55.「 夫 立 ち会 い 出 産 」 に よ る 夫 婦 間 の
赤 ち ゃ ん イ メ ー ジ の 変 化 の 差
鹿児島純心女子大学 看護学部
○鮫 島 雅子
I.緒 言 BelskyとKelly(安 次嶺桂子訳,1)は,始 めて の 子 ど もの 誕 生 に 伴 う親 へ の移 行 の なか に,夫 婦 を隔 て て い く 「分 極化 傾 向」 が 存在 し,そ の 原 因 は生 物 学 的 性 差 や そ れぞ れ の個 別 的 な 背 景 の 違 い に あ り,こ れ らの 違 い を越 え て相 互 に影 響 しな が ら発 達 を 遂 げ る こ とを見 いだ して い る。 鮫 島2)は 妊 娠 中 期 か ら出産 後3カ 月 ま で の父 親 と母 親 の 心 理 的 変 容 を研 究 す るな か で,「 夫 立 ち会 い出 産 」 の 有 無 に よ り,夫 婦 の変 化 のパ ター ン に違 いが あ る と推 察 した。 具 体 的 には, 「夫 立 ち会 い出 産 」 を行 っ た 夫婦 は,父 親 と母 親 が 同様 な 変 化 を示 し,逆 に行 わ なか った 場 合 は,母 親 が 先 に大 き く変化 を遂 げ,父 親 は遅 れ て 緩 や か に変 化 を遂 げ る こと で あ る。 つ ま り, 親 へ の移 行 に対 して 「夫 立 ち 会 い 出産 」 は,夫 婦 の関 係 性 へ の 影 響 要 因 で あ る と考 えた 。 本 研 究 は,親 へ の 移 行 に 伴 う心 理 的変 容 を赤 ち ゃん イ メー ジ と して 捉 え た 上 で 、 「夫 立 ち 会 い 出産 」 の 有 無 によ る 夫 婦 間 の変 化 の差 を明 ら か にす る こ とを 目的 とす る 。 II.研 究 方 法 1,対 象 初 産 の 両 親43組(在 胎 週 数;39.1± 1.08週 ・出 生体 重;30002.6±4362.7g・ 母親; 27.7±3.8歳 、 父親;29.0±4.1歳)で,母 子 と も に経 過 中 に著 明 な 異 常 は な か った 。 全 対 象 者 に研 究 の 主 旨 を 説 明 し協 力へ の 同意 を得 た 。 2,方 法 1)尺 度 赤 ち ゃ ん イ メー ジ と い う心 理 的 変 化 を捉 え る 尺 度 と して 、対 児感 情(接 近 感 情(14 項 目)・ 回 避 感情(14項 目))と 育 児 動 機(14 項 目)(花 沢,1992)3)を 採 用 した 。 「現 在 あ な た は,赤 ち ゃ ん に つ い て ど の様 な イ メー ジ を もっ て ま す か?」 と 質 問 し,'非 常 にそ の通 り (4点)'∼'そ ん な こ とは な い(1点)'の4 件 法 に て 回 答 を得 た。 2)調 査 方 法1995年8月 ∼1996年12月 の 期 間 に,「 妊 娠 後 期;妊 娠28週 ∼ 分 娩 前 」 と 「出 産 後1週 間;出 産 後7日 ∼21日 」 の 出 産 前 後 に 同 一 個 人 に 郵 送 法 に て 縦 断 的 に 調 査 し た 。 3,分 析 手 順 1)対 象 の 分 類 「夫 立 ち 会 い 出 産 」 有 り 群 (以 下 有 り群)(父 親n=30,母 親n=30)・ 「夫 立 ち 会 い 出 産 」 無 し 群(以 下 無 し 群)(父 親n=13,母 親n=13)に 分 類 し た 。 2)分 散 分 析 素 点 に つ い て,有 り群 ・無 し群 そ れ ぞ れ に,父 母(2)× 出 産 前 後(2)の2要 因2水 準 で の 分 散 分 析 を 行 っ た 。 統 計 ソ フ ト は ANOVA-4 Ver.1.10β(Kiriki,1991)で あ る 。 III.結 果 1,接 近 感 情 有 り 群 の 出 産 前 後 条 件 の 主 効 果 が 有 意(F(1,58)=4.343,p<.05)で 出 産 後 に 高 ま っ た 。 無 し 群 の 父 母 条 件 の 主 効 果 が 有 意 傾 向 (F(1,24)=3.769,p<.10)で 母 親 が 高 か っ た 。 そ の 他 の 主 効 果 と 交 互 作 用 は な か っ た(図1)。 