質点の力学
目次 速度・加速度の定義 2 微分・積分を用いた、位置・速度・加速度 5 慣性の法則、運動の法則、作用反作用の法則 8 力のつりあいの基本 10 水平面での物体のつりあい・運動 16 複数の物体が関与する、静止・運動状態 24 斜面での物体の運動 34 速度に比例する抵抗を受ける物体の運動 45 滑車のある運動 47 2 次元の運動 50 運動量と力積 55 力学的エネルギー 67 微積分を使った力学的エネルギーの簡単な扱い 91 力学的エネルギーの、ベクトルと微積分を使った説明 95 水平面での回転運動 103 円錐振り子 109 2 次元の極座標表示での、速度と加速度の求め方 110 単振動・ばねにつながった物体の運動 114 連成振動 145 単振り子・重力下での円運動 152 質点系の力学の総合問題 165 注意:このファイルの著作権は、室蘭工業大学 矢野隆治にあります。ファイルの内容を紙に印刷した 後、鉛筆・ボールペンなどで書き込みしてもかまいません。しかし、著者の許諾なく、ファイルの内容 そのものに対して勝手に書き換え・改変する事は、しないでください。また、間違い・ミスプリントな どが見つかった場合は、著者(矢野隆治)まで連絡をお願いします。計算での注意:文字式で計算し、数値計算は最後にする。文字にはそれぞれ意味がある。質量(mass)、 力(force)、加速度(acceleration)、速度(velocity)など。 質点:大きさの無視できる物体。質量をもつ。自身の周りの回転運動は考えない。(例えばコマは、そ の位置を変える事なく回転運動し、その運動エネルギーを持つが、この事を無視する。) ベクトルの説明:向きと大きさを持つ。位置(変位)、速度、加速度、力は、ベクトル量。 スカラ―の説明:向き(方向)は持たないが、大きさをもつ。 速さや長さなど。 速度と速さの違い:速さは大きさ(例 10m/s)であり、速度は大きさと向き(例:東向き)を持つベクトル。 速度・加速度の定義 時間間隔
∆
t
での物体の移動距離(位置の変化)∆
x
=
x
(
t
+
∆
t
)
−
x
(
t
)
で、平均の速度v
を定義する。t
x
v
∆
∆
=
時刻t
での速度v
は、∆
t
を十分短くした時の値で定義する:t
x
t
v
t∆
∆
∆ 0lim
)
(
→=
。 時間間隔∆
t
での物体の速度変化(速度変化)∆
v
=
v
(
t
+
∆
t
)
−
v
(
t
)
で、平均の加速度a
を定義する:t
v
a
∆
∆
=
。 時刻t
での加速度a
(t
)
は、∆
t
を十分短くした時の値で定義する:t
v
t
a
t∆
∆
∆lim
0)
(
→=
。 直線上の運動:加速度a
と速度v
、および位置x
との関係 簡単な、直線上の運動を考えます。 等加速度運動v
:
速度、a
:
加速度(高校物理では、a
=一定の簡単な場合のみを扱う。例外:振動) at v t v a t v t v = = → − = − − ) 0 ( ) ( 0 ) 0 ( ) ( 一定 ⇒(
),
(
0
)
0v
v
t
v
v
=
=
の置き換えでv
=
v
0+
at
を得る。 等速運動はa
=
0
なので、v =
v
0である。一般には、ある時刻t
における速度、加速度の定義は、 t t v t t v t a t t x t t x t v t t∆
∆
∆
∆
∆ ∆ ) ( ) ( lim ) ( , ) ( ) ( lim ) ( 0 0 r r r r r r + − = − + = → → 等速度運動の時の位置の変化は、速度×時間=移動距離 である。 0v
v =
=一定なら、x
=
x
(
t
)
=
x
0+
v
0t
v t 面積=移動距離等加速度運動での位置の変化 加速度
a
>
0
の時は、下左図の四角形+三角形の面積が、移動距離になる。 2 0 0 0 02
1
2
1
at
t
v
x
t
at
t
v
x
x
=
+
+
⋅
=
+
+
0
<
a
の時は、四角形から三角部分を取り去ると考えよう(下右の図)。その面積が移動距離になる。 2 0 0 0 0 2 1 | | 2 1 at t v x t t a t v x x= + − ⋅ = + + 例題 1 等加速度運動 電車が A 駅を出発し、0
.
30
(
m/s
2)
の加速度で速さを増し、50
(
s
)
経過した時加速をやめて、その時の速 さで60
(
s
)
だけ進んだ。その後一定の割合で時間30
(
s
)
だけ減速し、B 駅で停止した。 (1) A 駅から B 駅に着くまでの時間と速さの関係をグラフに書け。 (2) 初めの 50 秒間に進んだ距離を求めよ。 (3) 最後の 30 秒間の加速度はいくらか? (4) 出発してちょうど 60 秒経った時の、電車と A 駅との距離を求めよ。 (5) A 駅と B 駅との距離を求めよ。 解説と解答 電車の運動では、0~50 秒までは、等加速度運動で速さが増加する。50~50+60 秒では、一定の速さで 進む。50+60~50+60+30 秒では、一定の加速度で速さが遅くなり、速さ=ゼロで B 駅に到着している 事を理解しよう。 (1) 出発時の加速度 2 1=
0
.
