• 検索結果がありません。

教員養成課程の大学生において社交不安傾向が教育場面での身体的・生理的変化に及ぼす影響

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "教員養成課程の大学生において社交不安傾向が教育場面での身体的・生理的変化に及ぼす影響"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

問題 我々が日常感じる緊張には,自分自身が原因で生じる ものと,他者または他者との関係が原因で生じるものが ある。他者を意識する場面での緊張は後者にあたり,自 力での解決や回避は難しい。特に社会生活では,他者の 存在を意識して行為する場面が多くあり,過度の緊張を 感じるとパフォーマンスの低下が生じる。また,この時 の緊張は,「他者の存在そのもの」と「他者からの否定 的な評価を恐れる気持ち」に分けられる(葛西・山本・ 倉本・辻野,2014)。このような,現実のあるいは想像 上の対人場面において,他者からの評価に直面したり, もしくはそれを予測したりすることから生じる緊張状態 は,同時に不安を生じる。それは対人不安と呼ばれる

(Schlenker & Leary, 1982)。社会的場面や対人場面で

緊張を強く感じると,対人不安も大きくなる。 過度の対人不安は,精神的健康に影響する。WHO に よる患者調査で,我が国における不安障害(不安症)の 推定患者数は,うつ病・うつ状態の患者を上まわる約 1,000 万人以上とも言われ,不安障害が我が国の精神保 健 上, 大 き な 問 題 で あ る と 指 摘 さ れ て い る( 塩 入, 2012)。不安障害の中でも,患者数が近年急増している

の が 社 交 不 安 症(Social Anxiety Disorder) で あ る。 社交不安症は,社会的な場面や対人場面において過剰な 不安・緊張・恐怖を感じ,その種の場面をできるだけ回 避しようとする不安障害の一種であり(髙橋・島田,

2017), 生 涯 有 病 率 は 5-15% 程 度 と 報 告 さ れ て い る

(Detweiler, Comer, Crum, & Albano, 2014)。そのた め,教員あるいは教員養成課程の学生の中にも,強い社 交不安を感じる者が存在すると考えられており,学校関 連場面において生じる場合は教師不安(teacher

anxi-ety)とも呼ばれる(Coates & Thoresen, 1976)。

教員養成課程に在籍中の大学生の場合,子ども達と向 き合うことが必要となる教育実習において,社交不安が 特に顕著に現れる。姫野(2010)は,教育実習中に社 交不安を含む不適応を示し,単位取得ができずに教員を あきらめる学生が一定数存在することを指摘した。その 原因に関して山本・岸本(2006)は,教育実習等にお いて教師役割を演じることの苦痛を挙げ,そうした感情 を報告した学生に,不安や抑うつが有意に高いことを報 告している。また,小関・巣山・兼子・鈴木(2014)は, 実習未経験者では拒絶に対する過敏性と将来に対する否 定的評価が社交不安に大きく影響し,実習経験者では自 己に対する非難の影響が大きいことを明らかにした。さ らに,新任の小学校教員における授業実践不安得点は, 7 点満点中平均 5 点であり,高い不安を持ちながら授業 をしていることが明らかされている(西松,2005)。こ のように,教員や教員養成課程の学生おける社交不安の 存在は,教員のメンタルヘルスと職能成長,教員養成シ ステムやその中での進路指導等,さまざまな観点におい て重要な問題である。 特に,近年の学校教育改革に伴い,教員に求められる 教科指導能力が多様化していることは,教員志望の学生 にさらなる負荷を与えることになる。例えば,2020 年 4 月より小学校での英語教育が全面実施され,教員には その対応能力が求められている。松宮・原(2015)は, 英語教員を目指す学生を対象に質問紙調査を実施し,教 育実習場面に依拠した英語運用に関わる不安意識が形成 されることを指摘した。同様に,アクティブラーニング で多用されるスピーチ場面は,最も社交不安を喚起する 社 会 的 状 況 で も あ る(Stein, Walker & Forde, 1996;

Turner, Beidel & Townsley, 1990)。実際,臨床場面

でも,エクスポージャー(Feske & Chambless, 1995) やバイオフィードバック(Rodebaught, 2004)におい て,意図して不安を喚起するためにスピーチ場面が使わ れる。敦賀・鈴木(2005) は,スピーチ課題を遂行す る実験群と,音読課題を遂行する統制群を設定し,課題 前にくらべて課題後の実験群の心拍数が増大したと報告 した。ならば,英語によるスピーチ場面では緊張度が極 めて高くなると予想される。実際,米村・生和(1990) は,60 名の聴収に対して 30 分間外国論文を発表する

教育場面での身体的・生理的変化に及ぼす影響

The Physical and Physiological Eff ects of Social Anxiety

in the Educational Situation for the Teacher Training Course Students

渡部 雅之

Masayuki WATANABE

滋賀大学教育学部

高島 聡汰

Sohta TAKASHIMA

京都市役所 < キーワード> 教員養成課程 社交不安 教育実習 重心動揺 心拍

(2)

