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保育者の資質・能力育成を見据えたピアノ学習の方法論的検討 : ソナチネ及びブルグミューラーの活用

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Academic year: 2021

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保育者の資質・能力育成を見据えたピアノ学習の方法論的検討

―ソナチネ及びブルグミューラーの活用―

辻 陽子(岡山県立大学保健福祉学部)

伊東 陽(沖縄県立芸術大学音楽学部)

要旨:保育者養成課程でピアノ学習は必修科目であり、ピアノを通して得る音楽の専門性、 表現力は保育者としての資質・能力に直接結びつく。本論文ではこれまでの実際のピアノ指導 経験から導き出した観点から、保育現場の音楽活動で有用な技術についての課題を10項目挙げ た。それぞれの項目に多くの保育者養成課程のピアノ学習で利用されている教材である『ソナチネ アルバム第一巻』とブルグミューラー『25の練習曲』の楽曲を用いながら、音楽で表現すること、及 び弾き歌いをするにあたって有用と考えられる技術を検討した。常に 10 項目を意識してピアノ学習 に取り組むことにより、音楽の総合的技術と感性の向上を目指し、保育者が豊かな音楽活動を子 どもたちに提供するための方策を検討する。 キーワード:ピアノ学習、音楽学習、弾き歌い、教員の資質・能力、表現力 1.はじめに ピアノはメロディーだけではなく和音も同時 に奏でることができ、音域も音の数もリズムも 全てのことを表現することができる唯一の楽器 であると言っても過言ではない。『幼稚園教育 要領』(文部科学省、2017)には、「音楽に親し み、歌を歌ったり、簡単なリズム楽器を使った りなどする楽しさを味わう。」とある。また『保育 所保育指針』(厚生労働省、2017)には「動き を音などで表現したり、演じて遊んだりしなが ら、自分なりに表現することの喜びを味わう。」 とある。つまり保育現場で音楽活動として主に 求められることは、子供の動きに合わせた表 現や、例えば動物、情景を表現するような即 興演奏、子どもたちと一緒に奏でる歌唱伴奏 等が重要となるのである。金井(2017)も、「音 楽に合わせて身体を動かす遊びや、紙芝居、 劇などに伴う音楽を演奏するに際し、音量や 音域の広さ、そしてリズミカルな生き生きとした 音楽を奏でられる音質の点で、つまり楽器の 持つ表現能力を考えるとピアノは圧倒的に優 位である」(p.123)と述べている通り、これらの 音楽をあますところなく表現することができる のはピアノが最適であり、ピアノを活用すること が保育現場における活動に極めて効果的で あるといえる。そのためにも、ピアノ学習は極 めて重要な科目であるといえる。 では、保育者を志す学生は、どの程度のピ アノ技能を習得すればいいのだろうか。楽譜 に書かれていることを咄嗟に読んで正確に演 奏する初見能力を培うことも必要ではあるが、 そうするためには実践による経験と知識を増 やすことが大切であるが、経験したからと言っ てすぐに対応出来るものではない。そのため には、学んでいることがどういう技術なのかを 理解しながら学習することが必要だと考えられ

