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物権的返還請求権論序論 : 実体権的理解への疑問として

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滋賀大学経済学部研究叢書法学篇第

1

物権的返還

求権論序論

一 一 実 体 権 的 理 解 へ の 疑 問 と し て 一 一

伊 藤

高 義 著

(2)

物権的返還請求権論序論

l

(3)

第一章 第二章 第 章

序 問 題 の 所 在 と 問 題 の 範 囲 第一節 問 題 の 所 在 第二節 問 題 の 範 囲 民 法 一 八 九 条 以 下 に お け る ﹁ 占 有 者 ﹂ ー「 回 復 者 Lー の 音 義 Cコ 第一節 わ カ1 国 お け る 問 題 の 状 況 Cコ 四 = 一 一 序 契 約 法 と の 関 係 不当利得法との関係 不 法 行 為 法 と の 関 係 第二節 ドイツ民法の構成・所有権にもとづく返還請求権の実体権的性格・:・:::::・ : j i -j i -三 ニ 四 = 一 一 問題の発生 契 約 法 と の 関 係 不当利得法との関係 不法行為法との関係 民 法

条 の 所 有 権 取 得

成 ζコ 第一節 即時取得の要件としての﹁占有﹂の取得::::::::・ j i -: : : : : : -j i -: : ・: : : j i -一 室 第 占有改定と﹁占有﹂の取得

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第四章 第 二 節 第 四 三 二 一 二 五 四 三 二 一 問題の所在 肯定説の論拠とその批判 折衷説の論拠とその批判 否定説の論拠とその批判 ドイツ民法第九三三条 指図による占有移転と﹁占有﹂の取得 問題の所在 わが国における取扱い ドイツ民法第九三四条一文(譲渡人に間接占有のある場合) ドイツ民法第九三四条二文(譲渡人に間接占有のない場合) 善意者から再取得した譲渡人及び悪意第三取得者の返還義務 J i -: j i -: : : j i -: : : : 一 四 一 ニ 四 = 一 一 問題の所在 原因行為の解消と返還義務 第一の譲渡と無関係に再取得した者の返還義務 義意者から取得した悪意第三取得者の返還義務 最古 論 主王

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序ー問題の所在と問題の範囲

問 題 の 所 在 付 わが国およびドイツの通説的見解によれば、物権的返還請求権は、所有と占有の分離が生じ、占有者が占有すべき権 限を有しないときには、常に生ずるものと解されている。これはドイツ民法が﹁所有権にもとづく請求権

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﹂の節の下に、九八五条で﹁所有者は占有者に対して物の返還を請求できる﹂と原則を規定し、 九八六条一項一文で﹁占有者又は占有を為す権利を承継した間接占有者が、所有者に対して占有すべき権限を有すると きは、占有者は物の返還を拒むことができる﹂と規定していることに由来する。つまり、占有者が占有すべき権限を有 しないときには、所有者には常に物権的返還請求権が生ずることになる。その結果、物の返還請求の当事者聞に、契約、 不当利得あるいは不法行為の関係が存する場合にも、契約上、不当利得上あるいは不法行為上の返還請求権と並んで物 権的返還請求権が生ずるか(請求権競合)、 あ る い は 、 一方が他方を排除するか(法条競合﹀、 という問題が議論され る こ と に な る 。 ところで、物の返還請求がなされる事例を卒直に眺めてみると、この議論には疑問が生ずる。例えば、賃貸借契約が 終了して返還請求がされるという場合を考えてみると、賃貸人が所有者である場合にも、請求の中に賃貸借契約が述べ られている限り﹁賃貸借契約が終了したから返せ﹂という内容の請求であり、契約上の義務の履行を求める請求にほか ならない。そうすると、ここで所有権にもとづく返還請求権を持ち出す意味はどこにあるか、という疑問が生ずる o 同

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様のことは、返還請求の当事者聞に不当利得あるいは不法行為の関係が存する場合にもいえる。 2 これらの場合に、なお物権的返還請求権が生ずるものとされるのは、物権的返還請求権が﹁所有権にもとづく﹂返還 請求権といわれているように、占有権限を有しない占有者に対して、所有権があるから、そこから生ずると考えられて いることによる、ということができる。物権的返還請求権をこのように実体権的に理解することが、物権的返還請求権 と契約上、不当利得上あるいは不法行為上の返還請求権との関係を混乱させているのではないか。これが、本稿での私 の出発点である o

t

物権的返還請求権を実体権的に理解することが他の請求権との関係において混乱を生じているとすれば、これをど のように理解していくべきか。この点についての、私の結論となる部分を述べておくこととしたい。 物権的返還請求権は実体権たる所有権と区別をすることが必要である。所有権(およびそれの侵害)は実体権として の性格人が目的物に対して有している利益ーのものであり、物権的返還請求権は、人が物に対して有すべき利益を実 現するための手続的側面訴訟法的性格ーのものである。この手続的側面からみた場合、返還請求の当事者聞に契約等 の人的な関係がある場合の人的返還請求権と、そのような関係がない場合の物権的(物的といった方が適当かも知れな い)返還請求権とが区別される。従って、物権的返還請求権の適用領域は次の二つの事例に限られていく。的第一 d 、 所有者が非所有者(又は処分権のない者)から取得した第三者に返還請求をする場合、制第二は、同一の所有者に由来 する相排斥する権利を譲り受けた (典型的には二重売買の場合)者のうち、 対抗力を有する一方が他方に対して引渡 (ないし返還)を請求する場合、 で あ る o これら二つの事例は、返還請求の当事者間に、契約その他の人的な関係が存 しないという場合である。 このように考えた場合、返還請求の当事者間に契約等の人的な関係がある場合の人的返還請求権と、そのような関係

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がない場合の物権的返還請求権との聞には、請求権競合ないし法条競合の問題は生じなくなる。 同 物権的返還請求権の実体権的な理解の仕方からは、 一七七条および一九三条の場合に所有権は誰のところにあるか、 という議論も生ずる。しかしこの議論は実益がない。問題は、 一九二条の効果に関して、所有権を取得するという構成 か ら 生 ず る 。 一九二条の要件を充たし た善意者は、所有権を取得するものとする構成がとられている。この規定が占有権の効力の規定中におかれ、その構成 民法第一九二条の効果に関しては、 一般には所有権(ないしは質権)取得構成、すなわち、 においても、善意者による所有権の取得という形式よりも、むしろ返還請求権の制限ないしは拒否の形式となっている にもかかわらず、このことは少しも疑われてはいない。却って沿革を明らかにした上で、 ﹁フランス民法におけると同 様、わが民法の規定も、その実質においては、近代法的な善意ないし権利外観に対する信頼の保護を目的とするもので ある﹂として、返還請求権の制限という構成には積極的に反対する。そこで、わが民法の解釈としても、近代的な構成 を持つとされるドイツ民法第九三二条以下に倣って、所有権取得構成がとられる。返還請求権の制限という、近代的な ﹁所有権の観念性に媒介﹂されない構成は、 ﹁取引の安全﹂を害するものとされるわけである。 しかし、私は、これには疑問をいだかざるをえない。まず、卒直には次のような疑問が生ずる。 ) , 4

( 民法第一九二条の効果を所有権の取得であるとするならば、即時取得の要件としての﹁占有﹂の取得に、なぜ、 占有改定による占有権の取得が問題となってくるのか。民法第一八三条が、占有改定によって﹁占有権ヲ取得ス﹂るこ とを明言しているにもかかわらず、判例及び多くの学説によって、占有改定による﹁占有﹂では所有権を取得するには 足らないものとされている。このように占有改定による占有権の取得では、所有権を取得しないとするならば、所有権 取得構成をとること自体の意味について疑問が生ずる。この場合に所有権取得を排除するならば、近代的な所有権構成 3