というスピーチ場面を想定し,大学生の心拍数の変化を 調べたところ,スピーチ中に心拍が運動時レベルに相当 する平均 122.9bpm にまで至ったとしている。さらに Puigcerver, Martínez-Selva, García-Sánchez & Gómez-Amor(1989)は,スピーチ時の生理的反応の 変化を調べ,社交不安の高い者の方が低い者より,強い 反応が現れることを見出している。 このように,心拍は不安の指標とされることが多い。 門前(1991)は,収縮期血圧値,拡張期血圧値,脈心 拍数の変化が,緊張の程度と関係することを実証してい る。Obrist(1981)によれば,人のストレス対処は能 動的事態と受動的事態で異なるとされており,能動的対 処ではストレスを回避する手段が存在し,自身の身体や 思考に対するコントロールが可能なため,挑戦的ないし 競争的になり,心拍数は増加する。この状況は,米村・ 生和(1990)の英文スピーチ場面に相当する。一方, ストレスを避ける手段が全く存在せず,コントロールが 不可能な受動的事態では,なす術もなく耐えるほかない ので,心拍数は減少するとされる。 なお,ストレス反応に対する生理的指標には,他にも 唾液中のコルチゾール濃度が知られる。例えば,教育実 習の前後と比較して,実習期間中は有意な濃度上昇が確 認されている(Izawa, et al., 2012)。唾液中コルチゾー ルは特に緊張状態が慢性的に継続することによるストレ スに敏感な非侵襲的手法であるため,今日のストレス研 究では頻繁に用いられている。しかし,急性ストレスに 対して有意な濃度上昇を認めるには,刺激提示後 10 分 程度の時間が必要(Izawa, et al., 2008)であることから, 作業開始直後の不安による生理的変化を測定するには感 度が不足する。 教育場面で生じる社交不安は,生理的変化をもたらす だけではなく,「足がすくむ」などといった身体的変化や, 「言おうとしたことを忘れてしまう」などのパフォーマ ンス阻害を引き起こす可能性もある。スポーツの緊張場 面では,過度の緊張により引き起こされるこうした現象 を「あがり」として研究してきた(本間,2008)。あが りによって心理面および身体面に様々な変化が生じ,競 技者のパフォーマンスに影響する(市村,1993)。同種 のことは日常場面でも頻繁に観察され,身体のふらつき や動揺となって現れる。そのため身体的動揺(重心動揺) は,平衡機能の診断指標であるだけではなく,心理的変 化を敏感に反映するものとして注目されてきた(鈴木,

1998)。例えば Maki & Mcllory(1996)は,課題や刺

激を用いて感情の喚起を行ったり,特性不安をもとに対 象者を分類したりすることを通じて,重心動揺が不安感 情 に よ る 影 響 を 受 け る こ と を 実 証 し て い る。 ま た, Nakahara, Takemori, & Tsuruoka(2000)の報告では, 健常成人と高所恐怖症患者を対象に,床の高さを変化さ せつつ重心動揺を測定をしたところ,健常成人では高さ 0 ~ 2m の間で有意差を認めなかったが,高所恐怖症患 者は約 10m の高さ以降で有意に重心動揺が増加したこ とを報告している。 また,社交不安症の臨床症状を評価する心理尺度とし て は,Liebowitz Social Anxiety Scale ( 以 下 LSAS) (Liebowitz, 1987)が知られている。LSAS は,社交不 安症患者が症状を呈することが多い行為状況(13 項目) と社交状況(11 項目)の 24 項目からなり,それぞれ の項目に対して恐怖感/不安感と回避行動の程度を 0 ~ 3 の 4 段階で評価する。DSM-III における社交不安症の 診断基準で重点が置かれた,人前で話をしたり,会食を したり,公衆トイレを使用したりするような行為状況の みならず,注目を浴びたり,他人の意見に賛成できない ことを表明したり,人と目を合わせたりするなどの社交 状況についても評価できるようになっている(朝倉, 2015)。LSAS の評価は,過去 1 週間の症状を評価する ものとされ,項目にあたる状況を経験していなかった場 合は,そのような状況に置かれた場合を想像して回答し てもらうことで社交不安を測定する。我が国では朝倉ら (2002)により,LSAS 日本語版(以下 LSAS-J)が作 成されている。 以上を受けて,本研究では,教員養成課程に在籍する 大学生を対象に,教科指導で生じる緊張場面を想定させ, この時の身体的変化と生理的変化を,重心動揺ならびに 心拍数を指標として測定する。さらに,LSAS-J を課し て対象者の社交不安を測定し,その高低が緊張場面にお ける変化とどのように関連するのかを明らかにする。そ の際,DSM-5 における社交不安の診断基準に,人に見 られたり,他者の前で何かをすることに対する否定的評 価の予期,あるいは不安症状を呈してしまうことの恐怖 が挙げれられていることから,相当する教科指導場面と して,暗算ならびに英文音読を課題として設定した。英 語スピーチではなく英文音読を課すのは,参加者の英語 能力によらず同程度の負荷を与えるためである。さらに, 実験結果を踏まえて,教員養成課程学生における社交不 安傾向の高低に応じ,教育実習等の対人緊張場面ではど のような配慮が必要であるのかを提言することを目的と した。 方法 協力者 国立大学法人A大学の学生 44 名(男性 26 名)を対 象とした。平均年齢は 20.8 歳であった。日常生活に支 障をきたすような身体的障害を持っていないことを口頭 にて確認した。参加は自発的な意志に基づいて行われ強 制ではないこと,人の一般的な心理的特徴を調べること が研究目的であること,研究を通じて知り得た個人の情 報は守秘すること,途中であっても参加の意志がなくな れば中止できることを説明し,同意を得た者を対象とし た。データに欠損や外れ値があった者を除外し,40 名 分のデータを解析した。 実施時期 2019 年 11 月中に全ての実験を終えた。 滋賀大学教育実践研究論集 第 3 巻 2021

(3)

