの検出精度を評価する.

5.1.1

曲げセンサ

目的 「何段階程度の曲がり具合の変化を計測することができるか」と「段階ごとにどの程度 の角度の変化があるのか」について調べる. 手法 曲げセンサの精度を調べる方法として,本研究で作成したカード型デバイスのプロトタ イプを分度器の前で曲げ,テスターで抵抗値を計測し,値が変化した際の角度を計測する. プロトタイプのコネクタがついている面を表,反対の面を裏とし,この実験は表向きに曲 げる場合と裏向きに曲げる場合のそれぞれについて5回ずつ行った.実験の際様子を図5.1 に示す. 結果と考察 プロトタイプをある程度曲げていき,テスタで計測した抵抗値が0.1Ω変化するたびに その時の角度を記録した.その結果と平均,分散,標準誤差を算出したものを表5.1と表 5.2に示す.実験の結果から,やや不安定ではあるが,ある程度決まった範囲の曲がり具 合を計測することができると考えられる.また,表向きは6段階で概ね44∼174度,裏向 きは7段階で概ね33∼175度の曲がり具合を計測することができた.この段階の数の違い は,裏面には薄く削ったトランプが張り付けられていることによって生じる違いであると 思われる.また,各段階間における角度変化の平均は表5.3のようになった.

(16)

表5.1: 抵抗値が0.1Ω変化した際の角度(表向き) 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 平均 分散 標準誤差 1段階 48 41 43 44 46 44.4 5.84 0.9865766 2段階 71 73 75 72 67 71.6 7.04 1.0832051 3段階 105 104 111 102 101 104.6 12.24 1.4282857 4段階 121 123 129 124 122 123.8 7.76 1.1372481 5段階 137 141 146 146 144 142.8 11.76 1.4 6段階 170 177 176 178 169 174 14 1.5275252 表5.2: 抵抗値が0.1Ω変化した際の角度(裏向き) 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 平均 分散 標準誤差 1段階 34 31 37 35 30 33.4 6.64 1.0519823 2段階 52 54 55 54 56 54.2 1.76 0.5416026 3段階 79 83 76 75 76 77.8 8.56 1.1944315 4段階 109 113 105 106 104 107.4 10.64 1.3316656 5段階 146 146 138 139 141 142 11.6 1.3904436 6段階 167 168 164 161 163 164.6 6.64 1.0519823 7段階 174 174 176 174 175 174.6 0.64 0.3265986 表5.3: 各段階間における角度変化の平均,()内は分散 1-2段階 2-3段階 3-4段階 4-5段階 5-6段階 6-7段階 表向き 27.2(20.56) 33(4.8) 19.2(4.56) 19(6.4) 31.2(13.36) 裏向き 20.8(10.16) 23.6(13.44) 29.6(1.04) 34.6(3.84) 22.6(3.04) 10(8.4)

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5.1.2

タッチセンサ

目的 カード型デバイスのプロトタイプに8箇所あるタッチセンサそれぞれについて,指が触 れたことの検出の可否と,その精度を検証する. 手法 各タッチセンサに対して5秒程度ずつ触れる.得たデータを専用アプリケーションを用 いてグラフ化し,検出の可否と,その精度を検証する. 結果と考察 タッチセンサのデータをグラフ化したものを図5.2に示す.全てのタッチセンサにおい て,タッチを検出可能であったが,タッチし続けていてもノイズのように2∼5回途切れ ている箇所があった.しかし,これは平滑化などにより除去可能であると思われる.また, 専用アプリケーションにおいては僅かな遅延時間があったが,これは同期して再生される はずである動画とのずれが生じていることが原因であると考えられる. 図 5.2: タッチセンサの計測結果(白い部分が検出状態)

5.2

トランプ技術データ計測の評価

5.2.1

目的

まず,製作したプロトタイプを用いてトランプ技術を行った際に,各センサのデータを 取ることができるかを評価する.そのうえで,トランプ技術熟練者と初心者のデータを収 集し,分析/比較することで対象とするトランプ技術におけるコツを推定する.

