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ダウン症児誕生の季節性について

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Academic year: 2021

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(1)ダウン症児誕生の季節性について 桧石竹志・臼井章子 The. birth. Takesbi. of Down's. season. MATSUISⅢⅠ. ・. Syndrome. Shouko. UsuI. ダウン症は精神薄弱の-割以上を占める重要な原因疾患である1)。大部分の例では21番 常染色体のトリソミ-が原因病態であるが,その他に転座型やモザイク型も少数ながら 認められることが知られている。このような染色体の異常が出現する理由として現在提 唱されている倣鋭のなかで最も有力なものは,母体の高齢化にともなう卵子の老化説2)で あるが,その他の要因の影響も考慮にいれて研究しなければ,その全容を解明することは 困難である。それゆえ放射線への被爆の影響2)3)4)5)をはじめとして数多くの要因が研究 の対象になってきたが確定的な結論がでていないのが現状である。ここでは生体に対し て様々に影響を与える季節に注目し,ダウン症児誕生の季節による差異の有無について 検討してみた.従来からダウン症の出生は7月と11月に多いと言われたりしているが), この種の検討はまだ十分になされていないのが現状である。今回の調査は症例数が少な くあくまで予備的なものであるが,一応の結果が得られたのでここに報告する。 桐生方法と結果 今回の調査の対象としたのは,横浜市更生相談所に昭和62年10月から平成元年3月ま での約1年半のあいだに処遇判定の目的で来所した精神薄弱者の中のダウン症患者34名 と横浜市内のダウン症患者の合の会員10名の合計44名についてそれぞれの生まれ月を調 査したところ表1に示したような結果がえられた。 表1 月. 1. 敬. 9. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. ll. 3. 3. 2. 3. 0. 4. 2. 4. 3. ..2. 6. 合計. 12 5、-. ∴.44・. また横浜市の出生率に関する資料を検討し,本調査児の最長年齢者が生まれた昭和42 年度から最年少者が出生した昭和59年産までの横浜市における月別の出生数6)を∬二乗検 定にて有意差の有無を検定したが,どの年度においても95%の信輯度で差異は得られな 所属:横浜国立大学教育学部特殊教育学教室.

(2) 118. 松石竹志・白井章子. かった。またそれぞれの年度における出生数に月によっての差異の有無を各月の出生が 同等数であると倣定した場合とのx二乗検定によってもすべての年度で950/.の信頼度で有 意差を認めなかった。つまり実際の出生はどの年度においても,それぞれの月で均等な 確率で出現していると考えられた。この事実を踏まえ,各月の出生数は1/12-0.083の 比率であるとみなし,ダウン症の場合の各月ごとの出生比率の比率の検定で検討したと ころ,. 1月は99%の信頼度で有意に多く,また7月は95%の信頼度で有意に少なかった. が,それ以外の月では95%以上の信頼度での有意差は認め無かった。そこでダウン症出 生の時期を4月から9月と10月から3月までとの,つまりおおよそ春と夏に対応する時 期と秋と冬に対応する時期に分けて総計をとり両者の間での人数を比較した。その結果 春と真に対応する時期に出生した者は14名,冬に対応する時期に出生したものは30名と なり,これを比率にすると0.31818と0.68182になる。一方横浜市での出生数に関しては 各月での相違はないと考えられるので比率の検定をしたところ95%の信頼度で有意の差 を認め,ダウン症児の誕生は春夏に比較して秋冬に多いとの検定結果が得られた。. 横浜市内のダウン症患者44名の生まれ月を調査すると同時に,横浜市の人口統計資料 を使い傾向を統計的に検定した。そして一年を半期に区切り,. 4月から9月までの春と. 真に対応する比較的気温の高い時期と,. 10月から3月までの秋と冬に対応する比較的気 温の低い時期に分け,出生数に差があるかどうかについて統計的に検定をした。その結 果,出生数に関しては95%の信輯度で秋と冬という温度が低い時期の出生数の方が温度 の高い時期より多いという結果をえた。対象者の人数が少なく,資料としたサンプル数. が少ないためこのような偏りがみられた可能性はあり,今後症例数を増やして検討され なければならないが,このような季節によるダウン症発生に差異がある可能性があるこ とは興味深いことである。ここでもしそのような差異が生じてくるとすれば,どのよう なことが考えられるかという点について考察する。この調査での対象となったダウン症 児者は全員21トリソミ-である。そのような異常は受精時の細胞分裂の障害によって生 じるもので7),その時点で分裂した全細胞の21トリソミ-の方だけが生存を続けることが できるようになる。このように21トリソミ-の発現は受精早期に決まるため,季節の要 因を考慮する場合に,出生の時期よりも受胎の時期が問題になると言える。受精日を特 定するのは困難であるが,予定日を計算する場合には最終月経の第1日目から280日とさ れ, 40週の経過を経て出生にいたる。このことから出生月から受精日をおおよそ推定す. るには9カ月前後程度を逆行させた月がおおよその受精月と考えられる。このようなこ とから4月から9月にかけて出生したダウン症児者はおおよそ7月から12月ごろに受精 していると考えられ,また10月から3月に出生している例ではおおよそ1月から6月の 時期に受精していると考えられる。上記の10月から3月の寒い時期に出産しているほう が有意に多いとの結果から,受精に関しては冬至前後の日照時間が長くなっていく1月 から6月という時期に多く,逆に日照時間が短くなっていく7月から12月の時期には少.

(3) 119. ダウン症児誕生の季節性について. ないということになる。人間を取り巻く温度や日照の状態は,内分泌や自律神経機能に 大きな影響を及ぼすことは十分に考えられ,生体に対するこれらの調整機能が受精卵の 細胞分裂に間接的にせよ影響する可能性は否定できない。このようなことからダウン症 の発症は卵子の老化による正常な細胞分裂の低下とあいまってこの様な気温や日照を中 心とした環境的要因が影響を与えるのではないかという推定も可能である。 参考文献 Retardation. of Mental 1982. Ba島el, p27-p37,. Steele, M.W.:. 1.. Irene.. Genetic. Karger. In Mental. edited by Jacob,. Retardation,. mongolism, 5.. Lancet, E.,. Alberman,. syndrome.. Ann.. ⅠⅠ:849, Polani,. Hum.. Netter,. Metabolic. F.E:. P.E・. Genet.. Genetic. Diseases. (CIBA. radiation. and. 1961・ exposure al: Parental 36: 195, 1972・ (London), et. Patterns. in. Collection. Mongolism・ of Medical. to. X-irradiation. and. Down's. 1989.. 6.横浜市総務局事務管理部統計課:横浜市人口のあゆみ. 7.. 1979・. p3-p39,. Down症候群.精神医学大系第16B精神遅滞ⅠⅠ,中山書店,東京, 2.浅香昭雄: 1985. 寛,門脇純一:ダウン症.南江堂,東京, 3.塩野 between Ⅰ.A. & Curtis, E.∫.:A possible association 4. Uchida, maternal. In. Endocrine. lllustrations. System. VOL・4),. and. p・224,. Selected 1974・.

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