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も、取引の安全も、その限りにおいて無関係なものとなるからである。 4 しかし、所有権取得構成をとった上で、新たな理論を媒介させることにより、この場合には所有権が取得されないの だ、とすることが可能であるかもしれない。従って、即時取得の﹁要件﹂に関する限り、理論の修補で解決されうるよ う に も み 与 え る 。 (ロ) それでは、次の設例をみよう。 ) -1 ( 甲から賃借していた物を、賃借入乙が、民法一九二条の要件を具備した丙に売った。その後、 乙は丙から買って 再び占有するに至った。甲は乙に対してこの物の返還を請求した。 州 H U -( 前の設例において、賃借人乙が丙に勝手に売却したのだという事情を知っていた丁が、丙から買って引渡を受け た 。 即時取得の効果が所有権の取得であるとするならば、この設例は意味をなさないように思われる。

ω

における丙から 乙への譲渡および

ω

における丙から丁への譲渡は、即時取得の問題ではなく、正当な所有者からの譲受けにす、ぎないか らである。このように解するならば、 いずれの場合にも、甲の返還請求は拒否される。しかし、所有権の取得と構成す る こ と が 、 ﹁取引の安全﹂すなわち前主の占有を信頼してこの者と取引をした第三者を保護することから要請されてい るものとするならば、その効果を取引の安全とは関係のない者にまで及ぼす必要はないのではないかという疑問が生ず る。この場合の乙および丁は取引の安全の領域外にいる。それにもかかわらず、 乙又は丁が﹁所有権を取得しない﹂と い う 結 論 は 、 一般には、容易に認められていない。 このように考えてみると、取引の安全のために所有権取得と構成したことが、却って、問題の解決を複雑にし、時に は、取引の安全とは関係のない者にまで保護が及んでいるのではないかという疑問は、必ずしも当っていないとは言い

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切れないように思われる。取引の安全は、善意者だけに保護を与えることで十分だと考えられるからである。 ここでも、実体権としての所有権と物権的返還請求権とを区別するならば、 一九二条は所有権取得を規定したもので は な く 、 ﹁物権的返還請求権の制限﹂を定めたものと理解することができるのである。 同 私は、以上のような解釈が、果してわが民法の体系上、成り立たないものかどうか、具体的に事例を検討しなが ら、考えてみたいと思う。

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我妻・物権法一六六頁以下、好美・注釈民法

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五一頁以下、舟橋・物権法(法律学全集)四二頁以下など。ドイツでは、

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百 聞 2 l 回 2 m -訳 。 日 目 。 ロ

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・ 吋 NNh 固など。但し、後述(第二章第二節)するように、これに反対する学説がある。

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﹁動産の取得時効﹂の章の中にあった旧民法証拠編第一四四条以下の修正に際して、この規定が、占有権の効力の節中に規定せられたことに ついては岡松﹁民法理由﹂(中)八二頁以下参照。もっとも、法典調査会民法議事速記録(六ノ一六一二以下)によれば、立法当時、すでに所有 権の取得の節中に規定すべきであるという意見のあったことが報告されている。﹁穂積陳重右:・・既成法典ノ例ニ倣ツテ之ヲ時効ノ所一一入レル コトカデキヌ・能ク其性質ヲ考へテ見ルト一五フト全ク此占有保護ト其性質ヲ同ジウシテ居ソテ動産ノ如キ即チ其所有主ヲ容易一一替ヘラレルモ ノハ其替へ子アル実際/有様上五フモノニ或法律/保護ヲ与ヘル上京フコトハ其持ッテ居リマスル人/為メニ叉第三者一般ノ人ノ為メニ必要ナ ルコトデアリマスルカラ所有権ノ取得ハ完全ナル占有ト共-一移ルト云フコトニシタノデコザイマス﹂これに対して次のような批判意見が出され ている。﹁箕作麟祥君・:何ウモ占有権ノ効力トシテ所有権ヲ取得スルトハ少シ往キ過ギテ居ルヤウニ思ヒマスルガ是ハ此占有権/効力ト云 7 所ニ御入レニナラヌデ・・・所有権取得上五フモノガアルナラパ其方へ御入レニナヅ夕方ガ穏当ノヤウニ思ヒマスルガ何カ差支ガアルノデコザイ マ セ ウ カ ﹂

ω

我妻﹁物権法﹂(民法講義 E ) 一二八頁以下、舟橋﹁物権法﹂ ﹁所有権法の理論﹂二八 O 頁 以 下 な ど 。 川向舟橋・前掲書二三二頁。

ω

川島・前掲書二七九頁。 ( 法 律 学 全 集 ) 一 一 一 一 一 C 頁 以 下 、 柚 木 ﹁ 判 例 物 権 法 総 論 ﹂ コ 一 二 六 頁 以 下 、 川 島 5

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問 題 の 範 囲 6 本稿に関連するが、残したままにしておく問題がある。 )

T ( 第一は、不法行為と所有権にもとづく返還請求権との関係についてである。この関係においては二つの事例が問 題となりうる。第一は占有侵奪の場合に、不法行為にもとづく返還請求権が与えられるかどうか、 および、これが与え られるとした場合に、それと所有権にもとづく返還請求権とは競合しうるかという問題である。これについては本稿に おいても取扱う。しかし、より困難な事例がある。それは、土地の境界争いの事例である。この問題は返還請求か妨害 排除請わかで若干議論はされてい出。しかし、いずれと解するにしても所有権にもとづノい請求権の領域の問題であるこ とは疑われていない。この場合、隣地への違法な侵入が、占有侵奪の場合と同様に、所有権の侵害となり不法行為とな る場合がある。しかし、私は、このような土地境界争いの事例が所有権にもとづく請求権の領域の問題ではないのでは ないかとの疑問を持っている。この場合の訴訟では、返還ないし妨害排除を求めるという性格と同時に、境界確定を求 めるという性格をもっている。前者の性格のみを見る場合には第一の占有侵奪の事例と同じように解することができ る。しかし、妨害排除請求と考えた場合には必ずしも疑問であるとは言えないように見えるが、返還請求と考えた場合 には││単に土地が侵奪されているということではないということではなくーーー疑問が生ずる。土地境界争いが、相隣 関係上の紛争ないしは不法行為上の性格に近いからである。このような問題を含んでいるため、別に論ずる機会を持ち 、 ﹄ 、 o z f t a a し w (ロ) 本聞には法律行為の無効取消の問題を含んでいる。従って、物権行為の有因無因の問題とも関連をもっ。例えば 甲ー乙│丙と転々一譲渡の場合において、第一の譲渡の無効取消にもとづいて、対抗要件を備えた丙に対する返還請求は

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認められるかという問題を生ずる。今はこの問題を考察する余裕を持たないので、本稿では、通説に従って、物権行為 の無因性をとらないという前提で議論を進めていく。

最近のドイツにおいては、 善意取得を認めることの当否に闘し、 多 く の 疑 問 が 出 さ れ て る

(9) ﹂ れ ら は 英 米 法 立法論として、民事取引における善意取得を原則として否定し、 川 開

ω

宮 内 回 目 ロ

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同江己のを付加した時のみ、善意取得を認めることを提案する。更に解釈論としても、善意取得の適否につき 紛らわしい部分については、この理論を適用して善意取得を否定しようとする。 との比較研究から、 所有者が権利外観に権限の徴愚 この考えは、善意取得制度の正当性の根拠とされている、信頼の対象としての占有に、そのような効力を認めること に疑問を持つことから出発する。商人のところにある商品で需要に応ずることを余儀なくされる買主にとっては、商人 が当該商品の譲渡を許されているものと信ずることができるのでなければならない。その場合には商人の占有は信頼の 要件たる事実となる。しかし民事取引においては譲渡すべき真正の必要に欠けるので、単に取引の安全のためにのみ占 有に権利外観を結びつけることはできない。このように民事取引の場合と商事取引の場合とで区別すべきことを提案す る

この提案は主として立法論である。また、このような価値の選択が妥当であるかどうかは、十分検討しなければなら ない問題であると思われる。しかし、ここでは、即時取得の正当性の根拠については問題としない。従来なされてきた 正当性の根拠についての議論はそのままにして、 M 脚 ヲQ o ここでは民法一九二条の解釈論的な構成だけを問題とするにとどめ

