中央アジアにおける工業発展及び中小企業の役割に
関する一考察--開発経済学の新しい課題
著者
賀来 公寛
著者別名
KAKU Kimihiro
雑誌名
国際地域学研究
号
6
ページ
89-113
発行年
2003-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00003833/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja国 際地 域学 研 究 第6 号2003 年3 月
中央アジアにお ける工業 発展及び
中小企業 の役割に関す る一考察(
開発経済学の新しい課題)
賀 来 公 寛* 89 は じ め に 本 論 で は 中 央 ア ジ ア の 工 業 開 発 に お け る 中 小 企 業 の 役 割 と そ の 発 展 の 可 能 性 に つ き 、 ウ ズ ベ キ ス タ ン 、 キ ル ギ ス タ ン に お け る 事 例 を 中 心 に 、 そ の 特 徴 、 制 約 条 件 や 商 業 銀 行 の は た す 役 割 に つ き 検 証 す る こ と を 第 一 目 的 と し て い る 。 そ の 関 連 に お い て 、 中 央 ア ジ ア に お け る 「 後 進 性 」 と は 何 か と い う 課 題 に つ き 、 今 日 の 発 展 途 上 国 と の 比 較 を 行 う 。 そ し て 経 済 発 展 史 の 観 点 か ら 「 後 発 国 」 と し て の 中 央 ア ジ ア が 市 場 経 済 移 行 に 関 し て 、 ど の よ う な 可 能 性 と制 約 要 因 を も つ か論 じ る。 同 時 に 旧 社 会 主 義 国 とし て ど の よ う な 負 の 遺 産 を抱 え て い る か と い う 点 に つ い て も 考 察 す る 。 そ し て 、 中 小 企 業 支 援 と 同 時 に 金 融 セ ク タ ー(financialsector)の 改 革 の 必 要 性 に つ き、国 際 金 融 機 関 か ら ど の よ う な 支 援 策 が 取 ら れ て き た か 評 価 し 、 今 後 の 中 央 ア ジ ア の 経 済 発 展 と 開 発 援 助 の あ り 方 、 また 開 発 経 済 学 か ら の 視 点 に つ い て も 検 討 を 加 え る こ とが こ の 小 論 の 目 的 で あ る。 1 。 歴 史 的 な 視 野 か ら 見 た 中 央 ア ジ ア の 経 済 発 展 に 関 す る 視 座 中 央 ア ジ ア 、 特 に ウ ズ ベ キ ス タ ン 、 カ ザ フ ス タ ン 、 キ ル ギ ス タ ン 、 タ ジ キ ス タ ン、 ト ル ケ ミ ニ ス タ ン の 諸 国 に お け る今 後 の 経 済 発 展 の 方 向 に つ い て は、 経 済 発 展 史 の 観 点 か ら 見 る と、 興 味 あ る 特 異 な 点 が い く つ か 指 摘 さ れ る。第 一 に は 、旧 ソ 連 邦 の“ 周 辺 国 ”(periphery)と し て の 位 置 付 け で あ り 、 第 二 に は 、 旧 社 会 主 義 国 と し て 、 歴 史 的 な 視 点 か ら 今 日 の 発 展 途 上 国 と の 比 較 に お い て 、 社 会 的 な “ 平 等 ” が 達 成 さ れ た 社 会 が 今 後 ど の よ う な か た ち で 、 市 場 主 義 経 済 に 移 行 し て 行 く か と い う 点 で あ る。 今 日 まで の 開 発 経 済 学 、 及 び 経 済 発 展 史 の 視 点 か ら 、 経 済 発 展 に 関 す る 議 論 を 整 理 す る と 、 次 の よ う な 分 類 が 出 来 る と 思 わ れ る。 (1) 経 済 発 展 を「 先 発 国 」(earlystarter) と「 後 発 国 」(latecomer ) に 分 類 し 、 後 発 国 の 経 済 発 展 に 見 ら れ る 傾 向 、 例 え ば、 政 府 が 積 極 的 に 基 幹 産 業 、 銀 行 制 度 等 の 育 成 に介 入 す る こ と を 重 点 に 置 い た 見 方 が あ る こ と が あ げ ら れ る。 こ う し た 見 方 は、 従 来 の 新 古 典 派 的 な 考 え 方 及 び マ *東洋 大学 国際地域 学 部教授90 国 際 地 域 学 研 究 第6 号2003 年3 月 ル クス 主義 的 な従 属論 と は違 っ た方 法論 の可能 性 を示 唆し て い る と考 えら れる(ttl)。 (2) 経 済 発展 を近 代化 のプ ロ セ ス と考 え、 経済発 展 と同 時並 行的 あ る い はむし ろ 経済 発 展 に先 行 し て 個人 の能 力、 基 本的 人 権 の回 復 を考 える立場 で あ る。 この考 え 方に よ れば、 従 来 の経 済 発 展 のプ ロ セ ス は経済 全体 の “パ イ” の大 きさの拡 大 に重 点 を置 い た結 果、 個人 個人 の権 利 や 能 力 はむし ろ縮 小 さ れて きた と云 う 結論 に なる(tt.2)。 以 上 の よう な分類 を視点 に 入 れて、 中央 アジ アを見 る と極 め て興 味深 い要 素 が含 まれて い る と考 えら れ る。 そ の第一 点 は、 中央 ア ジ ア諸国 は工業化 に関 し て見 れば、「後 発国 」(latecomer)で あ る こ と、 し かし今 日 の発 展途 上国 か ら見 れば、 鉄道、 道路 、 住宅 な ど の社会 基盤 は基 本 的 に は既 に整 備 さ れて い る こと があ げら れ る。 但 し 鉄道 な ど を見 る と、 社会 主 義体 制 の もとで、 モ ス クワ を中 心 とし た路線 網 に なっ てお り、西側 との物 流 を促 進出来 るよう な状 態 に はなっ て いな い田)。こ れ らの 点 は後 発国 とし ての、 工業 化 の ”初 期 条件 ” が所謂発 展 途上 国 と は基本 的 に 異なっ て い る こ と を示 し て い る。 第 二 点 目 は、 社 会主 義制 度 の もとで達 成 さ れ、国民 の 間に 広 く浸 透し て きた 社会 的 「平 等 」 の概 念 が、 市場 経 済 シス テム の導 入 に より基 本的 に崩 壊し て きた こ とが あ げら れ る。 この こ と は今 後 の 中 央 ア ジ ア経 済さ らに は民 主化 、近代 化 を考 え る上 で 重要 な論 点 を含 んで い る と考 え られ る。西 ヨ ー ロ ッ パ を中 心 に見 ら れた経 済発 展 は「 個人 」の「個」とし て の権利 と自由 を追求 した 結果 で もあ り、 そのプ ロ セ ス にお いて、「 市民 社会 」が社 会 の中核 とし て形 成 さ れ、 経済発 展 と社 会 に近 代 化 に 寄与 し た と考 え ら れて い る(・4)。今 後 中央 ア ジ ア諸国 が、西 側 の経 済発 展 のプロ セスで 見 ら れた よ う な、 個人 の 権利 を基 盤 とし た市民 社 会 の形 成 に今 後 進んで い くの か、 あ るい は、 中央 集 権的 な ト ップ ダ ウ ン(上 か ら の革 命)の 体制 に移 行 し てい く のか に の傾向 は既 に見 ら れ る)田)、 あ るい は別 の 方 向 に 進展 し てい く のか と云 う課 題 は、 今後 の 中央 アジ ア におけ る 経 済発展 、近 代化 、 民 主 化 (西 側 諸 国 で 見ら れ る意味 で の民 主化 ) を考 え る上 で基本 的 な問題 点 で あ る という こ とがで き る。 別 の言 い 方 を す れば、中 央 ア ジア の将来 は、今 まで の 先進国 や 開発途 上 国 が経 験し て きた 経 済発 展 の パ タ ー ン とは 異な る可 能性 があ る こ とを示 唆 して い る と考 え る こと がで き る。 更 に、 最近 の 調 査に よれ ば、 中央 アジ ア諸 国及 びロ シア にお い て は、 大 規模 産業 で収 益性 の 高い 企業 は資 源・ エ ネ ルギ ー関 連に 特定 さ れ てお り、製造 業 に 対 する投 資 は極 めて低 く、 市 場 で収 益 性 の高 い 企業 は資本 の 回転 率 の高 い「 流 通業 」に限定 さ れてい る とい う報 告 もあ る(注6)。 この 点 は、 中 央 ア ジ ア を後 発国(latecomer)と考 える と、前 述し た よう な今 後 の政府 に よる工業 化へ の 介入 の可 能 性 とそ の程 度、 及 び外 国 から の生 産 技術 の 導入 とい っ た 側面 で大 きな課 題 を抱 え てい る と考 えら れ る。 以 上 述 べた 諸点 を考 え る と、 今後 の 中央 ア ジア経 済発 展 に係 わ る研 究課 題 とし て、 次 の よ う な課 題 が重 要 だ と考 えら、 本 論で そ の内 容 を検 討 す る。 (A)。 移行 経 済期 に見 ら れ る“ 後進 性” の 問題 (B)。 中小 企業 支 援 に関 す る問題 点 と銀行制 度 の役割 (C)。 中央 ア ジ アにお け る 経済 発展 パ タ ーン の比較 分析