夫立ち会 い出産有 り群 夫立ち会 い出産無 し群 図1接 近感情 の変化2,回 避 感 情 いず れ の 主 効 果 ・交 互 作 用 と も 認 め られ な か った(図2)。 夫立ち会い出産有 り群 夫立 ち会い出産無 し群 図2 回避感情 の変化 3,育 児 動 機 有 り 群 の 出 産 前 後 条 件 の 主 効 果 が 有 意 傾 向(F(1,58>=3.721,p<.10)で 出 産 後 に 高 ま っ た 。 無 し 群 の 父 母 条 件 の 主 効 果 が 有 意 傾 向(F(1,24)=3.520,p<.10)で 母 親 が 高 か っ た 。 そ の 他 の 主 効 果 と 交 互 作 用 は 有 意 で な か っ た(図3)。 夫立ち会 い出産有 り群 夫立ち会い出産無 し群 図3 育児動機の変化 IV.考 察 1,接 近 感 情 ・育 児 動 機 と い う肯 定 的 感 情 を, 有 り群 で は夫 婦 一 緒 に 高 め る が,無 し群 で は, 母 親 の み が 高 ま り,父 親 の変 化 は 乏 しか っ た。 つ ま り,「 夫 立 ち会 い出 産 」 を行 う と夫 婦 が一 体 とな って 心 理 的 変 化 を遂 げ る が,行 わ な か っ た場 合 に は,父 親 と母 親 は 別 々 に 心理 的変 化 を 遂 げ る と言 え る。 上田 ら4)は 夫 立 ち 会 い 出産 へ の動 機 は 「出 産 は 夫 婦 協 同 で 」 が最 も多 く,出 産 が 夫 婦 関 係 の あ り方 へ の 重 要 な契 機 で あ る と 報 告 して お り,こ れ を 支 持 す る結 果 と言 え る。 また,「 夫 立 ち 会 い出産 」 は 「分 極 化 傾 向 」1) を抑 制 す る一 要 因 で あ る とも考 え られ る。 2,回 避 感 情 と い う否 定 的感 情 に つ い て は, 「夫 立 ち 会 い出 産 」 の 有 無 に よ る効 果 は認 め ら れ な か った 。 3,本 研 究 の 問 題 点 と して,デ ー タ数 が 少 な い こ とが 挙 げ られ る 。 ま た,施 設 の特 色 か ら,父 親 が 出産 に対 して積 極 的 で あ っ た と思 わ れ,出 産 前 か ら,夫 婦 間相 互 に親 へ の移 行 に対 して の 前向 きな 影 響 を 与 え 合 っ て い た こ と も考 え られ る。 これ らを考 慮 す る と,今 回 の結 果 が 即 座 に 普 遍 性 を持 つ とは 言 い が た い。 V.結 論 1,出 産 前 後 の 短期 的変 化 にお いて,肯 定 的 感 情 は,有 り群 で は 夫 婦 と も に 出産 後 に高 ま り, 夫 婦 で 一 緒 に 変化 して い た。 しか し,無 し群 で は母 親 の 方 が 高 く,夫 婦 間 の差 が 認 め られ た 。 また,否 定 的 感 情 に は効 果 が な か った 。 2,「 夫 立 ち 会 い 出産 」 は肯 定 的 な 感 情 に関 し て,夫 婦 間 の 変 化 を 規程 す る可 能 性 が あ る。 謝 辞> ご協 力 いた だ き ま した産 婦 人科 お よ び 助 産 院,対 象 者 の 方 々 へ 深 く感 謝 いた し ます 。 付 記> 本 研 究 は山 口大 学 大学 院へ 提 出 した 平 成8年 度 修 士 論 文 の デ ー タ の一 部 を新 た に分 析 した も ので あ り,熊 谷 信順 教 授 に ご指 導 を賜 った 。 引用 文 献
1)BelskyJ,Kelly.J.:The transition to paren-thood,1994.安 次 嶺 桂 子 訳,子 ども を も つ と 夫婦 に何 が 起 こる か,草 思社,1995. 2)鮫 島雅 子:父親 の 変容 に関 す る発 達 心 理 学 的 研 究,山 口大 学 大 学 院修 士論 文(未 公 刊),1997. 3)花 沢 成 一:母 性 心 理 学,医学 書 院,1992. 4)上 田礼 子 他:夫 立 ち 会 い に よ る 分娩 とそ の 意 義 に関 す る追 跡 的研 究(第1報),母 性 衛 生, 23(1),1982.
