• 検索結果がありません。

「Cybathlon(サイバスロン)」に対する大学生のイメージ : パラリンピックとの比較から

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "「Cybathlon(サイバスロン)」に対する大学生のイメージ : パラリンピックとの比較から"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Title. 「Cybathlon(サイバスロン)」に対する大学生のイメージ : パラリン ピックとの比較から. Author(s). 大山, 祐太. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 68(2): 623-631. Issue Date. 2018-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/9694. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第68巻 第2号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 68. No.2. 平 成 30 年 2 月 February, 2018. 「Cybathlon(サイバスロン)」に対する大学生のイメージ ― パラリンピックとの比較から ―. 大 山 祐 太 北海道教育大学岩見沢校 アダプテッド・スポーツ研究室. A study of the college students’ images of “Cybathlon” : Comparison with Paralympic Games. OYAMA Yuta Department of Sport Education, Iwamizawa Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 最先端テクノロジーを駆使した義肢や車椅子を使用する競技大会「Cybathlon(サイバスロ ン) 」の普及・振興に向けた基礎資料を得るため,サイバスロンに関する講義を受けた大学生 を対象にイメージ調査を行い,パラリンピックとの比較を通して傾向の把握を試みた。結果, 下記のことが明らかとなった。 ①パラリンピックに比べサイバスロンの認知度は低いこと。②パラリンピックもサイバスロ ンも全体的に肯定的イメージをもたれていること。③サイバスロンは新しく派手で高価な大会 で,パラリンピックの方が安全性や激しさ,あたたかさがあり,恐ろしさがないと認識されて いること。④男子学生はサイバスロンの方がおもしろい,好ましい,陽気,親しみやすいと思っ ており,女子学生の方はパラリンピックの方がかっこ良い,美しいと思っていること。⑤サイ バスロンを大学授業で学んだ群は,イベントで学んだ群より,陽気,逞しい,あたたかい,好 ましいと認識していること。. Ⅰ.背景と目的. 高まっている。2016年10月には,スイスのチュー リッヒで「Cybathlon( 以下,サイバスロン)」と. 障害者権利条約には,障害者のスポーツや芸術. いう新しい試みである障害者の競技大会が開催さ. といった文化的活動への参加推進について明記さ. れ,日本からも複数のチームが出場した。. れている。特に我が国においては,2020年の東京. 「サイバスロン」とは,ロボット技術を含む高. オリンピック・パラリンピック開催決定を機に,. 度な支援装置・装具を使用し,障害者が所定の課. 障害者の身体活動やスポーツ活動に対する関心が. 題をクリアする正確さや速さを競う大会である。. 623.