賀来 :中央 アジ アにお け る工業 発 展及 び中小 企業 の役 割に 関 する一 考察( 開発 経済 学 の新し い課 題) 91 2 。 移 行 経 済 に 見 ら れ る “ 後 進 性 ”2.1 中央 アジ アにお け る経 済開 発 の初 期 条 件 所 謂“後 進性 ”(backwardness)に つい て の明 確 な定 義 はない。 通常 用い ら れ てい る指 数 は一 人 当 た りのGNP であ る。 世 銀 によ る「 世 界開 発 報告 」(例 えば1992年版 )で は、 人 口− 人 当 り平 均GNP が600ド ル以 下 は低 所得 経 済 (lowincomeeconomies ) と呼 ば れ、一 人 当 りGNP が600−2、450 ド ル は低 位 中所得 経 済(lowmiddle-incomeeconomies )とさ れ、 一人 当 た りGNP が2 、500−10,000ド ル は 高位 中所 得国(uppermiddleincomecountries )又 は中 進国 ないし 新 興工 業 国 と呼 ば れる。 以 上 の よう な分 類で、 中 央 ア ジア 及 びロ シ ア・東 ヨ ーロ ッ パを 比較 する と、表1 の よう に分類 さ れる。 こ の表 で明 ら かな点 は、 キル ギ スタ ン、 タジ キス タン は低 所 得経 済 に属し 、 ロ シア、 カ ザ フ スタ ン、 ウ ズベ キ スタン、 ト ル ケ ミニ ス タン は低 位中所 得 経 済に 分類 さ れ、 束 ヨ ーロ ッパ諸 国 は高 位 中所 得 国 に属 する こ とにな る。 中央 アジ ア諸国 は社会主 義 体制 が 崩壊 し た後 、 顕著 な傾 向 とし て 見ら れ るの は、一 人 当 たり の国 民 所得 が 低い 点で あ る。 そ の理由 は複 雑で あ る が、究 極的 に は国 営 企業 か ら民 営化し た企業 の 生産 す る「 付加 価値 」が低 い点 が 指摘 さ れ る。 こ の点 は、中 央 ア ジア と束ヨ ーロ ッ パを比 較 し て みる と、 後 者 が 比 較的 早 い時 期 に地 理 的 条 件 の 良 さ故 西 側 か ら の投 資 が 進 展 し た の に対 し 、 中央 ア ジ ア はlandlockedcountries であ り 、外 国投 資 が 極 めて 低かっ た 点が 一 つ の理 由 とし てあ げら れ る(S7)。 表1 中 央 ア ジ ア5 力 国 の 概 況 と ロ シ ア 、 人 口 カ ザフ ス タ ン ウ ズ ベ キス タン キ ル ギ ス タ ン タ ジ キ スタ ン ト ル ク メ ニ スタ ン ( 単 位100 万)15.0 0000 II ・155657 一 東 欧 諸 国 の 比 較 面 積-( 単 位 千 平 方 キ ロ ) 7 7 0 v m 0 0 1 4 0 S r f 0 0 7 4 1 1 4 Q j つ ` ロ シ ア147.0 ハ ン ガ リ ー10.0 チ ェ コ10.0 ポ ー ラ ン ド39.0 資 料: 世 界 銀行 、WorldDevelopmentReport.2000/2001 ・averageannualgrowth ≪ -) r ^ O v < ^ 7 O S r ^ 0 1 0 1 J 7 − 一人当りGNP(1999,USS) 0000 32092732 1 660 -2,270 4.650 5.060 3.960 GDP 成長率(%)(1990-99)*-5.9-2.0-7.4-9.8-3.5-6.11.00.94.7 し かし 、一人 当た りGNP に よる 数値 だ けで は、中央 ア ジ アに お け る後進 性 を説明 す る こ とに はな ら ない と考 えら れ る。上 記 の基 準 とは別 に 、人 間 開発 指数(HumanDevelopmentIndex, 通称HDI) が 国 連開 発計 画(UNDP) によっ て開 発 さ れた。HDI は、 長 寿、 知 識、 人 間ら しい 生活 水 準 とい う、 人 間 開発 の三 つ の基 本的 な側 面 にお け る、 一 国 の総 体的 な達 成 度 を測 定 する ものであ る。 指 数 は、 平 均 寿命 、 教育達 成 度( 成人 識 字率 お よ び初 等・中等・高 等 教育 総 就学 率)、 米ド ル建 て の購買 力 平 価(PPP) とし て 調整 さ れた一 人 当 た り所 得 に よって測 定 さ れる。 し かしHDI は人 間 開発 の 要 素を
92 国 際 地 域 学 研 究 第6 号2003 年3 月
簡 単 に まと めた要 約で あ り、 包括 的 な 尺度 で はない(UNDP はHDI 以 後 、人 間 貧困 指 数(HPI ), ジェ ン ダ ー開 発指 数(GDD )等補 完的 指 数 を開発し て い る)。 こ のHDI を適応 す る と、 表2 の よ う な結 果が えら れる。 表2 中 央 ア ジ ア5 カ 国 と ロ シ ア 、 東 欧 諸 国 のHDI 比 較162 国 中 の 順 位 言 室 生HumanDevelopmentIndex-カ ザ フ ス タ ン ウ ズベ キ ス タ ン キ ル ギ ス タ ン タ ジ キ ス タ ン ト ル ク メ ニ ス タン ロ シ ア ハ ン ガ リ ー チ ェ コ ポー ラ ンド 5 9 2 3 3 r -a \ c ソ 0 8 − 5638 5 `.j りI ` .j 99.0 88.5 97.0 99.1 98.0 99.5 99.3 99.0 99.7 0.742 0.698 0.707 0.660 0.730 0.775 0.829 0.844 0.828 資料:UNDP.HumanDevelopmentReport,2001 、(HD[ は0 か ら| の 間 で評 価 さ れ、1 に 近づ く 程 高い 評 価 と なる 】 UNDP の 報 告書 は幾 つ かの重 要な 視点 を示 唆し てい る。 (1) 「人 間 開 発」 の進 展 の平 均 は、 発展 途上 国内 の大 き な格 差 一都市 地 域 と農村 地 域 の格 差 、男 性 と女 性 の格 差、 豊 か な者 と貧 し い者 の格 差− をお おい 隠し てし まう。 (2) か な り少 ない所 得 水準 で も、 か な り良い人 間 開発 水準 を 達成 するこ とが で き る。 重 要 な 問題 は、 経 済成長 が どの よ うに運 営 さ れ、 成長 の利 益が ど のよ う に人々 の あい だ に分 配さ れる か で あ る。 同 一 の人 間 開発 達成 度 に与 えら れる価値 づ け は、民 主 主義 的 な政 治体 制 の なか で 遂行 さ れる のか、 そ れ とも権威 主 義 的 な政 治体 制の な かで遂 行 さ れる かに よっ て、 大 き く 異な る。(3 ) 経 済成長 と人間 開 発 との リン クは自 動的 な もので は ない。 (4) 社 会部 門 への 補助 金 は、 よ り貧し い人 々 に とっ て必要 で あ る。 ほ とん どの第 三 世界 の 国々 に お い て、 所 得分配 はか なり不 平 等 であ る。 経済成 長 の メリ ット はめっ た に大衆 に まで 浸 透 す る こ とは ない。 自由 市場 機 構 は、 分配 の公平 を確保 する もの で はない 。 した がっ て、極 めて 貧し い人 々 に 所 得 とその 他 の経 済機 会 を与 え るた めに は、追 加 的 な政策 が 必 要であ る。 (5) 人 間 開 発 は経 済成長 を 犠牲 に し ての み達 成す る こ とが で き る とい う 見解 は誤 っ てお り 、 健康 と教育 に対 する投 資 の収 益 率を 過小 評 価し てい る。 さら に 、大 半 の予 算 は国家 の優先 順 位 を変 え る こ とに よって 、人 間 開 発に対 す る支 出を増加 する こ とがで き(例 、第 三世 界 の軍 事 支 出 の 削 減)、社 会 支出 の効 率 を改 善 す るこ とが でき る。 (6) 現存 の予 算 内で 支 出を再 分 配 す る余地 が あり、 これ は選 択 の問題 で あ り、 強制 の問 題 で はな い。 外 国 の援助 供与 者 は、 追 加 的 な資 金 を提供し 、適 切 な 条件 を締 結 す るこ とに よ り、人 間 開 発 の保 護 を援助 する こ とがで きる。 (7) 人 間開発 戦 略を 支持 する た めに は、 良好 な対外 環境 が 重 要で あ る。 豊 かな国 はふ たた び 貧 し い 国 に資 金 を移転 す る よう にし な け れば ならな い。
賀来:中 央 ア ジアに おけ る工 業 発展 及び中 小企業 の 役割 に関 す る一考 察( 開 発経 済学 の新 しい 課題) 93 (8) 現 状 で は と り わ け ア フ リ カ に 貧 困 が ま す ま す 集 中 す る 傾 向 が あ る。 (9) 技 術 協 力 は 、 発 展 途 上 国 の人 間 の 潜 在 能 力 と国 家 の キ ャ パ シ テ ィ の 創 出 を 助 け る よ う に 、 再 構 成 さ れ な け れ ば な ら な い 。 (10) 非 政 府 援 助 機 関 (NGO )を ま き こ ん だ 参 加 型 ア プ ロ ー チ が 、 人 間 開 発 を成 功 さ せ る た め の 戦 略 と し て 決 定 的 に 重 要 で あ る。 (H ) 持 続 可 能 な 開 発 は 、 将 来 の 成 長 と 将 来 の 人 間 開 発 の 保 護 を 含 ん だ も の で な け れ ば な ら な い 。 貧 困 は 環 境 に 対 す る 最 大 の 脅 威 の 一 つ で あ る。UNDP の 報 告 書 は「 貧 困 」 と 「 平 等 」 と「 人 間 開 発 」 に つ き 、 基 本 的 な 問 題 を 提 起 し て い る。 こ れ ら の 点 に つ い て は、 こ の 小 論 の 後 半 で 議 論 し た い。 表2 か ら 観 察 さ れ る こ と は 、 中 央 ア ジ ア す べ て の 国 が 人 間 開 発 低 位 国(HDI が0.5以 下 の 場 合 を 示 す ) で は な い こ と で あ る。 識 字 率 の 面 か ら 見 て も 、 東 ヨ ー ロ ッ パ と 大 き な 差 違 は 見 ら れ な い 。 以 上 の 諸 点 を 考 え る と、 中 央 ア ジ ア に お け る “ 後 進 性 ”(backwardness ) は 、 今 日 の 発 展 途 上 国 経 済(developingeconomies )と比 較 し て 、次 の よ う な 差 違 が 存 在 す る と 考 え ら れ る 。(1 )一 人 当 り のGNP は 低 い が 、 こ れ は フロ ー とし て の 経 済 的 側 面 を 示 し て い る の で 、 社 会 的 な ス ト ッ ク を 考 慮 に 入 れ る と 、今 日 の 発 展 途 上 国 と は初 期 条 件 が 違 う こ と 、(2)識 字 率 そ の 他 を 考 慮 に 入 れ る とHDI は 発 展 途 上 国 よ り 平 均 的 に 高 い こ と 、(3)道 路 、 鉄 道 、 港 湾 、 住 宅 な ど 社 会 基 盤 整 備 は、 一 部 が 老 朽 化 し て い る と は い え 既 に 基 本 的 整 備 が 整 っ て い る こ と、 等 が 指 摘 で き よ う 。 