30
m/s
a
、B 駅到着時の加速度a
2とする。 0~50sでは、最初の速度=ゼロでの等加速度運動である。よって速度v
は、v
=
0
+
a
1t
=
0
.
30
×
t
(
m
)
。 50 秒後の速度は、v
50=
0
.
30
×
50
=
15
(
m/s
)
になる。 50~50+60 秒では、等速度運動でv
=
15
(
m/s
2)
である。 50+60~50+60+30 秒では、30 秒掛けて減速し、速度がゼロになる。よって)
m/s
(
50
.
0
30
/
15
0
30
2 2 2 50+
a
⋅
=
→
a
=
−
=
−
v
。 速度はv
=
v
50+
a
2⋅
(
t
−
110
)
=
15
−
0
.
50
×
(
t
−
110
)
(
m/s
)
で与えられる。 (2) 0~50 秒で、距離 2/
2
0
.
15
2(
m
)
1t
t
a
x
=
=
となる。よって 50 秒での距離は、)
m/s
(
10
8
.
3
)
m
(
10
75
.
3
50
15
.
0
×
2=
×
2=
×
2 2=
x
である。 (3) (1)で説明したように、減速時の加速度a
2は、30 秒で停止したので、 v v0 at t 面積=移動距離 面積=移動距離 v v0 |a|t t 取り除く)
m/s
(
50
.
0
15
30
0
2 2 2×
+
→
=
−
=
a
a
となる。 (4) 出発して 60 秒後の距離は、x
=
3
.
8
×
10
2(
m
)
+
15
×
10
=
5
.
3
×
10
2m
となる。 (5) それぞれの区間での移動距離を求める。 0~50 秒で、距離 2/
2
0
.
15
2(
m
)
1t
t
a
x
=
=
よって、50 秒での距離x
=
0
.
15
×
50
2=
3
.
75
×
10
2(
m
)
=
3
.
8
×
10
2(
m
)
50~50+60 秒では、等速運動なので、移動距離x
= v
×
60
=
15
×
60
=
9
.
0
×
10
2(
m
)
50+60~50+60+30 秒での移動距離は、等加速度運動(減速)なので、 ) m ( 10 25 . 2 10 25 . 2 10 5 . 4 2 / 30 ) 50 . 0 ( 30 15 2 / 30 30 2 2 2 2 2 2 × = × − × = × − + × = × + × = a v x よって A-B の距離は、=
3
.
8
×
10
2+
9
.
0
×
10
2+
2
.
25
×
10
2=
15
.
05
×
10
2(
m
)
ABx
例題 2 等加速度直線運動の列車 一定の加速度で、一得戦場を走る長さL
の列車の先端部 分が在る点Q
(踏み切り)を通過する時の速度はv
1、 最後部が点Q
を通過する時の速度はv
2であった。列車 の真ん中が点Q
を通過するときの速度を求めよ。 解説と解答 等速直線運動と解釈して、問題を解く。列車の先端と最後部での速度に違いがあった。これは、列車が 等加速度運動を行い、距離L
進む間に速度が変わったという事を意味する。加速度をa
、距離L
進むの にかかる時間をt
Lとすると、a
≠
0
として次の式が成り立つ。 + = − = + − = → = + − = − + − → = − + − ⋅ − = → = + + = 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 1 2 2 1 1 2 2 ) )( ( 2 1 ) )( ( 2 1 ] ) ( ) ( 2 [ 2 1 2 1 2 1 v v L a v v t v v v v L a L v v v v a v v v v v a L a v v a a v v v a v v t L at t v at v v L L L L L 加速度a
と時間t
Lを用いて、v1tL/2+atL2/2/2=L/2となる時間t
L/2(0
<
t
L/2<
t
L)を求める。a
v
aL
v
t
a
v
a
L
a
v
t
a
v
a
L
a
v
t
a
L
t
a
v
t
L
at
t
v
L
at
t
v
L L L L L L L L L 2 1 1 2 / 2 1 1 2 / 2 1 2 1 2 / 2 / 1 2 2 / 2 2 / 2 / 1 2 2 / 2 / 1/
2
2
(
2
)
(
)
2
1
+
+
−
=
→
+
±
−
=
→
+
=
+
→
=
+
→
=
+
→
=
+
これより、電車の真ん中での速度を
v
L/2とすれば、以下のように求まる。2
)
)(
(
2
1
12 2 2 2 1 1 2 1 2 2 1 2 1 1 1 2 / 1 2 /v
v
v
L
v
v
v
v
L
v
aL
a
v
aL
v
a
v
at
v
v
L=
+
L=
+
⋅
−
+
+
=
+
=
−
+
⋅
+
=
+
。 注意:a
<
0
の場合、電車の真ん中が点Q
を最初に通過する時間と、電車が逆戻りして再び通過する時 間が得られる。 v1 v2微分・積分を用いた、位置・速度・加速度 単純な、1次元の直線運動を考える。時刻