(3) 大 山 祐 太. サイバスロンにおいて装置・装具を使用する出場. な知見を得られたと言える(Griffin et al., 2017)。. 者は「パイロット」と呼ばれ,種目は「パワード. Riener(2016)が述べるように,開発されたデバ. スーツレース(強化外骨格レース)」,「パワード. イスは将来的に日常生活における全ての活動にお. アームレース(強化義手競技レース)」,「パワー. いて,入手コストが下がり,より機能的にもなっ. ド レ ッ グ レ ー ス( 強 化 義 足 レ ー ス )」,「FES. てゆくだろう。. (Functional Electrical Stimulation)バイクレー. また,Reiner(2016)は,サイバスロンはあら. ス(機能的電気刺激自転車レース)」,「ブレイン. ゆる技術援助を活用できるため,より重度の障害. コンピューターレース(脳波コントロールレー. 者が競技に参加することができるという点でオリ. ス) 」 , 「電動車椅子レース(改造車椅子レース)」. ンピックやパラリンピックを補完しうると述べて. の6種目が設けられている。. いる。昨今,重度障害者のスポーツとのかかわり. パワードスーツレースは,下肢の運動機能を損. について,その重要性が指摘され,参加形態や実. なった者が機械仕掛けの外骨格装置を使用して,. 践方法について知見が蓄積されはじめている(近. 下肢の動きのみで移動したり座ったりなどの課題. 藤・安井,2014.加地・河野,2016.)。サイバス. に取り組むレースである。パワードアームレース. ロンの普及及び関連領域における研究・実践の活. は,繊細な動作が可能な義手を用いて,トレーを. 性化は,障害者の日常生活における行動選択を拡. 持ったまま移動したり,義手でパンを切ったり,. 大させるだけでなく,これまでスポーツに取り組. 洗濯物を干したりといった日常生活において生じ. めなかった者をスポーツに接続させる可能性があ. 得るような課題に取り組むレースである。パワー. ることから,スポーツ文化の振興にも大きく寄与. ドレッグレースも,高性能の義足を使用して,階. しうると考えられる。. 段を上ったり,地点間をジャンプで移動したりと. しかしながら,ロボット工学や電子情報学など. いった日常生活動作に取り組むレースとなってい. のデバイス開発に関連する分野においては様々な. る。FESバイクレースは,脊髄損傷などにより脳. 研究がおこなわれているものの,大会としての「サ. からの情報を伝達できなくなった神経に代わり,. イバスロン」の歴史は浅く,我が国における報告. 制御された電気信号を入力することによって足の. は寡少である。人体機能を拡張する取り組みであ. 筋肉を動かし,バイクを漕ぐレースである。ブレ. るため,倫理的側面や法律・ルールとの兼ね合い. インコンピューターレースは,脳波を測定する装. について議論する必要があり,普及振興にあたっ. 置を介して,首から下が麻痺している者がコン. ては慎重に方略を検討しなければならないだろう。. ピューター上のアバターを操作するレースであ. よって,本研究は,サイバスロンの普及・振興. る。電動車椅子レースは,階段や凹凸のあるコー. に資する基礎資料を得るため,サイバスロンに対. スを高機能の電動車椅子で進むレースである。. するイメージを把握することを目的とする。なお,. サイバスロンの目的は,障害者のための支援技. サイバスロンに対するイメージの特徴を明瞭にす. 術の研究,開発,実践を促進することであり,技. るため,我が国において最もメジャーな障害者の. 術開発に携わる者と障害者との交流を重要視して. 競技大会であるパラリンピックとの比較検討から. い る( サ イ バ ス ロ ン 公 式HP,2017)。Griffin et. 考察をおこなう。. al.(2017)は,サイバスロンの外骨格レースにお いて足関節部の屈曲という多くの外骨格装具には 備わっていない機能を付与したモデルを提案し,. Ⅱ.方 法. 出場パイロットが第2位を獲得したことでその有. 1.調査対象と方法. 効性を実証的に示した。下肢に障害がある者の松. サイバスロンは一般的に認知されていない可能. 葉杖を使わない自立歩行を実現させるため,有用. 性があるため,イメージ調査にあたってはサイバ. 624.

(4) 「Cybathlon(サイバスロン)」に対する大学生のイメージ. スロンに関する講演または講義を聴講し,ある程. 表1 講義の主な内容. 度の知識を得た者のみを対象とすることとした。 よって,北海道教育大学岩見沢校で開催されたア ダプテッド・スポーツのイベント「第三回アダス ポ!岩見沢」において,サイバスロンパイロット 及び技術開発者による講演会を聴講した者,同大 学の「アダプテッド・スポーツ概論」を履修し「サ イバスロン」の講義回に出席した者を対象に,質 問紙調査をおこなうこととした。調査時期は2017 年7月であり,全ての調査対象が聴講日から1週 間以内に回答できるよう配布・回収した。回収率 は100%であった。 2.サイバスロン講義の概要 サイバスロンに関する講義の主な内容は表1の 通りである。 「第三回アダスポ!岩見沢」は大山 ら(2016)が報告するような一般市民を対象とし た体験型イベントであり,その第三回目の開催に 合わせてサイバスロンパイロットと技術者を招き 講義をしてもらった(2017年7月1日)。「アダプ テッド・スポーツ概論」 (2017年7月13日)は大 学のレギュラー授業として開講されており,その. 図1 大学授業で用いたスライド例. 内の「障害者スポーツとテクノロジー」という回 においてサイバスロンについて当該授業の担当教. パラリンピックとサイバスロンに関する事前知. 員が講義を行った。開講形態及び講師が異なって. 識があったかどうかについては,それぞれ「1.. いるという技術的理由によって,大学授業におい. 講義で初めて知った」,「2.講義前から名前だけ. ては強化義手の実物を見せたり出場した者の話を. 知っていた」,「3.講義前から良く知っていた」. 聞かせたりすることができず,イベントでは図1. の3つから回答を得た。. のように重要なポイントに時間を割いて説明する. パラリンピック及びサイバスロンに対するイ. ことができないなど差異が生じたものの,極力情. メージに関しては,SD法を用いて,18の形容詞. 報量に差が生じないよう配慮した。. 対を7段階で評定してもらい把握した。形容詞対 は, ス ポ ー ツ に 対 す る イ メ ー ジ 調 査( 藤 島,. 3.調査項目. 1995)において用いられていたものを参考とした。. 主な調査内容は,「回答者の基本情報」と「パ. また,予備調査として大学生3名を対象にサイバ. ラリンピック及びサイバスロンに関する事前知識. スロンの映像を視聴させ,得られた感想から抽出. の有無」 , 「パラリンピック及びサイバスロンに対. された形容詞及びその対義語も項目として加えた。. するイメージ」の3つである。 基本情報として,サイバスロン講義の聴講場面. 4.分 析. (イベント時・大学講義時)と性別(女性・男性). 基本情報の2項目は,クロス集計を行い度数の. について確認した。. 偏りを確認した(χ 検定)。. 2 . 625.