以 上 の よ う な 背 景 を 考 慮 す る と、 著 者 の 意 見 とし て は 、 世 界 銀 行 の 報 告 書 「 東 ア ジ アの 奇 跡 」(a8)に 見 ら れ る よ う な 、“ 国 家 主 導 ” 型 に よ る イ ン フ ラ 整 備 重 視 の 政 策 と は 別 の 道 を 中 央 ア ジ ア は 歩 む こ と に な る と 考 え ら れ る 。 中 央 ア ジ ア 経 済 の 基 本 的 課 題 は 、 旧 社 会 主 義 時 代 に 構 築 さ れ た 「 食 料 供 給 基 地 」 と し て の 経 済 構 造 を 、 如 何 に し て「 自 立 的 」経 済 体 制 に 移 行 出 来 る か 、 ま た 問 題 は 需 要 供 給 の メ カ ニ ズ ム が 存 在 し な か っ た「 分 配 構 造 」 を 如 何 に し て 「 競 争 的 」 ル ー ル に も と づ い た オ ー プ ン な 市 場 を 通 じ て 形 成 す る か と い う 点 が 重 要 と な る 。こ れ ら の 問 題 点 は 従 来 の 開 発 経 済 学 で は 、あ ま り 取 り 上 げ ら れ な か っ た 課 題 で あ る 。 2 。2 開 発経 済 学の新 しい 課 題 今 日 までの開 発 経済学 で は、 経 済発 展 を達 成 す るた めに は、 資本 を 導 入し 、適 切 な(生 産 )技 術 の 開発 と、資本 と技 術 を有効 に 組 み合 わせ る人 材 と組織 が必 要 と なる(a9)。技術 開発 や人 材教育 への 投 資 と機械 や工 場 な ど物 的 資本 へ の投 資 が どの よ うな比 率で 組 み 合 わさ れる べ きか、 適切 な投 資 を 誘 導し 、 その 有効 な利 用を 図 るに は制 度 や 組織 が必 要 とな る。 そし て そのプ ロ セ スにお いて 、技 術 知識 と人 材 を有効 に利 用し て シュ ンペ ー ター的 な 意味で の イ ノベ ー ショ ン を遂行 す る企業 家 が、 自 由 に活 躍 出来 る市場 組 織 の整備 が 必 要で あ る と考 えら れる。 こうし た努力 と並行 し て、 社会 の価 値 観 や組 織 能力 が生 産技術 の急 激 な変化 に対 応出 来 る よう に変化 し な け れば なら ない。 こ うし た 経 済 のサブ シ ステ ム(下 部 構造 ) と文 化 ・制 度 の サブ シ ステ ム(上 部 構造 ) の ミ スマ ッチが 、 社会 の急 激な変 化 のプロ セ ス におい て は、 マ ル ク ス的 な帰 結であ る社会 的 危 機 を激化 さ せ るこ とに なる。 前 述し た、「 後発 効果 」の観 点 から 見 れ ば、 遅 れ て工業 化 を 開始 す る国 は、 先 進国 の技 術 発展 の 過
94 国際地 域 学研 究 第6 号2003 年3 月 程 を繰 り返 すの で はな く、先 進国 が 達成 し た先端 的技術 を買 う こ とに より、先 進国 に キャ ッチ・ア ッ プ を図 るこ とが 可能 とな る。 この点 はR.Vernon (注"≫の「プ ロ ダ クト ・ サイ クル 」理 論 か ら も推 論 出 来 る。 企業 が 新製品 を開発 し 、市 場 で販 売 さ れる と、 他 の企 業 も市 場 に参加 す る よう に な り、 製 品 は 標準 化さ れ、 そ の製品 につ い て は市場 で成 熟期 を迎 える こ とに なる。 市場 が 成熟 し た段 階 に 到 る と、 それ以 上 の市場 拡 大 は望 め な くな るの で、標 準化 さ れた 製品 は労働 コ スト の安 い 発展 途 上 国 や 中 進国 に製 造 拠点 が移 動 され る こ とに なる。 この よ うに 考え てい くと、 中央 ア ジ ア諸国 は、 その 歴史 的 社 会的 な 背景 から 、 ど の ような 「後 発効 果」 が期 待 出来 るか、 とい う質 問 は 開発 経済 学 の 立 場 か ら見 て も興味 深 い。 特 に中央 ア ジア にお ける教 育・ 識字 率 の 高さ を考 え る と、 どの よう な可 能 性 が あ るか研 究 す るこ とは意 味 が あ るこ と と考えら れ る。 本 論 で は、著 者 が実 際 に調 査 し た中 央 ア ジ ア にお け る中小 企業 発 展に 関 す る考察 を もとに以 下検 討し て み たい。 3 。 中 小 企 業 支 援 と 銀 行 制 度 の 役 割3.1 ウズベ キス タン におけ る中 小企業 支援の 実 例 ウ ズベ キス タ ンにお け る中 小企 業 の民 営 化 につ い て は1992年 に開 始さ れた。 ウ ズベ キス タ ンに お け る民 営化 の特 徴は 私有 化さ れ た企 業 の90%以上 は 商業・サ ービ ス業 に 属し て いる こ とで あ る。1992 −1995 年 の間 に、民 営化 さ れた 企業 は累 計 ベ ー スで、小 規模 企業 の 数 は5,572,中 規 模企 業 は、1,388、 大規 模 企業 は898であ る と推定 さ れ てい る。これ を民 営 化以 前 の全 体 数 と比 較 して みる と、民 営 化 率 は、小 規 模企業 で は96%、中 規模 企 業で は20% 、大 規模 企業 で は19% と推定 さ れ てい る(ttU)。中 規模 、 大 規模 企業 の民 営 化が 遅 れて い る のが特 徴 であ る。 民 間 部門 のGDP に占 め る割 合 は45% と推 定 さ れ る。 こ こで はEBRD 行 っ た ウズ ベ キ スタ ン、 キル ギ スタン にお け る中 小企 業支 援プ ロ ジェ クト(SMECreditLine) の事後 評 価内容 を検 討 す るこ とに より、より具 体的 な問題 点 を検 討し た い(≫.12)。 まず 最 初 にEBRD によ り実施 さ れた ウ ズベ キ スタ ンプロ ジ ェ クト の概 要 を下記 に示 し てお く。
Borrower:NationalBankf( 〕rForeignActivityoftheRepublicofUzbekistan (NBU)Guarantor:RepublicofUzbekistanTotalLoanAmount:us$60,000,000.LoanSigningDate:23November1993PostEvaluationDate:June1997
中 央 アジ ア にお ける中 小 企業 の定 義 に関 し て は、各 援助 機 関 によ り 異な るた め、こ こ で はEBRD が 実 質的 に採 用し てい る基準 を 用 い る。 そ れは、 中 小 企業 の 雇用 労働 者 の数 が500
人 以 内、中小 企 業 の資産 額 が二 百 万ド ル以 内、融 資 額 は一 件 当 た り原則 とし て 二百 万 ド ル以 内 と し てお く。 し かし この定 義 は中 小 企業 の内 、 中から 大 に また がる 範囲 とし て考 える べ きで 、 所 謂小
賀 来: 中央 ア ジア におけ る工 業 発展 及び中 小企業 の 役割 に関 す る一 考 察( 開 発経 済学 の新 しい 課題) 95 規 模 と考 え られ る企業 は、世 銀 な ど は中 企 業 につ いた はは従業 員250 人以 上 、小 企業 は従 業員50人 以 上 、そし て従業 員10人以 上 をマ イ クロ エ ン タ ープ ライ ズ とし て 定義 さ れて い る。EBRD 、世 銀、国 際 金 融 公社 (IFC ),EU (欧 州 連合 ) な ど は、 そ れぞ れの国 情 に合 わ せて 弾力 的 に運 用し てい る。 この ウズベ キスタ ン中小 企業 支 援 プロ ジェ クト の特 徴 とし て は、EBRD か らNBU へ の貸 し 出し 金 利 はLIBOR プ ラ ス1 % で あ り、NBU から中 小 企業 へ の貸 し 出 し 金利 はLIBOR プ ラ ス3% か ら5%
の スプ レ ッド を含 み、 従っ て 実質 的 な貸 し 出し 金利 は 当時 のLIBOR が6% 程 度で あ った こ と か ら、平 均 し て10% 程度 と考 えら れ る。 外貨 変動 に よる内貨(Som )支 払い 分 への 影響 を考 え、 ド ル に よ る貸し 出 し、返 済 となって い る。 大 部分 の中 小 企業 で は、 セ ール ス価 格 を外 貨変 動 に リン クさ せ てい る。 資金 の返 済 期間 は5 年 か ら8 年 と なって い る。 このプ ロ ジ ェ クト は20の中 小企 業 に資 金 融 資 を行っ た が、プ ロ ジェ クト 事後 評 価 報 告書 に記 載さ れ てい る フサ ブプ ロ ジェ クト に つ き、 以 下 に 要約 を示 す。 表3 ウズベ キスタン中小企業案件の業種と貸し付け額 業 種 貸し付け額(USS ) 主な株主-1. 家具製造1,000,00040 %従業員2. セラミックタイル1,649,98549 %従業員3. テフロンフライパン4,290.61052 %外資4, 靴製造5,000,00054 %外資5. ワインパッケージ308,75051 %外資6. プロテイン製品4,027,000100 %民間(含外資)7. 大理石加工1,000,000100 %民間 資 料 : 注6 に 示さ れ た レ ポ ート か ら 著 者 が作 成. 上 記7 の サブ プロ ジ ェ クト から所 見 出来 るこ と は、100% 輸 出 を目 指し た案 件 は な く、最 も輸 出 比 率 の高 い もの は50% (セラ ミ ッ クタ イル )で あ る。家 具 製造 に見 ら れる よう に、 ウ ズベ キ スタ ンで は家 具 の輸 入 に年4 千2 百万 ド ル を 使用 し てお り、輸 入代 替 的 な色 彩 が強 い。 興味 深 い点 は株主 の 構 成で あ る。 外資 が50%以上 のシ ェ アをし めて い るケ ース が見 ら れる ( テフロ ンフ ライ パン ート ル コ 、ワ イン パッ ケー ジー イ スラエ ル )。従業 員 が40% 台の シェ ア を占 めてい る会 社で は、ウ ズベ キ ス タ ン政 府 が設立 し た投資 基 金 (GKI ) が15% か ら26%程 度 出資し てい る。 上 記 の案 件 の 内、 ワ イン パ ッ ケー ジ を例 に取 る と、興 味 深 い点 が 所 見 され る。 この 案件 は、 サマ ルカ ン ダ地域 に ある小 さ な 工 場 であ るが 、近郊 農 家(約800世 帯 )か ら 葡萄 を買 い付 け、 熟 成し た ワイ ンを外貨 で輸 入し た テト ラ パ ッ クの箱 に詰 め る もの であ る。 作業 自 体 は複 雑な もの で はない 。 近郊 農家 は葡萄 の収 穫 前 に支 払 い を受 け るこ とが出来 るた め、 農家 とし て現 金収 入が あ り、安 定 し た供 給 が期 待 出来 る こ とが 指 摘 さ れてい る。 また テト ラパ ッ クに ワ イン が入 っ てい るた め、冷 蔵 庫 で の保 存が 出来 、 こ の企業 経 営 者 の話 で は、ロ シ ア向 け輸 出が30 %程 度 占 め、 今後輸 出 が増 大 する こ とが期 待 さ れて いる との事 で あっ た。 上記 の第 一 次ロ ー ンに続 き、1996年12 月 に第 二 次ロ ーン (SMECreditLineH ) とし て6 千万 ド ルが 承認 さ れた。 こ の内、2001年12 月末 の 時点 で5 千百 万ド ルが24の 中小 企業 に支 出さ れ てい る。 中 小 企業 の業 種 は、 セ ラ ミッ クタ イ ル (第 一 ロ ーン の 追加 )、 現 地産 の綿 花 を使 っ た靴 下 製造 工 場