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5.2.2

手法

トランプ技術データ計測の実験の際は,フィードバック用アプリケーションを用いてセ ンサデータの記録と動画での撮影を行った.実験の準備として,カード型デバイスのプロ トタイプを実際にトランプの山の上に置き,トランプを扱い易いようにマジック用のマッ トを設置した.実際に実験を行った際の環境を図5.3に示す. 被験者として,トランプ技術の熟練者3名(マジック経験4∼8年),初心者6名を採用 した.本実験で,被験者には3.2節で紹介した「リフルシャッフル」,「シャリアカット」, 「スプリング」の3つのトランプ技術を順に行ってもらった.それぞれの技を行ってもら う前に,行ってもらう技の手順を口頭での説明とともにトランプ技術に熟達した実験者が 実演しながら確認してもらった.その後,手順の確認も兼ねて数度の練習をしてもらい, 本実験を行ってもらった. 図5.3: トランプ技術の実験を行った際の環境

(20)

5.2.3

結果と考察

リフルシャッフル 被験者にリフルシャッフルを行ってもらったところ,熟練者は全員成功し,初心者は6人 中1人が成功した.この実験では二つに分けたカードの山を完全に一つの山に合わせるこ とができた場合を成功とした.成功例と失敗例を図5.4に示す.成功例は,カードの山が 一つに合わさっているが,失敗例ではカードの山が崩れてしまっている.実験によって得 られたデータはフィードバック用アプリケーションを用いて比較した.熟練者と成功した 初心者で比較した場合は,シャッフルを完了するまでの時間以外には目立った違いは見ら れなかった.時間の差についてはシャッフルに慣れているかの違いであり,それ以外に違 いが見られないのは,リフルシャッフルが比較的容易な技であるため,方法さえ合ってい ればシャッフルを成功させることができるからではないかと考えられる.次に成功した被 験者と失敗した被験者のデータを比較した.成功した被験者のデータは共通して,シャッ フルの際に直前の状態から二段階曲げられていたのに対し,失敗した被験者のデータは皆, 一段階しか曲げられていなかった.成功した被験者と失敗した被験者それぞれ1名ずつの 曲げセンサのデータをフィードバック用アプリケーションを用いてグラフ化したものを抜 き出し,シャッフル中の位置を示したものを図5.5に示す.この実験結果と5.1.1節の結果 から,リフルシャッフルを成功させるにはカードを70度以上曲げる必要があるのではない かと考える. シャリアカット 被験者にシャリアカットを行ってもらったところ,熟練者は全員成功し,初心者は6人 中3人が成功した.この実験ではカードの山を大きく崩すことなく,上下を入れ替えるこ とが出来た場合を成功とした.成功例と失敗例を図5.6に示す.シャリアカットにおいて も熟練者と成功した初心者での比較と成功した被験者と失敗した被験者での比較を行った. リフルシャッフルと同様に,シャリアカットも比較的容易な技であるためか,熟練者と成 功した初心者に目立った違いはみられなかった.次に,成功した被験者と失敗した被験者 での比較を行った.成功した被験者と失敗した被験者それぞれ1名ずつのタッチセンサの データと,カード型デバイスとの対応箇所を図5.7に示す.成功した被験者は共通してカッ トの際に図5.7の3番と7番の場所に指が触れており,この部分をしっかりと押さえ,支 えることで上半分のカードが手から落ちてしまわないようにしていたことがわかった.一 方,失敗した被験者はあまり3番と7番の部分には触れず,カードの山の側面のみを押さ えていた.この結果から,シャリアカットではカードの山の上半分を一番上のカードの上 から押さえて,支えることが重要であると考えられる.

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スプリング 被験者にスプリングを行ってもらったところ,熟練者は全員成功し,初心者は6人中1 人が成功した.この実験では一方の手で飛ばしたカードを全てもう一方の手で受け止める ことが出来た場合を成功とした.スプリングにおいても他の二つの技と同様に,「熟練者と 成功した初心者での比較」と「成功した被験者と失敗した被験者での比較」を行った.熟 練者/成功した初心者/失敗した初心者それぞれ1名ずつのタッチセンサと曲げセンサの データにスプリング中の位置を示したものを図5.8に示す.スプリングでは熟練者と成功 した初心者を比較したところ,熟練者は図5.7における4番と8番の場所のみを指先では さむように持ち,他の場所にはほとんど触れていない.一方,成功した初心者はタッチセ ンサの多くの部分に触れており,カードを山を握るように持っていた.この握るように持 つのは成功した初心者だけでなく,ほとんどの初心者に共通していた.成功した被験者と 失敗した被験者を比較すると,成功した被験者はスプリング中に曲げ具合を強めているの に対し,失敗した被験者は曲がり具合が弱くなっている.これらの結果から,スプリング を成功させるにはカードの曲げ具合を途中で強めることが重要であり,熟練者のように上 手く行うには図5.7における4番と8番の場所のみを指先で持つことがコツであると考え られる. 図5.4: リフルシャッフルの成功例(左)と失敗例(右) 図5.5: リフルシャッフルにおける曲げセンサデータの成功/失敗の比較

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図5.6: シャリアカットの成功例(左)と失敗例(右)

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(24)

6

議論

本章では,本研究で提案するカード型デバイスについて「本システムの有用性」と「本 システムの課題」といった視点から議論する.