ω

占有侵奪以外の方法で物権が侵害されている場合には妨害排除請求であると解するのが通例である(我妻・物権法一六九頁以下、舟橋・前掲 書 四 七 頁 ) 。 7

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めフランスでは、ZZESCOロの事例では、土地境界争いが圧倒的に多い。そしてこの事例については、従来の52ロιER5ロの規律では 適切な処霞ができないという疑問も述べられている。境界確定という性格を十分に把えるべきだというものである(わ司roロロ5303広三2-? N ・ 司 -N ω H ) 。

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ド イ ツ 民 法 一 00 四条の所有権にもとづく妨害排除請求は一般に、常巴05由巳2Uと称せられている(ωzzι 吉田耳切 2 間 ・ 口 2 2 ・ ω ∞ N P 開口522514︿。ElF503FnrgznZω・ω怠・わが国については我妻・物権法一六九頁)。しかし、ロ 1 7 法 に お い て ほ 、 匂 内 己 申 ロぬ間三25は、被告が役権の主張をした時にはじめて220525として主張できたのであり、被告が役権の主張をしない場合には、白内門戸D -吉田回目。ロEUたるわが民法の相隣関係上の妨害排除ないし妨害予防の請求権に相当するアク千オによってのみ妨害を排除しえたとされている (川島一物権的請求権に於ける﹃支配権﹄と﹃責任﹄の分化付﹂法協五五巻六号一 O 八七頁以下)。所釘権にもとづく妨害排除請求権の規定をも たないわが民法の解釈として、ドイツ民法と同じように解する必要があるか問題とせられうる。そして、この問題を、所有権にもとづく請求権 と異ったものと解しうるときには、本文の第一の事例の解決のための一つの重要な手懸りを提供するであろう。すなわち、ローマ法でのZF 2ロ去の25は現代法における所有権対所有権の手続であり、やはりm2555Eとしての、REDR問主25は所有権対物権(用益物権 特に地役権)の争いで、相隣関係上の争いは、RtoE 宮 ECE自であったのであり、現代法においても、不法行為、叉はそれと同じ性格を 持つものではないかと考えうるように思われる。(但し、川島・前掲一 O 九 O 頁(注路)では・現在の相隣関係上の争いがロ 1 7 法では地役権 の争いとして現われていたのであろうか、とせられる)。これは物権的返還請求権を物に対する権利(実体権的性格)とのみ理解するときは奇 異に感ずるが、ロ 1 7 における﹃21ロιFEEDが所有権の争い!人的アクチオたる不法行為の物追及と異なったであることを考えるとそう に は 思 わ れ な い ( ω F 2 ・ ロ 芯 H v s m Z F 曽 己 自 己 芯 ロ ﹃ 2 ι 2 2 -三 ロ 品 目 g z o 巳 ω ∞ 命 日 同 日 開 N ロ E F m r z ︿ 。 ロ ﹀ r t o ロ ω r D ロ r c 同 時 め ロ N -ω N 品 町 内 -H叶之内・なお、後述第三章一日的住帥および本文参照)。また、法典上物権法に規定されているとしても物の返還の請求権は、物権である必要 はない(用益権終了後の用益権者の返還義務を定めるドイツ民法一 C 五五条に関して、同EEpu-o出えZロ間合初回g 巳 NZmEηrι2 明 38l 坦 坦 ω切の∞・ω-Sは、これは債務関係の整理を規定しているのであって、所有権にもとづく返還請求権を認めたものではないとする)。 当時者間では、地役権、地上権が約定の人的関係(物権として登記があれば、第三者に対抗できる)であるのに対して、相隣関係が非役定の人 的関係(隣地所有者が変更しても主張しうる)と解することはできないであろうか(それに対して、同じ人的関係である契約上の権利は第三者 に主張できないて土地境界争いは後者に関する。 川間善意取得の当否に関する疑問は、出-Eurロ2=UZ 岡 山 RZ22ZEFEEozrzRrBEnz--283において鋭く提起された。彼は、 表題にも見られるように、従来、善意取得が善意者の動産物権の取得の面からだけ、論じられてきたが、反固において、それは所有者の側の動 産物権の喪失として現われるとし、この点から、占有に動産善意取得の正当性の根拠をみとめることに疑問を抱く。更に N 君 巳 mZF= 知 2 F 2 ・ 2 同 開 r r r o ロ 仏 関 2 2 r E E 間 巳 包 昨 Z F 仲 間 。 ロ B o z -釦 Z 2 2 円 ﹃ = 河 包 括 -E o -z η ﹃ ユ 吟 N ω ﹄ m r z 窓 口 問 ( 包 印 ∞ ) -同 町 . 司 ・ 0 5 E . = ロ 2 間 三 間 ︼ 酎 Z F H 問 。 8

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F 向 。 r -5 2 同 君 2 r u o 問 自 白 伸 子 ロ ロ 内 同 M N 2 r z d 弓 可 巴 = H r r m -H = ﹀ 目 立 ︿ ﹃ 貨 の 2 ・ H S Q g N ) ・ g u 之 内 は そ の 上 に 立 っ て 、 商 事 取 引 と 民 事 取 引 の 区別取扱を提唱する。なお、同-ZErZ同の論文については喜多教授の紹介(一橋論叢第三八巻第二号六九頁以下)がある。また、喜多教授 は﹁外観優越の民法的構成﹂(小櫓商科大学五十周年記念論文集四 O 九頁以下)において、同じ問題意識からN君。仲間。立に近い見解を採られ る 。 以 上 に 対 し て 、 ︿ D ロ F E Z o s -出 E L 宅 m r z z g ︽ 同 = 司 g g n r

r m r 当 ﹄ 日 明 色 Err∞2-52 ヨ ι f O O Z 宮 内 r g ﹄ 52ZロZ 由回 2 -一 口 ( H p d 印 ) ω -H N C 止 は 、 ロ ー マ 法 と の 対 比 に お い て 、 従 来 は ロ 1 7 法 の 所 有 者 の 一 方 的 な 利 益 保 護 ( ロ E Z E E S E -ロ 2 ロ F E -r F i ロ 去 の D ) だ けが強調されて、短期時効による取引の保護が図られていたことが忘れられてきたとして、この短期時効の制度によって妥当な解決をみること が で き る と す る 。 ωNg巴問。mymm-。・ω叶・例えば、所有者が倉庫の中の貨物に、自分の名前を書かずに、処分権限のない者の名前をつけさせた場合、 ( 国 g L 2 3 ロ h w h o -︿ ・ 4 司 王 F P E m H 心 ・ ∞ ・ 叩 M Y g 申 印 ) 、 所 有 者 が 自 分 の 自 動 車 を 賃 貸 し 、 借 主 に 対 し 、 自 動 車 の 側 面 に 借 主 の 名 前 を 書 き つ けることを許可しておいたところ、後に、借主がその車を処分してしまった場合宿220E︿-HV20H同・∞-Na・52)などが挙、げられて い ザ h v 川 叫 N d z -閣 2 仲 e p m -。 よ ω ・ 同 町 民 ・ ゆ N 君 己 四 2 F m ・ 州 W O -ω -H ∞ 同 時 ・ そ こ で は 、 委 託 物 と 意 思 に も と づ か な い 占 有 離 脱 物 と の 一 区 別 は 除 去 し え な い と し て 、 占 有 補 助 者 の 横 領 ・ 錯誤・詐欺・強迫による占有移転に関し、意思にもとづかない占有離脱物の範囲を拡げることによって、善意取得の認められる範囲を狭めよう とする。すなわち、ドイツでは、これらによる占有移転が行なわれた場合に、物が意思にもとづいて手離されたものか、それとも、意思にもと づかない占有離脱物であるかが争われているasEE 聞 耳 切 Z F ω ・ 8 町内.巧gZES コ

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﹃ 何 回 目 。 。 Z ω ・ N S な ど ) 。 そ し て N 宅 内 仲 間 。 ユ ばこの場合には意思にもとづかない占有離脱物として処埋し、結果的に善意取得を認めないことが妥当だとするものである。 ゅのEE-Fm・