96 国 際 地域 学研 究 第6 号2003 年3 月 (99 %外 資)、靴 製造 、医 療 用包 帯 、レ ザ ー スキン( ト ル コ との ジョイ ン トベ ンチ ャー)、 大理 石 加 工、 み かげ石 タ イル(granitetiles)製造 、 等で あ る。 第一 次ロ ー ン と同様 に現 地 産 の原 料 を使 っ た プロ ジェ クト が多 い のが特 徴 で あ る。 この 第二 次ロ ー ンの問 題 点 は政 府 が2001年H 月 に 実施 し た 現 地 通 貨 ソ ムの ド ルに対 する57% の通貨 切 り下 げの影響 で あ る。2001年 末の時 点 で は、 数件 の 企業 に 利 子 支 払 いの 遅 れが みら れ、 貸 し倒 れ準 備 金 の額 は融資 残 に対し て14% となっ てい る。 こ の額 を 高 い と見 るか、 正常 な範 囲 と見 る か、 議論 の分 かれる所 で もあ る。 著者 の意見 とし て は、投 資 環境 を 考 え る と融 資 残に対 し10 %台 の 貸し 倒 れ準備 金 はや むを えな い と考 え てい る。 このプ ロ ジ ェ クトで 特徴的 な事 は、 所 謂banktobankloan の形 態 を とっ て い る点 であ る( つ ま
りEBRD とNBU の 間 で の 直 接 契 約)。 中 小 企 業 融 資 へ の中 間 媒 体 で あ る(NBU) の 中 にSMECreditLineUnit と呼 ば れる オフ ィ スが 新設 さ れ、プ ロ ジェ クト 実施 前 にEBRD から の技 術 援助 で 西 側 か らの 専門 化 派遣 に よる ス タッ フの トレ ーニ ン グが行 わ れ たこ と によ り、新 規 案件 の 審 査 が厳 し く行 わ れた と考 えら れ る。またNBU の財務 内容 が良 好 であ っ た点 も、他の 中央 ア ジ ア諸 国 にお け る同 種 の案 件 と比較 し て、効 率 的 な資 金 の運 営に 寄与 した と考 えら れ る。 旧 ソ連 邦 の企業 家 層 につい て 、あ る調 査 に よれば、四 つ の グル ープ に分類 さ れ る とい わ れ る(iE13)。 第一 に地 下 経済( ブ ラ ッ クエ コ ノミ ー) を背 景 とした もの、第 二 にい わゆ るノ ーメ ン クラ ツ ー ラ と 呼 ば れ る旧政 治幹 部 を背 景 とし た もの、 第三 に科学 者 か ら実業 家 に転 じ た もの、 第 四 に軍 事産 業 か ら 転換 し た もの であ る。 ウ ズベ キスタ ン のお け るSMECreditLine を見 る限 り、 この よ う な明 確 な 分類 は困難 で あ る。唯一 特 記 す べ きはプ ロ テイン 製品 に見 ら れ る科学 者 か らの企 業家 転 身 で あ る。 この 案件 は 綿花 の種 か らプロ テ イ ン を抽 出す る製 造 プ ラ ントで あ り、 抽出 さ れた 製品 は家畜 の飼 料 とし て利 用 され てい る。 プ ラン ト の設計 から 実施 まで、 ロ シ アで教 育 を受 け た科 学者 によ り創 設 さ れた。 全 体的 に見 れば、 企業 家 層 の背 景 は多様 であ るが、一 般 的 に知 識レベ ル は高 く、 意欲 的 な 経 営 者 が多 数 みら れた。共 通 の課題 とし て取 り上 げ るべ き問題 点 は、中小 企業 に於 け る会計 制 度 がCIS 諸国 で は現金 主義(cash-basedaccounting) で処理 さ れ てお り、 西 側諸 国で 採用 さ れ てい る 発生 主 義(accrualbasedaccounting) で は ない 点 であ る。 こ のた め、 未払 い金 や 未収 金が 計上 さ れ てお ら ず、 企業 の 財務 的 内容 を 正確 に把 握 す るた め には、会計 制度 を国 際 基 準(IAS:InternationalAccountingStandard) 移 行 す る必 要 が あ る。 し かし こう し た基 準 の徹底 に つ いて は、EU( 欧 州 連合) な どの技 術 援 助 に よ り、 包 括的 に アプ ロ ーチ し て行 く ことが必 要 で あ る。 ウズ ベ キ スタ ンにお け る中 小 企業 支援 の結果 を見 る と、 企 業 化で き るビ ジ ネスチ ャン ス は多 々 見 られ る。 バ ザー( 市場) で は 豊 富な フ ル ーツが多 種類 売 ら れて い るの に対 し、 別 の コー ナ ーで は、 輸 入さ れた フ ル ーツの 缶詰類 や ジュ ー スが 売 られて い るこ とか ら も、推 測 出来 る。相対 的 に見 れ ば、 以 下 に 述べ るキル ギ スタ ンや 他 の中央 ア ジア と較 べ て、中 から大 企 業 に近 い グル ープ が 支援 の対 象 に なっ た とい え よう。 3 。2 キ ル ギス タン にお け る中 小企 業 支援 の実 例 キル ギ スタ ンにお け る民営 化 の実態 や 中小 企業 の数 につ い て は、不 明 な点 が多 い。 キル ギ ス タ ン
賀来 :中央 アジア にお け る工業 発 展及 び中 小企 業 の役 割に 関す る一 考察( 開 発経 済学 の新し い課 題) 97 政府 の 発表 で は、1999年 末 まで に、178の国 営企 業 が民営 化 さ れた と報告 さ れてい る。一 番 大 きな民 営 化 案 件 はKyrgyzTelecom 国営 会 社 の株 を40% 民間 (含 む外 資 )に売 却 す る予定 で あっ たが 、買 い手 が 現 れず実 現し な かっ た。 こ の よう な実 情 を考 える と、 例 え ばハ ンガ リ ー・ テレ コ ム社 に民営 化 に は西欧 から の投資 が 活発 で あっ た こ とを 考 え ると、 キル ギ ス タン に対 す る外国 投 資 は極 めて 低 い こ とが理 解さ れ よう。 次 に キル ギ スタン にお い て実施 さ れた、EBRD による 中小 企業 支 援プ ロ ジ ェ クト の 概況 を見 て み よう。 企業 の財務状況 良好 良好 不良 良好 不良 Borrower:NationalBankofKyrgyzstan(NBK )Guarantor:RepublicofKyrgyzstanTotalLoanAmount:us$10,500,000.ParticipatingBanks:Kurulush-bank, “AKBKyrgyzstan" −bank,"KRAMDS"-bankLoanSigningDate:16February1995Mid-TermReviewDate:May1997 (本 レ ポ ート は事後 評価 で はな く, 中 間評 価 とし て行わ れた) キル ギ スタ ンにお け る中小 企 業プ ロ ジ ェ クト は、 ウズ ベ キ スタ ン の場合 と較 べてい くつか の点 で
融資 の シ ステ ムが 異 な る。 まず 第 一 にEBRD のLoan はBorrower で あ る 中 央 銀行 、NationalBankofKyrgyzstan (NBK )にLIBOR プ ラ ス1 % で 融 資 さ れ る。NBK の 内 部 に 設 置 さ れ たPMU (ProjectMonitoringUnit )に よ り融資・返 済の資 金 は管理 さ れる。更 にNBK か ら、Participat-ingBank (PB )と呼 ば れる商 業銀 行(複 数)にLIBOR プ ラ ス2% で 融資 さ れ、PB から 中小 企業 へ はLIBOR プ ラ ス7 % から9 %で 貸 し 付 け ら れ る。 従っ てPB で の スプ レ ッド は5 % から1% と云 う 高率 に な る。 この スプレ ッド の幅 は中 小 企業 融 資 に関 する リ ス クを反 映し て い る と考 えら れる。 ウ ズベ キス タン の場 合 は、EBRD からbanktobankloan の形 態 を とっ た のに 対し 、 キ ルギ スタ ン の 場 合 は、twosteploan 或い はApexloan と呼 ば れる形 態 を とり、 中 間媒 体 とし て商 業 銀行 が 参加 し てい る こ とが特徴 であ る。 次 にこ のプ ロ ジェ クト の中 間評 価 報 告書 に 見ら れ る貸し 付 け先 の中 小 企業 (5 件 ) に つい て見 て みよ う。 表4 キル ギス タン中小 企業案 件の業種 と貸し 付け額 業 種 貸し付 け額 (USS )-]. 写真 フィルム現像140,0002. 無線ペ イジン グ117,0003. 小麦製粉170,0004. 万万一ッジ ュースの パッキ170,0005. チー ズ加工250,000 資 料 : 注6 に示 され た レ ポ ー ト から 著 者 が作 成 .