実施場所 A大学構内の第三者のいない部屋で実施した。 実験器具 (1)重心動揺測定装置:竹井機器工業株式会社の重 心軌跡測定器(T.K.K.5810)を用いた。重心動揺の指 標には,総軌跡長と外周面積を用いた。測定サンプリン グは 10 ms であった。設定した時間内の重心移動に関 する諸情報を,重心軌跡測定器に接続したノートパソコ ンで自動計測した。なお,英文音読課題の一部データは, 計算課題の提示時間である 40 秒間の値に換算した。協 力者によって英文音読課題にかかった時間が異なり, 40 秒以下の者が数名存在したからである。 (2)心拍計:手首に装着することで心拍数を測定で きる Mio 社の Mio LINK を使用した。測定された数値 は連動したスマートフォンに表示されるよう設定した。 作業開始時点から 40 秒間分もしくは 40 秒間相当に換 算した心拍数をデータとした。これも,協力者によって 英文音読課題の計測時間が異なったからである。 (3)LSAS-J:24 項目のそれぞれに対して恐怖感/不 安感と回避行動の 2 側面に回答するものであるが,今 回は協力者の負担軽減を図るため,恐怖感/不安感の程 度のみを 0 ~ 3 の 4 段階で評価させた。各項目に対し て過去 1 週間に経験した出来事を想起させ,もしそう した状況を経験していなかった場合は,当該の状況に置 かれた場合を想像して回答するように教示した。 手続き 参加の同意が得られた協力者に,心拍計を装着した。 計算課題では,片足開眼状態で 2 種類の課題を行うこ とを教示した。協力者の胸部位置の 60 ㎝ほど前方に設 置した 16 インチディスプレイに,1 問あたり 2 秒間で 20 セット(20 問)を提示した(Figure 1)。問題が提 示されている間に,計算結果を口頭で答えるよう指示し た。課題実施前に大学生の平均正答率を伝え,片脚を上 げさせた後に「始めます」の合図で問題を提示し,重心 動揺と心拍の計測を開始した。英文音読課題も片足開眼 状態で行った。英文音読に際し,直前に一度だけ課題英 文に目を通させた。英文音読課題に用いた文章は,「東 京書籍版 NEW HORIZON 英語 3 第 14 版(2012)」の 24 ページに掲載された英文(3 段落で 83 語)であった。 これを A4 用紙に印刷して協力者に片手で持たせた。音 読中の録音の有無を口頭で教示した後に,片脚を上げさ せて「始め」の合図で音読を開始させ,同時に重心動揺 と心拍の計測を開始した。計算課題と英文音読課題の間 には,3 分程度の休憩時間を取った。いずれの課題にお いても,重心動揺量と心拍数のフィードバックは行わな かった。最後に,着席して LSAS-J への回答を求めた。 重心動揺の測定に際しては,重心軌跡測定器の中心に 軸足を置き,実験者の合図で他方の足を上げるように指 示した。計算課題では両腕を体側に自然に垂らしておく よう求め,英文音読課題では課題文の用紙を持たない腕 は同様に体側に垂らしておくよう指示した。重心動揺の  ᐇ᪋ሙᡤ  ᐇ㦂ჾල ᡭ⥆ࡁ  ᭷↓ 㢌 ᩍ ᚋ ࠊ∦⬮ ᐇ㦂ィ⏬  Figure 1 計算課題での測定時の模式図 測定において,再テスト法による信頼性係数が開眼片脚 立位で 1.0 であったとする報告(望月・金子,2009) があり,十分に安定していると考えられたことから,測 定は 1 試行のみで十分であると判断した。課題内にお ける条件間では同じ足で立位させ,課題間で立つ足を変 えることは許可した。 実験計画 協力者全員に 2 種類の計算問題と 2 条件下での英文 音読を課した。計算課題では,「1 桁の 2 数の和もしく は 2 桁の数と 1 桁の数の和」の問題(以下「Easy 条件」) と,「2 桁の 2 数の和」の問題(以下「Difficult 条件」) をそれぞれ 20 問ずつ用いた。どちらの条件においても, 実施前に虚偽の一般正答数を提示した。Easy 条件では 20 問中 15 ~ 17 問が平均正答数であるとし,Difficult 条件では 20 問中 12 ~ 14 問であると教示した。あら かじめ実施した予備実験により,Easy 条件の平均正答 数は緊張を比較的低く抑える水準であり,Difficult 条 件は大きな緊張を誘発する達成困難な水準であることを 確認した。英文音読課題では,録音をしないで読む場合 (以下「しない条件」)と,録音をしながら読む場合(以 下「する条件」)の計 2 回音読を行うことを伝えた。なお, 実際には録音は行わず,録音機器(iPhone 8 plus)を 被験者の近くに向け,録っている振りだけを行った。し ない条件を先に行う際は,「録音のための練習のつもり で読むよう」に教示し,後に行う際は「録音はしないか ら普段のように再度読むよう」に教示した。する条件で は,「録音されているということを意識した上で,発音 や声量等の適切さを考えて読むように」と教示した。同 時に,録音した音声を第三者に提供し,小学生を対象に 教材利用するという虚偽の内容を教示し,被験者からは その許諾を得た。虚偽説明については,実験終了後にデ ブリーフィングを行った。計算課題と英文音読課題の前 後,ならびに各課題における 2 条件の実施順序の 8 パ ターンについて参加者間でカウンターバランスをとり, これを 5 セット繰り返した後に,6 セット目としてさら に 4 名を追加した時点で,時間的制約により実験を終 教員養成課程の大学生において社交不安傾向が教育場面での身体的・生理的変化に及ぼす影響

(4)