(5) 大 山 祐 太. パラリンピック及びサイバスロンに関する事前. 表3 パラリンピック,サイバスロンに関する知識. 知識の有無は,それぞれの度数を算出し表にまと めた。 パラリンピック及びサイバスロンに対するイ メージに関しては,まずそれぞれの大会に対する 各イメージ項目の回答者全体の平均点を算出し, 比較した(ウェルチのt検定)。続いて,各項目 の平均点を基本情報ごとに群間比較をおこなった (ウェルチのt検定) 。データの集積・統計的処. 「平気な-恐ろしい」,「安価な-高価な」,「新し. 理はIBM SPSS® Statistics Desktop Ver.22を用い. い-古い」,「派手な-地味な」の項目において有. た。. 意な得点差が確認された。「安全な-危険な」, 「激 しい-おだやかな」, 「あたたかい-つめたい」, 「平 気な-恐ろしい」,「安価な-高価な」の5項目は. Ⅲ.結 果. パラリンピックの方が高い得点であり,「新しい. 1.回答者の基本情報. -古い」,「派手な-地味な」についてはサイバス. 性別とサイバスロンに関する講義の聴講区分を. ロンの方が高かった。各項目の平均得点,標準偏. 2 . クロス集計し,χ 検定をおこなった結果,有意 2 . =6.07, p<0.05) 。 な度数の偏りが確認された (χ(1). 差,t値,有意水準については表4,平均得点を プロットした図は図2の通りである。. それぞれの度数を表2に示す。 表2 聴講区分と性別のクロス集計表. 2.パラリンピック及びサイバスロンに関する事 前知識 パラリンピックについては,講義を受けるまで 知らなかった者はおらず,約6割が「前から良く 知っている」と回答していた。逆にサイバスロン に関しては, 「前から良く知っている」者はほと んどおらず(4,7.4%) ,7割以上が「講義で初 めて知った」と回答していた。 3. パラリンピックとサイバスロンに対するイ メージ得点の差異 パラリンピックとサイバスロンと対するイメー ジの得点を比較したところ,「安全な-危険な」, 「激しい-おだやかな」, 「あたたかい-つめたい」,. 626. 表4 パラリンピックとサイバスロンのイメージ比 較結果.

(6) 「Cybathlon(サイバスロン)」に対する大学生のイメージ. れの平均得点をウェルチのt検定により比較した (表5・図3・図4)。その結果,パラリンピッ クに関しては4項目において有意な差が生じてお り,男性の方が「楽しい-苦しい」の得点が高く, 女性の方が「かっこ良い-かっこ悪い」,「安価な -高価な」,「美しい-みにくい」の得点が高かっ た。 また,サイバスロンに関しては8項目に有意差 が生じており,男性の方が「おもしろい-つまら ない」,「陽気な-陰気な」,「親しみやすい-親し みにくい」, 「好きな-嫌いな」, 「楽しい-苦しい」, 「分かりやすい-分かりにくい」,「好ましい-う とましい」の得点が高く,「安価な-高価な」の み女性の方が高かった。 図2 パラリンピックとサイバスロンのイメージ得 点のプロット. 5.聴講区分によるパラリンピック及びサイバス ロンイメージ得点の差異 次に,サイバスロン講義の聴講区分によるイ. 4.性別によるパラリンピック及びサイバスロン イメージ得点の差異. メージの差異を確認するため,アダプテッド・ス ポーツイベントにおいて受講した「イベント群」. パラリンピック及びサイバスロンに対するイ. と大学の授業において受講した「授業群」の得点. メージの性差を確認するため,女性・男性それぞ. を比較した(ウェルチのt検定)。その結果,パ. 表5 パラリンピックおよびサイバスロンに対するイメージ(男女比較). 627.