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∞ 勾 c h ・ 川 判 。 ぽ E -p m -。 ・ ・ ω 当 日 ﹃ ・ ゆ但し、喜多・前掲﹁外観優越の民法的構成と商法的構成﹂四五四頁以下はわが国の解釈論としてもN君2湾立の善意取得適用の制限を採り 入 れ る 。 ゆこの善音い取得の根拠に関しては、従来、ドイツにおいても、わが国においても争われてきたところである。この点に関しては、田島﹁民法一 九 二 条 の 研 究 ﹂ 四 八 三 頁 以 下 、 出 g m E S X N : 町 内 w y z z g 広 三 関 口 ロ 四 回 同 ロ r c z n r g 問 。 n z = N H N 0 2 N 念 戸 参 照 。 9

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10

第二章

民法一八九条以下に尉ける﹁占有者﹂﹁回復者﹂

の意義

第一節 わ が 国 に お け る 問 題 の 状 況 一、序 学説は一般に一八九条以下の占有者の意義を、本権(所有権、地上権、永小作権、賃借権など

)

1

1

果実に関し ては果実収取権を含む本権ーーのない占有者と解している o このため、賃貸借契約終了後も賃貸人に賃借物を返還せず 付 に占有している賃借入、売買契約後も目的物を引渡さずに占有している売主、売買等の法律行為が無効又は取消となっ た後も占有している買主等、あるいは占有侵奪によって物を占有している不法行為者に対して、賃貸人、売主、被害者 が返還又は引渡の請求をする場合に、それぞれ契約、不当利得、不法行為の規定が適用されるのかそれとも一八九条以 下が適用されるのかが問題となる。 同 これらの規定の関係についての判例および学説を検討する前に、 一八九条以下ほどのような事案について問題と なるかを整理しておく必要がある。判例にあらわれた事案を整理すると次の一一一つの型がある。 ) -I ( 第一は、非所有者又は処分権のない者から譲り受けた者が、後に所有者から返還請求を受けた事例(この中にも 的非所有者による第三者の者の売買の事例と、 同転々売買の後、 第一の売買が無効又は取消となった事例の二つがあ る ) 、 および同一の前主から相排斥する物権を取得した者の一方が対抗力を有せず、対抗力を備えた他方から引渡請求

(15)

を受けた事例である。 ) -・ l ( 第二は、返還又は引渡を請求する者が、相手方との契約関係にもと与ついて返還又は引渡を請求する事案である。 第三は、返還請求者が相手方(返還者﹀ 解除を理由として返還を請求する事案である。 悩 への売買等所有権移転のための法律行為︿賃貸借を含む)の無効、取消、 仙の事案については、占有者が前主から権利を取得する行為自体の有効無効が問題なのではなく、占有者の前主が占 有者へ所有権を譲渡する権限を有しているかどうか、すなわち占有者の前主と所有者との聞の譲渡行為又は処分権の授 与の有効無効が問題となる o 従って、占有者の善意も、前主の所有権又は処分権についてである。ここでは、占有者に よる善意取得の場合を除けば、占有者は所有者に対して目的物を無償で返還しなければならない。それに対して仙およ び凶の事案では、返還又は引渡を請求する者による相手方(返還者) への譲渡行為又は権利設定行為自体が有効に存在 しているかどうかが問題となる。ここでは、返還又は引渡をする場合には、直接にこの当事者の聞において財産移動の 調整が、すでになされているか、なされることが予定されている(例えば目的物の返還と売買代金の返還)。 この点を念頭において判例および学説を検討してゆきたい。

ω

我 妻 ・ 物 権 法 二 二 二 五 、 三 コ 一 七 頁 、 舟 橋 ・ 物 権 法 ( 法 律 学 全 集 ) 一 二 O 九 、 一 一 一 一 一 頁 、 末 川 ・ 物 権 法 一 一 一 八 、 二 二 O 頁など。また、立法当時から もそのように解していた(岡松・民法理由中巻七四頁てなお、遠藤・杓権出(判例コンメンタ 1 ル)一七八頁ご九一条に関する注釈)は ﹁占有すべき権利のない占有者﹂とも言っているが、これば、一八九条に関してもこのように言うこと、かできるであろう。

ω

仙 川 の 事 案 で は 、 大 判 明 治 コ 一 四 年 一 月 一 C 日民録七輯九巻五一頁、大判明治三五年四月二九日民録八輯四巻一二七頁、大判昭和一八年六月一九日 民 佐 官 二 二 巻 四 九 一 頁 ( 後 述 判 例 ⑨ 参 照 ) が あ る 。 紛 の 事 案 に は 最 高 判 昭 和 三 二 年 一 月 一 一 一 一 日 民 集 一 一 巻 一 号 一 七 O 頁 ( 後 述 判 例 ⑩ 参 照 ) が あ る 。

ω

大判明治三八年一月二五日民録一一輯四一頁、大判昭和二二年四月一九日民集一七巻七五へ頁(後述判例⑨参照)。 川間後述(二、付)判例①、②、③参照 c 川川後述(二、何)判例③、⑥、⑨参照 c 11

(16)

二、契約法との関係 12 け 判 例 的売買の行なわれた後も売主が目的物を占有する事例について、 一八九条以下の適用を排除したもの(①) と、契約関係の規定と一八九条以下とが競合的に適用されうるとしたものとがあり、 M W 賃借人が返還義務に反して占有 する場合に、両規定が競合しうるとしたもの(③)がある。 大 民 連 判 大 正 一 一 一 一 年 九 月 二 四 日 民 集 三 巻 四 回 O 頁 。 売主(原告、被上告人)が売買土地の引渡後、買主(被告、上告人)に代金の請求をしたのに対して、買主が抗弁として、売買契約後引渡ま での問、売主が土地を他人に小作させていたので懇意の占有者であるから、果実たる小作料と売買代金とを相殺すると主張した。大審院は五七 五条一項のみを適用すべきものとしている。 ②大判昭和七年三月コ一日民集一一巻二七四頁。 Y へ被告、上告人)は本件建物を X ( 原告、被上告人)に売って代金を受領した後も本件建物を他に賃貸していたので、 X は Y に対して、不 法に損害を蒙らせたとして、損害賠償を請求した。大審院は、代金受領後の売主は五七五条一項の解釈から、果実を取得せず、かつ、悪意の占 有者として一九。条にもあてはまるとし、更に一九 O 条、一九一条ば不法行為の規定の適用を排除しないとして請求を認めた。 ③大民連判大正七年五月一八日民録二四輯九七六頁。 賃貸借契約終了後も、賃借入 Y( 被告、被上告人)が賃借物を返還しなかったため、賃貸人 X ( 原告、上告人)が家屋明渡の訴を提起するに 至り、その後 Y は占有を放棄したため X は訴を取下げたが、訴訟に要した費用を Y の不法行為による損害として賠償を請求した。原審が一九 O 条 は 七 O 九条を排斥するとしたのに対し、大審院は﹁民法第一九 O 条、一九一条所定ノ場合-一付キ、同条ノ規定ヲ適用シテ占有者ノ賠償責任ヲ 定ムルコトヲ要スルハ勿論ナリト雄、之カ為メ其ノ他ノ場合ニ付キ民法第七 O 九条/一般規定ヲ適用シテ、占有者ノ賠償責任ヲ定ムルハ事モ妨 ゲ﹂ず、本件では、賃貸人は債務不履行によることも、不法行為によることもできるとした。 ① ②、③の判決理由はそれぞれ五七五条一項と一八九条以下、債務不履行に関する規定と一八九条以下の競合を認めて いる。しかし、事案を検討すると、②、③は契約責任と不法行為責任の関係を含むがその点については別とすれば、② は悪意占有者については一九

O

条 、 一九一条を適用すべきで不法行為の通則を適用すべきではないとした上告理由に対

(17)