98 国際 地 域学研 究 第6 号2003 年3 月 上 記 の キル ギス タン に於 け る案 件 を見 る と、 ウズベ キ スタ ン と比較 し て、 融資 額 が約10 分 の ー と 小 さ い 点 が指摘 さ れる。 こ れ は国 内 のマ ー ケット が比 較的 小さ い こ とが理 由 とし て あ げら れ る が、 同 時 に 為替変 動 に よ る現 地 通貨 支払 い 増 のリ ス クが大 きい た め と思 わ れる。EBRD の中 間評 価報 告 書に よれ ば、 チ ーズ加 工 の工場 が問 題 の 実例 とし て提 起 さ れて い る。 この 案 件 の場 合 、近 隣 の農家 から の ミル ク の調達 が事業 の 基本 で あ るが、 社会 主 義崩壊 後 、 飢 え た農 民 は牛 を そ の まま食 用 とし て 消費 し て し まった か、或 い は市 場で 売 っ て現金 化 し たた め、2500頭 い た 牛 が600 頭 まで 激変 し、原料 の調 達 が困 難 に なった点 が 指摘 さ れて い る。小 麦製 粉工 場 の場 合 は、マ ー ケ ット につ い て他 の同様 な 内容 の 企業 との競 争が 激し く、 原料 で あ る小麦 の原 産 地 で ある カ ザフ ス タ ン から の長距 離陸 路輸 送 問題 に 関 す る問題 点が 指摘 さ れて い る。 他方、 写真 フ ィ ル ム現 像 ( こ れ は コダ ッ クの現 像 機の輸 入 )、 フ ル ーツ ジュ ー スのパ ッ キン グ( イス ラエ ル からア ル ミパ ッ ク機 の輸 入)、 無 線ペ イジ ング の分野 で は、 企 業家 の 旺盛 な姿勢 が感 じ ら れた と報 告さ れてい る。 キ ル ギ スタ ンの 実例 を ウズベ キス タン の場 合 と比 較 し て みる と、い くつ か の問題 点 が 指摘 さ れ る。 まず 第一 に キルギ スタ ンの場 合 は、 企 業 家 にビジ ネ スプ ラン を作 成 する能 力 が欠 け て い るこ と であ る。 この点 を補う た めに欧 州連 合(EU )派遣 の専門 家 が、 現地 で アド バ イ ザリ ーサ ー ビ スを提 供 し てい るが、事 業 の設立 に 伴う将 来 の キャ シュフロ ー、マ ー ケッ ト の予 測、運転 資金 の 調 達 方法 な ど、 新 ビ ジネ スに 係わ る インフ ラ スト ラ クチ ャーが不足 し て い る点 が 顕著 で あ る。 第 二 点 とし て、 キル ギ スタ ン の場 合 、 中間 媒体で あ る商 業銀 行 の財 務面 で の脆 弱(fragile)な 側 面 あ げら れ る。 当 該プ ロ ジェ クト の発足 当初 は、商業 銀 行で あ るKyrgyzvnesbank が 参加 す る予 定 で あっ た が、 その後財 務 内容 の悪 化 に よ り、中 央銀 行((NBK) か らラ イセ ン スを取 り 消 さ れた と云 う 経緯 が あ る。Kyrgyzvnesbank に代 わ り“KRAMDS"-bank が参 加し た。 更 に問題 点 とし て、 こ れ はCIS 諸国 に一 般的 に見 ら れる傾 向 であ るが、商業 銀 行 の役員 及 び 職員 が当 該銀 行 の株 主 で あ る場 合 が多 い。その理 由 は、株 主 に対 す る優遇 的 な金利 及 び返 済期 間 の適 応 が許 さ れてい る こと にあ る。 こ の よう な環境 の もとで は、融 資 に対 する審 査が 甘 くな る傾向 が あ り、 こう し た点 も結果 とし て銀 行 の財 務 内容 に悪 影響 を与 える こ とにな る。最近 の情 報 に よれ ば、このSMECreditLine プロ ジェ クト に 参加 し た3 銀行 の内 、Kurulush-bank どKRAMDS"-bank は事 実上 倒 産(liquidation)し て お り、 政府 のDebtRecoveryAgency に より 整理 さ れてい る。 従 っ でAKBKyrgyzstan"-bank だ けが 残 っ てい る こ とにな る。 以 上 の 観察 に より、 資金 の中 間媒 体 として の商 業銀 行 の脆 弱 性 が 理解 で き よう。 ウズ ベ キ スタン お よび キ ルギ スタ ン にお け る中 小企 業 の実 例 を総 括的 に見 ると、SMECreditLine を通 し て 実施 さ れた案件 はド ル建 て 融資 に より外 国 から 生産設 備 を購入し てい る わけ で あ るが 、「部 品 」 製造 工場 の よう な例 はな く、 す べ てい わ ば「自己 完 結的 」 な案 件で あ り、 製造 さ れ た製 品 は そ の まま市 場 に出 され てい る。 この こ とは、産 業構 造 自体 が「部 品 」 を必 要 とす る よう な段 階 に 到っ て い ない ことを示 し てい る と考 え るべ きで あろ う。 更 に、 両国 の中 小企 業 に共 通し て い る傾向 の一 つ とし て、 企業 統 治 (CorporateGovernance ) に 関し て は一人 のCEO(ChiefExecutiveOfficer )に権 限が 集中 し てお り、 企業 訪問 し て も、CEO が
賀 来: 中央 ア ジア にお ける工 業 発展 及び中小 企業 の 役割 に関 す る一 考察( 開発 経 済学 の新 しい 課 題) 99 不 在 なら、その企業 に つい て説 明出 来 るス タッ フ は誰 もい ない こ とで あ る。CEO と従業 員 の関 係 は、 指 令(command) と服 従(obey)の 関係 といっ て よい。こうし た側 面 にお い て も、旧体 制 の影響 が 見 ら れ る。 し かし、 同時 に、 ウズベ キ スタ ン にお け る ワイン パ ッ ケイ ジエ 場 や キ ル ギス タン にお け る電 話 ペ イ ジン グの会 社 の ように、20代 の若 い ダ イ ナ ミッ クな企 業家 が 出現 し て きた こ とは注 目し て よい。 3 。3 ウ ズベ キ スタ ン、 キル ギ ス タン にお け る商 業銀 行の 比 較 上記 の 観察 か ら明 かな点 は、世 銀 、アジ 銀、IFC,EBRD 等 の機 関 から 、中 小 企業 支援 の融 資 を受 け るにあ た り、中 間媒 体 役を 務 め る商 業銀 行 の規 模 と財務 内 容が 問 題 とな るこ とは明白 で あろ う。 そ こで 次に ウ ズベ キ スタン と キル ギ スタ ン に於 け る、 商業 銀 行 の規 模 を比 較し て 見よ う。 表5 ウ ズ ベ キ ス タ ン に 於 け る 主 要 な 商業 銀 行 の 規 模 の 比 較 【note 】) ( 単 位 : 百 万 ド ル,2000 年 末 ) 銀行名-NBUPskhtaBankAsakaBankUzPromstroyBnakUzDaewooBankABNAmroBank資 産 額 自 己 資 本 額-3,913 262 51974324 24 2775976825 >o-︱ 税 引 き 後 利 益 84072L7 1.3 1 ROE 4.2%1.6 %54.7 %12.9 % −14.8%14.3 % Notel:StateSavingBank で あ るNarodnyBank は家 計預 金の80 % を占 めて い る が、 こ の表 に は入 っ て
い な い 。(ROE =ReturnonEquitv) 資料:各銀行のAnnualReport 及びEBRD
上 記 の 表 か ら明 ら か な よ う に、NBU の 活 動 は突 出 し て い る(・U)。NBU は 全 金 融 セ ク タ ー の 資 産 の55 % を 占 め 、外 貨 取 引 の90 % を 占 め る 独 占 的 な 銀 行 で あ る。NBU に つ い て は、現 在 そ の 民 営 化 が 世 界 銀 行 、EBRD の 協 力 の も と に検 討 さ れ て い る 。 中 央 ア ジ ア に お け る 各 商 業 銀 行 の 財 務 内 容 を み る と、 一 般 的 に 商 業 銀 行 に よ る 与 信 活 動 は 活 発 で は な い こ と が あ げ ら れ る 。 そ の 理 由 は 商 業 銀 行 が 中 央 銀 行 か ら の 資 金 に 大 き く 依 存 し て お り 、 預 金 基 盤 が 十 分 で な い こ と で あ る。 ま た 安 全 で 有 利 な 国 債 が あ る 状 況 で は、 リ ス ク を と っ て 融 資 活 動 を 行 う 銀 行 は 希 で あ る。 こ の た め 、 多 く は六 ヶ 月 以 内 の 短 期 融 資 が 中 心 と な っ て い る(t£l5)。そ の 他 金 融 セ クタ ー の 障 害 と 考 え ら れ る 点 は 、企 業 が 銀 行 か ら 資 金 を 引 き 出 す 場 合 は、 賃 金 の 支 払 い 目 的 等 に 制 約 さ れ て い る た め 、 企 業 が 抱 え る 流 動 性 資 産 は 銀 行 に 預 け ら れ ず 、 イ ン フ ォ ー マ ル セ ク タ ー で の 現 金 取 引 が 増 加 し て し ま う 傾 向 が 強 い 点 で あ る 。 更 に ウ ズ ベ キ ス タ ン の 場 合 、 預 金 市 場 に 関 し て は旧 体 制 下 の 貯 蓄 銀 行(NarodnyBank 、 現 在 も国 営) 一 行 が 、 独 占 的 に一 般 預 金 を 吸 収 し て お り 、 金 利 メ カ ニ ズ ム を 活 用 し た 預 金 吸 収 策 が 実 施 さ れ る よ う な 状 態 に な っ て い な い 。 キ ル ギ ス タ ン に お け る商 業 銀 行 は そ の 規 模 、 資 産 額 、 自 己 資 本 額 に お い て 、 ウ ズ ベ キ ス タ ン よ り は る か に 小 さ い 。 キ ル ギ ス タ ン に お け るEBRD の 第 二 次SMECreditLine プ ロ ジ ェ ク ト に 参 加 予 定 さ れ て い る 商 業 銀 行 は2 行 あ り 、 そ の 内 “AKBKyrgyzstan"-bank は 総 資 産 額 が 千 三 百 万 ド ル 、 自 己 資 本 が 三 百 万 ド ル で あ り 、Ineximbank(formerBankEridan) は 総 資 産 額 が 四 百 万 ド ル 、 自 己 資