t
における位置がx
(t
)
で与えられるとする。すると時刻t
か ら時刻t
+
∆
t
の間での、位置x
(t
)
からの位置の移動(変位)∆
x
(t
)
は、)
(
)
(
)
(
t
x
t
t
x
t
x
=
+
∆
−
∆
で与えられる。一方、速度v
(t
)
から考えれば、時刻t
から時刻t
+
∆
t
の間で物体の速度の変化が十分無 視できるなら、変位∆
x
(t
)
は、t
t
v
t
x
∆
∆
(
)
=
(
)
⋅
で与えられる。両者は等しく、 t t x t t x t v t t v t x t t x∆
∆
∆
∆
) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( + − = ⋅ → = + − が成り立つ。∆
t→0の極限を考えると、 dt t dx t t x t t x t v t ) ( ) ( ) ( lim ) ( 0 = − + = →∆
∆
∆ 。 つまり、位置の移動x
(
t
)
の時間微分が速度v
(
t
)
になる。 加速度a
(t
)
についても、同様の考えをしよう。時刻t
における速度がv
(t
)
で与えられるとする。する と時刻t
から時刻t
+
∆
t
の間の速度変化∆
v
(t
)
は、)
(
)
(
)
(
t
v
t
t
v
t
v
=
+
∆
−
∆
で与えられる。一方、速度a
(t
)
から考えれば、時刻t
から時刻t
+
∆
t
の間で物体の加速度の変化が十分 無視できるなら、速度の変化∆
v
(t
)
は、t
t
a
t
v
∆
∆
(
)
=
(
)
⋅
で与えられる。両者は等しく、 t t v t t v t a t t a t v t t v∆
∆
∆
∆
) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( + − = ⋅ → = + − が成り立つ。∆
t→0の極限を考えると、 dt t dv t t v t t v t a t ) ( ) ( ) ( lim ) ( 0 ∆ = − ∆ + = → ∆ 。 つまり、速度v
(
t
)
の時間微分が加速度a
(
t
)
になる。 これらの結果に対して、微分の逆(積分)を考えれば、次の式が成り立つ。∫
∫
=
+
+
=
x
tv
t
dt
v
t
v
ta
t
dt
t
x
0 0(
'
)
,'
(
)
(
0
)
(
'
)
'
)
0
(
)
(
加速度が一定の値
a
を持つ場合で計算してみよう。 初速度v
0で時間t
経過後の速度をv
とすると、at
v
t
a
v
adt
v
t
v
=
+
∫
t=
0+
−
=
0+
0 0'
(
0
)
)
(
位置(変位)x
は、初期値をx
0として、 t t+∆t x+∆x x2 0 0 0 0 0 0 0
2
1
'
)
'
(
'
)
'
(
)
(
t
x
v
t
dt
x
v
at
dt
x
v
t
at
x
=
+
∫
t=
+
∫
t+
=
+
+
をえる。一定の加速度での、速度と変位に関する公式が得られた。 微分・積分による考え方-2 1次元の直線運動を考える。位置の移動(変位)がx
(t
)
で与えられるとする。すると時刻t
から時刻t
t
+
∆
の間に移動した距離∆
x
(t
)
は、)
(
)
(
)
(
t
x
t
t
x
t
x
=
+
∆
−
∆
で与えられる。一方、速度v
(t
)
から考えれば、時刻t
から時刻t
+
∆
t
の間での、速度の最小値と最大値 をvmin(t),vMax(t)とすれば、位置x
(t
)
からの変位∆
x
(t
)
は、 t t v t x t t vmin()⋅∆
<∆
( )< ()Max⋅∆
で与えられる。この不等式を∆
t
で割ると)
(
)
(
)
(
)
(
minv
t
t
t
x
t
t
x
t
v
<
Max−
+
<
∆
∆
が成り立つ。∆
t→0の極限を考えると、v
min(
t
)
=
v
Max(
t
)
となるはずなので、 dt t dx t t x t t x t v t ) ( ) ( ) ( lim ) ( 0 = − + = →∆
∆
∆ 。 つまり、変位x
(
t
)
の時間微分が速度v
(
t
)
になる。速度v
(
t
)
と加速度a
(
t
)
の関係も同様である。 微分の逆を考えれば、加速度a
(t
)
も含め、次の式が成り立つ。∫
∫
=
+
+
=
x
tv
t
dt
v
t
v
ta
t
dt
t
x
0 0(
'
)
,'
(
)
(
0
)
(
'
)
'
)
0
(
)
(
速度、加速度などの定義 t t v t t v t t t t v t t v t a t t x t t x t t t t x t t x t v ∆ − ∆ + = − ∆ + − ∆ + = ∆ − ∆ + = − ∆ + − ∆ + = → → → → → → → → → → ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( 加速度: 速度: 移動距離(位置の変位)と速度の関係