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る。和田垣、生地、藤谷、澤田(2018)が「ピアノ 技能をレベルだけでなく、子どもの活動への 共感を基にそれに合わせた演奏の技能が求 められていることがわかる。その点からも教員 養成課程においては、それらの力の基盤とな るものを培っていくことが求められる。」(p.184) と述べている通り、あらゆる状況に対応できる ようなピアノ技術を習得しておかなければなら ないのである。 本論では、保育者養成課程のピアノ学習で 使用する教材の『ソナチネアルバム第一巻』と ブルグミューラー『25の練習曲』を用い、保育 者に必要な、音楽で表現すること、及び弾き 歌いをするにあたっての有用な技術とは何か、 またそれをどのように学習するかを考察してい く。従来の指導法では,ソナチネとブルグミュ ーラーが有する教材としての意義は、保育者 の最低限の技能の会得として力点が置かれ てきたが、筆者等のこれまでの保育者養成課 程の学生を対象としたピアノ指導経験活かし、 和声進行や楽器の音の響き、アーティキュレ ーションなど、楽曲に内在する音楽的な要素 を10項目の観点として定めて研究を進めた。 2.方法 『ソナチネアルバム第一巻』(以下ソナチネと 略す)とブルグミューラー『25の練習曲』(以下 ブルグミューラーと略す)の楽曲を用い、保育 現場の音楽活動で有用な技術について検討 するために、本論で扱う技術を以下の10項目 とした。これらの10項目は研究者等のこれま での実際のピアノ指導経験から独自に導き出 した観点である。 ① 属和音から主和音への終止形の響きを身 につける。 ② 様々な伴奏型を習得する。 ③ 同じコードネームの和音転回で響きの変 化を知る。 ④ 装飾音奏法を習得する。 ⑤ 音域の違いで響きの変化を知る。 ⑥ アーティキュレーションの特性を知る。 ⑦ ペダルを用いてなめらかな奏法を身につ ける。 ⑧ 強弱を明確につける。 ⑨ 調性、転調の変化を感じる。 ⑩ ピアノで綺麗な音色を奏でる。 3.課題 ピアノ学習から得る保育現場の音楽活動で 有用な技術について以下の10の観点から考 察する。 ①属和音から主和音への終止形の響きを身 につける。 保育現場に出るにあたってまず一番に身に つけてほしいのが属和音から主和音への終 止形の響きの感覚である。これは各調性に出 てくる主要三和音の中からでも最も重要な和 声進行であり、どの作品の曲にも必ず多く用 いられている。また歌唱伴奏のみならず、多く の幼稚園・保育園でおじぎの音楽としても取り 入れられるほどのとても聞きなじみのある和声 進行なので、これが終止形なのだとすぐ判断 できるようになってもらいたい。その為にもどれ が終止形なのかを理解しながらピアノに取り 組むのがポイントだ。 終止形の分かりやすい例をいくつか示した い 。 ソ ナ チ ネ 1 番 第 1 楽 章 ( ク ー ラ ウ 作 曲 Op.20-1)の25~30小節【譜例1】は、原調か ら転調してはいるが極めて分かりやすい。また、 原調に戻っての74~80小節も同様である。 同曲第3楽章は1~16小節にかけて、主和音 →属和音→主和音と連続して出現しているが、

