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帳簿組織に関する一考察 : 補助記入帳と補助元帳

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Academic year: 2021

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(1)論 説. 帳簿組織に関する一考察 一補助記入帳と補助元帳一. 泉. 1.序. 宏  之. この補助元帳が設けられる場合,先の主要簿と しての元帳は,これと区別するために総勘定元.  複式簿記における帳簿組織は,より詳細な記. 帳と呼ばれることになる.. 録の作成と記帳手続の合理化という相反する目.  仕訳帳では,仕訳という簡潔な形式でしか記. 的を果たすために発展してきた.そして,そこ. 録されないので,「特定取引についての内容明. で用いられ帳簿は,様々な観点から分類され,. 細」を記録するために設けられるのが補助記入. また,その分類基準も多様であるように思われ. 帳である.また,総勘定元帳の「特定勘定につ. る.. いての内訳明細」を記録するために設けられる.  現在,わが国の学習簿記における代表的な分. のが補助元帳である.これは,補助簿の機能か. 類として,主要簿と補助簿とがあげられる.さ. らの分類であり,補助記入帳は仕訳帳を,また,. らに後者は,補助記入帳と補助元帳とに分類さ. 補助元帳は総勘定元帳を補う帳簿として位置付. れている.. けられている1)..  本稿では,それらの分類基準がどのように説.  さらに,記帳手続の観点からは,取引が生じ. 明されているのかを確認するとともに,補助記. たとき,記帳が直接なされるのか仕訳からの転. 入帳および補助元帳として一般に位置付けられ. 記によってなされるのかにより,原始簿と転記. ている当座勘定出納帳および商品有高帳をとり. 簿という分類を行うことができる.仕訳帳と補. あげ,その妥当性についての検討を行うことと. 助記入帳は,同一取引についてそれが生じた時. したい.. 点で概念的には同時に記帳されるため,原始簿 2.主要簿と補助簿. である.補助元帳への記入も転記によってなさ. れると考える場合には,総勘定元帳と補助元帳.  複式簿記を行う上で必要不可欠な帳簿が主要. は転記簿となる2).. 簿と呼ばれ,仕訳帳と(総勘定)元帳とがある..  これらの関係をまとめると図1のようになる.. 仕訳帳には,仕訳という形式で取引発生順の記.  学習簿記においては,補助記入帳として,現. 録がなされ,その仕訳をもとにした転記という. 金出納帳・小口現金支払帳・当座勘定(当座預. 手続により,(総勘定)元帳に設けられた各勘. 金)出納帳・仕入帳・売上帳・受取手形記入. 定ごとの増加・減少の記録がなされる.. 帳・支払手形記入帳等があげられ,補助元帳と.  主要簿の記録を補うために,必要に応じて設. して,商品有高帳・売掛金元帳・買掛金元帳・. けられる帳簿を総称して補助簿と呼び,それら. 固定資産台帳・営業費内訳三等があげられる.. はさらに補助記入帳と補助元帳とに分類される..  なお,補助元帳についての説明は,単一仕訳.

