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宇宙太陽発電システムのキー要素技術の開発,三菱重工技報 Vol.48 No.4(2011)

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Academic year: 2021

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(1)

*1 航空宇宙事業本部宇宙事業部宇宙システム技術部 *2 航空宇宙事業本部宇宙事業部宇宙システム技術部主席技師 *3 航空宇宙事業本部宇宙事業部宇宙システム技術部課長 *4 航空宇宙事業本部宇宙事業部グループ長

宇宙太陽発電システムのキー要素技術の開発

Development of Key Technologies on Space Solar Power System

成 田 貴 則* 1 神 谷 俊 宏* 1

Takanori Narita Toshihiro Kamiya

鈴 木 敬 二* 1 安 間 健 一* 2

Keiji Suzuki Kenichi Anma

新 津 真 行* 3 福 田 信 彦* 4

Mayuki Niitsu Nobuhiko Fukuda

当社は,将来のクリーンで安全な枯渇しないエネルギー源として期待されている宇宙太陽発電

システム(SSPS:Space Solar Power System)の実現に向けて,国の研究機関などと協力して,その 技術開発に取り組んでいる.宇宙太陽発電システムの実現に向けて最も重要なキー要素技術 は,“無線電力伝送技術”と“大型宇宙構造技術”であり,当社はこの2つの技術開発に重点的に 取り組んでいる.本報告では,当社が取り組んでいるこの2つのキー要素技術の研究開発につい て,その状況及び成果を紹介する.

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1.

はじめに

宇宙太陽発電システム(SSPS:Space Solar Power System)は,宇宙空間にあふれている太陽光 から発電する発電プラントであり,クリーンで枯渇しないエネルギーであり,将来のエネルギー問 題・地球温暖化問題を解決するエネルギー供給システムとして期待されている.現在,国の研究 機関や大学などとともに研究開発を行っている.また,宇宙太陽発電システムで開発研究されて きた無線電力伝送技術は,電気自動車への無線充電や離島・遠隔地への無線電力伝送など地 上の他分野への応用が可能であるため注目を集めている.

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2.

宇宙太陽発電システム

宇宙太陽発電システムのシステム概要を図1に示す. 図1 システム概要

(2)

宇宙太陽発電システムは3万6千 km 離れた静止軌道上で,多数の太陽電池を展開し,これで 発電した電力を,マイクロ波/レーザに変換して地上へ向けて放射する.マイクロ波/レーザの ビーム方向を制御することで,地上に設けた受電設備で安全に受電することができる.受電設備 においては,受電したマイクロ波/レーザを商用電力網へ接続するためのエネルギー変換を行 う.受電設備周辺や上空は立入/飛行規制区域を設けるとともに,万一軌道上システムが故障し た場合においても,ビーム制御の冗長化機能により受電設備以外の方向へビームが放射されな いように安全性が確保されている.宇宙空間では,昼夜や天候に左右されることなく 24 時間太陽 光を受けることができるため,効率良く安定して発電が行うことができる.本システムは,火力発電 所一基分(400MW 級)相当の電力を供給し,現状の一般供給電力と同レベルの電力価格で, 2030 年頃の商用運用を目指している(表1). 表1 ロードマップ

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3.

無線電力伝送技術(PAC法,並列化法)の開発

(1) 基本原理 宇宙太陽発電システムにおいてマイクロ波により地上へ無線電力伝送を行う場合を考え る.静止軌道上の発送電パネルは,数千万枚で構成されており,これらのパネルからマイクロ 波ビームを合成するには,各パネルのマイクロ波の位相を非常に高精度(経済性/安全性な どの観点からは,10°以下が目標となる)に制御する送電制御技術が必要となる(図2). 図2 送電制御技術の目的

当社は,この送電制御技術として,2つの手法(PAC(Position and Angle Correction)法,並 列化法)の研究を進めている.PAC法は,地上からのパイロット信号を利用して,各発送電パ ネルにおけるパイロット信号の到達位相,角度を検出し,それらを基に各発送電パネルのマイ クロ波の位相差から位置ズレを推定し,ズレている分だけ各発送電パネルのマイクロ波の位相

(3)

を補正する方法である(図3).並列化法は,発送電パネルごとに送電用のマイクロ波の位相変 調を行い,受電側で基準となる周波数のマイクロ波との重ね合わせをすると,位相変調を行っ たマイクロ波と,基準となるマイクロ波との位相差分だけ,変調周波数に出力が発生する原理を 利用して,発送電パネルごとのマイクロ波の位相差を検出し,検出した差分だけ各発送電パネ ルのマイクロ波の位相を補正する方法である(図4). 図3 PAC法基本原理 図4 並列化法基本原理 (2) 基本実験ユニットの開発 当社では,このPAC法及び並列化法の基本性能を確認するための基本実験ユニットを,京 都大学・生存圏研究所の研究設備としてH22 年度に開発している. PAC法基本実験ユニットは,パイロット信号送信部,位相検出部,制御PCで構成され る(図5).パイロット信号送信部は,2.94533GHzのパイロット信号をスペクトラム拡散により暗号 化を行い送信する.位相検出部では,パイロット信号送信部からのパイロット信号を2つの発送 電パネルを模擬したアンテナで受信し,信号の解読,ダウンコンバート,I/Q復調を行う.制御 PCは,I/Q復調のデータから,2つのアンテナにおけるパイロット信号の位相差を検出す る(図6). 並 列 化 法 基 本 実 験 ユ ニ ッ ト は , マ イ ク ロ 波 送 信 部 , モ ニ タ 部 , 制 御 P C で 構 成 さ れ る(図7).マイクロ波送信部では,5.8GHzのマイクロ波に対して,100kHz,130kHzの位相変 調を行い,2つの発送電パネルを模擬したアンテナから,それぞれの変調波を送信する.モニ タ部では,変調波を受信し,基準となる信号の周波数との重ね合わせ,I/Q復調を行う.制御P Cは,I/Q復調のデータから,信号処理(フーリエ変換)を行うことで,2つのアンテナごとの位相 差を検出する(図8).