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音域・転回を用いて様々な終止形が何度も用 いられ楽曲が展開していく。この16小節の間、 主和音の C コードと属和音の G コード(または G セブンスコード)しか用いられていないと気 づくことが肝心だ。気づいた上で楽曲に取り 組むことが終止形の響きの感覚を身につける 近道だろうと思われる。同じく、クーラウ作曲の ソナチネ第4番(Op.55-1)第1楽章にも着目し たい。【譜例 2】主題の1~8小節にかけて1番 第3楽章と同様に主和音→属和音→主和音 の連続で終止形の響きを多く感じることができ る。尚、同曲第3楽章、ソナチネ5番(Op55-2)、 6番(Op.55-3)も同様だが、いずれもクーラウ 作曲の作品であることが分かる。クーラウの作 品を学ぶことで終止形の響きの感覚を身につ けやすくなるだろう。 またブルグミューラー『25の練習曲』に至っ ては、ソナチネに比べ少し複雑な和声進行も 増える中、こちらも終止形が随所に盛り込まれ ていることが見て取れる。6番「進歩」の7,8小 節目は右手の動きに左右されやすいが、大き な和声進行としては完全な終止形である。14 番「スティリアの女」は楽曲中に何度も転調を 繰り返しているが、セクション毎に各調性の主 和音→属和音→主和音の連続を用いてい る。これはこれまでの楽曲で終止形の感覚を 身につけていれば複雑に感じることではない だろう。 ②様々な伴奏型を習得する。 保育現場において歌唱伴奏をする際、子ど もたちのためにその楽曲に合う伴奏を弾いて もらいたい。そのためにも様々な伴奏型のバリ エーションを習得するべきである。伴奏型のバ リエーションを得ることで、歌唱伴奏や子供た ちの動きに合わせた即興演奏にも活かすこと ができるだろう。 伴奏型は歌唱のみならず、どんな楽曲にと っても必要不可欠な音型といっても過言では ない。ソナチネ・ブルグミューラーにとっても同 様であり、これらの楽曲を通して様々な伴奏 型を習得していきたい。 Ⅰ 和音・重音でリズムを刻む形態。ブルグミュ ーラー2番「アラベスク」で用いられている。 【譜例 3】この場合、マーチのリズムでもあるの でテンポが高揚して速くならないよう落ち着い てリズムを刻むことが大事である。更に和音の 音を揃えて弾くということ、すべての和音を均 等な強さで弾くことがポイントで、これにより大 勢で行進している表現を習得することができ る。 ソナチネ4番第2楽章にも連続する重音が 多く用いられているが【譜例 4】、これは前述し たブルグミューラー2番「アラベスク」とは拍子 が違う。この場合テンポも速く、曲調を高揚さ せる効果があり、マーチとは逆の効果となる。 重音を連続して速く弾く時に手の型が緩まな いようにするのがポイントだ。このテクニックは 子どものかけ足に合わせた表現として用いる ことができる。 Ⅱ 8分の6拍子や4分の3拍子に用いられるこ とが多い伴奏型である。ソナチネ7番第3楽章 (クレメンティ作曲 Op.36-1)では主題(1~15 小節)に用いられている【譜例 5】。この伴奏型 は一音一音が粒立ちせず三つの音を流れる ようになめらかに弾くことがポイントである。先 ほど重音の連続でも例としたソナチネ4番第2

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楽章では中間部(53~68小節)に用いられて おり、かけ足のようなパリパリとした主題と違っ てメロディーを情感たっぷりと歌いやすく曲調 の変化に一役を買っている。 Ⅲ アルベルティバスという名称もついている伴 奏型。伴奏型の中では一番ポピュラーである だろう。ソナチネ1番第1楽章では主題1~6 小節【譜例 6】や17~20小節、展開部の32 ~38小節と多用されている。この伴奏型もな めらかに弾くことでメロディーをのびやか歌わ せることができる。 Ⅳ 二つの単音を交互に弾きリズムを刻むテク ニック。ソナチネ9番第1楽章(クレメンティ作 曲 Op.36-3)には1~4小節【譜例 7】、18~2 3小節、27~33小節、54~56小節、59~6 1小節と多用されている。動きのある楽曲に多 く、元気のいい歌やワクワクした気持ちなどに 合わせやすい音型だ。 同じ音型でもオクターブを単音にばらして 弾くテクニックもある。ソナチネ10番第1楽章 (クレメンティ作曲 Op.36-4)の主題(1~5小 節)に用いられているが、オクターブと音程が 広いこともあって曲調が華やかになっている。 元気がありにぎやかな曲調となるこの音型はク レメンティ作曲楽曲の特徴でもあるようだ。 対して、重音と単音を交互に弾くテクニック はソナチネ6番第1楽章の13~16小節【譜例 8】や40~45小節、ソナチネ3番第1楽章(ク ーラウ作曲 Op.20-3)の27~30小節、95~9 8小節に用いられているが、こちらのテクニック はクーラウの作品に多く用いられているテクニ ックである。単音を交互に弾く伴奏型より重厚 感がありなめらかに弾くことを求められる。保 育現場ではメロディーをじっくりと歌わせたい 歌唱曲の伴奏などで用いるのが良いだろう。 Ⅴ 子どもたちが走るときなど、かけ足の音楽と して用いることができる伴奏型。一音目のベー スの音を強く弾き、後の重音を軽く流すよう弾 くことがポイントである。この伴奏型を用いるこ とで疾走感を表現することができるため、ソナ チネ1番第3楽章の60~71小節【譜例 9】、ソ ナチネ9番第3楽章の16~29小節、60~75 小節のようにテンポが速く技巧的であることが 多い3楽章に多用されているテクニックだ。 その他にも伴奏型は多くあるが、大きく分類 するとこのような音型が多く用いられている。ソ ナチネを勉強することで、伴奏型のバリエーシ ョンを習得することができ、保育現場での歌唱 伴奏や即興演奏などの音楽活動で活かすこ とができるだろう。 ③同じコードネームの和音転回で響きの変化 を知る。 メロディーの展開に関わらず、同じコードネー ムでしばらく曲が進行する楽曲もある。その 際、単調な響きにならないよう和音を転回させ て変化をもたらせていることも多い。例えばソ ナチネ1番第3楽章の14~15小節【譜例 10】 だ。同じ G セブンスコードで曲は進行してい るが転回することで音域が拡がり響きが変わ って聞こえる。 また、和音の展開による響きの変化が最も 有効なのは楽曲の最後であろう。ソナチネ7番 第3楽章の終わり5小節【譜例 11】は C コード