=
−
≈
∆
⋅
∆
+
=
−
∆
+
=
+
∆
=
→
∆
⋅
∆
−
+
=
∆
−
+
−
∆
+
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
∆
⋅
∆
+
=
∆
+
−
∆
+
∆
⋅
=
−
∆
+
∆
⋅
=
−
∆
+
→
∆
−
∆
+
=
∫
∫
∑
→ → → → − = → → → → → → → → → → → → → → → → → → 1 0 1 0)
(
)
(
)
(
)
(
)
(
)
(
)
(
,
)
)
1
(
(
)
)
1
(
(
)
(
)
(
)
(
)
2
(
)
(
)
(
)
(
)
(
)
(
)
(
)
(
)
(
)
(
0 1 1 0 0 1 t t t t n kdt
t
v
t
x
t
x
dt
t
v
t
t
k
t
v
t
x
t
n
t
x
t
t
t
t
n
t
t
t
n
t
v
t
n
t
x
t
n
t
x
t
t
t
v
t
t
x
t
t
x
t
t
v
t
x
t
t
x
t
t
v
t
x
t
t
x
t
t
x
t
t
x
t
v
注意:v(t)=(v1(t),v2(t)) → とすれば、
v
(t
)
→ の時間積分は、
=
=
∫
∫
∫
∫
→ 1 0 1 0 1 0 1 0)
(
,
)
(
(
))
(
),
(
(
)
(
1 2 1 2 t t t t t t t tdt
t
v
dt
t
v
dt
t
v
t
v
dt
t
v
のようになる。 加速度と速度の関係 t t a t v t t v t t v t t v a∆
∆
∆
∆
− → + − = ⋅ + = → → → → → → ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( 速度の変化量も同様にして求まる。
=
−
≈
∆
⋅
∆
+
=
−
∆
+
=
+
∆
=
⇒
∆
⋅
∆
−
+
=
∆
−
+
−
∆
+
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
⋅
∆
⋅
∆
+
=
∆
+
−
∆
+
∆
⋅
=
−
∆
+
∫
∫
∑
→ → − = → → → → → → → → → → → → 1 0 1 0)
(
)
(
)
(
)
(
)
(
)
(
)
(
,
)
)
1
(
(
)
)
1
(
(
)
(
)
(
)
(
)
2
(
)
(
)
(
)
(
0 1 1 0 0 1 t t t t n kdt
t
a
t
v
t
v
dt
t
a
t
t
k
t
a
t
v
t
n
t
v
t
t
t
t
n
t
t
t
n
t
a
t
n
t
v
t
n
t
v
t
t
t
a
t
t
v
t
t
v
t
t
a
t
v
t
t
v
r
r
横軸を時刻t
、縦軸を速度v
(t
)
にとり、速度v
(t
)
の時間依存のグラフを書く。t
=
0
の軸、v
(t
)
とt
軸、 およびt =
t
とで囲まれた部分の面積をS
(t
)
とする。時刻t
とt
t
+
∆
の垂線およびt
軸、速度v
(t
)
の曲線で囲まれた部分の 面積を∆
S
(t
)
とすると、∆
S
(t
)
は黄色の長方形の部分に相当 するので、t
t
v
t
S
t
t
S
t
S
=
+
∆
−
≈
⋅
∆
∆
(
)
(
)
(
)
(
)
が成り立つ。よって、囲まれた部分の面積は、移動距離をあ らわす。また、)
(
)
(
)
(
lim
)
(
)
(
)
(
)
(
0t
v
t
t
S
t
t
S
t
v
t
t
S
t
t
S
t
t
S
t∆
=
−
∆
+
→
≈
∆
−
∆
+
=
∆
∆
→ ∆ となるので、移動距離(正確には、変位)の単位時間当たりの変化量は、速度を表す。 0 t t+∆t S(t) ∆S(t) v(t)物体の運動を考えるにあたり、次の 3 つの法則を認める。 慣性の法則: 物体に力が働かない時、物体は一定速度で動き続ける(向きや速さの変化なし)か、静止し続ける。も し物体がこのような状態(等速運動か静止状態)から変化したなら、物体に対して何らかの力が加わっ たと解釈する。このような物体の運動を式で表したものが、次の運動の法則である。 運動の法則: 物体に力が働く時、物体には、加速度が生じる。加速度の大きさは、物体の質量
m
に反比例し、力の大 きさに比例する。また、加速度の向きは、力の向きと同じ方向である。→F
:物体に加わる力(ベクトル)、 →a
:物体の加速度(ベクトル)とすれば、→F
=
m
→a
の関係が成り立つ。力の単位は[N(ニュート ン)]=[kg][m/s2]。質量は[kg]、加速度は[m/s2]で表す。この単位系を、MKS 単位系という。 物体 A について、具体的にF
→=
m
→a