(7) 大 山 祐 太. ラリンピックに関しては有意な得点差が生じてい る項目はなく,サイバスロンに対する「陽気な-. Ⅳ.考 察. 陰気な」 , 「たくましい-弱弱しい」,「あたたかい. 1.パラリンピック及びサイバスロンの認知度. -つめたい」 , 「好ましい-うとましい」のイメー. パラリンピックについては,全ての回答者が以. ジ得点が,授業群において有意に高い結果となっ. 前から名称を知っていた一方で,講義を受ける前. ていた(表6・図5・図6)。. からサイバスロンという名称を知っていた者は3. 図3 パラリンピックのイメージ得点(性別比較). 図4 サイバスロンのイメージ得点(性別比較). 表6 パラリンピックおよびサイバスロンに対するイメージ(講義受講区分比較). 628.

(8) 「Cybathlon(サイバスロン)」に対する大学生のイメージ. 図5 パラリンピックのイメージ得点 (聴講区分比較). 図6 サイバスロンのイメージ得点(聴講区分比較). 割程度であった。大山(2017)は,大学生を対象. らかとなった。パラリンピックの方が激しいイ. にパラリンピックやジャパンパラ競技大会,デフ. メージがあることについては,パラリンピックに. リンピックなど障害者のスポーツ大会に関する認. は持久力を必要とする競技種目や他プレイヤーと. 知度を調査し,パラリンピック以外の大会につい. のコンタクトが伴う競技種目があることや,サイ. てはほとんど知られていない実態を報告してい. バスロンでは設定課題に臨む者を「パイロット(操. る。日本財団パラリンピック研究会(2014)や藤. 縦者)」と呼称するなど,大会の目的や採用され. 田(2016)の調査でも,パラリンピックは一般的. ている種目の違いで説明できるであろう。. に認知されているものの,具体的な競技種目や他. 危険度やあたたかみに関する認識は,積極的に. の障害者の大会名については知られていないこと. 「身体」に「人工物」を介入させることに対する. が報告されており,本研究においても同様の知見. 抵抗感が背景にあると推察される。影山ら(2010). が得られたものと思われる。. が行った口腔インプラントに対するイメージ調査 では,自由記述から肯定的な意見も抽出されたも. 2.パラリンピックとサイバスロンのイメージの 差異. のの,リスクが伴う,費用が高額,人体への外科 的侵襲が大きいなどの意見も得られていた。さら. 回答者全体のイメージ得点から解釈すると,傾. に,竹村(2014)は競技スポーツにおける身体的. 向としてサイバスロンはパラリンピックに比べて. エンハンスメントの倫理的諸問題に関して考察. 新しく,派手で,高価なイメージの大会であると. し,勝利を追求するという目的の単なる手段とし. 認識されていることが確認された。これは,2016. て「より良い身体」を追求することは認められな. 年に第一回大会が開催されたことや,最先端のテ. いと述べている。前述したように,障害者の生活. クノロジーを駆使した装置や装具を用いた大会で. 上のバリアを取り除くような技術開発がサイバス. あることから,新しさや目を引く華やかさ,開発コ. ロンの開催趣旨ではあるが,我が国においては「サ. ストがかかるイメージをもったことが考えられる。. イバー義体者のスポーツの大会」として紹介され. また,パラリンピックよりも危険性が高く,激. ている。「治す」や「リハビリテーション」といっ. しさやあたたかみをあまり感じていないことも明. た医療目的ではなく, 「競う」, 「スポーツをする」. 629.