100 国際地 域 学研究 第6 号2003 年3 月
本 が 二 百 万 ド ル と報 告 さ れ て い る。 キ ル ギ スタ ン にお け る大 き な 商 業 銀 行 は3 行 あ り 、 上 記 の “AKBKyrgyzstan"-bank の他 に、Promstroybank とKICB があ る。こ れ ら3 行 の自己 資 本 は二 百 万 ド ル から 六百万 ド ル と推定 さ れ てい る。 その他自 己 資本 が百 万ド ル以 上 の銀 行 は約7 行 存 在 し て い る と思 わ れ る。 し かし 最近 の 資料 に よ れば、 ほ と んどの銀 行 が 債務超 過 にな っ てお り、 中 央 銀行 の 管理 下 にお か れてい る。 金 融 セ クタ ー全 体の融 資 残のお け る不良 債権 額(non-performingasset) は25% に相 当 し、商 業 銀行 全体 の総 自己 資本 額 は千五 百万 ド ル まで低 下 した と報 告 さ れ てい る。 新 規 事業 に対 す る融資 はほ とん ど皆 無 とい っ て よい。 キル ギ スタ ンにお け る商業 銀 行 の財 務 内容 を見 る と、資 金調 達 額( 負 債) の内 、約50 % は預 金 で あ り、 その預 金 の内 満期 が180 日 を超 え る預 金 は24% にす ぎ ない。 中 ・長期 の 資金 が 必 要 な場 合 は、 そ の多 くを ア ジア開 発銀行 、世 銀,EBRD 等のド ル融 資 に依 存し て い るの が現状 で あ る。 こ れ らド ル 融 資 の一 件 当 た り の平 均 規 模 は10万 ド ル か ら50万 ド ルで あ る。 キ ル ギ ス タ ン で は 今 、 世 銀 やUSAID,NGO 等 に よる融 資 額平均 が2000ド ル以 下の マ イ クロ フ ァイ ナン ス が 注目 を集 め てい る。 こ のマ イ クロ フ ァイ ナン スの 金利 は年30% か ら45% であ る。 この よう な高 金利 に もかか わ ら ずマ イ クロ フ ァイ ナン ス事業 が比 較 的良 好 な結 果 を出し て い る点 は注 目し て よい(i£16)。現 状 で は、マ イクロ フ ァイ ナ ン スの借 り手 は流 通業 が大部 分 をし めて お り、短 期 の資 金回 転 に より運 営 さ れて い る た め、 資金 の 回収 率 は高 い。 し かし こ れ らの資 金 は首 都ビ シュ ケ クを中 心 とし た都 市部 に集中 し てい る こ と も事 実で あ る。 また預金保 証(depositinsurance) な ど制 度的 な不 備 も問題 を 複雑 に し て い る。 更 に支 援 し た中小 企業 が倒産 し た場 合、 当 該銀 行に よる担保 の回収 に 係 わる法 的整 備 も十分 で な い。 以 上 の 観察 から、 キ ルギ スタ ン にお いて は、 中小 企業 支援 のた め の中、 長期 の 資金 源 は極 めて不 足 し てお り、 中 間媒 体で あ る商業 銀 行 の役 割 も限定 さ れて い る と結論 せざ るをえ ない 。 3.4 銀 行 スタ ッフ の トレ ーニ ング 中 央 ア ジ ア にお け る銀 行 スタ ッフ の 質的 向 上 を 目的 と し てRegionalBankTrainingCenter(RBTC) が ウズベ キ スタ ンの首 都 で あ るタ シ ケン ト に1994年 に設 立 さ れた。RBTC はト ル コ、欧 州 連合(EU) 、EBRD の資金 援助 に より設 立 さ れたが、 そ の後 日本 、 イ タリ ア、 イ ギリ ス の追加 的 な 資金 援助 を受 け た。RBTC の対 象 国 はウ ズベ キ スタ ン、 キル ギ スタン 、タ ジ キス タン で あ り、 こ れ ら の地 域 か らの商 業銀 行 スタ ッ フの 訓練 を 目的 とし てい る。 当 初計 画 で は年 間800人 の ス タッ フ の ト レ ー ニン グを予 定し て いた。 その実 績 を み ると、1994年 か ら1997年 の間 に5,500人 の スタ ッ フを 訓 練 し た 実績 が あ る(内 訳 はウ ズベ キス タン か ら4,482名、 キル ギス タン か ら420名 、タ ジ キス タ ン から598 名 であ り、 ウズベ キスタ ン から の出 席 者が圧 倒的 に多 い)。 トレ ーニ ン グ コー ス基 本 的 に3 週 間 の 基礎 コ ー ス、及 び2 週 間 の特 別 コ ー スに より成 り立 っ てい る。コー ス は下記 の内 容 を含 んで い る。A 。BankManagement,Marketing,andStrategicPlanningB.FinancialManagementandCreditRiskManagementC.ForeignExchangeandInternationalOperationsD.HumanResourceDevelopmentandManagement
賀 来: 中央 アジ ア にお ける工 業 発展 及び中 小企業 の 役割 に関 す る一 考 察( 開 発経 済学 の新 しい 課題) 101 E 。.BankOperations,AdministrationandProceduresF.CustomerServiceandSellingG.DomesticPaymentandClearingOperations こ れ ら の コ ー ス以 外 に も 、 参 加 し て い る 商 業 銀 行 の リ ク エ ス ト に 応 じ て 、 例 え ばSecuritiesMar-ket やLendingtoSmallandMediumEnterprises な ど の テ ー マ に つ き2 週 間 程 度 の コ ー ス が 行 わ れ て い る。 こ う し た 地 道 な 活 動 は 当 該 地 域 内 に お け る 商 業 銀 行 の ス タ ッ フ の 能 力 向 上 に 効 果 が あ っ た と み ら れ る が 、本 プ ロ ジ ェ ク ト を評 価 し たEBRD のレ ポ ー ト に よ れ ば 下 記 に 示 さ れ る よ う な 幾 つ か の 重 要 な 問 題 点 を 含 んで い る(ttl7)。(1)RBTC は 地 域 内 に お け る ト レ ー ニ ン グ セ ン タ ー とし て 設 立 さ れ た が、 域 内 三 力 国 か ら 派 遣 さ れ た ス タ ッ フ の レ ベ ル は 大 き く 異 な り 、 結 果 と し て は 三 力 国 そ れ ぞ れ の 国 に お い て 現 場 の 実 状 に あ っ た ト レ ー ニ ン グ セ ン タ ー を 各 地 に 設 立 し た 方 が よ り 効 果 的 で あ る と 考 え ら れ た こ と(de-centralization の 方 向) 、同 時 に 参 加 者 の 数 か ら 解 る よ う に 、RBTC は 実 質 的 に ウ ズ ベ キ ス タ ン のNBU の 影 響 下 に あ っ た こ と ;(2)RBTC は 銀 行 の 実 務 面 で の ト レ ーニ ン グ と 同 時 に 金 融 セ ク タ ー に 係 わ る 政 策 面 を 課 題 と し て 取 り 上 げ よ う とし た が 、 こ の 二 つ の 側 面 が ト レ ー ニ ン グ の 過 程 で 明 確 に 分 離 出 来 な か っ た こ と( 特 に キ ル ギ ス タ ン に 見 ら れ た よ う に 、 銀 行 が 倒 産 し た り 又 は 中 央 銀 行 の 管 理 下 に お か れ る な ど 、 地 域 内 で の不 安 定 な 要 素 が 参 加 者 の 質 や 数 に 大 き く 影 響 を 与 え た) (3) トレ イナ ー(指 導 教官 ) は対 外 的 な 技術 援助 に より 派遣 さ れ た西 側 から の専門 家 (主 に短 期 コー ス を担当 ) と西側 で トレ ーニ ング を受 け たロ ーカ ル スタ ッ フに より 構成 さ れて いた が、 優 秀 なロ ーカ ルス タッフ は民 間 企業 か らの より 高い サ ラリ ーの オ フ ァー を受 け、 その 結果 とし て ロ ー カ ルス タッフ の定 着 率 が低 かっ た (highdefectionratio) こ とが コー スの成 果 に影 響 を与 えた こ と; (4)RBTC の財務 的 な基 盤 が弱 く、参 加者 の負担 する金 額 は1 コ ー ス当 たり75ド ルで あ るが、( ス タッ プ を派遣 す る銀行 側 で は これ以 上 の フィ ーの増 加 は望 めな い)こ の参加 費 用を 倍増 し て も、 財 務 的基 盤 が強 く なる こ とは期 待 出来 ない。 結果 とし て対 外 的 な資 金・ 技術 援助 に依存 せ ざ る を えな い状況 で あ るこ と: (5) 当 該分 野で の2 国 間技 術援 助 が 増大 し た 結果,(例、フ ィン ランド によ る キルギ ス タントレ ー ニ ン グセ ンタ ーヘ の技術 協力 )、RBTC の競 争相 手 がマ ー ケッ トで 出現 し、結果 とし てRBTC の 相対 的 な地 位 が低下 し た こ と:等 が 指摘 さ れて い る。 以 上 の観 察 から解 るよう に、 銀行 スタ ッ フのト レ ーニ ン グが 容易 で ない ことが理 解 で き よう。 技 術 面 財政 面 にお い て対外 的 な技 術援 助 に 依存 せ ざ るを得 な い状 況で あ る。 また国 に よっ て抱 えて い る問 題 の程 度 が異 なり 「地 域」 を主体 とし た活 動 には限 界 があ るこ とを示 し てい る。一 つ の解決 手 段 とし てロ シアで 実施 さ れて い る “TwinningArrangement" とい う手 法が あ る。 これ は具 体的 に は、 西 側 のパ ート ナ ー銀行 とロ シア国 内 の銀 行 が “提携 関 係” を結び 、 例 えば西 側 の銀 行 は3 人 程