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内で和音を転回して音域を拡げ曲の終わりを 華やかに響かせることができる。 ブルグミューラー25番「乗馬」では和音の 転回を用いて曲が始まっている。33小節【譜 例 12】では C コードの和音の転回を用い両 手で逆行しながら音域を拡げて曲調を盛り上 げ、37小節目では33小節と同じ進行を更に 単音にばらして変化までももたらしている。し かし、これらはどれも同じ C コードの転回であ るのにここまで曲調に変化をつけることができ るということを理解しなければいけない。この 和音転回を歌唱伴奏の最後に取り入れること で元気に華やかに歌い終えることができ、子 どもたちに歌い通す達成感を感じさせることが できるだろう。 ④装飾音奏法を習得する。 装飾音とはある音にほかの音を補い、その メロディーに華やかさを与えることである。ソナ チネ、ブルグミューラーでも必要な技術として 多く取り入れられている。ここでは前打音と、 前打音がいくつか並ぶ複前打音に着目した い。 ブルグミューラー3番「牧歌」【譜例 13】では 前打音と複前打音が何度も出てくるが、その 箇所の左手が伸ばす和音などであまり動きが ないため前打音が弾きやすく学習しやすい楽 だろう。装飾音は本来あるべき音よりも音の数 が増える分だけ曲のテンポが狂いやすくなり がちだ。それでも必ず一定のテンポを保って 軽やかに弾くことがポイントである。ブルグミュ ーラー10番「やさしい花」【譜例 14】の13小節 目はテクニック的にも難しく複前打音がある箇 所のテンポが狂いやすい。まずは複前打音な しで譜読みをし、本来のリズムがどういうものな のかをしっかり理解してから後で複前打音を 入れることでテンポを崩すことなく演奏すること ができるだろう。ブルグミューラー14番「スティ リアの女」にも前打音、複前打音が多用されて いる。この曲の華やかさは装飾音が多用され ているからこそである。装飾音をしっかり身に つけるには、この楽曲を勉強するのが適して いるのではないかと思う。装飾音をつけること で曲調がこれだけ華やかになるのだと感じる ことも重要だ。保育現場での歌唱伴奏にも装 飾音を用いることで音での遊びや楽しさ、音 楽の華やかさを子どもたちに感じさせることが できるだろう。 ①から④は主に歌唱指導や弾き歌いの際 の理論的・技術的な面を考察したが、⑤以降 は音楽を表現するという視点にも目を向けた い。保育者自身の演奏技術・表現力を伸長さ せることは、子どもたちの音楽性や表現力を 育むことに寄与するものである。 ⑤表現する音域の違いで響きの変化を知る。 ピアノは前述したように、様々な音域の音を 奏でることができる。そのため、同じメロディー を演奏したとしても、音域が違えば、響きから 受ける印象は異なる。音域が高いメロディー は女声やヴァイオリン、フルート、小鳥などの 小動物が連想される。明るく軽やかなイメージ を持つことが多い。また低い音域は男声、チェ ロやコントラバスの低弦楽器、ファゴット、ゾウ やライオンなどの大きな動物が連想され、少し 暗く、重たいイメージを与える。 ソナチネ 5 番第 1 楽章は 33~34 右手 2 小 節のメロディーが、35~36 小節に 1 オクター ブ上で演奏する【譜例 15】。ここは 33~34 小 節のメロディーをクラリネット、35~36 小節をフ ルートで演奏しているようなイメージで掛け合 いを感じると音色が多彩になる。 ブルグミューラー15 番「バラード」は 3~18 小節まで左手がメロディーである【譜例 16】。