56.産
後2年 までの産痛強度 の記憶に関する縦 断的研 究
(第1報)―
上昇群と下降群の比較―
三重大学医学部看護学科
我部山キヨ子
I.は じめに 出産時 の身 体的苦痛 や 不快 な体験 は,苦 痛 が消 失 した産 後 にお いて も不快 な 体験 と して維 持 さ れ ること1-2)や,出産体験 が異常 な女性 は育児やそ の後の親子 関係 に悪影響 を及 ぼす こ と3)が報告 さ れ てい る。 このよ うに,産 痛 や出産体験 は産後の 生活 や親子関係 に重大 な影響 を及ぼす。 著者 は産 後 にお け る産痛 強度 の変化 を縦 断的 に調 べてお り,出 産直後 の産痛 強度が産後 もほ と ん ど減 弱せず,か え って出産 直後 よ りも産後 の産 痛強 度 が 高値 にな る人 も認 め られ るこ とを報告 した4)。産痛強 度の時系列的 な上昇 ・下降 に影響 す る因子 の調査 は,諸 外国 で も見 あた らない。産 後 にお け る産 痛評 価 の増減 に影 響す る因子 を調 べ るこ とは,産 後 の生活改善 や結婚 生活 ・親子関 係 の適応 を図 る上 でも意義は大 きい。 杢 研究の 目的 は,産 後 にお ける上昇群 と下降群 の産痛強度 の時系列変化 を調査 し,そ れ に影 響 す る因子 を明 らかにす るこ とであ る。 II.対 象 と方法 1.対 象:産 科 病棟 を備 えた4施 設 で37週 以 降 に経膣 分 娩 し,調 査 の趣 旨 に同意 の得 られ た 447人 に,産 後の4時 期(分 娩後24時 間以 内, 産後5日,産 後1カ 月,産 後1∼2年)の 産痛 強 度 の記憶 とその影 響 因子 につ い て質問 紙調 査 を 行 った。4時 期 ともに有効 な回答は,196人(初 産 婦101人,経 産婦95人)で あった。 2.方 法:デ ー タの収集法 は,病 歴 の読み とり 調 査 と統制型 の 自己記入 式質問紙 調査 を行 った。 読 み と り調査 では身体的 因子(年齢・分娩所要時間・周 産期異常など)を,質 問紙 調査 では産 痛 ・心理的(出産 体験 ・出産の軽重・自己概念など)・生活環境 因子(職業 ・ 産後のサポー ト・児の栄養法 ・育児に慣れた時期など)を収 集 した。産痛強度 の測 定 は,痛 み の測 定具 として 一 般 化 され て い る10cmのVisual Analogue Scale5)(以下VAS)を 用い た。 なお,自 己作成の質 問紙 のcronbachα 係数 は0.69∼0.76で あ った。 III.結 果 1.4時 期 の産 痛強度 の時系 列変 化 図1は,産 痛強度 の4時 期 の時系列 変化 の類 型 であ る。全体 で は出産 直後 と1年 以降 の産痛 強度 が同 じで ある同値群(一定型 ・上昇型 ・下降型 ・変動型) が46.8%と 最 も多 く,次 いで1年 以降 の産痛強度 の記憶 が出産 直後 よ りも低 い 下降群(出産時最高値 型 ・変動型)が40.8%と 多 く,1年 以降 の産痛 強度 の記 憶 が出産 直後 よ りも強 い上 昇群(出産時最低値 型 ・変動型)は12.2%と 最 も低 率 で,下 降群 の1/3 で あった。なお,経 産婦 の上昇群 は19.0%で,初 産婦の6.0%よ りも有意 に高率 で あった。以 下, 上昇群 と下降 群の特徴 を明確 にす るために,出 産 時最低値 型上昇群(以下,上 昇群)と出産 時最 高値 型 下降群(以下,下 降群)を 比較 した。 2.上 昇群 と下降群 の産痛 強度 の時 系列推移 下降群 の産痛強度 は,図2に 示す よ うに,上 昇 群 よ りも産後1カ 月 まで は有 意 に高値 を示 した が,1年 以降 では逆に上昇群 の産 痛強度 が有意 に 高値 とな った。 また,両 群 ともに出産直後 と1年 以 降の産痛強度 の間に は有 意の差 が認 め られ,初 産 ・経 産 ともに同様 の傾 向を示 した。 3.