102 国際 地域 学研 究 第6 号2003 年3 月 度 の 専門 家 を一 年 間ロ シア の銀 行 に 派遣 す る。 その専 門家 は 、プ ロ ジェ クト の審 査手 法か ら 銀 行 に とり 基 本的 に大 事 なasset/liabilitymanagement 等 の分野 に つ き技術 的 な ノウ ハ ウを 教 え る。 専門 家 派 遣 の コス ト は欧州 連合(EU )等 の技術 援 助資 金 に よりカ バ ーさ れ る。 この提 携 関 係が う まく 進 展 す れば、 西 側 の銀行 はロ シ ア の銀 行 に資 本出資 を する な どさら に提 携 関係 は深 まる こ とに な り、 両 者 に とっ て メ リット があ る。 し か し、 こ の よう な手 法 を中 央 アジ アで 実施 す る に は、 大 き な困 難 を伴 う。 その 理由 は西 側 の銀行 に とっ て は、 た とえ その コスト は国 際金 融機 関 に よる技 術 資 金援 助 に よっ て カバ ー さ れた とし て も、 予 想 さ れる将来 で のメ リ ット が少 な く、 むし ろ リ スクが 高 い た め であ る。 3 。5 ド ナ ー( 資金 供 与側) から 見 た問題 点EBRD 等 の国 際金 融機 関 に とっ て、中 小企 業支援 が持 つ意 味 は、そ れ が統制 経 済 か ら市 場 経済 へ の 移行 に関し て 大 きな役 割 を はた す との政 策的配 慮 に よ る もの で あ る。 そし て、 中小 企業 が発 展 す るこ と に より、 市場 で より競 争的 な関 係 が構 築で きる とい う期 待感 の 表 れで もあ る。 中小 企 業 支援 の た め の手段(instrument) とし て は、(1)ウズベ キ スタ ンの例 に見 ら れる よう に、banktobankloan とい う手 法 が る。 そして(2)キ ルギ ス タン の例 で見 られ た よう な、twosteploan(Apextype) の形 態 もあ る。 更 に今 回 の議論 に はな か った が(3開 際金融 機 関が 当該 国 の商業 銀行 に直 接 資本 投 資 を す る ケー ス が考 え られ る。(1)と(2)に つ いて は、 通常 は国家 保証(sovereignguarantee)の形 態 が とら れ る。 その 理 由 は国 際 金融 機関 側 に とっ て は融 資に 対す る返 済責 任 につ い ては、 政府 に よる返 済 義務 を明 確 化 す る以 外 にリ ス ク負担 者が な い こ とに よる。通 常 は国 家保 証 があ れ ば、 融資 側(lender) に とっ て 最 も安 全 と考 えられ る が、そ の実 体 は複 雑で あ る。キル ギ ス タン の例 に見 ら れた よう に 、プ ロ ジェ クト に 参加 した 商業 銀行 が 倒産 し た場 合、キル ギスタ ン政 府 はそ の外 貨保 有 高 からEBRD に返 済 す る こ とに なる。 し かし、 実 際 に はキ ルギ スタ ン中央 銀行 は倒産 し た二 つ の商 業銀 行 か ら 債権 の 回収 を行 わ なけ れ ばな らず、この 問題 解 決 に は相当 な時 間 と労力 が必 要 と な る。従 っ て 結論 か ら言 え ば、 国 家 保証 が あ るか ら とい っ て その プロ ジ ェ クトが安 全 で ある と は言 えな いの が実 体 であ る、 とい う 点 は特記 さ れ て よい。 今 日 まで の国 際金 融機 関 の経 験 か ら見 る と、twosteploan と呼 ばれ る支援 策 は問 題 が多 い。 その 理 由 は中 間 媒体 で ある商 業銀 行 の 資産 内容 が 脆弱で あ り、 国際 金 融機 関 に よる融 資案 件 自体 に は問 題 は な くて も、 商業 銀行 自 体 の「 他 の融 資案 件」 に問 題が あ る場 合 が多 いた めで あ る。(3)の 海外 か ら の直 接 資本 投 資 は東欧 諸 国で は所見 で き るが、中 央 ア ジア で は極 めて 少 ない、 そ の理 由 はリ ス ク が 高 す ぎ るた めであ る。EBRD の例 で見 れ ば、 プ ロ ジェ クト に 参加 す る商 業 銀行 に たい し て は、 参加 条件 とし て、 自己 資 本 の 規模 、 自己 資本比 率 等 の条 件 を設 定し 、同 時 に国 際的 に信 用 の 高い 会計 監査 会社 に 依頼 し て、 当 該 商業 銀行 の財務 内容 に つい て は国 際 会計 基準(IAS) を適 応 し、 評 価し な け れば なら ない 。 国 際 会 計 基準 を適 応 し更 に そ れに付 随 す る システ ムの変 更 につ いて は、 その コ スト は銀行 の サ イ ズに も よ るが、 一般 的 に は一行 当 た り50万ド ル相当以 上 が必 要 と考 え られ てい る。 こう し た コ スト は 小規
賀来 :中 央 アジ アにお け る工業 発 展及び 中小 企業 の役 割に関 する一 考察( 開 発経 済学 の 新し い課 題) 103 模 な 商 業 銀 行 に とっ て は 大 き な 負 担 で あ り 、 欧 州 連 合 (EU ) 等 の 技 術 援 助 (technicalcooperation ) に 頼 る場 合 が 多 い 。 最 近 の 調 査 に よ れ ば(itli)、 現 在 ま で い ろ い ろ な 形 で 国 際 金 融 機 関 に よ り 中 小 企 業 支 援 の た め の 融 資 が 行 わ れ て き た が 、 こ の 目 的 を 達 成 す る た め に は金 融 セ ク タ ー(financialsector)の 改 善 が 必 要 で あ る と の 指 摘 で あ る 。 金 融 セ ク タ ー の 改 善 の た め に は、 中 央 銀 行 に よ る 監 視 、 規 制 と い っ た 制 度 的 な 改 革 を 含 む と同 時 に 商 業 銀 行 側 に お い て も内 部 監 査 の充 実 な ど課 題 が 多 い 。 企 業 の 側 で も、 そ の 財 務 ・ 経 営 状 態 の 開 示 に 不 可 欠 な 会 計 制 度 の 改 革 は 進 展 し て い な い 上 に 、 公 認 会 計 士 ・ 監 査 法 人 な ど が 絶 対 的 に 不 足 し て い る。 著 者 が 調 査 し た 、 ウ ズ ベ キ ス タ ン ・ キ ル ギ ス タ ン に お け る 中 小 企 業 で は 二 重 帳 簿 を もっ て い る ケ ー ス が 多 い 。 一 つ は税 務 署 な ど 対 外 的 な 帳 簿 で あ り 、 他 の一 つ は 内 部 用 で あ る。 前 述 の 調 査 で の 一 つ の 結 論 は 、 中 小 企 業 支 援 と 「 同 時 並 行 的 」 に 金 融 制 度 の 改 革 を 進 め る こ と は 大 き な 困 難 が あ る と い う 点 で あ る。 金 融 制 度 が 未 整 備 の状 態 で は、 中 小 企 業 の 倒 産 の リ ス ク と同 時 に 中 間 媒 体 とし て の 商 業 銀 行 が 倒 産 す る と い う リ ス ク を 含 む こ と に な る 。 世 銀 の 調 査 に よ れ ば 、 所 謂two-steploan が 成 功 す る た め に は 、 中 小 企 業 へ の 融 資 資 金 の 回 収 率 (CollectionRatio ) が85 % 以 上 必 要 な の に 対 し 、現 実 に は53 −77 % で あ っ た と報 告 さ れ て い る(SE19)。そ の 主 な 理 由 は当 該 銀 行 の 審 査 能 力 の 欠 如 及 び 融 資 へ の 「 政 治 的 介 入 」 の 結 果 で あ る。 ま た 国 際 金 融 機 関 か ら の 中 小 企 業 支 援 は 、結 果 的 に 見 る と、ウ ズ ベ キ ス タ ン の 例 に も 見 ら れ た よ う に 、比 較 的 大 規 模 な 中 小 企 業 支 援 に な っ て し まう 。 従 っ て 今 後 は長 期 的 な 視 野 に 立 っ て 、 中 小 企 業 支 援 と 金 融 制 度 改 革 を ど の よ う に 進 め る か 、 国 別 計 画 (countrystrategy) の 見 直 し が 国 際 金 融 機 関 に と っ て の 課 題 と な ろ う 。 上 述 の 問 題 と関 連 し て 、 中 小 企 業 支 援 と 金 融 制 度 改 革 の た め に は 、 大 き な 技 術 援 助 が 必 要 と な る こ と で あ る 。 キ ル ギ ス タ ン の 例 で 見 た よ う に、 技 術 支 援 は、 ま ず 第 一 に 中 小 企 業 が ビ ジ ネ ス プ ラ ン を 作 成 す る 段 階 で ア ド バ イ ザ リ ー サ ー ビ ス が 必 要 で あ り 、 第 二 に は 、 そ う し た プ ラ ン を 審 査 す る 商 業 銀 行 に対 し て 助 言 訓 練 を 担 当 す る クレ ヂ ッ ト ア ド バ イ サ ー が 必 要 で あ る 。 第 三 に は 、 中 央 銀 行 内 部 に設 置 さ れ るPMU (ProjectMonitoringUnit) にた い し て も 資 金 のdisbursement 及 び そ の 管 理 の た め の 専 門 家 の サ ー ビ ス が 不 可 欠 に な る。 こ の よ う に 考 え て い く と 、 中 小 企 業 支 援 は コ ス ト の 高 い 事 業 と な る とい わ ざ る を え な い。 著 者 の 意 見 とし て 、 西 側 諸 国 か ら 技 術 援 助 を 通 じ て 派 遣 さ れ る 、 専 門 家 ( コ ン サ ル タ ン ト ) の 質 に つ い て も述 べ て お き た い 。 専 門 家 の 役 割 は、 銀 行 業 務 に 必 要 な 技 術 的 ノ ウ ハ ウ を 伝 達 す る こ と で あ る が 、 実 際 の 現 場 で は問 題 も所 見 さ れ る。 一 般 的 な事 と し て 言 え ば 、 専 門 家 と し て 派 遣 さ れ る ス タ ッ フ は 西 側 の 銀 行 な ど 金 融 機 関 を 定 年 退 職 し た ベ テ ラ ン が 多 い 。 専 門 家 と し て 、 知 識 と 経 験 は あ る が 、 問 題 は そ の 経 験 と ノ ウ ハ ウ を ど の よ う に 相 手 側 に 伝 え る か で あ る 。 つ ま り 、 専 門 家 は 良 き コ ミ ュ ニ ケ イ タ ー で な け れ ば な ら な い 。 こ う し た 観 点 か ら 見 る と 、 当 該 国 の 文 化 的 ・ 社 会 的 背 景 に 無 理 解 な コ ン サ ル タ ント が 多 い 。 専 門 家 と し て 高 い フ ィ ー を 支 払 わ れ な が ら 、 相 手 側 と十 分 な コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 出 来 ず 、 結 果 とし て 専 門 家 に 不 満 だ け が 残 り 、 効 果 が 半 減 し て い る場 合 が 多 い の も 事 実 で あ る 。 特 に 中 央 ア ジ ア に お い て は 、 こ う し た 傾 向 が 顕 著 で あ る こ と を 指 摘 し て お き た い 。