了した。

結果

社交不安と身体的・生理的指標との相関

LSAS-J の素点と,計算課題の Easy 条件と Difficult 条件,英文音読課題のする条件としない条件のそれぞれ における重心動揺の 2 種類の指標(総軌跡長と外周面積) ならびに心拍数との間で,Pearson の単相関係数を算出 した。無相関検定の結果,LSAS-J の素点と計算課題実 行時の外周面積との間に,Easy 条件(r=.516, t=3.72, df=38, p<.01) と Difficult 条 件(r=.498, t=3.54, df=38, p<.01)において,いずれも有意な正の相関が示された。 さらに,英文音読課題実行時のしない条件において LSAS-J の素点と外周面積との間に有意な正の相関が示 された(r=.320, t=2.08, df=38, p<.05)。Easy 条件(r=-.198), Difficult 条件(r=-.189),しない条件(r=-.222),する条 件(r=-.270)の心拍数は,いずれも LSAS-J の素点との 間に,有意ではない負の相関を示した。これは,社交不 安が高い者ほど,課題場面において心拍数が少ない傾向 にあったことを意味する。 社交不安群間の差 LSAS-J は,恐怖感/不安感に関してのみ回答を求め たため,評価スケール(樋口,2014)の目安得点を半 分にして評価を行った。72 点を満点とし,15 ~ 24 点 を社交不安境界域,25 ~ 35 点を中等度の社交不安, 36 ~ 45 点を仕事や社交面に支障が現れるほど症状が 著しい社交不安とみなした。46 点以上の得点は仕事や 社会活動に大きな支障が現れる重度の社交不安と解釈し た。この目安得点による評価をもとに,全ての参加者を, 15 点未満の低不安群(以下「低群」),15 ~ 35 点の中 不安群(以下「中群」),36 点以上の高不安群(以下「高 群」)のいずれかに分類した。低群は 9 名,中群は 17 名, 高群は 14 名であった。 計算課題の Easy 条件と Difficult 条件,英文音読課 題のする条件としない条件のそれぞれで,重心動揺の 2 種類の指標(総軌跡長と外周面積)ならびに心拍数の平 均と標準偏差を求め,社交不安の 3 群別に Table 1 に 示した。Easy 条件よりも Difficult 条件の方が,しない 条件よりもする条件の方が,総軌跡長,外周面積,心拍 数のいずれも総じて大きな値であることがわかる。一方, 社交不安低群の値が全般に低い傾向が見られるが,一部 には中群や高群の方が小さい例外も認められた。社交不 安群間の差を確かめるために,社交不安群を要因とし, 重心動揺の 2 種類の指標(総軌跡長と外周面積)なら びに心拍数に対する一元配置分散分析を,計算課題の Easy 条件と Difficult 条件,英文音読課題のする条件と しない条件のそれぞれで行った。計算課題 Easy 条件下 の外周面積において社交不安群の主効果が示された (F=7.647, df=2/37, p<.01, η2=0.292) 。Scheffé 法 に よ る多重比較からは,低群(F=6.129, df=2/37, p<.01)や 中群(F=5.013, df=2/37, p<.05)よりも高群の方が大き な値であった。計算課題 Difficult 条件下でも外周面積 における主効果が示された(F=5.940, df=2/37, p<.01, η2=0.243) 。Scheffé 法による多重比較からは,低群よ りも高群の方が大きな値であった(F=5.940, df=2/37, p<.01)(Figure 2)。英文音読課題では主効果は認めら れなかった。 課題条件間の差 社交不安群ごとに,計算課題の Easy 条件と Difficult 条件間,ならびに英文音読課題のする条件としない条件 間で,重心動揺の 2 種類の指標(総軌跡長と外周面積) ならびに心拍数を従属変数とした,対応のある t 検定を 行った。計算課題実行時の総軌跡長において中群におけ る有意差が示され,Difficult 条件は Easy 条件よりも大 きな値であった(t=2.344, df=16, p<.05, r=.506)。計算 課題実行時の外周面積においても中群における有意差が 示され,Difficult 条件が Easy 条件よりも大きな値で あった(t=3.016, df=16, p<.05, r=.602)。心拍数に関し ては有意差は見られなかった。 計算課題の Easy 条件と英文音読課題のしない条件 は,いずれも緊張度が相対的に低い場面(以下「低緊張」) として設定され,同じく計算課題の Difficult 条件と英 文音読課題のする条件は,いずれも緊張度が相対的に高 い場面(以下「高緊張」)として設定された。これらの 群間を比較することにより,暗算と英文音読の場面間の 特徴を比較することができる。 そこで,社交不安群ごとに,計算課題の Easy 条件と 英文音読課題のしない条件間,ならびに計算課題の Dif-ficult 条件と英文音読課題のする条件間で,重心動揺の 2 種類の指標(総軌跡長と外周面積)ならびに心拍数を 従属変数とした対応のある t 検定を行った。低緊張場面 での中群の総軌跡長において有意差が示され,英文音読 課 題 は 計 算 課 題 よ り も 大 き な 値 で あ っ た(t=2.243, df=16, p<.05, r=.489)。同じく低緊張場面で,低群と中 群の外周面積において有意差が示され,いずれも英文音 読 課 題 は 計 算 課 題 よ り も 大 き な 値 で あ っ た( 低 群; t=2.243, df=8, p<.01, r=.811,中群;t=4.307, df=16, ♫஺୙Ᏻ࡜㌟యⓗ࣭⏕⌮ⓗᣦᶆ࡜ࡢ┦㛵 ♫஺୙Ᏻ⩌㛫ࡢᕪ ㄢ㢟᮲௳㛫ࡢᕪ

Figure 2 計算課題の Easy 条件と Difficult 条件下における 社交不安群ごとの重心動揺外周面積の平均値

** <.01 * <.05

(5)

p<.01, r=.733)。高緊張場面での低群の外周面積におい ても有意差が示され,英文音読課題は計算課題よりも大 きな値であった(t=2.621, df=8, p<.05, r=.680)。心拍数 に関しては有意差は見られなかった。 考察 社交不安と身体的・生理的指標との関連 重心動揺を指標とすることで,対人的緊張場面を模し た 2 種類の課題を実行中の身体的変化を敏感に捉える ことができた。特に外周面積が,急激な不安の高まりを 捉える指標として有効であることがわかった。総軌跡長 は床反力作用点の総移動距離を表し,外周面積は床反力 作用点の移動した外周の線で囲まれる面積を表す(時田・ 宮田,1999)。どちらも重心動揺の程度を表す代表的な 指標として多くの研究で使用されている(藤田・佐藤, 2019)。だが,総軌跡長は深部感覚による姿勢制御の微 細さや脊髄固有の反射性の姿勢制御に関係し,外周面積 はめまいを生む迷路機能をよく反映する(岩元・井上・

Table 1 社交不安群(低・中・高)ごとの計算課題 Easy 条件/ Difficult 条件,英文音読課題しない条件/する条件での

重心動揺(総軌跡長と外周面積)ならびに心拍数の平均値と標準偏差(総軌跡長は mm,外周面積は mm2





㻌 㻌 ᮲㻌 ௳㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᖹᆒ್㻌 㻌 㻌 ᶆ‽೫ᕪ㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᮲㻌 ௳㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᖹᆒ್㻌 㻌 㻌 ᶆ‽೫ᕪ