上 昇群 ・下降群 の産痛 と各因子 の相 関 上昇群 と下降群 の産痛 と各 因子 の相 関を見 る と,上 昇 群の産痛 強度 と4時 期 ともに有 意な正 の 相 関を示 したの は,妊 娠中の 体重増加 ・分娩所要 時間 で,4時 期 ともに有意 な負の相 関 を示 した の は夫 の年齢 で あった。その他 に1カ 月以降 では育 児 に慣れ た時期 ・育児 の大 変 な時期 の終 了時期 ・ 持続 期間 で有意 な正の相 関を,出 産 時の 自己制御 で負 の相 関を示 した。 一方,下 降 群では分娩所 要時間 と児体 重で有意 な正 の相 関 を示 し,出 産時 の 自己制御 で有意 な負の相 関を示 した が,育 児因子 との関連 はなかっ た。 4.数 量化II類 による上 昇群と下 降群の 判別 表1は,上 昇群 と下降群 を基準変数 とし,身 体 的 ・心理的 ・生 活環境 因子 を説明変 数 として,数 量化II類 を行 った結果 であ る。プラ スの スコアは 上昇群 に,マ イナ スのス コア は下降群 に寄 与す る。 全 体で上昇群 ・下降群の判別 に寄与 したのは, 出産回数 ・児 体重 ・産後異 常 ・夫の年齢 ・児 の栄 養 法の5項 目で,上 昇 群 に寄 与す る項 目で重みづ けが大きいのは,経 産婦 ・夫 が30歳 未満 ・人工 栄養群 で,下 降群 に重み づけが大 きいのは,初 産 婦 ・児体重が3500g以 上 であ った。 初産婦で は,産 後 異常 ・夫の年齢 ・育児 で大変 な時期の持続 期間 ・育児相 談の4項 目が判別 に寄 与 し,産 後異常 があ り,夫 が30歳 未満 と若 く, 育児 で大変 な時期 が4カ 月以 上 の群 は上 昇群 に 寄与 し,夫 が35歳 以上 は下降群に 寄与 が大きか った。経産 婦で は母 親の年齢 ・職業 ・児 の栄養 法 の3項 目が判 別 に寄 与 し,上 昇群 には母親 が25 歳未 満 ・妊娠中や産後 の離職 群 ・人 工栄養 群が寄 与 し,下 降群 で重みづ けが大 きい項 目はなかった。 判別正診 率 は全 体で は79.2%,初 産婦で は88.1%, 経 産婦で も81.5%と 高率 を示 した。 図1 産 痛強 度 の類 型 図2 上昇群と下降群の産痛強度の推移 IV.考 察 以上,産 痛強度 の記憶 には,身 体的因子 の他に, 社会 ・家族 ・育児因子 な どの生活環境 因子 が複 合 して影 響 した。 そ して,数 量化II類 での上昇 群 ・ 下降群 の寄与因子 を総合的 に判断す ると,本 人お よび夫の年齢が若 く,本 人の 自己制御 能力 が未 熟 とい う基 本 的対処 能力 の脆 弱 さに産 後 異常 の合 併 ・低体重児 の育児 ・母乳 栄養 の未確 立な ど母児 双方 の要因に よる育児 困難 な状況や,妊 娠 中や 産 後 の離職 に よ る社会 か ら隔 絶 され た状 況が 加 わ り,産 後 の産痛強度 を上昇 に導 くと推測 され る。 従 って,産 後の産痛強度 の上昇は特 に育児の危機 的状況 であ り,親 子関係や夫 婦関係 に不良かつ重 大 な影響 を及ぼす可能性 が示 唆 され た。 文献
1)Brown, B. et al.:Satisfaction with care in labor and birth, Birth, 21(1), 4, 1994. 2)Bundsen, P. et al.:Pain relief during delivery,
Acta Obstet. Gynecol. Scand. 61, 289, 1982.
3)Klaus, MH, etal(竹 内徹 他 訳):親 と子 の きず な, 医 学 書院,1985.
4)我 部 山 キ ヨ子 他:産 痛 強 度 に 関 す る縦 断 的 研 究 (第1報),母 性 衛 生,40(4),1999掲 載 予 定
5)Ohnhans, E. et al.: Methodological problems in the measurement of pain, Pain. 1, 379, 1975.