6.1

本システムの有用性

本研究では,センサを搭載したカード型デバイスとフィードバック用アプリケーション のプロトタイプを作成し,実験としてプロトタイプを用いて実際にトランプ技術のデータ を収集した.また,実験で得られたデータを分析することで,「熟練者と初心者」や「成功 した被験者と失敗した被験者」の違いや共通点を見出し,対象としたトランプ技術におけ る重要な点やコツのようなものを推定することが出来た.このことから,本研究で提案す るカード型デバイスは,一部ではあるがトランプ技術のデータを収集し,定量的に分析/ 比較できることが示された.また,本研究の大きな目的の一つであるトランプ技術の習得 を支援することができる可能性も示すことができたといえる.

6.2

本システムの課題

プロトタイプを用いて実験を行っている際,カード型デバイスについて「厚さや硬さは 問題無いが,ケーブルが邪魔である」,「ケーブルが硬く,カード型デバイスが自分の意に 反した動きをしてしまう時がある」という意見を得た.この問題を解決するために,カー ド部とマイコン部の一体化も視野に入れて実装を行いたい. 次に,カード部の強度の問題がある.作成したカード型デバイスのプロトタイプは数回 の実験を行うと,必ず一部が通電しなくなる等の不具合が起き,そのたびに新しいものに 取り換えて使用していた.現在,カード部の基板とコネクタは半田のみで接着されている が,不具合が起こるのを防ぐような工夫が必要である. フィードバック用アプリケーションにおいては現在,グラフ化されたデータを執筆者が 自分で比較することで,特徴や違い,共通点などを見出したうえでトランプ技術のコツ等 を推定している.このままでは,初心者が利用した際に特徴などを見出すことができず, 技術の習得に活かせないと思われる.そこで,より特徴などが見出しやすい,フィードバッ ク方法を考案する必要がある.

(25)

7

結論と今後の展開

本章では,本研究の成果についてまとめ,今後の方針を示す.

7.1

まとめ

本稿では,トランプ技術の習得を支援するカード型デバイスを提案した.このカード型 デバイスは曲げセンサと静電容量タッチセンサを備えながらトランプと同様の形状と使い 心地を目指したものである.また,カード型デバイス自体のプロトタイプを構築し,カー ドのセンサデータと動画を同時に振り返るフィードバックアプリケーションのプロトタイ プも実装した.その後,プロトタイプを用いてトランプ技術を計測する実験を行い,フィー ドバックアプリケーションを用いて比較/分析を行うことで,成功した被験者と失敗した 被験者それぞれの特徴や,熟練者と初心者との違いや共通点を見出し,トランプ技術の習 得に役立てうる可能性を示した.

7.2

今後の方針

今後は,まず6.2節で挙げた課題を解決できるようにカード型デバイスとフィードバッ ク用アプリケーションの改良を行っていく.また,それだけでなく,本稿で示したトラン プ技術以外で,現在本システムを用いてデータを収集することのできるトランプ技術を模 索し,まとめるとともに,現在の本システムでは対応できないトランプ技術も明らかにし, 対応する方法を考案する.その他に,過去に記録したセンサデータをなぞりながら練習で きるような機能をフィードバック用アプリケーションに追加する等,本研究の目的の一つ であるトランプ技術の習得に関わる部分も充実させていきたいと考える.

(26)

謝辞

本研究を行うにあたり,研究方針の提案,研究に関連する情報の紹介,実装の支援,論 文の添削など,様々なご指導を頂きました指導教員の塚田浩二先生に感謝致します.また, 研究に必要な部品の手配,学会参加にあたってのアドバイス,論文の添削など,様々なご 指導を頂いた特任研究員の沖真帆さんに感謝致します.ここに感謝の意を表し,謝辞へと 変えさせて頂きます.本研究に関して多くの手助けをして下さいました塚田研究室の皆様 に感謝致します.