するものである。また③では、

X

の請求の内容は訴訟を余儀なくされたことについて要した費用の賠償請求である。そ こで大審院はこれについての債務不履行ないし不法行為にもとづく損害賠償償請求を認容した。すなわち、ここでの請 求の内容は、判決理由も述べているように、 一八九条以下に関しないものであったということができる(なお、訴訟費 用および弁護士費用の賠償請求の性質については、四、において述べる ) 0 り 学 説 学 説 は 一 、 で 述 べ た よ う に 、 一八九条以下の占有者を本権なくして占有する者と解する。しかし、このよ うに占有者の意義を解しても、売買契約後も目的物を占有する売主、賃貸借契約の期間満了後になお賃借物を占有する 賃借人がこれに該当するか否かは明確にはならない。学説は、先ず前者に関して、五七五条一項は売買に関する特別規 定であるから、一般規定たる占有に関する規定が適用されるべきではないとする o また賃貸借終了の場合についても、 賃貸借に関する規定が適用されるとする。 一八九条以下の占有者の意義を上述の学説のように解するときには、契約関 係を規律する規定が適用されるとする根拠が十分明白にはならないように思われる。 この問題は次のように考えるべきものと考える。先ず、売買契約後も目的物を占有する売主の果実の取得に関す る事例(①、②)について考えてみると、売主が目的物を買主に引渡さないでいることは所有権の行使を妨げているよ うにも見える。しかし、そこにおいてなされる請求の具体的内容を眺めてみると、売買契約にもとづく目的物の引渡を 求めるものであることがわかる。すなわち、請求は契約の履行を求めるもので、契約上の請求にほかならない。従って 日 開 果実に関しては、契約上の規定である五七五条一項が適用されると解することができるのである。 このことは、③の事案についてもあてはまる o 賃貸借終了後の賃借人による目的物の不返還は、賃借入の賃貸借契約 上の返還義務の不履行である。従って賃貸人である所有者の返還請求は、ここでも契約上の義務の履行を求めることを 内容としている。 13

(18)

﹂ の よ う に し て 、 私 に は 、 一八九条以下の占有者の意義を本権のない占有者と解することは、 一八九条以下と契約法 14 上の果実、損害賠償、費用償還に関する規定との適用領域に関する関係を考えるにあたっては不明瞭すぎる理解の仕方 の よ う に 思 わ れ る 。 また、返還請求権の性質について次のように言うことができる。ここで行なわれている返還ないし引渡の請求の性格 を所有権にもとづくと言いうるかどうかは実際上の問題ではなく論理的問題にすぎない。ここでは所有権にもとづく返 還請求権の要件とされている所有権の妨害はないと言っても、実際上の困難は生じない。 (7) (6) 鳩山・判民大正二二年度九 O 事 件 三 九 八 頁 。 問 、 舟 橋 ・ 前 掲 童 回 二 一 一 一 頁 。 我妻・前掲書三三七頁(一九一条、一九六条に関する説明の部分である)。 二、不当利得法との関係 け 判 例 返還を請求する者が、返還請求の相手方への売買・贈与・賃貸借等の法律行為の無効、取消、解除を理由 として返還を請求する場合について、 一八九条以下の適用を排除したもの(④)と、これを適用するもの(⑤、⑥)が み ら れ る 。 ④最高判昭和二八年一月八日民集七巻一号一一具。 売主(原告、上告人)が売買契約の合意解除により代金を買主(被告、被上告人)に返還した後、右代金額について財産税を納付した場合で あっても、民法六六五条、六五 O 条または一九六条にもとづいて買主に対し右の税額の償還を請求できないとしたもの。最高裁は、右代金額は 売主に交付された時に売主が所有権を取得し、その後合意で返還したとする原審の理由を支持している。 ⑤大判明治三七年三月二五日民録一 O 輯三三 O 頁 。 被上告人 X の先代が上告人 Y となした売買契約が、親族会の同意を要する行為であるから取消すとして、 X が 畑 地 取 戻 ・ 登 記 取 消 を 請 求 し 、

(19)

Y が、開墾費用を支出したとして留置権を主張した。大審院は、反訴その他の方法で費用弁済請求をなしていないので、債権はまだ弁済期に達 しておらず、従って留置権は主張できないとした。 ⑥大判大正一四年一月二 C 日 民 集 四 巻 一 一 員 c 親族会の同意を得ていないで、未成年者 X ( 原告、被上告人)の後見人から家屋を買い受け占有している者 Y ( 被告、上告人)が、成人した X から使用収益について不当利得の返還語求を受けた事案。原審は、 Y が他に賃貸した点については一八九条一項を適用して返還義務なしとし た が 、 Y 自身の使用利益については利得があるとして不当利得返還の義務あるものとした o Y の上告により、大審院は後者についても、一八九 条一項を適用した c 請 求 を し て 、 ⑤は売買契約の取消にもと 8 ついて返還請求のなされた事案であるが、この事案においては、

X

が不当利得による返還 七

O

三条以下を適用したとしても、結論に差異を生じない。⑥は後述する学説の通説的立場、すなわち、 一八九条以下は七

O

三条以下の特則であると解する考え方と一致する。果実に関して、 一八九条一項を適用した場合と 七

O

三条を適用した場合とでは結論が異なってくる。七

O

三条によれば善意であっても、現存利益を返還しなければな らないからである。 本件では返還者が善意である事案であるが、悪意ハ一八九条二項で悪意と見倣される場合を除く)の場合には、回復 者の費用償還について裁判所が相当の期限を許与しうる(一九六条二項但書)点だけが異なる。 同学説通説は所有権移転などを目的とする法律行為が無効又は取消された場合には、目的物を占有する譲受人に ω 対する譲渡人(所有者)の所有権にもとづく返還請求権と不当利得による返還請求権とが競合し、 一八九条以下のみを適用すべきものとする。 一八九条以下は不当 利得の規定に対して特則をなすとして、 この場合に、返還請求者が所有権にもとづく返還請求権を行使した場合には一八九条以下が適用されるわけであるが、 不当利得による返還請求権を行使した場合に、不当利得の規定を適用せず一八九条以下を適用する根拠

ll

特則と解す 15

(20)

る根拠 4 1 ーが問題となる。 16 ) 電' A ( この点については、法律行為を原因との関係において有国行為と無因行為とに区別し、前者には所有権にもとづ く返還請求権のみが生じ、一八九条以下が適用されているが、後者には不当利得の返還請求権が生じ七

O

三条以下が適 用されるとする見解がある。これに対しては法律行為の無効取消の場合に利得者が所有権を取得している場合と取得し ていない場合とで、その者の返還義務の範囲が異なるのは妥当ではないとする批判がされている。 (2) これに対して我妻博士は、法律行為の無効取消の場合には、物の返還に関して常に││わが民法の下では無効取 消の効果として所有権が返還請求者の許に存するか相手方に残るかは、専ら当該行為の効果意思内容の如何によって定 まるが、そのいずれの場合にも

l

ー不当利得の返還請求権のみが生ずるとされ、七

O

三条以下の規定によるが、 条以下はその特則であるので、後者のみを適用すべきであるとされる。そしてフランス民法と同じように解しようとさ i¥ 九 れるものである。この見解は、法律行為の無効取消の場合に、異なった取扱いのなされるのを避けることのできる点で 他の考え方よりすぐれているということができる。しかし、不当利得の規定の適用を排して、 一八九条を特則であると 考える論拠は明確とは言えない。第一に、法律行為の無効取消の場合に七

O

三条以下を適用するとした場合の実際的不 一八九条の適用される事例としては、返還請求 者が物権的返還請求権のみを有する場合(二重売買、非権利者又は無権限者からの取得の場合)があり、この事例と法 律行為の無効取消の事例とを同一に解さねばならない論拠は明らかにされていない川 0 法律行為の無効取消の場合には、 同 判 返還者は返還請求者に対して代金等の返還の反対請求権を有するが、この場合には双方の請求権について七

O

三条以下 都合ないし一八九条以下を適用すべき実際的理由は述べられていない。 を適用するのが妥当といえる。従って果実については、物の返還者が善意者であっても現存する限り返還させるとして も、物の返還者にとって酷とは言えない。それに対して非権利者からの取得などの場合には、取得者(返還者)は返還

(21)