(4)

図5 PAC法基本実験ユニット外観 図7 並列化法基本実験ユニット外観 図6 PAC法基本実験ユニット機能ブロック図 図8 並列化法基本実験ユニット機能ブロック図 (3) 試験結果 PAC法基本実験ユニットでは,2つの発送電パネルを模擬したアンテナのアンテナ間距離 を±1.4mm ずらし,パイロット信号の位相差の検出精度の確認を行った(図9).その結果,検 出精度は1°以下となった(図10). 並列化法基本実験ユニットでは,2つの発送電パネルを模擬したアンテナのアンテナ間距離 を±0.7mm ずらし,2つのアンテナの位相差を検出した(図11).その結果,PAC法と同様に, 並列化法についても,検出精度は1°以下となった(図12). (4) まとめ 送電制御技術として,PAC 法及び並列化法を考案し,これらの基本性能として,位相ズレの 検出精度を評価した.その結果,どちらの手法においても,位相ズレの検出精度は1°以下と なり,この精度で位相ズレを補正できることが確認できた.以上から,この2つの方式共に目標 の 10°以下で位相制御が可能であり,送電制御技術として有効であることが確認できた.

(5)

図9 PAC法試験コンフィギュレーション 図10 PAC法試験結果 図12 並列化法試験結果 図11 並列化法試験コンフィギュレーション

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4.

大型宇宙構造技術(インフレータブル構造)の開発

(1) 実機構想 宇宙太陽発電システムを構成する構造体は,軌道上へ輸送するために小さく折り畳み,軌 道上で大きく展開するインフレータブル展開構造技術が必要となる.インフレータブル展開構 造技術は,宇宙空間での展開技術と,展開後の硬化技術が主な課題である. 当社は,展開方式は,硬化前の複合材料を折り畳んだ構造体を外力により展開し,その後, 内部に膨張用ガスを供給することにより膨張する方式とし,硬化方式は,構造体に予め連鎖硬 化ポリマー(1)を含浸させておき,展開後に構造体の一部に光(紫外線)や熱を照射し,照射によ る硬化で発生する反応熱を引き金とする硬化反応が連鎖的に進行することにより,構造体を硬 化させる方式を提案している.本方式では構造体全体を加熱する必要がないため,硬化に要 する付帯質量を削減できる効果が期待できる.

(6)

(2) 試験概要 展開技術と展開後の硬化技術を実証するため,2010 年度(独)宇宙航空研究開発機構 (JAXA)研究開発契約により,織物と連鎖硬化ポリマーからなるインフレータブルチューブ単体 を試作し,展開硬化試験を実施した. 試験は始めに,連鎖硬化ポリマーを含浸させた織物を円筒形状に成形し,インフレータブル チューブを試作した.その後,インフレータブルチューブを折り畳んで収納し,実機における外 力での展開を模擬するため,端末に付けたワイヤーで引っ張り,展開した.次に,インフレータ ブルチューブ内部にガスを供給して膨張させた.その後,インフレータブルチューブの外側か ら人工太陽灯を照射して連鎖硬化反応を発生させ硬化させた.連鎖硬化反応時には熱が発 生するため,サーモグラフィーを用いて反応の進行の様子を確認した(図13). (3) 試験結果 試験の結果,連鎖硬化反応が発生し,インフレータブルチューブが全面硬化したことを確認 した(図14).サーモグラフィーの画像から,連鎖硬化反応がインフレータブルチューブ下端か ら上端に向けて進行している様子を確認した(図15).試験結果から今後の適用に向けた課題 を抽出した. (4) まとめ 織物と連鎖硬化ポリマーからなるインフレータブルチューブ単体を試作し,展開技術と展開 後の硬化技術の実証を行い,実機への適用性を有することを確認した. 図13 試験概要 図14 硬化後の インフレータブ ルチューブ 図15 サーモグラフィー画像

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5.

まとめ

宇宙太陽発電システムは,エネルギー問題や地球温暖化問題を解決する将来の基幹エネル ギーとして期待されている.当社は,これまで無線電力伝送技術や大型宇宙構造技術などの,キ ー要素技術の開発を実施してきた.今後も,技術課題への挑戦を続けるとともに,地上/宇宙実 証にも取り組み,宇宙太陽発電システムの実現に向けて積極的に取り組んでいく.

参考文献

(1) 林ほか,機能性高分子材料の開発と用途展開,三菱重工技報 Vol.41 No.1 (2004) p.62-63

参照

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