ప୙Ᏻ⩌䠄㻺㻩㻥䠅



㻌 㻌 ィ⟬ㄢ㢟㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⱥᩥ㡢ㄞㄢ㢟



㻌 㻌 㻌 㻌 㻱㼍㼟㼥 ᮲௳㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 䛧䛺䛔᮲௳



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⥲㌶㊧㛗㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻢㻣㻞㻚㻠㻣㻤㻌 㻌 㻝㻟㻥㻚㻝㻥㻝㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⥲㌶㊧㛗㻌 㻌 㻌 㻌 㻣㻜㻤㻚㻝㻜㻜㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻜㻥㻚㻝㻝㻝



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 እ࿘㠃✚㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻢㻤㻣㻚㻜㻤㻥㻌 㻌 㻞㻠㻡㻚㻣㻡㻢㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 እ࿘㠃✚㻌 㻌 㻌 㻝㻜㻝㻣㻚㻟㻜㻜㻌 㻌 㻌 㻌 㻟㻝㻣㻚㻞㻣㻣



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᚰᢿᩘ㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻥㻥㻚㻟㻟㻟㻌 㻌 㻌 㻞㻠㻚㻝㻝㻝㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᚰᢿᩘ㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻥㻤㻚㻞㻞㻞㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻞㻢㻚㻞㻞㻜



㻌 㻌 㻌 㻌 㻰㼕㼒㼒㼕㼏㼡㼘㼠 ᮲௳㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 䛩䜛᮲௳



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⥲㌶㊧㛗㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻢㻣㻢㻚㻠㻡㻢㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻥㻥㻚㻥㻡㻝㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⥲㌶㊧㛗㻌 㻌 㻌 㻤㻜㻞㻚㻝㻤㻥㻌 㻌 㻌 㻌 㻞㻠㻣㻚㻥㻟㻤



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 እ࿘㠃✚㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻢㻥㻞㻚㻠㻞㻞㻌 㻌 㻌 㻌 㻞㻝㻢㻚㻣㻠㻠㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 እ࿘㠃✚㻌 㻌 㻌 㻝㻞㻢㻤㻚㻠㻡㻢㻌 㻌 㻌 㻌 㻢㻡㻢㻚㻜㻣㻝



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᚰᢿᩘ㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻜㻝㻚㻢㻢㻣㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻟㻞㻚㻡㻝㻜㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᚰᢿ໬ᩘ㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻜㻡㻚㻟㻟㻟㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻞㻣㻚㻤㻜㻥



୰୙Ᏻ⩌䠄㻺㻩㻝㻣䠅



㻌 㻌 ィ⟬ㄢ㢟㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⱥᩥ㡢ㄞㄢ㢟



㻌 㻌 㻌 㻌 㻱㼍㼟㼥 ᮲௳㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 䛧䛺䛔᮲௳



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⥲㌶㊧㛗㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻣㻞㻣㻚㻝㻥㻠㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻞㻢㻚㻞㻣㻞㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⥲㌶㊧㛗㻌 㻌 㻌 㻌 㻣㻥㻥㻚㻤㻣㻢㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻟㻢㻚㻥㻝㻥



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 እ࿘㠃✚㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻣㻥㻤㻚㻠㻡㻥㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻣㻢㻚㻟㻡㻢㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 እ࿘㠃✚㻌 㻌 㻌 㻝㻞㻢㻝㻚㻢㻥㻠㻌 㻌 㻌 㻌 㻟㻤㻢㻚㻟㻠㻡



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᚰᢿᩘ㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻥㻜㻚㻤㻞㻠㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻞㻝㻚㻡㻝㻣㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᚰᢿᩘ㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻥㻞㻚㻠㻣㻝㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻞㻜㻚㻥㻞㻟



㻌 㻌 㻌 㻌 㻰㼕㼒㼒㼕㼏㼡㼘㼠 ᮲௳㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 䛩䜛᮲௳



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⥲㌶㊧㛗㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻣㻥㻤㻚㻝㻠㻣㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻟㻤㻚㻜㻤㻡㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⥲㌶㊧㛗㻌 㻌 㻌 㻤㻟㻢㻚㻣㻥㻠㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻜㻣㻚㻤㻢㻤



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 እ࿘㠃✚㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻜㻡㻞㻚㻞㻜㻢㻌 㻌 㻌 㻌 㻠㻝㻥㻚㻡㻟㻡㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 እ࿘㠃✚㻌 㻌 㻌 㻝㻞㻣㻝㻚㻞㻣㻢㻌 㻌 㻌 㻌 㻟㻤㻟㻚㻤㻜㻜



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᚰᢿᩘ㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻤㻥㻚㻟㻡㻟㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻤㻚㻥㻥㻡㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᚰᢿ໬ᩘ㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻥㻟㻚㻞㻥㻠㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻞㻜㻚㻣㻣㻟



㧗୙Ᏻ⩌䠄㻺㻩㻝㻠䠅



㻌 㻌 ィ⟬ㄢ㢟㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⱥᩥ㡢ㄞㄢ㢟



㻌 㻌 㻌 㻌 㻱㼍㼟㼥 ᮲௳㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 䛧䛺䛔᮲௳



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⥲㌶㊧㛗㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻣㻢㻝㻚㻞㻢㻠㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻣㻞㻚㻠㻥㻞㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⥲㌶㊧㛗㻌 㻌 㻌 㻌 㻣㻢㻤㻚㻡㻣㻝㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻣㻝㻚㻠㻞㻢



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 እ࿘㠃✚㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻝㻡㻤㻚㻥㻞㻝㻌 㻌 㻌 㻌 㻠㻟㻝㻚㻣㻜㻟㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 እ࿘㠃✚㻌 㻌 㻌 㻝㻠㻞㻜㻚㻝㻠㻟㻌 㻌 㻌 㻌 㻢㻣㻤㻚㻝㻝㻥



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᚰᢿᩘ㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻤㻤㻚㻝㻠㻟㻌 㻌 㻌 㻌 㻞㻜㻚㻢㻡㻣㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᚰᢿᩘ㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻤㻣㻚㻞㻤㻢㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻤㻚㻤㻞㻤