(2) 横浜経営研究 第24巻 第1・2号(2003). 86(86). 図1 〈原始簿〉. 取引一. m. 〈転記簿〉 (転記). 仕訳帳(仕訳). 補助記入帳. 一[. 総勘定元帳  く主要簿〉. 補助元帳. 〈補助簿〉. 帳制を前提にした,掛取引にかかわらしめて行. 統制勘定となっているのかが明確ではない.現. われているのが大半である.すなわち,総勘定. 在,最も一般的な商品売買取引の処理方法であ. 元帳の売掛金勘定および買掛金勘定を統制勘定. る三分法では,期中における勘定記入は,費用. として,その内訳明細の記録としての売掛金元. の勘定である仕入勘定と収益の勘定である売上. 帳および買掛金元帳が説明されており,これ以. 勘定に行うのみであり,商品という資産につい. 外の補助元帳の具体的な説明はほとんどみられ. ては勘定への増減記録は行われていない.その. ない.. ため,商品有高帳が資産としての内訳明細を示.  この点に関して,帳簿組織の歴史的発展形態. すとすれば,それは期末(および期首)時点で. を考えると,補助元帳は特殊仕訳帳制を前提に. の繰越商品勘定についてのみである.. しているため,単一仕訳帳制における説明は妥.  したがって,商品有高帳は,期中においては. 当ではないという見解もある3).すなわち,特. 統制勘定を有しているとはいえず,さらに,そ. 殊仕訳帳制では,統制勘定には合計額でのみ増. の記帳は転記によるものではない.補助元帳は. 減の記録が行われるからこそ,補助元帳におけ. 「特定勘定についての内訳明細」を記録する帳. る個々の勘定の増減記録に内訳明細としての意. 簿であるという説明からすれば,商品有高帳の. 味があるというのである.この場合,取引発生. 期中の増減記録は特定勘定の内訳明細とはなる. 時に総勘定元帳と補助元帳とに二重に転記がな. ものではなく,ここに,商品有高帳を補助元帳. されるのではないため,個々の金額的な対応は. ではなく補助記入帳として位置付けるべき理由. なくなることになる.. があるように思われるのである4)..  本稿では,一般的な説明方法である単一仕訳.  これに対して,補助記入帳を仕訳帳から分化. 帳制を前提に検討を行うこととしたい.. したものと考えるならば,補助記入帳を特殊仕. 3.商品有高帳の位置付け. 訳帳化する帳簿に限定する見解もあるであろう.. その場合,特定取引に常にかかわる総勘定元帳.  多くの簿記書では,商品有高帳を補助元帳と. の特定の勘定(親勘定)が想定されているはず. して位置付けている.これは,商品有高帳は,. である.しかし,三分法を前提にすれば,商品. 各種の商品ごとに設けられるので,商品という. 有高帳にはそのような特定の勘定はなく,帳簿. 資産(財産)の内訳明細を示していると考える. と勘定の関係が分離していると考えられる.特. からである.. 殊仕訳帳化し得ない補助記入帳もあるのではな.  しかし,簿記(仕訳)処理との関係を考える. いだろうか.. と,ここに若干の疑問が生じる.すなわち,補.  もっとも,分記法または売上原価対立法を採. 助元帳であるからには,総勘定元帳に統制勘定. る場合には,期中においても資産の勘定である. が存在しているはずであるが,いかなる勘定が. 「商品勘定」に原価での増減記録が行われるた.

(3) 帳簿組織に関する一考察(泉 宏之). (87)87. め,商品勘定が商品有高帳の統制勘定になると. 銀行当座勘定」とを,別々に設けるのであれば,. 考えられる5).. 当座勘定出納帳は補助記入帳として位置付けら.  ただし,これにも商品有高帳における払出単. れることになる.. 価の決定方法にかかわり,制約が加えられる6)..  だが,当座預金口座が多数ある場合には,当. 商品の払出時点でその単価を決定できる先入先. 座預金取引の総額を把握するためや,総勘定元. 出法・継続的後入先出法・移動平均法の場合に. 帳の一覧性を高めるために,総勘定元帳には. は,商品勘定および商品有高帳の記帳が同時に. 「当座勘定」を一つだけ設け,個々の口座の増. 行い得るが,払出時点でその単価を決定できな. 減については,補助元帳に記録する処理も考え. い定期的後入先出法・総平均法の場合には,商. られるであろう8>.すなわち,上記の「A銀行. 品有高冷では数量の増減記録は行い得るものの. 当座勘定」や「B銀行当座勘定」等を,補助元. 金額の記入は行えず,その結果,商品勘定の記. 帳に設けるのである.当座勘定出納帳を設けず. 帳自体が行えないことになってしまう7).. に,それらの勘定において単に金額的な増減の.  また,前者の場合においても,払出単価が決. 記録のみを行うのであれば,これは一般的な補. 定しないことには仕訳処理も行えないのである. 助元帳として説明される売掛金元帳や買掛金元. から,商品有高帳で払出単価を決定した後に,. 帳と同様の位置付けとなる.. 仕訳帳への記帳(仕訳)が行われると考えられ.  しかし,各当座預金取引について内容明細を. る.商品有高帳への記帳は,仕訳帳からの転記. 記録することになれば,口座ごとに当座勘定出. によるのではなく,原始取引の時点で行われる. 納帳が設けられることになる.この場合には,. のである.そのように考えると,いかなる払出. 当座勘定出納帳は,補助記入帳であるとともに,. 単価の決定方法を採ろうと,また,いかなる商. 総勘定元帳の当座勘定の内訳明細を示すことに. 品売買取引の処理方法を採ろうと,商品有高帳. なるため,実質的には補助元帳の役割をも果た. は転記簿というよりも,むしろ原始簿であると. すことになるであろう.すなわち,二つの機能. いえる.. をもつ帳簿であり,その機能の観点からは,補. 4.当座勘定出納帳の位置付け. 助記入帳としても,また,補助元帳としても位 置付けることが可能な帳簿と考えられる..  当座勘定出納帳は,当座預金取引という特定.  もっとも,補助記入帳であることを考えれば,. 取引についての内容明細を記録する帳簿であり,. その記帳は原始取引の時点で行わなければなら. 一般には補助記入帳として位置付けられている.. ず,仕訳帳からの転記によるのではない.した. ただし,この時には,当座預金口座が一つしか. がって,補助元帳ではあるが,転記簿であると. なく,その当座預金ロ座の増減記録は,総勘定. は言い難く,ここにも全ての補助元帳を転記簿. 元帳の特定(一つ)の勘定に行うことが想定さ. として説明することには限界があるように思わ. れていると考えられる.. れる..  しかし,当座預金口座が複数ある場合には,.  ところで,記録形式による帳簿の分類として. 当座勘定出納帳を補助記入帳としてのみ説明す. 「記入簿」と「勘定簿」とがある.前者は,全. ることには疑問が生じる.. ての取引または特定の取引をその発生順に記録.  仮に,A銀行当座預金口座とB銀行当座預金. する帳簿であり,後者は,勘定科目別に記録す. 口座を有している場合,各口座ごとの取引の内. る帳簿である.全ての取引を発生順に記録する. 容明細を記録するとすれば,当座勘定出納帳は,. 仕訳帳は記入簿の代表とされ,補助記入帳も特. それぞれのロ座ごとに設ける必要がある.さら. 定の取引を発生順に記録するため記入簿とされ. に,総勘定元帳には「A銀行当座勘定」と「B. る9).しかし,特定の取引が元帳の特定の勘定.