の関係式を導くことを、物体 A の運動方程式を立てるという。 物体 A の運動方程式を立てる際、物体 A に働く力(の和)を考え、その力で、物体 A に加速度が生じ る事に注意しよう。物体 A が物体 B を押す力は、物体 A の運動方程式では、考慮する必要は無い。 運動方程式はベクトルで表わされるので、適当な成分に分けて運動を考えることが出来る。 作用・反作用の法則: 物体 A が物体 B に力を及ぼす時、B から同じ大きさで向きが反対の力が A に加わる。物体 A,B が静止 しても動いていても、成り立つ。この法則は、重要である。物体どうしが接する場所には、一般に力(大 きさがゼロの場合を含め)が働くからである。物体同士が接触している場合、互いに押し合う場合や、 互いに引っ張り合う場合がある。 例えば、ビルの壁を素手で殴る場合を考えよう。軽く素手で殴るなら、手は痛くない。しかし、力い っぱいに殴ろうとすれば、誰でも躊躇してしまう。なぜなら、経験から、力いっぱいに壁を殴ろうもの なら、手がすごく痛い事を知っているから。小さな力を加えれば、小さな力で壁から押し返され、大き な力を壁に加えると、大きな力で壁から押し返される。これは、作用・反作用に他ならない。 <運動方程式を立てるときの注意点> ある物体の運動方程式を記述する時には、その物体に働く力をすべて数え上げ、力の向きを考慮して運 動方程式を立てます。その際、以下のような事柄に注意してください。1~6 の手順は、物体がどのよう な運動をしていようと、運動方程式を立てる時、考えなくてはならない、重要な手順である。 1 全ての物体(物体が接している床、斜面も含む)に働く力を数え上げる。 物体 A の運動方程式を立てるとしよう。物体 A は周囲から力を受けるだけでなく、周りの物体に対 して力を加えているかもしれない。また、複数の物体が関係する運動では、お互いに及ぼしあう力を 見逃す可能性がある。1 つの物体の運動を知りたい場合でも、すべての物体に働く力を、図に書いて みよう。 2 物体 A が周囲から受ける力と、まわりの物体に対して加える力を区別する。 物体 A の運動方程式を立てるに当たり、考慮すべき力は、物体 A に働く力だけです。それ以外の力 は考慮しない。3 力の方向を考える。 力の向きが図に正しく書けないと、物体の運動(加速度、速度、力の大きさなど)を正しく求める 事ができない。 4 力の方向は、どちらが正方向でどちらが負方向なのか決める。 物体が動く方向(予め、加速度が正の値を持つと予想した向き)を力の正の向きとするのが、考え やすい。 5 1 つの物体ごとに運動方程式を立てる。 全ての物体の加速度が同じわけではない。一般に、物体ごとに運動方程式を立てる必要がある。こ れにより、物体の数だけ運動方程式が出る。 6 力を 2 つの方向に分け、運動方程式を立てるのが便利な場合がある。 力はベクトルであるから、複数の方向に分ける事が出来る。力の方向を 2 つに分ける事が出来る場 合、それぞれの方向で運動方程式を立てる。斜面を滑る物体の問題では、斜面と水平・垂直の 2 つ の方向に分ける。重力のある場合のボール投げでは、重力の働く方向と、それに対して垂直方向の 2 つに分ける。このように分ける事で、運動方程式を解く事が簡単になる。 2,3 次元の物体の運動(直線運動でない)の場合、運動方程式
F
→=
m
→a
のベクトルの性質を利用す る。ベクトルは分解できる。そこで、たとえば 2 次元の物体の運動の場合、力および加速度のベク トルを次のように水平方向と鉛直方向の 2 つの方向に分けよう。)
,
(
),
,
(
F
xF
ya
a
xa
yF
=
=
→r
こうすれば、運動方程式F
→=
m
→a
は、以下の 2 つの式に分解される。 y y x x ma F ma F = = 。 運動方程式はベクトルで記述されている。よって、物体が水平面上を動く場合や斜面を滑る場合な どでは、物体が動く方向とそれに対して垂直方向の、2 つ方向に分けて考えてよい。 今、下の図において、赤色が着目している物体から周りの物体に加える力で、青色が着目してい る物体が周囲の物体などから受ける力としよう。着目している物体の運動方程式では、青色の力だ けを考えればよい。 物体で働く力をすべて書く 物体に加わる力だけを考える1)力のつりあいの基本 (1)床の上の、静止している物体 -力のつりあい- 質量
m
(kg)の物体には、重力による力mg
(物体中央、赤い矢印)が下向きに働 く。物体m
は、大きさF
の力(物体下からの下向きの緑矢印)で床を押す(作用)。 その反作用として、床は、大きさN
で物体を押し返す(床から上向きの青矢印)。 この力N
を垂直抗力という。N
(垂直抗力)は、物体が床を押す力F
(作用)に対する反作用として生じる。作用・反作用の関 係にあるので、N =
F
の関係が成り立つ(向きが逆で大きさが等しい)。力の作用・反作用の関係は、 物体の運動の如何(静止・移動)にかかわらず、成り立つ。 垂直方向の物体の力のつりあいは、運動方程式を用いると、上向きを+にとり、加速度a
としてma
mg
N
−
=
となる。物体が静止しているので、加速度a
=
0
であり、N =
mg
が求まる。また、N ,
F