表1 上 群 と下降群 の判別 に用いた項 目の判別 係数 と正 診 率
57.産
後2年 までの産痛 強度 の記 憶 に関 する縦 断 的研究
(第2報)―
高 値持続 群 と低値 持 続群 の比 較―
三重大学医学部看護学科
我部山キヨ子
I.は じめに 出産 直 後 か ら産後2年 ま での4時 期 の産 痛 強 度 の時 系列 変化 に よ る と,4時 期 と もに産 痛強 度 がMean+1SD以 上 を示 した高値 持続 群 と,4時 期 ともにMean・1SD以 下 を示 した低値 持 続群 が 分類 できた1)。 特 に,産 痛 が 強か っ た とい う記憶 が産 後 かな りの長 期 間持 続す る こ とは,産 後 の育 児や 次 の妊 娠 予 定 に も重大 な悪 影響 を及 ぼす と 考 え られ る。 従 って,本 研究 の 目的 は,産 痛 強度 を持続 的 に 高値 あ るい は低 値 に保 持 す るの に影 響 す る因子 を明 らか にす る こ とで あ る。 II.対 象 と方法 本 研 究 では,第1報 で述べ た対 象者196人 の う ち,産 痛 の 高値 持 続 群47人(初 産 婦31人,経 産婦 16人),低 値 持続 群19人(初 産婦5人,経 産婦14 人)を分析 対象 とした。 調 査内容 と調 査 時期 は,第1報 と同 じで あ る。 III.結 果 1.出 産 回 数 によ る高 値 持 続 群 と低値 持 続 群 の 割合 と産痛 強度 の時 系 列変 化 全 体 で は 高値 持 続群 は24.0%で,低 値 持 続群 (9.7%)の2.5倍 であ った。 出産 回数 別に見 る と, 高値持 続群 は初 産 婦で は30.7%,1経 産 ではそ の 1/2の15.6%で あ った。 低値 持続群 は 初産婦 では 僅 か4.9%で あ った が,出 産回 数 に従 って増加 し, 2経 産 以上 では5倍 以 上 の22.2%に 及 ん だ(図1)。 高値持 続 群の 産痛 強度 は,全 体 では4時 期 とも に最 高値 の100で 推 移 し,低 値持 続群 の 産痛 強 度 はそ の112以 下の46.6∼41.6で 推 移 し,4時 期 と もに2群 間 で は有意 の 差が認 め られ た。 2.身 体 的因 子 と高 値持 続 ・低値持 続 群の 関係 身 体的 因 子 にお い て 両群 間 で有 意 の 差 が認 め られ た のは,分 娩 所要 時間 ・妊娠 異 常 ・妊娠 中毒 症 であ った(表1)。 高値 持 続群 は低値 持続 群 よ り も分娩 所要 時間 が有 意 に長 く,妊 娠 異 常 の出 現 が 多い傾 向 を認 め,特 に妊 娠 中毒 症 の発症 は高値 持 続 群 のみ に認 め られ た。 また,各 種 異 常は児 の異 常 を除い て,高 値 持続 群 が高 率 を示 した。 この傾 向 は初産 婦 で よ り顕 著 で,表2の 如 く, 高値 持続 群 は年 齢 が高 く,在 胎 日数 は長 く,分 娩 所 要時間 は2倍 の長 さで,逆 に児 の異 常 は低率 を 示 し,い ずれ も有 意 の差 が認 め られ た。 3.心 理的 因 子と高値 持続 ・低 値 持続 群 の 関係 出産時 の 自己制 御 ・出産 の軽 重感 ・性役 割 志 向 性 は,全 時 期 で高値 持続 群 が有 意 に低 値 を示 した。 す なわ ち,出 産時 の 自己制 御 は 不良 で,出 産 の重 い群 は高率 で,性 役割 志 向性 は伝 統的 で あ った。 出産 以外 の 自尊感 情 も,ほ ぼ全時 期 で 高値 持続 群 が低 値 を示 した。 4.生 活 環 境因 子 と高 値 ・低値 持続 群 の 関 係 1)社 会 ・家 族因 子:職 業で は 高値 持 続群 で 有職 率 が低 く,妊 娠 中 ・産 後の離 職率 は高 か っ たが, 両群間 で有 意の 差 はな か った。