(4) 88(88). 横浜経営研究 第24巻 第1・2号(2003). と常に結び付く場合には,特定取引と特定勘定. も,個々の補助簿の補助記入帳または補助元帳. とは一致することになり,そのような補助記入. .としての位置付けは,絶対的なものではないこ. 帳は記入簿であるとともに勘定簿にもなり得る. とを認識する必要があるのではないだろうか.. lo).したがって,かかる性格を有する帳簿は, 注. 補助記入帳であると同時に,総勘定元帳または 補助元帳の勘定ともなり得るのである11>..  このような観点からすれば,当座勘定出納帳 に限らず,記入簿であるとともに勘定簿である 補助簿は,補助記入帳としても補助元帳として も位置付けられる可能性があると考えられる.. 5.補助記入帳と補助元帳. 1)中野常男教授は,「補助記入帳とは,仕訳帳か  ら分化した帳簿」,「補助元帳とは,元帳から  分化した帳簿」として説明している..  中野常男著『複式簿記原理 第2版』中央経  済社,2000年,436頁参照. 2)沼田嘉穂教授は,「元帳(総勘定元帳および補  助元帳…泉注)は,原則として転記簿である」.  としながらも,実務上は取引を直接に記入す  る補助元帳の例として,株主台帳と機械台帳.  学習簿記においては,特定取引の内容明細を.  をあげている.. 記録する帳簿として補助記入帳が,また,特定.  沼田嘉穂著『帳簿組織』中央経済社,1970年,. 勘定の内訳明細を記録する帳簿として補助元帳.  また,現在,高等学校で使用されている教科  書では,特殊仕訳帳制の段階では補助元帳を  転記簿として説明をするが,それに先立つ単  一仕訳帳制の段階では転記によって記入され  る帳簿とは明確には説明していないように思. が説明されており,補助簿はいずれかに属する 帳簿として位置付けられている.しかし,個々 の補助簿について考察してみると,その位置付 けは絶対的なものではないように思われる..  117頁参照..  特定取引と特定勘定とは一致することもあり,.  われる. 3)沼田嘉穂,前掲書,112∼113頁参照,. ある種の補助簿は補助記入帳としても補助元帳.  1979年,181∼183頁参照.. としても位置付けることが可能となる..  そうであるならば,両者の区分(分類基準) はどこに求められるであろう.先に記帳手続の. 観点から,補助記入帳は原始簿であり,補助元 帳は転記簿であるという説明をあげたが,商品 有高帳および当座勘定出納帳が補助元帳として.  安平昭二著『精説 簿記原理』中央経済社,  売掛金元帳および買掛金元帳をとりあげての  補助元帳の説明を,特殊仕訳帳制を前提に行  っている簿記書としては,以下のようなもの  がある.  沼田嘉穂町『簿記教科書[五訂新版]』同文舘,  1992年..  武田隆二著『簿記1 簿記の基礎』税務経理  協会,1996年.. 機能する場合には,転記簿ではなく原始簿とな. 4)新田詩聖教授は,総勘定元帳と対応がある帳. らざるを得ないことを指摘したとおり,この基.  簿を「補助元帳」,対応がない帳簿を「補助簿」. 準も全てに適応できるものではないであろう. したがって,本来の説明に立ち返り,その機能 の観点から,総勘定元帳の勘定記録との関係を. 考え,統制勘定を有するか否かによって,補助 元帳と補助記入帳を区分することにこそ合理性 があるように思われるのである.ただし,本稿 は,補助簿を補助記入帳と補助元帳とに二分す ることを目的としているわけではない..  もとより,補助簿を上記の二つに分類するこ. と自体に限界があるのかもしれない.しかし, 現行の説明体系を前提にするならば,少なくと.  とし,商品有高帳を補助簿と位置付けており,  補助元帳とはしていない.  新田祭事・村田英治・佐々木隆志・溝上達也  著『新会計学・簿記入門』白桃書房,1999年,  167∼168頁参照.. 5)同様に「商品勘定」を用いる処理として,総  記法および小売棚卸法をあげることができる.  しかし,前者は,借方は原価で記入されるも  のの貸方は売価での記入であり,後者は,借  方・貸方ともに売価で記入されるため,期中  においては,原価での記帳を行っている商品  有高帳の統制勘定とはなり得ない.統制勘定  になり得るとすれば,両者ともに,決算整理  を経て原価での商品有高を示す時点のみであ  る..