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16 分音符の細かいメロディーが低音域で演 奏すると不気味で怪しげな雰囲気が醸し出さ れる。31~44 小節までは右手が付点 4 分音 符で歌われる【譜例 17】。こちらはハ長調であ るし、Dolce(可愛らしく、優しく)の指示もある ので、柔らかい音色でメロディーのまとまりを 大きく感じて演奏すると、左手のメロディーと の対比がつく。 一人で演奏しながら音域の違いを感じること は、音域が広いピアノならではの喜びである。 子どもの歌のピアノ伴奏ではメロディーは高音 域で歌われることがほとんどなので、低音域を 大きめに演奏すると全体の音量のバランスが 取りやすい。 ⑥アーティキュレーションの特色を考える 歌唱は聞いている人に歌詞の意味を伝えな ければならない。また歌う子どもたちも歌詞の 意味をきちんと理解し歌うことは表現力の向 上、さらに語彙力の発達につながる。そのた めにも楽譜に書かれた細かいアーティキュレ ーションに常に注意を払うことは非常に大切 である。 出版社によって若干の違いがある場合があ るが、全音楽譜出版社ソナチネ 7 番第 1 楽 章の 1~4 小節【譜例 18】、第 1 テーマはスラ ーとスタッカートが組み合わされている。ピアノ 学習者は特に 2 小節目の 2 拍目の裏拍の G のスタッカートが次の 3 小節目の F の音とつ ながりやすいので注意が必要である。また 16 ~19 小節展開部のメロディーにおいては 17 小節の 2 拍目の裏拍の G は次の小節の F と スラーでつながっている【譜例 19】。同じ音型 でも演奏箇所においてアーティキュレーション が変わることもあるので、細かい変化も見逃さ ないようにしなければならない。 ブルグミューラー第 25 番「乗馬」1~4 小節 の繰り返し登場するメロディーにおいては 2、4 小節目に 16 分休符が書かれている【譜例 20】。この 16 分休符があることによって馬が軽 やかに走っている様子を表現している。スラ ー、スタッカート、アクセントなども見ることはも ちろん、休符も音楽の一部であるということを 忘れてはならない。 ⑦ペダルを用いてなめらかな奏法を身につけ る。 ピアノは指を鍵盤から離してしまうと音が消 えてしまうため、ペダルを使うことは大事な演 奏技術の一つである。Ⅰ音をなめらかにレガ ートで演奏したい時、Ⅱ音を効果的に響かせ たい時などにペダルを用いることは、ピアノか ら豊かな音色を引き出すことにつながる。 しかし多用しすぎると響きが濁ってしまう場 合もある。またピアノや演奏する場所によって 音の響きは変わるので、ペダルを踏むタイミン グもよく考えながら、自分自身の耳で響きを聞 きながら使用しなければならない。 ソナチネ 12 番第 1 楽章(クレメンティー作 曲 Op.36-6)12~15 小節の第 2 テーマ【第 21】はffの表示があり、左手はスラーが書かれ ているので、右手のメロディーをレガートに歌 うためと ff の堂々とした雰囲気を表現するた めにペダルを使うと有効的である。 ブルグミューラー第 7 番「清らかな小川」は 1~8 小節まで 2 拍ずつペダルを踏みかえる 指示がある【譜例 22】。これは和声の進行に 合わせて、ペダルを踏みかえる指示があるわ けだが、ペダルによって全体の響きが濁って しまうのがわかりやすいので、ペダルの練習に 関して適した楽曲である。 ⑧強弱を明確につける。 ピアノ演奏の際、楽譜に書いてある強弱でき ちんと弾くことは、曲想に変化をつけることに