(9) 大 山 祐 太. ために身体に電気信号を送ったり,メカニカルな. 新によってテレビ視聴の形態が変容してゆく可能. 義肢や外骨格を装着したりすることを,受容し難. 性はあるものの,生観戦と同じように五感を刺激. い回答者もいた可能性が考えられる。. することは困難であり(橋本,2015),「映像は現 実の壁を越えられない」(杉本,2015)と指摘さ. 3.性別・聴講区分によるイメージの差異. れている。しかし,杉本(2015)は,詳しい選手. サイバスロンに対しては,男性の方が「おもし. やチーム情報を得られたり,リプレイやスロー再. ろい」や「好ましい」,「陽気」,「親しみやすい」. 生機能,撮影カメラの画面切り替えができたりす. などのイメージをもっており,パラリンピックに. ることから,テレビ観戦はスタジアム観戦を凌駕. 対しては女性の方が「かっこ良い」,「美しい」イ. していると述べている。つまり,画像・映像視聴. メージをもっていた。. だと「生」の臨場感や質感を味わうことはできな. 先行研究によると,男児は自動車や飛行機,鉄. いものの,生観戦では見えるはずのない多様な情. 砲,女児は女の子の人形やままごと,装飾品を模. 報に触れることができるという利点もあるという. したおもちゃが与えられる傾向があること(深. ことだ。本研究において授業群は,サイバスロン. 谷・田島,1971)や,子どもの性別概念の理解は. 出場者から直接話を聞くことはできず,装具や車. おもちゃの選好に関連していること(Martin &. 椅子の実物にも触れることができなかったが,イ. Little, 1990)が報告されている。我が国において. ベント時に口頭で説明されたサイバスロンの魅力. は,ロボットやサイボーグが登場する戦隊ヒー. や社会的意義について等,スライドを活用した説. ローのテレビ番組及びそのおもちゃは,とりわけ. 明を受けることができた。上記のことから解釈す. 男児を対象としたものであると認知されている。. るに,授業群はサイバスロンの用具に「生」で接. 男子学生は,映像やおもちゃ,ごっこ遊びを通し. 触しなかったことにより,イベント群に比べて前. てメカニカルな存在に接する機会が多く,親しみ. 述したような機械に対する抵抗感が強く喚起され. をもちやすかったことがうかがえる。逆に,女子. ず,魅力や意義については視覚情報としても入手. 学生は,身体と機械の融合に関して男子学生ほど. できたため,より深い理解を示すことができたの. 肯定的になれず,ドーピングや競技用具の規格に. ではないだろうか。ただし,表2で示したように. 厳格でより「生身」で競い合うパラリンピックに. イベント群には女性が多く講義群には男性が多い. 格好良さや美しさを見出したのではないだろう. ため,入手した情報の内容や入手場面の影響より. か。加えて,パラリンピックに関しては報道され. も,性別による影響が強く反映された結果である. る量が増えてきており,内容については選手個人. 可能性は否定できない。この点に関しては今後,. を焦点化したものが多い(蘭,2004.辻・上地,. 検討をおこなう必要がある。. 2014. ) 。女性は男性よりも共感性が高い傾向にあ る(Mehrabian & Epstein,1972.桜井,1986.) ため,女子学生は,選手個人の苦難や努力,達成. Ⅴ.今後の課題. 等についての情報に触れやすいという点で,パラ. 本研究では,パラリンピックとの比較検討から,. リンピックを高く評価した可能性も考えられる。. サイバスロンに対するイメージの傾向と属性によ. また, 聴講区分による比較の結果,パラリンピッ. る差異について知見を得ることができた。広く認. クイメージについては差異を確認できず,サイバ. 知されているパラリンピックに対するイメージと. スロンに対して授業群がより「陽気」,「たくまし. の相違点を整理できたため,サイバスロンの今後. い」 , 「あたたかい」,「好ましい」イメージもって. の普及振興戦略構築に寄与しうる,一定の成果を. いることがわかった。. 得ることができたと言えよう。. スポーツ観戦に関しては,テクノロジカルな革. しかし,今回の調査は,対象にサイバスロンに. 630.