は作用・反作 用の関係にあるので、N =
F
である。これより、物体が床を押す力F
は、mg
N
F
=
=
と求まる。 (2)2 つの物体が重なった状態での力のつりあい では、複数の物体が重なっている時、物体同士に働く力の大きさ、物体 と床との力はどのようになっているのだろうか? 2 つ重なっている場合(右図)を考える。質量m
1, m
2の物体が、水平な 平面上に重なっている。その時の力関係を求める。 2 つの物体には、重力によりそれぞれm
1g
,
m
2g
の大きさの力(赤い矢印) が、図の下向きに働く。物体m
1が物体m
2を押す力(作用)をF
1とすると、物体m
2が物体m
1を大きさ 1N
で押し返す(反作用)。N
1を垂直抗力という。 物体m
2も同様に、床を押す。物体m
2が床を押す力(作用)をF
2とすると、床が物体m
2を大きさN
2 で押し返す(反作用)。この力は、床から物体m
2に加わる垂直抗力である。 運動方程式は、上向きを+にとり、m
1, m
2の加速度をそれぞれa
1, a
2とすると、 2 2 2 1 2 2 1 1 1 1 1:
:
a
m
g
m
F
N
m
a
m
g
m
N
m
=
−
−
=
−
となる。また、作用・反作用の関係で、N
1=
F
1,
N
2=
F
2が成り立つ。物体は、重なったままで動かな いなら、a
1= a
2=
0
であるので、
+
=
+
=
=
=
→
=
−
−
=
−
g
m
m
g
m
F
N
g
m
F
N
g
m
F
N
g
m
N
)
(
)
(
0
0
2 1 2 1 2 1 1 1 2 1 2 1 1 となる。 ここで、重要な点。質量m
2の物体に働く垂直抗力N
2≠
m
2g
、物体m
2が床を押す力N
2≠
m
2g
であ る。幾つかの物体が重なっていると、複数の物体の質量に対応した力(重力による力)で床を押す。す なわち、床と接する物体の質量だけではなく、重なった全ての物体の質量に対応した重力で床を押す。 また、その反作用で床が物体を押し返す力の大きさは、重なった全ての物体の質量に相当した力として の垂直抗力になる。 mg N Fm
1 N1 F1 N2 F2m
2m
1g
m
2g
例題 1 物体に力を加える場合のつりあい 質量
m
の物体が、水平な床の上にある。質量m
の物体を大きさF
0の力で鉛直上向きに引く場合、下 向きに押す場合の2つの場合で、物体m
が水平面から押される垂直抗力の大きさを求めよ。 解説と解答 鉛直方向の力だけを考える。物体m
には重力による力mg
が働く。物体m
が床を押す(作用)力F
に 対する反作用として、床が物体を押す力(垂直抗力)N
が生じ、物体m
を押し返す。また物体には、F
0 の大きさの力が加わっている。鉛直方向上向き を(+)にとれば、符号を含めてその力は、上 向きに引くときは+
F
0、下向きに押すときは、 0F
−
となる。 鉛直方向の運動方程式は、物体m
の加速度 をa
として、垂直上方向を正(+)にとり、ma
mg
F
N
+
(
±
2)
−
=
。 となる。ここで±
の符号は、先ほど説明したとおり。また、作用・反作用の関係から、N =
F
が成り立 つ。さて、物体m
が動かないので、a
=
0
から、)
(
F
0mg
N
=
+
±
を得る。物体を上に引く場合、物体m
が床を押す 力F
=
N
=
mg
−
F
0であり、物体m
に掛かる重力 による力mg
よりも小さな値になっている。一方、 物体を押す場合、F
=
N
=
mg
+
F
0となり、物体m
だけの場合と較べて大きな力で床を押す。 例題 2 質量m
1, m
2の物体が、水平な平面上に重なっている。また、質量m
1の 物体は、大きさF
0の力で鉛直下方向に押されている。その時、床が質量m
2 の物体をおす垂直抗力、および質量m
1, m
2の物体が互いに押し合う力の大 きさを求めよ。 解説と解答 最初に、質量m
1の物体に働く力を考えよう。質量m
1の物体には、重力 による力m
1g
が鉛直下方向に働く。また問題設定から、質量m
1の物体に は鉛直下向きにF
0の力が働く。さらに、質量m
1, m
2の物体同士が接して いるので、質量m
1の物体が質量m
2の物体を押す。その力をF
1とする。 力F
1に対する反作用として、質量m
2の物体が質量m
1の物体を押し返す。 その大きさをN
1とする。作用・反作用の関係から、F =
1N
1である。 続いて、質量m
2の物体に働く力を考えよう。まず質量m
2の物体には、重力による力m
2g
が鉛直下方 向に働く。また、質量m
1の物体から鉛直下向きにF
1の力で押され、その反作用として、質量m
2の物体 F0 床 N mg F F0 床 N mg 物体に加わる力だけ F0 床 N mg F F0 床 N mg 物体に加わる力だけm
1 N1 F1 N2m
2m
1g
m
2g
F0 F2m
1m
2 F0は、質量
m
1の物体を大きさN
1の力で鉛直上向きに押し返す。さらに、質量m
2の物体は水平面と接して いるので、質量m
2の物体が水平面を鉛直下方向に押し(その力の大きさをF