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直結するため、表現力向上の第一歩と言って も過言ではない。またクレッシェンドやデクレッ シェンドなども効果的に用いると、演奏を聴く 側にとっても演奏をより一層興味深いものに する。 ソナチネ 1 番 1 楽章 24~27 小節は、24~ 25 小節をf、26~27 小節をpで演奏しなけれ ばならない。【譜例 1】右手は細かいパッセー ジでテクニック的にも弾くことは難しいがfはオ ーケストラでの tutti(全員合奏)、p はソロの楽 器が演奏しているようなイメージを持つこと、ま た左手の伴奏の和音は連打で比較的弾きや すいので、左手の強弱の対比を大きくつける と、メリハリがつく。 ブルグミューラー第 5 番「無邪気」9~12 小 節は 13 小節のfへ向かって右手のメロディー が上行し、クレッシェンドの指示がある【譜例 23】。左手も 8 分音符の伴奏が繰り返し使わ れているため、13 小節目のfへ向かって期待 感を持たせる効果があり、この曲の一番の盛り 上がりへつながる。 クレッシェンド、デクレッシェンドはどうしても その記号を見た途端、強くまたは弱く弾きがち である。どこまでの音楽のまとまりが続くかをよ く見極めると、自然な音楽の起伏が生まれる。 ⑨調性・転調の変化を感じる。 子どもの歌には、『小さい秋見つけた』(作 詞サトウハチロー、作曲中田喜直) 『うれしい ひなまつり』(作詞サトウハチロー、作曲河村 光陽)などわずかに短調の曲が存在するが、 ほとんどが長調で書かれている。子どもの歌 は形式的にも二部形式や三部形式などシン プルなものが多いが、ソナタ形式などで調性 感や転調の変化などをきちんと感じる経験を 積むことが歌唱指導の際、調性を感じどのよう な曲想をつければいいかのアイディアにつな がる。 ソナチネ 7 番第 1 楽章は提示部の右手第 1 テーマがハ長調、展開部初めの 2 小節が 第 1 テーマと全く同じリズムではあるが、ハ短 調である【譜例 18、19】。たったひとつの音 E が E♭に変わっただけで調性が変わるという 実感ができるだろう。第 1 テーマは f、展開部 はpの指示があるが、たとえ楽譜に指示がなか ったとしても、調性から曲想を感じようとさせれ ば、どの強弱記号がそれぞれの箇所に適当 かを導くことはできるはずである。 ブルグミューラー第 9 番「狩り」は A→B→A →C→A→Coda で構成されている。A はハ長 調だが B はト短調、C はイ短調である。A は ハ長調で狩りに行く勇ましい様子を表している のだろう。B は左の伴奏に 8 分休符が多用さ れている。そしてト短調の響きを感じると少し 怪しげな感じを感じることができる。C はイ短 調で全体にスラーが書かれている。また p と dolente(痛ましく)という指示もあるので、寂し気 な雰囲気を表現したい。 ブルグミューラーの曲は 1 曲ずつタイトルも ついているので、調性とともに曲の風景を想 像すると、表情豊かな演奏をすることができ る。 ⑩ピアノで綺麗な音色を奏でる。 楽譜に書いている音を並べただけの演奏 では、残念ながら音楽、表現とは言えない。そ れぞれの楽曲のそれぞれの箇所に見合っ た、ピアノらしい綺麗な音色を奏でることも大 切である。 子どもの歌は元気で軽やかなものが多いの で、軽やかなスタッカートの奏法を身に着ける ことが伴奏や弾き歌いにも有効な手段となる だろう。 ソナチネ 4 番第 2 楽章はスタッカートとレガ