白 請求者に対して対価なしに返還しなければならない。 ﹁所有権を有しない占有者でもなお一八九条によって果実収取権 を有するに拘らず、法律上の原因なしとはいえ所有権を有する受益者がこれを有しないこととなるのは、甚しく権衡を 倒 失する﹂ということは法律行為の無効取消の事例についてのみあてはまり、非権利者からの取得などの事例については 妥当しない。第二に我妻博士がわが民法一八九条以下を同様に解すべきだとされるフランス民法は体系上わが民法と同 じであるとは言えない。フランス民法典にはわが民法一九一条、 側 三七六条以下)中にあるにすぎない。従って、所有権にもとづく返還請求権の規定を持たない点では両民法は共通する 一九六条に類似する規定は非債弁済(フランス民法 カ1 一 九 一 条 、 一九六条と七

O

三条以下の両規定をもっわが民法と前者をもたないフランス民法とは体系的に同じであ るとは言い切れない。 同 以上のように法律行為の無効取消の場合に一八九条以下を適用した場合と七

O

三条以下を適用した場合の差異は 次の三つである。

ω

一八九条以下を適用した場合には善意者は果実を返還しなくてもよいが、 七

O

一 二 条 以 下 に よ れ ば 善 意者であっても果実返還の義務がある。制七

O

三条以下には一八九条二項に類する規定がないこと。付一九六条二項但 警は回復者の費用償還義務について裁判所は相当の期限を許与しうる。同とけは両規定(一八九条以下と七

O

三条以下) の体系上の差異から生じていると言うことはできない。七

O

三条以下についても、立法論としては一八九条二項、 九 六条二項但書のような規定がおかれでもよいと言いうるからである。従って、 同と付については無視することができ る。仰については白川刊に前述したように、法律行為の無効取消の場合には、非権利者から取得した者に対して所有者が 返還請求した場合と異なって、返還請求者は受領した給付(例えば売買代金)を相手方に返還して、自己が給付した物 の返還を受ける。従って、果実に関して言えば、善意者であっても果実が現存する限り返還をさせても酷であるとはい え な い o このように非権利者による第三者の物の売買の事例との対比において考えてみると、法律行為の無効取消の事 17

(22)

案 に つ い て は 、 一八九条以下を適用すべき理由はないのではないかという疑問が生ずる。従って、ここでも一八九条以 18 下の適用範囲を定めるにあたって、占有者の意義を、本権のない占有者と解することは適切ではないように思われる。 仙 川 Y も 、 X の開墾費についての不当利得に対して償還請求権を有し、同時履行の抗弁権(五三三条)を有するからである。松坂・事務管理・不 当利得(法律学全集)一一五頁は、法律行為の無効取消の場合に、一九六条を適用せずに七 O 四条を適用するときは、﹁費用の償還を認め難く、 原物の回復によって損失者が却って受益者の損失において利得する結果を招来せしめる﹂としているが疑問である。 川川本件の使用利益については、七 O 三条の﹁利益ノ存スル﹂に該らないと考えられるので、一八九条一項を適用した場合と七0=一条を適用した 場合とで差異は生じない。ただ、一八九条二項の適用される事例に、七 O 三条(七 O 四条ではなく)が適用される場合には差異を生ずる。

ω

解除の場合の原状回復(五四五条)は不当利得法の特則であると解するのが通説であり、従って、以下において、無効取消の場合と同様のこ とが考えられる(四宮・事務管理・不当利得・不法行為(判例コンメンタール}=一九頁以下)。

ω

いうまでもなく、この問題は物権行為の有因・無因の問題と密接に関連する。すなわち、物権行為を有図と解するときは、法律行為の無効取 消により所有権は譲渡人に帰るので、譲渡人に所有権にもとづく返還請求権が与えられる。更に、﹁占有の不当利得﹂を認める立場(通説前 掲・松坂、四宮、我妻}では、不当利得による返還請求権も与えられる(但し、我妻博士は、フランス法の非債弁済の規定を根拠として、この場合 には後者のみが与えられるとされる)。それに対して、物権行為を無因と考えれば、譲渡人の返還請求権は、不当利得のそれのみである。しか し、ここでは、物権行為の有国・無因から一八九条以下の体系を考えることよりも、具体的問題の整理の上に、それを考えていくことにしたい。

ω

松坂・前掲書四二頁、一一一一頁以下、四宮・前掲書コ一六頁以下。これに対し、我妻﹁法律行為の無効取消の効果に関する一考察﹂民法研究 E 一六七頁以下は不当利得による返還請求権のみが存するとする a

ω

松 坂 ・ 前 掲 、 四 宮 ・ 前 掲 室 田 五 九 頁 以 下 、 我 妻 ・ 物 権 法 三 三 六 頁 以 下 、 舟 橋 ・ 前 掲 書 一 一 一 一 O 頁以下、末川・前掲書一二八頁以下。鳩山、末弘説 (後掲注幻および本文参照)によっても、有国行為の場合には一八九条以下が適用されるので、大部分の事例において通説と同じ結論になる。 鳩山、末弘説は物権行為を一般的に無因行為と考えているのではない(四宮・前掲書六 O 貰 注

ω

参 照 ) 。

ω

鳩山・増訂日本債権法各論八 O 二頁以下、末弘・債権各論九四六頁以下。 品開我妻﹁法律行為の無効取消の効果に関する一考察﹂二ハ八、一七二頁、松坂・前掲書一一二頁以下。 舗法律行為の無効取消の場合に、所有権にもとづく返還請求権と不当利得返還請求権とが競合するとする前掲注

ω

の学説も、一八九条以下の特 則とするので、常に一八九条以下が適用される。 的非債弁済に関する一三七九条以下、果実取得に関する五四九条以下およびそれらを補充する学説。

ω

前述一、口、仰の型の事案(一 C 頁 ) 。

(23)

ω

この点に関する論述がないわけではない。我妻博士は、ドイツ民法で収益に関して善意占有者は不当利得者以上に保護されているのは理解で きないとされている(前掲一七二頁)。しかし、所有権の存否によって収益等について差異を生ずべきではないとされるのは本文

ω

に対する批 判、すなわち法律行為の無効取消の事例についてであって、非所有者又は処分権のない者から譲り受けた者が、後に所有者から返還請求を受け る事例および、二重売買で対抗力のない者が、対抗力を備えた者から返還請求を受ける事例についてのものではない。 倒金銭による価格返還についての不当利得返還請求の場合には、一八九以下は適用されないとするのが判例である(最高判昭和三八年二一月二 四日民集一七巻一七二 O 頁 ) 。

ω

例 外 は 一 九 四 条 の 場 合 。 M W 松 坂 ・ 前 掲 書 一 一 四 頁 。

ω

但し、果実に関しては二三七八条に悪意受領者の返還義務が、五四九条には善意占有者の果実の取得および悪意占有者の果実返還義務が規定 されている。なお、フランスにおける両規定の関係に関する議論の紹介について、我妻・前掲一八二頁以下参照。 四 不 法 行 為 法 と の 関 係 付 ここでは、占有者による占有取得が不法な占有侵奪による場合とそうでない場合とを区別する必要がある。議論 の中にこの区別を明確にしないことから問題の性質を不明瞭にしている面があるように思われるからである。 判例の中に、占有取得が占有侵奪によるものか否かを確定せずに不法行為による損害賠償を認めることは違法で 酬 明 あるとした次の判決がある。 ) イ a ( ⑦ 大判大正四年四月二七日民録二一瞬五八五頁。 事 案 は X ( 原 告 、 被 上 告 人 ) が 、 Y ( 被告、上告人)に対して、家屋明渡までの不法占有を原因とする損害賠償を請求したもので、原審は X 勝 訴 。 Y の上告に対して、大審院は破段差戻の理由を次のように述べた。﹁今占有者ニシテ其占有物ガ他人ノ所有ナリシコト及ビ之ヲ占有スベ キ権利ナキコトヲ知レル悪意ノ占有ナルトキハ其占有ハ他人ノ所有権ヲ侵害シタルモノト謂フベキモ之一一不法行為ノ規定ヲ適用シテ損害賠償ノ 義務ヲ負ハシムベキモノトセンカ民法第一九 O 条一項及第一九一条前段ノ義務ヲ負フベキハ当然ニシテ特ニ之ヲ見ズ。元来民法ガ悪音山ノ占有者 ニ負ハスニ、此ノ如キ義務ヲ以テシタルハ、悪意ノ占有者ハ占有物ヲ返還スル迄ハ所有者ノ為メニ占有物ノ保存及ビ果実/収得-一付キ注意ヲ為 19