2とする)、水平面から大き さN
2の力で鉛直上方向に押し返される。N
2は、物体m
2に対する垂直抗力である。作用・反作用の関 係から、F =
2N
2である。 以上で、2つの物体に働く力が分かった。そこで、運動方程式を立てる。運動方程式は、上向きを+ にとり、m
1, m
2の加速度をそれぞれa
1, a
2とすると、 2 2 2 1 2 2 1 1 0 1 1 1:
:
a
m
g
m
F
N
m
a
m
F
g
m
N
m
=
−
−
=
−
−
となる。また、作用・反作用の関係で、N
1=
F
1,
N
2=
F
2が成り立つ。物体が、互いに重なったままで 動かないなら、a
1= a
2=
0
であるので、 + + = + = + = = → = − − = − − 0 2 1 2 1 2 0 1 1 1 2 1 2 0 1 1 ) ( ) ( 0 0 F g m m g m F N F g m F N g m F N F g m N となる。質量m
1の物体を力F
0で押す影響は、物体m
2に対する垂直抗力の大きさに跳ね返っている。 例題 3 エレベーターでの運動 エレベーターにばね式体重計をのせ、その上に質量m
(
kg
)
の人が乗る。エレベーターが上向きに大き さa
(
m/s
2)
の加速度で上昇している時、体重計はいくらの体重(見かけの重さ)を示すか?なお、重力 加速度をg
(
m/s
2)
として、質量M
(
kg
)
の人が動かない平面にある体重計に乗った時、体重計には)
m/s
kg
(
⋅
2Mg
の大きさの力が加わるので、体重計はM
(
kg
重)
を示す。 解説と解答 人が体重計を押す力をF
とし、体重計が人を押しかえす力をN
とすれば、 作用・反作用の関係で、F =
N
が成り立つ。エレベーターの加速度をa
と すれば、上向きを(+)にとり、人の運動方程式は、)
(
g
a
m
N
ma
mg
N
−
=
→
=
+
見かけの重さは、力N
をg
で割った値なので、 g a g m +(
kg
重)
である。 例題 4 自分をロープで引き上げる 図のように、質量m
(
kg
)
の人が、質量M
(
kg
)
の台の上に載っている。 台は水平な床の上にある。台につけられた質量の無視できるロープは、 滑車を介して人が手で持っている。滑車とロープとの摩擦を無視する。 重力加速度をg
(
m/s
2)
として、以下の問いに答えよ。 (1) 人がロープを下向きに大きさT
(
N
)
の力で引くとき、台が人を押す 力を求めよ。 (2) (1)の時、水平面が台を押す力を求めよ。 mg N F(3) 人が台ごと水平面から浮き上がるためには、人がロープをある大きさの力(
T
0とする)よりも大 きな力で引く必要がある。その大きさT
0を求めよ。 (4) 人が台ごと水平面から浮き上がるためには、人と台の質量の間に、ある関係式が成立しなければな らない。その関係式を求めよ。ただし、人は台の上に乗っている だけで、乗っている人の靴が台に固定されていない(人が上にジ ャンプすると、人と台が離れる)とする。 解説と解答 人、台、水平面に加わる力は、問題の絵を簡略化して書くと、右図 のようになる。ここでF
1, N
1は、それぞれ、人が台を押す力、その反 作用として台が人を押し返す垂直抗力である。またF
2, N
2は、それぞ れ、台が水平面を押す力、その反作用として水平面が台を押し返す垂 直抗力である。ここでは、人がロープを引く力、台がロープを引く力 は書いていない。 人がロープを引くと、その反作用としてロープが人を同じ大きさの力で引く。ロープが台を引くと、 その反作用で台がロープを引く。ロープの質量が無視できるなら、ロープの両端の張力は同じになる。 よって、図のような力と向きになる。ロープの力は、人も上向きに引くし、台に対しても上向きに引く。 さて、それぞれの運動方程式は、上向きを(+)にとり、人、台の加速度をa ,
ma
M とすれば、以下の ようになる。また、作用反作用の関係でF
1=
N
1,
F
2=
N
2が成り立つ。
=
+
−
−
=
+
−
M mMa
N
Mg
F
T
ma
N
mg
T
2 1 1 人、台の加速度a
m,
a
M=
0
として、F =
1N
1の関係も使用して、
−
+
=
+
−
+
−
=
+
+
−
=
−
=
→
=
=
+
−
−
=
=
+
−
T
g
m
M
Mg
T
mg
T
Mg
F
T
N
T
mg
N
Ma
N
Mg
F
T
ma
N
mg
T
M m2
)
(
)
(
0
0
1 2 1 2 1 1 。 これより、(1)の答えはN
1=
mg
−
T
。(2)の答えは、N
2=
(
M
+
m
)
g
−
2
T
。 (3) 台が人ごと上がるためには、「水平面が台を押す垂直抗力N
2=
0
となる時のロープを引く力」より も大きな力でロープをひけばよい。台が水平面から離れる直前(N
2=
0
)でのロープを引く力がT
0で ある。g
m
M
T
T
T
g
m
M
F
N
N
(
)
2
1
0
2
)
(
0
2 2 0 2=
→
=
