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巻頭言

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Academic year: 2021

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巻頭言 清泉女学院大学に看護学部が開設されたのは2年前であるが、思い返してみると、新学部開設に 向けて、大きな希望とともに難しさも抱えての出発であった。さらに、新型コロナによって席巻さ れた2020 年度は、入学式も開催できないという、これまで私たちだれもが経験したこともないよ うな年となった。春学期の授業は全学遠隔授業となり、学生、教職員共に最初は慣れない環境で戸 惑いもあったが、いつの間にか、この授業方式も定着して、緊急の状況に対応するために「仕方な く」取り入れたはずの遠隔授業の利点も見えてくるようになった。しかし、同時に、遠隔授業を通 じて、人と人とのつながりのあり方に、これまでにない形で、新しい問いがつきつけられることに もなった。 この看護学部の研究紀要創刊号にも遠隔授業に関する調査が掲載されているが、遠隔授業に関す る調査はこの一年の間、随所で実施・報告されてくるようになっている。これらの調査を概観する と、そこには緩やかながら、一つの傾向が見られるように思われる。 構造化されたインタビューやアンケート調査で、明確な「はい、いいえ」回答や複数回答からの 択一を要求する質問には比較的肯定的な反応が多いようである。対照的に、時間をとってじっくり と回答を促す対話的なインタビューでは、懐疑的な答えが少なくない。これは、じっくり考えるこ とによって、答える側のこころの底にある思い―例えば、パソコン越しに話はできるものの、人と 「場所を同じくして」会うことができない経験を通じて抱くようになった、人とひととのつながり の本来的在り方が奪われていることへの漠然とした不安感等―が徐々にこころの表層に浮かび上が り、答えに反映されるようになったからではないだろうか。このような傾向を見ると、今回の新型 コロナ禍は、これまでそれほど意識せずにいた私たちの心の多層性と層によって異なる心の声を観 察することを可能にしたということもできるだろう。 今年の大学入試結果の傾向が報道され、清泉女学院大学の入試結果もほぼほぼ出そろってきたが、 両者に共通することは、医療系の進路を希望する学生の数が増えているということである。日々報 道される医療従事者が直面している困難と医療機関における逼迫した状況にもかかわらず、多くの 若者が医療分野を目指しているという状況に、次の時代に向けて、危機がチャンスに生まれ変わり つつある一つの流れを実感している。つまり、直面する困難が、若者たちをして、自分のこころの 深層に潜む、他者のために生きることへの欲求に目覚めさせる契機となっているのかもしれない。 清泉女学院大学 学長 田村 俊輔

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