(24)

スベキ義務アリト為スエ職由スルモノナリ。亦以テ民法ノ精神ガ悪意ノ占有者ニ不法行為ノ規定ヲ適用セザルニ在ルヲ知ルベシ。然レドモ占有 者ノ意思-一反シテ占有ヲ取得シタルナランカ此ノ場合ニ於テハ占有者ハ占有ノ規定ニ従ヒ義務ヲ負フノ外不法行為/規定ニ従ヒ損害賠償/責ニ 任スベカラズ。(原審が占有者、か如何にして占有を取得したか確定せずに不法行為による損害賠償の義務ありとしたのは違法である)﹂。 20 (ロ) 占有侵奪による占有取得が不法行為である場合には、 不法行為者はそれから被害者に生ずる損害の賠償へと向か わされる。それに対して、占有侵奪でない占有取得の場合には、占有者は前占有者から適法に占有を取得したにもかか わらず、非所有者又は処分権を有しない者からの権利の取得であるために、彼の占有は客観的な違法状態となり、所有 者から返還請求を受ける。そのために、占有侵奪の場合と異なって、所有者の損害賠償という処理には適さないという ことができる。このような二つの区別の上に問題の検討を進めていくことにしたい。 仁今 不法な占有侵奪による占有取得の場合 ﹂れに関する判例││一八九条以下の適用を問題とする

ll

は見当らな し、

﹂ れ に は 二 つ の 問 題 、 が あ る 。 ) イ 。 ( 一つは占有侵奪による不法行為者に対する返還請求は不法行為法上の請求権によるものであるといえるかの問題 で あ る o 不法行為による損害賠償の方法は金銭賠償を原則ハ七二二条一項)とし、例外は名誉鼓損(七二三条)および 特別法上認められている鉱害(鉱業法一一一条)、不正競争における営業上の信用妨害(不正競争一条の二、二項﹀、工 業所有権に関する信用妨害ハ新案三

O

条、特許法一

O

六条など)の場合だと解されている。しかし、七二二条一項︿四 制 一七条)の趣旨は、原状回復による損害賠償の方法が﹁徒-一事物ノ混雑ヲ来タシ却テ不便しだというにあるとすれば、 間制 占有侵奪による不法行為の場合には、物の返還については原状回復であっても差支えないと考えられる。ここでの請求 の具体的内容は、不法行為によって占有を侵奪されたことについてのものである。

(25)

(ロ) 他は、この場合に不法行為法を適用するか、 一八九条以下を適用するかという問題である。この場合に被害者に とっては不法行為の規定を適用する方が有利である。本権があると誤信している占有侵奪者すなわち善意者に対しても 果実の返還、物の滅失致損に対する賠償を請求することができるからである o また、この場合には請求の具体的内容は 占有侵奪による不法行為にもとづく損害の賠償を求めるものということができる。 同 占有侵奪によらない占有取得の場合 判例は一般論としては一八九条以下と七

O

九条以下の競合を認めている。 しかし、事案の具体的内容をみると、注意すべきいくつかの点が含まれている。 ) 1 ( 的判例 前述した二、りの川の事案、すなわち、非所有者から譲り受けた者が後に所有者から返還請求を受けた 事案では次の事例がある。 ⑧ 大 判 昭 和 一 三 年 一 C 月二六日民集一七巻二じ四五頁。 債務者の占有する第三者 X ( 原告)所有の桐下駄木を差押えた債権者 Y ( 被告)が、第三者の強制執行異議の訴に敗訴し、第三者が他に売渡 すべき契約を解除するに至り、執行解除後売却したが商機を逸し E つ品質を段損したという点について、大審院は右訴提起の時から債権者に過 失 が あ る と し た 。 ⑨大判昭和一八年六月一九日民集二二巻四九一頁。 Y 等(被告、上告人)は前所有者から土地を買受けたが、そのうちの一部(本件係争土地)について、 X ( 原告、被上告人)は、境界確定並 びに石標及び石垣撤去土地妨害排除の訴を起し、勝訴した。そこで、本訴で、 Y 等の占有開始以降について、 Y 等の故意・過失により係争土地 の使用収益が妨げられたとして、七 C 九条にもとづいて損害賠償を請求した。原審は境界確定等訴提起以降は、民法一八九条二項により雲ぷと なり、少くとも過失の寅に任ずべきものとした。大審院は一九 C 条と七 C 九'粂とはそれぞれ要件を異にするが故に競合併存するを妨げないが、 七

O

九条によって請求する場合には、起訴の時から故意過失がなければ果実の代価を償還できないとして破棄差戻とした 3 ⑩ 最 高 判 昭 和 三 一 一 年 一 月 一 一 一 一 日 民 集 一 一 巻 一 号 一 七 O 頁 。 X ( 原告、被上告人)所有の船舶が、 Y ( 被告、上告人)の X に対する債権についての抵当権の実行として競売され訴外 A が競落し、更に Y は A に対する抵当権の実行として競売し、 Y が 競 落 し た 。 X は A 、 Y を相手として A の競沼の無効(執行裁判所が競落代金の減額決定をした) を主張して、船舶所有権の確認、 A 、 Y の各競落による登記の抹消及、ひ船舶の引渡を請求したが、その係属中に Y は本件船舶を他に売却し、そ 21

(26)

の 後 に X が勝訴した。そこで本訴において X が不法行為にもとづく(最初は代価償還)損害賠償を請求し、原審は前訴の提起の時から Y は悪意 とみなされ、不法行為を構成するとした。最高裁は前掲⑦を引用して破棄差一戻一をした。 22 ⑧の判決および⑨⑩の原審が本権についての訴の提起の時から悪意と見徴されることをもって、七

O

九条の故意 倒 過失があるとしたことには論理上疑問が持たれる。具体的に検討するために一八九条以下と不法行為の規定との関係に (ロ) ついて考察する前にここに挙げた判決のもっている問題点を整理しておく。 (a) 目的物の売却と滅失致損の意味 ⑩の判決は⑨を引用している o しかし、この⑩の判決は二つの問題点を含んで いるように思われる。第一は、本件船舶の処分をもって、滅失致損の事例として取扱っている点である。ここでの処分 は

Y

による第三者への売却の事例である。原審の事実認定では第三者が所有権を取得したとしており、物権的返還請求 はこの第三者に対して向かい、

Y

に対してはなくなる事案ではないかと思われる。 第二の疑問は、滅失致損の事例として取扱う場合には、 一九一条を適用すべきではないかという点である o X は 第 一 審で引渡に代わる賠償の請求をし、

Y

は、目的物を占有していないので物権的請求権は消滅し、従って物権的請求権に 側 代わる損害賠償請求権も消滅したと抗弁した。そこで

X

は第二審において請求原因を不法行為に変更している。ここで ⑩の判決のまえ、昭和二六年一一月二七日の最高裁判決は、民法一九四条によって被害者が盗品を回復することができ る場合でも、回復請求前に目的物が消滅した時は、右の回復請求権は消滅し、被害者は回復に代わる賠償をも請求する 同 倒 ことができない旨判示している。学説もこの結論を支持している。しかし、﹁目的物が現存しない﹂ということだけで 』主 一九一条の説明が困難となる。なるほど一九四条においては返還者(善意取得者)は代価償還請求権を有するが、 一九一条にもとづく回復者の滅失致損についての賠償請求権と対等額において相殺されうるにすぎない。従って、両請 求権が同額の事例であったとしても、これだけの理由づけでは不十分であり、 一般化には適切ではない。このことを考

(27)

え る と 、

X

が請求原因を変更していることには、昭和二六年の最高裁判決の影響が窺われる。もしそうだとすれば、昭 和二六年の最高裁判決の不当な一般化の結果であるということができる。 ⑨は