(27)

対外発表

学会発表

津田顕輝,塚田浩二: トランプ技術の習得を支援するカード型デバイスの提案,情報処 理学会インタラクション2018論文集(Mar,2018)(発表予定)

(28)

参考文献

[1] MIZUNO,ミズノスイングトレーサー,http://www.mizuno.jp/baseball/swingtracer.aspx, 最終アクセス2018年1月10日. [2] 山元 亮典,橋本 周司,三輪 貴信,ギエルモ エンリケズ,フェイイー ヤップ.タップ ダンサーの技術向上のためのリズム計測タップシューズの開発.情報処理学会第78回 全国大会講演論文集,pp.255-256,2016. [3] 由良 亮,浜野 純,萩原 勇人,楠瀬 千春.6軸モーションセンサーによる包丁操作の 記録.日本調理科学会大会研究発表要旨集29(0),20,2017.

[4] Sony Corporation,スマートテニスセンサー,http://smartsports.sony.net/tennis/JP/ja/,

最終アクセス2018年1月10日.

[5] Adidas Japan,miCoach smartball,http://shop.adidas.jp/micoach/smartball/,最

終アクセス2018年1月10日.

[6] Nirzaree Vadgama and Jrgen Steimle. Flexy: Shape-Customizable, Single-Layer, Inkjet Printable Patterns for 1D and 2D Flex Sensing. In Proceedings of TEI ’17, pp.153-162, 2017. [7] 山路大樹,久保勇貴,杉山慎一郎,志築文太郎,高橋伸.プロトタイピングのための紙製 タッチセンサの設計及び操作認識プログラムの開発.情報処理学会研究報告,Vol.2017 ‐ HCI‐ 171,No.36,pp.1-8,2017. [8] 橋爪崇弘,笹谷拓也,成末義哲,川原圭博,浅見徹.銀ナノインクを用いた非接触読 み取り可能なパッシブ型静電容量式圧力センサと着圧測定への応用.電子情報通信学 会ソサイエティ大会2015,B-18-27,2015. [9] 田中希武,村田哲史,藤波香織,プロジェクタ・カメラシステムによるトランプゲー ムの拡張環境の構築.情報処理学会シンポジウム論文集,pp.647-652,2012. [10] 新川拓也,小島憲,ICタグを用いた音声出力型電子トランプの開発.ライフサポー ト,2007. [11] 金山翔,定國伸吾,神垣太持,映像技術を活用したカードマジック.エンタテインメ ントコンピューティングシンポジウム2017論文集,pp.217-222,2017.

(29)

図 目 次

3.1 提案システムの利用イメージ. . . . 5 3.2 リフルシャッフルの手順 . . . . 6 3.3 シャリアカットの手順 . . . . 6 3.4 スプリングの手順 . . . . 7 4.1 設計したパターンとカード部の外観 . . . . 9 4.2 制御用の回路図 . . . . 9 4.3 処理の流れ . . . 10 4.4 動画/センサデータの振り返りシステムのスクリーンショット . . . 10 5.1 曲げセンサの実験を行った際の様子(左:0°,中央: 104°,右: 176°) . 13 5.2 タッチセンサの計測結果(白い部分が検出状態) . . . 14 5.3 トランプ技術の実験を行った際の環境. . . 15 5.4 リフルシャッフルの成功例(左)と失敗例(右) . . . 17 5.5 リフルシャッフルにおける曲げセンサデータの成功/失敗の比較 . . . 17 5.6 シャリアカットの成功例(左)と失敗例(右). . . 18 5.7 シャリアカットでのタッチセンサデータの成功/失敗の比較とセンサの位置 の対応 . . . 18 5.8 スプリングにおけるセンサデータの比較 . . . 19

(30)

表 目 次

5.1 抵抗値が0.1Ω変化した際の角度(表向き) . . . 12

5.2 抵抗値が0.1Ω変化した際の角度(裏向き) . . . 12

図 4.2: 制御用の回路図
図 4.4: 動画/センサデータの振り返りシステムのスクリーンショット
表 5.1: 抵抗値が 0.1 Ω変化した際の角度(表向き) 1 回目 2 回目 3 回目 4 回目 5 回目 平均 分散 標準誤差 1 段階 48 41 43 44 46 44.4 5.84 0.9865766 2 段階 71 73 75 72 67 71.6 7.04 1.0832051 3 段階 105 104 111 102 101 104.6 12.24 1.4282857 4 段階 121 123 129 124 122 123.8 7.76 1.1372481 5 段階 137 141 146
図 5.1: 曲げセンサの実験を行った際の様子(左: 0 °,中央: 104 °,右: 176 °)
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参照

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