(5) 帳簿組織に関する一考察(泉 宏之). (89)89. 6)新田忠誓教授によれば,資産法(本稿での売  上原価対立法)を採り,払出単価の決定方法  として先入先出法・その都度後入先出法(本  稿での継続的後入先出法)・移動平均法を用  いる場合には,商品有高帳は補助元帳として  機能するとしている.  新田忠誓稿「簿記の目的と会計学」,飯野利夫  先生喜壽記念論文集『財務会計論の研究』税  務経理協会,1995年に所収,75∼79頁参照. 7)売上原価対立法では,商品勘定から売上原価  勘定への振替のための次に示した仕訳は,売  上の都度行われる..   が生じた場合には,総勘定元帳の当座勘定で   は借越の金額が相殺消去されてしまうことが   あり得る.当座借越の本質は(短期)借入金   であり,貸借対照表を作成するためには,総   勘定元帳の記録では不十分で補助元帳の記録   までさかのぼる必要が生じるという問題もあ.    (借)売上原価 ×× (貸)商  品 ××.   出版局,1993年,360∼361頁参照..  これは,商品勘定に増減(および残高)を記  録することにより,財産管理をするためと考  えられる.仮に,商品有高帳によりそれを行  っているとすれば,総勘定元帳での振替は売  上の都度行う必要はなく,期末に一括して行  うことも考えられるのではないだろうか.さ  らに,商品勘定の借方への記入(増加記入)  も期末に一括して行うことにすれば,次の二. 10)片野一郎教授は,補助記入帳は「特定勘定に   関する取引の内容」,補助元帳は「特定の勘定   の内容」をそれぞれ詳記する帳簿であるとし,   両者は記帳様式の相違があるだけで,その職   能には相違はないと説明している.これは,   特定取引は常に特定勘定と結びついていると.  点を指摘することができる..   る.. 9)一般に用いられる二欄式の仕訳帳は記入簿で   あるが,多欄式仕訳帳の場合には特別欄を設   けた勘定については,勘定簿としての機能を   も有することになる..   大藪俊哉著『簿記の計算と理論』税務研究会.   考えているものと思われる.   片野一郎著『簿記旧説(上巻)』同文舘,1977   年,242頁参照..  一つは,払出単価の決定方法としては,定期  的後入先出法・総平均法の適用も可能となる.  二つ目は,商品勘定の借方・貸方ともに商品  有高帳からの合計額での転記が可能となり,  商品有高帳が特殊仕訳帳と同様の機能を有す. ll)安藤英義教授は,イギリスにおける元帳の分   割の場合には,分割された勘定は一般元帳に   残らないことを指摘しているが,これはまさ   に勘定簿は勘定そのものになり得ることを意.  る帳簿となり得ると思われる. 8)本稿では,当座預金取引については一勘定制.   安藤英義著『簿記会計の研究』中央経済社,.   味している..   2001年,26∼27頁参照..  による処理を前提にしているため,当座借越 〔いずみ ひろゆき 横浜国立大学経営学部助教授〕.

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