㻌 㻌 㻌 㻌 㻰㼕㼒㼒㼕㼏㼡㼘㼠 ᮲௳㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 䛩䜛᮲௳



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⥲㌶㊧㛗㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻤㻟㻣㻚㻥㻡㻣㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻥㻢㻚㻡㻠㻢㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ⥲㌶㊧㛗㻌 㻌 㻌 㻤㻠㻟㻚㻝㻝㻠㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻠㻞㻚㻥㻟㻝



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 እ࿘㠃✚㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻞㻤㻡㻚㻣㻟㻢㻌 㻌 㻌 㻌 㻠㻟㻜㻚㻝㻣㻥㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 እ࿘㠃✚㻌 㻌 㻌 㻝㻢㻟㻟㻚㻟㻣㻥㻌 㻌 㻌 㻌 㻢㻥㻜㻚㻤㻢㻣



㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᚰᢿᩘ㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻤㻣㻚㻥㻞㻥㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻞㻟㻚㻢㻡㻠㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᚰᢿ໬ᩘ㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻤㻤㻚㻞㻝㻠㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻝㻥㻚㻝㻣㻣



♫஺୙Ᏻ࡜㌟యⓗ࣭⏕⌮ⓗᣦᶆ࡜ࡢ㛵㐃 安田他,1997)との指摘から,対人緊張がもたらす身 体動揺は内耳機能において現れやすく,固有受容器への 影響は比較的小さいことが推測された。一方,緊張や社 交不安の指標として,心拍数は明確な有効性を示さな かった。社交不安のメカニズムとして,予期不安や恐怖 を契機とするセロトニンの脳内バランスの乱れが交感神 経活動の亢進を招き,心拍数の増加やふるえなどの身体 症状を出現させると考えられているが(貝谷・佐々木・ 清水,2015),健常域の社交不安者を含む協力者を仮想 的な対人緊張場面に置いた本研究では,多くの者にとっ て心拍数の増加に至るほどの緊張を喚起しなかったのか もしれない。あるいは,交感神経活動の亢進が心拍数の 増加として反映されるまでに,本実験の測定が終了して しまったためとも考えられる。さらに,LSAS-J の素点 と心拍数の間に示唆された負の相関についても,残念な がらその原因推定に至る十分な資料は得られなかった。 各社交不安群の特徴 社交不安中群は,計算課題によって与えられた緊張に

(6)

よく反応し,Easy 条件と比較した Difficult 条件下の総 軌跡長と外周面積のいずれもが増大する結果となった。 しかし,社交不安高群は,ベースラインとなる Easy 条 件下での動揺がすでに大きかったことから,実験への参 加自体が緊張を高めてしまったのではないかと推測され た。葛西・山本・倉本・辻野(2014)が指摘したように, 緊張は「他者の存在そのもの」と「他者からの否定的な 評価を恐れる気持ち」に分けられる。社交不安高群は, 実験者の眼前で課題を行ったことで「他者の存在そのも の」に対する不安が大きく高まり,課題条件に依存して 生じたはずの「他者からの否定的な評価を恐れる気持ち」 による変化が覆い隠されてしまった可能性がある。対し て社交不安中群は,実験者の存在だけではそれほど不安 は高まらず,課題の条件設定によって「他者からの否定 的な評価を恐れる気持ち」が高まったことで,身体動揺 量に変化が現れたと考えられる。なお,健常群に相当す る社交不安低群には,計算課題による身体動揺の変化は 示されなかった。 ところが英文音読課題に関しては,社交不安低群は, 低・高緊張場面の双方で計算課題を課した時よりも外周 面積が大きかった。また,社交不安中群は,計算課題時 よりも英文音読課題時の方が,総軌跡長と外周面積のい ずれも大きかった。社交不安高群にはこうした差異が見 られなかった。この事実は,英文音読課題が計算課題よ りも大きな緊張を与えたことを意味している。社交不安 中群に見られた条件間の差異が「他者からの否定的な評 価を恐れる気持ち」によるものであるとの解釈が正しい なら,英文を音読する方が計算問題よりも「他者からの 否定的な評価」を予想させたと言える。古家・櫻井(2014) が大学新入生に対して実施した調査では,不得意な分野 としてリスニングに次いでスピーキングを挙げた学生が 多く,全体の約 20% を占めた。このことからも,大学 生における英文音読に対する苦手意識が,評価されるこ とへの不安をより大きくしたと推察できる。社交不安低 群は課題内の条件間では動揺量に有意な変化を見せな かったが,課題内容の違いによる「他者からの否定的な 評価を恐れる気持ち」の上昇が,外周面積の増大に繋がっ たと言える。 まとめると,社交不安高群は「他者の存在そのもの」 に対して感度が高く,一般的な対人場面においても重心 動揺に変化が現れるほどであった。対して社交不安低群 は,「他者の存在そのもの」によって引き起こされる不 安は非常に小さく,「他者からの否定的な評価を恐れる 気持ち」が大きく高まることによって重心動揺の変化が 生じた。境界群に相当する社交不安中群は,両群の中間 的な特徴を有し,設定した課題条件間の違いに最も敏感 に反応した。 教員養成への示唆 本研究に参加した大学生は,A大学の教員養成課程内 で無作為に抽出された者であった。そこに,LSAS-J が 46 点以上の重度の社交不安者が全体の 35% 程度存在 し,これを除く境界領域以上の者も全体の 4 割以上存 在した。A大学の教員養成課程は,入学時点の教員志望 者が 8 割を越え,常に 7 割程度の教員就職実績を有す るが,そのように教員志望度の高い課程の学生であって も社交不安がこれほど高いことは驚きである。教員養成 課程学生が教育実習等で示す対人不安や緊張は,もはや 一部の者の問題ではないと言える。教育実習経験をきっ かけに,教員就職を諦める者が多くいることからも,彼 らの社交不安の程度にあわせて適切な指導・助言を行い, 教師不安に繋げさせないことが急務である。 それには「他者の存在そのもの」と「他者からの否定 的な評価を恐れる気持ち」の分類に基づく配慮が有効だ ろう。「他者の存在そのもの」への不安は著しい社交不 安を呈する高群で高く,対人場面全般で大きなストレス を生じていると考えられる。これに対処するには,認知 行動療法等の心理的支援が有効と思われる。ただし,そ れは通常の教育課程外の支援となるため,個別の対応を 考えざるを得ない。一方,「他者からの否定的な評価を 恐れる気持ち」は,実際の否定的評価に対するストレス 反応であるよりも,むしろ予期不安として生じる。これ は評価懸念の特徴の 1 つでもあり,実際,評価懸念と 社交不安障害との関連が明らかにされている(臼倉・濱 口,2014)。評価懸念を形成する要因は多いが(Rubin, 2009),教員養成カリキュラムにおいて考慮すべきもの として,対人経験と自己概念が重要であろう。幼少期か らの否定的な対人経験が対人不安を生み出していれば, それが教育実習において喚起されることで,否定的な自 己概念に繋がることが危惧されるからだ。 否定的な対人経験を持つ者に対しては,教員養成の教 育課程の中で,対人的な成功体験を十分に持たせ,自己 概念を高めることが不可欠である。そのためには,通常 3 ~ 4 年生で行われる教育実習に先だって小規模な教育 場面を経験させ,それを肯定的に意味づけるための指導 を十分に行うことが有効であると思われる。実際,A大 学では,1,2 年生にもさまざまな教育体験をカリキュ ラムの中で課しており,同時に専門性を持つ担当教員に よって,経験の省察や意味づけのための支援が与えられ ている。こうした工夫が,社交不安の高さを克服し,高 い教員就職率に繋がっているのだろうと推測された。 なお,本研究では,社交不安による動揺を捉えるため に身体的ならびに生理的指標に着目し,結果として重心 動揺の有効性を見出した。この成果を活用し,社交不安 の著しく高い者に対して効果的に支援するために,疑似 教育実習場面を用いた認知行動療法的訓練プログラムを 開発することも今後期待される。 文献 朝倉 聡(2015).社交不安症の診断と評価 不安症研究, 7,4‒17.DOI: 10.14389/jsad.7.1_4 朝倉 聡・井上誠士郎・佐々木 史・佐々木幸哉・北川信