104 国 際 地 域 学 研 究 第6 号2003 年3 月 中小 企業 支 援 の観点 か ら言 え ば、 社会 主 義体 制 の もとで は、 大 きな生 産 単位 に よ り経 済 活動 が 行 わ れ て きた ため に、 日本 や西 側 諸国 に 見ら れる中 小 企業 と云 う概念 自 体が 中央 ア ジ アに は 存 在し て い な かっ た わけで あ る。 こう し た現 実 を理 解出 来 る専 門家 の育 成が こ れ からの 課題 で もあ る。 こ れ ら の諸 国 にお いて は、 今 まで 中小 企業 と は、 主 に物品 の 流通 事業 を意味 し てお り、 製造 業 分 野 で の 中小 企業 は存 在し てい な かっ た と考 え る べきであ ろう。 前述 の 分析 で見 ら れる よ うに、 中 央 ア ジ ア が西 側 か ら「生 産 技術 」 その もの を移転 す るこ とに つい て は、 後発 国 とし て技術 的 側面 へ の適 応力 は保 有し てい る と考 えら れる が、金 融制 度 を中心 とし た経 済 シ ステ ム の構築 とその 発展 に つい て は。 「後 発効 果 」 の利 点 が見ら れな い所 に、 基 本的課 題 があ る と考 えら れ る。 4 。 中 央 ア ジ ア に お け る 経 済 成 長 の 発 展 パ タ ー ン に 関 す る 考 察4 .1 旧 社会 主義 シ ステ ムの 遺 産 前 述 の議 論 から、 中央 アジ ア におい て は「生産 技術 の習 得 」 その ものにつ い て は、後 発 国 とし て 大 きな 問題 はない が、 経済 環境 に どの よう にして 「競 争的 」 な市 場 メカ ニ ズム を導 入 で きる かが 今 後 の課題 とな る。 こ のこ とは 次 のよ うに 言い 換 えるこ とが 可 能で あ ろう 、即 ち 「生 産技 術 」 そ の も の は、 ウ ズベ キ スタン、 キル ギ スタ ンの 中小 企業 に見 ら れた よ うに、「中 立的 」であ り、 問 題 は生 産 技 術 自 体 の習得 そ の もので は な く、 そ れを取 り 囲んで い る経 済的 社 会的 体制 の 「適 応力 」 と「吸 収 力 」 が ど の程度 、生 産技 術 を 活性 化し さ ら に進化 させ 、社 会 の生 産 単位 とし て許 容 さ れ るか とい う 課 題 に突 き当 たる。 旧 社会 主 義体 制 の一躍 を 担っ て い た中央 アジア が抱 え る問題 点 は、 前述 し た よう に今 日 の 発展 途 上 国 が直 面 し てい る問題 とは、 別 の 次元 の問 題を抱 えてい る と考 え ら れる。 前 に述 べた 、 キル ギ ス タン にお ける商 業銀 行 に関 連し て、 その 銀行 の役員 が 株主 となっ て 優遇利 子 で の融資 を受 け る こ と は、 社会 的 「平 等」 のも とに生 活 し て きた者 に とって は、 当 然の 権利 とし て 考 えら れ てい る 事が 問 題 の本質 を良 く表し てい る。 社 会 的平 等 は「 権利」 に つい て平 等 であ り、 株 主が 優 遇利 子 融資 を 受 ける こ と は、彼 ら に とっ て は、「利 害 の対 立」とはなら ない 。 この 事 は民営 化 さ れた企 業 に つい て も 同 様 の こ とが言 え る。国 営企 業 が 民営 化 さ れた場合 、 イン サ イダ ー つ まり経 営者 ・ 従業 員 ( 実質 的 に は経営 者 ) の支配 す る企業 と なり、 ロ シ アで は民 営化 企 業全 体 の総 株 数の う ちイ ン サイ ダ ーで あ る経 営者 ・ 従業 員 の所有 す る株 数 が占 め る割 合は50%以 上 の 過半 数 を占 めてお り、民 営 化企 業 の 資 産 の 所 有者 が国 か ら旧 国 営 企業 の 経営 者 と労 働 者 とい う イ ン サ イ ダ ーに 移行 し た こ とを 示 し て い る(゛20)。 この小 論で 論じ た ウ ズベ キスタ ン の事例 を見 て も従業 員 が株 式 の40% か ら49% 所 有 し て い るヶ− スが 見ら れ る(表3 、 参 照 )。企 業 統 治(CorporateGovernance )の重 要性 は先 進 諸 国 で も最 近 再 認識 さ れて きて い るが、 資 本 と経 営 の分 離 とい う 原則 は絶 対的 「平 等 」 とい う こ とが社 会的 習 慣 とな った 体制 の も とで は理 解さ れ に くい。 基本的 に資 本 主義 社 会 は競争 を 原理 とし て い る。 し か し 一 般 に旧 社会 主義 国で は競 争 社会 は「 不平 等」を生 むと考 え ら れ、「 機会 の平 等」とい う市 場 主 義 経済 の概 念 はな かな か理 解 さ れな い。 こ の点 に十分 な注 意 を払 わ ない と中央 アジ ア の市場 経 済 移 行
賀 来: 中央 ア ジア におけ る工 業 発展 及び中 小企業 の 役割 に関 す る一 考 察( 開発 経 済学 の新 しい 課題) は 理 解 出 来 な い こ と に な る 。 105 4 。2 市場経 済 移行 への 促 進要 素 以 下 に 示 す表6 は、EBRD の経 済調 査 局 に より行 わ れた 分析 結果 で あ る。こ れ は市場 経 済へ の 移 行 度 を指 数(1 か ら4 まで を採 用し 、 指 数が 高 い ほ ど、 移行 が 進展 し てい る こ とを示 す) に よ り、評 価 し た もので あ る。 表6 市場 経済移行の進 展度: 中 央 アジア5 力国 とロシア、東欧 諸国の比 較 カ ザ フ ス タ ン ウ ズベ キ ス タ ン キル ギ ス タ ン タ ジ キ ス タ ン ト ル ク メ ニ スタ ン ロ シ ア ハ ン ガ リ ー チ ェ コ ポ ー ラ ンド 大 企 業 小 企 業Governance 民 営 化 民 営 化&Enterrise_prestructuring(note:1) 3 T 3 2+2 一 一3 + 434 44 3 十 3 +2 十 十 +4444 2 2 −22 − 2 3+3 +3 金融制度 改革及 び 金利 自由化2 十2 −2 + |I 9 −43 +3 十 証 券 市 場 の 進 展 そ の 他-2 + 22I I 2434 {note:│ }Governance&Enterpriserestructuring と は、 国 営 企業 の 民 営化 の みな ら ず、 企 業形 態 が 経 営 内容 を 含 め て、 政 府 の 補助 金 に頼 らず、 競 争的 且 つ 自 立的 な産 業 組 織 に 進展 し て いる か を示 す。 なお 、 こ れら の 指 数 は現 状 を示 し た もので 、 市 場 経済 移 行化 の スピ ード を 示唆 し た もの で はな い。( 詳細 はEBRD,TransitionReport 、2000,Page14 を参 照 〉 上記 の表 に要約 さ れた市 場 経 済移行 化 の 進展 度 は、実 際に は8 項 目 にわ た り、調 査分析 さ れ たが 、 ここ で は紙 幅 の都 合 から5 項 目 に限 定し たこ と をお断 りし てお きたい 。 上記 の 表 と分析 結 果か ら観 察 さ れ る重 要な点 は、 第一 に 、市 場 経 済移 行 が進 んだ国 で は、 一般 に企 業、 銀行 、証 券 に関 連 した 法 的 ・基 準整 備 も進 んで い るこ とで あ り、 第 二 に国営 企業 の民 営 化 は市 場 経済 移行 に とっ て、 不可 欠 な 過程 で あ るが、 企業 の所 有権 の 移転 だけ で は不十 分で あ る こ とで あ る。 これ は民営 化 さ れた企 業 の マ ネジ メント が旧 態 依然 で あ る とい う事 実 に所見 さ れ る。 第 三 は、 小企 業 の民 営化 に れは新 規 の 企業 が 市場 に参 入で き るこ と を含 む) が市場 経済 移行 に とっ て、 重 要 であ るこ と。 第 四 に銀行 制 度 を含 め た金 融制 度の 改革 が 移行 経 済 の基 盤 として 大事 な 点 であ る と云 う こ とで あ ろう。 上 述 のTransitionReport で は、結論 とし て、市場 経 済 移行化 の 促進 は二 つ の 基本 的 な要素 と関 連 し てい る とし てい る。 その第 一 は、自 由 市場 と自 由貿 易(liberalization)を実施 し て きだ 年数 ”で あ り、 第 二 は自 由 な選挙(民主 化)に よ る司 法 、 行政 が行 われだ 年数 ”で あ る{p.28)。 このこ と は、市 場 経 済 移行 に関 し て、「初 期条 件」の違 い が その後 の結 果 に大 きく影響 し てい る こ とを示し て い る。但 し 、 東欧 諸国 に於 け る市 場 経済 移行 化 の進 展 は こ れら の国 々 が欧 州 連合(EU )に加 盟 す る意志 が 強 かっ た た めに、 外的 要因(EU 加 盟 へ のAccession )が強 く働 い た こ と も事 実で あ り、 考慮 し てお く必 要 が あ る。特 に東欧 の政 治体 制 の民 主 化 は、それ まで 政治 と癒 着し て い た利 益集 団(企業 グ ル ープ を含