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ートの対比が特徴的である【譜例 4】。スタッカ ートは指先と鍵盤が当たる部分を狭くするイメ ージで鍵盤を押し、早く鍵盤から指を離すと 思うと軽やかな音色になるだろう。和音のスタ ッカートを演奏する際はさらに和音の中で響 かせたい音にバランスをとることが大切であ る。バランスを取らないと全体に響きの輪郭が ぼやけ重たい印象を受ける原因につながる。 それぞれの楽曲において、どんな音色が合 っているかを常に考え、自分の出す音をよく 聞くことが大切である。そのためには無理のな い姿勢、手のフォームを意識し、自然なピアノ 奏法を習得することが大切だ。 4.考察 以上の 10 項目を意識してピアノ学習に取り 組むことで、保育現場での音楽活動に有用な 技術、技能を得ることとなり、それが保育者に とっての資質となるのではないかと考えてい る。課題に挙げた効果以外にも10項目からは 得るものがあるだろう。例えば、①の終止形の 響きを身につけること、②の様々な伴奏型を 習得することで即興能力だけではなく、読譜 能力にも活かすことができる。③の和音転回 や⑤の音域の違いで幅広く表現できるピアノ の特色を活かすことができ、⑥⑧⑨を常に意 識することで、楽譜の表示と逆の表現をして子 どもたちに違いを感じさせることもできるだろ う。このように学習と実践による経験から得た 知識が保育者の資質、能力そのものとなり、 子どもたちの感性を高めるような音楽活動を 実践できる保育者となるのではないかと考察 する。 5.まとめ ピアノ習得には多くの時間と労力が必要で ある。我々ピアノ指導者は保育者養成課程の 学生たちが卒業後に学んだことを活かし、一 人で楽譜を読み、演奏できるようになるための 効率的、効果的な学習方法を常に追及して いかなければならない。そのためには学生一 人一人の能力、個性に合わせ、ソナチネ、ブ ルグミューラーを始めとしてそれぞれに合った 教材を用いて、知識と技能、技術を習得する 学習をするべきである。そのためには学生自 身がピアノ学習を通して音楽の楽しみを多く 体験することが、保育者としての音楽の資質・ 能力の伸長につながり、音楽が得意分野とす るような保育者の育成に結び付くと考えられ る。 文献 (1)「幼稚園教育要領」文部科学省告示第62 第 2 章(2017) (2)「保育所保育指針」厚生労働省第 117 号 (2017) (3)金井玲子「保育者養成課程におけるピア ノ指導―こどもの表現活動を活性化させるピ アノの活用とその指導法―」『浦和大学・浦和 大学短期大学部 浦和論叢』121-135 (2017) (4)和田垣究、生地加代、藤谷智子、澤田和 夫「幼稚園教諭・保育士に求められるピアノの 技能について―園長への調査結果に基づい て―」『武庫川女子大学学校教育センター第 3 号』177-184(2018) (5)久保田慶一、渡辺行野『めざせ!保育 士・幼稚園教諭 音楽力向上でキャリアアッ プ』スタイルノート(2019) (6)ソナチネアルバムⅠ 全音楽譜出版 (7)ブルグミューラー 25 の練習曲 全音楽 譜出版

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Abstract

Effect of piano learning to enrich teacher’s skills and expressive

quality:

-Utilizing Sonatine and Burgmuller for music education practice-

Yoko Tsuji(Okayama Prefectural University) Akira Ito(Okinawa Prefectural Arts University)

It is mandatory for the students in the kindergarten/elementary school teacher training course to learn piano. The expertise and expressiveness in music acquired through learning the piano is directly linked to the teachers’ musical qualities and abilities. The more skills the students master in the course, the more vibrant the music activities for children will be at school site after graduation. It is our desire that many children feel the joy of expressing their feelings in music. By examining useful skills to express oneself musically and to sing with a piano utilizing “Sonatina Album vol.1” and “Burgmuller 25 etudes”, the teaching materials used in many kindergarten/elementary school teacher training courses for piano learning, we explore effective piano learning methods necessary to develop skills for the students to become able to deliver productive high quality musical activities for children.

参照

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