=
+
−
=
→
=
=
+
。 よって、 (M m)g 2 1 + よりも大きな力でロープを引けばよい。 (4) 人がロープを引く場合、その力の最大値は、ロープに人が宙吊りにぶら下がった時にロープを引く 力である、自身の体重mg
である。よって、仮に人が台を押す力F
1=
0
(人と台が接触するだけで、力 を互いに及ぼさない状態)としても、台ごと人が上がるためには、少なくともM
m
g
m
M
mg
>
(
+
)
→
>
2
1
を満足しなければならない。この式は、人が台よりも軽ければ、人がロープにぶら下がったとしても、 mg N1 F1 N2 F2 T T Mg台が上に上がらないという、当たり前の事を言っている。 補足:もし人の履いている靴が台に固定されてあり、かつ人の腕力が十分あれば、仮に
m <
M
でも人 は台ごと上向きに上がる事が出来る。T ≤
mg
の場合はすでに考察したので、人と台が互いに固定され た状態で、m <
M
かつT >
mg
の場合を考察しよう。先の解説の図で、文字F ↔
1N
1の入れ替えをし、 力の釣り合いを議論(右図)しよう。F
1は人が台を上向きに引く力、N
1は台 が人を下向きに引く力とする。なお、図で人・台がロープを引く力の矢印は少 略した。 運動方程式から、人、台の加速度a
m,
a
M=
0
とし、F =
1N
1の関係も用い、 − + = + − − − = + − − = − = → = = + − + = = − − T g m M Mg mg T T Mg F T N mg T N Ma N Mg F T ma N mg T M m 2 ) ( ) ( 0 0 1 2 1 2 1 1 となる。台が水平面から離れる直前の条件N
2=
0
から、g
m
M
T
T
g
m
M
N
(
)
2
1
0
2
)
(
2=
+
−
=
→
=
+
をえる。T
をいくらでも大きく出来るなら、T
=
(
M
+
m
)
g
/
2
にする事は可能。 (3) ばねの伸縮による力 ばねを伸ばしたり縮めたりすると、力がいる。ばねを伸ばせば伸ばすほど、力が必要だ。また、長さ を短くしようとして、ばねがどこかに飛んでいったりすることもある。このように、ばねの長さを変え ようとすると、それに応じて、ばねに力を加えなくてはいけない。 ばねを、摩擦のない滑らかな水平面上に力を加えずに置く。そ の時のばねの長さを、自然長という。ばねを自然長から長さx
(
m
)
伸ばす(縮める)のに必要な力の大きさf
(
N
)
は、ばね定数を)
N/m
(
k
として、f =
kx
で与えられる。ばねには、このような性 質があると考えよう。もしばねをあまり長く伸ばすと、伸びきってしまい、元に戻らなくなる場合もあ るが、そのような事が起こらないとして、ここでは考える。また、ばねには質量があるが、質量=ゼロ として問題を扱うことが、よくある。 例題 重力とばねによる力の釣り合い 天井と床の距離を、l +
1l
2とする。自然長での長さl
1ばね定数k
1のばね、 および自然長での長さl
2ばね定数k
2の 2 つのばねを、質量m
の大きさの無 視できる質点を介してつなぐ。なお、ばねは横方向にたるんだり傾いたり せず、垂直方向にだけ伸び縮みするものとする。また、ばねの質量は無視 する。この時、ばねの伸びを求めよ。 解説と解答 質量m
の質点は、長さl
1のばねを伸ばし、長さl
2のばねを縮める。長さl
1のばねの伸び(長さl
2のば mg F1 N1 N2 F2 T T Mg x fx m k1 l1+x l2 - x k2 l1+12ねの縮み)を
x
とする。この時、長さl
1のばねは縮もうとし、長さl
2のばねは伸びようとする。いずれ も、自然長の長さになろうと、ばねの長さが変化しようとする。 さて、長さl
1のばねがx
伸びると、ばねは天井および質点を、x
k
f
=
1 の力で引く(青色の矢印)。一方長さl
2のばねはx
縮むので、 質点および床を、f
=
k
2x
の力で押す(青色の矢印)。緑色の矢印は、 質点がばねに加える力である。右図には、ばねと天井、ばねと床の 間に働く力も記入してある。それぞれ、作用・反作用の関係で、同 じ大きさとなる。ばねの位置と力の位置は、わざとずらしてある。 さて、質量m
の物体の運動(実際は、静止状態)を考えよう。質 点の上方向を(+)方向にとり、物体の加速度をa
とすれば、質点の 運動方程式は右の拡大図を参照して、ma
x
k
mg
x
k
x
k
f
x
k
f
ma
f
mg
f
=
+
−
→
=
=
=
+
−
2 1 2 1,
'
'
と な る 。 質 点 は 静 止 し て い る の で 、 加 速 度a
=
0
。 よ っ て 、 0 2 1x−mg+k x=ma= k より、x
として、以下の値を得る。 2 1 k k mg x + = 。 l1+x l2 - x f’=k2x mg f=k1x mg2)水平面での物体のつりあい・運動 (1)摩擦のない水平面での運動 水平方向/ 右向きに力 F がかかる(例えば、糸で引っ張る)場合 右向きを正に取り、力