X

Y

の使用利益について損害賠償として請求した事案である o 同 ぅ果実は使用利益を含むと解されている。しかし、私はこれには疑問を持っている

oH

、仲で述べたように、非権利者 から取得した者に対して物の返還請求が行なわれる場合においては、返還請求者に生じた損害の賠償という処理の仕方 には適さない。不法な占有侵奪の場合には不法行為者に対して全損害の賠償をさせる。このように、事案の型の区別を ) 弘 υ ( 果実と使用利益 一 般 に 一 八 九 条 以 下 に 呈 一 口 念頭において考えるとき、私は、 一八九条以下の果実には単なる使用利益は含まないのではないかと考える。 (c) 差押と第三者異議の訴の特殊性 すでに私が第一章における結論の紹介および本章において述べてきたことから も明らかなように、私は、 一八九条以下と契約法上、不当利得法上、不法行為法上の規定とは体系を異にし、適用領域 を異にするのではないかと考えている。すなわち、返還請求の当事者聞に契約、不当利得、不法行為の関係がある場合 には一八九条以下は適用されない。従って、これらの者の聞には契約、不当利得、 あり、物権的返還請求の関係は生じないというように考えている。 不法行為上の返還請求の関係のみが しかし、第三者異議の訴の行なわれた場合には更に考慮すべき点があるように思われる。⑧がそれである。 ここでは甲(第三者)所有の乙(置務者)占有中の物を丙(債権者)が差押え、甲が丙に対して自己の所有であるこ とを主張するという関係にあり、甲の主張は第三者異議の訴によってのみ認められる(民訴五四九条)。 この場合には、これまで念頭においていた事案と異なって、二つの面を考慮する必要がある o 第一は、甲の丙に対す る主張が物権的請求の関係にあるという面である o 甲は丙の差押えによって、占有を妨害されている。非所有者乙が第 倒 三者甲の物を売買する事案に類似する。従って、 一八九条以下、特に⑧に見られるように物の滅失致損についての責任 23

(28)

の規定が適用される。第二は、丙の差押えがその態様によっては不法な占有侵奪による不法行為ともなりうるという面 である。甲所有で乙が占有する物を丙が不法に占有侵奪し甲の所有権を侵害した、という事例に類似する。 24 このように、債務者の占有する第三者の物の差押えは、丙の占有取得(ないし甲の占有権の妨害)が譲渡行為による 場合のように適法な面と占有侵奪により不法行為ともなりうるという面との双方を持っている o こ れ は 、 一方では、強 制執行において執行機関は当該目的物が債務者に属するか否かの実質的な調査をなさず、債務者に属しない場合にも執 行法上は適法とせられ、実体法上の関係は訴をもってのみ解決されるという制度になっていると同時に、他方では差押 えによる所有者甲への占有妨害ないし侵奪は債務者乙の意思に関係なく司法権という私法的領域を越えた力によって行 な わ れ 、 しかも債権者丙がこの力を利用しうる立場にあるということにある o この力を利用しない場合には、丙の占有 取得は適法であるか占有侵奪となるかのいずれかにのみなるのに対して、この力を利用する債権者による債務者の占有 する第三者の物の差押えは、その両方の性格を備えているということができる。 このため、私は、債権者が債務者の占有する第三者の物を差押えた場合には、不法行為法の規定と一八九条以下の規 定が競合して適用されうると解し、その理由を債権者による、私法的領域を越えた司法権を利用する差押えによる占有 取得の特殊性の中におくことができると考える。 このような観点から⑧を考察する。先ず第二の面すなわち差押えが不法行為となりうるという面では、差押債権者

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の差押えが第三者

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の物の故意過失による占有侵奪となるかの判断が必要である。この点に関してはこれまでにもいく つかの判例があらわれている。これは主として差押えに対して裁判外の異議を申し述べたにもかかわらず、競売が終了 してしまった場合に第三者が執行債権者に対して目的物についての損害賠償を請求するという形であらわれる。占有侵 奪が不法行為となるかどうかの問題だからである。従来の判例からの簡単な整理をしておくと次のようになるかと思わ

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倒 れ る o 債務者文は第三者から第三者の物であるとの通知があっただけでは過失があるとは言えない。過失があるとされ た事例としては第三者所有の家屋に居住する債務者に対する強制執行において、債務者の占有するこの第三者所有の愛 玩具を差押えたのに対して、第三者がその旨および第三者異議の訴を提起したことを執行債権者に内容証明郵便で通知 制 したが、訴状は競売終了(執行債権者が競落)後同日中に執行債権者に到達したという事案および、第三者所有の木材 酬 を差押えた差押債権者が債務者の刻印を知っており、木材の刻印を指摘して第三者の物であると申し出た事案がある o 以上は債権者による、債務者が占有する第三者の物の差押えが、占有侵奪による不法行為となるかという問題である。 不法行為となる場合には、競売が終了せずに返還を受けた場合にも目的物の盟損その他の損害については七

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九条によ りーー最初の占有侵奪による不法行為に包括されているので││損害賠償責任が生ずる。また、第一の面、すなわち物 判 明 権的返還請求の面で目的物の滅失致損に対する賠償責任も競合する。 占有侵奪による不法行為が成立しない場合には物権的返還請求の面、すなわち一八九条以下のみの適用の問題となる。 このように整理すると、③は

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Y

の不当差押も理由としているが、目的物の品質の虫損 111 桐下駄木を梅雨期から 盛夏期まで屋外に放置し、陽割れ水割れを生じたーーーに対する損害の賠償を請求している。従って、

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の不法行為責任 と一八九条以下の賠償責任が競合しうる。前者を適用する場合には

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の故意過失を判断し、後者を適用する場合には、 ﹁責ニ帰スベキ事由﹂のほかに

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の悪意の認定が必要である o この点から一九一条を適用して起訴の時から悪意と見倣 される(一八九条二項)とすることも、起訴の時から一八九条二項を適用して故意過失を認定することにも論理上疑問 制 が 持 た れ る 。 (2) 次に二、村凶の型の事案、すなわち契約関係の存する事案で、 一八九条以下と不法行為の規定との関係を問題と したものは、前述判例②と③である o ②は契約関係が存する点を除けば⑨に類似する。それに対して、③では一日一、訴 25

(30)

を提起し取下げた後に訴訟に要した費用が問題となっている。そしてこれを一九

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条 、 一九一条以外の場合として七

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26 九条を適用している点が注目される。この問題は契約関係が存しない場合(非権利者による第三者の物の売買の場合) にも問題となりうる。 ③にいう﹁訴訟-一要シタ費用﹂、が訴訟費用か弁護士費用かは不明である。訴訟費用であったとすれば、費用の負担お よび額の決定方法については民事訴訟法に定められている。取下││訴訟が判決によらずして完結した場合には、裁判 所が申立により決定を以て、額およびその負担を定める(民訴一

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四 条 ) 。 き性質のものではない。 従って、別訴で予納者が相手方へ請求すベ 弁護士費用の場合には事情が異なる o 弁護士強制主義をとっていないわが国で、弁護士費用は訴訟費用の中に含まれ ていない(民訴費八)からである o 相手方が請求に応じないために訴訟を余儀なくされた場合に、弁護士費用の賠償を 請求しうるか。これがここでの問題である。ここには二つの問題が含まれている o 第一は弁護士費用の賠償請求の性質、 すなわち弁護士費用の賠償請求が、そのもとにある相手方が請求に応じないこととどのような関係に立っかという問題 であり、第二は、弁護士費用の賠償請求がいかなる場合に認められるかという問題である。 一つは相手方の訴提起に対して応訴する場合であ 酬 明 り、他は、今ここで問題となっている、相手方が請求に応じないために訴を提起した場合である。前者の場合には、前 ) イ ﹄ ( 弁護士費用の賠償については、二つの事案が区別されている。 述したように差押えが不法行為となりうる場合があるのと同様に、司法権の利用が不法行為となるかの問題である。こ の場合には相手方の積極的な訴提起という行為が不法行為となるかどうかを判断するわけで、権利侵害の有無の判断が 同 制 比較的容易である。これに対して相手方が請求に応じないため訴を提起した場合には、相手方の行為は請求に応じない という消極的なものであるにすぎない。従って、この場合には権利侵害の認定は容易ではない。こういう問題はもとに

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