樹 … 小 山 司 (2002).Liebowitz Social Anxiety

(7)

Scale(LSAS)日本語版の信頼性および妥当性の

検討 精神医学会,44,1077‒1084.

Coates, T.J., & Thoresen, C. E. (1976). Teacher anxiety: A review with recommendations. Review of Educational Research, 46, 159‒184. DOI: 10.3102/00346543046002159

Detweiler, M. F., Comer, J. S., Crum, K. I., & Albano, A.

M. (2014). Social anxiety in children and

adolescents: Biological, developmental, and social considerations. In S. D. Hofmann & P. M. DiBartoloSocial (Eds.). Anxiety(Third Edition): Clinical, Developmental, and Social Perspectives (pp. 253‒309). Amsterdam: Elsevier.

Feske, U., & Chambless, D. L. (1995). Cognitive behavioral versus exposure only treatment for s o c i a l p h o b i a : A m e t a - a n a l y s i s . Behavior Therapy, 26, 695‒720. DOI: 10.1016/S0005-7894 (05)80040-1 藤田公和・佐藤桃子 (2019).器械体操部所属高校生の 立位姿勢維持時の重心動揺特性 桜花学園大学保育 学部研究紀要,19,123‒130. 古家 聡・櫻井千佳子 (2014).英語に関する大学生の意 識調査と英語コミュニケーション能力育成について の一考察 武蔵野大学教養教育リサーチセンター紀 要,4,29‒50. 樋口輝彦 (2014).DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュ アル 医学書院 姫野完治 (2010).段階的教育実習による教職志望学生 の成長感の変容 秋田大学教育文化学部教育実践研 究紀要,32,153‒165. 本間正行 (2008).あがり,不安,緊張.日本スポーツ 心理学会編 スポーツ心理学事典(pp. 622‒623) 大修館書店 市村操一 (編著)(1993).トップアスリーツのための心 理学―スポーツ心理学入門 同文書院 岩元正広・井上裕章・安田知久・吉川茂樹・小宮山 荘 太郎・吉成元孝・横溝由史 (1997).立姿勢維持に おける迷路と深部感覚の役割 耳鼻,43,471‒477.

Izawa, S., Saito, K., Shirotsuki, K., Sugaya, N., & Nomura, S. (2012). Effects of prolonged stress on cortisol and dehydroapiandrosterone: A s t u d y o f a t w o - w e e k t e a c h i n g p r a c t i c e . Psychoneuroendocrinology, 37, 852‒858. DOI: 10.1016/j.psyneuen.2011.10.001

Izawa, S., Sugaya, N., Shirotsuki, K., Yamada, C. Ogawa, N., Ouchi, Y., … & Nomura, S. (2008). Salivary dehydroepiandrosterone secretion in response to acute psychosocial stress and its correlations with biological and psychological

changes. Biological Psychology, 79, 294‒298.

DOI: 10.1016/j.biopsycho.2008.07.003 貝谷久宣・佐々木 司・清水栄司(編著)(2015).不安 症の事典:こころの科学増刊 日本評論社 葛西響子・山本景子・倉本 到・辻野嘉宏 (2014).コウ テイカボチャ:聴衆に肯定的な反応を重畳する発表 時緊張緩和手法 情報処理学会研究報告,2014(8), 1‒8. 小関俊祐・巣山晴菜・兼子 唯・鈴木伸一 (2014).教員 志望の大学生の不安と抑うつに及ぼす拒絶に対する 過 敏 性 と 自 動 思 考 の 影 響 健 康 心 理 学 研 究,27, 35‒44.