家族 因 子 にお い て は,高 値持 続 群 で産後 の サポ ー ト率 が 高 く,夫 ・ 義 母 ・実母 の全 てで手 伝 い参 加 率 が高 率 を示 した。 2)育 児 因子:育 児 因子 の うち,両 群 で差 を認 め たの は育児 時期 であ っ た。す なわ ち,高 値 持続群 で は育 児 で 大 変 な時 期 の 終 了 時期 お よ び 育 児 に 慣 れ た時期 は遅 く,育 児 で大 変 な時期 の持 続 期間 は長 くな った。特 に育児 に慣 れ た時 期 は,低 値 持 続 群の ほぼ2倍 を要 し,有 意 に遅延 した(高値 持続 群 の育児 に慣 れ た時 期:5.8±3.4カ 月 ,低 値持続 群 の同:3.1±1.1カ 月,P<0.000)。 初 産 ・経 産 と もに同様 の傾 向 を示 した。 5.数 量 化II類 に よる高 値 持 続 群 と低 値 持 続 群 の 判別 表3は,産 痛 の高値 持 続群 と低値 持続 群 を基準 変数 と し,身 体的 ・心 理的 ・生 活環 境 因子 を説明 変 数 と して,数 量化II類 を した結 果 で あ る。プラスの スコ アが高 いほ ど高値 持 続群 に寄 与 し,マ イ ナ スのス コアが 高い ほ ど低 値 持続 群 に寄与 す る。 全 体 にお い て高 値 持続 群 と低 値 持 続 群 の 判別 に寄与 した項 目は,出 産 回数 ・出産 時 の 自 己制 御 ・出産 の軽 重 の3項 目であ った。 高値 持続 群に 重み 付 け が 大 きい の は 自己制 御 不 良群 と出 産 の 重い群 で あった。低値 持続 群 に重 み付 けが 大 きい のは,自 己制御 良好群 ・出産 の軽 い群 で あ った。 ま た初 産 ・経産別 では,高 値 持 続群 に重 み付 け が大きい のは初 産婦 で は産 後 異常 群 ・出産 の重 い 群,経 産 婦 では 自己制御 不 良群 ・出産 の重 い群 と 普通群で,低 値 持続 群 に重み 付 けが大 きい の は, 初産婦で は児の 異常群 ・出産 の軽 い群 ・性役 割 志 向性高値群 で,経 産婦 で は分娩 時間 が短 い群 ・自 己制御 良好群 であ った。判別 正診 率 は初産 婦 では 100%,経 産婦 で も89.7%と 極 めて高 率 を示 した。 IV.考 察 産痛 の高低 を決 定す るの は,出 産 に関す る身体 図1 出産回数別産痛強度の分類 表1 身 体的 因子 と産 痛 の高値 持続 ・低値 持続 群 の関 係(全 体) Mean±SD or n(%) 注)***:P<0.001 的 お よび心 理的 因子 が 中心で あ った。す な わ ち, 分娩 所要時 間 ・妊 娠 中毒症 ・産後 異常 な どの身 体 的 因 子 が 出産 時 の 自己 制御 や 出産 の 軽 重感 な ど の心理 的因 子に影 響 し,こ れ らが統 合 され て 出産 時 の産痛強 度 の評価 が決定 され る。従 って,妊 娠 経過 を正常 に保 ち,分 娩時 間 の短 縮 を図 り,産 後 異 常 の発 生 を防 ぎ,出 産時 の満 足感 や達 成感 を高 め,自 己制御 で きた とい う認識 を高 め,出 産 体験 を良好 にす る こ とが,出 産 直後 の産痛 強度 を低 め, しい て はそ の 後 の産 痛 強 度 を低 く維 持 す る こ と に繋 が る と考 え られ る。 さらに,高 値 持続 群 はサ ポー トを得 てい て も,育 児 に 慣れ る時 期 は2倍 を 要す るこ とか ら,特 に育 児支 援 に力点 を置 い た産 後 のサ ポー トの充 実が重 要 であ る。 文 献 1)我部 山キ ヨ子 他:産 痛 強度 に関す る縦 断的 研究 (第1報),母 性 衛生,40(4),1999掲 載 予 定 表2 身体 的因 子 と産 痛 の高 値持 続 ・低 値持 続群 の関 係 Mean±SD or n(%) 表3 高値持続群と低値持続群の判別に用いた項 目の判別係数と正診率 注)数 量 化II類