(10) 「Cybathlon(サイバスロン)」に対する大学生のイメージ. 関する知識があることを前提とせざるを得ないた め,サイバスロンの講義を聴講した大学生を対象. empathy. Journal of personality, 40:525-543. 日本財団パラリンピック研究会(2014):「国内外一般社 会でのパラリンピックに関する認知と関心」調査結果. とした。あくまでも,大学生という特定の層から. 報告書.. 収集したデータであり,その中でも性別とサイバ. 大山祐太(2017):大学生の障害者イメージおよび障害者. スロン講義の受講形態という2つの回答者情報か. スポーツに関する認知度-スポーツ系学生と非スポー. らしか比較できなかった。そのため,得られた結. ツ系学生の比較検討-.芸術・スポーツ文化学研究,. 果が一般化しうるのかについては,本稿では検証 できていない。今後,サイバスロンに関する同質. 3:74-95. 大山祐太・奥田知靖・福原崇之・越山賢一・高沢拓也・ 沢永宜之・中川和彦・佐藤徹(2016) : 「アダプテッド・. の情報が与えられた集団に対して大規模調査を行. スポーツ」体験イベントの実践報告-大学・自治体・. うなど,データの追加及びより詳細な検討が必要. 民間が連携した事例-.北海道教育大学紀要 教育科. である。. 学編,67⑴:441-455. Riener,R. (2016): The Cybathlon promotes the development of assistive technology for people with physical disabilities. Journal of NeuroEngineering and. 参考文献 蘭和真(2004) :ソルトレークシティーパラリンピックの 新聞報道に関する研究:朝日新聞,毎日新聞,読売新 聞の記事分析.東海女子大学紀要,23:13-19. 藤島みち(1995) :女子短期大学生のスポーツに対するイ メージについて.夙川学院短期大学研究紀要,19:81-. Rehabilitation, 13, 49. 桜井茂男(1986):児童における共感と向社会性行動の関 係.教育心理学研究,34⑷:54-58. 杉本厚夫(2015):観戦額の視座-多様化する感染の楽し み方-.体育の科学,65⑽:710-714. 竹村瑞穂(2014):競技スポーツにおける身体的エンハン スメントに関する倫理学的研究:より「よい」体をめ. 115. 藤田紀昭(2016):障害者スポーツ,パラリンピックおよ び障害者に対する意識に関する研究.同志社スポーツ. ぐって.体育学研究,59:53-66. 辻はるか・上地勝(2014) :日本におけるパラリンピック に関する報道の内容分析.茨城大学教育学部紀要 教. 健康科学,8:1-13.. 育科学,63:499-508.. 深谷和子・田島満利子(1971):3才児の心理,身体的研 究⑸:母親の玩具選択行動と子どもの性差.日本保育 学会大会発表論文抄録,24:213-214. Griffin,R. Cobb,T. Craig,T. Daniel,M. van Dijk,N. Gines,J.. 参考サイト サイバスロン公式ホームページ:http://www.cybathlon. ethz.ch/(2017年7月14日閲覧). Krämer,K. Shah,S. Siebinga,O. Smith,J. and Neuhaus,P. (2017): Design and Approach of Team IHMC in the 2016 Cybathlon, arXiv:1702.08656vl [cs.RO].. . (岩見沢校講師). 影山勝保・竹内操・鎌田政善(2010):奥羽大学歯学部5 年生を対象とした口腔インプラント実習の概要とアン ケート結果 平成19年度と平成20年度との比較.奥羽 大学歯学誌,37⑵:105-112. 加地信幸・河野喬(2016):重度・重複障害児を対象とし たアダプテッド・スポーツ教育法改善に関する研究. 社会情報学研究:広島文化学園大学社会情報学部紀 要,21:33-41. 近藤尚也・安井友康(2014):重度肢体不自由者のスポー ツ参加と「みるスポーツ」.北海道教育大学紀要 教育 科学編,65⑴:403-412. Martin,C.L., & Little,J.K. (1990): The Relation of Gender Understanding to Children’s Sex-typed Preferences and Gender Stereotypes. Child Divelopment, 61:14271439. Mehrabian,A. & Epstein,N. (1972) A measure of emotional. 631.

(11)

参照

関連したドキュメント

計算で求めた理論値と比較検討した。その結果をFig・3‑12に示す。図中の実線は

 尿路結石症のうち小児期に発生するものは比較的少

以上の結果について、キーワード全体の関連 を図に示したのが図8および図9である。図8

で得られたものである。第5章の結果は E £vÞG+ÞH 、 第6章の結果は E £ÉH による。また、 ,7°²­›Ç›¦ には熱核の

Robertson-Seymour の結果により,左図のように disjoint

駅周辺の公園や比較的規模の大きい公園のトイレでは、機能性の 充実を図り、より多くの方々の利用に配慮したトイレ設備を設置 全

検討対象は、 RCCV とする。比較する応答結果については、応力に与える影響を概略的 に評価するために適していると考えられる変位とする。

★ IMOによるスタディ 7 の結果、2050 年時点の荷動量は中位に見積もって 2007 年比約3倍となり、何ら対策を講じなかった場合には、2007 年の CO2 排出量 8.4