Liebowitz, M. R. (1987). Social phobia. Modern

Problems of Pharmacopsychiatry, 22, 141‒173. DOI: 10.1159/000414022

Maki, B. E., & Mcllory, W. E. (1996). Influence of arousal and attention on the control of postural sway. Journal of Vestibular Research, 6, 53‒59. DOI: 10.3233/VES-1996-6107 松宮新吾・原 めぐみ (2015).教職課程を履修している 学生の教育実習に対する不安構造の研究 : 教育実習 に対する不安尺度の作成と教育実習不安モデルの検 証 研究論集,101,193‒211. 望月 久・金子誠喜 (2009).基本バランス能力テストの 考案と信頼性・妥当性・臨床的実用性の検討 理学 療法科学,24, 3 2 9 ‒ 3 3 6 . D O I : 1 0 . 1 5 8 9 / rika.24.329 門前 進 (1991).血圧と心拍数―イメージ内容とリラク セイションの観点から― ヒューマンサイエンス,4, 111‒122.

Nakahara, H., Takemori, S., & Tsuruoka H. (2000). Influence of height on the spatial orientation and equilibrium of the body. Otalaryngology-Head and Neck Surgery, 123, 5 0 1 ‒ 5 0 4 . D o i :

10.1067/mhn.2000.107316

西松秀樹 (2005).教師効力感と不安に関する研究 滋賀

大学教育学部紀要教育科学,55,31‒38.

Obrist, P. A. (1981). Cardiovascular psychophysiology: A perspective. NewYork: Plenum.

Puigcerver, A., Martínez-Selva, J. M., García-Sánchez, F. A., & Gómez-Amor, J. (1989). Individual d i f f e r e n c e s i n p s y c h o p h y s i o l o g i c a l a n d subjective correlates of speech anxiety. Journal of Psychophysiology, 3, 75‒81.

Rodebaugh, T. L. (2004). I might look OK, but I'm still doubtful, anxious, and avoidant: The mixed effects of enhanced video feedback on social a n x i e t y s y m p t o m s . Behaviour Research and Therapy, 42, 1 4 3 5 ‒ 1 4 5 1 . D O I : 1 0 . 1 0 1 6 / j .

brat.2003.10.004

Rubin, K. H., Coplan, R. J., & Bowker, J. .C. (2009).

Social withdrawal in childhood. Annu.al Review

(8)

annurev.psych.60.110707.163642

Schlenker, B. R., & Leary, M. R. (1982). Social a n x i e t y a n d s e l f - p r e s e n t a t i o n : A

Conceptualization and Model. Psychological

Bulletin, 92, 641‒669. DOI: 10.1037/0033-2909.92.3.641

塩入俊樹 (2012).不安障害の現在とこれから―DSM-5

改定に向けての展望と課題:パニック障害― 精神

神経学雑誌,114,1037‒1048.

Stein, M. B., Baird, A., & Walker, J. R. (1996). Social

phobia in adults with stuttering. American

Journal of Psychiatry, 153, 278‒280. 鈴木直人 (1998).直立姿勢の意義 藤澤 清 ・ 柿木昇治・ 山崎勝男・宮田 洋(編) 新生理心理学第 1 巻 (pp. 238‒242) 北大路書房 髙橋佳奈・島田栄子 (2017).大学生の社交不安症傾向 に つ い て 文 京 学 院 大 学 人 間 学 部 研 究 紀 要,18, 111‒121. 時 田 喬・ 宮 田 英 雄 (1999). 高 齢 者 の 重 心 動 揺 Geriatric Medicine, 37, 821‒828. 敦賀麻理子・鈴木直人 (2005).「あがり」喚起時の精 神生理学的反応の検討 感情心理学研究,12,62‒ 72.

Turner, S. M., Beidel, D. C., & Townsley, R. M. (1990). S o c i a l p h o b i a : R e l a t i o n s h i p t o s h y n e s s . Behaviour Research and Therapy, 28, 497‒505. DOI: 10.1016/0005-7967(90)90136-7 臼倉 瞳・濱口佳和 (2014).評価懸念研究の動向と今後 の展望 : その形成プロセスに着目して 筑波大学心理 学研究,48,49‒58. 山本淳子・岸本明子 (2006).教育実習生の役割演技行 動とストレス反応:自己評価との関連 香川大学教 育実践総合研究,13,61‒69. 米村あゆみ・生和秀敏 (1990).スピーチ場面における 不安反応の指標間関連について 行動療法研究,16, 115‒121. 付記 本論文は,第二著者が令和元年度に滋賀大学教育学部 に提出した卒業論文のデータを第一著者が再分析し,執 筆したものである。 滋賀大学教育実践研究論集 第 3 巻 2021

Figure 2 計算課題の Easy 条件と Difficult 条件下における 社交不安群ごとの重心動揺外周面積の平均値
Table 1 社交不安群(低・中・高)ごとの計算課題 Easy 条件/ Difficult 条件,英文音読課題しない条件/する条件での 重心動揺(総軌跡長と外周面積)ならびに心拍数の平均値と標準偏差(総軌跡長は mm,外周面積は mm 2 )                   㻌 㻌 ᮲㻌 ௳㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᖹᆒ್㻌 㻌 㻌 ᶆ‽೫ᕪ㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᮲㻌 ௳㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 㻌 ᖹᆒ್㻌 㻌 㻌 ᶆ‽೫ᕪ

参照

関連したドキュメント

実習と共に教材教具論のような実践的分野の重要性は高い。教材開発という実践的な形で、教員養

選定した理由

取組の方向 安全・安心な教育環境を整備する 重点施策 学校改築・リフレッシュ改修の実施 推進計画 学校の改築.

取組の方向  安全・安心な教育環境を整備する 重点施策  学校改築・リフレッシュ改修の実施 推進計画

関係会社の投融資の評価の際には、会社は業績が悪化

一貫教育ならではの ビッグブラ ザーシステム 。大学生が学生 コーチとして高等部や中学部の

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に

ふじのくに東部NPO活動センターの各事業の実施にあたっては、管内市町担当課や外 部機関、専門家に積極的に関わっていただき、事業実施効果の最大化に努める。..